(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098719
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
F23N5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212284
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山西 健太
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 久貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 和裕
(57)【要約】
【課題】燃焼部の故障予兆の誤検知を防ぐと共に、故障する前に故障予兆を検知して点検を促すことができる給湯装置を提供すること。
【解決手段】燃焼部と燃焼ファンと熱交換部と、給水部と出湯部と、燃焼部で発生した燃焼熱によって熱交換部で給水部から供給される湯水を加熱して出湯部に出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置において、燃焼部は、加熱運転の開始時に点火される点火領域と点火領域に隣接する火移り領域を含む複数の燃焼領域に区分されると共に、必要な燃焼量に応じて燃焼させる燃焼領域が変更されるように構成され、火炎を検知する複数の火炎検知手段が、点火領域と火移り領域を含む複数の燃焼領域に対応させて設けられ、制御部は、加熱運転の開始時に点火された点火領域の火炎を対応する火炎検知手段により検知した後、火移り領域に火移りさせたときの火移り時間に基づいて燃焼部の故障予兆の検知を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給するための燃焼ファンと、熱交換部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部で発生した燃焼熱を利用する前記熱交換部によって前記給水部から供給される湯水を加熱して前記出湯部から出湯する加熱運転を制御する制御部とを備えた給湯装置において、
前記燃焼部は、前記加熱運転の開始時に点火される点火領域と前記点火領域に隣接する火移り領域を含む複数の燃焼領域に区分されると共に、必要な燃焼量に応じて燃焼させる燃焼領域が変更されるように構成され、
火炎を検知するための複数の火炎検知手段が、前記点火領域と前記火移り領域を含む複数の前記燃焼領域に対応するように設けられ、
前記制御部は、前記加熱運転の開始時に点火された前記点火領域の火炎を対応する前記火炎検知手段により検知した後、前記火移り領域に火移りさせたときの火移り時間に基づいて前記燃焼部の故障予兆の検知を行うことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記火移り時間の設置当初の初期データを記憶しておき、現在の火移り時間と前記初期データとを比較することによって前記故障予兆の検知を行うことを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃焼部が閉塞故障発生と判定される火移り時間を故障基準値として記憶しておき、現在の火移り時間が前記故障基準値を超えた場合には、前記燃焼部に閉塞故障が発生していると判定して前記燃焼部の閉塞故障を報知することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼式の給湯装置に関し、特に燃焼部が故障する前にその予兆を検知するように構成された給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1の給湯装置のように、燃焼部に点火する際に要する点火時間によって、例えば燃焼部の火炎孔の閉塞等、燃焼部の劣化による故障予兆を検知する技術が知られている。劣化の進行具合によって給湯装置の使用可能な期間(寿命)を予測するので、部品交換、給湯装置買い替えなどの対応策を検討するのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃焼部の点火時間は、例えば低温のときには点火装置の能力が低下しがちであるため、長くなる傾向がある。また、点火時には燃料ガスと空気の混合気に着火し易くするために燃焼ファンの送風量を少なくしているので、強風のときには排気口に吹き込んで逆流する外気の影響を受けて、点火時間が長くなり易い。