(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098613
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】温水ユニット用の外装ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20220627BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
F24H9/02 301Z
B41J2/01 125
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212097
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福井 宣広
(72)【発明者】
【氏名】田合 貴大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘士
【テーマコード(参考)】
2C056
3L037
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FB04
2C056FC02
2C056HA44
2C056HA46
3L037AA01
3L037AA02
3L037AB07
(57)【要約】
【課題】プレス加工に起因してクラックなどが容易に生じないようにし、従来よりも深い絞りのプレス加工に対応することが可能な温水ユニット用の外装ケースの製造方法を提供する。
【解決手段】平板状の金属板30に印刷層4を設ける印刷工程と、この印刷工程の後において、金属板30にプレス加工を施すプレス工程と、を有しており、前記プレス工程は、金属板30を、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品として形成するための工程である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、前記プレス工程は、金属板30を加熱した状態で実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の金属板に印刷層を設ける印刷工程と、
この印刷工程の後において、前記金属板にプレス加工を施すプレス工程と、
を有しており、
前記プレス工程は、前記金属板を、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品として形成するための工程である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記プレス工程は、前記金属板を加熱した状態で実施することを特徴とする、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記外装ケースは、少なくとも一面が開口部とされた外装ケース本体と、前記開口部を塞ぐようにして前記外装ケース本体に取付けられるカバー体と、を備えており、
前記外装ケースの前記構成部品は、前記外装ケース本体または前記カバー体である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記印刷工程においては、熱硬化性樹脂を含む印刷用インクを利用して前記印刷層を設け、
前記プレス工程において前記金属板を加熱するための熱を利用し、前記印刷層を熱硬化させる、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記印刷工程においては、前記印刷用インクとして、前記熱硬化性樹脂に加え、紫外線硬化樹脂をさらに含む印刷用インクを利用し、
前記金属板に前記印刷層を設けている過程において、前記印刷層を紫外線照射によって硬化させる、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記印刷工程において、印刷用インクとして、乾燥固化後にゴム性を有するゴム系塗料を用いる、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記プレス工程は、前記金属板に絞り加工を施す工程を含み、
前記印刷工程においては、前記絞り加工の予定領域のうち、前記金属板の板厚が他の部分よりも薄くなる部分における前記印刷層の厚みを、前記他の部分における前記印刷層の厚みよりも薄くする、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置やコージェネレーションシステムなどの温水ユニットにおいて、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる温水ユニット用の外装ケースを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、温水ユニット用の外装ケースの具体例として、特許文献1,2に記載のものを先に提案している。
