(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101768
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20230101AFI20230713BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230713BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F1/44 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091158
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2019043161の分割
【原出願日】2019-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 善治
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(57)【要約】
【課題】パネルタンクの内部に、微生物を含む廃水が貯留される廃水処理装置であって、ブロワーによるばっ気が不要であることで、パネルタンクを構成するパネルが劣化することや、パネルタンクから漏水が生じることを低減できる廃水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の廃水処理装置1は、複数のパネル2を組み合わせて構成されるパネルタンク3と、酸素透過膜4を含む酸素透過モジュール5とを備える。パネルタンク3の内部には、廃水Wが貯留されるとともに、酸素透過モジュール5が設置される、
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルを組み合わせて構成されるパネルタンクと、
酸素透過膜を含む酸素透過モジュールとを備え、
前記酸素透過膜の内部に通気性部材を有し、
前記通気性部材が樹脂、金属、紙、天然繊維等のいずれかから形成されており、
前記パネルタンクの内部に、廃水が貯留されるとともに、前記酸素透過モジュールが設置される、廃水処理装置(但し複数の酸素透過膜の内部を通過した酸素が共通管の内部に送られる場合を除く)。
【請求項2】
前記通気性部材が中空であることを特徴とする請求項1に記載の廃水処理装置(但し前記通気性部材が円筒状に形成される場合を除く)。
【請求項3】
前記酸素透過モジュールは、開口を有しており、前記開口が前記パネルタンク内の水面上の空間に開放するように設置される、請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記通気性部材が中空の板状である請求項1または3に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記通気性部材に気体通気孔が形成される請求項1または3に記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記酸素透過モジュールに酸素を供給する酸素供給器を備える、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記パネルの材質が、FRPまたはステンレスである、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項8】
浮上防止部をさらに備え、
前記酸素透過モジュールの質量は、前記酸素透過モジュールと同一の体積を有する水の質量よりも小さく、
前記浮上防止部は、前記酸素透過モジュールを浮上させずに定位置に止める、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記酸素透過モジュールの質量は、前記酸素透過モジュールと同一の体積を有する水の質量よりも大きい請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記パネルタンクの内部に設けられる遮蔽部をさらに備え、
前記遮蔽部は、前記パネルタンクの廃水流入部の近傍に配置されるものであり、前記廃水流入部から流入した廃水の流れを遮る、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項11】
前記パネルタンクの天井パネルの上面に沿って配置される天井フレームを備え
前記天井フレームは、前記パネルタンクからの取り外しが可能、または前記天井パネルの上面に沿ったスライドが可能である、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【請求項12】
前記酸素透過モジュールを横方向に移動させることができる移動機構をさらに備える、請求項1又は3に記載の廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を利用した廃水処理装置に関する。より具体的には、本発明は、気体透過膜を使用し、有機性廃水の処理効率と省エネルギーとを両立した廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物の活動により廃水を浄化する廃水処理装置が使用されている。この種の廃水処理装置では、廃水を貯留するタンクの躯体を製造するために、鉄骨、鋼板、鉄筋コンクリートが使用されており、特に鉄筋コンクリートが使用される場合が多い。
【0003】
