(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099652
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】温水ユニット用の外装ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20220628BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220628BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20220628BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20220628BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20220628BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
F24H9/02 301Z
B41M5/00 100
B05D1/26 Z
B05D3/06 102Z
B05D7/02
B05D7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213548
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福井 宣広
(72)【発明者】
【氏名】田合 貴大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘士
【テーマコード(参考)】
2H186
3L037
4D075
【Fターム(参考)】
2H186AA17
2H186AB04
2H186BA11
2H186DA18
2H186FB34
3L037AA02
3L037AB07
4D075AC06
4D075BB46X
4D075BB65X
4D075CB38
4D075DA23
4D075DB01
4D075DB31
4D075DC19
(57)【要約】
【課題】温水ユニット用の外装ケースに設けられるインクジェット印刷層の仕上がり具合が悪化することを、簡易かつ適切に防止することが可能な温水ユニット用の外装ケースの製造方法を提供する。
【解決手段】金属板30の塗料層30bの表面上に、インクジェット印刷層4を設けるインクジェット印刷工程を有しており、金属板30は、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品を形成するための素材である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、インクジェット印刷工程を実施する前において、金属板30の塗料層30bの表面に、紫外線照射装置6を利用して紫外線を照射することにより前記表面を洗浄する紫外線洗浄工程を、有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に塗料層が設けられている金属板の前記塗料層の表面上に、インクジェット印刷層を設けるインクジェット印刷工程を有しており、
前記金属板は、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品を形成するための素材である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記インクジェット印刷工程を実施する前において、前記金属板の前記塗料層の表面に、紫外線照射装置を利用して紫外線を照射することにより前記表面を洗浄する紫外線洗浄工程を、有していることを特徴とする、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、
前記外装ケースは、少なくとも一面が開口部とされた外装ケース本体と、前記開口部を塞ぐようにして前記外装ケース本体に取付けられるカバー体と、を備えており、
前記外装ケースの前記構成部品は、前記外装ケース本体または前記カバー体である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置やコージェネレーションシステムなどの温水ユニットにおいて、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる温水ユニット用の外装ケースを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、温水ユニット用の外装ケースの具体例として、特許文献1,2に記載のものを先に提案している。
これらの文献に記載された温水ユニット用の外装ケースは、少なくとも片面に塗料層が設けられている金属板(カラー鋼板)にプレス加工を施すことにより形成されるが、このプレス加工の前に、前記金属板の塗料層に、インクジェット印刷を施し、インクジェット印刷層を設けている。インクジェット印刷層は、文字、記号、図、または模様などを表示している。