これらの文献に記載された温水ユニット用の外装ケースは、カラー鋼板などの金属板をプレス加工することにより製造される。ただし、プレス加工の前に、前記金属板にインクジェット印刷を施し、インクジェット印刷層を設けている。インクジェット印刷層は、たとえば文字、記号、図、または模様などを表わしている。
このような構成によれば、外装ケースの表面部に所望の図柄を表現し、デザイン性などを高めることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、金属板のプレス加工は、この金属板に印刷層(インクジェット印刷層)が設けられた状態で行なわれている。このため、プレス加工として、たとえば絞り加工が実施されて金属板の一部が延ばされる場合において、金属板よりも印刷層の方が延性に優れていると、絞り加工が可能な範囲は金属板の延性により定まり、金属板の絞りを深くすると、印刷層には延性の余裕があるとしても、金属板には延性の余裕がなく、クラックが発生する場合がある。これでは、印刷層の特性が十分に活かされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-60508号公報
【特許文献2】特開2019-60509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、プレス加工に起因してクラックなどが容易に生じないようにし、従来よりも深い絞りのプレス加工に対応することが可能な温水ユニット用の外装ケースの製造方法を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される温水ユニット用の外装ケースの製造方法は、平板状の金属板に印刷層を設ける印刷工程と、この印刷工程の後において、前記金属板にプレス加工を施すプレス工程と、を有しており、前記プレス工程は、前記金属板を、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品として形成するための工程である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、前記プレス工程は、前記金属板を加熱した状態で実施することを特徴としている。
好ましくは、前記印刷工程は、インクジェット印刷工程である。
【0009】
このような構成によれば、金属板を加熱し、この金属板の延性をよくした状態でプレス工程を実施するため、印刷層の延性のよさを活かすべく、従来よりも金属板を深く絞るプレス加工を適切に行なうことが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記外装ケースは、少なくとも一面が開口部とされた外装ケース本体と、前記開口部を塞ぐようにして前記外装ケース本体に取付けられるカバー体と、を備えており、前記外装ケースの前記構成部品は、前記外装ケース本体または前記カバー体である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記印刷工程においては、熱硬化性樹脂を含む印刷用インクを利用して前記印刷層を設け、前記プレス工程において前記金属板を加熱するための熱を利用し、前記印刷層を熱硬化させる。
【0012】
このような構成によれば、金属板の延性をよくするための加熱時の熱を利用して、印刷層を熱硬化(乾燥固化)させることができるため、合理的である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記印刷工程においては、前記印刷用インクとして、前記熱硬化性樹脂に加え、紫外線硬化樹脂をさらに含む印刷用インクを利用し、前記金属板に前記印刷層を設けている過程において、前記印刷層を紫外線照射によって硬化させる。
【0014】
このような構成によれば、印刷層中の熱硬化性樹脂を熱硬化させる迄は、印刷層を紫外線硬化樹脂を利用して予備的に硬化させておくことが可能であり、印刷層を適切に保護することができる。また、印刷を進めていく際に、紫外線照射によって硬化した印刷層の上あるいは横に、別の新たな印刷層を接触して設けることが可能となり、いわゆる印刷滲みの現象が発生することを抑制することもできる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記印刷工程において、印刷用インクとして、乾燥固化後にゴム性を有するゴム系塗料を用いる。
【0016】
