(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098722
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20220627BHJP
H02K 5/10 20060101ALN20220627BHJP
H02K 5/22 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
F04B39/00 106A
H02K5/10 Z
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212287
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】江田 秋人
(72)【発明者】
【氏名】釼菱 壮司
【テーマコード(参考)】
3H003
5H605
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB01
3H003AC01
3H003BC00
3H003CD01
3H003CF02
5H605AA02
5H605BB07
5H605CC06
5H605DD16
5H605DD32
5H605EC01
5H605EC08
5H605EC14
5H605EC18
(57)【要約】
【課題】水没した場合にも水が侵入することのないような簡単な構造の端子カバーを設けたコンプレッサを提供する。
【解決手段】ケーシング(2)を有し、そのケーシング(2)の上部に電線接続用の端子部(3)を有するコンプレッサ(1)において、端子部(3)を覆う端子カバー(4)を備え、この端子カバー(4)は電線取り出し用の開口部(7)を有し、開口部(7)以外の部位において端子カバー(4)とケーシング(2)の表面の間をシールするシール部材(8)が設けられ、開口部(7)の開口端(7c)が端子部(3)の最下部よりも下方に形成され、端子カバー(4)は、ケーシング(2)の表面に対してシール部材(8)によりシールされるシール部(9)を備え、開口部(7)はシール部(9)よりも下方へケーシング(2)の表面に沿って延びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを有し、そのケーシングの上部に電線接続用の端子部を有するコンプレッサにおいて、
前記端子部を覆う端子カバーを備え、この端子カバーは電線取り出し用の開口部を有し、
前記開口部以外の部位において前記端子カバーと前記ケーシングの表面の間をシールするシール部材が設けられ、
前記開口部の開口端が前記端子部の最下部よりも下方に形成されたことを特徴とするコンプレッサ。
【請求項2】
前記端子カバーは、前記ケーシングの表面に対して前記シール部材によりシールされるシール部を備え、前記開口部は前記シール部よりも下方へケーシングの表面に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサに関し、特に端子カバーの構造を改良したものに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ熱源機やその他の機器に装備されるコンプレッサでは、通常、コンプレッサのケーシングの上部に電線接続用の端子部を有すると共に、端子部を覆う端子カバーが設けられている。
【0003】
特許文献1のコンプレッサにおいては、コンプレッサのケーシングの頂部に端子部を覆う端子カバーを設け、端子カバーとケーシングとの間にシール部材を設け、端子カバーの電線取出し部からグロメットを介して電線を取り出し、端子カバーの頂部壁には内部と外部との間の気圧調節用(呼吸用)の多孔質膜を設けている。このように、端子カバーを密閉構造にしているため、仮に水没した場合にも、端子カバー内に水が侵入することがない。
【0004】
他方、本願の出願人が採用しているコンプレッサでは、
図5に示すように、コンプレッサ21のケーシング22の上端に設けられた端子部23を覆う合成樹脂製の端子カバー24が設けられ、この端子カバー24の側部には電線25を導出する為の開口部27が設けられ、この開口部27の下端は端子部23の最下部とほぼ同レベルの位置に設けられている。電線25は開口部27から導出され、端子カバー24は水密構造に構成されていない。これは、端子カバー24内に結露しないように外気との換気を促進するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコンプレッサの端子カバーは水密構造になっているため、洪水等の際にコンプレッサが水没しても、端子カバー内に水が侵入する虞はない。また、多孔質膜を設けているため端子カバー内に結露する虞もない。しかし、上記のような水密構造を採用すると、構造が複雑化し、製作費が高価になる。
【0007】
しかし、本願の出願人が採用している
図5に示すコンプレッサでは、端子カバーが水密構造になっていないため、洪水等の際にコンプレッサが水没すると、端子カバー内に水かが侵入して電気系統がショートしたり、漏電したりしてコンプレッサ駆動用の電動モータが故障するため、コンプレッサを稼働できなくなる。
【0008】
本発明の目的は、水没した場合にも水が侵入することのないような簡単な構造の端子カバーを設けたコンプレッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のコンプレッサは、ケーシングを有し、そのケーシングの上部に電線接続用の端子部を有するコンプレッサにおいて、前記端子部を覆う端子カバーを備え、この端子カバーは電線取り出し用の開口部を有し、前記開口部以外の部位において前記端子カバーと前記ケーシングの表面の間をシールするシール部材が設けられ、前記開口部の開口端が前記端子部の最下部よりも下方に形成されたことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、端子カバーは電線取り出し用の開口部を有し、開口部以外の部位において端子カバーとケーシングの表面の間をシールするシール部材が設けられ、開口部の開口端が端子部の最下部よりも下方に形成されているため、コンプレッサが水没した場合、開口部の開口端が端子部の最下部よりも下方において水封状態となって、端子カバー内の空気が外部へ流出しないため、端子部が濡れずにドライ状態に維持される。