小規模の廃水処理装置では、廃水を貯留するタンクとして、FRP製のパネルを組合せたパネルタンクが使用されている。当該パネルタンクを組み立てる際には、例えば特許文献1に開示されるように、隣り合うパネルをパッキン(シール材)を介して重ね合わせた状態で、隣り合うパネルをボルト及びナット(締結部材)で固定することが行われる。上記のパネルタンクを使用する場合には、鉄筋コンクリート製のタンクを使用する場合に比較して、施工期間が短縮できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、活性汚泥法、接触酸化法、或いは膜分離活性汚泥法など、一般的に採用される廃水処理方式では、廃水中の微生物に酸素を供給するために、ばっ気が必要とされる。例えば接触酸化法では、
図15に示すように、タンクT内に配置したブロワーBによって、側面ばっ気や(
図15(a))、中心ばっ気や(
図15(b))、全面ばっ気(
図15(c))を行うことで、廃水Wに含まれる微生物に酸素が供給されている。
【0006】
そしてタンクTがパネルタンクである場合には、ブロワーBのばっ気で生じる振動が、タンクTを構成するパネルPに伝わって、パネルPに繰り返し疲労が起こり、長期的にはパネルPに亀裂が入ったり、破損が生じる虞がある。また特許文献1のように隣り合うパネルP,Pがボルト及びナットで固定される場合には、パネルP,P同士の間にパッキン(シール材)が配置されていたとしても、ばっ気による振動でナットが緩むことで、漏水が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、パネルタンクの内部に廃水が貯留される廃水処理装置であって、ブロワーによるばっ気が不要であることで、パネルタンクを構成するパネルが劣化することや、パネルタンクから漏水が生じることを低減できる廃水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1.複数のパネルを組み合わせて構成されるパネルタンクと、
酸素透過膜を含む酸素透過モジュールとを備え、
前記パネルタンクの内部に、廃水が貯留されるとともに、前記酸素透過モジュールが設置される、廃水処理装置。
【0010】
項2.前記酸素透過モジュールに酸素を供給する酸素供給器を備える、項1に記載の廃水処理装置。
【0011】
項3.前記パネルの材質が、FRPまたはステンレスである、項1又は2に記載の廃水処理装置。
【0012】
項4.浮上防止部をさらに備え、
前記酸素透過モジュールの質量は、前記酸素透過モジュールと同一の体積を有する水の質量よりも小さく、
前記浮上防止部は、前記酸素透過モジュールを浮上させずに定位置に止める、項1乃至3のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【0013】
項5.前記パネルタンクの内部に設けられる遮蔽部をさらに備え、
前記遮蔽部は、前記パネルタンクの廃水流入部の近傍に配置されるものであり、前記廃水流入部から流入した廃水の流れを遮る、項1乃至4のいずれかに記載の廃水処理装置。
【0014】
項6.前記パネルタンクの天井パネルの上面に沿って配置される天井フレームを備え 前記天井フレームは、前記パネルタンクからの取り外しが可能、または前記天井パネルの上面に沿ったスライドが可能である、項1乃至5のいずれかに記載の廃水処理装置。
【0015】
項7.前記酸素透過モジュールを横方向に移動させることができる移動機構をさらに備える、項1乃至6のいずれかに記載の廃水処理装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の廃水処理装置によれば、酸素透過膜を含む酸素透過モジュールが、パネルタンクの内部に設けられることで、微生物が廃水を浄化するために必要な酸素を、酸素透過膜を介して微生物に供給できる。したがって振動の生じる「ブロワーによるばっ気」を行う必要がないので、パネルタンクを構成するパネルが劣化することや、パネルタンクから漏水が生じることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る廃水処理装置の平面図である。
【
図2】
図1のA方向に廃水処理装置を視た状態を示す側面図である。
【
図3】
図1のB方向に廃水処理装置を視た状態を示す側面図である。
【
図4】
図1のC方向に廃水処理装置を視た状態を示す側面図である。
【
図5】
図3に対応する側面図であって、潜り堰及び越流堰を示す。
【
図6】(a)は、天井フレームが設けられた廃水処理装置を示す概略図であり、(b)は、天井フレームをスライドさせた状態を示す概略図である。
【
図7】移動機構が設けられた廃水処理装置を示す概略図である。
【
図9】酸素透過モジュールの一部を拡大して示す側面図である。
【
図11】廃水処理装置が備える浮上防止部を拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図12】酸素透過モジュールの変形例を示す側面図である。
【
図13】
図12に示す酸素透過モジュールが備える酸素透過膜を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の矢印方向Aから酸素透過膜を見たときの側面図であり、(C)は(a)の矢印方向Bから酸素透過膜4を見たときの側面図である。
【
図14】酸素透過モジュールが備えるスペーサを拡大して示す側面図である。
【
図15】タンク内の廃水をばっ気するために、タンク内にブロワーが配置された状態を示す概略図であり、(a)は側面ばっ気が行われるときの状態を示し、(b)は中心ばっ気が行われるときの状態を示し、(c)は全面ばっ気が行われるときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る廃水処理装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る廃水処理装置1の平面図である。
