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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010154
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】表示装置及びデータドライバ
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20230113BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20230113BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611D
G09G3/20 611E
G09G3/20 623D
G09G3/20 624B
G09G3/20 642A
G09G3/20 623V
G09G3/20 623R
G09G3/20 621B
G09G3/20 621C
G02F1/133 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114076
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZB01
2H193ZC02
2H193ZD22
2H193ZD34
5C006AC21
5C006AC26
5C006AC27
5C006AC28
5C006AF43
5C006AF44
5C006AF51
5C006AF52
5C006AF71
5C006BB15
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC06
5C006BC11
5C006BF04
5C006BF24
5C006BF25
5C006BF34
5C006BF46
5C006FA23
5C006FA25
5C006FA37
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD05
5C080DD10
5C080FF12
5C080GG11
5C080GG12
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
(57)【要約】
【目的】カラム反転駆動により、フリッカやクロストーク等の画質劣化を抑えた画像表示を行うことが可能な表示装置、及びデータドライバを提供することを目的とする。
【構成】本発明は、所定のデータ線数毎に設けられており、夫々が、映像信号を受け当該映像信号に応じて、正極性の階調データ信号及び負極性の階調データ信号を生成し、正極性及び負極性の階調データ信号のうちの一方を表示パネルの第1及び第2のデータ線群のうちの一方に出力すると共に、正極性及び負極性の階調データ信号のうちの他方を他方のデータ線群に出力する複数のデータドライバを有し、当該データドライバは、正極性の階調データ信号に対して負極性の階調データ信号の位相を遅れる方向にシフトすると共に、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のデータ線群からなる複数のデータ線、及び前記複数のデータ線と交叉して配置されている複数のゲート線を含み、前記データ線と前記ゲート線との各交叉部に画素を担う表示セルが配置されている表示パネルと、
前記複数のゲート線の各々にゲート選択信号を供給するゲートドライバと、
所定のデータ線数毎に設けられており、夫々が、映像信号を受け当該映像信号に応じて、所定の基準電圧より高い正極性の階調データ信号及び前記基準電圧より低い負極性の階調データ信号を生成し、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの一方のデータ線群に出力すると共に、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの他方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの他方のデータ線群に出力する複数のデータドライバと、を有し、
前記データドライバは、
夫々が前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を出力する複数の出力アンプを含み、
前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した正極性の電圧値を夫々有するデータパルスが所定周期で表れる信号を前記正極性の階調データ信号として生成し、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した負極性の電圧値を夫々有するデータパルスが前記正極性の階調データ信号の位相に対して遅れる方向にシフトした位相で前記所定周期毎に表れる信号を前記負極性の階調データ信号として生成すると共に、
前記複数の出力アンプのうちで前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートが前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示セルは、
液晶層と、
前記液晶層を挟む画素電極及び対向基板電極と、
前記ゲート線に前記ゲート選択信号が供給された場合にオン状態となって前記データ線に供給された前記階調データ信号を前記画素電極へ供給する画素スイッチと、を含み、
前記対向基板電極には前記基準電圧が印加されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記正極性の階調データ信号と前記負極性の階調データ信号との位相差に対応した分だけ前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを低下させることを示すスルーレート制御信号を生成するスルーレート制御部と、
前記スルーレート制御信号に応じて前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプを動作させる為に当該出力アンプ内に流すバイアス電流の電流量を設定する第1のバイアス電圧を生成する第1のバイアス生成部と、
前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプを動作させる為に当該出力アンプ内に流す所定電流量のバイアス電流を設定する第2のバイアス電圧を生成する第2のバイアス生成部と、を含み、
前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、前記第1のバイアス電圧を受けて当該第1のバイアス電圧に対応したバイアス電流に基づき、前記階調データ信号を生成する為の出力電流を出力し、
前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、前記第2のバイアス電圧を受けて当該第2のバイアス電圧に対応したバイアス電流に基づき、前記階調データ信号を生成する為の出力電流を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記データドライバは、
前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルを正極性の電圧値を有する正極階調電圧又は負極性の電圧値を有する負極階調電圧に変換するデコーダ部を含み、
前記複数の出力アンプのうちで前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、自身の非反転入力端子で前記正極階調電圧を受け、自身の反転入力端子と出力端子とが接続されているオペアンプであり、
前記複数の出力アンプのうちで前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、自身の非反転入力端子で前記負極階調電圧を受け、自身の反転入力端子と出力端子とが接続されているオペアンプであることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記映像信号における1フレーム期間毎に、前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプの出力端子をデータドライバの複数の外部端子のうちの1の外部端子に接続すると共に前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプの出力端子を他の外部端子に接続する第1状態と、前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプの出力端子を前記他の外部端子に接続すると共に前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプの出力端子を前記1の外部端子に接続する第2状態と、を交互に切り替えるマルチプレクサを含むことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記データドライバは、
前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルを正極性の電圧値を有する正極階調電圧又は負極性の電圧値を有する負極階調電圧に変換するデコーダ部と、
前記映像信号における1フレーム期間毎に、前記正極階調電圧を前記複数の出力アンプのうちの1の出力オペアンプに供給すると共に前記負極階調電圧を前記複数の出力アンプのうちの他の出力オペアンプに供給する第1状態と、前記正極階調電圧を前記他の出力オペアンプに供給すると共に前記負極階調電圧を前記1の出力アンプに供給する第2状態と、を交互に切り替える第1のマルチプレクサと、
前記映像信号における1フレーム期間毎に、前記第1のバイアス電圧を前記1の出力オペアンプに供給すると共に前記第2のバイアス電圧を前記他の出力オペアンプに供給する状態と、前記第1のバイアス電圧を前記他の出力オペアンプに供給すると共に前記第2のバイアス電圧を前記1の出力オペアンプに供給する状態と、を交互に切り替える第2のマルチプレクサと、を含み、
前記1の出力アンプは、自身の非反転入力端子で前記正極階調電圧又は前記負極階調電圧を受け、自身の反転入力端子と出力端子とがデータドライバの複数の外部端子のうちの1の外部端子に接続されているオペアンプであり、
前記他の出力アンプは、自身の非反転入力端子で前記負極階調電圧又は前記正極階調電圧を受け、自身の反転入力端子と出力端子とがデータドライバの複数の外部端子のうちの他の外部端子に接続されているオペアンプであることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項7】
前記出力アンプは、
前記正極階調電圧又は前記負極階調電圧をゲートで受ける第1のトランジスタと、自身が出力する前記階調データ信号をゲートで受ける第2のトランジスタとを含む差動対と、
前記バイアス電圧に対応したバイアス電流を生成して前記第1及び第2のトランジスタのソースに供給する電流源と、
