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特開2023-101944メッシュ状シート及びメッシュ状シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101944
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】メッシュ状シート及びメッシュ状シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/00 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002199
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA03
2H113BA09
2H113BA18
2H113BB06
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB10
2H113BB22
2H113BB32
2H113CA37
2H113DA46
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA62
2H113EA05
2H113EA17
2H113FA04
(57)【要約】
【課題】より使い勝手のよいコントラビジョン方式のメッシュ状シートを提供する。
【解決手段】複数の貫通孔1aが形成されたメッシュ構造を有するメッシュ状シート10であって、一方の面の明度と他方の面の明度とが異なる。例えば、メッシュ構造を有するメッシュ状基材1と、メッシュ状基材1の一方の面の、平面視で貫通孔1aと重ならない領域のみに形成された加飾層2とを備え、メッシュ状基材1の一方の側の最表面の明度とメッシュ状基材1の他方の側の最表面の明度との差が、L表色系における各明度L値の差で40以上となるようにする。明度がより高い加飾層2の側から見たときには、加飾層2による絵柄等を視認し易いがメッシュ状基材1側を透視しにくく、明度がより低いメッシュ状基材1の側から見たときには加飾層2側を透視し易い。つまり、コントラビジョン方式のシートを実現することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造を有するメッシュ状シートであって、
一方の面の明度と他方の面の明度とが異なることを特徴とするメッシュ状シート。
【請求項2】
前記メッシュ構造を有するシート状の基材と、
前記基材の少なくとも何れか一方の面の、平面視で前記貫通孔と重ならない領域のみに積層された一又は複数の加飾層と、を備え、
一方の面の明度と他方の面の明度との差が、L表色系における各明度L値の差で40以上であることを特徴とする請求項1に記載のメッシュ状シート。
【請求項3】
平面視における前記基材の面積に対する前記貫通孔の開口部の面積が10%以上70%以下であることを特徴とする請求項2に記載のメッシュ状シート。
【請求項4】
前記基材と前記加飾層との間に、ベタ単色層を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のメッシュ状シート。
【請求項5】
前記基材は、織物、編物又はパンチングメタルからなることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のメッシュ状シート。
【請求項6】
最表層となる前記加飾層の上にコート層を備えることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のメッシュ状シート。
【請求項7】
複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造を有するシート状の基材の、少なくとも何れか一方の面に、一又は複数の加飾層を有版印刷により形成する工程を有し、
当該工程の前に、一方の面の明度と他方の面の明度との差が、L表色系における各明度L値の差で40以上となるように、前記加飾層の明度を選定する工程を備えることを特徴とするメッシュ状シートの製造方法。
【請求項8】
前記基材として、平面視における前記基材の面積に対する前記貫通孔の開口部の面積が10%以上70%以下となる基材を用意する工程を備えることを特徴とする請求項7に記載のメッシュ状シートの製造方法。
【請求項9】
前記基材の上に前記加飾層を積層する工程の前に、前記基材の上に前記加飾層の明度に対応したベタ単色層を設ける工程を備えることを特徴とする請求項8に記載のメッシュ状シートの製造方法。
【請求項10】
前記基材は、織物、編物又はパンチングメタルからなることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のメッシュ状シートの製造方法。
【請求項11】
前記加飾層の上にコート層を形成する工程を、さらに備えることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のメッシュ状シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ状シート及びメッシュ状シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル等の透明又は半透明の材料に、シルエットパターンの部分と、シルエットパターンに重ねたデザインの部分とを形成することで、一方から見たときには、デザインを視認することができるものの、他方から見たときには、デザインを視認することができずに透けて見えるようにしたコントラビジョン方式のパネル(例えば、特許文献1参照)や、フィルムに絵柄等を印刷したコントラビジョン方式のシースルー印刷物(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5-32721号公報