図2は、
図1のA方向に廃水処理装置1を視た状態を示す側面図である。
図3は、
図1のB方向に廃水処理装置1を視た状態を示す側面図である。
図4は、
図1のC方向に廃水処理装置1を視た状態を示す側面図である。
図5は、
図3に対応する側面図であり、後述する潜り堰8及び越流堰9や、タンク3内の廃水Wの流れ(矢印)を示している。
【0019】
(廃水処理装置1)
本実施形態の廃水処理装置1は、微生物の活動により廃水W(
図3~
図5)を浄化可能なものである。
図1~
図5に示すように、廃水処理装置1は、複数のパネル2を組み合わせて構成されるパネルタンク3と、酸素透過膜4を含む酸素透過モジュール5(
図3~
図5)とを備えており、パネルタンク3の内部において、微生物を含む廃水Wが貯留されるとともに、酸素透過モジュール5が設置される。
【0020】
(パネルタンク3)
パネルタンク3は、底面パネル2aと、側面パネル2bと、天井パネル2cとが、ボルト及びナットで連結されたものであり、上下方向或いは水平方向に隣り合うパネル2,2同士の間にはパッキンが挟み込まれている。パネル2a,2b,2cの材料として、各種プラスチック或いは各種金属を使用できるが、強度及び耐食性の面から、FRP(Fiber Rainforced Plastics)或いはステンレスを使用することが好ましい。
【0021】
図示の例では、パネルタンク3を組み立てるために、1枚の底面パネル2aと、4枚の側面パネル2bと、1枚の天井パネル2cとが使用されている(
図3~
図5では、パネルタンク3の内部の構造を図示するために、1枚の側面パネル2bを取り外した状態を示している)。4枚の側面パネル2bは、底面パネル2aの外縁から上方に延びて、環状の周壁を構成する。当該周壁の内側の空間(つまりパネルタンク3の内部)に、微生物を含む廃水W(
図3~
図5)が貯留され、且つ、酸素透過モジュール5が設置される。天井パネル2cは、周壁の上端(4枚の側面パネル2bの上端)に取り付けられる。天井パネル2cには着脱可能な蓋6が設けられている。蓋6を取り外すことで、酸素透過モジュール5をタンク3内に設置することや、タンク3内の酸素透過モジュール5を取り外すことが可能とされる。
【0022】
なお、パネルタンク3を構成するパネル2a,2b,2cの枚数は、上記の枚数(1枚、4枚、1枚)に限定されない。パネルタンク3の増設や改造を行うためや、パネルタンク3の容積を調整するために、パネル2a,2b,2cの枚数は、適宜調整され得る。なお建築物の内部でパネルタンク3を組み立てる場合には、パネル2a,2b,2cの1枚の短辺を、1.8m以下にすることが好ましい。このようにすれば、建築物の一般的な出入口の寸法が1.8m×0.9mであることで、出入口からのパネル2a,2b,2cの搬入或いは搬出が可能となる。
【0023】
パネルタンク3の天井パネル2cには、廃水Wを流入させる廃水流入口7aが形成される。パネルタンク3に設けられる一の側面パネル2bの上側には、廃水Wを流出させる廃水流出口7bが形成される(
図5では、廃水流出口7bを図示するために、モジュール5に設けられる酸素透過膜4の全てを示さず、3枚の酸素透過膜4のみ示している)。廃水Wは、廃水流入口7aから廃水流出口7bに向かって、連続的、もしくは、断続的に供給される。
【0024】
以下、パネルタンク3が備える4枚の側壁パネル2bのうち、「廃水流出口7bが設けられる側壁パネル2b」を「側壁パネル2b-1」と記す。また「側壁パネル2b-1の反対側に配置される側壁パネル2b」を「側壁パネル2b-2」と記す。また「側壁パネル2b-1,2b-2の一方側の側縁同士を繋ぐ側壁パネル2b」を「側壁パネル2b-3」と記す。また「側壁パネル2b-3の反対側に配置されてて、側壁パネル2b-1,2b-2の他方側の側縁同士を繋ぐ側壁パネル2b」を「側壁パネル2b-4」と記す。
【0025】
図3~
図5に示すように、パネルタンク3の内部には、廃水流入口7aから流入した廃水Wの流れを遮る遮蔽部8が設けられる。図示例では、上記の遮蔽部8として、潜り堰が廃水流入口7aの近傍に設けられている。潜り堰8(遮蔽部)は、その両側縁が側壁パネル2b-3,2b-4に支持される板材である(
図3,
図5)。
図4,
図5の矢印で示すように、廃水流入口7aから流入した廃水Wは、潜り堰8(遮蔽部)と側壁パネル2b-2との間の空間を下向きに流れて、潜り堰8の下端8aと底面パネル2aとの間を通過する。この後、廃水Wは、側壁パネル2b-1側(廃水流出口7b側)に向けて、徐々に上昇しながら流れる。なお潜り堰8(遮蔽部)の構造は、上記の構造に限定されない。例えば、潜り堰8は、天井パネル2cから下方に延びる部材に支持されるものであってよく、或いは、底面パネル2aから上方に延びる部材に支持されるものであってよい。或いは、潜り堰8は、側壁パネル2bから水平方向に延びる部材に支持されるものであってもよい。
【0026】
また
図4及び
図5に示すように、パネルタンク3の内部における、廃水流出口7bの近傍には、越流堰9が設けられる。
図4に示すように、越流堰9は、側面視でL字形を呈するものであって、L字の一端9aが側縁パネル2b-1に支持される。当該越流堰9が設けられていることで、側壁パネル2b-1側(廃水流出口7b側)に流れる廃水Wのうち、越流堰9のL字の他端9bを越流した廃水Wが、廃水流出口7bから外部に流出する。なお越流堰9の構造は、上記の構造に限定されず、廃水Wを均等に越流させ、且つ、越流した廃水Wを廃水流出口7bから流出させることの可能な様々な構造とされ得る。