前記差動対に流れる一対の差動出力電流に応じた電流を前記出力端子に流すことで前記出力端子上に前記階調データ信号を生成する増幅段と、を含むことを特徴とする請求項4~6のいずれか1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記データドライバは、前記正極性の階調データ信号と前記負極性の階調データ信号との位相差に対応した分だけ、前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを低下させる制御を行うことを特徴とする請求項1~7のいずれか1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記複数のデータドライバの各々が個別に、前記正極性の階調データ信号と前記負極性の階調データ信号との位相差に対応した分だけ、前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを、前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くする制御を行うことを特徴とする請求項1~7のいずれか1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記正極性の階調データ信号の出力を担う複数の出力アンプが、第1~第U(Uは2以上野整数)の正極出力アンプ群に区分けされていると共に、前記負極性の階調データ信号の出力を担う複数の出力アンプが、第1~第Uの負極出力アンプ群に区分けされており、
前記第1のバイアス生成部は、前記第1~第Uの正極出力アンプ群の各々に対して個別に前記第1のバイアス電圧を供給する第1~第Uの正極バイアス部を含み、
前記第2のバイアス生成部は、前記第1~第Uの負極出力アンプ群の各々に対して個別に前記第2のバイアス電圧を供給する第1~第Uの負極バイアス部を含むことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項11】
映像信号を受け、前記映像信号に応じて所定の基準電圧より高い正極性の階調データ信号及び前記基準電圧より低い負極性の階調データ信号を生成し、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を表示パネルの第1及び第2のデータ線群のうちの一方のデータ線群に出力すると共に、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの他方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの他方のデータ線群に出力するデータドライバであって、
夫々が前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を出力する複数の出力アンプを含み、
前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した正極性の電圧値を夫々有するデータパルスが所定周期で表れる信号を前記正極性の階調データ信号として生成し、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した負極性の電圧値を夫々有するデータパルスが前記正極性の階調データ信号の位相に対して遅れる方向にシフトした位相で前記所定周期毎に表れる信号を前記負極性の階調データ信号として生成すると共に、
前記複数の出力アンプのうちで前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートが前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御することを特徴とするデータドライバ。
【請求項12】
前記正極性の階調データ信号と前記負極性の階調データ信号との位相差に対応した分だけ前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを低下させることを示すスルーレート制御信号を生成するスルーレート制御部と、
前記スルーレート制御信号に応じて前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプを動作させる為に当該出力アンプ内に流すバイアス電流の電流量を設定する第1のバイアス電圧を生成する第1のバイアス生成部と、
前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプを動作させる為に当該出力アンプ内に流す所定電流量のバイアス電流を設定する第2のバイアス電圧を生成する第2のバイアス生成部と、を含み、
前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、前記第1のバイアス電圧を受けて当該第1のバイアス電圧に対応したバイアス電流に基づき、前記階調データ信号を生成する為の出力電流を出力し、
前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプは、前記第2のバイアス電圧を受けて当該第2のバイアス電圧に対応したバイアス電流に基づき、前記階調データ信号を生成する為の出力電流を出力することを特徴とする請求項11に記載のデータドライバ。
【請求項13】
前記正極性の階調データ信号の出力を担う複数の出力アンプが、第1~第U(Uは2以上野整数)の正極出力アンプ群に区分けされていると共に、前記負極性の階調データ信号の出力を担う複数の出力アンプが、第1~第Uの負極出力アンプ群に区分けされており、
前記第1のバイアス生成部は、前記第1~第Uの正極出力アンプ群の各々に対して個別に前記第1のバイアス電圧を供給する第1~第Uの正極バイアス部を含み、
前記第2のバイアス生成部は、前記第1~第Uの負極出力アンプ群の各々に対して個別に前記第2のバイアス電圧を供給する第1~第Uの負極バイアス部を含むことを特徴とする請求項12に記載のデータドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じた画像を表示する表示装置、及び表示装置に含まれるデータドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大画面の表示装置の多くには、表示デバイスとしてアクティブマトリクス駆動方式の液晶パネルが採用されている。
【0003】
液晶パネルには、2次元画面の垂直方向に夫々伸張する複数のデータ線と、2次元画面の水平方向に夫々伸張する複数のゲート線と、が交叉して配置されている。更に、これら複数のデータ線と、複数のゲート線との各交叉部には、データ線及びゲート線に接続されている画素スイッチを含む画素部が形成されている。画素部は、画素毎に独立して配置されている透明電極と、液晶パネルにおける2次元画面全体を担う1つの透明な電極が形成されている対向基板と、各画素の透明電極各々と対向基板との間に封入された液晶材料と、バックライトと、を有する。
【0004】
液晶表示装置は、かかる液晶パネルと共に、各画素の輝度レベルに対応したアナログ電圧値を有する階調データ信号を1水平走査期間単位のデータパルスでデータ線に供給するデータドライバ、及び画素スイッチをオン・オフ制御するゲート選択信号をゲート線の各々に印加するゲートドライバを含む。
【0005】
液晶表示装置では、ゲートドライバから送出されたゲート選択信号に応じて画素スイッチがオンとなるときに、データドライバから送出された階調データ信号が画素部の透明電極に印加される。以降、かかる動作を画素部への電圧供給、或いは画素部への充電(放電も含む)と称する。この際、各画素部の透明電極に印加された階調データ信号の電圧値と、対向基板に印加されている固定の電圧(対向基板電圧と称する)との電位差に応じて液晶の透過率が変化し、当該階調データ信号に応じた表示が行われる。
【0006】
更に、液晶表示装置では、自身の液晶の劣化を防ぐために、対向基板電圧に対して正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号を所定のフレーム期間毎に交互に供給する極性反転駆動を行う。
【0007】
尚、近年の液晶表示装置の大画面化及び超高解像度化に伴い、映像信号の1水平走査期間の期間長が短くなり、1画素あたりの駆動期間、つまりデータ線に1つの画素に対応した階調データ信号を供給する期間(1データ期間とも称する)も短くなる。これにより、画素への充電期間が短くなり、特に、負極性の階調データ信号が供給(充電)される画素よりも、正極性の階調データ信号が供給(充電)される画素において充電不足が生じる可能性が高かった。
【0008】
つまり、各画素に含まれる画素スイッチは実際には薄膜トランジスタであり、その制御端子に印加されるゲート選択信号と、その第1端子に印加される階調データ信号との電位差に応じた電流駆動能力で、その第2端子に接続される画素(透明電極)へ階調データ信号が供給される。よって、ゲート選択信号と階調データ信号との電位差が小さいほど画素スイッチの電流駆動能力が小さくなり、画素に対する階調データ信号の充電速度が遅くなる。
【0009】
この際、正極性の階調データ信号の電圧は全体的に負極性の階調データ信号の電圧よりも高い。よって、正極性の階調データ信号とゲート選択信号との電位差は、負極性の階調データ信号とゲート選択信号との電位差よりも小さくなる。これにより、1データ期間内において、負極性の階調データ信号が供給(充電)された画素が過不足無く充電されても、正極性の階調データ信号が供給(充電)された画素が充電不足となる場合があり、表示画像にフリッカや画質劣化が生じる虞があった。
【0010】
そこで、階調データ信号の極性を1水平走査ライン毎に反転させる駆動を採用し、正極性の階調データ信号で書込を行う1水平走査期間の期間長を、負極性の階調データ信号で書込を行う1水平走査期間の期間長に比べて長くすることで、上記不具合を解消した液晶駆動方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
ところで、液晶表示装置の大画面化及び超高解像度化に伴い、1データ期間が短くなると共に、ゲート線及びデータ線の配線抵抗及び配線容量が増加する。これにより、ゲートドライバの出力端子からの配線長が長い位置に配置されている画素では、近い位置に配置されている画素に比べて、その画素に到達するゲート選択信号のパルスのエッジ部の鈍りが大きくなる。また、極性反転による電位差の大きいデータ線の充放電が多いと、データドライバの消費電力(発熱)が増大する。
【0012】
そこで、大画面及び高解像度の液晶パネルでは、データ線に供給する階調データ信号の極性をフレーム期間内は同一極性とし、隣接データ線間で極性を異ならせると共に、フレーム期間単位で、各データ線に供給する階調データ信号の極性を反転させる、いわゆるカラム反転駆動(カラムライン反転駆動とも称する)が行われている。
【0013】
しかしながら、カラム反転駆動を行う場合にも、前述したように、負極性の階調データ信号が供給された画素が過不足無く充電されても、正極性の階調データ信号が供給された画素が充電不足となる虞がある。
【0014】
図1は、カラム反転駆動により、表示パネルの互いに隣接する第X番目及び第(X+1)番目のデータ線に夫々印加される正極性の階調データ信号Vdx及び負極性の階調データ信号Vd(x+1)と、ゲート線に印加されるゲート選択信号Vgkの波形の一例を示す波形図である。図1では、データドライバに最も近い1番目のゲート線をGL1とし、最も遠いr番目のゲート線をGLrとし、ゲート線GLrからゲート線GL1に向かってゲートドライバから順次ゲート選択信号が出力される駆動例を示している。また、データドライバから出力される正極性の階調データ信号Vdx及び負極性の階調データ信号Vd(x+1)も、ゲート選択信号の選択順に対応し、それぞれr行目の画素に供給される階調データパルスDpr、Dnrから順次出力され、最後に1行目の画素に供給される階調データパルスDp1、Dn1が出力される。
【0015】