【特許文献2】特開2001-232976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コントラビジョン方式のパネルやシースルー印刷物をパーテーション等に適用した場合、基材となるパネルやフィルム等には開孔がないため、音や声を遮ってしまい、安全面やコミュニケーションを阻害する可能性があり、また、閉塞感を与える可能性がある。また、開孔がなく通気性がないため、パーテーションとして室内等で利用する場合、空調効果を低減させてしまう。また、パーテーションとして用いない場合に、場所をとり、またある程度の重量がある。したがって、コンパクトに収納することができ、使い勝手のより良いコントラビジョン方式のシートが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記未解決の課題を解決するためになされたものであり、より使い勝手を向上させることの可能なコントラビジョン方式のメッシュ状シート及びメッシュ状シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造を有するメッシュ状シートであって、一方の面の明度と他方の面の明度とが異なるメッシュ状シートが提供される。
また、本発明の他の態様によれば、複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造を有するシート状の基材の、少なくとも何れか一方の面に、一又は複数の加飾層を有版印刷により形成する工程を有し、当該工程の前に、一方の面の明度と他方の面の明度との差が、L表色系における各明度L値の差で40以上となるように、前記加飾層の明度を選定する工程を備えるメッシュ状シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、使い勝手のよりよいコントラビジョン方式のメッシュ状シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るメッシュ状シートの概略構成を示す断面図である。
図2】メッシュ状基材の概略構成を示す平面図である。
図3】メッシュ状シートの他の例を示す断面図である。
図4】メッシュ状シートの他の例を示す断面図である。
図5】メッシュ状シートの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などを下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<メッシュ状シートの構成>
【0011】
図1は、本発明に係るメッシュ状シートの一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、メッシュ状シート10は、メッシュ状基材1と加飾層2との積層体からなる。メッシュ状基材1は、複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造の基材で形成され、例えば、図2に示す三軸のメッシュ生地で形成される。メッシュ状基材1としては、貫通孔1aの孔径が例えば30μm~150mm程度のものを用いることができ、メッシュ状基材1全体の面積に対する貫通孔1aの開口部の面積が、10%以上70%以下である基材が好ましい。メッシュ状基材1は、三軸のメッシュ生地に限るものではなく、二軸、或いは、四軸以上の多軸のメッシュ生地であってもよい。また、メッシュ状基材1は、織物に限るものではなく編物であってもよく、さらにパンチングメタル等、多数の貫通孔を有する基材であってもよい。また、メッシュ生地は綿、麻、いぐさ、麦わら、毛、絹等の天然繊維からなるものであってもよく、また金属、炭素、ガラス、アセテート、ゴム、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、ポリエーテル、ポリエステル、レーヨン、キュプラ等の人工繊維からなるものであってもよく、更に各素材の再生繊維からなるものであってもよい。また、メッシュ生地は、不透明又は半透明の繊維で形成されていてもよい。メッシュ状基材1として、金属類、グラスファイバー等のガラス繊維等からなるメッシュ生地を用いることによって、不燃性、耐火性等の機能をメッシュ状シート10に持たせることができる。メッシュ生地の厚みは例えば10μm~100mm程度のものを用いることができる。
【0013】
なお、ここでいうメッシュ構造とは、同一径の貫通孔が複数形成され、且つ貫通孔が均等に同一パターンで整列配置されている構造のことをいう。
【0014】
加飾層2は、メッシュ状基材1の貫通孔1aを除く部分、つまり、経糸及び緯糸の、メッシュ状基材1の表面をなす部分のみに印刷される。加飾層2は、例えば、グラビア、インクジェット、シルクスクリーン等の有版印刷によってメッシュ状基材1に印刷される。このように有版印刷によって、加飾層2をメッシュ状基材1上に印刷することにより、経糸及び緯糸の、メッシュ状基材1の表面をなす部分のみに印刷がなされ、その結果、メッシュ状基材1の貫通孔1aが加飾層形成用のインキによって塞がれることなく、平面視でメッシュ状基材1の貫通孔1aを除く部分にのみ加飾層2が形成される。
【0015】
加飾層2は、メッシュ状基材1に積層したときに、加飾層2のメッシュ状基材1とは逆側の面の明度と、メッシュ状基材1の加飾層2とは逆側の面の明度とが異なるように選定される。メッシュ状基材1と加飾層2との積層体の、両面それぞれの明度差が、L表色系における各明度L値の差で40以上となるように選定されるとより良い。
【0016】
メッシュ状シート10の表裏面の明度差に違いが生じていれば、コントラビジョン効果は生じる。メッシュ状シート10の表裏面の明度差が大きいほど、メッシュ状シート10の両面に対する視認性に違いが発生し、コントラビジョン効果は大きくなる。特に、L表色系における各明度L値の差が40以上の場合、十分なコントラビジョン効果を得ることができる。
<メッシュ状シートの製造方法>
【0017】
まず、メッシュ状基材1としてのメッシュ生地と、加飾層2となるインキを選定する。メッシュ状基材1として、開口率が10%以上70%以下となるメッシュ生地を用いる。このメッシュ生地と加飾層2との明度差として、L表色系における各明度L値の差が生じるように加飾層2用のインキを選定する。この時、L表色系における各明度L値の差が40以上となるように加飾層2用のインキを選定するとより良い。