【0003】
このような構成によれば、インクジェットプリンタを用いることにより、効率よく迅速に、しかも容易に外装ケースの表面部に所望の図柄を表現し、デザイン性などを高めることが可能である。従来のスプレイ塗装などと比較すると、作業環境を良好とし、かつ生産性も大幅に向上させることが可能であり、温水ユニットの製造コストを低減する効果も得られる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、カラー鋼板などの金属板は、包装材によって包装された状態で販売されており、インクジェット印刷を施すべく包装を解いた場合に、前記金属板の塗料層に、包装材の接着に用いられていた接着剤が付着している場合がある。また、金属板の包装を解いた作業者の指の指紋跡(皮脂など)が前記塗料層に付着している場合がある。
一方、インクジェット印刷は、1回のインクジェット液滴が微量であり、1回のインクジェット印刷による印刷膜厚は、たとえば一般的なスプレイ塗装と比較するとかなり薄い。このため、前記塗料層に接着剤や作業者の指紋跡が付着していると、これらの上にインクジェット印刷を施した場合に、それら接着剤や指紋跡が付着している箇所が他の部分よりも黒ずんだ色になるなど、本来の色とは相違することとなって、インクジェット印刷層の見栄えが悪いものとなる虞がある。これでは、温水ユニットの商品価値の低下を招き、適切ではない。
前記した不具合を解消する手段としては、たとえば溶剤を併用し、塗料層の表面の汚れを布などで拭き取ることが考えられるが、その作業は容易ではない。また、そのような作業を行なうことにより、汚れを却って拡げてしまう虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-60508号公報
【特許文献2】特開2019-60509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、温水ユニット用の外装ケースに設けられるインクジェット印刷層の仕上がり具合が、その下地となる塗料層の
表面の汚れに起因して悪化することを、簡易かつ適切に防止することが可能な温水ユニット用の外装ケースの製造方法を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される温水ユニット用の外装ケースの製造方法は、少なくとも片面に塗料層が設けられている金属板の前記塗料層の表面上に、インクジェット印刷層を設けるインクジェット印刷工程を有しており、前記金属板は、温水生成用または温水貯留用の温水機器を内部に収容するのに用いられる外装ケースの構成部品を形成するための素材である、温水ユニット用の外装ケースの製造方法であって、前記インクジェット印刷工程を実施する前において、前記金属板の前記塗料層の表面に、紫外線照射装置を利用して紫外線を照射することにより前記表面を洗浄する紫外線洗浄工程を、有していることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、金属板の塗料層の表面上に存在する接着剤や指紋跡などの汚れは、紫外線洗浄により分解・除去することが可能であり、そのような汚れが除去された塗料層の表面上にインクジェット印刷層を設けることが可能である。したがって、前記汚れの存在に起因してインクジェット印刷層が見栄えの悪いものとなる虞をなくし、または少なくすることができる。紫外線洗浄においては、オゾン、さらには活性酸素を発生させ、この活性酸素が前記塗料層の表面上の汚れである有機物と結合し、前記表面から剥離させると考えられ、洗浄性能に優れる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記外装ケースは、少なくとも一面が開口部とされた外装ケース本体と、前記開口部を塞ぐようにして前記外装ケース本体に取付けられるカバー体と、を備えており、前記外装ケースの前記構成部品は、前記外装ケース本体または前記カバー体である。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明に係る製造方法によって製造される外装ケースを備えた温水ユニットの一例を示す側面図であり、(b)は、(a)に示した外装ケースの分解斜視図であり、(c)は、(b)のIc-Ic断面図である。
【
図2】(a)~(d)は、本発明に係る製造方法の一例を示す説明図であり、
図1に示すカバー体の製造方法の一連の作業工程に相当する。
【
図3】
図2(b),(c)に示す紫外線洗浄工程およびインクジェット印刷工程の例を示す要部概略斜視図である。
【
図4】
図3の矢視IVの図であって、
図3に示すインクジェットプリンタのプリントヘッドの概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
