(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100854
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20230711BHJP
G01N 21/359 20140101ALN20230711BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/359
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076671
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2021063471の分割
【原出願日】2012-08-28
(31)【優先権主張番号】61/528,658
(32)【優先日】2011-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514049623
【氏名又は名称】オートモーティブ コアリション フォー トラフィック セーフティ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ベル スティーグ
(72)【発明者】
【氏名】トレント リダー
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド スティーブン セック
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ケイ クローズ
(57)【要約】
【課題】自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定するためのシステムおよび方法の提供。
【解決手段】自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定し、被分析物の測定値に基づいて自動車を制御するためのシステム。少なくとも1つの固体光源は、異なる光の波長を発するように構成される。サンプルデバイスは、少なくとも1つの固体光源によって発せられる光を自動車運転者の組織に導入するように構成される。1つ以上の光検出は、自動車運転者の組織によって吸収されない光の一部分を検出するように構成される。コントローラは、1つ以上の光検出器によって検出される光に基づいて、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値を計算し、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値が所定の値を超えるかどうかを判定し、自動車を制御するように構成されるデバイスに信号を提供するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム、方法、など。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する特許出願の引用)
本願は、2011年8月29日に出願された、米国仮出願第61/528,658号からの優先権を主張するものであり、該米国仮出願の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、概して、自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本願は、多変量分析と組み合わせて非侵襲技法を利用して、被分析物、例えば、アルコール、アルコール副生成物、アルコール付加物、または乱用物質の存在または濃度を測定するための測定定量的分光システムに関する。
【背景技術】
【0003】
アルコール測定のための現在の実践は、血液測定または呼気検査のいずれか一方に基づく。血液測定は、アルコール依存症レベルを判定するための判断基準を定義する。しかしながら、血液測定は、静脈または毛細血管サンプルのいずれか一方を必要とし、健康リスクを最小限化するために有意な取扱の注意を伴う。いったん抽出されると、血液サンプルは、適正に標識され、臨床検査室または他の好適な場所に輸送されなければならず、そこで、血中アルコールレベルを測定するために、臨床ガスクロマトグラフが典型的に使用される。手技の侵襲性および関与するサンプル取扱量により、血中アルコール測定は、通常、交通事故、容疑者がこの種類の検査を要求する違反、および負傷を伴う事故等の危機的状況に限定される。
【0004】
低侵襲性であるため、現場では、より一般的に、呼気検査に遭遇する。呼気検査では、対象は、肺内深くの肺胞を起源とする安定した呼吸流を達成するように十分な時間および量で空気を機器の中へ吐き出さなければならない。次いで、本デバイスは、呼気・血液分配係数を通して血中アルコールに関係する、空気中のアルコール含有量を測定する。米国で使用されている呼気・血液分配係数は、2100(mg EtOH/dL空気あたりのmg EtOH/dL血液の暗黙的単位)であり、他の国では1900から2400の間で異なる。分配係数の変動性は、極めて対象依存性であるという事実によるものである。換言すれば、各対象は、自分の生理学に依存する1900から2400の範囲内の分配係数を有するであろう。各対象の分配係数の知識が現場用途で入手可能ではないため、各国が、全ての測定に全体的に適用される単一の分配係数値を仮定する。米国では、飲酒運転の事件事例の被告は、しばしば、起訴を妨げる議論として、全体的に適用された分配係数を使用する。
【0005】
呼気測定は、付加的な制限を有する。第1に、「口腔アルコール」の存在が、呼気中アルコール測定を偽って上昇させ得る。これは、口腔アルコールが存在しないことを確実にするために、測定を行う前に15分の待機時間を余儀なくさせる。類似の理由で、げっぷまたは嘔吐することが観察される個人のために、15分の遅延が必要とされる。機器が周囲空気およびゼロアルコールレベルとの平衡状態に戻ることを可能にするように、しばしば、10分以上の遅延が呼気測定の間で必要とされる。加えて、呼気中アルコール測定の精度は、多数の生理学的および環境因子に敏感である。
【0006】
複数の政府機関および社会一般が、血中および呼気中アルコール測定の非侵襲代替案を求めている。定量的分光法は、現在の測定方法論の制限に敏感ではない、完全非侵襲アルコール測定の可能性を提供する。定量的分光法による生物学的属性の非侵襲判定は、極めて望ましいことが分かっているが、達成することが非常に困難である。目的とする属性は、実施例として、被分析物の存在、被分析物濃度(例えば、アルコール濃度)、被分析物濃度の変化方向、被分析物濃度の変化率、疾患の存在(例えば、アルコール依存症)、病状、ならびにそれらの組み合わせおよびサブセットを含む。定量的分光法を介した非侵襲測定は、無痛であり、身体からの流体採取を必要とせず、汚染または感染症のリスクがほとんどなく、いかなる有害廃棄物も生成せず、短い測定時間を有することができるため、望ましい。
【0007】
いくつかのシステムが、生物学的組織の属性の非侵襲判定のために提案されてきた。これらのシステムは、偏光分析法、中赤外分光法、ラマン分光法、色素測定法、蛍光分光法、核磁気共鳴分光法、電波分光法、超音波、経皮的測定、光音響分光法、および近赤外分光法を組み込む、技術を含んでいた。しかしながら、これらのシステムは、直接かつ侵襲性の測定に取って代わっていない。
【0008】
実施例として、Robinsonらが、特許文献1で、既知の特徴的な値の一式の多種多様の生体サンプルから実験的に導出される多変数モデルと併せて、赤外分光法を使用して、生体サンプルにおいて未知の値の特性を測定するための方法および装置を開示している。上述の特性は、概して、アルコール等の被分析物の濃度であるが、サンプルの任意の化学的または物理的性質でもあり得る。Robinsonらの方法は、較正および予測ステップの両方を含む、2ステッププロセスを伴う。
【0009】
較正ステップでは、既知の特性値を伴うサンプルを含む、種々の成分および被分析物の関数として、赤外線放射の少なくともいくつかの波長の減衰があるように、赤外光が、既知の特性値の較正サンプルに結合される。赤外光は、サンプルに光を通過させることによって、またはサンプルから光を反射することによって、サンプルに結合される。サンプルによる赤外光の吸収は、光の波長の関数である、光の強度変動を引き起こす。最低限のいくつかの波長における結果として生じる強度変動は、既知の特性値の一式の較正サンプルについて測定される。次いで、元の、または変換された強度変動は、多変量較正モデルを取得するために多変量アルゴリズムを使用して、較正サンプルの既知の特性に実験的に関係付けられる。モデルは、好ましくは、対象変動性、機器変動性、および環境変動性を考慮する。
【0010】
予測ステップでは、赤外光が、未知の特性値のサンプルに結合され、多変量較正モデルが、この未知のサンプルから測定される適切な光の波長の、元の、または変換された強度変動に適用される。予測ステップの結果は、未知のサンプルの特性の推定値である。Robinsonらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0011】
較正モデルを構築し、被分析物および/または組織の属性の予測にこのモデルを使用する、さらなる方法が、「Method and Apparatus for Tailoring Spectrographic Calibration Models」と題された、Thomasらに対する同一出願人による特許文献2で開示されており、その開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0012】
特許文献3では、Robinsonは、非侵襲被分析物測定のための組織のロバストなサンプリングの一般的方法を説明している。サンプリング方法は、アルコール等の被分析物を測定するためのスペクトル領域によって最適化される経路長である、組織サンプリング付属物を利用する。本特許は、音響光学的可変フィルタ、離散波長分光計、フィルタ、回折格子分光計、およびFTIR分光計を含む、400~2500nmの組織のスペクトルを測定するための数種類の分光計を開示する。Robinsonの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,975,581号明細書
【特許文献2】米国特許第6,157,041号明細書
【特許文献3】米国特許第5,830,112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
生物学的属性の判定のために、商業的に実現可能な非侵襲性の近赤外分光法ベースのシステムを生産しようとして、多大な研究が行われてきたが、そのようなデバイスは、現在、利用可能ではない。上記で論議される従来技術のシステムは、1つ以上の理由により、非侵襲測定システムの設計を手に負えない課題にする、組織のスペクトル特性によって課される難題に完全に対処することができなかったと考えられている。したがって、ヒト組織における生物学的属性の臨床的関連判定を行うのに十分な正確度および精度を伴うサブシステムおよび方法を組み込む、商業的に実現可能なデバイスの多大な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態は、自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定し、被分析物の測定値に基づいて自動車を制御するためのシステムに関する。本システムは、少なくとも1つの固体光源と、サンプルデバイスと、1つ以上の光検出器と、コントローラとを含む。少なくとも1つの固体光源は、異なる光の波長を発するように構成される。サンプルデバイスは、少なくとも1つの固体光源によって発せられる光を自動車運転者の組織に導入するように構成される。1つ以上の光検出器は、自動車運転者の前記組織によって吸収されない光の一部分を検出するように構成される。コントローラは、1つ以上の光検出器によって検出される光に基づいて、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値を計算し、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値が所定の値を超えるかどうかを判定し、自動車を制御するように構成されるデバイスに信号を提供するように構成される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定し、被分析物の測定値に基づいて自動車を制御するための方法に関する。サンプルデバイスは、少なくとも1つの固体光源によって発せられる異なる光の波長を自動車運転者の組織に導入する。1つ以上の光検出器は、自動車運転者の組織によって吸収されない光の一部分を検出する。コントローラは、1つ以上の光検出器によって検出される光に基づいて、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値を計算する。コントローラは、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値が所定の値を超えるかどうかを判定し、自動車運転者の組織の中の被分析物の測定値に基づいて、自動車を制御する。
【0017】
本開示の付加的な特徴、利点、および実施形態は、以下の発明を実施するための形態、図面、および請求項の考慮から記載されてもよい。また、本開示の先述の概要および以下の発明を実施するための形態の両方は、例示的であり、主張される本開示の範囲をさらに限定することなく、さらなる説明を提供することを目的としていることを理解されたい。例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定し、前記被分析物の測定値に基づいて自動車を制御するためのシステムであって、
異なる光の波長を発するように構成される、少なくとも1つの固体光源と、
前記少なくとも1つの固体光源によって発せられる前記光を前記自動車運転者の組織に導入するように構成される、サンプルデバイスと、
前記自動車運転者の前記組織によって吸収されない前記光の一部分を検出するように構成される、1つ以上の光検出器と、
前記1つ以上の光検出器によって検出される前記光に基づいて、前記自動車運転者の前記組織の中の前記被分析物の測定値を計算し、前記自動車運転者の前記組織の中の前記被分析物の前記測定値が所定の値を超えるかどうかを判定し、前記自動車を制御するように構成されるデバイスに信号を提供するように構成される、コントローラと、
を備える、システム。
(項目2)
前記自動車運転者の身元を識別または検証するように構成される、バイオメトリックデバイスをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記バイオメトリックデバイスは、前記自動車運転者から一式のバイオメトリックデータを収集し、前記一式のバイオメトリックデータを、前記バイオメトリックデバイスに記憶された公認自動車運転者に対応する一式の登録データと比較して、該当する場合、前記公認自動車運転者のうちの誰が前記一式のバイオメトリックデータを提供したかを識別する、項目2に記載のシステム。
(項目4)
予測自動車運転者は、意図された身元を前記自動車に提供し、前記バイオメトリックデバイスは、前記予測自動車運転者から一式のバイオメトリックデータを収集し、前記バイオメトリックデバイスは、前記予測自動車運転者の前記一式のバイオメトリックデータを、前記予測自動車運転者の前記意図された身元に対応する前記一式の登録データと比較することによって、前記予測自動車運転者の実際の身元が前記予測自動車運転者の前記意図された身元であるかどうかを検証する、項目2に記載のシステム。
(項目5)
各固体光源の強度は、独立して変調されるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目6)
各固体光源から発せられる前記光が、常に前記自動車運転者の前記組織に導入され、かつそこから収集されるように、各固体光源から発せられる前記光は、単一のビームに組み込まれるように構成される、項目5に記載のシステム。
(項目7)
前記少なくとも1つの固体光源から発せられる前記光および前記1つ以上の光検出器によって検出される前記光は、1,000nmから2,500nmの間の波長を有する、項目6に記載のシステム。
(項目8)
所定の変調方式によって定義される一式の状態に従って、前記少なくとも1つの固体光源をオンおよびオフにするように構成される、マイクロコントローラをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記システムが、前記システムの中に提供される固体光源の数よりも多くの波長の場所を測定することが可能であるように、各固体光源は、複数のピーク波長の場所に同調されるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記サンプルデバイスによって前記自動車運転者の前記組織に導入される、前記光の均一な放射輝度を提供するように構成される、光ホモジナイザをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記被分析物の前記測定値は、前記被分析物の存在、濃度、前記濃度の変化率、前記濃度の変化方向、またはそれらの組み合わせを含む、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記被分析物の前記測定値は、多変量分析を使用して取得される、項目1に記載のシステム。
(項目13)
複数の固体光源が、平面アレイに配列される、項目1に記載のシステム。
(項目14)
複数の固体光源は、1つ以上のグループに分けられ、前記1つ以上のグループ内の各固体光源は、同一の共通担体上に載置された他の固体光源の間に事前画定された間隔を伴って、各グループ用の共通担体上に載置される、項目1に記載のシステム。
(項目15)
複数の固体光源は、複数の固体光源が、レーザバーを形成するよう単一の半導体内に位置するように配列される、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記レーザバーは、固体光源の1つ以上のグループを備え、固体光源の各グループは、固体光源の隣接グループの波長とは異なる同一の波長を有する、項目1に記載のシステム。
(項目17)
前記システムは、1つよりも多くの被分析物を測定するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目18)
自動車運転者において被分析物を非侵襲的に測定し、前記被分析物の測定値に基づいて自動車を制御するための方法であって、
サンプルデバイスによって、少なくとも1つの固体光源によって発せられる異なる光の波長を前記自動車運転者の組織に導入するステップと、
1つ以上の光検出器によって、前記自動車運転者の前記組織によって吸収されない前記光の一部分を検出するステップと、
コントローラによって、前記1つ以上の光検出器によって検出される前記光に基づいて、前記自動車運転者の前記組織の中の前記被分析物の測定値を計算するステップと、
前記コントローラによって、前記自動車運転者の前記組織の中の前記被分析物の前記測定値が所定の値を超えるかどうかを判定するステップと、
前記自動車運転者の前記組織の中の前記被分析物の前記測定値に基づいて、前記自動車を制御するステップと、
を含む、方法。
(項目19)
バイオメトリックデバイスによって、前記自動車運転者を識別するように一式のバイオメトリックデータを収集するステップと、
前記バイオメトリックデバイスによって、前記一式のバイオメトリックデータを、前記バイオメトリックデバイスに以前に記憶された公認自動車運転者に対応する一式の登録データと比較するステップと、
該当する場合、前記公認自動車運転者のうちの誰が前記一式のバイオメトリックデータを提供したかを識別するステップと、
をさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
予測自動車運転者によって、意図された身元を前記自動車に提供するステップと、
前記バイオメトリックデバイスによって、前記予測自動車運転者から一式のバイオメトリックデータを収集するステップと、
前記バイオメトリックデバイスによって、前記一式のバイオメトリックデータを、前記予測自動車運転者の前記意図された身元に対応する前記一式の登録データと比較するステップと、
前記バイオメトリックデバイスによって、前記比較に基づいて、前記予測自動車運転者の実際の身元が前記予測自動車運転者の前記意図された身元であるかどうかを検証するステップと、
をさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
各固体光源の強度は、独立して変調される、項目18に記載の方法。
(項目22)
所定の変調方式によって定義される一式の状態に従って、マイクロコントローラによって、前記少なくとも1つの固体光源をオンおよびオフにするステップをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記被分析物の前記測定値は、前記被分析物の存在、濃度、前記濃度の変化率、前記濃度の変化方向、またはそれらの組み合わせを含む、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記被分析物の前記測定値は、多変量分析を使用して取得される、項目18に記載の方法。
(項目25)
1つよりも多くの被分析物を測定するステップをさらに含む、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付図面は、本発明の好ましい実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原理を説明する働きをする。本開示およびそれが実践され得る種々の方法の基礎的理解に必要であり得るよりも詳細に本開示の構造的詳細を示すようには試みられていない。
【
図1】
図1は、開示されたサブシステムを組み込む、非侵襲分光計システムの概略図である。
【
図2】
図2は、3構成要素システム内の正味属性信号の概念の図式描写である。
【
図3】
図3は、光源をオンおよびオフにするための手段を含む、固体光源の駆動電流を制御するように設計されている電子回路の実施形態である。
【
図4】
図4は、光源をオンおよびオフにし、所望の駆動電流を変化させるための手段を含む、固体光源の駆動電流を制御するように設計されている電子回路の実施形態である。
【
図5】
図5は、出力が六角形断面の内部反射型光ホモジナイザに導入されるアレイに配列された、複数の個別固体光源を備える、照明/変調サブシステムの実施形態である。
【
図6】
図6は、半導体チップの中の単一のレーザエミッタの実施形態である。
【
図7】
図7は、複数のレーザエミッタが共通担体に載置される、照明/変調サブシステムの実施形態である。
【
図8】
図8は、24個のエミッタ(12の異なる波長、1つの波長につき2つのエミッタ)を含有する単一の半導体チップから成るレーザバーを描写する、照明/変調サブシステムの実施形態である。
【
図9】
図9は、
図8に示されるレーザバーの実施形態の中の各ペアのエミッタから発せられる光を収集し、個別光ファイバを出力束またはケーブルに組み込む、光ファイバ結合器の実施形態の概略図である。
【
図10】
図10は、各結合器が異なるレーザバーに接続される、4つの異なるファイバ結合器の出力を単一の出力開口/束に組み込む、実施形態である。
【
図11】
図11は、照明/変調サブシステムの出力開口/束からの光を均質化するために好適な光ホモジナイザの実施形態例である。
【
図12】
図12は、組織サンプリングサブシステムの要素の斜視図である。
【
図13】
図13は、照明および収集光ファイバの配列を示す、組織サンプリングサブシステムのサンプリング表面の平面図である。
【
図14】
図14は、組織サンプリングサブシステムのサンプリング表面の代替実施形態である。
【
図15】
図15は、組織サンプリングサブシステムのサンプリング表面の代替実施形態である。
【
図16】
図16は、いくつかの固体光源ベースの照明/変調サブシステムの小発光領域について最適化される、組織サンプリングサブシステムのサンプリング表面の代替実施形態である。
【
図17】
図17は、局所干渉物質が組織上に存在するときのサンプリング表面と組織との間の界面の略図である。
【
図19】
図19は、ハイブリッド較正形成プロセスの略図である。
【
図20】
図20は、局所干渉物質の存在を検出するための多変量較正異常値計量の有効性を実証する。
【
図21】
図21は、100~33000cm
-1(100~0.3μm)範囲にわたる1300~3000K黒体放射体の正規化NIRスペクトルを示す。
【
図22】
図22は、本発明の例示的実施形態の構成要素の概略図である。
【
図23】
図23は、22個の波長を使用して収集された非侵襲組織スペクトルを描写する。
【
図24】
図24は、
図23のスペクトルから取得された非侵襲組織アルコール濃度を、同時毛細管血中アルコール濃度と比較する。
【
図25】
図25は、39個の波長を使用して取得された非侵襲組織スペクトルを描写する。
【
図26】
図26は、
図25のスペクトルから取得された非侵襲組織アルコール濃度を、同時毛細管血中アルコール濃度と比較する。
【
図27】
図27は、システム較正、測定、および対策時間帯を含む、測定時系列の多くの可能な実施形態のうちの1つを描写する。
【
図28】
図28は、自動車計器パネルに自動車始動ボタンとして組み込まれた非侵襲監視システムを描写する。
【
図29a】
図29aは、エミッタが波長光源に直接接続された波長ホモジナイザである、非侵襲測定ポータルインターフェースの側面図を描写する。
【
図29b】
図29bは、エミッタが波長光源に直接接続された波長ホモジナイザである、
図29aの非侵襲測定ポータルインターフェースの上面図を描写する。
【
図30】
図30は、スペクトル的に分離された吸収測定のための手段を提供するために広範囲に同調可能なレーザエミッタを利用する、非侵襲監視システムの構成要素を描写する。
【
図31】
図31は、最初の測定が被分析物の存在を検出し、後続の測定が被分析物の実際の濃度を判定するように行われる、平均必要測定時間を向上させる測定時系列の多くの可能な実施形態のうちの1つを描写する。
【
図32】
図32は、一次被分析物測定がタッチシステムを通して行われ、二次測定が代替的な被分析物検出システムを通して行われる、非侵襲監視システムを描写する。
【
図33】
図33は、放射光源を構成する離散波長の選択を提供するために、フィルタ要素を伴う黒体光源を利用する、非侵襲監視システムの構成要素を描写する。
【
図34】
図34は、強度決定の前に、オフ状態からオン状態への移行中に光源の強度の測定が行われることを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的実施形態を詳細に図示する図を参照する前に、本開示は、説明において記載される、または図で図示される詳細または方法論に限定されないことに理解されたい。また、用語は、説明目的にすぎず、限定的と見なされるべきではないことも理解されたい。同一または類似部品を指すために、図面の全体を通して同一または類似参照番号を使用する努力がなされている。
【0020】
本願の目的で、「被分析物濃度」という用語は、概して、アルコール等の被分析物の濃度を指す。「被分析物性質」という用語は、被分析物濃度、および被分析物濃度と併せて、またはその代わりに測定することができる、被分析物の存在または非存在、被分析物濃度の変化方向または率、あるいはバイオメトリック等の他の性質を含む。本開示は、概して、目的とする「被分析物」としてアルコールを参照するが、乱用物質、アルコールバイオマーカー、およびアルコール副生成物を含むが、それらに限定されない、他の被分析物もまた、本願で開示されるシステムおよび方法の対象となることを目的としている。「アルコール」という用語は、目的とする被分析物例として使用され、該用語は、エタノール、メタノール、エチルグリコール、または一般的にアルコールと呼ばれる任意の他の化学物質を含むことを目的としている。本願の目的で、「アルコール副生成物」という用語は、アセトン、アセトアルデヒド、および酢酸を含むが、それらに限定されない、身体によるアルコールの代謝の付加物および副生成物を含む。「アルコールバイオマーカー」という用語は、ガンマグルタミントランスフェラーゼ(GGT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、平均赤血球容積(MCV)、炭水化物欠乏トランスフェリン(CDT)、エチルグルクロニド(EtG)、硫酸エチル(EtS)、およびホスファチジルエタノール(PEth)を含むが、それらに限定されない。「乱用物質」という用語は、THC(テトラヒドロカナビノールまたはマリファナ)、コカイン、M-AMP(メタンフェタミン)、OPI(モルヒネおよびヘロイン)、オキシコンチン、オキシコドン、およびPCP(フェンシクリジン)を指すが、それらに限定されない。「バイオメトリック」という用語は、特定の個人または対象の身元を識別または検証するために使用することができる、被分析物または生物学的特性を指す。本願は、「サンプル」という用語が、概して、生物測定を指す、分光法を利用してサンプルの被分析物測定の必要性に対処する、システムおよび方法を開示する。「対象」という用語は、概して、サンプル測定が収集された個人を指す。
【0021】
「固体光源」または「半導体光源」という用語は、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、水平共振器面発光レーザ(HCSEL)、量子カスケードレーザ、量子ドットレーザ、ダイオードレーザ、または他の半導体ダイオードあるいはレーザを含むが、それらに限定されない、半導体に基づく、スペクトル的に狭い(例えば、レーザ)または広い(例えば、LED)かにかかわらず、全ての光源を指す。「ダイオードレーザ」という用語は、活性媒体が、二重ヘテロ構造レーザ、量子井戸レーザ、量子カスケードレーザ、別個の閉じ込めヘテロ構造レーザ、分布復元型(DFB)レーザ、VCSEL、VECSEL、HCSEL、外部空洞ダイオードレーザ、ファブリ・ペローレーザを含むが、それらに限定されない、半導体に基づく、任意のレーザを指す。さらに、厳密には半導体に基づかないが、プラズマ光源および有機LEDもまた、本発明の実施形態で考慮され、したがって、本願の目的で固体光源および半導体光源の定義の下に含まれる。
【0022】
本願の目的で、「分散分光計」という用語は、他の波長からの1つ以上の光の波長を空間的に分離する、任意のデバイス、構成要素、または構成要素群に基づく分光計を示す。実施例は、1つ以上の回折格子、プリズム、ホログラフィック格子を使用する分光計を含むが、それらに限定されない。本願の目的で、「干渉/変調分光計」という用語は、時間的に異なる周波数への異なる光の波長の光変調に基づく、一種の分光計を示し、または光干渉の性質に基づいて、ある光の波長を選択的に伝送または反射する。実施例は、フーリエ変換干渉計、サニャック干渉計、モック干渉計、マイケルソン干渉計、1つ以上のエタロン、または音響光学的可変フィルタ(AOTF)を含むが、それらに限定されない。当業者であれば、ラメラ格子に基づく分光計等の、分散および干渉/変調性質の組み合わせに基づく分光計もまた、本願で開示されるシステムおよび方法とともに使用されるものと見なされることを認識する。
【0023】
本願は、実施例のうちのいくつかで、吸光度または他の分光測定としての「信号」の使用を開示する。信号は、サンプルの分光測定またはサンプルの変化に関して取得される任意の測定値、例えば、1つ以上の波長における吸光度、反射率、復元する光の強度、蛍光性、透過率、ラマンスペクトル、または測定値の種々の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態は、1つ以上のモデルを利用し、そのようなモデルは、信号を所望の性質に関係付ける、あらゆるものであり得る。モデルのいくつかの実施例は、部分最小二乗回帰(PLS)、線形回帰、多重線形回帰(MLR)、古典的最小二乗回帰(CLS)、ニューラルネットワーク、判別分析、主成分分析(PCA)、主成分回帰(PCR)、判別分析、ニューラルネットワーク、クラスタ分析、およびK最近傍等の多変量分析方法から導出されるものを含む。ランベルト・ベールの法則に基づく単または多重波長モデルが、古典的最小二乗の特殊な場合であり、したがって、本願の目的で多変量分析という用語に含まれる。
【0024】
本願の目的で、明示的に示されるか否かにかかわらず、「約」という用語は、全ての数値に適用される。「約」という用語は、概して、当業者であれば記載された値と同等(すなわち、同一の機能または結果を有する)と見なすであろう、一連の数を指す。場合によっては、「約」という用語は、最も近い有効数字に四捨五入される数を含むことができる。
【0025】
分光測定システムは、典型的には、スペクトルを取得するために、異なる光の波長を分解して測定するためのいくつかの手段を必要とする。所望のスペクトルを達成するいくつかの一般的なアプローチは、分散(例えば、格子およびプリズムベースの)分光計および干渉(例えば、マイケルソン、サニャック、または他の干渉計)分光計を含む。そのようなアプローチを組み込む非侵襲測定システムはしばしば、分散および干渉計デバイスの高価な性質、ならびにそれらの固有のサイズ、脆弱性、および環境影響への感受性によって制限される。本願は、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、水平共振器面発光レーザ(VCSEL)、ダイオードレーザ、量子カスケードレーザ、または他の固体光源等の固体光源を使用して、異なる波長の強度を分解して記録するための代替的アプローチを提供することができる、システムおよび方法を開示する。
【0026】
概して、図を参照すると、開示されたシステムは、いくつかの実施形態では最適化されたサブシステムを含む設計を組み込むことによって、組織のスペクトル特性によって提起される課題を克服する。該設計は、組織スペクトル、高い信号対雑音比および測光精度要件、組織サンプリング誤差、較正保守問題、較正移動問題、ならびに多数の他の問題という複雑性に取り組む。本サブシステムは、照明/変調サブシステム、組織サンプリングサブシステム、データ収集サブシステム、コンピュータサブシステム、および較正サブシステムを含むことができる。
【0027】
定量的近赤外分光法によるヒト組織の属性の非侵襲判定のための装置および方法が、本明細書で開示される。本システムは、雑音比および測光精度要件、組織サンプリング誤差、較正保守問題、および較正移動問題という複雑性に取り組むように最適化されるサブシステムを含む。本サブシステムは、照明/変調サブシステム、組織サンプリングサブシステム、データ収集サブシステム、およびコンピュータサブシステムを含む。
【0028】
本願はさらに、正味属性信号対雑音比を最大限化するために、これらのサブシステムのそれぞれの実装および統合を可能にする、装置および方法を開示する。正味属性信号は、全ての他のスペクトル分散源に対して直角であるため、目的とする属性に特異的である近赤外スペクトルの部分である。正味属性信号の直交性は、それを任意の干渉種によって画定される空間と垂直にし、結果として、正味属性信号は、これらの分散源と無相関である。正味属性信号対雑音比は、定量的近赤外分光法による属性の非侵襲判定の正確度および精度に直接関係する。
【0029】
本願は、分析のために近赤外放射の使用を開示する。1.0~2.5ミクロンの波長範囲(または10,000~4,000cm-1の波数範囲)の波長範囲内の放射が、容認可能な吸光度特性を伴う最大数ミリメートルの組織光透過深度とともに、アルコールを含むいくつかの被分析物に対する容認可能な特異性を有するため、そのような放射は、いくつかの非侵襲測定を行うために好適であり得る。1.0~2.5ミクロンのスペクトル領域中で、組織を構成する多数の光学活性物質が、それらの吸光度スペクトルの重複性質により、任意の所与の物質の測定を複雑にする。目的とする物質の正確な測定を達成することができるように、これらの重複スペクトルを分解するために、多変量分析技法を使用することができる。しかしながら、多変量分析技法は、多変量較正が経時的にロバストなままであり(較正保守)、複数の機器に適用可能である(較正移動)ことを要求し得る。可視光および赤外線等の他の波長領域もまた、開示されたシステムおよび方法に好適であり得る。
【0030】
本願は、機器サブシステム、組織生理学、多変量分析、近赤外分光法、および全体的なシステム動作の理解を組み込む、分光機器の設計への多専門的アプローチを開示する。さらに、非侵襲測定デバイス全体の挙動および要件が良好に理解され、商業的に実現可能である価格およびサイズにおいて十分な正確度および精度で非侵襲測定を行うであろう、商業機器の設計をもたらすように、サブシステム間の相互作用が分析されてきた。
【0031】
本願はまた、オートバイ、自動車、トラック、船、列車、および航空機を含むが、それらに限定されない、輸送システムの独特な感知要件とともに使用するためのシステムおよび方法も開示し、本システムは、広範囲の温度、大気圧、高度、湿度、機械的配向、周囲照明、および環境構成成分(例えば、塩、砂、埃、煙)の環境にわたって動作しなければならない。開示されたシステムは、体重、身長、年齢、人種、性別、健康、健康レベル、および他の人間を区別する要因の差を通して識別可能である、全範囲の潜在的ユーザにわたって動作してもよい。開示されたシステムは、自動車の全寿命にわたって機能的なままであり、必要とされる保守または使用可能ユニット交換を示す、診断および表示器を維持してもよい。開示されたシステムは、正しいまたは誤った測定をシステムユーザに知らせるように視覚、触覚、可聴フィードバックを提供する、ヒューマンマシンインターフェースを提供することができる。本システムは、意図的または非意図的なシステム改ざんまたは測定なりすましの検出を含む、適正または不適切な測定を示す、診断およびユーザフィードバックを提供する。本システムは、管理制御(例えば、パスワード)に基づいて有効/無効にすることができる、動作モデルを維持することができる。本システムは、システム動作のために必要とされるデータおよび/または電力を受信するために、または外部システムの動作を有効化、無効化、あるいは修正するために、1つ以上の既存の、または開発された通信プロトコルを使用して、外部輸送有効化またはヒューマンマシンインターフェースシステムへの1つ以上の通信および/または電力インターフェースを提供することができる。本システムは、補綴参照デバイスを通して、製造、設置、および/または点検中に測定正確度および精度検証または較正を可能にする能力をサポートすることができる。
【0032】
非侵襲モニタのサブシステムは、組織の再現可能であり、好ましくは均一な放射輝度、低い組織サンプリング誤差、目的とする性質を含有する組織層の深度標的、組織からの拡散反射率スペクトルの効率的な収集、高い光学スループット、高い測光精度、広いダイナミックレンジ、優れた熱安定性、効果的な較正保守、効果的な較正移動、内蔵式品質管理、および使い易さを提供するように、高度に最適化される。
【0033】
ここで
図1を参照すると、被分析物性質測定の正確度および精度の容認可能なレベルを達成することができる、非侵襲モニタが、概略図で描写されている。全体的なシステムは、論議目的で、5つのサブシステムを備えるものと見なすことができる。当業者であれば、開示される機能性の他の細分を理解するであろう。本サブシステムは、照明/変調サブシステム100と、組織サンプリングサブシステム200と、データ収集サブシステム300と、処理サブシステム400と、較正サブシステム(図示せず)とを含む。