このように、点火時間は外部からの外乱要因によって変動し易いので、故障予兆を誤検知する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、燃焼部の故障予兆の誤検知を防ぐと共に、故障する前に故障予兆を検知して点検を促すことができる給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の給湯装置は、燃焼部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給するための燃焼ファンと、熱交換部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部で発生した燃焼熱を利用する前記熱交換部によって前記給水部から供給される湯水を加熱して前記出湯部から出湯する加熱運転を制御する制御部とを備えた給湯装置において、前記燃焼部は、前記加熱運転の開始時に点火される点火領域と前記点火領域に隣接する火移り領域を含む複数の燃焼領域に区分されると共に、必要な燃焼量に応じて燃焼させる燃焼領域が変更されるように構成され、火炎を検知するための複数の火炎検知手段が、前記点火領域と前記火移り領域を含む複数の前記燃焼領域に対応するように設けられ、前記制御部は、前記加熱運転の開始時に点火された前記点火領域の火炎を対応する前記火炎検知手段により検知した後、前記火移り領域に火移りさせたときの火移り時間に基づいて前記燃焼部の故障予兆の検知を行うことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、加熱運転時に燃焼部の点火領域に点火して燃焼させた後、点火領域に隣接する火移り領域に燃焼領域を拡大するときの火移り時間に基づいて、燃焼部の故障予兆の検知を行う。従って、点火装置の影響、強風の影響を受けないようにして、外乱に起因する故障予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0008】
請求項2の発明の給湯装置は、請求項1の発明において、前記制御部は、前記火移り時間の設置当初の初期データを記憶しておき、現在の火移り時間と前記初期データとを比較することによって前記故障予兆の検知を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、給湯装置の設置当初の初期データとの比較によって燃焼部の故障予兆の検知を行うので、燃焼部の経年劣化による故障予兆を検知することができる。それ故、燃焼部の故障によって給湯装置を作動させることができなくなる前に、点検を促すことができる。
【0009】
請求項3の発明の給湯装置は、請求項1又は2の発明において、前記制御部は、前記燃焼部が閉塞故障発生と判定される火移り時間を故障基準値として記憶しておき、現在の火移り時間が前記故障基準値を超えた場合には、前記燃焼部に閉塞故障が発生していると判定して前記燃焼部の閉塞故障を報知することを特徴としている。
上記構成によれば、現在の火移り時間と燃焼部が閉塞故障発生と判定される故障基準値との比較に基づいて燃焼部の閉塞故障の判定を行う。それ故、外乱に起因する燃焼部の故障の誤判定を防ぐと共に、燃焼部の閉塞故障発生と判定した場合には燃焼部の閉塞故障を報知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の給湯装置によれば、外乱に起因する燃焼部の閉塞故障予兆の誤検知を防ぎ、故障する前に故障予兆を検知して点検を促す報知をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る燃焼式の給湯装置の説明図である。
【
図2】給湯装置の制御部の構成と通信経路の説明図である。
【
図4】実施例に係る燃焼部故障予兆検知制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0013】
燃焼式の給湯装置1は、通常、屋外に設置される。給湯装置1は、
図1に示すように、燃焼部2と熱交換部3と給水部4と出湯部5を有し、燃焼部2で発生させた燃焼熱を利用して熱交換部3において給水部4から供給される上水を加熱して出湯部5に出湯する加熱運転を行うように構成されている。燃焼部2には、燃料ガス(天然ガス又はプロパンガス)を供給するための燃料供給部6が接続されている。
【0014】
燃焼部2の近傍には、この燃焼部2に燃焼用空気を供給すると共に、燃焼によって発生した燃焼熱の媒体である燃焼ガスを熱交換部3に送り込んで排気口7から外部に排気させるために、燃焼ファン8が装備されている。燃焼部2は、燃料供給部6から供給される燃料ガスと燃焼用空気を混合して燃焼させる複数の燃焼領域として、例えば第1~第4燃焼領域2a~2dに区分され、必要熱量を発生させるための必要燃焼量に応じて燃焼させる領域が変更される。
【0015】
燃料供給部6は、第1~第4燃焼領域2a~2dに対応する第1~第4ガス電磁弁6a~6dと、燃焼部2に供給する燃料流量を調整する燃料流量調整弁6eを有する。燃料供給部6は、燃料流量を調整すると共に、これら第1~第4燃焼領域2a~2dに対して燃料ガスの供給/停止を個別に切り替え可能に構成されている。
