(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010115
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】血抜き方法及び鮮魚加工装置
(51)【国際特許分類】
A22C 25/14 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A22C25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113996
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】中山 将志
(72)【発明者】
【氏名】増村 顕子
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011KA02
4B011KE23
(57)【要約】
【課題】血抜き作業の効率化が可能な血抜き方法などを提供する。
【解決手段】血抜き方法は、魚200の腎臓204にノズル120を挿入する挿入ステップと、ノズル120から液体を注入し、魚200の血を当該魚200の体外へと排出する排出ステップとを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の腎臓にノズルを挿入する挿入ステップと、
前記ノズルから液体を注入し、前記魚の血を当該魚の体外へと排出する排出ステップとを有する血抜き方法。
【請求項2】
前記排出ステップの前に、前記魚の尾部を切断する切断ステップを有する
請求項1に記載の血抜き方法。
【請求項3】
前記液体は、水またはオゾン水である
請求項1または2に記載の血抜き方法。
【請求項4】
前記排出ステップの前に、背が上方、腹が下方を向くように前記魚を保持する保持ステップを有し、
前記挿入ステップでは、前記ノズルを前記腹から前記魚に挿入する
請求項1~3のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項5】
前記ノズルから前記魚に注入された前記液体の注入量を取得する注入量取得ステップと、
前記魚から排出された液体の排出量を取得する排出量取得ステップと、
前記注入量の経時的な変化量と、前記排出量の経時的な変化量とに基づいて、前記注入が正常に行われているか否かを判定する判定ステップとを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項6】
前記ノズルから前記魚に注入された前記液体の注入量を取得する注入量取得ステップと、
前記注入量に基づいて、前記液体の注入を制御する第一制御ステップと、を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項7】
前記魚から排出された液体の成分を取得する成分取得ステップと、
前記成分に基づいて、前記液体の注入を制御する第二制御ステップと、を有する
請求項1~6のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項8】
前記挿入ステップの前に前記魚の大きさを取得するサイズ取得ステップと、
前記魚の大きさに基づき、当該魚に対する前記ノズルの挿入量を決定する挿入量決定ステップと、を有する
請求項1~7のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項9】
前記挿入ステップ中に、前記ノズルにかかる圧力を取得する圧力取得ステップと、
前記圧力が所定圧力を超えた場合に、前記ノズルの挿入を停止する挿入停止ステップと、を有する
請求項1~8のいずれか一項に記載の血抜き方法。
【請求項10】
魚を保持する保持部と、
先端部から液体が吐出されるノズルと、
前記保持部で保持された前記魚に対し、前記ノズルの前記先端部を挿入する挿入部と、
前記ノズルに対して液体を供給する供給部と、
前記挿入部及び前記供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記挿入部を制御して、前記ノズルの前記先端部が前記魚の腎臓に挿入されるように前記挿入部を駆動する
鮮魚加工装置。
【請求項11】
前記保持部は、背が上方、前記腹が下方を向くように前記魚を保持し、
前記挿入部は、前記ノズルを前記腹から前記魚に挿入する
請求項10に記載の鮮魚加工装置。
【請求項12】
前記ノズルから前記魚に注入された前記液体の注入量を取得する注入量取得部と、
前記魚から排出された液体の排出量を取得する排出量取得部とを備え、
前記制御部は、前記注入量の経時的な変化量と、前記排出量の経時的な変化量とに基づいて、前記注入が正常に行われているか否かを判定する
請求項10または11に記載の鮮魚加工装置。
【請求項13】
前記ノズルから前記魚に注入された前記液体の注入量を取得する注入量取得部を備え、