【0018】
そして、選定したメッシュ状基材1の一方の面に、加飾層2形成用のインキを用いて有版印刷により印刷を行い、加飾層2を積層する。このとき、加飾層2を有版印刷により積層しているため、加飾層2は、平面視で、メッシュ状基材1の経糸及び緯度の表面にのみ形成される。そのため、加飾層2には貫通孔1aを延長した孔が形成されることになり、貫通孔1aと同等の開口部を有する貫通孔が形成されたメッシュ状シート10が形成される。
【0019】
ここで、メッシュ状基材1はメッシュ生地であり、多数の貫通孔1aが形成されている。また、加飾層2とメッシュ状基材1との明度差である、L表色系における各明度L値の差が生じている。この差が40以上であるとより良い。
【0020】
そのため、表裏の明度に差があり、且つメッシュ生地の貫通孔1aと同等数の貫通孔を有するメッシュ状シート10が形成される。
<効果>
(1)上述のように、メッシュ状シート10は、表裏に明度差があり、且つメッシュ生地の貫通孔と同等数の貫通孔1aを有する。そのため、メッシュ状シート10を、明度の高い側から見た場合は反射率が高いため、例えば加飾層2の明度の方が高い場合には加飾層2により描かれた絵柄等を視認しやすく、貫通孔1aの部分は見えにくいため人間の目による透視度は低くなる。逆に、メッシュ状シート10を、明度の低い側から見ると、例えばメッシュ状基材1の明度の方が低い場合には、反射率が低く貫通孔1aの部分を視認しやすいため透視度は高くなる。その結果、明度がより高い加飾層2の側から見たときには、メッシュ状シート10を挟んでメッシュ状基材1側の様子を透視し難いが、加飾層2による絵柄等を視認し易くなり、逆に、明度がより低いメッシュ状基材1の側から見たときにはメッシュ状シート10を挟んで加飾層2側の状況を透視し易く、すなわちコントラビジョン方式のシートを実現することができる。その結果、例えばプライバシーの保護等に役立たせることができる。また、メッシュ状基材1としてのメッシュ生地に加飾層2を設けない場合には、透視性があるため、プライバシーの保護が困難であるが、メッシュ生地に、メッシュ生地とは明度の異なる加飾層2を設けることによって、容易にプライバシーの保護を図ることができる。
(2)一般に、コントラビジョン方式のシートの場合、夜の屋内と屋外等といった明るい空間と暗い空間との間にシートを設けることで、コントラビジョンの効果を発揮していたが、本実施形態に係るコントラビジョン方式のメッシュ状シート10は、同じ明るさの空間においても表裏の明度差によってコントラビジョン効果を発現させることができる。さらに、メッシュ状シート10を挟んで明るい空間と暗い空間等、メッシュ状シート10を挟んで明るさが異なると、より大きなコントラビジョン効果を発現させることができる。
(3)メッシュ状シート10は、メッシュ状基材1として貫通孔1aが形成された三軸織物等を用いている。そして、加飾層2を有版印刷により形成することによって、貫通孔1aは開口状態を維持したままである。そのため、メッシュ状シート10をパーテーション等に適用した場合であっても通気性を有するため、音や声を遮ることを抑制することができ、安全面やコミュニケーションを阻害することを抑制することができる。また、通気性を有するため、メッシュ状シート10からなるパーテーションを用いることにより、空調効果が低下することを抑制することができ、また、閉塞感を与えることを抑制することができる。
(4)メッシュ状基材1としてメッシュ生地を用いることで、不使用時には、折り畳むこと等によりコンパクトに収納することができる。また、収納時に、メッシュ状シート10が割れる、或いは、シワになる、次回使用時に復元できない等が生じることを回避し、使い勝手のよいメッシュ状シート10を実現することができる。すなわちメッシュ状シート10をパーテーションとして用いた場合等には、不使用時にはコンパクトにすることができ、扱い易く、使い勝手のよいパーテーションを容易に実現することができる。
【0021】
また、メッシュ生地からなるメッシュ状基材1は比較的軽いため、容易に取り扱うことができ、さらに、曲面等立体的な形状や複雑な平面形状等であっても比較的容易に加工することができ、汎用性を高めることができる。特に、メッシュ生地を用い、加飾層形成用のインキとして、柔らかく伸縮性を有する塗膜となり得るインキを選定することで、収納性や加工性に富んだメッシュ状シート10を実現することができる。また、メッシュ状基材1として、パンチングメタルを用いた場合でも、貫通孔1aが形成されているため、その分軽量化を図ることができ、例えば、パーテーションとして用いた場合であっても、パネルやフィルムを用いる場合に比較して、貫通孔1aが形成されている分、軽量化を図ることができる。
(5)メッシュ生地は、一般に染色した繊維を用いて製造されることが多く、そのため、全面単色や両面単色等、単調な色付けで意匠性が低い。また、透視性があるため、メッシュ生地を挟んで逆側の状況を視認し易く、プライバシー保護が弱い。
【0022】
しかしながら上述のように、メッシュ生地に加飾層2を設け、例えば、加飾層2として、文字や彩色、絵柄等を印刷することによって、容易に、意匠性を高め、プライバシー保護を向上させることができる。そのため、メッシュ生地の汎用性を向上させることができる。
<変形例>
(1)図1に示すメッシュ状シート10において、メッシュ状基材1の他方の面にも加飾層2aを形成し、図3に示すように、メッシュ状基材1の両面に、加飾層2、2aを設けるようにしてもよい。このように、メッシュ状基材1の両面に加飾層2、2aを設ける場合には、加飾層2の明度と加飾層2aの明度との間に差を設けるようにすればよい。メッシュ状基材1の両面に加飾層2、2aを設けることによって、意匠性を高めることができる。
