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特開2023-102061電力制御システムおよび電力制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102061
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】電力制御システムおよび電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230714BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20230714BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230714BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230714BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230714BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14 160
H02J3/32
H02J3/38 110
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002398
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 甜
(72)【発明者】
【氏名】楠 清志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 秀行
(72)【発明者】
【氏名】影山 隆久
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA05
5G066AA03
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KB01
5G066KB06
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力系統の周波数変動の適切な抑制を実現する。
【解決手段】実施形態における電力制御システムは、交流電気回路の周波数変動を抑制する電力制御システムであって、電力需要家に対する、前記周波数変動を抑制するための要請に基づき、当該電力需要家に係る電力変換装置の運転状態が変更されたときの変更前後の運転状態が示される情報および/または電気量に基づいて、前記周波数変動の抑制に対する前記電力需要家の寄与量を算出する寄与量算出部と、前記寄与量算出部により算出された寄与量に基づき、前記電力需要家への対価を算出する対価算出部と、とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電気回路の周波数変動を抑制する電力制御システムであって、
電力需要家に対する、前記周波数変動を抑制するための要請に基づき、当該電力需要家に係る電力変換装置の運転状態が変更されたときの変更前後の運転状態が示される情報および/または電気量に基づいて、前記周波数変動の抑制に対する前記電力需要家の寄与量を算出する寄与量算出部と、
前記寄与量算出部により算出された寄与量に基づき、前記電力需要家への対価を算出する対価算出部と、
を備える電力制御システム。
【請求項2】
前記交流電気回路と前記電力変換装置との間に係る電気量を測定し、この測定された電気量に基づいて、前記電力変換装置の運転状態を示す電気量を演算する第1の運転状態演算部と、
前記運転状態が変更された後の、前記交流電気回路と前記電力変換装置との間に係る電気量、および前記運転状態が変更される前の、前記交流電気回路と前記電力変換装置との間に係る電気量に基づいて、前記運転状態が変更されなかった場合の前記電力変換装置の仮想的な運転状態を示す電気量を演算する第2の運転状態演算部と、をさらに備え、
前記寄与量算出部は、前記第1および第2の運転状態演算部による演算結果に基づいて、前記寄与量を算出する、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記第2の運転状態演算部は、前記交流電気回路と前記電力変換装置との間に係る電気量のうち前記運転状態の変更前後で変動しない電気量以外の前記電気量と、前記運転状態の変更前後で変動しない電気量とに基づいて、前記運転状態が変更される前の前記電力変換装置の仮想的な運転状態を示す電気量を演算する、
請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記第1および第2の運転状態演算部による演算結果を比較する比較演算部をさらに備え、
前記寄与量算出部は、前記比較演算部による比較の結果に基づいて、前記寄与量を算出する、
請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記比較演算部による比較の結果の積分演算または蓄積を行なうことで、前記要請に基づいて変動した、前記電力需要家の電気量の総量を演算し蓄積する蓄積部をさらに備える、
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記要請に基づく、前記電力需要家に係る電力変換装置の運転状態の変更に係る指令に対する、当該電力需要家による承認を受け付ける承認部をさらに備え、
前記寄与量算出部は、前記承認部により前記承認を受け付けたときに、前記変更前後の運転状態が示される情報に基づいて、前記周波数変動の抑制に対する前記電力需要家の寄与量を算出する、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記電力変換装置の運転状態は、前記交流電気回路の周波数の変動もしくは前記交流電気回路の電気量の位相の変動を抑制する少なくとも1種類の模擬慣性運転、および前記交流電気回路の周波数の変動に応じて負荷への入力、充放電手段への入出力、または発電手段の出力を調整する少なくとも1種類の周波数調整運転の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記要請に基づく、当該電力需要家に係る電力変換装置の運転状態の変更に係る指令が複数種類の指令であり、
前記承認部は、前記複数種類の指令のうち前記電力需要家により選択された種類の指令に対する、当該電力需要家による承認を受け付ける、
請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項9】
交流電気回路の周波数変動を抑制する電力制御システムに適用される方法であって、
前記電力制御システムにより、電力需要家に対する、前記周波数変動を抑制するための要請に基づき、当該電力需要家に係る電力変換装置の運転状態が変更されたときの変更前後の運転状態が示される情報および/または電気量に基づいて、前記周波数変動の抑制に対する前記電力需要家の寄与量を算出し、
前記電力制御システムにより、前記算出された寄与量に基づき、前記電力需要家への対価を算出する、
電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力制御システムおよび電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電力系統の周波数調整は、主に火力発電所や水力発電所の出力制御により行われている。