【0027】
また
図6に示すように、廃水処理装置1には天井フレーム10が設けられてもよい。天井フレーム10は、タンク3の天井をなすパネル2cを固定するためのものであり、天井パネル2cの上面に沿って配置される。当該天井フレーム10が使用される場合には、例えば、天井フレーム10の一端100及び他端101が、それぞれボルト及びナットによって側面パネル2bの上端に固定される。そして、当該ボルト及びナットによる一端100及び他端101の固定を解除することで、天井フレーム10の一部もしくは全部を、スライドさせたり、パネルタンク3から取り外すことが可能とされる(
図6(b)は、天井フレーム10が天井パネル2cの上面に沿ってスライドする状態を示している)。以上のようにすれば、天井パネル2cの蓋6を開状態(
図2の二点鎖線で示す状態)にすることができ、天井フレーム10が、酸素透過モジュール5の設置及び取り出しの妨げにならない。したがって、酸素透過モジュール5の設置及び取り出しを円滑に行うことができる。
【0028】
なお
図6に示す例では、縦方向に延びる天井フレーム10aと、横方向に延びる天井フレーム10bとが、これらの交差位置Kで接合されることで、複数のフレーム10が一体とされている。そして当該一体とされた複数のフレーム10が、天井パネル2cの上面に沿って配置されて、各フレーム10の端100,101が、ボルト及びナットによって側面パネル2bの上端に固定されている。
図6に示す例によれば、複数のフレーム10が一体とされることで、ボルト及びナットによる各フレーム10の固定を解除することで、
図6(b)に示すように、複数のフレーム1を、一斉にスライドさせること、或いは、同時に取り外すことが可能である。
【0029】
また
図7に示すように、酸素透過モジュール5を横方向に移動させることの可能な移動機構11が、廃水処理装置1に設けられてもよい。
図7に示す例では、移動機構11は、パネルタンク3の底面(底面パネル2aの上面)に設置される一対のレール12と、酸素透過モジュール5の底部に取り付けられるキャスター13とから構成される。レール12は、パネルタンク3の相対する2つの側面の一方から他方に向けて延びており、キャスター13は、レール12上を転動可能である。上記の移動機構11によれば、キャスター13の転動によって、酸素透過モジュール5を横方向(レール12の延伸方向)に移動させることができるので、酸素透過モジュール5の設置及び取り出しが容易になる。なお酸素透過モジュール5の設置及び取り出しを行う際には、
図7に示すように、パネルタンク3に設けられる一又は複数の側面パネル2bを取り外すことで、酸素透過モジュール5の出入口14が確保される。また酸素透過モジュール5を横方向に移動させる移動機構11は、レール12及びキャスター13以外の公知の手段によって構成されてもよい。
【0030】
(酸素透過膜4)
酸素透過モジュール5は、複数枚の酸素透過膜4を、一定間隔をあけて並行に保持可能なものである。本発明において、酸素透過膜4とは、廃水Wに酸素を供給する構造体である。酸素透過膜4の形状は、ユニット化が可能であれば特に限定されず、その形状は例えば平板状、中空糸状などが挙げられ、平板状の酸素透過膜4が巻回されたスパイラル状であってもよい。以下、酸素透過モジュール5に保持される酸素透過膜4のある特定の形態について説明する。
【0031】
図8は、酸素透過膜4を示す鉛直断面図である。酸素透過膜4は、内部に通気性部材20を包含した平たい袋状を呈しており、上端部21bが水面Wa上に開放される。
【0032】
具体的には、酸素透過膜4は、上記の通気性部材20と、透気シート21とを備えており、透気シート21によって構成される袋の中に通気性部材20が配置される。前記袋は、例えば、2枚の透気シート21を重ね合わせて、これら透気シート21の3方の端部を接着したものであり、上端部21bの開口から通気性部材20が袋の内部に挿入されることで、通気性部材20の外周は透気シート21で覆われる。
【0033】
通気性部材20は、例えば、中空の板状部材であり、樹脂、金属、紙、天然繊維等のいずれかから形成される。この場合、通気性部材20の空洞は、気体流路を構成し、通気性部材20の表裏面には気体通過孔が形成される。通気性部材20は、例えば中空ではない樹脂製の球体の複数から構成されてもよい。この場合、球体間の隙間が気体流路になる。
【0034】
透気シート21は、最外側層が廃水Wに接触するように廃水W中に浸漬された状態で、内側(通気性部材20側)から外側(廃水W側)へ気体を透過させる気体透過性を有し、且つ外側(廃水W側)から内側(通気性部材20側)へ廃水Wを透過させない防水性を有する。
【0035】
透気シート21は、例えば、多孔質基材と、気体透過性無孔層と、微生物支持層とが積層されたものとされる。
【0036】
上記の多孔質基材は、例えば、熱可塑性樹脂から形成される微多孔膜である(前記微多孔膜とは、微細な貫通孔を多数設けた膜である)。多孔質基材の素材として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含めたフッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリ(ジメチルシロキサン)を含めたシリコーンベースのポリマー、およびこれらの材料のコポリマーから選ばれるポリマー材料を含む等を含んでもよい。
【0037】