前記制御部は、前記注入量に基づいて前記供給部を制御することで、前記液体の注入を制御する
請求項10~12のいずれか一項に記載の鮮魚加工装置。
【請求項14】
前記魚から排出された液体の成分を取得する成分取得部を備え、
前記制御部は、前記成分に基づいて前記供給部を制御することで、前記液体の注入を制御する
請求項10~13のいずれか一項に記載の鮮魚加工装置。
【請求項15】
前記魚の大きさを取得するサイズ取得部を備え、
前記制御部は、前記魚の大きさに基づき、当該魚に対する前記ノズルの挿入量を決定する
請求項10~13のいずれか一項に記載の鮮魚加工装置。
【請求項16】
前記ノズルにかかる圧力を取得する圧力取得部を備え、
前記制御部は、前記圧力が所定圧力を超えた場合に、前記ノズルの挿入を前記挿入部に停止させる
請求項10~15のいずれか一項に記載の鮮魚加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血抜き方法及び鮮魚加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、注射器を魚の心臓に刺入した後に、注射器から液体を該魚の血管系へ圧入することにより、該魚の血を魚体外へ排出する魚の血抜き処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、心臓は比較的小さな臓器であるために、心臓に注射器を刺入するのは困難であり、血抜き作業が煩雑となってしまうのが実情である。
【0005】
そこで、本開示は、血抜き作業の効率化が可能な血抜き方法及び鮮魚加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る血抜き方法は、魚の腎臓にノズルを挿入する挿入ステップと、ノズルから液体を注入し、魚の血を当該魚の体外へと排出する排出ステップとを有する。
【0007】
また、本開示の一態様に係る鮮魚加工装置は、魚を保持する保持部と、先端部から液体が吐出されるノズルと、保持部で保持された前記魚に対し、ノズルの先端部を挿入する挿入部と、ノズルに対して液体を供給する供給部と、挿入部及び供給部を制御する制御部と、を備え、制御部は、挿入部を制御して、ノズルの先端部が魚の腎臓に挿入されるように挿入部を駆動する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、血抜き作業の効率化が可能な血抜き方法及び鮮魚加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る鮮魚加工装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】実施の形態に係る鮮魚加工装置の概略構成を示す部分断面図である。
【
図3】実施の形態に係る鮮魚加工装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る血抜き方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係るノズルが魚の腹に挿入された状態を示す図である。
【
図6】変形例1に係る鮮魚加工装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図7】変形例2に係る鮮魚加工装置の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
(鮮魚加工装置)
本開示に係る鮮魚加工装置100は、魚の血抜きを行う装置である。
図1は、実施の形態に係る鮮魚加工装置100の概略構成を示す正面図である。
図2は、実施の形態に係る鮮魚加工装置100の概略構成を示す部分断面図である。
図1及び
図2に示すように、鮮魚加工装置100は、保持部110と、ノズル120と、供給部130と、廃液槽140とを有している。
【0012】
保持部110は、魚200を保持する部位であり、台座111と、台座111の上方に配置された押さえ部112とを有している。台座111は魚200が載置される部位である。具体的には、台座111の上面は、下方に向けて凹んだ正面視V字状に形成されており、その谷底部分で魚200の腹201を支持するようになっている。台座111の谷底は、後方に向けて下がるように傾斜している。
【0013】
押さえ部112は、台座111とともに魚200を挟持して保持する部位である。具体的には、押さえ部112の下面は、上方に向けて凹んだ正面視逆V字状に形成されており、その頂点部分に魚200の背202が配置されるようになっている。このため、魚200を保持した状態では、台座111の谷線及び台座111の谷線が、魚200の全長方向に沿って延在することになる。押さえ部112は、昇降自在であり、台座111との間隔を変更できるようになっている。このため、保持部110では、体高の異なる魚200であっても台座111と押さえ部112とで挟持できる。押さえ部112の昇降動作は手動式でも自動式でもよい。