(2)図4に示すように、メッシュ状基材1の上に例えば白ベタ単色層や、黒ベタ単色層等のベタ単色層3を設け、この上に加飾層2として絵柄層4を設けることで、よりはっきりした意匠を得るようにしてもよい。この場合、メッシュ状基材1よりも絵柄層4の方が明度が高ければ、メッシュ状基材1の上に白ベタ単色層3を設け、その上に絵柄層4を設ければよい。また、メッシュ状基材1の表面に加飾層が設けられている場合には、メッシュ状基材1の両側の面の最表層となる加飾層2(絵柄層4)に接する下層として、ベタ単色層3を設ければよく、最表層となる加飾層のうち、明度が高い方の加飾層の下層には白ベタ単色層を設け、明度が低い方の加飾層の下層には黒ベタ単色層を設ければよい。
(3)図5に示すように、加飾層2の上に、コート層5を設けてもよい。コート層5は、透明性を有するものであればよく、コート層5は必要に応じて設ければよい。すなわち、コート層5は、耐傷性や耐候性などの表面物性付与のために必要に応じて設ければよい。コート層5は、印刷、ラミネート、含浸等、公知の方法を用いて作製することができる。
(4)加飾層形成用のインキ、或いはコート層形成用の樹脂に機能性をもつ添加剤を加えてもよい。耐候性、消臭性、忌避性、防汚性、耐水性、耐油性、対傷性等の機能を付与する添加剤を加えることが考えられる。
(5)メッシュ状基材1として、一般的なポリエステル等の樹脂類の他に、金属類、グラスファイバー等の不燃材料を使用することで、不燃性、防火性等を付与することができる。
【実施例0023】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0024】
以下の実施例及び比較例は、明度が異なる10色のインキを白色PBTフィルムにそれぞれ印刷した。印刷したそれぞれの色をコニカミノルタ株式会社製の色彩色差計CR-300にて表色モード(L表色系)で側色し、そのときの明度L値を記録した。このときに印刷した10色のインキをメッシュ生地に印刷した。メッシュ生地は貫通孔の径が2mm程度、開口部面積が36%程度、素材がポリエステル繊維のものを使用した。
(実施例1)
【0025】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が94の色を印刷し、表裏の明度差が2のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例2)
【0026】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が88の色を印刷し、表裏の明度差が8のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例3)
【0027】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が73の色を印刷し、表裏の明度差が23のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例4)
【0028】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が61の色を印刷し、表裏の明度差が35のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例5)
【0029】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が59の色を印刷し、表裏の明度差が37のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例6)
【0030】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が57の色を印刷し、表裏の明度差が39のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例7)
【0031】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が51の色を印刷し、表裏の明度差が39のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例8)
【0032】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が39の色を印刷し、表裏の明度差が57のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例9)
【0033】
繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が30の色を印刷し、表裏の明度差が66のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例10)
【0034】
繊維が白色のメッシュ生地の表面には印刷を施さず(L値が100と想定)、裏面にL値が96の色を印刷し、表裏の明度差が4のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例11)
【0035】
繊維が白色のメッシュ生地の表面には印刷を施さず(L値が100と想定)、裏面にL値が30の色を印刷し、表裏の明度差が70のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例12)
【0036】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が96の色を印刷し、表裏の明度差が66のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例13)
【0037】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が94の色を印刷し、表裏の明度差が64のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例14)
【0038】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が88の色を印刷し、表裏の明度差が58のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例15)