上記の気体透過性無孔層は、多孔質基材の孔より径の小さい細孔径の孔を有するか、もしくは、孔の径を検出できず、かつ、気体を透過可能な層である。気体透過性無孔層は、熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂から形成され得る。
【0038】
上記の微生物支持層は、その表面もしくは内部に微生物を保持する層であり、内部に微生物が生育可能な空間を有し、水中の有機物が通過可能である。微生物支持層の素材としては、例えば、メッシュ、織布、不織布、発泡体、又は微多孔膜等の多孔性シートが挙げられる。多孔性シートの素材は、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、パラ系およびメタ系アラミド、ポリアリレート、炭素繊維、ガラス繊維、アルミニウム繊維、スチール繊維、セラミック等が挙げられる。微生物付着性と加工性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、炭素繊維が好ましい。
【0039】
上記の微生物支持層、多孔質基材、及び気体透過性無孔層が使用される場合には、透気シート21は、多孔質基材→気体透過性無孔層→微生物支持層の順に積層されたものとされ、或いは、気体透過性無孔層→多孔質基材→微生物支持層の順に積層されたものとされて、微生物支持層が、廃水Wに接触する最外側層を構成する。なお、気体透過性無孔層が微生物支持層を兼ねてもよい。
【0040】
本実施形態の廃水処理装置1によれば、水面Wa(
図8)上の空間にある酸素が、上端部21bの開口から、酸素透過膜4の内部に導入される(
図8の矢印は、酸素の流れを示している)。或いは、酸素供給器が廃水処理装置1に設けられて、上記の酸素供給器から供給される酸素と、水面Wa上の空間にある酸素とが、上端部21bの開口から、酸素透過膜4の内部に導入されてもよい。或いは、酸素供給器から供給される酸素のみが、上端部21bの開口から、酸素透過膜4の内部に導入されてもよい。
【0041】
酸素透過膜4の内部に導入された酸素は、通気性部材20の空洞に沿って流れ、或いは通気性部材20を構成する球体同士の間を流れて、透気シート21を介して廃水W中に放出される。これにより、廃水W中の微生物Vが活性化されて、酸化透過膜4上に微生物Vが増殖する(
図8)。
【0042】
廃水Wは、廃水流入口7a(
図1~
図5)からパネルタンク3内に供給される。当該タンク3内に供給された廃水Wは、上述したように潜り堰8と側壁パネル2b-2との間の空間を下向きに流れた後、徐々に上昇しながら側壁パネル2b-1側(廃水流出口7b側)に向かうものとなる。そして当該側壁パネル2b-1側(廃水流出口7b側)に向かう廃水Wが、酸素透過モジュール5に設置された酸素透過膜4,4同士の間を通過する(
図4,
図5)。この際、酸素透過膜4上に増殖した微生物V(
図9)により廃水Wが浄化される。そして当該浄化された廃水Wのうち、越流堰9の他端9b(
図4,
図5)を越流した廃水Wが、廃水流出口7bから排出される。
【0043】
以上に説明した本実施形態の廃水処理装置によれば、酸素透過膜4を含む酸素透過モジュール5が、パネルタンク3の内部に設けられることで、微生物Vが廃水Wを浄化するために必要な酸素を、酸素透過膜4を介して微生物Vに供給できる。したがって
図15に示したような、振動の生じる「ブロワーBによるばっ気」を行う必要がないので、パネルタンク3を構成するパネル2a,2b,2cが劣化することや、パネルタンク3から漏水が生じることを低減できる。
【0044】
また本実施形態では、
図3~
図5に示すように、パネルタンク3の内部において、廃水流入口7a側に潜り堰8が設置され、廃水流出口7b側に越流堰9が設置されることで、廃水Wが分散されて酸素透過膜4,4同士の間の各々に流れる。このため、酸素透過膜4上に増殖する微生物Vと廃水Wとの接触効率を高めることができるので、廃水処理装置1の処理性能を向上させることができる。
【0045】
なお、酸素透過モジュール5を構成する部材の比重が小さいことで、酸素透過モジュール5の質量が、酸素透過モジュール5と同一の体積を有する水の質量よりも小さくなる場合には、浮力によって酸素透過モジュール5が浮上する虞がある。そこで上記の場合には、浮上防止部としてのフック80(
図3~
図5)が廃水処理装置1に設けられて、当該フック80に酸素透過モジュール5を係止することが行われる。以下、フック80に係止可能な酸素透過モジュール5の構造について説明する。
【0046】
(酸素透過モジュール5)
図9や
図10に示すように、酸素透過モジュール5は、上述した複数枚の酸素透過膜4に加えて、第一連結部材74と、第二連結部材75と、第三連結部材76とを備えている。
【0047】
第一連結部材74や第二連結部材75は、水平な第1方向に延びるものであって、第一連結部材74と第二連結部材75とは、第1方向と直交する鉛直な第2方向に間隔をあけて配置されている。そして酸素透過膜4に形成された第一貫通孔77に第一連結部材74が通され、酸素透過膜4に形成された第二貫通孔78に第二連結部材75が通されることで、酸素透過膜4は、第一連結部材74及び第二連結部材75に保持されている。
【0048】
より具体的には、
図10に示すように、各酸素透過膜4の上端部における幅中央に第一貫通孔77が形成され、各酸素透過膜4の下端部における幅中央や幅両端に第二貫通孔78が形成されている。そして、各酸素透過膜4の第一貫通孔77に第一連結部材74が通され、各酸素透過膜4の3つの第二貫通孔78にそれぞれ第二連結部材75が通されることで、複数の酸素透過膜4が、第一連結部材74や3本の第二連結部材75に保持されて、第1方向に並んでいる。また隣り合う2つの酸素透過膜4,4では、これらの間を延びる第一・第二連結部材74,75に筒状のスペーサ72(