【0034】
本サブシステムは、望ましい正味属性信号対雑音比を達成するために、設計および統合することができる。正味属性信号は、他のスペクトル分散源に対して直角であるため、目的とする属性に特異的である近赤外スペクトルの部分である。
図2は、3次元システム内の正味属性信号の図式表現である。正味属性信号対雑音比は、定量的近赤外分光法による非侵襲属性判定の正確度および精度に直接関係する。
【0035】
本サブシステムは、組織の再現可能であり、好ましくは、空間的に均一な放射輝度、低い組織サンプリング誤差、組織の適切な層の深度標的、組織からの拡散反射率スペクトルの効率的な収集、高い光学スループット、高い測光精度、広いダイナミックレンジ、優れた熱安定性、効果的な較正保守、効果的な較正移動、内蔵式品質管理、および使い易さを提供する。サブシステムのそれぞれは、以下でさらに詳細に論議される。
【0036】
(照明/変調サブシステム)
照明/変調サブシステム100は、サンプル(例えば、ヒトの皮膚組織)を調べるために使用される光を生成する。分散または干渉分光計を使用した古典的分光法では、(例えば、プリズムまたは回折格子を使用して)異なる光の波長を空間的に分散させることによって、または(例えば、マイケルソン干渉計を使用して)異なる光の波長を異なる周波数に変調することによって、多色光源(または目的とするサンプルから発せられる光)のスペクトルが測定される。これらの場合において、分光計(光源とは明白に異なるサブシステム)は、各波長を他の波長とは実質的に無関係に測定することができるように、空間的または時間的のいずれかで、異なる波長を「符号化する」機能を果たすよう要求される。分散および干渉分光計が当技術分野で公知であり、いくつかの環境および用途でそれらの機能を十分に果たすことができるが、それらは、他の用途および環境で、それらの費用、サイズ、脆弱性、信号対雑音比(SNR)、および複雑性によって制限され得る。
【0037】
開示されたシステムに組み込まれる固体光源の利点は、光源の強度を独立して変調できることである。したがって、各固体光源が、アダマールによって定義されるものまたは類似アプローチ等の事前定義された方式に従って、異なる周波数で変調される、または集合的に変調される、異なる光の波長を発する複数の固体光源を使用することができる。独立して変調された固体光源は、単一のビームに光学的に組み込み、サンプルに導入することができる。光の一部分をサンプルから収集し、単一の光検出器によって測定することができる。結果は、独立サブシステムとしての分光計が測定システムから排除されるため、サイズ、費用、エネルギー消費、および全体的なシステム安定性において有意な利益を提供することができる、単一の照明/変調サブシステムへの固体光源および分光計の効果的な合体である。さらに、全ての波長が独立して変調され、単一のビームに組み込むことができるため、(光検出器のアレイよりもむしろ)単要素光検出器が、全ての分析光を検出するのに好適である。これは、複数の光検出器要素を伴うシステムおよび実施形態に対するシステム複雑性および費用の有意な削減を表すことができる。
【0038】
制限ではないが、所望の測定を行うように要求される固体光源の数、固体光源の発光プロファイル(例えば、スペクトル幅、強度)、固体光源の安定性および制御、ならびにそれらの光学的組み合わせを含む、固体光源を組み込む、被分析物性質を測定するためのシステムのいくつかのパラメータが考慮されなければならない。各固体光源が離散要素であるため、常にサンプルから導入および収集されるように、複数の固体光源の出力を単一のビームに組み込むことが有利であり得る。
【0039】
さらに、いくつかの種類の光源が強度の正弦波変調の影響を受けやすくあり得、他の光源がスイッチをオンおよびオフにされることの影響を受けるか、または方形波変調され得るため、固体光源に対する変調方式も考慮されなければならない。正弦波変調の場合、システムの電子機器設計に基づいて、複数の固体光源を異なる周波数で変調することができる。複数の光源によって発せられる光は、例えば、光パイプまたは他のホモジナイザを使用して、光学的に組み合わせ、目的とするサンプルから導入および収集し、次いで、単一の検出器によって測定することができる。結果として生じる信号は、フーリエまたは類似変換を介して、波長スペクトルと対比した強度に変換することができる。
【0040】
代替として、アダマール変換アプローチの影響を受けやすい、いくつかの固体光源は、オンおよびオフ状態の間で切り替えられるか、または方形波変調される。しかしながら、いくつかの実施形態では、測定中の異なる時間に異なる波長を遮断するか、または通過させる、従来のアダマールマスクよりもむしろ、固体光源を高い周波数で循環させることができるため、アダマール方式を電子機器で実装することができる。波長スペクトルと対比した強度を判定するために、アダマールまたは類似変換を使用することができる。当業者であれば、本発明にとって同等に好適であるアダマール符号化アプローチの代替案があることを認識する。
【0041】
一実施形態では、47波長アダマール符号化アプローチが利用され、2進数の行列として描写される。各行は、アダマール方式の1つの状態に対応し、各列は、測定システムにおける波長に対応する。各状態について、「1」という値は、波長(例えば、レーザダイオード)がその状態に対してオンであることを示す一方で、「0」という値は、波長がその状態に対してオフであることを示す。各状態の各測定は、1つのスキャンに対応する。照明/変調サブシステム100によって発せられる光は、サンプリングサブシステム200によってサンプルに送達される。その光の一部分は、データ収集サブシステム300の中の光検出器によって、収集、検出、デジタル化、および記録される。次いで、アダマール方式における次の状態(例えば、異なる一式の波長がその状態に対してオンである)が、測定および記録される。これは、全てのアダマール状態が測定されるまで続く(本明細書では「アダマールサイクル」と呼ばれる)。いったんアダマールサイクルが完了すると、記録された強度対状態データおよびアダマール方式の逆行列のドット積を計算することによって、波長スペクトルと対比した強度が判定される。上記で説明されるアダマール符号化の実施例は、47個の波長から成るが、当業者であれば、他の数の波長を伴うアダマール方式が、本発明のために同等に好適であることを認識する。
【0042】
固体光源の別の利点は、多くの種類の(例えば、レーザダイオードおよびVCSEL)が、狭い範囲の波長(部分的に測定の効果的な分解能を判定する)を発することである。その結果として、すでに十分狭いため、光学フィルタまたは他のアプローチを用いて固体光源の発光プロファイルを成形または縮小することは必要とされない。これは、システム複雑性および費用の削減により、有利であり得る。さらに、ダイオードレーザおよびVCSEL等のいくつかの固体光源の発光波長は、供給された駆動電流、駆動電圧を介して、または固体光源の温度を変化させることによってのいずれかで、一連の波長にわたって同調可能である。このアプローチの利点は、所与の測定が特定数の波長を必要とする場合、本システムが、それらの実行可能な範囲にわたって同調することによって、より少ない離散固体光源を用いた要件を達成できることである。例えば、非侵襲性の測定が20個の波長を必要とした場合、10個のうちのそれぞれが測定の経過中に2つの異なる波長に同調される、10個の離散ダイオードレーザまたはVCSELが使用され得る。この種類の方式では、フーリエまたはアダマールアプローチは、固体光源の各同調点について変調周波数を変化させることによって、または変調方式を走査方式と組み合わせることによって、適切なままとなる。さらに、所与のレーザに対する発光波長が経時的に推移または変化する場合、ダイオードレーザの同調性質は、その駆動電流/電圧、温度、またはそれらの組み合わせを変化させることによって、それがその標的発光波長に戻されることを可能にする。
【0043】
被分析物性質は、電磁スペクトルの紫外線および赤外線領域に及ぶ種々の波長において測定することができる。アルコールまたは乱用物質等の皮膚における生体内測定について、目的とする被分析物ならびにヒト皮膚内に存在する他の化学種(例えば、水)に対する分光信号の感度および特異性により、1,000nm~2,500nmの近赤外(NIR)領域が重要であり得る。さらに、被分析物の吸収性は、近赤外光が、目的とする被分析物が存在する皮膚の中へ数ミリメートル透過することができるほど、十分低い。2,000nm~2,500nmの波長範囲が、NIRの1,000~2,000nm部分で遭遇する、より弱く、あまり特異的ではない倍音よりもむしろ、複合帯を含有するため、特に有用であり得る。
【0044】
スペクトルの可視領域中の市販のLED、VCSEL、およびダイオードレーザに加えて、NIR領域(1,000~2,500nm)の全体を通した発光波長を伴って利用可能な固体光源がある。これらの固体光源は、開示された被分析物およびバイオメトリック性質測定システムのために好適である。利用可能なNIR固体光源のいくつかの実施例は、Vertilas ΜmbHによって生産されているVCSEL、Laser Components ΜmbHから入手可能なVCSEL、量子カスケードレーザ、レーザダイオード、またはRoithner Laser、Sacher Lasertechnik、NanoPlus、Mitsubishi、Epitex、Dora Texas Corporation、Microsensor Tech、 SciTech Instruments、Laser 2000、Redwave Labs、およびDeep Red Techから入手可能なレーザおよびダイオードである。これらの実施例は、論証目的で含まれ、本発明とともに使用するために好適な固体光源の種類を限定することを目的としていない。
【0045】
照明/変調サブシステム100の実施形態で各固体光源を制御するために、マイクロコントローラを使用することができる。マイクロコントローラは、アダマールまたは他の符号化方式で定義された状態を含むようにプログラムすることができる(例えば、個別固体光源が、方式によって定義される一式の状態に従ってオフおよびオンにされる)。次いで、マイクロコントローラは、各状態で所定の測定時間を伴って、状態のそれぞれを繰り返すことができる。各状態の測定時間が等しくなければならないという制限はない。各固体光源の「オフ」および「オン」制御に加えて、マイクロコントローラはまた、固体光源の温度および駆動電流/電圧に対する全体的(全ての固体光源にわたる)および個別設定点を提供することもできる。そのような実施形態は、照明/変調サブシステム100の波長同調の制御および/または安定性の向上を可能にする。当業者であれば、説明されたマイクロコントローラの実施形態と実質的に同一の機能を果たす、マイクロコントローラの代替案が利用可能であることを認識する。
【0046】
(測定分解能および分解能増進)
分散分光計では、分光測定の有効分解能は、しばしば、システム内の開口の幅によって判定される。分解能限界開口は、しばしば、入射スリットの幅である。分光計内の光が検出される焦点面において、焦点面上の異なる空間的位置に位置する異なる波長で、スリットの複数の画像が形成される。したがって、その近傍から独立した1つの波長を検出する能力は、スリットの幅に依存する。より狭い幅は、分光計を通過させることができる光の量を犠牲にして、波長間のより良好な分解能を可能にする。その結果として、分解能および信号対雑音比は、概して、相互に対して相殺する。干渉分光計は、分解能と信号対雑音比との間で類似相殺を有する。マイケルソン干渉計の場合、スペクトルの分解能は、より長い距離がより優れた分解能をもたらす、可動鏡が平行移動させられる距離によって、部分的に判定される。結果は、距離が大きくなるほど、スキャンを完了するためにより多くの時間が必要とされることとなる。
【0047】
測定システムの場合、スペクトルの分解能は、離散固体光源(異なる固体光源、複数の波長に同調された固体光源、またはそれらの組み合わせにかかわらず)のそれぞれのスペクトル幅によって判定される。高い分解能を必要とする被分析物性質の測定のために、ダイオードレーザまたは他の好適な固体レーザを使用することができる。レーザの発光の幅は、非常に狭くあり得、高い分解能になる。低い分解能への変調が必要とされる測定用途では、LEDが、典型的には、固体レーザ代替案よりも幅広い発光プロファイルを有する(出力強度が広範囲の波長にわたって分布する)ため、好適であり得る。
【0048】
固体光源の有効分解能は、異なる種類の光学フィルタの使用または組み合わせを通して増進させることができる。固体光源のスペクトル幅は、より高い分解能(例えば、より厳密な範囲の発光波長)を達成するために、1つ以上の光学フィルタを使用して縮小または減衰させることができる。本発明の実施形態で考慮される光学フィルタの実施例は、線形可変フィルタ(LVF)、誘電体スタック、分布ブラッグ格子、光結晶格子フィルタ、ポリマー膜、吸収フィルタ、反射フィルタ、エタロン、プリズムおよび格子等の分散要素、および量子ドットフィルタを含むが、それらに限定されない。
【0049】
本発明の実施形態から取得される測定の分解能を向上させるための別の手段は、デコンボリューションである。2つ以上の重複する幅広い固体光源の間に存在する、信号差を隔離するために、デコンボリューションおよび他の類似アプローチを使用することができる。例えば、部分重複発光プロファイルを伴う2つの固体光源を、測定システムに組み込むことができる。測定値をサンプルから収集することができ、(アダマール、フーリエ変換、または他の好適な変換を介して)スペクトルを生成することができる。固体光源の発光プロファイルを把握した上で、スペクトルの分解能を増進させるために、プロファイルをスペクトルからデコンボリューションすることができる。
【0050】
(固体光源波長および強度の安定化および制御)
固体光源、特に、レーザのピーク発光波長は、固体光源の熱状態または電気的性質(例えば、駆動電流または電圧)を変化させることによって、影響を受けることができる。半導体レーザの場合、熱状態または電気的性質を変化させることにより、半導体の格子構造の光学的性質または物理的寸法を改変する。結果は、発せられる波長ピーク波長を改変する、デバイス内の空洞間隔の変化となる。固体光源がこれらの効果を示すため、それらが分光測定システムで使用されるとき、ピーク発光波長の安定性およびその関連強度が、重要なパラメータであり得る。その結果として、各固体光源の熱状態または電気的性質の両方の測定制御が、全体的なシステムロバスト性および性能の観点で有利であり得る。さらに、単一の固体光源が複数のピーク波長の場所に同調されることを可能にするために、熱状態または電気的性質によって引き起こされる光学的性質の変化を活用することができる。これは、離散固体光源の数よりも多くの波長の場所を測定することができる、被分析物性質測定システムをもたらすことができ、それはシステム費用および複雑性を削減することができる。
【0051】
複数のアプローチを使用して、温度安定化を達成することができる。いくつかの実施形態では、温度の付加的な制御を伴わずに、周囲条件以上に温度を上昇させる(または以下に冷却する)ことによって、1つまたは複数の固体光源を安定させることができる。他の実施形態では、1つまたは複数の固体光源は、制御ループを使用して、設定温度に能動的に制御することができる(冷却されるか加熱されるかのいずれか一方)。例えば、本発明の実施形態のために好適な温度ループ回路は、熱電冷却器および精密サーミスタを含む、TE-Cooled VCSELパッケージを含んでもよい。精密サーミスタは、熱電冷却器を駆動するように構成される電流駆動回路に接続され得る、ホイートストンブリッジに接続されてもよい。
【0052】
固体光源の電気的性質はまた、固体光源の発光プロファイル(例えば、発光波長の場所)に影響を及ぼす。1つまたは複数の固体光源に供給される電流および/または電圧を安定させることが有利であり得る。例えば、VCSELおよび多くのダイオードレーザのピーク発光は、駆動電流に依存する。ピーク波長の安定性が重要である実施形態について、駆動電流の安定性が、重要な性能指数になる。そのような場合において、安定した駆動電流をVCSELまたはダイオードレーザに供給するように電子回路を設計することができる。回路の複雑性および費用は、駆動電流の必要安定性に依存し得る。
図3は、本発明の実施形態とともに使用するために好適な電流駆動回路を示す。当業者であれば、電流制御回路の代替実施形態が当技術分野で公知であり、また、本発明のために好適であり得ることも認識する。さらに、いくつかの固体光源は、駆動電流よりもむしろ駆動電圧の制御を必要とし、当業者であれば、電流よりもむしろ電圧を制御するように設計されている電子回路が容易に入手可能であることを認識する。
【0053】
いくつかの実施形態では、VCSELまたはダイオードレーザ等の単一の固体光源は、測定の経過中に複数の波長に同調される。固体光源の同調を達成するために、
図3に示される回路は、それぞれ、温度設定点および電流の制御を含むように修正することができる。いくつかの実施形態では、温度または駆動電流/電圧の同調のいずれか一方が、ピーク発光波長の所望の同調を実現するために十分であり得る。他の実施形態では、所望の同調範囲を達成するために、温度および駆動電流/電圧の両方の制御を必要とすることができる。
【0054】
さらに、ピーク発光波長を測定して安定させるための光学的手段もまた、本発明の実施形態に関連して説明されるシステムに組み込むことができる。相対波長標準を提供するために、ファブリ・ペローエタロンを使用することができる。VCSELまたはダイオードレーザピーク波長の能動測定および制御を可能にする光通過帯域を提供するように、エタロンの自由スペクトル範囲およびフィネスを特定することができる。このエタロンの実施形態例は、部分的鏡面を伴う、熱的に安定させられた平坦な溶融石英板を使用する。各VCSELまたはダイオードレーザが、複数の波長を提供するように要求される、システムについて、エタロンの自由スペクトル範囲は、その透過ピークが同調のための所望の波長間隔と一致するように選択することができる。当業者であれば、この用途のために実行可能である多くの光学的構成および電子制御回路があることを認識するであろう。代替的な波長符号化方式は、VCSELまたはダイオードレーザ波長をアレイ上の空間的位置に符号化するために、分散格子および二次アレイ検出器を使用する。分散またはエタロンベースの方式のいずれか一方について、主要な光検出器ほど厳密ではない性能要件を有する二次光検出器を使用することができる。能動制御は、任意のドリフトに対するリアルタイム補正を可能にすることによって、VCSEL温度および電流制御回路の安定性要件を低減させることができる。
【0055】
(多重波長照明/変調サブシステムに対する実施形態およびアプローチ)
図5は、10個の個別固体光源101が平面アレイに配列される、照明/変調サブシステム100の実施形態例を示す。
図5のいくつかの実施形態では、固体光源101は、TO-9、TO-56、または他の標準パッケージ等の各自のパッケージに個別に収納される。これらのパッケージは、透過型窓で密閉するか、または密閉しないことができる。他の実施形態では、固体光源101は、共通担体上に配置することができ、結果として生じるアセンブリは、筐体の中へ配置することができる。筐体は、密閉するか、または密閉しないことができる。各固体光源101の温度は、独立して制御することができ、各固体光源101は、温度を制御するための各自の手段を有するか、または温度を制御するための単一の手段を集合的に使用する。
【0056】
固体光源101によって発せられる光は、ホモジナイザ102(