【0014】
ノズル120は、上下方向に延設されており、その上端部(先端部)から液体が吐出される部材である。本実施の形態では、ノズル120が二本設けられている場合を例示しているが、ノズル120の設置個数は如何様でもよい。ただしノズル120が複数であれば、血抜きの安定性を高めることが可能である。二本のノズル120は、台座111の谷線に沿って配列されている。各ノズル120は、台座111の谷底から上方に向けて出没自在に設けられている。各ノズル120は、不使用時においては台座111の谷底から突出しておらず、使用時には台座111の谷底から突出するようになっている。
図1及び
図2では、各ノズル120の先端部が魚200に挿入された状態を示している。各ノズル120の出没動作は、後述する挿入部150にて自動で実行される。
【0015】
供給部130は、配管131を介して各ノズル120に液体を供給する部位であり、例えばポンプである。供給部130が供給する液体は、水またはオゾン水である。廃液槽140は、魚200から排出された液体を貯留する部位である。廃液槽140は、台座111の後部に配置されており、魚200から排出され、台座111の谷底を流れる液体を受け止める。
【0016】
図3は、実施の形態に係る鮮魚加工装置100の制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、鮮魚加工装置100は、供給部130と、挿入部150と、注入量取得部161と、排出量取得部162と、サイズ取得部164と、報知部170と、制御部180とを備えている。
【0017】
挿入部150は、各ノズル120の出没動作を行うための機構部151と、当該機構部151を駆動する駆動源152(モータなど)とを備えている。駆動源152が制御部180の制御に基づいて動作することで機構部151も動作し、各ノズル120が出没動作をするようになっている。挿入部150は、各ノズル120を台座111から突出させることで、当該ノズル120の先端部を魚200の腹201に挿入する。
【0018】
注入量取得部161は、供給部130から供給された液体の注入量を取得する。例えば、注入量取得部161は、供給部130から流れ出た液体の流量を検出する流量センサを有しており、その流量センサの検出値から注入量を算出する。
【0019】
排出量取得部162は、魚から排出された液体の排出量を取得する。例えば、排出量取得部162は、廃液槽140に溜まった液体の重量を測定する重量センサである。なお、排出量取得部162は、廃液槽140に溜まった液体の体積を測定する体積センサであってもよい。
【0020】
サイズ取得部164は、魚200の大きさを取得する。例えば、サイズ取得部164は、魚の重量を測定する重量センサであってもよいし、魚の全長を測定する全長センサであってもよい。また、サイズ取得部164は、カメラを有しており、そのカメラが撮影した魚200の画像に基づいて当該魚の大きさを取得してもよい。
【0021】
報知部170は、例えばモニタであり、種々の情報を表示することで報知する。なお、報知部170は、例えば種々の情報を音として出力するスピーカであってもよい。
【0022】
制御部180は、供給部130と、挿入部150と、注入量取得部161と、排出量取得部162と、サイズ取得部164と、報知部170とに電気的に接続されている。制御部180は、注入量取得部161と、排出量取得部162と、サイズ取得部164との各取得結果に基づき、供給部130と、挿入部150と、報知部170とを制御する。具体的には、制御部180は、CPU、RAM、ROM等を備えており、ROMに格納されたプログラムをCPUがRAMに展開して実行することにより各種処理を実行する。
【0023】
(血抜き方法)
次に、制御部180がプログラムに基づいて実行する魚200の血抜き方法について説明する。
図4は、実施の形態に係る血抜き方法の流れを示すフローチャートである。
【0024】
まず、ステップS1では、作業者は、魚200の一部を切断する(切断ステップ)。具体的には作業者は魚200の尾部210を切断する。この切断箇所が液体の出口となる。
図2では、尾部210が切り落とされているので、尾部210を二点鎖線で示している。なお、尾部210を完全に切り落とさなくとも、尾部210に切り込みを入れる程度の切断であってもよい。この場合においては切り込みが液体の出口となる。なお、液体の出口となるのであれば、尾部210以外の部位を切断してもよい。その他の部位としては頭部などが挙げられる。
【0025】
ステップS2では、作業者は、保持部110に魚200を保持させる(保持ステップ)。具体的には、作業者は、保持部110において台座の上面に魚200の腹201をセットし、押さえ部112の下面に魚200の背202をセットする。
【0026】
ステップS3では、制御部180は、サイズ取得部164が取得した魚200の大きさに基づいて、魚200に対する各ノズル120の挿入量を決定する(挿入量決定ステップ)。