このような構成によれば、印刷層を延性に優れたものとし、プレス加工に起因して印刷層にクラックが生じることを防止する上で好ましい。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記プレス工程は、前記金属板に絞り加工を施す工程を含み、前記印刷工程においては、前記絞り加工の予定領域のうち、前記金属板の板厚が他の部分よりも薄くなる部分における前記印刷層の厚みを、前記他の部分における前記印刷層の厚みよりも薄くする。
【0018】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、金属板に絞り加工を施す前に、インクジェット印刷工程を実施する場合、絞り加工の予定領域の全体のインクジェット印刷層の厚みが大きく、かつ均一であると、絞り加工を施した際に、金属板の絞り量が多くされた部分( 絞り加工部のうち、他の部分よりも板厚が薄くされる部分) において、インクジェット印刷層にクラックなどを生じる虞がある。これに対し、前記構成によれば、そのような虞を適切に回避することが可能となる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、本発明に係る製造方法によって製造される外装ケースを備えた温水ユニットの一例を示す側面図であり、(b)は、(a)に示した外装ケースの分解斜視図であり、(c)は、(b)のIc-Ic断面図である。
【
図2】
図1に示す外装ケースのカバー体の要部正面断面図であり、
図1(b)の符号IIで示す箇所の正面断面図に相当する。
【
図3】(a)~(c)は、本発明に係る製造方法の一例を示す説明図であり、
図1に示すカバー体の製造方法の一連の作業工程に相当する。
【
図4】(a)は、インクジェット印刷工程で用いられるインクジェットプリンタの一例を示す概略斜視図であり、(b)は、(a)の矢視IVbの図である。
【
図5】プレス工程で用いられるプレス装置の一例を示す要部概略断面図である。
【
図6】
図5に示すプレス装置の動作状態を示す要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
理解を容易にすべく、本実施形態の製造方法の説明に先立ち、本実施形態の製造方法により製造される温水ユニット用の外装ケースC、およびこれを備えた温水ユニットUの構成を説明する。
【0023】
図1において、温水ユニットUは、給湯装置として構成されており、外装ケースC内に、温水生成用の温水機器1が収容された構成である。温水機器1は、湯水が流通する熱交換器10、この熱交換器10内の湯水を加熱するためのバーナ11、およびこのバーナ11に燃焼用空気を供給するファン12などを備えている。
【0024】
外装ケースCは、前面に開口部20を有する矩形箱状のケース本体2と、開口部20を塞ぐカバー体3(フロントカバー体)とを備えている。カバー体3は、たとえばビスなどのネジ体9、およびこれが挿通するネジ挿通孔31,21を利用することにより、ケース本体2の前面部に着脱可能に取付けられる。
【0025】
本実施形態においては、カバー体3に、インクジェット印刷層4(網点模様で示す印刷層4a、「ABC」の文字を示す印刷層4b)が設けられており、本発明の製造方法が適用されている。インクジェット印刷層4は、本発明でいう印刷層の具体例である。
ケース本体2には、インクジェット印刷層は設けられておらず、本発明の製造方法は適用されていない。したがって、以降は、カバー体3の構成およびその製造方法をメインとして説明することとし、ケース本体2の説明は省略または簡略化する。ただし、ケース本体2の製造に際し、本発明の製造方法を適用できることは勿論である。
【0026】
カバー体3は、カラー鋼板30(本発明でいう金属板の一例に相当する)を用いて構成されており、正面視略矩形のパネル状である。このカバー体3は、外周フランジ部32と、この外周フランジ部32に周囲が囲まれ、かつこの外周フランジ部32よりも前方(外装ケースCの手前側)に膨出した膨出部33とを備えている。外周フランジ部32は、ケース本体2の前面部のフランジ部22に当接させるための部位である。膨出部33は、外周フランジ部32からその前方に起立した起立周壁部33a、およびこの起立周壁部33aの先端部に繋がった略平板状の前面部33bを有している。前面部33bには、外装ケースC内への外気の流入を可能とする複数の給気口34、および熱交換器10による熱回収を終えた排ガスを外装ケースCの外部に排出するための排気口35が設けられている。
【0027】
カラー鋼板30は、
図1(c)および
図3のそれぞれの一部拡大断面図に示すように、メッキ鋼板30a、このメッキ鋼板30aの外面としての表面に積層された白色系(白色を含む)の表側の塗料層30b、およびメッキ鋼板30aの外面としての裏面に積層され