ここで、階調データ信号は、データ線方向の各画素にそれぞれ供給するアナログ電圧値(階調電圧)を有し、1データ期間単位の複数の階調データパルスで構成される。正極性の階調データ信号Vdxの各階調データパルスは、対向基板電圧VCOMより高電位側で、所定の下限値Lpyから、それより高い上限値Lpzまでの電圧範囲内の階調電圧を有する。また、負極性の階調データ信号Vd(x+1)は、対向基板電圧VCOMより低電位側で、所定の上限値Lnyから、それより低い下限値Lnzまでの電圧範囲内の階調電圧を有する。対向基板電圧は、一般的に、正極性の階調データ信号の下限値Lpyと、負極性の階調データ信号の上限値Lnyとの間に設定される。なお図面では、説明の便宜上、階調データ信号Vdx及びVd(x+1)の階調データパルスは、それぞれの電圧範囲内の上限値と下限値の階調電圧が1データ期間毎交互に出力される駆動パターンを示す。
【0016】
ゲート選択信号Vgkは、選択対象となる第k(kは2以上の整数)番目のゲート線に印加される、所定の低電位VGLの状態から高電位VGHに推移するパルス信号である。ゲート選択信号は、ゲートドライバの出力端子からのゲート線の配線長に応じたインピーダンス(配線抵抗や配線容量)により波形鈍りを生じる。尚、図1では、ゲートドライバの出力端子からの配線長が比較的長い位置の第X及び第(X+1)番目のデータ線と交叉するゲート線の位置で観測されるゲート選択信号Vgkの波形の一例を示す。また、図1に示す一例では、画素充電効率を高める為に、ゲート選択信号Vgkは、k行目の画素に供給する正極性の階調データパルスDpk及び負極性の階調データパルスDnkが第X、第(X+1)番目のデータ線に出力される1データ期間よりも前のデータ期間から高電位VGHの状態を維持している。これにより、図1に示すように、Dpk及びDnkの直前の階調データパルスDp(k+1)及びDn(k+1)等によって、選択対象となるk行目の画素を予備充電しておくという、いわゆるゲートプリチャージが為される。
【0017】
ここで、正極性のデータパルスDpkと負極性のデータパルスDnk(kは共に1,2,…,r)は同一クロックCLKによりタイミング制御され、それぞれの位相は同一とされる。ゲート選択信号Vgkと階調データパルスDpk及びDnkの位相タイミングは、k行目の選択画素に対して次の階調データパルスDp(k-1)及びDn(k-1)の充電が生じないように、負極性の階調データ信号Vd(x+1)の振幅の下限値Lnzとゲート選択信号Vgkの電位との関係で決定する。図1では、負極性の階調データ信号Vd(x+1)の下限値Lnzを有する階調データパルスDnkを供給する1データ期間T1Hの終了時に、ゲート信号Vgkが電位Lnzを下回るように位相タイミングが調整される。
【0018】
これにより、負極性の階調データパルスDnkの実効的な画素充電期間Tn1は1データ期間T1Hと同等となる。
【0019】
一方、正極性の階調データパルスDpkの実効的な画素充電期間Tp1は、正極性の階調データ信号Vdxのダイナミックレンジの下限値Lpyの階調データパルスDpkとゲート選択信号Vgkの電位により定まる。
【0020】
このとき、正極性の階調データパルスDpkによる実効的な画素充電期間Tp1は、図1に示すようにゲート選択信号Vgkのリアエッジ部の鈍りにより、1データ期間T1Hよりも期間Ts1だけ短くなり、その分だけ画素充電率が下がる。
【0021】
更に、前述したように、ゲート選択信号Vgkと階調データ信号との電位差も画素充電率に影響し、電位差の大きい負極性の階調データ信号Vd(x+1)の画素充電率に比べて、正極性の階調データ信号Vdxの画素充電率は低くなる。
【0022】
したがって、正極性の階調データ信号に基づく充電率と、負極性の階調データ信号に基づく充電率とが一致しなくなり、表示画像中にフリッカや画質劣化が生じるという不具合が発生する。
【0023】
この際、カラム反転駆動を行う場合には、1水平走査ラインに沿って正極性の階調データ信号が供給される画素と、負極性の階調データ信号が供給される画素とが混在するので、特許文献1に記載の方法では上記した不具合を解消することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2002-108288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、カラム反転駆動を行うにあたり、正極性の階調データ信号に対して負極性の階調データ信号の位相を遅らせることで、リアエッジ部に鈍りが生じているゲート選択信号と負極性の階調データ信号とによる画素充電率と、当該ゲート選択信号と正極性の階調データ信号とによる画素充電率との差を縮めることが考えられる。
【0026】
しかしながら、このようなカラム反転駆動により、例えば図2に示すような画面中央部に比較的大きい白色スクエア領域WEを含むグレー背景の画像を表示すると、白色スクエア領域WEの上辺及び下辺に沿って筋ムラ(クロストークと称する)が表れてしまうという問題が生じる。
【0027】
以下に、このようなクロストークが生じる原因について図3を参照しつつ説明する。
【0028】
図3は、図2に示す白色スクエア領域WEの上辺に沿ったゲート線Gaにゲート選択信号が供給されている間に、白色スクエア領域WEを通るデータ線Df、D(f+1)、白色スクエア領域WEを通らないデータ線Dg、D(g+1)に夫々送出されるデータ信号の波形と、対向基板電圧VCOMの電圧波形を示す波形図である。なお以下では、液晶材料が、対向基板電圧VCOMと各画素電極との電圧差が大きいほど液晶透過率大(白表示)となる特性を有する場合で説明する。
【0029】
図3に示すように、データ線Dfでは、正極性の階調データ信号のレベルが、時点Tpにてグレーを表すレベルVp_gyから白を表すレベルVp_wtに向けて上昇する。また、データ線D(f+1)では負極性の階調データ信号のレベルが、時点Tpから所定期間だけ経過した時点Tnにてグレーを表すレベルVn_gyから白を表すレベルVn_wtに向けて下降する。また、図3に示すように、白色スクエア領域WEを通らないデータ線Dgでは、正極性の階調データ信号はレベルVp_gyを維持し、白色スクエア領域WEを通らないデータ線D(g+1)では、負極性の階調データ信号はレベルVn_gyを維持する。
【0030】
この際、対向基板電圧VCOMは、図3に示すようなデータ線Dfに印加される正極性の階調データ信号の電圧の立ち上がり及びデータ線D(f+1)に印加される負極性の階調データ信号の電圧の立ち下がりに応じた液晶パネル内の容量カップリングにより、大きな幅広の電圧変動が発生する。なお、対向基板電圧VCOMの電圧変動の大きさは、図2に示す白色スクエア領域WEエッジの幅(白色スクエア領域WEのエッジで電圧変化を生じるデータ線数)や、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号それぞれの白を表す電圧レベルへの変化のタイミング差や、電圧レベルの変化の速さ(正極性及び負極性の出力アンプのスルーレートの大きさ)等に依存する。そして白色スクエア領域WEエッジで生じる対向基板電圧VCOMの電圧変動は対向基板電極がつながるパネル面内にも伝播する。これにより、白色スクエア領域WEを通らない例えばデータ線Dg、D(g+1)のゲート線GaやGbとの交差部の画素電極と対向基板電極との間の電位差が期待値からずれた状態で保持されると、ゲート線Ga、Gbに沿って配置されている各画素は、本来のグレー背景とは異なる輝度となる。例えば図3では、ゲート線Gaで選択される1H期間終了時に、データ線Dfの正極性の階調データ信号が供給される画素は、対向基板電圧VCOMが上昇しているため、画素の液晶に印加される電圧(階調データ信号と電圧VCOMとの差電圧)が期待値より減少した状態で1フレーム期間保持され、輝度が期待値より低下する。また、データ線D(f+1)の負極性の階調データ信号が供給される画素は、対向基板電圧VCOMが上昇しているため、画素の液晶に印加される電圧が期待値より増加した状態で1フレーム期間保持され、輝度が期待値より上昇する。しかしながら、これらの画素は、色変化が生じる境界に位置し、また輝度の高い白色のため対向基板電圧VCOMの変動による多少の輝度変化を人は視覚できない。一方、ゲート線Gaで選択される1H期間終了時に、白色スクエア領域WEを通らないデータ線Dgの階調データ信号が供給される画素は、対向基板電圧VCOMが上昇しているため、画素の液晶に印加される電圧が期待値より減少した状態で1フレーム期間保持され、輝度が期待値より低下する。また、データ線D(g+1)の階調データ信号が供給される画素は、対向基板電圧VCOMが上昇しているため、画素の液晶に印加される電圧が期待値より増加した状態で1フレーム期間保持され、輝度が期待値より上昇する。これらの画素は、一定レベル以上の輝度変化が生じたことで、非線形なガンマ特性において正極性と負極性のそれぞれの画素の輝度の相殺にもずれが生じ、且つ、人の視覚感度が高いグレー表示領域に位置するため、周囲との輝度の違いが視覚されやすくなる。その結果、図2に示すように、グレー背景のゲート線Gaに沿った筋ムラが視覚されるようになる。同様に、ゲート線Gbに沿った筋ムラも視覚される。なお対向基板電圧VCOMの電圧変動が大きく、複数データ期間に及ぶ場合には、ゲート線Ga、Gbの後に選択されるゲート線に沿った各画素にも筋ムラが生じる可能性がある。一方、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号とのタイミングの差が十分小さい時は、容量カップリングが正極と負極とで相殺されるため、対向基板電圧VCOMの変動幅は微量となり、クロストークも十分小さい。
【0031】
そこで、本発明は、カラム反転駆動により、フリッカやクロストーク等の画質劣化を抑えた画像表示を行うことが可能な表示装置、及びデータドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明に係る表示装置は、第1及び第2のデータ線群からなる複数のデータ線、及び前記複数のデータ線と交叉して配置されている複数のゲート線を含み、前記データ線と前記ゲート線との各交叉部に画素を担う表示セルが配置されている表示パネルと、前記複数のゲート線の各々にゲート選択信号を供給するゲートドライバと、所定のデータ線数毎に設けられており、夫々が、映像信号を受け当該映像信号に応じて、所定の基準電圧より高い正極性の階調データ信号及び前記基準電圧より低い負極性の階調データ信号を生成し、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの一方のデータ線群に出力すると共に、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの他方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの他方のデータ線群に出力する複数のデータドライバと、を有し、前記データドライバは、前記正極性の階調データ信号又は前記負極性の階調データ信号を個別に出力する複数の出力アンプを含み、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した正極性の電圧値を夫々有するデータパルスが所定周期で表れる信号を前記正極性の階調データ信号として生成し、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した負極性の電圧値を夫々有するデータパルスが前記正極性の階調データ信号の位相に対して遅れる方向にシフトした位相で前記所定周期毎に表れる信号を前記負極性の階調データ信号として生成すると共に、前記複数の出力アンプのうちで前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートが前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御する。