【0027】
ステップS4では、制御部180は、挿入部150を制御して各ノズル120を魚200の腹201に挿入する。具体的には、制御部180は、ステップS3で決定した挿入量で各ノズル120が腹201に挿入されるように、挿入部150を制御する。各ノズル120が挿入量だけ挿入されたら制御部180は挿入部150を制御して挿入を停止する。
【0028】
図5は、実施の形態に係るノズル120が魚200の腹201に挿入された状態を示す図である。
図5では、魚200を断面図で示している。
図5に示すように、挿入後においては各ノズル120の先端部は魚200の背骨203まで到達している。背骨203の腹201側には腎臓204が存在しているので、各ノズル120を腹201から挿入量だけ挿入すると、各ノズル120の先端部が腎臓204に挿入されることになる。つまり、ステップS4は、本開示に係る挿入ステップである。なお、腎臓204に傷がついていれば、当該傷から液体が腎臓204内に進入できるので、挿入ステップでは、腎臓204を傷つける程度だけ各ノズル120の先端部が腹201に挿入されればよい。また、その後においては、各ノズル120の先端部は、腎臓204内に留まっていてもよいし、腹201内で腎臓204から離脱していてもよい。
【0029】
図4に示すように、ステップS5では、制御部180は、供給部130を制御して各ノズル120に対する液体の供給を開始する。これにより、各ノズル120の先端部から吐出された液体は、腎臓204から魚200の血管を巡って、魚200の血とともに切断箇所から排出される。
【0030】
ステップS6では、注入量取得部161は液体の吐出開始に基づいて、各ノズル120から魚200に注入された液体の注入量を取得する(注入量取得ステップ)。
【0031】
ステップS7では、排出量取得部162は液体の吐出開始に基づいて、魚200から排出された液体の排出量を取得する(排出量取得ステップ)。
【0032】
ステップS8では、制御部180は、注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とに基づいて、注入が正常に行われているか否かを判定する(判定ステップ)。具体的には、ノズル120の先端部が腎臓204に挿入されなかった場合(正常でない場合)、液体が注入されたとしても、液体は腎臓204から血管を巡らず、肛門から排出されることになる。このため、魚200に注入された液体は、注入されてから瞬時に肛門から排出される。つまり、注入が正常に行われていない場合には、注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とにはそれほど時間的な差が生じていない。
【0033】
一方、ノズル120の先端部が腎臓204に挿入された場合(正常な場合)、液体が注入されると、液体は腎臓204から血管を巡って切断箇所から排出される。液体が血管を巡ることにより、それだけ時間をかけて排出されることになる。このため、魚200に注入された液体は、注入されてから一定時間経過後に切断箇所から排出される。つまり、注入が正常に行われている場合には、注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とに一定時間ほど遅れが生じる。ステップS6では、制御部180は、このタイムラグが注入量の経時的な変化量と排出量の経時的な変化量とに生じているか否かを検出することにより、注入が正常に行われているか否かを判定している。制御部180は、注入が正常に行われていると判定した場合にはステップS9に移行し、注入が正常に行われていないと判定した場合にはステップS11に移行する。
【0034】
ステップS9では、制御部180は、供給部130を制御して液体の供給を停止する。
【0035】
ステップS10では、制御部180は、報知部170を制御して、注入が正常に行われていなかった旨を報知させて、血抜き方法の実行を終了する。
【0036】
ステップS11では、制御部180は、注入量に基づいて液体の注入を制御する(第一制御ステップ)。具体的には制御部180は、注入量が所定量となると供給部130を制御して液体の供給を停止し、血抜き方法の実行を終了する。これにより、魚200に対して所定量の液体が注入されることになるので、一定の血抜き効果が得られることになる。
【0037】
(効果等)
以上のように、本開示に係る血抜き方法は、魚200の腎臓204にノズル120を挿入する挿入ステップと、ノズル120から液体を注入し、魚200の血を当該魚200の体外へと排出する排出ステップとを有する。
【0038】
また、本開示に係る鮮魚加工装置100は、魚200を保持する保持部110と、先端部から液体が吐出されるノズル120と、保持部110で保持された魚200に対し、ノズル120の先端部を挿入する挿入部150と、ノズル120に対して液体を供給する供給部130と、挿入部150及び供給部130を制御する制御部180とを備え、制御部180は、ノズル120の先端部が魚200の腎臓204に挿入されるように挿入部150を駆動する。