【0016】
熱交換部3は、フィンアンドチューブ型の第1熱交換器3aと、複数の湯水通路で構成された第2熱交換器3bを有する。第1熱交換器3aは、燃焼直後の高温の燃焼ガスの顕熱を回収して湯水を加熱する。第2熱交換器3bは、顕熱が回収されて温度が下がった燃焼ガス(燃焼排気)の潜熱を回収して上水を加熱する。
【0017】
この第2熱交換器3bでは、燃焼ガスに含まれる水分が凝縮して凝縮水が生じる。この凝縮水は、燃焼ガスの成分を含んで強い酸性になっている。それ故、そのまま排水することは不適切なので、中和剤として例えば炭酸カルシウム粒が収容された中和槽9aに導入され、中和されてから排水される。第2熱交換器3bで潜熱が回収されて温度が下がった燃焼ガスは、排気口7から外部に排気される。
【0018】
中和槽9aには、第2熱交換器3bの下側に配設されたドレンパン3cに落下した凝縮水を中和槽9aに導く導入通路9bと、中和した凝縮水を給湯装置1の外部に排水する排水通路9cが接続されて中和部9が形成されている。この中和槽9aの上端部には、凝縮水の水位(所定水位)を検知する水位検知手段として1対の電極棒9dが装備されている。1対の電極棒9dの間に電圧を印加しておき、所定水位になって凝縮水に触れた1対の電極棒9dの間に凝縮水を介して電流が流れることにより、所定水位が検知される。
【0019】
給水部4は、上水源から供給される上水を第2熱交換器3bに供給する給水通路4aと、給水通路4aから分岐され且つ流量調整弁10を備えた給水分岐通路4bを有する。第2熱交換器3bで加熱された湯水は、第1熱交換器3aに導入されてさらに高温に加熱される。第1熱交換器3aで加熱された湯水は出湯通路5aに供給される。この出湯通路5aに給水分岐通路4bが接続されて形成された出湯部5において、加熱された湯水と上水が混合されて温度調整され、給湯先の例えば給湯栓11に給湯される。
【0020】
燃焼部2の第1燃焼領域2aは、加熱運転を開始したときに点火して最初に燃焼させる点火領域である。この第1燃焼領域2aに対応する位置に、放電によって火花を発生させる点火装置14と、点火確認のために第1燃焼領域2aの火炎を検知する火炎検知手段として第1フレームロッド15aが配設されている。
【0021】
第1燃焼領域2aに隣接させた第2燃焼領域2bは、燃焼量を増加させて燃焼熱の発生を増加させるために、第1燃焼領域2aから最初に燃焼領域を拡大させる火移り領域である。この第2燃焼領域2bに対応する位置に、第2燃焼領域2bの火炎を検知する火炎検知手段として第2フレームロッド15bが配設されている。第3、第4燃焼領域2c,2dにも燃焼領域を拡大させることによって、燃焼量を増加させることができる。尚、第3、第4燃焼領域2c,2dの火炎を検知する火炎検知手段として、第3、第4燃焼領域2c,2dに対応するフレームロッドが配設されていてもよい。
【0022】
給水通路4aには、熱交換部3に供給される上水の給水流量を検知する給水流量センサ4cと、給水温度を検知する給水温度センサ4dが配設されている。出湯通路5aには熱交換部3で加熱された湯水の出湯温度を検知する出湯温度センサ5bが配設されている。この出湯通路5aの給水分岐通路4bとの接続部よりも下流側には、上水と混合されて温度が調整された湯水の給湯温度を検知するための給湯温度センサ5cが配設されている。
【0023】
給湯装置1は、給水流量と給水温度と出湯温度に基づいて給湯設定温度の給湯を行うために、加熱運転を制御する制御部16を備えている。給湯設定温度は、制御部16に接続された操作端末17の操作によって設定される。加熱運転において、制御部16は、例えば給湯設定温度と給水流量と給水温度に基づいて必要な燃焼量(必要熱量)を算出する。そして制御部16は、必要熱量を発生させるために、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量を設定する。また、制御部16は、給湯温度が給湯設定温度に近づくように流量調整弁10の開度を調整して、上水と加熱された湯水の混合比率を調整する。
【0024】
図2に示すように、制御部16は、各種制御プログラムを実行する演算部16aと、各種制御プログラム、制御パラメータ等を記憶しておく記憶部16bと、通信部16cを有する。演算部16aは、給湯装置1の内蔵機器及び操作端末17と通信する通信部16cを介して流量調整弁10及び燃料供給部6の弁類と、燃焼ファン8を制御すると共に、給水温度センサ4d等のセンサ類の検知信号、操作端末17の操作内容を受信する。
【0025】
操作端末17は、例えばホームネットワーク構築機能を備えた通信ゲートウェイ18を介して外部の通信網19(インターネット)に接続されている。この通信網19には、給湯装置1を含めて現在設置されている給湯装置及び他の機器に関する情報を管理するために、給湯装置1の施工、保守を行うサービスショップ又は製造メーカが設置した管理サーバ20が接続されている。これにより、制御部16は管理サーバ20と通信が可能となっている。尚、通信部16c又は操作端末17が通信網19に直接接続されていてもよい。