【0033】
本発明に係るデータドライバは、映像信号を受け、前記映像信号に応じて所定の基準電圧より高い正極性の階調データ信号及び前記基準電圧より低い負極性の階調データ信号を生成し、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を表示パネルの第1及び第2のデータ線群のうちの一方のデータ線群に出力すると共に、前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの他方を前記第1及び第2のデータ線群のうちの他方のデータ線群に出力するデータドライバであって、夫々が前記正極性の階調データ信号及び前記負極性の階調データ信号のうちの一方を出力する複数の出力アンプを含み、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した正極性の電圧値を夫々有するデータパルスが所定周期で表れる信号を前記正極性の階調データ信号として生成し、前記映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した負極性の電圧値を夫々有するデータパルスが前記正極性の階調データ信号の位相に対して遅れる方向にシフトした位相で前記所定周期毎に表れる信号を前記負極性の階調データ信号として生成すると共に、前記複数の出力アンプのうちで前記正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートが前記負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御する。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、表示パネルの各データ線に出力する階調データ信号の極性を1フレーム期間毎に切り替えるカラム反転駆動を行うにあたり、正極性の階調データ信号に対して負極性の階調データ信号の位相を遅らせる方向にシフトしている。これにより、ゲート選択信号のリアエッジ部に鈍りが生じている状態でも、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差を縮めることができる。よって、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差に伴うフリッカを抑制することが可能となる。
【0035】
更に、本発明では、正極性の階調データ信号を出力する出力アンプのスルーレートを、負極性の階調データ信号を出力する出力アンプのスルーレートよりも低下させている。これにより、正極性の階調データ信号に対して負極性の階調データ信号の位相を遅らせることで生じる、データ線及び対向基板電極間の容量カップリングによる対向基板電圧の変動のピークを抑えることができるので、当該対向基板電圧の変動に伴い表示画像中に表れるクロストーク(筋ムラ)を抑制することが可能となる。
【0036】
したがって、本発明によれば、カラム駆動によって表示パネルを駆動するにあたり、フリッカやクロストーク(筋ムラ)等の画質劣化を抑制した画像表示を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ゲート線に印加されるゲート選択信号と、従来の駆動により隣接する一対のデータ線に印加される正極性及び負極性の階調データ信号の波形例を示す波形図である。
図2】グレー背景で画面中央に白色スクエア領域を含む画像を表示した際に当該画像中に表れるクロストーク(筋ムラ)の一例を示す図である。
図3】グレー背景で画面中央に白色スクエア領域を含む画像を表示するために、当該白色スクエア領域を通る一対のデータ線及び通らない一対のデータ線に夫々印加される階調データ信号群、及び対向基板電圧の波形を示す波形図である。
図4】本発明に係る表示装置としての液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】表示セルの構造の一例を概略的に表す図である。
図6】データドライバ120の内部構成の一例を示すブロック図である。
図7】ラッチ出力タイミング信号LOAD1及びLOAD2の波形の一例を示す波形図である。
図8】データドライバ120から出力される階調データ信号Vd1~Vd4各々の極性状態(正極性又は負極正)の推移の一例を表すタイムチャートである。
図9】ゲート線に印加されるゲート選択信号と、データドライバ120が一対のデータ線に印加する正極性及び負極性の階調データ信号の波形の一例を示す波形図である。
図10】データドライバ120が図2に示す白色スクエア領域を通る一対のデータ線、及び白色スクエア領域を通らない一対のデータ線に夫々印加する階調データ信号群、及び対向基板電圧の波形を示す波形図である。
図11】出力アンプ部95内の一部の構成の一例を示すブロック図である。
図12】出力アンプ部95に含まれる出力アンプ群のうちから正極用の出力アンプを抜粋して出力アンプ各々の回路構成の一例を示す回路図である。
図13】出力アンプ部95内の一部の構成の他の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図4は、本発明に係る表示装置としてのアクティブマトリクス型の液晶表示装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
図4に示すように、液晶表示装置10は、表示コントローラ100、データドライバ120-1~120-p、ゲートドライバ110及び表示パネル150を有する。
【0040】
表示パネル150には、図4に示すように2次元画面の水平方向に伸張するゲート線GL1~GLr(rは2以上の整数)と、2次元画面の垂直方向に伸張するデータ線DL1~DLm(mは2以上の整数)とが交叉して配置されている。データドライバ120-1~120-pは、それぞれ所定のデータ線数毎に設けられており、p個(pは1より大の整数)のデータドライバ全体で表示パネル150のデータ線DL1~DLmを駆動する。ゲート線GL1~GLrを駆動するゲートドライバ110は、狭額縁化の要請により、表示パネル150と一体で形成された薄膜トランジスタ回路で構成されるものが主流となっている。ゲート線GL1~GLrの各々と、データ線DL1~DLmの各々との交叉部には、単位画素を担う表示セル154が形成されている。
【0041】
尚、図4では、ゲートドライバ110は表示パネル150の片側配置で示されているが、2つのゲートドライバ110を夫々表示パネル150における2次元画面の左右両端部に配置し、各ゲートドライバ110でゲート線GL1~GLrを駆動するようにしても良い。
【0042】
図5は、表示セル154の構造を概略的に表す図である。
【0043】
図5に示すように、表示セル154は、互いに積層されている画素電極C1、液晶層C2及び対向基板電極C3と、画素スイッチとしての薄膜トランジスタTRと、を含む。尚、図5では、nチャネル型の薄膜トランジスタの例を示す。
【0044】
画素電極C1は、表示セル154毎に独立して設けられた透明電極であり、対向基板電極C3は、表示パネル150の全面に亘る単一の透明電極である。トランジスタTRの制御端子はゲート線GLに接続されており、その第1端子はデータ線DLに接続されている。更に、トランジスタTRの第2端子は画素電極C1に接続されている。対向基板電極C3には基準電圧としての対向基板電圧VCOMが印加されている。
【0045】
また図4において、表示コントローラ100は、映像信号VDに基づき、制御信号群CS、各画素の輝度レベルを示す映像データPDの系列、及びデジタル設定情報をシリアルのデジタル信号形態で表す映像信号DVSを生成する。
【0046】
制御信号群CSは、フレーム周期の基準信号の垂直帰線信号Vsync、データ期間の基準信号の水平帰線信号Hsync、及びクロック信号CLK等を含む。デジタル設定情報は、出力遅延方向情報CF、出力遅延シフト量情報SA1及びSA2、出力スタートタイミング情報TA1及びTA2を含む。
【0047】
出力遅延方向情報CFは、データドライバ120-1~120-pの各々毎に、i(iは2以上の整数)個の階調データ信号Vdを出力するi個の出力チャネルに対して、以下のような出力遅延時間の増加方向を指定する情報である。つまり、出力遅延方向情報CFは、正極性及び負極性夫々の出力開始チャネルからの出力遅延時間の増加方向を、出力チャネルの番号の昇順及び降順のうちのいずれの順序で増加させるか、又はi個の出力チャネルの両端側から中央に向かって出力遅延時間を増加させるかを指定する情報である。尚、正極及び負極の出力遅延方向情報CFは共通とされる。具体的には、例えば表示パネルの2次元画面の左右両端部にゲートドライバを配置し、2次元画面の下端部(又は上端部)に水平方向に沿ってデータドライバ120-1~120-pが並置される場合、出力遅延方向情報CFの内容は以下のようになる。つまり、2次元画面の左半面のデータドライバIC各々の出力遅延方向情報CFにて、i個の出力チャネルに対して、左端ゲートドライバから画面中央に向かってゲート選択信号遅延が増加する方向に対応し、第1出力チャネルから第i出力チャネルに向かって出力遅延時間を増加させる方向指定を行う。また、2次元画面の右半面のデータドライバIC各々の出力遅延方向情報CFでは、i個の出力チャネルに対して、右端側ゲートドライバから画面中央に向かってゲート選択信号遅延が増加する方向に対応し、第i出力チャネルから第1出力チャネルに向かって出力遅延時間を増加させる方向指定を行う。また、出力遅延方向情報CFにより、データドライバICが実装される表示パネル端部でのデータ線ファンアウト配線長に対する補正のために、i個の出力チャネルの両端側から中央に向かって出力遅延時間を増加させる方向指定を行ってもよい。
【0048】
出力遅延シフト量情報SA1は、データドライバ120-1~120-pの各々毎に、正極性の階調データ信号Vdの出力を担う出力チャネル群に設定する遅延シフト量を指定する情報である。出力遅延シフト量情報SA2は、データドライバ120-1~120-pの各々毎に、負極性の階調データ信号Vdの出力を担う出力チャネル群に設定する遅延シフト量を指定する情報である。尚、遅延シフト量とは、所定の出力チャネル数単位xr(出力チャネル番号の昇順方向)又はxl(出力チャネル番号の降順方向)(但し、xr<i、xl<i)あたりの遅延時間の変化量であり、例えばクロック信号CLKのパルス幅の整数倍にて段階的に表される。
【0049】
出力スタートタイミング情報TA1は、データドライバ120-1~120-pの各々毎に、正極性の階調データ信号Vdの出力を担う出力チャネル群に対して出力開始チャネルの出力タイミングを指定する情報である。出力スタートタイミング情報TA2は、データドライバ120-1~120-pの各々毎に、負極側の階調データ信号Vd群の出力を担う出力チャネル群に対して出力開始チャネルの出力タイミングを指定する情報である。なお正極性及び負極性の出力開始チャネルの指定情報を出力スタートタイミング情報TA1、TA2に夫々含めてもよい。あるいは、出力遅延方向情報CFに対応して出力チャネルを指定するようにしてもよい。
【0050】
表示コントローラ100は、上記したように生成した映像信号DVSをデータドライバ120-1~120-pの各々に供給すると共に、ゲート選択信号を印加するタイミングを示すゲートタイミング信号をゲートドライバ110に供給する。
【0051】