図5)によって収集されて均質化され、サンプリングサブシステム200の入力へ送達される。本発明のいくつかの実施形態では、包装密度(個別固体光源101を相互に対してどれだけ近く配置することができるか)が不利であり、使用することができる固体光源101の数を制限する。そのような実施形態では、固体光源101によって発せられる光をより小さい領域に凝集するための手段が有利であり得る。光の効率的な凝集およびサンプリングサブシステム200への結合のための手段が、後続の段落で論議される。
【0057】
いくつかの実施形態では、個別固体光源の平面アレイの代替案が採用される。個別固体光源101の実施例である、レーザダイオードが、
図6に示され、半導体チップ103およびレーザ発光開口104から成る。
【0058】
別の実施形態では、累積数の個別固体光源101が、1つ以上のグループに分けられる。1つ以上のグループ内の各固体光源101は、他の固体光源101の間に事前画定された間隔を伴って、共通担体105上に載置される(1つのグループにつき1つの担体)。このアプローチは、光源「担体」104と呼ばれ、
図7で描写される。担体105は、例えば、セラミックから形成されてもよい。この実施形態では、異なる波長が、異なる光源、例えば、レーザチップにダイスカットされる異なるウエハに由来することができる。複数のレーザチップが、固体光源101を形成してもよい。これは、いくつかの光源(ウエハ、異なるベンダ等)からのレーザを組み合わせることによって、複数の波長が適応されることを可能にする。このアプローチの利点は、より少ない数の固体光源アセンブリ、および相互に対する固体光源の場所の既知の関係である。これは、ひいては、個別固体光源の制御に対して削減された数の温度制御パッケージの可能性を可能にする。さらに、パッケージ内の固体光源が、相互に対して固定された既知の場所にあるため、より効率的な光結合アプローチが有効にされる。
【0059】
他の実施形態では、照明/変調サブシステム100の中の部品の数をさらに削減するために、複数の固体光源が同一の物理的半導体内に位置する。そのような実施形態では、半導体内の固体光源101は、同一の波長、異なる波長、またはそれらの組み合わせであり得る。固体光源101がレーザダイオードまたは他の固体レーザであるとき、これらの実施形態は、「レーザバー」106と呼ばれる。担体の実施形態と同様に、レーザバー106の利点は、各固体光源101の非常に良好に特徴付けられ、特定された場所である。全体的に、レーザバー106は、個別半導体の数、システム構成要素の総数、したがって、サブシステム複雑性および費用の有意な削減をもたらす。
【0060】
同一の波長での光強度を増加させるために、その波長の複数の固体光源101を使用することができる。いくつかの実施形態では、同一の波長の固体光源101は、効率的な光結合を可能にするために、相互に隣接し、かつ非常に近くにある。
図8は、2つのレーザダイオードの12個のグループ(合計24個のレーザエミッタ)から成るレーザバー106を示す。ペア107を形成する2つのレーザは、共通波長を有し、各ペア107は、他のペアとは異なる波長を有する(この実施形態では、バー106にわたる12個の明確に異なる波長)。各ペア107は、隣接ペア107から480ミクロン離間され、ペア107の2つのエミッタ101間の間隔は、5ミクロンである。DFBダイオードレーザを採用する実施形態では、異なるピッチを伴う格子を各ペア107に適用することによって、単一の半導体チップを使用して、異なる波長が達成される。DFBレーザの発光は、概して、いくつかの実施形態では有利である、単一のモードである。当業者であれば、担体105およびバーの実施形態106によって包含される、全固体光源101ならびにそれらの発光波長の多数の順列を認識する。本明細書で開示される実施形態は、本発明の範囲を限定することを目的としていない。
【0061】
いくつかの実施形態では、各エミッタ用の専用熱電冷却器は、費用およびサイズが桁違いであり得、単一の全体冷却器または温度制御は、十分な局所温度制御を提供しない場合がある。そのような場合において、固体光源付近の局所加熱設備を使用して、半導体内の局所温度制御を達成することができる。加熱設備の実施形態は、印加された電流が局所熱に変換されることを可能にする、固体光源付近の局所抵抗器である。このアプローチは、単一の温度制御設備が加熱/冷却負荷の大半を印加することを可能にする一方で、局所設備は、各固体光源の微調整を可能にする。これは、局所温度を変化させることによって、より高い程度の安定性ならびに各レーザの発光波長を同調する能力の両方を可能にする。
【0062】
(サンプリングサブシステムへの固体光源の効率的な結合のための方略)
実施形態の固体光源が、個別パッケージの中に存在する、またはより少ない数の担体またはバーの上にグループ化されるかにかかわらず、隣接固体光源の間に常に有限距離があるため、固体光源の発光開口の密度は理想的ではない。この間隔は、例えば、個別固体光源パッケージのサイズ、ならびに有限間隔が熱を放散することを可能にする必要性によって、駆動することができる。本発明のいくつかの実施形態では、発光開口の密度は、関心事ではなく、断面が照明/変調サブシステム100内の全ての固体光源の発光開口を包含するように十分大きい、光ホモジナイザを使用して、個別固体光源の出力を収集し、組み合わせ、均質化することができる。しかしながら、この場合、固体光源からの光が、断面の領域全体にわたって実質的に均一に分配されているため、光ホモジナイザの出力時の光子束は理想よりも低い。これは、いくつかの実施形態では不利であり得る、システムのエタンデュの低減に対応する。
【0063】
エタンデュの低減が最小限化されるべきである実施形態では、個別固体光源の発光開口の出力をより効率的に組み合わせるための複数の方略がある。本発明の実施形態のうちのいくつかは、固体光源101または固体光源のペア107から光を収集し、それをシステム内の他の固体光源101または固体光源のペア107から収集された光と組み合わせるための手段として、光ファイバ108を組み込む(
図9参照)。複数の個別光ファイバ108は、ケーブル109に束ねられてもよい。一実施形態では、
図13で図示されるように、ファイバ108は、12個の固体光源101または固体光源のペア107のそれぞれから光を収集する。12本のファイバ108をケーブル109に束ねることができる。多くの固体光源の発光開口は、直径が約数ミクロンであり得る。本発明の実施形態のうちのいくつかは、(電気通信でしばしば使用される、小型コアの単一モードファイバとは対照的に)大型コアの多重モード光ファイバを使用することができる。発光開口の小さい直径に対する大きいファイバ直径は、光ファイバが、全ての直径で数十ミクロンの整合公差を伴って、発光開口から光を収集することを可能にする。発光開口の間隔および光ファイバ108のサイズに応じて、所与の光ファイバによって、1つよりも多くの開口から光を収集することができる(
図9参照)。
【0064】
そのようなアプローチの利点は、同等またはより少ない数の光ファイバを使用することによって、任意の数の固体光源の出力が組み合わせられることを可能にすることである。次いで、光ファイバの対向端を束に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、束は、円形の六角パックである。所与の直径の所与の数のファイバについて、この構成は、最小断面積を表し、したがって、最大光子束およびエタンデュを維持する。さらに、光ファイバは、サンプリングサブシステム200への収集された光の効率的な結合を可能にする、狭い面積の開口にそれらの出力を組み込む能力を保持しながら、固体光源(例えば、レーザバー等)の線形または他の幾何学的配列が加工されることを可能にする。レーザバーアセンブリは、レーザバー106、電気接点を伴うセラミック担体105、光ファイバ結合器(図示せず)、銅マイクロベンチ(図示せず)、および熱電冷却器(図示せず)を備えてもよい。アセンブリは、業界標準のバタフライパッケージ等の密封パッケージに収納することができる。いくつかの実施形態では、光ホモジナイザは、個別の光ファイバの出力を空間的および/または角度的に均質化するために、光ファイバ束の出力に配置することができる。そのような実施形態では、光子束およびエタンデュの任意の低減を最小限化するために、断面積を光ファイバの束の領域に合致させることができる。いくつかの実施形態では、出力束における光ファイバの配列は、光ホモジナイザの断面(例えば、正方形、六角形等)に合致させることができる。
【0065】
光ファイバ結合アプローチはまた、固体光源開口を伴う複数のアセンブリが、単一の出力開口に組み込まれることも可能にする。例えば、
図10は、それぞれ12のレーザエミッタのペア107を伴う、4本のレーザバー106を示す(
図8参照)。各エミッタペア107から光を収集するために、多重モード光ファイバ110が使用されてもよい(合計48本のファイバ108)。次いで、48本のファイバ108の対向端は、円形の六角パック出力フェルール111に組み込まれる。
【0066】
(照明/変調サブシステム出力の均質化のための方法および装置)
組織サンプリングサブシステム200の入力において、再現可能であり、好ましくは、均一な放射輝度を提供するために、光学ディフューザ、光パイプ、および他のスクランブラ等の光ホモジナイザ112を、照明/変調サブシステム100のいくつかの実施形態に組み込むことができる。
図11は、2つの対向屈曲を伴うグラウンドディフューザおよび六角形断面光パイプを備える、光ホモジナイザ例112を示す。均一な放射輝度は、良好な測光精度および組織の均等な照射を確保することができる。均一な放射輝度はまた、固体光源間の製造差と関連付けられる誤差を低減することもできる。正確かつ精密な測定を達成するために、本発明の種々の実施形態で、均一な放射輝度を利用することができる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,684,099号を参照されたい。
【0067】
磨りガラス板は、光学ディフューザの実施例である。板の研磨表面は、固体光源およびその伝達光学部から発散する放射角を効果的にスクランブルする。光パイプの出力において空間的に均一であるように、放射の強度を均質化するために、光パイプを使用することができる。加えて、二重屈曲を伴う光パイプが、放射角をスクランブルするであろう。均一な空間的強度および角度分布の作成のために、光パイプの断面は、円形となるべきではない。正方形、六角形、および八角形の断面が、効果的なスクランブリング幾何学形状である。光パイプの出力は、組織サンプラの入力に直接結合することができるか、または光が組織サンプラに送信される前に付加的な伝達光学部と併せて使用することができる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/832,586号「Illumination Device and Method for Spectroscopic Analysis」を参照されたい。
【0068】
(サンプリングサブシステム)
図1は、組織サンプリングサブシステム200の配向が照明/変調(100)およびデータ収集(300)サブシステムの間にあることを示す。
図1を参照すると、組織サンプリングサブシステム200は、照明/変調サブシステム100によって生成された放射線をサンプル(例えば、対象の組織)に導入し、サンプルによって吸収されない放射線の一部分を収集し、測定のためにその放射線をデータ収集サブシステム300の中の光検出器に送信する。
図12から17は、組織サンプリングサブシステム例200の要素を描写する。
図12を参照すると、組織サンプリングサブシステム200は、光入力202、組織を調べる組織インターフェース206を形成するサンプリング表面204、および光出力207を有する。サブシステムはさらに、サンプリング表面204を保持し、組織をインターフェース206に位置付ける、
図13で描写される人間工学的装置210を含む。出力211は、例えば、マイクロプロセッサであり得る、処理回路に信号を送信する。例示的なサブシステムでは、組織インターフェースを温度自動調節するデバイスがいくつかの実施形態に含まれる。他の実施形態では、組織とサンプリング表面との間の光学インターフェースを改良するために、屈折率整合流体を使用することができる。改良型インターフェースは、誤差を低減させ、効率を増加させ、それにより、正味属性信号を向上させることができる。例えば、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,622,032号、第6,152,876号、第5,823,951号、および第5,655,530号を参照されたい。
【0069】
組織サンプリングサブシステム200の光入力202は、照明/変調サブシステム100から放射線(例えば、光パイプから退出する光)を受容し、その放射線を組織インターフェース206に伝達する。実施例として、光入力は、照明/変調サブシステムから適切な量の光を収集する、幾何学的パターンで配列される光ファイバ束を備えることができる。
図14は、1つの配列例を描写する。平面図は、円形パターンに配列された6つのクラスタ208を含む、サンプリング表面における入力および出力ファイバの端部を幾何学形状で描写する。各クラスタは、組織から拡散反射された光を収集する、4本の中央出力ファイバ212を含む。4本の中央出力ファイバ212の各グループ化の周囲には、中央出力ファイバ212の縁と入力ファイバ214の内側リングとの間で約100μmの間隙を確保する、材料の円筒215がある。100μmの間隙は、真皮内のエタノールを測定するために重要であり得る。
図14に示されるように、入力ファイバ214の2つの同心円状リングは、材料の円筒215の周囲に配列される。一実施形態例に示されるように、32本の入力ファイバが4本の出力ファイバを包囲する。
【0070】
図15は、サンプリングサブシステムのクラスタ幾何学形状の代替案を実証する。この実施形態では、照明および収集光ファイバが、線形幾何学形状に配列される。各行は、照明または光収集のいずれか一方のためのものであり得、かつ十分な信号対雑音を達成するように好適な任意の長さであり得る。加えて、行の数は、サンプリングサブシステムによって覆われた物理的領域を改変するために、2以上であり得る。潜在的な照明ファイバの総数は、固体光源サブシステムの放射領域の物理的サイズ(例えば、実施形態に応じた、ファイバ束または光ホモジナイザの断面の面積)、および各ファイバの面積に依存する。いくつかの実施形態では、照明ファイバの数を増加させるために、複数の固体光源サブシステムを使用することができる。収集ファイバの数が、データ収集サブシステム(300)の光検出器よりも広い領域をもたらす場合、サンプリングサブシステムの出力領域のサイズを縮小するために、開口が後に続く、光パイプまたは他のホモジナイザを使用することができる。光パイプまたは他のホモジナイザの目的は、各収集ファイバが、開口を通過する光に実質的に等しく貢献することを確実にすることである。いくつかの実施形態では、光ホモジナイザを省略することができ、開口を単独で使用することができる。他の実施形態では、検出器の活性領域が、開口としての機能を果たす(例えば、明確に異なる開口がない)。この場合、活性領域に入射しない光が、効果的に口径食を受ける。
【0071】
本発明のサンプリングサブシステム(200)のいくつかの実施形態では、サンプルと相互作用する光プローブの一部分は、光ファイバの2つ以上の線形リボンのスタックから成ることができる。これらの配列は、光プローブインターフェースのサイズおよび形状が、目的とするサンプルおよび測定場所(例えば、手、指)のために適切に設計されることを可能にする。
図16は、リボンの線形スタックに基づくサンプリングサブシステムの実施形態例を示す。本発明で使用するための好適な実施形態に関する付加的な詳細は、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、同時係属の米国特許出願第12/185,217号および第12/185,224号で見出すことができる。
【0072】
組織被分析物測定デバイスの多くの実施形態では、光検出器が、システムの限界開口である。そのようなシステムでは、光検出器の立体受容角と一致する、より小さい開口から光を収集しながら、サンプル(組織)のより広い領域を照射する光プローブ設計を組み込むことによって、システムのスループット(および対応して信号対雑音比、SNR)を最適化することができる。
図16の光プローブ設計を参照すると、各収集ファイバ(黒い円)は、8本の照明ファイバ(白い円)によって包囲される。各収集ファイバについて、この面積の幾何学的差は、8本の照明ファイバのそれぞれが収集される光に貢献することを可能にする。このアプローチの正味の影響は、より多くの光が黒体光源から収集され、限界開口による口径食を受けることなくサンプルへ送達されることを可能にすることである。これは、広い放射領域(多くの黒体エミッタ等)を本質的に有する光源に有利であり得る。
【0073】
しかしながら、ダイオードレーザ等の半導体光源の光子束は、黒体光源の光子束よりもはるかに高くあり得る。結果として、限定数の半導体光源が、それらの黒体対照物に対してより小さい立体角を伴う同等または優れた光子束を送達することができる。これは、検出器の立体受容角よりも小さい光子放出の立体角(全ての半導体光源の複合立体角)をもたらし得る。換言すれば、光検出器よりもむしろ光源が、システムの有効限界開口である。そのような場合において、
図16に示されるもの等の光プローブ設計は、システムのスループットおよびSNRを最適化しない。そのような光プローブが本発明のいくつかの実施形態で好適であるが、代替的な実施形態が好ましくあり得る。他の実施形態では、照明光ファイバの数は、収集光ファイバの数以下であってもよい。これらの光プローブ設計は、光検出器のより広い領域と一致する、より広い収集領域とともに、固体光源の発光のより小さい領域と一致する、小さい照明領域を可能にする、サンプリング表面を有する。結果として、システムの全体的効率が向上させられる。
【0074】
サンプリングサブシステムはまた、1つ以上のチャネルを使用することもでき、チャネルは、照明および収集ファイバの特定の配向を参照する。配向は、1本または複数の照明ファイバの角度、1本または複数の収集ファイバの角度、1本または複数の照明ファイバの開口数、1本または複数の収集ファイバの開口数、および1本または複数の照明および収集ファイバの間の分離距離から成る。非侵襲測定の精度を向上させるために、同時または連続的のいずれかで、複数のチャネルを併せて使用することができる。一実施形態では、2チャネルサンプリングサブシステムが利用される。この実施例では、2つのチャネルが、同一の組織構造を測定している。したがって、各チャネルが、異なる視点から同一の組織の測定値を提供する。第2の視点は、散乱および吸収により信号の減結合に役立つ、付加的な分光情報を提供するのに役立つ。
図17を参照すると、サンプラ領域を増加させ、光学効率を向上させるために、ファイバのグループ(この実施例では1つの光源、1つの受容器#1、および1つの受容器#2)を1~N回複製することができる。ファイバのそれぞれは、異なる開口数および角度(0)を有することができる。ファイバXおよびYの間の距離は、光源・受容器分離を判定する。さらに、4チャネルサンプリングサブシステムを作成する、付加的な光源チャネルを追加することができる。当業者であれば、チャネル間の数および関係の多数の可能な変形例を認識する。
【0075】
多重チャネルサンプラが非侵襲グルコース測定に使用された実験では、結果は、2つのチャネルの組み合わせが、いずれか一方のチャネルと個別に比較したときに優れた測定精度を提供することを示した。この実施例は、2つのチャネルを使用するが、付加的なチャネルが、測定をさらに向上させることができる付加的な情報を提供することができる。
【0076】
多重チャネルサンプリングサブシステムの別の側面は、サンプル上に存在する汗またはローション等の局所干渉物質の検出および軽減を向上させる能力である。
図17は、局所干渉物質の存在下の多重チャネルサンプリングサブシステムの略図である。