それ故、端子部が水没してコンプレッサが故障するのを簡単な構造で確実に防止することができる。また、コンプレッサが水没していない通常時には、端子カバー内の空間は開口部を介して外界と連通しているため結露するのを防ぐことができる。
【0011】
請求項2のコンプレッサは、請求項1の発明において、前記端子カバーは、前記ケーシングの表面に対して前記シール部材によりシールされるシール部を備え、前記開口部は前記シール部よりも下方へケーシングの表面に沿って延びていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、端子カバーはケーシングの表面に対してシール部材によりシールされるシール部を備えているため、端子カバーのシール部とケーシング間はシール状態となる。前記開口部は前記シール部より下方へケーシングの表面に沿って延びているため、水没時に開口部が水封状態となり、端子カバー内に水が侵入することはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のような種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンプレッサの要部と端子カバーの断面図である。
【
図4】コンプレッサのケーシングから端子カバーを取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1はコンプレッサ1の要部(上部)と端子カバーの断面図を示す図であり、コンプレッサ1は、そのコンプレッサ本体を収容するケーシング2と、このケーシング2の頂部に設けられた電線接続用の3つの端子部3と、これら端子部3を覆う合成樹脂製の端子カバー4と、これら端子部3に接続された3本の電線5とを備えている。
【0016】
図1~
図3に示すように、端子カバー4は、長円形断面の筒状のカバー本体6と、このカバー本体6の一側部から斜め下方へ延びてケーシング2の外周面よりも外側まで延びる開口部7であって電線取り出し用の開口部7とを有する。
【0017】
開口部7は角筒状に形成されており、開口部7は、斜め下方に向って傾斜した傾斜筒部 7aと、傾斜筒部7aの端部から下方へ鉛直に短く延びる縦筒部7bとを有する。この縦筒部7bの下端には外界に開放された開口端7cであって端子部3の最下部よりも距離H(例えば20~40mm)だけ下方に形成された開口端7cが形成されている。
【0018】
開口部7のケーシング2側の内面部にはケーシング2の上端近傍部の肩部に沿うように湾曲した湾曲壁7dが形成されている。
図1~
図4に示すように、開口部7以外の部位において端子カバー4とケーシング2の表面の間をシールするシート状の合成樹脂製のシール部材8が設けられている。
端子カバー4は、ケーシング2の表面に対してシール部材8によりシールされるシール部9を備え、開口部7はシール部9よりも下方へケーシング2の表面に沿って延びている。
【0019】
端子カバー4をケーシング2に固定するため、端子カバー4のカバー本体6にはボルト挿通用筒部10が形成されている。このボルト挿通用筒部10はカバー本体6の頂部壁に一体的に接続されていて、ボルト挿通用筒部10のボルト孔10aがカバー本体6の頂部壁に開口している。
【0020】
端子カバー4を装着する場合、電線3を端子カバー4の開口部7から外部へ導出させた状態にしておき、最初にシール部材8をケーシング2の表面に位置決めしてセットし、端子カバー4のシール部9をシール部材8の上に位置決めして密着させると共にケーシング2に植設された固定ボルト11をボルト挿通用筒部10のボルト孔10aに挿通させてカバー本体6の頂部壁から上方へ突出させ、その固定ボルト11の上端部にフランジナット (図示略)を螺合して端子カバー4を下方へ締め付けることで、端子カバー4がケーシング2に固定され、シール部9がシール部材8に密着してシール状態となる。
【0021】
次に、以上説明したコンプレッサ1の作用、効果について説明する。
端子カバー4は電線取り出し用の開口部7を有し、開口部7以外の部位において端子カバー4とケーシング2の表面の間をシールするシール部材8が設けられ、開口部7の開口端7cが端子部3の最下部よりも距離Hだけ下方に形成されているため、コンプレッサ1が水没した場合、開口端7cの近傍において開口部7の一部が端子部3の最下部よりも下方において水封状態となって、端子カバー4内の空気が密封されて外部へ流出しないため、端子部3が濡れずにドライ状態に維持される。それ故、端子部3が水没してコンプレッサ1が故障するのを簡単な構造で確実に防止することができる。
【0022】
端子カバー4はケーシング2の表面に対してシール部材8によりシールされるシール部9を備えているため、端子カバー4のシール部9とケーシング2間はシール部材8によりシール状態となる。前記開口部7cはシール部9よりも下方へケーシング2の表面に沿って延びているため、水没時に開口部7の一部が水封状態となり、端子カバー4内に水が侵入することはない。
【0023】
しかも、水没してない通常状態では、開口部7を介して端子カバー4の内部空間が外界に連通しているため、端子カバー4内に結露するのを防止することができ、端子部3が結露水で濡れるのを防止することができる。
【0024】
尚、前記実施形態は一例を示すものであり、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態を部分的に変更して実施可能であり、本発明はそのような変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0025】
1 コンプレッサ
2 ケーシング
3 端子部
4 端子カバー
5 電線
7 開口部
7c 開口端
8 シール部材
9 シール部