理解を容易にすべく、本実施形態の製造方法の説明に先立ち、本実施形態の製造方法により製造される温水ユニット用の外装ケースC、およびこれを備えた温水ユニットUの構成を説明する。
【0016】
図1において、温水ユニットUは、給湯装置として構成されており、外装ケースC内に、温水生成用の温水機器1が収容された構成である。温水機器1は、湯水が流通する熱交換器10、この熱交換器10内の湯水を加熱するためのバーナ11、およびこのバーナ11に燃焼用空気を供給するファン12などを備えている。
【0017】
外装ケースCは、前面に開口部20を有する矩形箱状のケース本体2と、開口部20を塞ぐカバー体3(フロントカバー体)とを備えている。カバー体3は、たとえばビスなどのネジ体9、およびこれが挿通するネジ挿通孔31,21を利用することにより、ケース本体2の前面部に着脱可能に取付けられる。
【0018】
本実施形態においては、カバー体3に、インクジェット印刷層4(網点模様で示す印刷層4a、「ABC」の文字を示す印刷層4b)が設けられており、本発明の製造方法が適用されている。ケース本体2には、インクジェット印刷層は設けられておらず、本発明の製造方法は適用されていない。したがって、以降は、カバー体3の構成およびその製造方法をメインとして説明することとし、ケース本体2の説明は省略または簡略化する。ただし、ケース本体2の製造に、本発明の製造方法を適用できることは勿論である。
【0019】
カバー体3は、カラー鋼板30(本発明でいう金属板の一例に相当する)を用いて構成されており、正面視略矩形のパネル状である。このカバー体3は、外周フランジ部32と、この外周フランジ部32に周囲が囲まれ、かつこの外周フランジ部32よりも前方(外装ケースCの手前側)に膨出した膨出部33とを備えている。外周フランジ部32は、ケース本体2の前面部のフランジ部22に当接させるための部位である。膨出部33には、外装ケースC内への外気の流入を可能とする複数の給気口34、および熱交換器10による熱回収を終えた排ガスを外装ケースCの外部に排出するための排気口35が設けられている。
【0020】
カラー鋼板30は、
図1(c)および
図2(a)に示すように、メッキ鋼板30a、このメッキ鋼板30aの外面としての表面に積層された白色系(白色を含む)の表側の塗料層30b、およびメッキ鋼板30aの外面としての裏面に積層されたサービスコートとしての裏側の塗料層30cを有する複数層構造である。カバー体3は、表面側に塗料層30bが位置し、この塗料層30b上に、インクジェット印刷層4が設けられた構成である。
【0021】
インクジェット印刷層4(4a)は、たとえばベタ塗りの印刷層であり、カバー体3の表面部の広い範囲にわたって設けられている。インクジェット印刷層4(4b)は、たとえば温水ユニットUのメーカのロゴなどの文字を表わす印刷層である。図面では、便宜的に「ABC」とされているが、これに限定されない。インクジェット印刷層4は、後述するように、インクジェットプリンタ8を用いて設けられた塗装膜である。インクジェット印刷用のインクとしては、水系顔料インク、あるいは溶剤系顔料インクを用いることが可能であるが、本実施形態においては、紫外線硬化樹脂および熱硬化性樹脂の双方を含有したものが用いられている。
【0022】
次に、前記したカバー体3の製造方法の一例について説明する。
【0023】
まず、
図2(a)に示すように、カバー体3の原材料として、平板状のカラー鋼板30を準備する。カラー鋼板30の構成は、先に説明したとおりである。
次いで、
図2(b)に示すように、このカラー鋼板30の塗料層30bの表面に紫外線を照射し、前記表面を洗浄する紫外線洗浄工程を実施する。この紫外線洗浄工程は、たとえば
図3に示すように、回転ローラ50,51間にベルト52が掛け回されて循環駆動自在とされたコンベア5上に、カラー鋼板30を投入し、かつこのカラー鋼板30を、紫外線照射装置6による紫外線照射位置に搬送することにより実施される。紫外線照射装置6
は、波長がたとえば185~254nmの紫外線を発する1または複数の紫外線光源60を備えている。
紫外線照射は、紫外線光源60に対してカラー鋼板30を相対移動させながら行なってもよいし、あるいは紫外線光源60による紫外線照射面積を大きくし、紫外線光源60に対してカラー鋼板30を停止させた状態としてカラー鋼板30に対して紫外線を一括して照射させてもよく、いずれであってもよい。
【0024】