【0039】
これによれば、魚200の腎臓204にノズル120が挿入されるので、腎臓204から液体を注入して血抜きすることが可能である。腎臓204は、魚200の背骨203に沿って配置された臓器であるので、背骨203に向けてノズル120を挿入するだけで、ノズル120の先端部を必然的に腎臓204まで到達させることができる。腎臓204が傷つきさえすれば、ノズル120から注入された液体は、腎臓204から魚200内の血管を巡って血とともに排出されるので、魚200が血抜きされる。したがって、血抜き作業を簡単に行えることができ、効率化することが可能である。血抜き作業が効率化されれば、魚200の鮮度低下を抑制することも可能である。
【0040】
血抜き方法は、排出ステップの前に魚200の尾部210を切断する切断ステップを有する。
【0041】
これによれば、切断ステップにより魚200の尾部210が切断されているので、当該尾部210の切断箇所から液体を排出することができる。例えば、魚200の頭部のみを切断した場合でもその切断箇所から液体を排出することは可能であるが、尾部210と比較して切断箇所の面積が広いために液体が広範囲に飛び散る可能性が高い。本実施の形態では、比較的面積の小さい、尾部210の切断箇所から液体を排出できるので、液体が飛び散ることを抑制できる。
【0042】
液体は水またはオゾン水である。
【0043】
これによれば、液体が水またはオゾン水であるので、容易に安心かつ安全な血抜きを行うことができる。特に、液体がオゾン水である場合には水よりも殺菌作用が高いため、魚200の鮮度維持をより確実に行うことができる。
【0044】
血抜き方法は、排出ステップの前に、背202が上方、腹201が下方を向くように魚200を保持する保持ステップを有し、挿入ステップでは、ノズル120を腹201から魚200に挿入する。
【0045】
また、保持部110は、背202が上方、腹201が下方を向くように魚200を保持し、挿入部150は、ノズル120を腹201から魚200に挿入する。
【0046】
これらによれば、保持部110で、背202が上方、腹201が下方を向くように保持された魚200に対し、腹201からノズル120が挿入されるので、ノズル120の進行方向に腎臓204を存在させやすい。仮にノズル120の進行方向が腎臓204からずれていても、ノズル120の先端部が魚200の肋骨205に当たると、肋骨205で先端部を腎臓204にガイドさせることも可能である。これにより、ノズル120の先端部が腎臓204に挿入する確実性を高めることができる。
【0047】
血抜き方法は、ノズル120から魚200に注入された液体の注入量を取得する注入量取得ステップと、魚200から排出された液体の排出量を取得する排出量取得ステップと、注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とに基づいて、注入が正常に行われているか否かを判定する判定ステップとを有する。
【0048】
また、鮮魚加工装置100は、ノズル120から魚200に注入された液体の注入量を取得する注入量取得部161と、魚200から排出された液体の排出量を取得する排出量取得部162と、を備え、制御部180は、注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とに基づいて、注入が正常に行われているか否かを判定する。
【0049】
これらによれば、制御部180が注入量の経時的な変化量と、排出量の経時的な変化量とに基づいて、注入が正常に行われているか否かを判定するので、注入が正常に行われていない場合に適切に対処することが可能である。本実施の形態では、正常が行われていない場合には、液体の供給が停止されるので、無駄に液体が消費されることを抑制できる。さらに、正常が行われていない場合には、その旨を報知部170が報知するので、その不具合に作業者も迅速に対処することができる。
【0050】
血抜き方法は、ノズル120から魚200に注入された液体の注入量を取得する注入量取得ステップと、注入量に基づいて、液体の注入を制御する第一制御ステップと、を有する。
【0051】
また、鮮魚加工装置100は、ノズル120から魚200に注入された液体の注入量を取得する注入量取得部161を備え、制御部180は、注入量に基づいて供給部130を制御することで、液体の注入を制御する。
【0052】
これらによれば、注入量に基づいて液体の注入が制御されるので、例えば注入量が所定量を超えると液体の注入を停止することができる。したがって、魚200に対して少なくとも所定量の液体が注入されるので、一定の血抜き効果を得ることができる。所定量は、種々の実験、シミュレーション、経験則により予め決定されていてもよいし、サイズ取得部164が取得した魚200の大きさに基づいて、制御部180が適切な所定量を決定してもよい。つまり、大きさの小さい魚200であれば所定量を小さくし、大きさの大きい魚200であれば所定量を大きくすればよい。