図17は、組織インターフェースにおけるサンプリングサブシステム、局所干渉物質の層、および組織を示す。この実施例では、局所干渉物質による各チャネルの測定への寄与は同一である。これは、2つのチャネルについて異なるであろう組織信号から、両方のチャネルの中に存在する共通局所干渉物質信号を減結合する可能性を可能にする。
【0077】
図12を参照すると、クラスタ化入力および出力ファイバが、サンプリングヘッド216の中へ載置されたクラスタフェルールの中へ載置される。サンプリングヘッド216は、良好な組織インターフェースの形成を可能にするように平坦に研磨されたサンプリング表面204を含む。同様に、入力ファイバは、照明/変調サブシステム100と連動するように入力端で接続されたフェルール218の中へクラスタ化される。出力ファイバの出力端は、データ収集サブシステム300と連動するためにフェルール220の中へクラスタ化される。
【0078】
代替として、光入力は、入力光を組織インターフェースに伝達するために、光パイプ、屈折性および/または反射性光学部の組み合わせを使用することができる。組織サンプリングサブシステムの入力光学部が、容認可能な正味属性信号を達成するために、照明/変調サブシステム100から十分な光を収集することが重要である。
【0079】
組織インターフェースは、目的とする属性に関する組織の区画を標的にする様式で組織を照射し、これらの区画を通って有意な距離を移動しない光を判別することができる。実施例として、照明および収集光ファイバの間の100μm間隙は、少ししか属性情報を含有しない光を判別することができる。加えて、組織インターフェースは、組織の不均一な性質による誤差を低減させるように、ある組織の領域にわたって平均化することができる。組織サンプリングインターフェースは、正反射性で短い経路長の光線を拒絶することができ、かつシステムの正味属性信号を最大限化するために、高い効率で組織を通って所望の経路長を移動する光の一部分を収集することができる。組織サンプリングインターフェースは、上記で論議されるように、所定の幾何学形状で入力から組織へ光を導くために、光ファイバを採用することができる。光ファイバは、良好な属性情報を含有する、ある組織の層を標的にするパターンで配列することができる。
【0080】
入力および出力ファイバの間隔、角度、開口数、および配置は、効果的な深度標的を達成する様式で配列することができる。光ファイバの使用に加えて、組織サンプリングインターフェースは、組織の表面上に入力および出力領域のパターンを配置する、非ファイバベースの配列を使用することができる。非ファイバベースの組織サンプリングインターフェースの適正なマスキングは、入力光が組織内で最小距離を移動し、有効な属性情報を含有することを確実にする。最終的に、組織サンプリングインターフェースは、所定の様式で組織の温度を制御するように、温度自動調節することができる。組織サンプリングインターフェースの温度は、温度変動による予測誤差が低減されるように設定することができる。さらに、較正モデルを構築するときに参照誤差が低減される。これらの方法は、参照することにより本明細書に組み込まれる、「Method and Apparatus for Non-Invasive Blood Analyte Measurement with Fluid Compartment Equilibration」と題された、米国特許出願第09/343,800号で開示されている。
【0081】
組織サンプリングサブシステム200は、再現可能な様式でサンプリングインターフェース204を覆って組織を位置付ける、人間工学的装置またはガイド213を採用することができる。指をサンプリング表面へ再現可能に誘導する、人間工学的装置例213が、
図13で描写されている。人間工学的装置213は、それを通る開口部219を含む、基部217を含む。開口部219は、基部の上面と略同一平面上にサンプリング表面204を位置付けるように、その中にサンプルヘッド216を受容するためにサイズ決定される。組織サンプリングインターフェースの人間工学に細心の注意を払わなければならず、そうでなければ、有意なサンプリング誤差が生じ得る。本明細書で説明されるシステムの変形例を使用して、代替的な部位、例えば、指先の最上部または掌側あるいは前腕もまた、適応させることができる。
【0082】
組織サンプリングサブシステム200の出力は、組織を通ってデータ収集サブシステム300の中の光検出器まで容認可能な経路を移動した、組織によって吸収されていない光の一部分を伝達する。組織サンプリングサブシステム200の出力は、光検出器上に出力光を集束させるために、屈折性および/または反射性光学部の任意の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態では、サンプル依存性であり得る空間および角度効果を軽減するために、収集された光が均質化される(参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,684,099号、Apparatus and Methods for Reducing Spectral Complexity in Optical Samplingを参照)。
【0083】
(データ収集サブシステム)
データ収集サブシステム300は、サンプリングサブシステムからの光信号をデジタル表現に変換する。
図18は、データ収集サブシステム300の概略図である。本発明の少なくとも1つの実施形態の利点は、干渉分光計と同様に、全ての所望の波長を測定するために、単要素検出器のみが必要とされることである。アレイ検出器およびそれらの支持電子機器は、それらの高価な性質により、有意な欠点である。
【0084】
光検出器は、入射光を時間の関数として電気信号に変換する。1.0~2.5μmのスペクトル範囲内で感受性がある検出器の実施例は、InGaAs、InAs、InSb、Ge、PbS、およびPbSeを含む。本発明の実施形態例は、1.0~2.5μm範囲内の光に感受性がある、1mmの熱電的に冷却された拡張範囲InGaAs検出器を利用することができる。2.5μm拡張範囲InGaAs検出器は、低いジョンソン雑音を有し、結果として、組織サンプリングサブシステムから発散する光子束に対するショット雑音制限性能を可能にする。拡張InGaAs検出器は、3つの非常に重要なアルコール吸収特徴が位置する、2.0~2.5μmスペクトル領域中のピーク感度を有する。液体窒素で冷却されたInSb検出器と比較して、熱電的に冷却された拡張範囲InGaAsは、商品にとってより実用的であり得る。また、この検出器は、1.0~2.5μmスペクトル領域中で120dbc以上の直線性を示す。アルコール測定システムが代替的な波長領域を利用する場合、代替的な検出器が好適であり得る。例えば、目的とする波長範囲が300~1100nm範囲内であった場合、シリコン検出器が好適であり得る。所望の光検出器が、基本的な感度、雑音、および速度要件を満たす限り、任意の光検出器を使用することができる。
【0085】
データ収集サブシステム300の残りの部分は、検出器からの電気信号を増幅してフィルタにかけ、次いで、アナログ・デジタル変換器、デジタルフィルタリング、および同等の時間間隔から同等の位置間隔へのデジタル信号の再サンプリングを用いて、結果として生じるアナログ電気信号を、そのデジタル表現に変換する。アナログ電子機器およびADCは、信号に固有の高いSNRおよび直線性をサポートしなければならない。信号のSNRおよび直線性を保つために、データ収集サブシステム300は、少なくとも100dbcのSNRおよびひずみをサポートすることができる。データ収集サブシステム300は、信号のデジタル化表現を生じることができる。いくつかの実施形態では、24ビットデルタシグマADCを96または192kHzで動作させることができる。(デルタシグマADCにおいて一般的な2つ以上の代わりに)デジタル化する信号のチャネルが1つしかないシステムでは、信号をADCの両方の入力の中へ通し、デジタル化に続いて、平均化することができる。この動作は、ADCによって導入される任意の無相関雑音を低減させるのに役立つことができる。システム性能要件が許可すれば、サンプル収集が、同等の時間間隔で捕捉されるよりもむしろ、固体光源変調と同期化される、代替的なアナログ・デジタル変換器を使用することができる。デジタル化信号は、以下で論議されるように、さらなる処理のために、コンピュータサブシステム400に渡すことができる。
【0086】
一定時間サンプリングデータ収集サブシステム300は、信号をデジタル化する他の方法と比べて、いくつかの明確に異なる利点を有する。これらの利点は、より広いダイナミックレンジ、より低い雑音、低減したスペクトルアーチファクト、検出器雑音制限動作、およびより単純かつ安価なアナログ電子機器を含む。加えて、一定時間サンプリング技法は、ADCの前にアナログ電子機器に導入された周波数応答ひずみに対するデジタル補償を可能にする。これは、増幅およびフィルタリング回路における非線形位相誤差、ならびに光検出器の理想的ではない周波数応答を含む。均一にサンプリングされたデジタル信号は、累積周波数応答がアナログ電子機器の伝達関数の逆数である、1つ以上のデジタルフィルタの適用を可能にする(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,446,878号を参照)。
【0087】
(コンピュータサブシステム400)
コンピュータサブシステム400は、データ収集サブシステム300から取得されたデジタル化データを波長スペクトルと対比した強度に変換すること、スペクトルにスペクトル異常値チェックを行うこと、目的とする属性の判定に備えたスペクトル前処理、目的とする属性の判定、システム状態チェック、ユーザインターフェースと関連付けられる表示および処理要件、ならびにデータ転送および記憶等の複数の機能を果たす。いくつかの実施形態では、コンピュータサブシステムは、本発明の他のサブシステムに接続される、専用パーソナルコンピュータまたはラップトップコンピュータに含有される。他の実施形態では、コンピュータサブシステムは、専用組込型コンピュータである。
【0088】
検出器からのデジタル化データを波長スペクトルと対比した強度に変換した後、コンピュータシステムは、異常値または不良なスキャンについてスペクトルをチェックすることができる。異常値サンプルまたは不良なスキャンは、測定された信号と目的とする性質との間の仮定された関係に違反するものである。異常値条件の実施例は、較正された機器が、周囲温度、周囲湿度、振動耐性、構成要素公差、電力レベル等の特定動作範囲外で動作させられる、条件を含む。加えて、サンプルの組成または濃度が、較正モデルを構築するために使用されたサンプルの組成または濃度範囲とは異なる場合に、異常値が生じ得る。較正モデルについては、本開示において以降で論議する。異常値または不良なスキャンは、削除することができ、残りの良好なスペクトルは、測定のための平均単一ビームスペクトルを生じるように、ともに平均化することができる。強度スペクトルは、スペクトルの-10を底とする対数(-log10)を取り込むことによって、吸光度に変換することができる。吸光度スペクトルは、雑音を再正規化するように拡大縮小することができる。
【0089】
較正サブシステム500から取得される較正モデルと併せて、目的とする属性を判定するために、拡大縮小された吸光度スペクトルを使用することができる。目的とする属性の判定後、コンピュータサブシステム400は、結果830を、例えば、対象に、オペレータまたは管理者に、記録システムに、または遠隔にモニタに報告することができる。コンピュータサブシステム400はまた、結果の良好性の信頼のレベルを報告することもできる。信頼レベルが低い場合、コンピュータサブシステム400は結果を保留して、対象に再検査するように頼むことができる。必要であれば、是正措置を行うようにユーザに指図する、付加的な情報を伝えることができる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国出願第20040204868号を参照されたい。結果は、ディスプレイ上で視覚的に、音声によって、および/または印刷された手段によって、報告することができる。加えて、結果は、属性の履歴記録を形成するように記憶することができる。他の実施形態では、結果は、記憶し、インターネット、電話回線、または携帯電話サービスを介して、遠隔監視または記憶設備に転送することができる。
【0090】
コンピュータサブシステム400は、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、ディスプレイ、および好ましくは通信リンクを含む。CPUの実施例は、Intel Pentium(登録商標)マイクロプロセッサである。メモリは、スタティックランダムアクセスメモリ(RAM)および/ダイナミックランダムアクセスメモリであり得る。記憶装置は、不揮発性RAMまたはディスクドライブを用いて達成することができる。液晶、LED、または他のディスプレイが好適であり得る。通信リンクは、実施例として、高速シリアルリンク、イーサネット(登録商標)リンク、または無線通信リンクであり得る。コンピュータサブシステムは、例えば、受信および処理されたインターフェログラムから属性測定値を生じ、較正保守を行い、較正移動を行い、機器診断を実行し、測定されたアルコール濃度および他の関連情報の履歴を記憶し、いくつかの実施形態では、データおよび新しいソフトウェア更新を送受信するように遠隔ホストと通信することができる。
【0091】
コンピュータシステム400はまた、対象のアルコール測定記録および対応するスペクトルの外部データベースへの転送を可能にする、通信リンクを含有することもできる。加えて、新しいソフトウェアをコンピュータにダウンロードし、多変量較正モデルを更新するために、通信リンクを使用することができる。コンピュータシステムは、情報家電と見なすことができる。情報家電の実施例は、携帯情報端末、ウェブ対応携帯電話、およびハンドヘルドコンピュータを含む。
【0092】
(較正サブシステム500)
アルコール測定を取得するために、スペクトル情報と関連して、較正モデルが使用される。いくつかの実施形態では、較正モデルは、多種多様の環境条件で複数の対象についての血液参照測定値および同時分光データを収集することによって形成される。これらの実施形態では、一連の血中アルコール濃度にわたって、分光データを各対象から収集することができる。他の実施形態では、ハイブリッド較正モデルは、対象スペクトルのアルコール濃度を測定するものであり得る。この場合、ハイブリッドモデルという用語は、生体外および生体内スペクトルデータの組み合わせを使用して、部分最小二乗(PLS)較正モデルが作成されたことを表す。データの生体外部分は、透過測定のために構成された非侵襲測定システムを使用して測定された、500mg/dLの水中アルコールの0.1mm経路長透過スペクトルであった。透過スペクトルは、水の0.1mm経路長透過スペクトルに比例し、吸光度に変換され、単位経路長および濃度に正規化された。
【0093】
組織を通る光伝搬は、拡散反射光学組織サンプラ設計、生理学的変数、および波数の複合関数である。その結果として、組織を通る光の経路長は、無分散透過測定において遭遇しない、波数依存を有する。波数依存に対処するために、市販の光線追跡ソフトウェアパッケージ(TracePro)を使用したモンテカルロシミュレーションを介して、ヒト組織の散乱性質との光学組織サンプラの相互作用がモデル化された。光・組織相互作用の結果として生じるモデルを使用して、波数の関数としての真皮および皮下組織層を通した光の有効経路長の推定値が生成された。有効経路長(1eff)は、以下のように定義され、
【0094】
【数1】
式中、vは、波数であり、l
iは、モンテカルロシミュレーションにおいてi番目の光線によって移動された経路長[mm]であり、Nは、シミュレーションにおける光線の総数であり、
aは、(波数依存性)吸収係数[mm
-1]である。その生体内の大きい吸収により、水は、有効経路長に有意な影響を及ぼす唯一の被分析物である。したがって、有効経路長計算の目的で、使用された吸収係数は、生理学的濃度での水の吸収係数であった。次いで、拡散反射光学サンプラによって測定される波数依存性経路長を表す、補正されたアルコールスペクトルを形成するように、算出された経路関数によって、(透過率で測定されるような)アルコール吸光度スペクトルが拡大縮小された。この補正されたスペクトルは、較正スペクトルへのアルコールの数学的加算のための基礎スペクトルを形成した。
【0095】
生体内データは、アルコールを消費していない個人から収集された非侵襲組織スペクトルを含んだ。種々のアルコール「濃度」(0~160mg/dLに及ぶ)によって加重されたアルコール純粋成分スペクトルを、非侵襲組織スペクトルデータに追加することによって、ハイブリッドモデルが形成された。PLS較正モデルは、ハイブリッドスペクトルデータに合成アルコール濃度を回帰することによって構築された。
図19は、ハイブリッド較正形成プロセスの概略図である。この研究でのハイブリッド較正は、3ヶ月にわたって133人の対象から収集された、約1500の非侵襲組織スペクトルを使用した。
【0096】
アルコールを消費した対象から収集されたスペクトルから構築された較正モデルよりもむしろ、ハイブリッド較正モデルの使用が、有意な利点を提供することができる。ハイブリッドモデリングプロセスは、ヒト対象研究で消費のために安全と見なされるであろう(120mg/dLが安全な上限である)よりも高い濃度のアルコール(この研究では、最大160mg/dL)を含有する、較正スペクトルを生成することを可能にする。これは、より高いアルコール濃度をより正確に予測することができる、広範囲の被分析物濃度を伴うより強力な較正をもたらし得る。これは、現場で観察されるアルコール濃度が、臨床研究環境での最大安全用量の2倍以上であり得るため、重要であり得る。ハイブリッド較正プロセスはまた、組織内のアルコールとスペクトル干渉物質との間の相関の防止も可能にする。例えば、較正スペクトルへのアルコール信号のランダムな追加は、アルコール濃度が水濃度と相関することを妨げる。したがって、ハイブリッドアプローチは、測定が、アルコール濃度の代わりに組織含水量の変化を誤って追跡し得る可能性を防止する。
【0097】
いったん形成されると、較正が安定したままであり、長期間にわたって正確な属性予測を生じることが望ましい。このプロセスは、較正保守と呼ばれ、個別に、または併せて使用することができる、複数の方法から成ることができる。第1の方法は、それを本質的にロバストにする様式で較正を作成することである。いくつかの異なる種類の機器および環境変動が、較正モデルの予測能力に影響を及ぼし得る。機器および環境変動を較正モデルに組み込むことによって、この変動の影響の大きさを低減させることが可能であり、望ましい。
【0098】
しかしながら、較正期間中に機器の状態の可能な範囲全体に及ぶことは困難である。システム順列は、機器を較正モデルの空間外で動作させ得る。機器が不適切にモデル化された状態にある間に行われる測定は、予測誤差を示し得る。医学的に有意な属性の生体内光学測定値の場合、これらの種類の誤差は、システムの有用性を低下させる誤った測定値をもたらし得る。したがって、しばしば、機器の状態を継続的に検証して補正するために、機器の寿命の間に、付加的な較正保守技法を使用することが有利である。
【0099】
問題のある機器および環境変動の実施例は、水蒸気またはCO2ガス等の環境干渉物質のレベルの変化、機器の光学的構成要素の整合の変化、機器の照明システムの出力電力の変動、および機器の照明システムによって出力される光の空間および角度分布の変化を含むが、それらに限定されない。
【0100】