図9)が環装されていることで、2つの酸素透過膜4,4の間隔が、スペーサ72の幅に維持されている。
【0049】
第三連結部材76は、第1方向及び第2方向と直交する水平な第3方向に延びる。当該第三連結部材76は、第3方向に間隔をあけて配置される複数の第二連結部材75を連結する(
図10の例では、3本の第二連結部材75が、第三連結部材76を介して連結されている)。
【0050】
第三連結部材76は、フラットバーと称される平板から構成される。第三連結部材76には、第3方向に間隔をあけて複数の貫通孔79が形成されており、これら貫通孔79にそれぞれ第二連結部材75が通されることで、複数の第二連結部材75が第三連結部材76を介して連結されている(
図10の例では、3つの貫通孔79にそれぞれ第二連結部材75が通されることで、3本の第二連結部材75が第三連結部材76を介して連結されている)。なお、貫通孔79は、第二貫通孔78と対応する位置(第1方向に延びる同一直線上の位置)に形成されるものであって、第二連結部材75は、第二貫通孔78と貫通孔79とを通過するものとされる。
【0051】
そして酸素透過モジュール5が組み立てられた状態では、第三連結部材76は、酸素透過膜4よりも外側(第3方向の外側)に延び出る延出部76a(
図10)を有している。この延出部76aは、フック80(浮上防止部)に係止させる部分として設けられる。
【0052】
なお、第一連結部材74の数は、1以上10以下であることが好ましい。第一連結部材74が設けられない場合には、酸素透過膜4を安定的に保持することが困難になる。第一連結部材74の数が10よりも大きい場合には、酸素透過モジュール5の加工が困難になる。
【0053】
また第二連結部材75の数は、2以上20以下であることが好ましい。第二連結部材75の数が1である場合には、酸素透過膜4を安定的に保持することが困難になる。第二連結部材75の数が20よりも大きい場合には、酸素透過モジュール5の加工が困難になる。
【0054】
また、第一連結部材74や第二連結部材75の外径は、5mm以上、100mm以下にすることが好ましい。連結部材74,75の外径が5mmよりも小さい場合には、酸素透過モジュール5の強度を十分確保できなくなる。連結部材74,75の外径が100mmよりも大きい場合には、酸素透過膜4の透気シート21(
図8)の有効面積を十分確保できなくなる。
【0055】
また、スペーサ72の材質を、ステンレス、チタン、被覆したスチール、或いはFRPなどのプラスチックにすることが好ましい。このようにすることで、腐食によるスペーサ72の破損を防止することができる。
【0056】
また連結部材74,75の外径との関係から、スペーサ72の内径は、5mm以上100mm以下にすることが好ましい。
【0057】
また
図7に示す移動機構11が廃水処理装置に設けられる場合には、キャスター13は、例えば、第三連結部材76、及び/又は、第二連結部材75に環装されるスペーサ72に取り付けられる。
【0058】
(浮上防止部)
浮上防止部としてのフック80は、高さ調整手段81(
図10,
図11)を介してパネルタンク3の底面パネル2a(
図2~
図6)に固定される。高さ調整手段81は、ボルト82と、支持板83と、溝形鋼84とから構成される。ボルト82は、上下方向に延びものであって、ボルト82の下端部は底面パネル2aに締結される(
図10)。支持板83は、第3方向に延びるものであって、両端部がボルト82に締結される。溝形鋼84は、第1方向に延びるものであって、平板状の本体84aと、本体84aの両側縁から突出する一対の側板84b,84bとを有している。側板84b,84bの先端(下端)は支持板83の上面に接合され、本体84aの中央にフック80の下端が締結されている。フック80は、湾曲部80aを有するものであり、溝形鋼84から上方に延びた後、湾曲して、下方に延びる形状を呈している。以上の構成によれば、底面パネル2aからボルト82が延び出る長さを変更することで、フック80の高さを変更できる。
【0059】
以上の構成によれば、下記操作A,Bのいずれか一方もしくは両方を行って、第三連結部材76の延出部76a(
図10)をフック80の湾曲部80a(
図11(c))に係止させることで、酸素透過モジュール5の浮上を防止できる。
【0060】
操作A:廃水Wが貯留されたパネルタンク3の内部に、酸素透過モジュール5を投入した後、廃水W中の酸素透過モジュール5を浮き上がらせること。
操作B:パネルタンク3の内部に酸素透過モジュール5を投入した後、酸素透過モジュール5の位置を水平方向にずらすこと。
【0061】
例えば、パネルタンク3の内部に廃水Wが貯留された状態で、パネルタンク3の外部からの操作で、パネルタンク3の内部に酸素透過モジュール5を投入する投入工程が実施される。
【0062】
上記の投入工程では、まず、酸素透過モジュール5を下方に押さえ付けて酸素透過モジュール5を廃水W中に沈めることが行われる。この際には、フック80の湾曲部80aの直下に、平板である第三連結部材76の延出部76aが位置するように、酸素透過モジュール5の位置が調整される。この後、酸素透過モジュール5への押さえ付けを解除することで、酸素透過モジュール5を浮上させて、第三連結部材76の延出部76aをフック80の湾曲部80a内に入れることが行われる。これにより、フック80が第三連結部材76(平板)の延出部76aに係止されて、酸素透過モジュール5が固定された状態になる。
【0063】
また、フック80が第三連結部材76から抜けることを防止するために、第三連結部材76の端に、突起87(