【0053】
血抜き方法は、挿入ステップの前に魚200の大きさを取得するサイズ取得ステップと、魚200の大きさに基づき、当該魚200に対するノズル120の挿入量を決定する挿入量決定ステップと、を有する。
【0054】
また、鮮魚加工装置100は、魚200の大きさを取得するサイズ取得部164を備え、制御部180は、魚200の大きさに基づき、当該魚に対するノズル120の挿入量を決定する。
【0055】
これによれば、魚200の大きさに基づいて、魚200に対するノズル120の挿入量が決定されるので、魚200の大きさに適した挿入量でノズル120を挿入することができる。したがって、いずれの大きさの魚200であっても、より確実に腎臓204までノズル120を到達させることができる。
【0056】
[変形例]
以下に、上記実施の形態の各変形例について説明する。以降の説明において上記実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0057】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る鮮魚加工装置100Aの制御構成を示すブロック図である。具体的には
図6は
図3に対応する図である。
図6に示すように鮮魚加工装置100Aは、成分取得部163aを有している点で、上記実施の形態に係る鮮魚加工装置100と異なる。
【0058】
成分取得部163aは、廃液槽140に流れ込む直前の液体の成分を検出する成分センサである。例えば、成分取得部163aは、液体内に含まれる血の成分を検出する成分センサである。成分取得部163aは、液体内に含まれる血の量または濃度を検出する。
【0059】
制御部180は、成分取得部163aが取得した成分に基づいて供給部130を制御することで、液体の注入を制御する。具体的には、制御部180は、成分取得部163aが取得した、液体内に含まれる血の成分が所定量または所定濃度以下となった場合、つまり魚200から血が概ね排出された場合には、供給部130を制御して、液体の注入を停止する。
【0060】
以上のように、血抜き方法は、魚200から排出された液体の成分を取得する成分取得ステップと、取得した成分に基づいて、液体の注入を制御する第二制御ステップと、を有する。
【0061】
また、鮮魚加工装置100Aは、魚200から排出された液体の成分を取得する成分取得部163aを備え、制御部180は、成分に基づいて供給部130を制御することで、液体の注入を制御する。
【0062】
これらによれば、魚200から排出された液体に含まれる血の成分に基づいて液体の注入が制御されるので、例えば、血が概ね魚200から排出された場合には、供給部130を制御して、液体の注入を停止することができる。したがって、適切なタイミングで液体の注入を停止でき、効率的な血抜きを行うことが可能である。
【0063】
なお、制御部180は、液体に含まれる成分の量に基づいて、供給部130からの液体の供給量を増減させてもよい。例えば、成分の量が多い場合には供給量を増加させ、成分の量が少ない場合には供給量を低下させる。これにより、魚200に血が多く残存している注入開始時には、多くの液体を供給することができ、全体として血抜きにかかる時間を短縮することが可能である。
【0064】
(変形例2)
図7は、変形例2に係る鮮魚加工装置100Bの制御構成を示すブロック図である。具体的には
図7は
図3に対応する図である。
図6に示すように鮮魚加工装置100Bは、圧力取得部165bを有している点で、上記実施の形態に係る鮮魚加工装置100と異なる。
【0065】
圧力取得部165bは、挿入時に各ノズル120にかかる圧力を取得する。具体的には、圧力取得部165bは、例えば、各ノズル120が台座111から突出する際の、各ノズル120に作用する圧力を検出する圧力センサである。圧力取得部165bは、制御部180に対して電気的に接続されており、検出した圧力を制御部180に出力する。
【0066】
制御部180は、各ノズル120を魚200に挿入中に、圧力取得部165bが取得した各ノズル120にかかる圧力が、所定圧力を超えると挿入部150を制御して各ノズル120の挿入動作を停止する。具体的には、挿入中において、各ノズル120の先端部が魚200の背骨203に当接すると、各ノズル120にかかる圧力が大きくなる。背骨203において腹201側には腎臓204が存在しているので、各ノズル120にかかる圧力が所定圧力を超えた場合には各ノズル120が腎臓204を貫通し、背骨203に当接している可能性が高い。これ以上の挿入は魚200を傷つけるおそれがあるので、制御部180は挿入部150を制御して各ノズル120の挿入動作を停止する。この場合、各ノズル120の挿入開始から、各ノズル120の挿入が停止されるまでが、本開示に係る挿入ステップである。この挿入ステップ中に、各ノズル120にかかる圧力を取得する圧力取得ステップが実行され、圧力が所定圧力を超えた場合に、ノズルの挿入を停止する挿入停止ステップが実行される。