較正保守技法は、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,983,176号「Optically Similar Reference Samples and Related Methods for Multivariate Calibration Models Used in Optical Spectroscopy」、米国特許第7,092,832号「Adaptive Compensation for Measurement Distortions in Spectroscopy」、米国特許第7,098,037号「Accommodating Subject and Instrument Variations in Spectroscopic Determinations」号、および米国特許第7,202,091号「Optically Similar Reference Samples」で論議されている。開示された方法のうちのいくつかでは、経時的に機器を監視するために、目的とする属性を含有する場合もあり、含有しない場合もある、積分球等の環境的に不活性の非組織サンプルが使用される。サンプルは、組織測定と同様に、サンプリングサブシステムを用いて、機器またはインターフェースの光路に組み込むことができる。サンプルは、透過率または反射率を使用することができ、安定したスペクトル特徴を含有することができるか、またはいかなる各自のスペクトル特徴も寄与しない。スペクトルが経時的に安定しているか、または予測可能である限り、材料は、固体、液体、またはゲル材料であり得る。経時的にサンプルから収集されるスペクトルの任意の原因不明の変化は、機器が環境影響による摂動またはドリフトを受けていること示す。次いで、正確な属性測定を確保するために、ヒトにおける後続の組織測定値を補正するように、スペクトル変化を使用することができる。
【0101】
較正保守の成功を達成するための別の手段は、経時的に機器上で収集される測定を使用して、較正を更新することである。通常、そのような更新を行うために、目的とする被分析物性質の参照値の知識が必要とされる。しかしながら、いくつかの用途では、参照値は、必ずではないが、通常、特定の値であることが知られている。この場合、被分析物性質の特定の値が各測定について分かっていなくても、較正を更新するために、この知識を使用することができる。例えば、居住型療養施設でのアルコールスクリーニングでは、アルコール消費制限に従い、したがって、ゼロのアルコール濃度を有する個人に、個人によって行われる大多数の測定が行われる。この場合、本発明の種々の実施形態に従って開示されるデバイスから取得される、アルコール濃度測定または関連スペクトルを、参照値としての推定ゼロと併せて使用することができる。したがって、較正は、新しい情報が現場で収集されると、それを含むように更新することができる。目的とする被分析物性質測定において任意のシステム特有のバイアスを除去するために、システム製造または設置時に推定ゼロを伴う測定値を使用することができるため、このアプローチはまた、較正移動を行うために使用することもできる。較正保守更新または較正移動実装は、制限ではないが、直交信号補正(OSV)、直交モデリング技法、ニューラルネットワーク、逆回帰方法(PLS、PCR、MLR)、直接回帰方法(CLS)、分類方式、単純中央または移動窓、主成分分析、またはそれらの組み合わせ等の種々の手段によって達成することができる。
【0102】
いったん較正が形成されると、しばしば、較正を全ての既存および将来のユニットに移動させることが望ましい。このプロセスは、一般的に較正移動と呼ばれる。必要とされないが、較正移動は、較正が製造される各システムで判定される必要性を妨げる。これは、商品の成功または失敗の間の差に影響を及ぼし得る、有意な時間および費用の節約を表す。較正移動は、光学的および電子的構成要素がユニットごとに異なり、全体で、複数の機器から取得されるスペクトルの有意差をもたらし得るという事実から生じる。例えば、2つの固体光源は、異なる色温度を有することができ、それにより、2つの光源に対する異なる配光をもたらす。2つの検出器の応答性もまた、有意に異なることができ、付加的なスペクトル差をもたらし得る。
【0103】
較正保守と同様に、較正移動を効果的に達成するために、複数の方法を使用することができる。第1の方法は、複数の機器を用いて較正を構築することである。複数の機器の存在は、較正形成プロセス中に、機器差と関連付けられるスペクトル変動が判定され、属性信号に対して直交にされることを可能にする。このアプローチは、正味属性信号を低減させるが、較正移動の効果的な手段であり得る。
【0104】
付加的な較正移動方法は、較正を構築するために使用されるものに対してシステムの分光的特徴の差を明示的に判定することを伴う。この場合、次いで、システム上の属性予測の前にスペクトル測定を補正するために、スペクトル差を使用することができるか、または予測された属性値を直接補正するために使用することができる。機器に特有の分光的特徴は、目的とするシステムから収集される安定したサンプルのスペクトルおよび較正を構築するために使用されるものの相対差から判定することができる。較正保守の節で説明されるサンプルはまた、較正移動にも適用可能である。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,441,388号「Method and Apparatus for Spectroscopic Calibration Transfer」を参照されたい。
【0105】
(アルコール測定法)
目的とする用途に応じて、2つの様相の観点で、被分析物性質の測定値を考慮することができる。第1の様相は、「ウォークアップ」または「汎用」であり、サンプル(例えば、対象)の以前の測定値が、現在の目的とする測定値から被分析物性質を判定する際に使用されない、被分析物性質を表す。生体内アルコールを測定する場合、大抵の場合に検査されている個人がアルコール測定デバイスで以前に測定されていないであろうから、飲酒運転の実施は、この様相に入る。したがって、その個人の予備知識が、被分析物性質の現在の判定に利用可能ではない。
【0106】
第2の様相は、「登録型」または「調節型」と称され、サンプルまたは対象からの以前の測定値が、現在の測定値の被分析物性質を判定する際に利用可能である、状況を表す。この様相を適用することができる環境の実施例は、限定数の人が自動車または機械を運転または操作することを許可される、自動車インターロックである。登録型または調節型用途の実施形態に関する付加的な情報は、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、「Method and Apparatus for Tailoring Spectroscopic Calibration Models」と題された米国特許第6,157,041号および第6,528,809号で見出すことができる。登録型用途では、予測オペレータがバイオメトリックを介して機器または自動車を使用する権限を与えられているかどうかを同一の分光測定が評価することができる一方で、被分析物性質が健康レベル(例えば、飲酒していないこと)を評価することができるため、バイオメトリック測定との被分析物性質の測定の組み合わせが特に有利であり得る。
【0107】
(分光信号からバイオメトリック検証または識別を判定するための方法)
バイオメトリック識別は、個人または他の生物学的実体を識別するために1つ以上の物理的または挙動的特徴を使用するプロセスを表す。識別および検証といった、2つの共通バイオメトリックモードがある。バイオメトリック識別は、「私はあなたを知っていますか?」という質問に答えようとする。バイオメトリック測定デバイスは、標的個人から一式のバイオメトリックデータを収集する。この情報のみから、それは、個人がバイオメトリックシステムに以前に登録されたかどうかを評価する。FBIの自動指紋識別システム(AFIS)等のバイオメトリック識別タスクを行うシステムは、概して、非常に高価であり(数百万ドル以上)、未知のサンプルと何十万または何百万件もの入力を含有する膨大なデータベースとの間の合致を検出するために何分も必要とする。バイオメトリック検証では、関連質問は、「あなたは自分が主張する人ですか?」である。このモードは、コード、磁気カード、または他の手段を使用して、個人が身元を主張し、デバイスが、標的バイオメトリックデータを意図された身元と対応する登録データと比較することによって、個人の身元を確認するためにバイオメトリックデータを使用する場合に使用される。制御環境内のアルコールまたは乱用物質の存在または濃度を監視するための本装置および方法は、いずれか一方のバイオメトリックモードを使用することができる。
【0108】
本発明の種々の実施形態で使用するためにも好適である、これら2つのモードの間の少なくとも1つの変化形も存在する。この変化形は、少数の個人が登録データベースに含有され、バイオメトリック用途が、標的個人が登録されたセットの間にあるかどうかという判定のみを必要とする場合に生じる。この場合、個人の正確な身元は必要とされず、したがって、該タスクは、上記で説明される識別タスクとはいくぶん異なる(しばしば識別タスクよりも容易である)。この変化形は、検査された個人が、承認されたグループの一部であるとともに酔っていない状態でなければならないが、個人の特定の身元が必要とされない場合に、バイオメトリックシステムが方法で使用される用途において有用であり得る。「身元特性」という用語は、上記のモード、変化形の全て、およびそれらの組み合わせまたは変形例を含む。
【0109】
較正、登録、および標的スペクトルデータといった、バイオメトリック測定と関連付けられる3つの主要なデータ要素がある。較正データは、バイオメトリック判定のために重要であるスペクトル特徴を確立するために使用される。この一式のデータは、既知の身元の1人または複数の個人から収集される、一連の分光組織測定値から成る。好ましくは、これらのデータは、複数のスペクトルが各個人で収集される一方で、個人が体験することが予期される生理的状態のほぼ全範囲に及ぶように、ある期間および一式の条件にわたって収集される。加えて、スペクトル収集に使用される1つまたは複数の機器はまた、概して、それまたは姉妹機器が実際の使用中に遭遇する可能性が高い機器および環境効果の全範囲に及ぶべきである。次いで、これらの較正データは、個人内、機器(機器内および間の両方)、および環境影響への感度を最小限化しながら、個人間のスペクトル差に敏感であるスペクトル波長または「因数」(すなわち、波長またはスペクトル形状の線形結合)を確立するような方法で、分析される。次いで、これらの波長または因数は、後にバイオメトリック判定タスクを行うために使用される。
【0110】
バイオメトリック判定に使用される第2の主要な一式のスペクトルデータは、登録スペクトルデータである。所与の対象または個人に対する登録スペクトルの目的は、その対象の独特の分光特性の「表現」を生成することである。登録スペクトルは、バイオメトリックシステムによって承認されるか、または別様に認識される必要がある、個人から収集される。各登録スペクトルは、数秒または数分の期間にわたって収集することができる。測定値間の類似性を確保し、アーチファクトが検出された場合に1つ以上の測定値を除外するように、2つ以上の登録測定値を個人から収集することができる。1つ以上の測定値が破棄された場合、付加的な登録スペクトルを収集することができる。所与の対象に対する登録測定値は、ともに平均化し、別様に組み合わせ、または別々に記憶することができる。いずれの場合でも、データは、登録データベースに記憶される。場合によっては、各一式の登録データは、スペクトルが測定された個人の識別子(例えば、パスワードまたはキーコード)と結び付けられる。識別タスクの場合、識別子は、誰がいつバイオメトリックシステムにアクセスしたかという記録管理目的で使用することができる。検証タスクについては、識別子は、それに対して検証が行われる適正な一式の登録データを抽出するために使用される。
【0111】
バイオメトリックシステムに使用される第3および最後の主要な一式のデータは、個人が識別または検証にバイオメトリックシステムを使用しようとするときに収集される、スペクトルデータである。これらのデータは、標的スペクトルと呼ばれる。それらは、較正セットから取得された分類波長または因数を使用して、登録データベース(または身元検証の場合はデータベースのサブセット)に記憶された測定値と比較される。バイオメトリック識別の場合、本システムは、標的スペクトルを登録スペクトルの全てと比較し、登録された個人のデータのうちの1つ以上が標的スペクトルに十分類似している場合に合致を報告する。1人よりも多くの登録された個人が標的に合致する場合には、合致する個人の全てを報告することができるか、または最良合致を識別された個人として報告することができるかのいずれか一方である。バイオメトリック検証の場合、標的スペクトルは、磁気カード、タイプされたユーザ名または識別子、トランスポンダ、別のバイオメトリックシステムからの信号、または他の手段を使用して収集される、主張された身元を伴う。次いで、主張された身元は、それに対してバイオメトリック類似性判定が行われ、身元が検証または拒否される、登録データベースから、対応する一式のスペクトルデータを読み出すために使用される。類似性が不十分である場合には、バイオメトリック判定がキャンセルされ、新しい標的測定が試行されてもよい。
【0112】
検証の1つの方法では、スペクトル因数を生成するように、主成分分析が較正データに適用される。次いで、これらの因数は、類似性計量としてマハラノビス距離およびスペクトル残留規模値を生成するように、標的スペクトルと登録スペクトルとの間で得られるスペクトル差に適用される。身元は、前述の距離および規模がそれぞれについて記載される所定の閾値未満である場合のみ検証される。同様に、バイオメトリック識別の方法例では、マハラノビス距離およびスペクトル残留規模は、データベーススペクトルのそれぞれに対して、標的スペクトルについて計算される。試験スペクトルを提供する個人の身元は、それぞれについて記載される所定の閾値未満である最小マハラノビス距離およびスペクトル残留規模を生じた、データベース測定と関連付けられる1人または複数の個人として確立される。
【0113】
方法例では、限定数の人が承認されている動作(例えば、分光測定を行う、制御された施設に進入する、入国管理チェックポイントを通過する等)を個人が行なおうとするときに、識別または検証タスクが実装される。個人のスペクトルデータは、個人の身元の識別または検証に使用される。この方法では、個人は最初に、1つ以上の代表的な組織スペクトルを収集することによって、システムに登録する。2つ以上のスペクトルが登録中に収集された場合には、これらのスペクトルは、一貫性についてチェックし、それらが十分に類似している場合のみ記録することができ、登録データを破損するサンプルアーチファクトの可能性を制限する。検証の実装について、PINコード、磁気カード番号、ユーザ名、バッジ、音声パターン、他のバイオメトリック、または何らかの他の識別子等の識別子も収集し、1つまたは複数の確認された登録スペクトルと関連付けることができる。
【0114】
後続の使用中に、承認を獲得しようとする個人からスペクトルを収集することによって、バイオメトリック識別を行うことができる。次いで、このスペクトルは、登録された承認データベースの中のスペクトルと比較することができ、承認されたデータベース入力への合致が所定の閾値よりも良好であった場合、識別を行うことができる。検証タスクは、類似であるが、収集されたスペクトルに加えて、個人が識別子を提示することを要求することができる。次いで、識別子は、特定の登録データベーススペクトルを選択するために使用することができ、現在のスペクトルが選択された登録スペクトルに十分類似している場合に、承認を与えることができる。バイオメトリックタスクが、1人だけの個人が承認されている動作と関連付けられる場合には、検証タスクおよび識別タスクは同一であり、両方とも、別個の識別子を必要とすることなく唯一の承認された個人が動作を試行しているという確信に単純化する。
【0115】
バイオメトリック測定は、モードにかかわらず、線形判別分析、二次判別分析、K最近傍、ニューラルネットワーク、および他の多変量分析技法または分類技法を含む、種々の方法で行うことができる。これらの方法のうちのいくつかは、個人内較正データベースの中の基礎スペクトル形状(因数、荷重ベクトル、固有ベクトル、潜在的変数等)を確立し、次いで、登録データベースとの入力測定値の一貫性を判定するために標準異常値方法論(スペクトルF比、マハラノビス距離、ユークリッド距離等)を使用することに依存する。基礎スペクトル形状は、本明細書で開示されるような複数の手段によって生成することができる。
【0116】
第1に、基礎スペクトル形状は、較正データの単純スペクトル分解(固有分析、フーリエ分析等)に基づいて生成することができる。基礎スペクトル形状を生成する第2の方法は、参照することにより組み込まれる、「Methods and Apparatus for Tailoring Spectroscopic Calibration Models」と題された米国特許第6,157,041号で説明されるような一般モデルの作成に関する。この用途では、基礎スペクトル形状は、個人内スペクトル特徴に行われる較正手順を通して生成される。基礎スペクトル形状は、模擬構成変動に基づく較正の作成によって生成することができる。模擬構成変動は、実際の生理学的または環境あるいは機器変動によって導入される変動をモデル化することができるか、または単純に人為的な分光変動であり得る。基礎形状を判定する他の手段が、本発明の開示された実施形態の識別および検証方法に適用可能となるであろうと認識される。これらの方法は、前述の技法と併せて、またはその代わりのいずれかで、使用することができる。
【0117】
(較正チェックサンプル)
対象の安全を確保する使い捨て部品に加えて、器具が適正な稼働条件にあることを検証するために、使い捨て較正チェックサンプルを使用することができる。アルコール測定の多くの商業的用途では、後続の測定が正確なアルコール濃度または属性推定値を提供するであろうことを確実にするように、器具の状態が検証されなければならない。器具の状態は、しばしば、対象測定の直前にチェックされる。いくつかの実施形態では、較正チェックサンプルは、アルコールを含むことができる。他の実施形態では、チェックサンプルは、積分球等の環境的に安定したスペクトル的に不活性なサンプルであり得る。チェックサンプルは、分光サンプリングチャンバを通して注入または流動されるガスまたは液体であり得る。チェックサンプルはまた、アルコールを含有し得る、ゲル等の固体であり得る。チェックサンプルは、サンプリングサブシステムと連動するように構築することができるか、またはシステムの光路の別の領域に組み込むことができる。これらの実施例は、例証的であるように意図されており、種々の可能な較正チェックサンプルに限定的ではない。
【0118】
(変化方向(DOC)および変化率(ROC))
分光法を使用した、アルコール等の組織構成物質の濃度変化の方向および大きさの測定のための方法が、本発明の範囲内であると見なされる。本発明から取得される非侵襲測定値は、本質的に半時間分解される。これは、アルコール濃度等の属性が時間の関数として判定されることを可能にする。次いで、アルコール濃度の変化率および方向を判定するために、時間分解されたアルコール濃度を使用することができる。加えて、生理学的動態によって引き起こされる血液および非侵襲アルコール濃度の任意の差を部分的に補うために、変化方向情報を使用することができる。例えば、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,016,713号「Determination of Direction and Rate of Change of an Analyte」および米国特許出願第20060167349号「Apparatus for Noninvasive Determination of Rate of Change of an Analyte」を参照されたい。変化率および方向信号を増進するための種々の技法が明らかにされている。これらの技法のうちのいくつかは、加熱要素、ラブリフラクタント(rubrifractant)、および屈折率整合媒体を含む。本発明は、特定の形態の増進または平衡に限定されない。これらの増進は、本発明で必要とはされないが、例証目的のみで含まれる。