ゲートドライバ110は、かかるゲートタイミング信号に応じて、夫々がゲート線を選択する為の少なくとも1つのパルスを含むゲート選択信号Vg1~Vg(r)を順に生成し、r個の出力端子の各々から個別に出力する。ゲートドライバ110は、当該r個の出力端子から出力したゲート選択信号Vg1~Vg(r)を表示パネル150のゲート線GL1~GLrの各々に供給する。
【0052】
データドライバ120-1~120-pは、例えば夫々が独立したp個のICで構成されており、表示パネル150のデータ線DL1~DLmのi(iは2以上の整数)本毎に設けられている。データドライバ120-1~120-pの各々は、映像信号DVSに応じて、画素毎の輝度レベルに対応したアナログの電圧値を有するi個の正極性又は負極性の階調データ信号Vd1~Vdiを生成し、夫々を、対応する表示パネル150のi本のデータ線DLに供給する。
【0053】
尚、データドライバ120-1~120-pは、階調データ信号Vd1~Vdiのうち、あるフレーム期間は、隣接して対をなす一方のデータ線に正極性の階調データ信号を供給し、他方のデータ線に負極性の階調データ信号を供給するカラム反転駆動を行う。そして夫々の階調データ信号の極性状態はフレーム単位で反転させる。最も簡単な方法としては、表示パネルの奇数番目のデータ線に供給する階調データ信号Vd1、Vd3、Vd5、・・・各々の極性を正極及び負極の一方の極性とし、偶数番目のデータ線に供給する階調データ信号Vd2、Vd4、Vd6、・・・各々の極性を他方の極性とし、夫々の極性の状態を1フレーム毎に反転させてもよい。
【0054】
更に、データドライバ120-1~120-pは、階調データ信号Vd1~Vdiを出力するにあたり、階調データ信号Vd1~Vdiのうちの負極性の階調データ信号群を、正極性の階調データ信号群より所定期間だけ遅れたタイミングで出力する。
【0055】
図6は、データドライバ120-1~120-pのうちから1つのデータドライバ120を抜粋して、その内部の構成を示すブロック図である。
【0056】
図6に示すように、データドライバ120は、制御コア部510、設定記憶部600、タイミング制御部650、ラッチ部700、階調電圧生成部54、負極バイアス生成部61、正極バイアス生成部62、レベルシフタ80、デコーダ部90、及び出力アンプ部95、を含む。
【0057】
制御コア部510は、シリアル形態の映像信号DVSに対してシリアルパラレル変換処理を施すことで、各表示セル154に対応した映像データPDの系列、前述した各種の信号群及び設定情報を分離抽出し、夫々を、対応するブロックに供給する。
【0058】
すなわち、制御コア部510は、映像信号DVSから、映像データPDの系列、デジタル設定情報(CF、SA1、SA2、TA1、TA2)及びクロック信号CLKを抽出する。制御コア部510は、デジタル設定情報(CF、SA1、SA2、TA1、TA2)を設定記憶部600に供給し、基準タイミング信号STDをタイミング制御部650に供給し、映像データPDの系列をラッチ部700に供給する。
【0059】
また、制御コア部510は、映像信号DVSに応じて1水平期間周期(1H周期)の基準タイミング信号STDを生成する。この基準タイミング信号STDとしては、例えばゲート選択信号のゲートオフタイミングと同期した信号としてもよい。
【0060】
更に、制御コア部510は、映像信号DVSに応じて、極性反転信号POL、並びに、正極用及び負極用夫々の映像データ信号をラッチ部700へ取り込む為の正極用のラッチ出力タイミング信号LOAD1及び負極用のラッチ出力タイミング信号LOAD2を生成する。制御コア部510は、極性反転信号POLを出力アンプ部95及びラッチ部700に供給し、ラッチ出力タイミング信号LOAD1及びLOAD2を、タイミング制御部650及びラッチ部700に供給する。
【0061】
極性反転信号POLは、例えば論理レベル0及び1のうちの一方で正極、他方で負極を表す2値(論理レベル0及び1)のパルス状の周波数信号である。
【0062】
ラッチ出力タイミング信号LOAD1及びLOAD2は、基準タイミング信号STDに対して、制御信号群CSやデジタル設定情報に基づく遅延量をもって生成される信号である。
【0063】
図7は、ラッチ出力タイミング信号LOAD1及びLOAD2の波形の一例を示す図である。
【0064】
図7に示すように、ラッチ出力タイミング信号LOAD1及びLOAD2は、1水平走査期間(1H)毎に、論理レベル0に対応した電圧値を有するパルス、及び論理レベル1に対応した電圧値を有するパルスが交互に表れる2値信号である。この際、負極用のラッチ出力タイミング信号LOAD2は、正極用のラッチ出力タイミング信号LOAD1の位相を、図7に示すように時間Ts21だけ遅らせた信号である。尚、当該時間Ts21は、ゲート選択信号のリアエッジ部での時間経過に伴う電圧変化率に基づいて予め設定されている時間である。
【0065】
また、制御コア部510には、スルーレート制御部510aが含まれている。
【0066】
スルーレート制御部510aは、正極用のラッチ出力タイミング信号LOAD1と、負極用のラッチ出力タイミング信号LOAD2との位相差(図7に示す時間Ts21)に対応して、出力アンプ部95に含まれる複数の出力アンプのうちで正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを低下させるスルーレート制御信号SRLを生成し、これをスルーレート設定部60に供給する。
【0067】
設定記憶部600は、制御コア部510から供給されたデジタル設定情報(CF,SA1,SA2,TA1、TA2)を取り込んで格納する。設定記憶部600は、格納したデジタル設定情報、すなわち出力遅延方向情報CF、出力遅延シフト量情報SA1及びSA2、出力スタートタイミング情報TA1及びTA2をタイミング制御部650に供給する。尚、設定記憶部600に格納されたデジタル設定情報は、所定周期毎にリフレッシュされる。
【0068】
タイミング制御部650は、正極用及び負極用夫々の機能ブロックとして正極タイミング制御部及び負極タイミング制御部を備え、ラッチ部700に取り込まれた正極用及び負極用に夫々対応した映像データ信号を出力するためのタイミング信号を生成する。
【0069】
すなわち、タイミング制御部650の正極タイミング制御部は、出力遅延方向情報CF、出力遅延シフト量情報SA1、出力スタートタイミング情報TA1、基準タイミング信号STD及びラッチ出力タイミング信号LOAD1に基づき、正極用の映像データ信号のラッチ出力タイミング信号群LOAD1-Grsを生成する。
【0070】
タイミング制御部650の負極タイミング制御部は、出力遅延方向情報CF、出力遅延シフト量情報SA2、出力スタートタイミング情報TA2、基準タイミング信号STD及びラッチ出力タイミング信号LOAD2に基づき、負極用の映像データ信号のラッチ出力タイミング信号群LOAD2-Grsを生成する。
【0071】
タイミング制御部650は、上記したように生成したラッチ出力タイミング信号群LOAD1-Grs及LOAD2-Grsをラッチ部700に供給する。
【0072】
ラッチ部700は、正極データラッチ710及び負極データラッチ720を含む。ラッチ部700は、極性切替信号POLに応じて、映像データPDの系列中の各映像データPDを正極用及び負極用に振り分ける。
【0073】
正極データラッチ710は、ラッチ出力タイミング信号LOAD1に応じて、正極に振り分けられた映像データPDの各々を取り込む。そして、正極データラッチ710は、取り込んだ正極の映像データPDの各々を映像データPとして、夫々に対応する出力チャネルに対応した出力タイミング信号群LOAD1-Grsに基づく所定の出力数単位毎に設定された出力タイミングで出力する。
【0074】
負極データラッチ720は、ラッチ出力タイミング信号LOAD2に応じて、負極に振り分けられた映像データPDの各々を取り込む。そして、負極データラッチ720は、取り込んだ負極の映像データPDの各々を映像データPとして、夫々に対応する出力チャネルに対応した出力タイミング信号群LOAD2-Grsに基づく所定の出力数単位毎に設定された出力タイミングで出力する。
【0075】
ラッチ部700は、これら正極データラッチ710及び負極データラッチ720から出力されたi(iは2以上の整数)個の映像データPを映像データP1~Piとしてレベルシフタ80に供給する。
【0076】
レベルシフタ80は、ラッチ部700から供給されたi個の映像データP1~Piの各々に対して、そのデータの信号レベル(電圧振幅)を増加するレベルシフト処理を施して得られた映像データJ1~Jiをデコーダ部90に供給する。
【0077】
階調電圧生成部54は、夫々が異なる電圧値を有し且つ基準電圧としての対向基板電圧VCOMよりも高い電圧値を有するL(Lは2以上の整数)個の電圧を、画素の輝度レベルをL段階にて表す正極性の参照電圧群X1~XLとして生成する。更に、階調電圧生成部54は、夫々が異なる電圧値を有し且つ対向基板電圧VCOMよりも低い電圧値を有するL個の電圧を画素の輝度レベルをL段階にて表す負極性の参照電圧群Y1~YLとして生成する。例えば、階調電圧生成部54は、ラダー抵抗により、所定の高電位VGHと、この高電位VGHよりも低い所定の低電位VGLとの間を複数の電圧に分圧することで、夫々が異なる電圧値を有する参照電圧群を生成する。
【0078】
階調電圧生成部54は、生成した正極性の参照電圧群X1~XL、及び負極性の参照電圧群Y1~YLをデコーダ部90に供給する。
【0079】
デコーダ部90は、映像データJ1~Jiの各々を個別に、アナログ電圧値を有する階調データ信号に変換するi個のデコーダDECを有する。
【0080】
デコーダDECの各々は、階調電圧生成部54から、正極性の参照電圧群X1~XL、及び負極性の参照電圧群Y1~YLを受ける。更に、i個のデコーダDECの各々は、映像データJ1~Jiのうちの1つを夫々個別に受ける。
【0081】
各デコーダDECは、自身が受けた映像データJが正極データである場合には、正極性の参照電圧群X1~XLのうちから、その映像データJによって指定される1つ又は複数の参照電圧を選択する。一方、自身が受けた映像データJが負極データである場合には、デコーダDECは、負極性の参照電圧群Y1~YLのうちから、その映像データJによって指定される1つ又は複数の参照電圧を選択する。
【0082】
デコーダ部90は、各デコーダDECでそれぞれ選択された1つ又は複数の参照電圧を各画素の輝度レベルに対応した階調電圧として出力アンプ部95に出力する。
【0083】
出力アンプ部95は、デコーダ部90に含まれるi個のデコーダDECにそれぞれ対応したi個の出力アンプ(オペアンプ)を有する。出力アンプの各々は、自身の出力端子と反転入力端子(-)とが互いに接続されているボルテージフォロワであり、夫々に対応するデコーダDECから供給された1つ又は複数の階調電圧を自身の非反転入力端子(+)で受ける。i個の出力アンプの各々は、自身の非反転入力端子(+)で受けた1つ又は複数の階調電圧を増幅することで、当該階調電圧に対応した電圧値を有するパルス電圧を輝度レベルに対応した階調データパルスとして生成し、これを出力端子を介して出力する。尚、階調データパルスは、1フレーム期間内において1データ期間(例えば1水平走査期間)毎に連続して出力される。i個の出力アンプの各々は、1データ期間毎に表れる階調データパルスの系列を含む信号を階調データ信号Vdとして、半導体ICのi個の外部端子T1~Tiを夫々介して外部出力する。ここで、i個の外部端子T1~Tiは、表示パネル150のデータラインDL1~DLmのうちのi本と夫々個別に接続されている。例えばデータドライバ120が、データラインDL1~DLmのうちのDL1~DLiを受け持つデータドライバ120-1の場合、データドライバ120の外部端子T1~Tiの夫々から階調データ信号Vd1~Vdiが出力される。