【0026】
給湯使用開始によって、給水流量センサ4cにより検知される給水流量が所定の最低流量以上になると、加熱運転が開始される。
図3に示すように、加熱運転は、プリパージ工程と点火工程と燃焼工程とポストパージ工程に分けられている。プリパージ工程では、燃焼ファン8の目標回転数が掃気回転数(例えば3000rpm)に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数で所定のプリパージ時間(例えば5秒間)駆動される。これにより、燃焼部2と熱交換部3に滞留している空気が排気口7から排気されると共に、停止していた燃焼ファン8の回転数が掃気回転数程度まで増加する。
【0027】
次に点火工程に移行して、第1燃焼領域2a(点火領域)に対応する第1ガス電磁弁12aが開かれ、目標回転数が点火回転数(例えば2500rpm)に設定され、燃焼ファン8が点火回転数で駆動される。そして、第1燃焼領域2aに点火するために点火装置14が駆動される。第1燃焼領域2aの火炎が第1フレームロッド15aによって検知(点火確認)されると、燃焼工程に移行する。
【0028】
次に、燃焼工程において、算出した必要熱量を供給可能なように、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量が設定される。そして、燃焼ファン8が目標回転数で駆動されると共に、燃焼させる燃焼領域に対応する燃料ガス電磁弁が開かれて設定した燃料流量で燃料が供給され、必要熱量を発生させて給湯設定温度の給湯が行われる。
【0029】
給湯使用終了により給水流量が所定の最低流量未満になると、ポストパージ工程に移行する。ポストパージ工程は、開いているガス電磁弁が全て閉じられて燃焼部2の燃焼が停止され、目標回転数が掃気回転数に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数でポストパージ時間(例えば10秒)駆動される。これにより、燃焼ガスが燃焼部2と熱交換部3に残留しないように排気される。最後に燃焼ファン8が停止されて、加熱運転が終了する。
【0030】
給湯装置1の設置時には、給湯装置1が正常に作動することを確認するために試運転を行う。制御部16は、この試運転時の加熱運転データを設置当初の初期データとして記憶部16b又は管理サーバ20の記憶領域に記憶しておく。
【0031】
加熱運転において、例えば点火工程における点火リトライ回数(点火時間)、燃焼工程における火移り時間は、経年劣化によって徐々に増加する傾向がある。そして、例えば火移り時間が、制御部16に記憶されている燃焼部2の閉塞故障発生と判定される故障基準値に達すると、制御部16が安全のために加熱運転を禁止する。そして制御部16は、例えば操作端末17によって燃焼部2の故障発生をユーザに報知すると共に、管理サーバ20を介して例えばサービスショップに燃焼部2の故障発生を報知する。この故障発生を知ったユーザ又はサービスショップは、点検、修理を手配する。
【0032】
燃焼部2の故障発生を報知するだけでは、故障発生から点検、修理が終わるまで給湯装置1を使用できず不便である。そのため、制御部16は、故障に至る前に燃焼部2の故障予兆を検知し、管理サーバ20を介して故障の予兆を検知したことをサービスショップに報知して点検を促す。この燃焼部2の故障予兆検知について、制御部16による
図4の燃焼部故障予兆検知制御のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0033】
加熱運転開始によりプリパージ工程で燃焼部2、熱交換部3の滞留していた空気が排気されて新鮮な空気が導入され、点火工程に移行すると、燃焼部故障予兆検知制御が開始される。S1において、点火装置14による点火動作を開始してS2に進む。
【0034】
次にS2において、第1燃焼領域2a(点火領域)の火炎を検知したか否か判定する。この火炎の検知は、所定時間(例えば0.5秒)毎に、火炎を介して第1フレームロッド15aを流れる電流を検知することによって行われる。点火が成功して火炎を検知でき、S2の判定がYesの場合は、S3に進む。そしてS3において、点火動作を終了し、点火非検知回数をゼロにリセットして燃焼工程に移行すると共に、S4に進む。点火非検知回数は、今回の加熱運転においてS2における火炎の非検知回数である。
【0035】