【0119】
(対象の安全性)
非侵襲アルコール測定の別の側面は、測定中の対象の安全性である。対象間の病原体の測定汚染または移動を防止するために、各対象を保護し、対象間の流体または病原体移動を防止するために使い捨て洗浄剤および/または保護表面を使用することが望ましいが、そうする必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、測定前に各対象のサンプリング部位および/またはサンプリングサブシステム表面を洗浄するために、イソプロピル拭き取り布を使用することができる。他の実施形態では、対象と機器との間の物理的接触を防止するために、各測定前にACLAR等の材料の使い捨て薄膜をサンプリングサブシステムと対象との間に配置することができる。他の実施形態では、洗浄および膜の両方を同時に使用することができる。本開示のサンプリングサブシステム部分で記述されるように、フィルムはまた、位置付けデバイスに取り付け、次いで、対象のサンプリング部位に適用することもできる。この実施形態では、位置付けデバイスは、サンプリングサブシステムと連動し、測定中に対象が移動することを防止することができる一方で、膜がその保護役を果たす。
【0120】
(局所干渉物質)
対象の測定では、サンプリング部位上の局所干渉物質の存在は、有意な関心事である。多くの局所干渉物質は、近赤外領域中で分光的特徴を有し、したがって、存在するときに有意な測定誤差を寄与する。本発明のある実施形態は、個別に、または併せて使用することができる3つの方法で、局所干渉物質の可能性に対処する。第1に、対象の安全性の節で説明されるものに類似する、使い捨て洗浄剤を使用することができる。洗浄剤の使用は、システムオペレータの判断によるか、または測定プロセスにおける強制ステップであるかのいずれかであり得る。異なる種類の局所干渉物質を個別に標的にする、複数の洗浄剤も使用することができる。例えば、油脂および油を除去するために1つの洗浄剤を使用することができる一方で、オーデコロンまたは香水等の消費財を除去するために別の洗浄剤を使用することができる。洗浄剤の目的は、システムの精度に影響を及ぼすことを防止するために、属性測定前に局所干渉物質を除去することである。
【0121】
局所干渉物質の存在を軽減するための第2の方法は、1つ以上の干渉物質がサンプリング部位上に存在するかどうかを判定することである。較正サブシステムで使用される多変量較正モデルは、モデル化されていない(局所的または別様の)干渉物質の存在に関する重要な情報をもたらす、固有の異常値計量を提供する。結果として、それらは、属性測定の信頼性への洞察を提供する。
図20は、臨床研究中に収集される非侵襲測定値からの異常値の計量値例を示す。(点の大多数から明確に分離される)大きい計量値の全ては、油脂が対象のサンプリング部位に意図的に適用された測定値に対応する。これらの計量は、異常値の原因を特異的に識別しないが、関連属性測定が疑わしいことを示す。測定の反復、代替的な較正モデルの適用、またはサンプリング部位洗浄手順等の固定応答をトリガするために、誇張異常値の計量値(例えば、固定閾値を超える値)を使用することができる。これは、「スペクトルチェックOK」決定点として
図20で表される。
【0122】
最終局所干渉物質軽減方法は、局所干渉物質の分光的特徴を含むように較正モデルを適合することを伴う。適合した較正モデルは、要求に応じて作成することができるか、または較正モデルの既存のライブラリから選択することができるかのいずれかである。ライブラリの中の各較正は、油等の異なる干渉物質または干渉物質の類を軽減することを標的にするであろう。いくつかの実施形態では、元の較正モデルによって説明されていない、収集されたスペクトルの部分に基づいて、適切な較正モデルを選択することができる。このスペクトルの部分は、較正モデル残余と呼ばれる。各局所干渉物質または干渉物質の類が、独特の近赤外スペクトルを有するため、較正モデル残余は、局所干渉物質を識別するために使用することができる。
【0123】
次いで、モデル残余または干渉物質の純スペクトル(記憶されたライブラリから取得される)は、較正を形成するために使用されるスペクトルに組み込むことができる。次いで、干渉物質に対して直角である属性信号の部分を判定することができるように、新しいスペクトルで多変量較正を再形成することができる。次いで、新しい較正モデルは、目的とする属性を測定し、次いで、属性測定精度への局所干渉物質の影響を低減させるために使用される。結果として生じるモデルは、干渉物質が存在しないときに、測定精度を犠牲にしてアルコール測定への干渉物質の影響を低減させるであろう。このプロセスは、較正免疫付与と呼ばれる。免疫付与プロセスは、
図19に示されるハイブリッド較正形成プロセスに類似するが、干渉物質のスペクトル変動の数学的加算という付加的なステップを含む。測定精度への免疫付与プロセスの影響により、各測定について可能性として考えられる干渉物質を識別し、全ての可能性として考えられる干渉物質に対して免疫がある較正を作成しようとするよりもむしろ、それらに対して特異的に免疫を与えることが望ましくあり得ることに留意されたい。付加的な詳細は、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第20070142720号「Apparatus and methods for mitigating the effects of foreign interferents on analyte measurements in spectroscopy」で見出すことができる。
【0124】
(半導体光源代替案の利点)
NIRおよびIR分光法で使用される大抵の光源は、黒体放射体である。黒体放射体によって発せられる光は、発せられる光の強度が黒体の波長および温度の関数であることを示す、プランクの法則によって管理される。
図21は、アルコール測定デバイスによって使用される4000~8000cm
-1(2.5~1.25μm)範囲が陰影を付けられた、100~33000cm
-1(100~0.3μm)範囲にわたる1300~3000K黒体放射体の正規化NIRスペクトルを示す。1300Kは、セラミックベースの黒体光源に対する妥当な温度であり、3000Kは、しばしば、分光用途で採用される石英タングステンハロゲン(QTH)ランプに対する妥当な温度である。
図21は、有意量の光が、アルコールを測定するための目的とする領域外の波長で発せられ、セラミック光源の光学効率が58%であり、QTHがわずか18%であるという点で、両方の黒体光源の光学効率が理想的ではないことを示す。
【0125】
光学効率に加えて、黒体光源は、不良な電気効率を有し得る。実用的な黒体光源は、有意量の電力を必要とするが、その全てが放射光に変換されるわけではない。何百ものセラミック黒体光源での電力および光強度測定は、24Wの電力という平均で1.1Wの光強度という平均を示す(4.4%電気効率)。58%の光学効率と組み合わせられたとき、セラミック黒体の全体的効率は、約2.5%である。換言すれば、24Wの電力で、約0.6Wの光強度が、目的とする4000~8000cm-1領域中で発せられる。光源によって発せられる光の全てが光学システムの残りの部分によって収集されるわけではないため、さらなる損失を被る。
【0126】
低い電気効率によって示されるように、印加された電力のほとんどは、所望されるよりも高い所要電力を超える損失を有する熱に変換される。黒体光源によって生成される熱は、分光測定デバイスの熱状態および安定性に影響を及ぼし得る。その結果として、場合によっては、本デバイスは、電源をオンにされ、測定を行う前に熱平衡に達せられなければならない。黒体光源と関連付けられる平衡時間は、場合によっては不利であり得る、数分から数時間に及び得る。
【0127】
黒体光源は、材料抵抗が変化するにつれて、時効効果を示す。光学的視点から、光源劣化と関連付けられる2つの有意な含意がある。第1に、抵抗が増加するにつれて、発せられる光強度の量が減少する。1つの実験では、論証的なセラミック黒体光源について観察された経時的な測定強度は、3500時間にわたって電力の50%低減を示した。経時的な強度劣化は、本質的に指数関数的となる傾向があり、いくつかの開発環境内で不利であり得る、規則的間隔での光源の交換を余儀なくさせ得る。第2に、光源の温度が変化し、波長の関数として光の分布を改変する。色温度変化の重大性に応じて、経時的な分光デバイスの安定性が影響を受け得る。固体光源は、白熱電球と同様に危機的に故障せず、50,000~100,000時間に及ぶ典型的な寿命を有する。結果として、固体光源は、黒体光源に対して、光源寿命の10倍向上および日常保守の必要性の対応する低減の可能性を提供する。
【0128】
ダイオードレーザ等の半導体光源は、半導体ダイ自体のサイズによって駆動される、それらの黒体対照物と比較して小さい放射領域を有することができる。光子放出は、半導体構造内で生成されると、ダイの領域の外側で起こることができない。その領域内の任意の不均一性が、照明システムの出力のサイズ(用途に応じて数mm2以上であり得る)に対してわずかであろうという点で、小さいサイズ(一般的な放射領域は0.3mm×0.3mm平方または0.09mm2)が有利であり得る。したがって、ダイ(または複数の半導体が採用される場合は複数のダイ)が物理的に移動しない限り、空間的出力は非常に安定するであろう。次いで、後続の空間的ホモジナイザの目的は、照明システム出力の領域全体にわたってダイによって発せられる光を均一に分配することである。
【0129】
ダイオードレーザ、VCSEL、およびLED等の半導体光源の別の利点は、同一の物理的パッケージに1つよりも多くの染料を組み込む能力である。例えば、対応する波長での光強度を増加させるために、同一の種類の付加的な固体光源を含むことができる。そのようなアプローチは、照明システムによって発せられる特定の波長および相対強度の両方に対する前例のないレベルの制御を可能にする。これは、あまり重要ではない波長での出力を低減させながら、アルコール等の所与の目的とする被分析物にとって重要な波長を際立たせるために使用することができる。一式の固体光源が、全て同一の種類であろうと、または混合物であろうと、アルコール等の非侵襲被分析物測定値での用途と一致する統合光学領域を保持しながら、最大で数百個を同一のパッケージに組み込むことができる。
【0130】
半導体光源の別の利点は、どの光源が所与の時間にオンであるかを選択するとともに、電圧または電流および温度を介して、それらの出力を同調する能力である。その結果として、単一の照明システムを、複数の被分析物の測定のために最適化することができる。例えば、組織中のアルコールを測定するとき、所与の一式の固体光源を起動することができる。同様に、コレステロールまたはグルコース等の異なる被分析物を測定するときに、異なるセットを起動することができる。
【0131】
(空間的および角度均質化のための方法)
組織サンプリングサブシステム200の入力において、再現可能であり、好ましくは、均一な放射輝度を提供するために、光学ディフューザ、光パイプ、および他のスクランブラ等の光ホモジナイザを、照明/変調サブシステム100のいくつかの実施形態に組み込むことができる。均一な放射輝度は、良好な測光精度および組織の均等な照射を確保することができる。均一な放射輝度はまた、固体光源間の製造差と関連付けられる誤差を低減することもできる。正確かつ精密な測定を達成するために、均一な放射輝度を利用することができる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,684,099号を参照されたい。
【0132】
磨りガラス板は、光学ディフューザの実施例である。板の研磨表面は、固体光源およびその伝達光学部から発散する放射角を効果的にスクランブルする。光パイプの出力において空間的に均一であるように、放射の強度を均質化するために、光パイプを使用することができる。加えて、二重屈曲を伴う光パイプが、放射角をスクランブルするであろう。均一な空間的強度および角度分布の作成のために、光パイプの断面は、円形となるべきではない。正方形、六角形、および八角形の断面が、効果的なスクランブリング幾何学形状である。光パイプの出力は、組織サンプラの入力に直接結合することができるか、または光が組織サンプラに送信される前に付加的な伝達光学部と併せて使用することができる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/832,586号「Illumination Device and Method for Spectroscopic Analysis」を参照されたい。
【0133】
例示的実施形態では、放射ホモジナイザは、光パイプである。光パイプは、概して、金属、ガラス(非晶質)、結晶、ポリマー、または他の類似材料、あるいはそれらの組み合わせから加工される。物理的に、光パイプは、近位端、遠位端、およびその間の長さを備える。光パイプの長さは、この用途について、光パイプの近位端から遠位端まで直線を描くことによって測定される。したがって、光パイプ91の同一のセグメントは、セグメントが形成する形状に応じて、様々な長さを有してもよい。セグメントの長さは、光パイプの意図した用途とともに容易に変化する。
【0134】
例示的実施形態では、セグメントは、S字形の光パイプを形成する。光パイプのS字形屈曲は、光が光パイプを通過するにつれて、光の角度均質化を提供する。しかしながら、角度均質化を他の方法で達成できることが認識される。複数の屈曲または非S字形屈曲を使用することができる。さらに、光パイプの内面が、長さの少なくとも一部分を覆う拡散反射被覆を含むならば、真っ直ぐな光パイプを使用することができる。被覆は、光がパイプを通って進むにつれて、角度均質化を提供する。代替として、光パイプの内面は、角度均質化を達成するマイクロ光学ディフューザまたはレンズ等のくぼみまたは「微細構造」を含むように修正することができる。最終的に、いくらかの角度均質化を提供するために、研磨ディフューザを使用することができる。
【0135】
光パイプの断面はまた、種々の形状を形成してもよい。特に、光パイプの断面は、好ましくは、空間的均質化を提供するように形状が多角形である。多角形断面は、3つから多くの辺を有する、全ての多角形形態を含む。ある多角形断面は、チャネル放射の空間的均質化を向上させることが証明されている。例えば、その全長で六角形断面を保有する光パイプは、同一の長さの円筒形断面を伴う光パイプと比較して、向上した空間的均質化を提供した。
【0136】
加えて、光パイプの長さの全体を通した断面は、変化してもよい。そのようなものとして、光パイプの長さに沿った1つの点における任意の断面の形状および直径は、パイプの同一のセグメントに沿った第2の点で得られる第2の断面とともに変化してもよい。ある実施形態では、光パイプは、2つの端部の間の中空構造である。これらの実施形態では、少なくとも1本の管腔または導管が、光パイプの長さに及んでもよい。中空光パイプの管腔は、概して、反射特性を保有する。この反射特性は、パイプの遠位端で放射線が発せられてもよいように、光パイプの長さを通したチャネリング放射に役立つ。管腔の内径はさらに、平滑、拡散、またはテクスチャ加工表面のいずれか一方を保有してもよい。反射管腔または導管の表面特性は、光パイプの長さを通過するにつれて、放射を空間的および角度的に均質化することに役立つ。
【0137】
付加的な実施形態では、光パイプは、中実構造である。中実コアは、カバープレート、被覆、または被覆加工することができる。再度、中実構造光パイプは、概して内部反射を提供する。この内部反射は、中実光パイプの近位端に進入する放射線が、パイプの長さを通して導かれることを可能にする。次いで、導かれた放射線は、放射強度の有意な損失を伴わずに、パイプの遠位端から外へ発せられてもよい。
【0138】
ファセット楕円反射体は、出力放射において所望の特性の一部のみを生じる、本発明の実施形態の実施例である。ファセット反射体の場合、空間的均質化が達成されるが、角度均質化は達成されない。磨りガラスに標準システムの出力を通過させること等の他の場合では、角度均質化が達成されるが、空間的均質化は達成されない。(両方ではなく)角度または空間的均質化のみが生じさせられる、これら等の実施形態では、分光システムの性能のいくらかの改良が期待され得る。しかしながら、改良の程度は、放射の空間的および角度均質化が同時に達成されるシステムほど大きくなるとは予期されないであろう。
【0139】
角度および空間的均質化の両方を作成するための別の方法は、照明システムで積分球を使用することである。特に、光を散乱させるサンプルからの光の検出に積分球を使用することは一般的であるが、積分球は、非侵襲的に被分析物を測定しようとするときに照明システムの一部として使用されていない。実践では、エミッタから出力される放射は、出口ポートを通した組織の後続の照射とともに、積分球の中へ結合することができる。エミッタはまた、積分球の中に位置することもできる。積分球は、例外的な角度および空間的均質化をもたらすであろうが、このシステムの効率は、以前に特定された他の実施形態よりも有意に少ない。
【0140】
また、光の所望の均質化を達成するように、本開示されたシステムに他の修正を行うことができると認識される。例えば、固体光源は、反射体の必要性を排除するであろう密閉配列で光パイプの内側に配置することができる。さらに、光パイプは、積分器に置換することができ、光源が積分器内に配置される。さらに、本システムは、行われる分析の種類に応じて、異なる波長領域中で類似結果を達成するために、非赤外線用途で使用することができる。
【0141】
(実施形態例の説明)
本発明の実施形態例(
図22で概略的に描写される)では、非侵襲アルコール測定システムは、22個の明確に異なる波長を測定するために使用される、13個のダイオードレーザから成る。表1は、各ダイオードレーザ、および測定の経過中に調べられるであろう関連標的ピーク波長のリストを示す。
【0142】
【表1】
この実施形態では、各ダイオードレーザは、一定の温度に安定させられる。各ダイオードレーザのピーク波長は、
図5に示される回路(各ダイオードレーザが各自の回路を有する)に基づいて制御され、それはまた、ダイオードレーザがオンおよびオフにされることも可能にする。測定中の所与の時間での各ダイオードレーザの特定の状態(オン/オフ)は、所定のアダマールまたは類似符号化行列によって判定される。固体光源を組み込む実施形態例では、アダマール行列は、ソフトウェアに記憶され、固体光源を機械的に変調するであろう物理的マスクまたはチョッパよりもむしろ電子機器で実装される、各ダイオードレーザに対する時間と対比したオン/オフ状態のパターンである。これは、ソフトウェアに記憶されたオン/オフ状態が、測定中に各ダイオードレーザの電子制御回路に伝えられることを可能にする。
【0143】
表1の中のダイオードレーザのうちのいくつかが、2つの波長の場所に関与するため、全ての波長を組み込むアダマール方式は達成することが困難であり得る。この場合、走査およびアダマール符号化の組み合わせは、全ての標的波長が測定されることを可能にすることができる。本実施形態では、(1つよりも多くの標的波長を伴うものについて)全てのダイオードレーザが、それらの第1の標的波長に同調され、アダマール符号化方式が、関連多重化利益を達成するために使用される。次いで、ダイオードレーザを、それらの第2の標的波長に同調することができ、第2のアダマール符号化方式を使用することができる。1つだけの標的波長を伴うダイオードレーザを、一方または両方のグループで測定することができるか、またはグループ間で分割することができる。