【0084】
スルーレート設定部60は、負極バイアス生成部61及び正極バイアス生成部62を含む。
【0085】
負極バイアス生成部61は、i個の出力アンプのうちで負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプ(負極用出力アンプとも称する)に対して、その出力アンプを動作させるべく当該出力アンプ内に流すバイアス電流の電流量を所定量に設定するバイアス電圧群VBNを生成する。そして、負極バイアス生成部61は、生成したバイアス電圧群VBNを負極用出力アンプの各々に供給する。
【0086】
正極バイアス生成部62は、上記したスルーレート制御信号SRLに基づき、i個の出力アンプのうちで正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプ(正極用出力アンプとも称する)を動作させるためにその出力アンプ内に流すバイアス電流の電流量を設定するバイアス電圧群VBPを生成する。具体的には、正極バイアス生成部62は、スルーレート制御信号SRLにて示されるラッチ出力タイミング信号LOAD1とLOAD2との位相差(Ts21)が大きいほど、正極用出力アンプを動作させる為のバイアス電流の電流量を低下させるバイアス電圧群VBPを生成する。この際、正極用出力アンプは、上記したバイアス電流が低くなるほど、階調データ信号を出力する際のスルーレートが低下する。正極バイアス生成部62は、上記したように生成したバイアス電圧群VBPを正極用出力アンプの各々に供給する。
【0087】
上記した構成により、スルーレート設定部60は、スルーレート制御信号SRLにて示されるラッチ出力タイミング信号LOAD1とLOAD2との間の位相差に対応して、出力アンプ部95に含まれる負極用出力アンプに比して、正極用出力アンプのスルーレートを低下させる設定を出力アンプ部95に施す。尚、スルーレート設定部60は、スルーレート制御信号SRLにて示されるラッチ出力タイミング信号LOAD1とLOAD2との間の位相差がゼロのときは、負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプと正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを等しくするバイアス電圧群VBP及びVBNを生成する。
【0088】
以下に、図6に示すデータドライバ120によるカラム反転駆動について説明する。
【0089】
図8は、データドライバ120から出力される階調データ信号Vd1~Vdiのうちから4つのVd1~Vd4を抜粋して各々の極性状態(正極性又は負極正)の変化を表すタイムチャートである。
【0090】
図8に示すように、例えば極性反転信号POLが論理レベル1となる1フレーム期間では、ラッチ部700の正極データラッチ710は、1水平走査ライン分の映像データPDの系列中の奇数番目の映像データPDの各々を正極データとして取り込む。また、この間、ラッチ部700の負極データラッチ720は、1水平走査ライン分の映像データPDの系列中の偶数番目の映像データPDの各々を負極データとして取り込む。
【0091】
そして、極性反転信号POLが論理レベル1となる1フレーム期間において、正極データラッチ710は、正極データとしての奇数番目の映像データPDの各々を、奇数番目の映像データP1、P3、P5、P7、・・・・として出力する。また、この間、負極データラッチ720は、負極データとしての偶数番目の映像データPDの各々を、偶数番目の映像データP2、P4、P6、P8、・・・・として出力する。
【0092】
これにより、図8に示すように、極性反転信号POLが論理レベル1となる1フレーム期間では、表示パネル150のデータ線DL1~DL4に夫々印加される階調データ信号Vd1~Vd4のうちの奇数番目の階調データ信号Vd1、Vd3の各々が正極性となる。更に、極性反転信号POLが論理レベル1となる1フレーム期間では、図8に示すように、偶数番目の階調データ信号Vd2、Vd4の各々が負極性となる。
【0093】
また、図8に示すように、極性反転信号POLが論理レベル0となる1フレーム期間では、正極データラッチ710は、1水平走査ライン分の映像データPDの系列中の偶数番目の映像データPDの各々を正極データとして取り込む。また、この間、負極データラッチ720は、1水平走査ライン分の映像データPDの系列中の奇数番目の映像データPDの各々を負極データとして取り込む。
【0094】
そして、極性反転信号POLが論理レベル0となる1フレーム期間において、正極データラッチ710は、正極データとしての偶数番目の映像データPDの各々を、偶数番目の映像データP2、P4、P6、P8、・・・・として出力する。また、この間、負極データラッチ720は、負極データとしての奇数番目の映像データPDの各々を、奇数番目の映像データP1、P3、P5、P7、・・・・として出力する。
【0095】
これにより、図8に示すように、極性反転信号POLが論理レベル0となる1フレーム期間では、表示パネル150のデータ線DL1~DL4に夫々印加される階調データ信号Vd1~Vd4のうちの奇数番目の階調データ信号Vd1、Vd3の各々が負極性となる。更に、極性反転信号POLが論理レベル0となる1フレーム期間では、図8に示すように、偶数番目の階調データ信号Vd2、Vd4の各々が正極性となる。なお、説明の便宜上、表示パネル150のデータ線の偶数と奇数で異なる極性となる例で説明したが、データ線の極性の順番を適宜入れ替えることも可能である。
【0096】
ところで、図8に示すような階調データ信号Vd1~Vd4の各々は、データ線DL1~DL4の各々に沿って配置されているr個の表示セル154に夫々対応したr個の階調データパルスが1水平走査期間(1H)の周期毎に連続するパルスの系列からなる。
【0097】
この際、ゲートドライバ110から送出されたパルス状のゲート選択信号Vgをゲート線GLを介して受け、且つデータドライバ120から送出された階調データ信号Vdを受けた表示セル154で、階調データパルスが画素スイッチを介して画素電極に供給(充電)される。つまり、階調データパルスの電位とゲート選択信号Vgの電位との電位差に対応した電流駆動能力で当該表示セル154に階調データパルスが供給され、当該表示セル154は、この階調データパルスの電圧値に保持される。
【0098】
図9は、互いに隣接するデータ線DLx(xは1~mの整数)及びDL(x+1)に夫々印加される正極性の階調データ信号Vdx及び負極性の階調データ信号Vd(x+1)と、ゲート線GLk(kは1~rの整数)に印加されるゲート選択信号Vgkの波形の一例を示す波形図である。
【0099】
尚、図9では、正極性の階調データ信号Vdxに含まれる階調データパルスDpkがデータ線DLxとゲート線GLkとの交叉部の表示セル154に供給(充電)される状態を示している。更に、図9では、負極性の階調データ信号Vd(x+1)に含まれる階調データパルスDnkがデータ線DL(x+1)とゲート線GLkとの交叉部の表示セル154に供給(充電)される状態を示している。
【0100】
ここで、データ線DLx及びDL(x+1)は、ゲート線GLk上におけるゲートドライバ110の出力端子(図示せず)からの配線長が比較的長い位置でこのゲート線GLkと交叉するデータ線である。また、図9の一点破線にて示されるゲート選択信号Vgkのパルス波形は、ゲート線GLk上におけるデータ線DLx、DL(x+1)との交叉部の位置で観測される波形である。データ線DLx、DL(x+1)との交叉部の位置で観測されるこのゲート選択信号Vgkは、ゲートドライバの出力端子からのゲート線の配線長に応じたインピーダンスが大きく、比較的大きな波形鈍りを生じる。
【0101】
尚、図9に示す一例では、階調データパルスDpkを含む正極性の階調データ信号Vdxがデータ線DLxに印加され、階調データパルスDnkを含む負極性の階調データ信号Vd(x+1)がデータ線DL(x+1)に印加された状態を示す。
【0102】
階調データ信号は、データ線方向の各画素にそれぞれ供給するアナログ電圧値(階調電圧)を有し、1データ期間(1H)単位の複数の階調データパルスの系列で構成される。正極性の階調データ信号Vdxの各階調データパルスは、下限値Lpyから上限値Lpzまでの電圧範囲内の階調電圧を有するものとする。同様に、負極性の階調データ信号Vd(x+1)の各階調データパルスは、上限値Lnyから下限値Lnzまでの電圧範囲内の階調電圧を有するものとする。対向基板電圧VCOMは、正極性の階調データ信号の下限値Lpyと、負極性の階調データ信号の上限値Lnyとの間に設定されている。なお、図7においても説明の便宜上、階調データ信号Vdx及びVd(x+1)の階調データパルスは、それぞれの電圧範囲内の上限値と下限値の階調電圧が1データ期間毎交互に出力される駆動パターンを示す。
【0103】
図9に示すゲート選択信号Vgkは、画素充電率を高める為にゲートプリチャージが為されている。すなわち第k行目の画素に対応した階調データパルスDpk及びDnkと共に、第(k+1)行目の画素に対応した1データ期間(1H)前の階調データパルスDp(k+1)及びDn(k+1)の印加期間も含めて高電位VGHの状態を維持させている。
【0104】
図9に示す階調データ信号Vdx及びVd(x+1)では、正極性の階調データパルスDpkと負極性の階調データパルスDnkとが互いに異なるタイミングで出力される。例えば図1に示す従来の駆動では、正極性のデータパルスDpkと負極性のデータパルスDnkは同一のタイミングで出力され、互いの位相は同一である。
【0105】
一方、図9に示す駆動では、正極性の階調データパルスDpkに対して、負極性の階調データパルスDnkは所定の時間Ts21だけ遅れる方向にシフトした位相で出力される。
【0106】
以下に、図9に示す正極性の階調データ信号Vdx及びゲート選択信号Vgkのタイミング制御について説明する。
【0107】
データドライバ120は、正極性の階調データ信号Vdxの出力タイミングを、ゲート選択信号Vgkにより階調データパルスDpkの次のデータ期間の階調データパルスDp(k-1)が表示セル154へ供給(充電)されないように設定する。
【0108】
すなわち、データドライバ120は、図9に示すように、正極性の階調データパルスDpkのリアエッジ部の時点でゲート選択信号Vgkのリアエッジ部の電位が当該階調データパルスDpkの下限値Lpy以下となるようなタイミングで正極性の階調データ信号Vdxを出力する。例えば、このような出力形態となるように、制御コア部510は、ラッチ出力タイミング信号LOAD1を生成する。これにより、正極性の階調データパルスDpkの実効的な画素充電期間を、図9に示すように、1データ期間T1H(1水平走査期間1H)と同等の画素充電期間Tp2とすることができる。
【0109】
また、データドライバ120は、図9に示すように、正極性の階調データ信号Vdxの位相に対して負極性の階調データ信号Vd(x+1)の位相を時間Ts21だけ遅らせる方向に位相シフトしている。
【0110】
すなわち、図6に示す構成では、正極データラッチ710が正極データとして定めた映像データ片の各々を、出力タイミング信号群LOAD1-Grs中における夫々に対応した出力タイミング信号に応じたタイミングで出力する。一方、負極データラッチ720は、負極データとして定めた映像データ片の各々を、出力タイミング信号群LOAD2-Grs中における夫々に対応した出力タイミング信号に応じたタイミングで、且つ、正極データラッチ710での出力タイミングよりも時間Ts21だけ遅らせたタイミングで出力する。