図10)を形成することが好ましい。突起87は、平板である第三連結部材76の延伸方向(第3方向)と直交する方向に突出するものであり、図示例では、突起87は上方へ突出するものとされている。なお突起87の形成位置は、第三連結部材76の端に限定されず、フック80が外れることを防止可能な第三連結部材76の任意の位置とされ得る。
【0064】
なお、酸素透過モジュール5の浮上を確実に防止するために、
図9及び
図10に示すように、第1方向に間隔をあけて複数のフック80を配置するとともに、当該複数のフック80からなる列を、第3方向に複数配列することが好ましい(
図9及び
図10に示す例では、第1方向に間隔をあけて3つのフック80が設置されるとともに、当該3つのフック80からなる2列が第3方向に間隔をあけて配置されている)。そして上記のようにする場合には、第1方向に並ぶ複数のフック80を、同一の溝形鋼84に締結させることが好ましい。このようにすることで、第1方向に並ぶ複数のフック80を同等の高さに位置づけることができるので、酸素透過モジュール5を安定且つ確実に固定できる。なお、第1方向に配置するフック80の数や、第3方向に配置するフック80の組の数は、上記の3や2に限定されず、任意の複数とすることができる。
【0065】
またフック80の材質は、ステンレス、チタン、被覆したスチール、或いは、FRPなどのプラスチックにすることが好ましい。このようにすることで、腐食によるフック80の破損を防止できる。
【0066】
またフック80の数は4以上20以下であることが好ましい。フック80の数が4よりも小さい場合には、酸素透過モジュール5を安定的に固定することが困難になる。フック80の数が20よりも大きい場合には、廃水処理装置1の加工が困難になる。
【0067】
またフック80を係止させる第三連結部材76の延出部76aの長さは、3mm以上600mm以下にすることが好ましい。延出部76aの長さが3mmよりも小さい場合には、酸素透過モジュール5を安定的に固定できなくなる虞がある。延出部76aの長さが600mmよりも大きい場合には、パネルタンク3と酸素透過モジュール5との間隔が広がり、パネルタンク3内に嫌気的に分解される廃水Wが生じてしまう。
【0068】
また、フック80を係止させる第三連結部材76を、必ずしも平板(フラットバー)にする必要はなく、第三連結部材76は棒材であってもよい。そしてこの場合には、棒材(第三連結部材76)からフック80が抜けることを防止するために、棒材(第三連結部材76)には、その延伸方向と直交する方向に突出する突起が形成される。
【0069】
なお第三連結部材76を平板にする場合には、第三連結部材76の厚さは、2mm以上100mm以下とすることが好ましい。厚さが2mmよりも小さい場合には、第三連結部材76の強度を十分確保できなくなる。厚さが100mmよりも小さい場合には、酸素透過モジュール5に保持可能な酸素透過膜4の数が少なくなる。
【0070】
酸素透過モジュール5では、第一連結部材74を支持するための柱部材(図示せず)が設けられてもよい。当該柱部材は、上下方向に延びるものであって、下端が第二連結部材75に締結され、上端が第一連結部材74に締結される。上記の柱部材は、例えば、平板、Lアングル、Cチャンネル、丸棒、角棒、中空円管、中空角管であり、当該柱部材が使用されることで、酸素透過モジュール5の強度を高めることができる。
【0071】
また必ずしも、フック80の固定箇所をパネルタンク3の底面パネル2aにする必要はない。フック80は、パネルタンク3の側面パネル2bに固定されてもよい。或いは、フック80を酸素透過モジュール5に設け、フック80を係止させる係止部をパネルタンク3に設けてもよい。
【0072】
またパネルタンク3の内部に酸素透過モジュール5を投入する際に、パネルタンク3の内部に廃水Wが貯留されていなくてもよく、また、酸素透過モジュール5は水に浮かないものであってもよい。上記の場合には、例えば、パネルタンク3の外部からの操作で、パネルタンク3の内部に酸素透過モジュール5を投入して、酸素透過モジュール5を底面パネル2aに着地させることが行われる。そして、パネルタンク3の外部からの操作で、酸素透過モジュール5の位置を水平方向にずらすことで、フック80の湾曲部80aに、酸素透過モジュール5の平板或いは棒材を嵌合させる。これにより、フック80に平板或いは棒材が係止された状態となって、酸素透過モジュール5がパネルタンク3に固定される。なお酸素透過モジュール5を水に浮くものとすれば、酸素透過モジュール5の浮上を利用して、フック80を平板或いは棒材に係止できるので、酸素透過モジュール5の位置をずらすことを要しない。一方、酸素透過モジュール5を水に浮かないものとすれば、酸素透過モジュール5をタンク3の内部に投入する際に、酸素透過モジュール5を下方に押さえ付けることを要さず、酸素透過モジュール5を廃水W中に沈めることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、本発明の廃水処理装置に設けられる酸素透過モジュールは、上記実施形態に示したものに限定されない。以下、酸素透過モジュールの変形例について説明する。
【0075】
(酸素透過モジュール90)
図12は、変形例の酸素透過モジュール90を示す正面図である。
図13は、
図12に示す酸素透過モジュール90が備える酸素透過膜4を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)の矢印方向aから酸素透過膜4を見たときの側面図であり、(C)は(A)の矢印方向bから酸素透過膜4を見たときの側面図である。
図14は、酸素透過モジュール90が備えるスペーサ96,97を拡大して示す側面図である。