【0144】
さらに、グループを時間的にインターリーブすることができる。例えば、2秒間測定について、第1のグループを最初の1秒間に測定し、第2のグループを第2秒に測定することができる。代替として、測定は、2秒にわたって0.5秒間隔で交互に起こることができる。測定時間は、グループにわたって対称である必要はない。例えば、一方または他方のグループに向かって測定時間を加重することによって、信号対雑音比を最適化することが望ましくあり得る。当業者であれば、測定時間、グループの数の平衡を保つこと、走査対アダマールの比の平衡を保つこと、およびインターリービングの多くの順列が、本発明の実施形態で可能であり、考慮されることを認識する。
【0145】
実施形態例では、各ダイオードレーザの出力は、六角形断面の光パイプを使用して組み合わせられ、均質化される。いくつかの実施形態では、光パイプは、空間的均質化に加えて角度均質化を提供するために、1つ以上の屈曲を含有することができる。いかようにも、サンプリングサブシステム200の入力への導入時に、全ての波長が実質的に同等の空間的および角度内容を有するように、光パイプの出力において、全てのダイオードレーザの発光は、好ましくは、空間的および角度的に均質化される。
【0146】
均質化された光は、光プローブの入力に導入される。実施形態例では、入力は、光ホモジナイザの断面と一致する幾何学形状に配列された、225本の0.37NAシリカ・シリカ光ファイバ(照明ファイバと呼ばれる)から成る。次いで、光は、サンプルインターフェースに伝達される。光は、光プローブから退出してサンプルに進入し、その光の一部分は、サンプルと相互作用し、64本の収集ファイバによって収集される。例示的実施形態では、収集ファイバは、0.37NAシリカ・シリカファイバである。
【0147】
光プローブ出力は、ホモジナイザへの導入と一致する幾何学形状に収集ファイバを配列する。実施形態例については、ホモジナイザは、六角光パイプである。ホモジナイザは、各収集ファイバの内容が、測定された光信号に実質的に等しく寄与することを確実にする。これは、本質的に不均一であり得るヒト組織等のサンプルにとって重要であり得る。次いで、ホモジナイザの出力は、光検出器上に集束される。例示的実施形態では、光検出器は、出力電流が入射光の量に応じて変化する、拡張InGaAsダイオードである。
【0148】
次いで、処理サブシステムは、電流をフィルタにかけて処理し、2チャネルデルタシグマADCを使用して、それをデジタル信号に変換する。実施形態例では、処理されたアナログ検出器信号が分割され、両方のADCチャネルに導入される。実施形態例が2つの測定グループ(例えば、2つの標的波長)とともにVCSELを伴うため、アダマール変換が、各グループから取得される分光信号に適用され、後続の変換が、強度スペクトルを形成するように組み合わせられる。次いで、強度スペクトルは、後続のアルコール濃度判定の前に、10を底とする対数で変換される。
【0149】
実施形態例は、「登録」または「ウォークアップ/汎用」様相のいずれか一方、ならびに乱用物質等の他の被分析物性質とアルコールを組み合わせる用途に好適である。さらに、論議された様相または組み合わせのうちのいずれかは、独立して考慮することができるか、またはバイオメトリック性質の測定と組み合わせることができる。
【0150】
3,245件のアルコール測定値が、「ウォークアップ」様相に22個の波長を組み込むスペクトルを測定した、5つの非侵襲アルコールシステム上で89人から取得された。測定値は、広範囲の人口統計および環境に及んだ。
図23は、研究から取得された近赤外分光測定値を示す。
図24は、
図23に示される分光測定から取得された非侵襲アルコール濃度を、同時毛細管血中アルコール濃度(BAC)と比較する。
【0151】
別の実施形態例が
図39に示され、39個のダイオードレーザを使用して測定された39個の波長を使用する。表2は、ダイオードレーザおよびそれらの標的波長を示す。
【0152】
【表2】
サンプリングサブシステム、光ホモジナイザ、検出器、および処理を含む、残りのシステムパラメータは、前述の実施形態と同一である。
図25は、6個の非侵襲測定デバイス上で134人から取得された8,999件の分光測定値を示す。
図26は、静脈血中アルコールに対する結果として生じる非侵襲アルコール測定値を示す。
【0153】
いくつかの実施形態例では、既知の被分析物性質とともに、サンプルについての少数の測定値を使用して、較正移動を行うことができる。非侵襲アルコール測定の場合、各機器は、アルコールが存在しない個人について行われた少数の測定値を有することができる。機器上の任意のゼロではないアルコール結果は、その機器上の後続の測定値を補正するために使用することができる、測定誤差になる。補正を推定するために使用される測定値の数は、変化することができ、概して、必要な補正精度に依存する。一般に、このプロセスは、個別に較正される呼気試験装置等のアルコールデバイスと一致する機器特有の較正に類似している。
【0154】
類似アプローチを較正保守に適用することができる。アルコール検査の多くの用途では、大多数の測定は、アルコールが存在する可能性が低い個人で行われる。例えば、従業員がアルコールについて日常的に検査される、職場の安全性では、従業員は、酔っているよりもアルコールを含まない可能性がはるかに高いであろう(例えば、ほとんどの人がアルコールを含まずに職場に入る)。この場合、真のアルコール濃度は、ゼロおよび中央値であると仮定することができ、または機器補正を推定するために、低頻度の真のアルコール事象を除外するための他の手段を使用することができる。これは、所与の時間に適切な補正を判定するための実行中央値フィルタ、移動窓、またはより洗練された多変量アルゴリズムとして実装することができる。
【0155】
当業者であれば、本明細書で説明および考慮される特定の実施形態以外の種々の形態で本発明を明示できることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細の逸脱を行うことができる。
【0156】
(継続中のシステム較正)
動作条件および時間にわたって最大正確度および精度を維持するために、組織測定直前に、アルコール測定デバイスの状態(例えば、測定に寄与する光学および電気的構成要素)に関する情報を有することが望ましい。これは、「較正測定」と呼ばれる。電流および温度に関係する制御が、システムのある感知構成要素に採用されるが、時間および温度とともに変化し得る、有意数の機械および光学的誤差寄与因子がある。加えて、制御が定位置にあっても、電気的構成要素の動作と関連付けられる誤差ならびに表面処理と関係する因子があり得、プローブの起こり得る光の汚染も考慮される必要がある。したがって、目的とする組織サンプルを測定する直前に、既知の標準サンプルに対してデバイスの完全な光学的および電気的状態を測定することが望ましい。次いで、標準サンプルの測定は、後続(または先行の)組織測定がアルコール測定デバイスの現在の状態について補正されることを可能にする。
【0157】
較正測定値を取得するために、光源/変調サブシステム(100)からの光が、サンプリングサブシステム(200)によって標準サンプルに送達され、そこで標準サンプルと相互作用する。光の一部分が、サンプリングサブシステム(200)によって収集され、データ収集サブシステム(300)内の光検出器に結合される。これを達成する1つの方法は、サンプリング表面(例えば、皮膚組織が測定される表面)のものとは明確に異なる光ファイバを用いるものである。この場合、標準サンプルに送達される光は、皮膚を調べる光とは異なる光路を進むであろう。この光路の違いは、いくつかの実施形態では容認可能であり得る。さらに、他の実施形態では、光ファイバ自体が標準サンプルとしての機能を果たすことができる(例えば、光ファイバが光源/変調サブシステム(100)から光を収集し、それをデータ収集サブシステム(300)内の光検出器に直接送達する)。これらのアプローチのいくつかの実施形態では、どの光路(皮膚サンプリング表面への経路または較正サンプルへの経路)が所与の時間に光検出器によって測定されているかを選択する、ゲーティング機構を適用することができる。これらのアプローチは、いくつかの実施形態では容認可能であるが、実際のプローブとは異なる経路が測定されるという意味で最適ではない。
【0158】
したがって、皮膚組織を調べる光の実質的に同一の光路および較正標準を維持するために、サンプリングサブシステム(200)の組織インターフェースに既知の特性を伴う可動較正標準を配置するように方法が必要とされる。較正サンプルは、組織測定の直前に測定し、次いで、実際の測定のために除去することができる。較正サンプルは、手動で経路に挿入することができるが、挿入および除去のための自動方法が、いくつかの実施形態では好ましい。
【0159】
較正サンプルの自動挿入のための1つのそのような方法は、プローブヘッドカバー、またはユーザが相互作用するボタンにそれを組み込むことである。そのような方法の主要な要素は、以下となるであろう。
1)反射標準表面が裏に追加される、組織インターフェースにごく接近している可動ドア2)組織測定表面をプローブに直接提示するように、邪魔にならないところにドアを移動させるための方法
3)反射表面を静止位置に戻す方法当業者であれば、この目的を達成するように、任意の数の電気機械的または機械的機構を設計し得ることに留意されたい。
【0160】
第1の実施形態では、可動ドアは、裏面が好適な反射材料およびスライドで被覆され、感知ヘッドが指表面まで回転することを可能にする。バネが、静止/較正位置に戻るために必要な復元力を提供する。
【0161】
第2の実施形態では、摺動ボタンが、底端に固定される半可撓性テープのガイドの役割を果たす。可撓性テープの裏は、好適な反射表面で被覆される。摺動ボタンの移動は、テープが、ボタンの面上の窓開口部より下側で摺動することを可能にし、センサが指と接触することを可能にする。バネが、静止/較正位置に戻るために必要な復元力を提供する。感知ヘッドが静止している一方で、ドア/ボタンおよび/または較正サンプルが唯一の可動部品であるように、代替実施形態を設計できることに留意されたい。
【0162】
さらに、基本的概念を変更することなく、配置を促進するのに役立つように、スタイリング特徴および指ガイドを用いて実施形態を増進することができ、指の背側、指の掌側、または他の皮膚表面が提示されるかにかかわらず、機構および付加的なスタイリング特徴が同等に良好に機能するであろうことに留意されたい。
【0163】
図28を参照すると、
図1で描写されるシステムは、任意の輸送車両(全ての形態の陸上、水上、および空中移動を含む)の始動システムに組み込むことができる。例えば、本システムは、始動装置ボタン、鍵を回すこと、または移動のために輸送車両を準備するように運転者が動力を起動する他の典型的に使用されている形態を含む、点火システムの電気機械的構成要素として組み込むことができる。
【0164】
そのようなシステムは、車両の後続の電気機械的応答を改変するために測定された情報が使用される場合に、輸送車両を始動しようとしている個人における被分析物またはバイオメトリック識別子の存在または濃度を測定するために利用することができる。例えば、バイオメトリック識別は、(可能性として考えられる運転者の集団から)特定の運転者を識別し、インフォテインメント設定または車両アクチュエータ設定等の運転者および/または制御設定の位置または配向を修正するために使用されてもよい。別の実施例では、
図27で図示されるように、本システムは、被分析物の濃度を測定して、輸送車両を始動する、および/または代替的な動作を開始する能力を有効または無効のいずれか一方にするために使用することができる。例えば、法的閾値を上回る自動車運転者におけるアルコールの測定は、輸送車両を始動する能力を制限してもよいが、また、指定された運転者および/またはタクシーを含む、代替的な形態の移動への自動呼び出しを提供するように、テレマティックスシステムにトリガしてもよい。
【0165】
別の実施形態では、本システムは、車のハンドル、ハンドルバー、または操縦桿等のオペレータと連続的またはほぼ連続的に接触している輸送車両制御システムに統合することができる。そのようなものとして、本システムは、連続的または周期的に、あるいは他の制御論理によってトリガされて、後続の輸送車両動作に影響を及ぼすか、または代替的な動作をトリガするために使用される被分析物および/またはバイオメトリック測定を行うことができる。
【0166】
別の実施形態では、本システムは、輸送車両または施設アクセスシステム(例えば、入口ドア、トランク等)に統合することができ、したがって、入口へのアクセスおよび/または進入時の後続のレベルの制御に影響を及ぼすために使用される被分析物および/またはバイオメトリック測定を行うことができる。
【0167】
別の実施形態では、本システムは、他の輸送車両サブシステムに組み込むことができ、オペレータの皮膚とサンプリングサブシステム200との間の直接接触は、一時的、周期的に、または常に維持される。半受動接触が維持される、わずかに修正された実施形態、およびオペレータが開始した動作を通して接触が行われる実施形態も可能である。そのような場合において、後続の輸送車両動作に影響を及ぼすか、または代替的な動作をトリガする、連続的または周期的被分析物および/またはバイオメトリック測定を行うことができる。
【0168】
図28で説明されるシステムの場合、オペレータとサンプリングサブシステム200との間の人間と機械の相互作用は、測定をトリガするようにサンプリングサブシステムと結合されなければならない、システムおよび意図した身体部分および/または場所の存在を意図したオペレータに知らせるように構成することができる。例えば、オペレータを教育し、適正な測定プロセスおよび/または測定の結果についての正/負のフィードバックを提供するために、可聴音および/または発話および/または照明および/または触覚フィードバックの使用を使用することができる。
【0169】
本発明の実施形態例(
図29a-bで概略的に描写される)では、全てのサポートされた波長にわたる損失を最小限化する材料から成るホモジナイザの中へ様々な波長の離散固体光源を直接結合し、したがって、固体光源およびホモジナイザおよび感知サブシステムの間の結合機構の必要性を低減させることによって、
図22で描写されるシステムとは異なる。この実施形態では、ホモジナイザの材料、サイズ、形状、被覆は、センササブシステム200エミッタを直接提供しながら、光透過を最適化し、損失を最小限化するように制御することができる。
【0170】
図7は、複数の明確に異なるエミッタが使用されるシステムを描写し、
図30で描写される代替実施形態では、電流と組み合わせて駆動されたときに明確に異なる波長を生じる、明確に異なる電流路を伴ういくつかの格子ゾーンを用いて、単一のエミッタを作成することができる。どの格子の組み合わせが駆動されるかを時間的に変化させることによって、明確に異なる波長を時間領域信号において達成することができる。そのようにして、多数の波長を所定のパターンで時間的にサンプリングすることができる。後続の実施形態で説明される分光法測定値を取得するために、検出器およびプロセッサにおけるサンプリングシーケンスの知識を使用することができる。
【0171】
別の実施形態では、本システムはさらに、1つ以上の大気、温度、および相対湿度センサを含み、これらのセンサから導出される測定値は、被分析物および/またはバイオメトリック測定を補正および/または改善して、これらの環境影響による人為的変動および/または拡張システムによる個別サブシステム変動を補正するために、サブシステム400に利用可能である(例えば、測定サブシステム200がサブシステム100とは空間的または熱的に明確に異なる場合、あるいはシステムエミッタおよび検出器が、(周囲条件とは無関係に)固定値に温度補償されるが、光ファイバ、ホモジナイザ、および結合器は、周囲条件に基づく温度補償を必要とする場合)。
【0172】
潜在的オペレータの集団の中の被分析物の存在の確率が低い、いくつかの被分析物測定を行う場合、任意の被分析物が明白であるかどうかを最初に判定するように、より早く単純な測定を行い、次いで、検出された場合のみ、被分析物の濃度の後続の測定を行うことが有利であり得る。これは、
図31で描写されている。例えば、被分析物としてのアルコールの場合、予測自動車オペレータの大多数が、自動車を始動しようとするときに体系内にアルコールの存在を持たないであろう。平均測定時間を短縮するために、存在測定を使用することができる。
【0173】
多くの安全性用途では、少なくとも2つの異種技術センサが、対策を作動させる決定を行うように信号を検出しなければならない。これは、検出されていない単一センサ故障または誤差による、誤検出の傾向を大いに低減させる。類似状況で、被分析物の存在または濃度を示す、および/またはバイオメトリック測定を確認する1つ以上の独立センサを含むように、
図32で説明されるシステムを結合することができる。
【0174】
図22のシステムは、離散波長固体光源を利用するシステムを描写し、
図33で描写される代替実施形態は、意図した波長のみを通過させる離散波長フィルタに結合された単一の広域スペクトル黒体源を利用するシステムを描写する。後続の処理ステップは、以前に示されたものと同一のままであるが、検出および判別プロセスにおいて、望ましくないシステム雑音を回避することができる。
【0175】
ダイオードレーザを利用する、以前に説明されたシステムの実施形態について、これらのデバイスの増減特性は、運転者および補償回路、また、周囲温度およびデバイス自体の電気機械的性質(例えば、レーザ格子構造、材料、サイズ、形状、および加熱/冷却構成要素)に基づいて、決定論的に変化し得る。
図34で図示されるように、固体光源強度が所望のレベル(T2)に落ち着くまで待つことにより、変調時間を短縮してもよい。様々な波長の多重化光に利用可能な変調率を改善するために、先験的増減性質を検出器論理において補償することができ、したがって、整定時間(T1)を短縮する。
【0176】
先述の一般的説明および詳細な説明の両方は、例示的および説明的にすぎず、本発明を制限しないことを理解されたい。
【0177】
本開示の目的で、「結合される」という用語は、2つの構成要素(電気的または機械的)を相互に直接または間接的に接合することを意味する。そのような接合は、本質的に静的または本質的に可動であり得る。そのような接合は、相互と1つの単一本体として一体的に形成されている、2つの構成要素(電気的または機械的)および任意の付加的な中間部材を用いて、または相互に取り付けられている2つの構成要素あるいは2つの構成要素および任意の付加的な部材を用いて、達成されてもよい。そのような接合は、本質的に永久的であり得るか、または代替として、本質的に除去可能あるいは解放可能であり得る。
【0178】
好ましいおよび他の例示的実施形態で示されるようなディフューザの構造および配列は、例証的にすぎない。本エアバッグアセンブリのいくつかの実施形態のみが、本開示で詳細に説明されているが、本開示を再検討する当業者であれば、本開示に記載される主題の新規の教示および利点から著しく逸脱することなく、多くの修正が可能である(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状、および比率、パラメータの値、載置配列、材料の使用、配向等の変動)ことを容易に理解するであろう。したがって、本発明の範囲および精神内の本開示から当業者によって達成可能な全てのそのような修正は、本発明のさらなる実施形態として含まれるものである。任意のプロセスまたは方法ステップの順番または順序は、代替実施形態に従って変更され、または並べ直されてもよい。他の置換、修正、変更、および省略が、本願の精神から逸脱することなく、好ましいおよび他の例示的実施形態の設計、動作条件、および配列に行われてもよい。
【外国語明細書】