【0111】
これにより、データドライバ120は、図9に示すように、正極性の階調データ信号Vdxに対して、時間Ts21だけ位相を遅らせる方向にシフトした負極性の階調データ信号Vd(x+1)を出力する。その結果、図9に示すように、負極性の階調データ信号Vd(x+1)に含まれる階調データパルスDnkのリアエッジよりも手前の時点で、ゲート信号Vgkのリアエッジ部の電位が当該階調データパルスDnkの下限値Lpy以下となる。
【0112】
よって、負極性の階調データパルスDnkの実効的な画素充電期間は、図9に示すように、1データ期間T1Hよりも期間Ts22(≧0)だけ短い画素充電期間Tn2となる。この期間Ts22の作用は以下の通りである。
【0113】
ゲート選択信号Vgkと階調データ信号との電位差は、正極性に比べて負極性の方が大きいため、同じ画素充電期間でも負極性の画素充電率の方が高くなる。ゲート選択信号Vgkと階調データ信号との電位差に伴う正極性と負極性の画素充電率の差の調整として期間Ts22を設けてもよい。
【0114】
上記した駆動により、正極性の階調データパルスDpkの実効的な画素充電期間Tp2として、1データ期間T1Hと同等の期間を確保すると共に、負極性の階調データパルスDnkの実効的な画素充電期間Tn2を1データ期間T1H以下にすることが可能となる。
【0115】
したがって、正極性の階調データパルスDpkの画素充電期間Tp2を図1に示す画素充電期間Tp1よりも長くすると共に、負極性の階調データパルスDnkの画素充電期間Tn2を図1に示す画素充電期間Tn1以下にすることが可能となる。
【0116】
このように、負極性の階調データ信号による画素充電率を低下調整させる一方、正極性の階調データ信号による画素充電率を高くすることで、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差が縮まる。
【0117】
よって、データドライバ120によれば、ゲート選択信号のパルスエッジ部に鈍りが生じていても、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差に伴って生じるフリッカ及び画質劣化を抑制することが可能となる。
【0118】
更に、データドライバ120では、スルーレート制御部510a及び正極バイアス生成部61により、以下のように、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを制御している。
【0119】
すなわち、スルーレート制御部510a及び正極バイアス生成部61により、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを、負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御している。
【0120】
これにより、図2に示すような特定の画像表示を行った際に生じる対向基板電圧VCOMの変動のピークを低減することができる。
【0121】
尚、スルーレート制御部510a及び正極バイアス生成部61では、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号との位相差(Ts21)が大きいほど、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートの低下幅を大きくすることで、対向基板電圧VCOMの変動を抑制可能にしている。
【0122】
図10は、図2に示す白色スクエア領域WEを通るデータ線Df、D(f+1)、及び白色スクエア領域WEを通らないデータ線Dg、D(g+1)に夫々送出される階調データ信号Vdf、Vd(f+1)、Vdg及びVd(g+1)と、対向基板電圧VCOMの波形を示す波形図である。
【0123】
図10に示すように、データ線D(f+1)では負極性の階調データ信号Vd(f+1)のレベルが、時点Tnにてグレーを表すレベルVn_gyから白を表すレベルVn_wtに向けて下降する。
【0124】
一方、データ線Dfでは、正極性の階調データ信号Vdfのレベルが、時点Tnよりも時間Ts21だけ前の時点Tpにてグレーを表すレベルVp_gyから白を表すレベルVp_wtに向けて上昇する。ただし、正極性の階調データ信号Vdfを出力する出力アンプのスルーレートは、時間Ts21に対応して、負極性の階調データ信号Vd(f+1)を出力する出力アンプのスルーレートよりも低くなるように制御される。スルーレート低下割合は、時間Ts21の幅にも依るが、負極性の階調データ信号を出力する出力アンプのスルーレート(単位時間当たりの電圧変化量の絶対値)に対し、正極性の階調データ信号出力する出力アンプのスルーレート(単位時間当たりの電圧変化量の絶対値)を例えば20%~50%低下させる。その結果、対向基板電圧VCOMの期待値からの変動をクロストーク(筋ムラ)が視覚できないレベルにまで抑制することが望ましい。
【0125】
よって、図10に示すように、正極性の階調データ信号Vdfの立ち上がり波形は、このようなスルーレートの低下制御が行われない場合での立ち上がり波形(一点鎖線にて示す)に比べて緩やかに電圧が変化する。
【0126】
これにより、図10に示すように、データ線Dfと対向基板電極C3との間の容量カップリングによる対向基板電圧VCOMの変動のピーク電圧が、上記したスルーレートの低下制御が行われない場合での対向基板電圧VCOMの変動(一点鎖線にて示す)のピーク電圧より低くなる。図2に示す白色スクエア領域WEを通らないデータ線Dg、D(g+1)について図10を参照すると、ゲート線Gaで選択され、データ線Dgの正極性の階調データ信号が供給される画素は、実効的な画素充電期間は期間Tp2で、時刻Tptにおける階調データ信号と対向基板電圧VCOMとの電圧差が1フレーム期間保持され、当該画素の液晶に印加される。図10に示すように対向基板電圧VCOMの変動が低下したことで、画素の液晶に印加される電圧も期待値からの減少が抑えられ、輝度低下も抑制される。また、データ線D(g+1)の負極性の階調データ信号が供給される画素は、実効的な画素充電期間は期間Tn2で、時刻Tnt’における階調データ信号と対向基板電圧VCOMとの電圧差が1フレーム期間保持され、当該画素の液晶に印加される。図10に示すように対向基板電圧VCOMの変動が低下したことで、画素の液晶に印加される電圧も期待値からの増加が抑えられ、輝度増加も抑制される。これらの画素の輝度変化を一定レベル未満に抑制することで、正極性と負極性のそれぞれの画素の輝度もほぼ相殺され、周囲との輝度の違いが視覚されにくくなる。
【0127】
したがって、対向基板電圧VCOMの変動に伴い、図2に示すようなグレー背景と白色スクエア領域WEとの境界部に生じるクロストーク(筋ムラ)を抑制することが可能となる。
【0128】
上記したように、液晶表示装置20は、表示パネル150の各データ線に出力する階調データ信号の極性を1フレーム期間毎に切り替えるカラム反転駆動を行うデータドライバ120として、以下のような制御部、及びスルーレート設定部を含むものを採用している。
【0129】
すなわち、制御部(510、510a)は、表示パネルの各データ線に出力する正極性の階調データ信号に対して、負極性の階調データ信号の位相を遅らせる方向にシフトさせる。これにより、ゲート選択信号のリアエッジ部に鈍りが生じている状態でも、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差が縮まる。よって、負極性の階調データ信号による画素充電率と、正極性の階調データ信号による画素充電率との差に伴うフリッカを抑制することが可能となる。
【0130】
スルーレート設定部(60、62)は、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号との位相差に対応して、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを負極性の階調データ信号を出力する出力アンプのスルーレートよりも低下させている。これにより、正極性の階調データ信号に対して負極性の階調データ信号の位相を遅らせることで生じる、データ線及び対向基板電極間の容量カップリングによる対向基板電圧の変動のピークが低下し、当該対向基板電圧の変動に伴い表示画像中に表れるクロストーク(筋ムラ)を抑制することが可能となる。
【0131】
したがって、本発明に係る表示装置としての液晶表示装置10によれば、カラム駆動によって表示パネルを駆動するにあたり、ゲート選択信号のリアエッジ部に鈍りが生じるような大画面・高精細の液晶表示パネルにおいて、フリッカやクロストーク(筋ムラ)等の画質劣化を抑制した画像表示を行うことが可能となる。
【0132】
尚、図6に示す実施例では、スルーレート設定部60は、夫々が単一の負極バイアス生成部61及び正極バイアス生成部62で出力アンプ部95に含まれるi個の出力アンプのバイアス電流を生成している。しかしながら、i個の出力アンプをU(Uは2以上の整数)個にグループ分けし、このグループ毎に専用の負極バイアス生成部61及び正極バイアス生成部62を設けるようにしても良い。すなわち、スルーレート設定部60としては、複数の出力アンプに対して単一又は複数のバイアス生成部(61、62)にてスルーレートの設定を行うものであれば良い。したがって、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレート、及び、負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートの設定は、例えばデータドライバ単位や、データドライバ内の複数のバイアス生成部で制御される出力アンプの各グループ単位で、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号との位相差に応じて、個別に調整することができる。
【0133】
要するに、本発明に係る表示装置(10)としては、以下の表示パネル、ゲートドライバ、及びデータドライバを含むものであれば良い。
【0134】
すなわち、表示パネル(150)は、第1及び第2のデータ線群からなる複数のデータ線(DL1~DLm)、複数のデータ線と交叉して配置されている複数のゲート線(GL1~GLr)、及びデータ線とゲート線との各交叉部に配置されている画素を担う表示セル(154)を有する。ゲートドライバ(110)は、表示パネルの複数のゲート線の各々にゲート選択信号を供給する。
【0135】
データドライバ(120)は、表示パネルの所定のデータ線数(i本)毎に設けられており、夫々が、映像信号(DVS)に基づき、所定の基準電圧(VCOM)に対して正極性の階調データ信号(Vdx)及び負極性の階調データ信号(Vdx+1)を生成する。具体的には、データドライバは、映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した正極性の電圧値を夫々有するデータパルス(Dpk)が所定周期(1H、T1H)で表れる信号を上記した正極性の階調データ信号として生成する。更に、映像信号に基づく各画素の輝度レベルに対応した負極性の電圧値を夫々有するデータパルス(Dnk)が正極性の階調データ信号の位相に対して遅れる方向にシフトした位相で所定周期毎に表れる信号を上記した負極性の階調データ信号として生成する。そして、データドライバは、当該正極性の階調データ信号及び負極性の階調データ信号のうちの一方を第1及び第2のデータ線群のうちの一方のデータ線群に出力すると共に、正極性の階調データ信号及び負極性の階調データ信号のうちの他方を第1及び第2のデータ線群のうちの他方のデータ線群に出力する。