【0076】
図12や
図13に示すように、酸素透過モジュール90は、複数の酸素透過膜4と、一対の対向部材91A,91Bと、第一連結部材92と、第二連結部材93(
図13)とを備えている。
【0077】
一対の対向部材91A,91Bは、矩形の環状を呈するものであり、水平方向に間隔をあけて対向配置される。以下、「対向部材91A,91Bが対向する水平な方向」を「第1方向」と記す。
【0078】
第一連結部材92や第二連結部材93は、第1方向に延びるものであって、第一連結部材92や第二連結部材93を介して対向部材91A,91Bが連結される。
【0079】
第一連結部材92と第二連結部材93とは、第1方向と直交する水平な第2方向に間隔をあけて配置されている。そして酸素透過膜4に形成された第一貫通孔94に第一連結部材92が通され、酸素透過膜4に形成された第二貫通孔95に第二連結部材93が通されることで、酸素透過膜4は、第一連結部材92及び第二連結部材93に保持されている。
【0080】
より具体的には、
図13に示すように、各酸素透過膜4では、幅一方側における上端部・中央部・下端部に第一貫通孔94が形成され、幅他方側の上端部・中央部・下端部に第二貫通孔95が形成されている。各酸素透過膜4では、第一貫通孔94に筒状のスペーサ96が取り付けられ、第二貫通孔95に筒状のスペーサ97が取り付けられており、スペーサ96の内部に第一連結部材92が通され、スペーサ97の内部に第二連結部材93が通されている。これにより、各酸素透過膜4は、それぞれスペーサ96,97を介して連結部材92,93に保持されている。そして
図14に示すように、隣り合う2つの酸素透過膜4では、第一貫通孔94に取り付けたスペーサ96の端面同士が突き合い、且つ、第二貫通孔95に取り付けたスペーサ97の端面同士が突き合うことで、上記隣り合う2つの酸素透過膜4の間隔Pが、所定値に維持されている(
図14では、第一貫通孔94の位置の構造と、第二貫通孔95の位置の構造とが、同様の構造であることで、上記2つの位置をまとめて示している)。
【0081】
なお、第一連結部材92の数は、1以上10以下であることが好ましい。第一連結部材92が設けられない場合には、酸素透過膜4を安定的に保持することが困難になる。第一連結部材92の数が10よりも大きい場合には、酸素透過モジュール90の加工が困難になる。
【0082】
また第二連結部材93の数は、2以上20以下であることが好ましい。第二連結部材93の数が1とされる場合には、酸素透過膜4を安定的に保持することが困難になる。第二連結部材93の数が20よりも大きい場合には、廃水処理装置1の加工が困難になる。
【0083】
なお酸素透過モジュール90では、第一連結部材92や第二連結部材93の本数の合計は4本以上30本以下にすることが好ましい。上記本数の合計が4本よりも少ない場合には、第一連結部材92や第二連結部材93により酸素透過膜4を安定して保持できなくなる虞がある。上記本数の合計が30本よりも多い場合には、第一連結部材92や第二連結部材93の加工が困難になる虞がある。
【0084】
また、第一連結部材92や第二連結部材93の外径は5mm以上100mm以下にすることが好ましい。第一連結部材92や第二連結部材93の外径が5mmよりも小さい場合には、第一連結部材92や第二連結部材93の強度を十分確保できなくなる虞がある。第一連結部材92や第二連結部材93の外径が100mmよりも大きい場合には、酸素透過膜4の透気シート21の有効面積を十分確保できなくなる虞がある。
【0085】
また、上記の連結部材92,93の外径との関係から、スペーサ96,97の内径は、5mm以上100mm以下にすることが好ましい。
【0086】
また、スペーサ96,97の材質を、ステンレス、チタン、被覆したスチール、或いはポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、FRPなどのプラスチックにすることが好ましい。このようにすることで、腐食によるスペーサ96の破損を防止することができる。
【0087】
また、第一連結部材92と第二連結部材93とは、水平な第1方向と直交する鉛直な第2方向に間隔をあけて配置されるものであってもよい。この場合、例えば、各酸素透過膜4の上端部に形成された第一貫通孔94にスペーサ96が取り付けられ、各酸素透過膜4の下端部に形成される第二貫通孔95にスペーサ97が取り付けられる。そして各酸素透過膜4のスペーサ96の内部に第一連結部材92が通され、各酸素透過膜4のスペーサ97の内部に第二連結部材93が通されることで、各酸素透過膜4は、それぞれスペーサ96,97を介して連結部材92,93に保持される。そして隣り合う2つの酸素透過膜4では、第一貫通孔94に取り付けたスペーサ96の端面同士が突き合い、且つ、第二貫通孔95に取り付けたスペーサ97の端面同士が突き合うことで、上記隣り合う2つの酸素透過膜4の間隔が、所定値に維持される。
【0088】
また必ずしも、複数の酸素透過膜4が酸素透過モジュール90に保持される必要はなく、1つの酸素透過膜4を酸素透過モジュール90に保持させてもよい。この場合、スペーサ96,97は省略される。
【0089】
また
図7に示す移動機構11が廃水処理装置に設けられる場合には、キャスター13は、例えば、対向部材91A、対向部材91B、スペーサ96,97のいずれかに取り付けられる。
【符号の説明】
【0090】
1 廃水処理装置
2a 底面パネル
2b 側面パネル
2c 天井パネル
3 パネルタンク
4 酸素透過膜
5 酸素透過モジュール
8 潜り堰(遮蔽部)
10a,10b 天井フレーム
11 移動機構