たサービスコートとしての裏側の塗料層30cを有する複数層構造である。カバー体3は、表面側に塗料層30bが位置し、この塗料層30b上に、インクジェット印刷層4が設けられた構成である。
【0028】
インクジェット印刷層4(4a)は、たとえばベタ塗りの印刷層であり、カバー体3の表面部の広い範囲にわたって設けられている。インクジェット印刷層4(4b)は、たとえば温水ユニットUのメーカのロゴなどの文字を表わす印刷層である。図面では、便宜的に「ABC」とされているが、これに限定されない。インクジェット印刷層4は、後述するように、インクジェットプリンタ8を用いて設けられた塗装膜である。インクジェット印刷用のインクとしては、水系顔料インク、あるいは溶剤系顔料インクを用いることが可能であるが、本実施形態においては、紫外線硬化樹脂および熱硬化性樹脂の双方を含有したものが用いられている。
【0029】
次に、前記したカバー体3の製造方法の一例について説明する。
【0030】
まず、
図3(a)に示すように、カバー体3の原材料として、平板状のカラー鋼板30を準備する。カラー鋼板30の構成は、先に説明したとおりである。
【0031】
次いで、
図3(b)に示すように、このカラー鋼板30の塗料層30bの表面上にインクジェット印刷層4を設けるインクジェット印刷工程を実施する。このインクジェット印刷工程は、たとえば
図4に示すようなインクジェットプリンタ8を用いて実施する。インクジェットプリンタ8は、カラー鋼板30を載置支持する載置台81の上側において、プリントヘッド80を互いに直交するx,y方向に移動自在としたものである。プリントヘッド80は、所定色のインクジェット塗料を微滴化してカラー鋼板30に向けて吹き付ける複数のインクジェットノズル82と、一対の紫外線光源83(83a,83b)とを備えている。
【0032】
インクジェット印刷工程においては、主走査方向としての
図4(b)のx1方向にプリントヘッド80を移動させながらインクジェット印刷を施す際に、主走査方向後側の紫外線光源83aを発光させ、インクジェット印刷がなされた直後の領域に紫外線を照射させる。インクジェット印刷層40には、紫外線硬化樹脂が含有されているため、前記した紫外線の照射によりインクジェット印刷層40を迅速に硬化(滲みなどを生じない程度の硬化)させることが可能である。このような硬化処理が完了すると、再度のインクジェット印刷を実行する。このようなインクジェット印刷と、紫外線照射による硬化処理とを繰り返せば、複数のインクジェット印刷層40を重ね塗りし、インクジェット印刷層4に適度な厚みをもたせることが可能である。インクジェット印刷を、前記したx1方向とは反対方向に進めていく際には、紫外線光源83aに代えて、紫外線光源83bを発光させることにより、前記したのと同様な作用が得られる。
【0033】
なお、インクジェット印刷層4(4a)を設ける場合、
図2に示すように、カラー鋼板30の周壁部33aの角部33a'とされる箇所は、その厚みtaを他の部分の厚みtbよりも薄くする。角部33a'は、本発明でいう「絞り加工の予定領域のうち、金属板の板厚が他の部分よりも薄くなる部分」の一例に相当する。
【0034】
カラー鋼板30への前記したインクジェット印刷を終えた後には、カラー鋼板30にプレス加工としての絞り加工を施し、
図3(c)に示すように、外周フランジ部32および膨出部33を形成する。また、これに伴い、給気口34や排気口35などを形成する孔開けプレス加工、外周フランジ部32の余分な部分を除去するトリミング加工なども行なう。このことより、前記したカバー体3を製造することができる。
【0035】
前記した絞り加工としてのプレス加工は、カラー鋼板30およびインクジェット印刷層4を、インクジェット印刷層4の熱硬化温度である120℃程度まで加熱した状態で行なう。より具体的には、前記プレス加工は、
図5に示すようなプレス装置5を用いて行なう。このプレス装置5のプレス型5a,5b(上型5a,下型5b)には、これらプレス型5a,5bを所望温度に加熱可能なヒータ50a,50bが内蔵されている。また、プレス型5a,5bを冷却するための水を通過させるための孔状の通水路51a,51b、これら通水路51a,51bに接続されている給水用配管52a,52b、および排水用配管53a,53bも設けられている。
【0036】
カラー鋼板30のプレス加工を、前記したプレス装置5を用いて実行する場合、好ましくは、カラー鋼板30を、適当な加熱装置を用いて120℃に近い温度まで加熱(予備加熱)しておく。その一方、プレス型5a,5bは、120℃程度まで加熱しておく。このような状況で、カラー鋼板30をプレス装置5にセットし、