S4において、算出した必要熱量を供給可能な燃焼量となるように、燃焼ファン8の回転数を増加させると共に、第2燃焼領域2b(火移り領域)の第2ガス電磁弁6bを開けて、第1燃焼領域2aから第2燃焼領域2bに火移りさせて、S5に進む。そしてS5において、第2燃焼領域2bの火炎を検知したか否か判定する。この火炎の検知は、所定時間(例えば0.5秒)毎に、火炎を介して第2フレームロッド15bを流れる電流を検知することによって行われる。火移りが成功して火炎を検知し、S5の判定がYesの場合はS6に進む。S5の判定がNoの場合には、S10に進む。
【0036】
S6において、火移り非検知回数をゼロにリセットしてS7に進む。火移り非検知回数は、今回の加熱運転のS5における第2燃焼領域2bの火炎が検知されなかった回数である。
【0037】
S7において、第1燃焼領域2aから第2燃焼領域2bへの火移り時間を取得してS8に進む。火移り時間は、例えば第1燃焼領域2aの火炎確認後に、第2ガス電磁弁12bを開けてから第2燃焼領域2bの火炎確認までに要した時間である。時間を計測して火移り時間を取得してもよく、火炎検知の所定時間と火移り非検知回数に基づいて火移り時間を取得してもよい。
【0038】
S8において、S7で取得した火移り時間と制御部16又は管理サーバ20が記憶している初期データの火移り時間とを比較して、今回の火移り時間が初期データのX倍(例えば7倍)を超えたか否か判定する。火移り時間が増加し、S8の判定がYesの場合にはS9に進む。そしてS9において、燃焼部2の故障予兆を検知したことを報知して、加熱運転を継続したまま燃焼部故障予兆報知制御を終了する。S8の判定がNoの場合は、燃焼部2の故障予兆を検知しなかったとして、加熱運転を継続したまま燃焼部故障予兆報知制御を終了する。
【0039】
S5の判定がNoの場合にはS10において、火移り非検知回数を1増加させてS11に進み、S11において火移り非検知回数が火移り非検知基準回数を超えたか否か判定する。燃焼部2の閉塞故障発生と判定される故障基準値が例えば5秒に設定されている場合に火移り非検知基準回数が10回に設定され、火炎検知の所定時間と火移り非検知回数に基づいて火移り時間が故障基準値を超えた場合に燃焼部2の閉塞故障発生と判定される。計測した火移り時間と故障基準値に基づいて判定することもできる。
【0040】
S11の判定がNoの場合はS5に戻る。S11の判定がYesの場合はS12に進み、S12において燃焼部2に故障が発生したことを報知し、加熱運転を終了するためにポストパージ工程に移行すると共に燃焼部故障予兆制御を終了する。
【0041】
一方、点火工程において第1燃焼領域2aの火炎を確認できず、S2の判定がNoの場合にはS13に進み、S13において、点火非検知回数を1増加させてS14に進む。そしてS14において、点火非検知回数が点火非検知基準回数を超えたか否か判定する。基準点火非検知回数は、例えば10回に予め設定されている。
【0042】
S14の判定がNoの場合はS2に戻る。S14の判定がYesの場合はS15に進み、S15において点火装置14の故障と燃焼部2の閉塞故障の発生を報知して、加熱運転を終了するためにポストパージ工程に移行すると共に燃焼部故障予兆検知制御を終了する。点火の不具合原因が、点火装置14にあるのか燃焼部2にあるのか不明なので、点検時に原因を特定して修理することになる。
【0043】
上記給湯装置1の作用、効果について説明する。
給湯装置1の制御部16は、加熱運転時に燃焼部2の第1燃焼領域2a(点火領域)に点火して燃焼させた後、第1燃焼領域2aに隣接する第2燃焼領域2b(火移り領域)に燃焼領域を拡大するときの火移り時間に基づいて、燃焼部2の故障予兆の検知を行う。従って、点火装置14の影響、強風の影響を受けないようにして、外乱に起因する故障予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0044】
また、給湯装置1の設置当初の初期データとの比較によって燃焼部2の故障予兆の検知を行うので、燃焼部2の経年劣化による故障予兆を検知することができる。それ故、燃焼部2の故障によって給湯装置1を作動させることができなくなる前に、点検を促すことができる。
【0045】
現在の火移り時間と燃焼部2が閉塞故障発生と判定される故障基準値との比較に基づいて燃焼部2の閉塞故障の判定を行う。それ故、外乱に起因する燃焼部2の閉塞故障の誤判定を防ぐと共に、燃焼部2の閉塞故障発生と判定した場合には安全のために燃焼部2の閉塞故障を報知することができる。
【0046】
例えば、燃焼部2の火炎孔に少しずつ煤が堆積して閉塞することが火移り時間の増加の原因である場合には、煤の堆積が進んで火炎孔の開口径が小さくなる程この開口径が小さくなるスピードが増加して、火移り時間の増加率が大きくなる。それ故、例えば前回と今回の火移り時間を比較して、この火移り時間の増加率に基づいて故障予兆を検出することもできる。
【0047】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。