【0136】
尚、データドライバは、これら正極性の階調データ信号及び負極性の階調データ信号を個別に出力する複数の出力アンプ(95)を含む。データドライバは、正極性の階調データ信号と負極性の階調データ信号との位相差(Ts21)に応じて、正極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートを、負極性の階調データ信号の出力を担う出力アンプのスルーレートよりも低くするように制御する(510a、62)。
【0137】
次に、出力アンプ部95の詳細な構成について説明する。
【0138】
図11は、出力アンプ部95に含まれる各出力チャネルに対応した出力アンプの内部構成の一例を示すブロック図である。具体的には、各出力アンプとして、正極用及び負極用の専用の出力アンプを採用した場合での構成例を図11において示す。
【0139】
尚、図11では、出力アンプ部95のうちから、正極及び負極の階調データ信号(Vsp_O、Vsn_O)を夫々出力する一対の出力アンプ(95P、95N)と、当該一対の出力アンプの出力を外部端子Tk及びT(k+1)に交互に切り替えて供給するマルチプレクサを抜粋したものを出力アンプ部95-1として示す。更に、図11では、デコーダ部90のうちから、当該一対の出力アンプ(95P、95N)に夫々正極性及び負極性の階調電圧(Vsp、Vsn)を供給する一対の正極デコーダ及び負極デコーダを抜粋したものをデコーダ部90-1として示す。
【0140】
図11において、負極用の出力アンプ95nは、自身の出力端子が反転入力端子に接続されているボルテージフォロワであり、自身の非反転入力端子で受けた負極性の階調電圧Vsnを増幅したものを階調データ信号Vsn_Oとして生成し、これをノードNo(k+1)を介してマルチプレクサMUXに供給する。
【0141】
正極用の出力アンプ95pは、自身の出力端子が反転入力端子に接続されているボルテージフォロワであり、自身の非反転入力端子で受けた正極性の階調電圧Vspを増幅したものを階調データ信号Vsp_Oとして生成し、これをノードNokを介してマルチプレクサMUXに供給する。この際、正極用の出力アンプ95pは、上記したバイアス電圧群VBPに応じて、階調データ信号Vsp_Oを出力する際のスルーレートを、負極用の出力アンプ95nが階調データ信号Vsn_Oを出力する際のスルーレートより低下させる。
【0142】
マルチプレクサMUXは、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの一方を表す場合には、正極性の階調データ信号Vsp_Oを外部端子Tk(kは2以上の整数)を介して階調データ信号Vdkとして出力すると共に、負極性の階調データ信号Vsn_Oを外部端子T(k+1)を介して階調データ信号Vd(k+1)として出力する。また、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの他方を表す場合には、マルチプレクサMUXは、負極性の階調データ信号Vsn_Oを外部端子Tkを介して階調データ信号Vdkとして出力すると共に、正極性の階調データ信号Vsp_Oを外部端子T(k+1)を介して階調データ信号Vd(k+1)として出力する。
【0143】
図12は、出力アンプ95p及び95nのうちから正極用の出力アンプ95pを抜粋して出力アンプ部95に含まれる出力アンプ各々の回路構成の一例を示す回路図である。
【0144】
図12に示すように、出力アンプ95pは、NチャネルMOS型のトランジスタ11~13、及びPチャネルMOS型のトランジスタ14~16からなる差動段と、増幅段19と、を含む。
【0145】
トランジスタ11及び12はN型差動対を構成している。トランジスタ11は自身のゲートで正極性の階調電圧Vspを受け、トランジスタ12は自身のゲートで出力アンプ95pの出力である正極性の階調データ信号Vsp_Oを受ける。トランジスタ11及び12は、互いのソース同士が接続されており、夫々のドレインが増幅段19に接続されている。当該N型差動対の電流源としてのトランジスタ13は、正極バイアス生成部62で生成されたバイアス電圧群VBPのうちの第1のバイアス電圧VBP_1を自身のゲートで受ける。トランジスタ13のソースには所定の低電源電位E2が印加されており、ドレインがトランジスタ11及び12のソースに接続されている。
【0146】
かかる構成により、N型差動対(11、12)は、正極性の階調電圧Vspと階調データ信号Vsp_Oとの差分に対応した電流比からなる一対の電流を、負側の差動出力電流対として増幅段19から引き抜く。尚、負側の差動出力電流対の合計電流は、第1のバイアス電圧VBP_1に基づいてトランジスタ13が出力する電流量である。
【0147】
トランジスタ14及び15はP型差動対を構成している。トランジスタ14は自身のゲートで正極性の階調電圧Vspを受け、トランジスタ12は自身のゲートで出力アンプ95pの出力である正極性の階調データ信号Vsp_Oを受ける。トランジスタ14及び15は、互いのソース同士が接続されており、夫々のドレインが増幅段19に接続されている。当該P型差動対の電流源としてのトランジスタ16は、正極バイアス生成部62で生成されたバイアス電圧群VBPのうちの第2のバイアス電圧VBP_2を自身のゲートで受ける。トランジスタ16のソースには所定の高電源電位E1が印加されており、ドレインがトランジスタ14及び12のソースに接続されている。
【0148】
かかる構成により、P型差動対(14、15)は、正極性の階調電圧Vspと階調データ信号Vsp_Oとの差分に対応した電流比からなる一対の電流を、正側の差動出力電流対として増幅段19に送出する。尚、正側の差動出力電流対の合計電流は、第2のバイアス電圧VBP_2に基づいてトランジスタ16が出力する電流量である。
【0149】
増幅段19は、正側の差動出力電流対に対応した電流を出力端子に送出すると共に負側の差動出力電流対に対応した電流を当該出力端子から引き抜くことで、正極性の階調電圧Vspに対応した階調データ信号Vsp_Oを生成し、当該出力端子を介して出力する。増幅段19は、正極バイアス生成部62で生成されたバイアス電圧群VBPのうちで、自身の増幅動作に必要な第3のバイアス電圧VBP_3(不図示)を受ける。
【0150】
図12に示す構成により、正極用の出力アンプ95pは、バイアス電圧群VBPとしてのVBP_1、VBP_2及びVBP_3に応じたスルーレートにて、階調データ信号Vsp_Oを出力する。尚、バイアス電圧VBP_1、VBP_2及びVBP_3は、スルーレート制御部510aから送出されたスルーレート制御信号SRLに応じて可変に制御される。この際、スルーレート制御信号SRLは、前述したように、ラッチ出力タイミング信号LOAD1と、ラッチ出力タイミング信号LOAD2との位相差に応じて、出力アンプ95pのスルーレートを低下させる制御を担うものである。ここで、正極用の出力アンプ95pのスルーレートを低下させるためには、少なくとも電流源としてのトランジスタ13及び16が送出する電流が小さくなる方向にバイアス電圧VBP_1及びVBP_2各々の電圧値を設定する。
【0151】
尚、図12では、N型の差動段(11~13)とP型の差動段(14~16)を備えた相補型差動構成であるが、どちらか一方の差動段のみを備えた構成でも構わない。また、図11に示す負極用の出力アンプ95nについても図12と同様な回路を採用しても良い。但し、負極用の出力アンプ95nが受ける第1~第3のバイアス電圧VBN_1~VBN_3は、夫々が所定の固定値、または正極用の出力アンプ95pと連動して同じ割合でスルーレートを調整できるようにしてもよい。負極用の出力アンプ95nと正極用の出力アンプ95pが連動して制御される場合、スルーレート制御信号SRLとは別の制御信号で制御されるのが好ましい。
【0152】
図13は、出力アンプ部95に含まれる各出力チャネルに対応した出力アンプの内部構成の他の一例を示すブロック図である。
【0153】
尚、図13では、出力アンプ部95のうちから、隣接する一対の出力アンプ(95k、95k+1)と、当該一対の出力アンプに対応して設けられた第1及び第2のマルチプレクサ(MUX1、MUX2)を抜粋したものを出力アンプ部95-2として示す。更に、図13では、デコーダ部90のうちから、当該出力アンプ部95-2に正極性及び負極性の階調電圧(Vsp、Vsn)を供給する一対の正極デコーダ及び負極デコーダを抜粋したものをデコーダ部90-1として示す。
【0154】
図13において、マルチプレクサMUX1は、制御コア部510から送出された極性反転信号POLを受ける。マルチプレクサMUX1は、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの一方を表す場合には、正極性の階調電圧Vspを出力アンプ95kの非反転入力端子に供給すると共に、負極性の階調電圧Vsnを出力アンプ95k+1の非反転入力端子に供給する。また、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの他方を表す場合には、マルチプレクサMUX1は、負極性の階調電圧Vsnを出力アンプ95kの非反転入力端子に供給すると共に、正極性の階調電圧Vspを出力アンプ95k+1の非反転入力端子に供給する。
【0155】
出力アンプ95kは、自身の出力端子が反転入力端子に接続されているボルテージフォロワであり、自身の非反転入力端子で受けた階調電圧を増幅したものを階調データ信号Vs1_Oとして生成し、これを外部端子Tkを介して階調データ信号Vdkとして出力する。
【0156】
出力アンプ95k+1は、自身の出力端子が反転入力端子に接続されているボルテージフォロワであり、自身の非反転入力端子で受けた階調電圧を増幅したものを階調データ信号Vs2_Oとして生成し、これを外部端子T(k+1)を介して階調データ信号Vd(k+1)として出力する。
【0157】
マルチプレクサMUX2は、制御コア部510から送出された極性反転信号POLを受ける。マルチプレクサMUX2は、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの一方を表す場合には、バイアス電圧群VBPを出力アンプ95kに供給すると共に、バイアス電圧群VBNを出力アンプ95k+1に供給する。また、マルチプレクサMUX2は、極性反転信号POLが論理レベル1及び0のうちの他方を表す場合には、バイアス電圧群VBNを出力アンプ95kに供給すると共に、バイアス電圧群VBPを出力アンプ95k+1に供給する。すなわち、出力アンプ部95として、図13に示すように、各出力アンプ(95k、95k+1)が受ける階調電圧の極性が極性信号POLに応じて切り替わる構成を採用した場合には、マルチプレクサMUX2により、該出力アンプが受けるバイアス電圧の極性も極性信号POLに応じて切り替えるのである。
なお、出力アンプ部95k及び出力アンプ95k+1も、図12と同様の構成を採用可能であり、正極性の階調電圧Vspがそれぞれ供給されるときには、スルーレートを低下させる制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0158】
60 スルーレート設定部
61 正極バイアス生成部
62 負極バイアス生成部
95 出力アンプ部
120 データドライバ
150 表示パネル
510 制御コア部
510a スルーレート制御部
700 ラッチ部

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