図6に示すように、プレス型5a,5bを用いて、カラー鋼板30をプレスする。その後、プレス型5a,5bを上下に開くが、プレス型5a,5bや、プレスされたカラー鋼板30は、熱膨張しており、プレス装置5からカラー鋼板30を取り出すのに苦慮する場合がある。これに対し、通水路51a,51bに給水し、プレス型5a,5bを冷却させれば、カラー鋼板30の取り出しが容易となる。
【0037】
前記したプレス工程においては、カラー鋼板30を加熱し、その延性をよくした状態でプレス加工を施すため、カラー鋼板30の絞り寸法を大きくしつつ、その絞り箇所にクラックなどが生じないようにすることができる。また、プレス工程の実施時に、インクジェット印刷層4も加熱され、インクジェット印刷層4中の熱硬化性樹脂が熱硬化するため、インクジェット印刷層4は、先に述べた紫外線硬化に加えて、さらに硬化が進んだ状態となり、頑丈なものとすることが可能である。インクジェット印刷層4の熱硬化処理を、プレス工程時におけるカラー鋼板30の温度上昇用の熱を利用して行なっているため、合理的である。
【0038】
また、本実施形態とは異なり、たとえばインクジェット印刷層4の十分な熱硬化が完了し、インクジェット印刷層4の延性が低下した状態でプレス加工が施された場合には、インクジェット印刷層4にクラックが発生する虞がある。これに対し、本実施形態によれば、プレス加工の終了と略同時に、インクジェット印刷層4の熱硬化を完了させ得るため、そのような虞も解消することが可能である。
【0039】
図2において、カバー体3に設けられた膨出部33の起立周壁部33aの角部33a'は、絞り加工によって他の部分よりも大きく延ばされている。これに対し、インクジェット印刷層4のうち、前記した角部33a'に対応する部分は、その厚みtaが他の部分の厚みtbよりも薄くされ、クラックを生じ難くされている。したがって、前記した絞り加工によってインクジェット印刷層4にクラックが発生する虞も極力防止することが可能である。
【0040】
カバー体3は、インクジェット印刷層4を備えており、このインクジェット印刷層4の存在により、外装ケースCの全体をデザイン性に優れ、かつ見栄えのよいものとすることが可能である。また、インクジェット印刷によれば、様々な態様の印刷を高精度、迅速、かつ廉価に行なうことが可能である。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水ユニット用の外装ケースの製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。
【0042】
本発明においては、印刷用インクとして、乾燥固化後にゴム性を有するゴム系塗料を用いることも可能である。このようなゴム系塗料の具体例としては、合成ゴム系塗料(スチレンブタジエン系ゴム塗料、スチレンアクリル酸エステル系合成ゴムなど)、塩化ゴム塗料、および環化ゴム塗料などがある。ゴム系塗料を用いれば、印刷層を延性に優れたものとすることができ、絞り加工などのプレス加工に起因して印刷層にクラックを生じることを効果的に防止することが可能である。
印刷工程は、インクジェット印刷に代えて、他の方式の印刷によって実施してもよい。なお、印刷層は、文字、記号、図、または模様のいずれを表すものでもよい他、たとえば単なるベタ塗り状であってもよい。顔料を含まないクリヤ層とすることもできる。
【0043】
上述の実施形態においては、プレス装置5のヒータ50a,50bによってプレス型5a,5bが加熱されており、この熱によってカラー鋼板30が加熱されることに加え、カラー鋼板30をプレス装置5にセットする前にも予備加熱が施されているため、カラー鋼板30に加熱不足が生じないようにすることが可能である。ただし、これに限定されず、たとえばプレス装置5のヒータ50a,50bのみによってカラー鋼板30を加熱する構成、あるいはプレス装置5にはヒータ50a,50bを設けることなく、カラー鋼板30をプレス装置5にセットする前のみに適当な加熱手段を用いて加熱するだけであってもよい。カラー鋼板30(金属板)の加熱手段としては、様々な手段を用いることが可能である。
【0044】
本発明でいう温水ユニットは、給湯装置など、温水生成用の温水機器を外装ケース内に収容したものに代えて、貯湯タンクなどの温水貯留用の温水機器が外装ケース内に収容された貯湯タンクユニットなどとして構成することもできる。したがって、外装ケースとしても、前面開口状のケース本体と、その前面開口部を塞ぐカバー体とを組み合わせたものに限定されない。
外装ケースの素材として、金属板が用いられるが、この金属板としては、市販されているカラー鋼板とは異なるものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
U 温水ユニット
C 外装ケース
1 温水機器
2 ケース本体
3 カバー体
30 カラー鋼板(金属板)
4 インクジェット印刷層