前記した紫外線照射によれば、カラー鋼板30の塗料層30bの表面近辺において、空気中の酸素がオゾン化して活性酸素が発生する。この活性酸素は、塗料層30bの表面上の汚れ(接着剤や作業者の指紋跡など)である有機物と結合し、塗料層30bの表面から前記有機物を剥離させる洗浄作用が得られる。このような紫外線洗浄作用をより効果的に得ることを目的として、紫外線洗浄対象領域を、適当なハウジングで囲み込み、活性酸素の原料となる気体を前記ハウジング内に供給するとともに、汚れである有機物を含んだ気体を前記ハウジングの外部に排出する給排気装置を用いてもよい。さらに、カラー鋼板30の塗料層30bに対してその上方から紫外線照射を行なう際に、これと同時に、他の紫外線光源を用いることにより、塗料層30cに対してその下方から紫外線照射を行なってもよい。このような構成によれば、塗料層30cの紫外線洗浄をも同時に行なうことができるため、塗料層30c上にもインクジェット印刷を施す場合に好適である。
【0025】
前記した紫外線洗浄工程を終えた後には、カラー鋼板30を、たとえば
図3に示したコンベア5上からインクジェットプリンタ8上に移載させてから、塗料層30b上にインクジェット印刷層4を設けるインクジェット印刷工程を実施する(
図2(c)も参照)。
図3に示すように、インクジェットプリンタ8は、カラー鋼板30を載置支持する載置台81の上側において、プリントヘッド80を互いに直交するx,y方向に移動自在としたものである。プリントヘッド80は、
図4に示すように、所定色のインクジェット塗料を微滴化してカラー鋼板30に向けて吹き付ける複数のインクジェットノズル82と、一対の紫外線光源83(83a,83b)とを備えている。紫外線光源83は、先に述べた紫外線洗浄用の紫外線光源60と比較すると、小型かつ低出力のものでよい。
【0026】
インクジェット印刷工程においては、主走査方向としての
図4のx1方向にプリントヘッド80を移動させながらインクジェット印刷を施す際には、主走査方向後側の紫外線光源83aを発光させ、インクジェット印刷がなされた直後の領域に紫外線を照射させる。インクジェット印刷層4には、紫外線硬化樹脂が含有されているため、前記した紫外線の照射によりインクジェット印刷層4を迅速に硬化(滲みなどを生じない程度の硬化)させることが可能である。このような硬化処理が完了すると、再度のインクジェット印刷を実行し、このようなインクジェット印刷と硬化処理とを繰り返せば、複数のインクジェット印刷層4を重ね塗りし、インクジェット印刷層4に適度な厚みをもたせることが可能である。
インクジェット印刷を、前記したx1方向とは反対方向に進めていく際には、紫外線光源83aに代えて、紫外線光源83bを発光させることにより、前記したのと同様な作用が得られる。
【0027】
カラー鋼板30への前記したインクジェット印刷を終えた後には、カラー鋼板30を加熱して、インクジェット印刷層4を乾燥させつつ、その中に含まれている熱硬化性樹脂を硬化させる(図示略)。その後は、カラー鋼板30にプレス加工としての絞り加工を施し、
図2(d)に示すように、外周フランジ部32および膨出部33を形成する。また、これに伴い、給気口34や排気口35などを形成する孔開けプレス加工、外周フランジ部32の余分な部分を除去するトリミング加工などを行なう。
【0028】
前記したような一連の作業工程により、前記したカバー体3を適切に製造することがで
きる。ここで、カバー体3には、インクジェット印刷層4が設けられているが、その下地となる塗料層30bは、インクジェット印刷が施される前に紫外線洗浄がなされており、接着剤や指紋跡などの汚れが除去された状態にある。このため、そのような汚れの存在に起因してインクジェット印刷層4の質が低下することはなく、カバー体3を見栄えのよいものとすることが可能である。
【0029】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水ユニット用の外装ケースの製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。
【0030】
紫外線洗浄工程において用いられる紫外線の具体的な波長、強度、金属板の塗料層の表面への照射時間や照射の仕方などは限定されない。
インクジェット印刷工程は、インクジェット印刷層を設ける工程であればよく、インクジェット印刷層は、文字、記号、図、または模様のいずれかを表すものでもよい他、たとえば単なるベタ塗り状であってもよい。顔料を含まないクリヤ層とすることもできる。
本発明でいう温水ユニットは、給湯装置など、温水生成用の温水機器を外装ケース内に収容したものに代えて、貯湯タンクなどの温水貯留用の温水機器が外装ケース内に収容された貯湯タンクユニットなどとして構成することもできる。したがって、外装ケースとしても、前面開口状のケース本体と、その前面開口部を塞ぐカバー体とを組み合わせたものに限定されない。
外装ケースの素材としては、塗料層を有する金属板が用いられるが、この金属板としては、市販されているカラー鋼板とは異なるものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
U 温水ユニット
C 外装ケース
1 温水機器
2 ケース本体
3 カバー体
30 カラー鋼板(金属板)
30b 塗料層
4 インクジェット印刷層
6 紫外線照射装置