【0067】
以上のように、血抜き方法は、挿入ステップ中に、ノズル120にかかる圧力を取得する圧力取得ステップと、圧力が所定圧力を超えた場合に、ノズル120の挿入を停止する挿入停止ステップと、を有する。
【0068】
また、鮮魚加工装置100Bは、ノズル120にかかる圧力を取得する圧力取得部165bを備え、制御部180は、圧力が所定圧力を超えた場合に、ノズル120の挿入を挿入部150に停止させる。
【0069】
これによれば、挿入時にノズル120にかかる圧力が所定圧力を超えると、ノズル120の挿入が停止されるので、ノズル120の先端が腎臓204を貫通し背骨203に当接した時点でノズル120の挿入を停止することができる。したがって、ノズル120の先端部をより確実に腎臓204に挿入することができる。
【0070】
[その他]
以上、本発明の実施の形態に係る血抜き方法などについて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0071】
上記実施の形態では、背202が上方、腹201が下方を向くように魚200を保持部110が保持する場合を例示した。しかしながら、保持部が支持する魚の姿勢は如何様でもよい。例えば、背が下方、腹が上方を向く姿勢で保持部が魚を支持してもよいし、背及び腹が水平方向に沿う姿勢で保持部が魚を支持してもよい。
【0072】
上記実施の形態では、各ノズル120の出没動作が挿入部150によって自動で実行される場合を例示した。しかしながら各ノズルの出没動作は手動式であってもよい。手動式においては、手動で出没動作を行うための出没機構が鮮魚加工装置に設けられる。
【0073】
上記実施の形態では、各ノズル120が魚200の腹201から挿入される場合を例示した。しかしながら、各ノズルの先端部が魚の腎臓に挿入されるのであれば、挿入位置は如何様でもよい。例えば、魚の胸ビレ近傍から各ノズルの先端部を挿入してもよい。
【0074】
上記実施の形態では、魚200に注入される液体として水またはオゾン水を例示した。しかし液体としては、水またはオゾン水に限られず、例えば出汁、海水、殺菌した海水、海洋深層水を用いてもよい。出汁を用いた場合には魚に出汁、即ちうま味成分が入り、おいしくなる。海水を用いた場合には魚が塩味になり、さらに船の上での使用も容易である。殺菌した海水を用いれば、海水を用いた場合の効果に加え、殺菌されているという効果を有する。海洋深層水を用いた場合には、海水を用いた場合の効果に加え、魚に蓄積されるミネラルが増加する。なお、海水はそのままの濃度で使用する場合だけでなく、獲れた魚の生息海域の塩分濃度を最大値として、そこから真水までの任意の塩分濃度としてもよい。水は真水を用いてもよいが、水道水用いてもよい。水道水は安価であり経済性に優れる。出汁、海水、殺菌した海水、海洋深層水などを用いた場合は、真水と違って浸透圧の関係で魚からの旨味の流出を防ぐことができる。海水の塩分濃度は、魚の塩味の程度の観点以外に、浸透圧による旨味の流出防止の観点から設定してもよい。液体の温度は、凍らない程度の温度から、水道の温度を用いることが好ましい。特に、液体の温度は、魚の腐敗防止の観点から低温(3℃以下)が好ましい。なお、血抜き時においても、魚の腐敗防止の観点から、その雰囲気中の温度も低温であることが好ましい。この場合、魚が凍らない雰囲気温度であることが好ましく、氷点下よりも高いことが好ましい。
【0075】
また、液体としては、ファインバブル、ナノバブルの液体を用いてもよい。ファインバブルは、直径0.001mm(1μm)~0.1mmの超微細な気泡を含む液体をいい、ナノバブルは、直径1μm以下の超微細な気泡を含む液体をいう。
【0076】
また、血抜きの前に魚の表面を洗浄してもよく、その際の洗浄液として、水でもよいが、ファインバブル水、ナノバブル水、オゾン水を用いてもよい。この洗浄液の温度及び雰囲気温度に関しても、魚の血抜きの場合と同様である。
【0077】
その他、実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、魚を血抜きする際に用いられる血抜き方法及び鮮魚加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
100、100A、100B 鮮魚加工装置
110 保持部
111 台座
112 押さえ部
120 ノズル
130 供給部
131 配管
140 廃液槽
150 挿入部
151 機構部
152 駆動源
161 注入量取得部
162 排出量取得部
163a 成分取得部
164 サイズ取得部
165b 圧力取得部
170 報知部
180 制御部
200 魚
201 腹
202 背
203 背骨
204 腎臓
205 肋骨
210 尾部