【0039】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が73の色を印刷し、表裏の明度差が43のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例16)
【0040】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が61の色を印刷し、表裏の明度差が31のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例17)
【0041】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が59の色を印刷し、表裏の明度差が29のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例18)
【0042】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が57の色を印刷し、表裏の明度差が27のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例19)
【0043】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が51の色を印刷し、表裏の明度差が21のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例20)
【0044】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が39の色を印刷し、表裏の明度差が9のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例21)
【0045】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面には印刷を施さず(L値が0と想定)、裏面にL値が96の色を印刷し、表裏の明度差が96のメッシュ状シート10を作製した。
(実施例22)
【0046】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面には印刷を施さず(L値は0と想定)、裏面にL値が30の色を印刷し、表裏の明度差が30のメッシュ状シート10を作製した。
(比較例1)
【0047】
実施例1と同様に繊維が白色のメッシュ生地の表面にL値が96の色を印刷し、裏面にL値が96の色を印刷し、表裏の明度差が0のメッシュ状シート10を作製した。
(比較例2)
【0048】
実施例12と同様に繊維が黒色のメッシュ生地の表面にL値が30の色を印刷し、裏面にL値が30の色を印刷し、表裏の明度差が0のメッシュ状シート10を作製した。
(比較例3)
【0049】
繊維が白色のメッシュ生地の表面及び裏面のいずれにも印刷を施さないメッシュ状シート10を作製した。
(比較例4)
【0050】
繊維が黒色のメッシュ生地の表面及び裏面のいずれにも印刷を施さないメッシュ状シート10を作製した。
(評価方法)
【0051】
印刷を施したメッシュ生地を中心に、一方に、メッシュ生地から1m離れた地点に判定者、もう一方に、メッシュ生地から1m離れた位置に文字が書かれた看板を配置する。
【0052】
まず、判定者はメッシュ生地を通して看板の文字を視認する。その後、メッシュ生地を反転させて同様に看板の文字を視認する。このときにメッシュの表裏で視認性に差があるかどうかを判定する。
【0053】
判定基準は、判定者10人中8人以上の判定者が視認性に差があると判定した場合、両面の明度の差でコントラビジョンの効果が発生していることとする。
【0054】
判定結果を表1に示す。なお、コントラビジョン効果の程度は、メッシュ状シート10において、メッシュの表裏で視認性に差があると判定した判定者の人数が8人以上おり、明度L値が低い面を介して文字を観察した場合に、文字が明確に判別できたものを「◎」、文字が見えるが判別しづらいものを「〇」、メッシュの表裏で視認性に差があると判定した判定者の人数が8人未満のものを「×」とした。また、明度L値が同一である場合には、メッシュ状シート10のどちらか一方の面を介して文字を観察した場合の判別結果を示す。

【表1】
【0055】
表1の結果から、メッシュ状シート10の表面及び裏面に明度差がある場合には、メッシュ状シート10を挟んで観察者と逆側にある看板の文字の視認性に差が生じることがわかる。
【0056】
また、メッシュ状シート10の表面及び裏面の明度差が大きいときほど、メッシュ状シート10を挟んで観察者と逆側にある看板の文字が判別しやすくなり、L表色系における各明度L値の差が40以上であれば、文字を明確に判別できることが確認された。
【0057】
つまり、メッシュ状シート10の表面及び裏面の明度差が少しでもあれば、メッシュ状シート10の明度が高い側からメッシュ状シート10を見た観察者はメッシュ状シート10を挟んで向こう側の様子を視認しにくく、明度が低い側からメッシュ状シート10を見た観察者は、メッシュ状シート10の向こう側の様子を視認することができることが確認された。また、メッシュ状シート10の表面及び裏面の明度差が40以上であれば、メッシュ状シート10の明度が高い側からメッシュ状シート10を見た観察者はメッシュ状シート10を挟んで向こう側の様子を視認しにくく、明度が低い側からメッシュ状シート10を見た観察者は、文字を明確に判別できる程度に、メッシュ状シート10の向こう側の様子を視認することができることが確認された。さらに、メッシュ状シート10を挟んでその向こう側の情報を、一方側からは視認しにくく他方側からは視認し易いという機能は、メッシュ状シート10を挟んでその両側の明るさが同等であっても発現できることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
1 メッシュ状基材
2、2a 加飾層
3 ベタ単色層
4 絵柄層
5 コート層
10 メッシュ状シート
図1
図2
図3
図4
図5