火力発電所や水力発電所の出力制御が働く前の過渡的な周波数変動は、同期発電機などの回転機の慣性応答により抑制されている。
太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを利用した発電設備は、自然環境の変化に伴い出力が変動する。
周波数変動を抑制するため、蓄電池システムの充放電制御による周波数調整が実用化されつつある。
【0003】
周波数調整用の蓄電池システムに適用される電力変換装置(制御装置を含む)は、電気回路の周波数を測定し、周波数に応じて入出力の指令値を求め、指令値に従って電力変換装置の入出力を制御する。
また、電力変換装置は、電気回路の電圧位相を測定し、制御用位相基準を求め、入出力を指令値どおりに制御する。
電気回路の周波数変化等に伴い電圧位相が変化した場合、この電力変換装置は、制御用位相基準が電気回路の電圧位相に追従して入出力を制御する。
そのため、この電力変換装置は、電気回路の電圧位相が変化しても入出力を指令値どおりに安定に制御することができる。
【0004】
空調設備、冷凍冷蔵設備、電気自動車に搭載される充電装置などの負荷に適用される電力変換装置(制御装置を含む)は、負荷側の指令値に従って電力変換装置の出力を制御するので、電気回路の周波数が変化しても電力変換装置の出力は変化しない。
また、この電力変換装置は、電気回路の電圧位相を測定し、制御用位相基準を求め、入力を制御する。
電気回路の周波数変化等に伴い電圧位相が変化した場合、この電力変換装置は、制御用位相基準が電気回路の電圧位相に追従して入力を制御する。
そのため、この電力変換装置は、電気回路の電圧位相が変化しても負荷側の出力に応じて入力を安定に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6422682号公報
【特許文献2】特許第6440974号公報
【特許文献3】特許第4680102号公報
【特許文献4】特許第6831565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火力発電や水力発電などの同期発電機を用いた発電設備は、電力系統の周波数が変化した場合、ガバナフリー機能により原動機の出力を制御し、周波数変動を抑制する。
原動機出力が変化して周波数が安定する前の過渡的な周波数変動(電圧位相変動)に対しては、同期発電機が有する慣性により受動的に出力が変化し、過渡的な周波数変動を抑制する。すなわち同期発電機には、慣性応答により周波数変動を抑制する機能がある。
【0007】
一方、風力発電、太陽光発電では、風速、日射量の変化に伴い、出力が変動するため、電力系統の周波数変動の原因になる。
また、風力発電、太陽光発電、燃料電池システム、蓄電システムに適用される電力変換装置は、静止機器であり、同期発電機が有するような慣性を有していない。
また、これらの電力変換装置は、出力および/または入力を指令値どおりに制御するため、出力および/または入力の指令値が変化しない時間帯の過渡的な周波数変動を抑制することはできない。
【0008】
風力発電、太陽光発電などの電力変換装置経由で電力系統に接続される発電設備が増加し、火力発電や水力発電などの同期発電機を用いた発電設備(慣性を有する発電設備)の割合が減少すると、電力系統全体の慣性が減少し、電力系統の周波数変動が大きくなることが懸念される。
そのため、同期発電機を用いた発電設備と同等の過渡的な周波数変動の抑制効果を有する電力変換装置が求められている。
【0009】
このような電力変換装置を実現する方法として、仮想同期発電機制御が提案されている。
この制御は、電力変換装置の制御装置に同期発電機の特性を模擬する演算部を備え、演算結果に基づいて電力変換装置の出力を制御し、同期発電機の出力を模擬するものである。
仮想同期発電機制御は、複雑な演算が必要であるため演算の時間遅れが生ずるという課題がある。
また、各電力変換装置の出力は、演算に用いる関数、定数によって異なる挙動になるため、複数の電力変換装置が同一系統に接続される場合は、それぞれの電力変換装置の制御が干渉したり、同期機の挙動を模擬することによる振動現象が発生したりして、電力系統に悪影響を与えるおそれがある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、電力系統の周波数変動の適切な抑制を実現することができる電力制御システムおよび電力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態における電力制御システムは、交流電気回路の周波数変動を抑制する電力制御システムであって、電力需要家に対する、前記周波数変動を抑制するための要請に基づき、当該電力需要家に係る電力変換装置の運転状態が変更されたときの変更前後の運転状態が示される情報および/または電気量に基づいて、前記周波数変動の抑制に対する前記電力需要家の寄与量を算出する寄与量算出部と、前記寄与量算出部により算出された寄与量に基づき、前記電力需要家への対価を算出する対価算出部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力系統の周波数変動の適切な抑制を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る電力制御システムが適用された電力系統の構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る電力制御システムの各部の詳細な構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る電力制御システムによる運転モードの変更から電気料金の演算までの手順の一例を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態に係る電力制御システムが適用された電力系統の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力制御システムが適用された電力系統の構成の一例を示す図である。
便宜上、図1に示された例では、4つの電力需要家である電力需要家A、B、C、およびDに係る設備が電力系統Sに接続されたときの電力制御システムについて説明する。なお、図1の符号aで示される範囲は、各電力需要家と送配電事業者と小売電気事業者との間の入出力に係る構成の範囲に対応する。
【0015】
電力需要家には、高圧大口需要家、高圧小口需要家、および低圧需要家(低圧小口需要家)などの各種の需要家が含まれ得る。低圧需要家には一般家庭が含まれ得る。電力需要家A,B,C,およびDを総称して、各電力需要家または単に電力需要家と称することがある。また、上記設備は、上記の電力系統Sの代わりに別の交流電気回路、例えば配電系統または電源回路などに接続されてもよい。
【0016】
また、図1に示された例では、電力需要家Aに係る建物または敷地など(電力需要家A内と称されることがある)に設けられる設備が、電力変換装置(電力変換器と称されることがある。)が用いられた充放電設備であって、電力需要家Bに係る建物または敷地など(電力需要家B内と称されることがある)に設けられる設備が、電力変換装置が用いられた燃料電池設備であって、電力需要家Cに係る建物または敷地など(電力需要家C内と称されることがある)に設けられる設備が、電力変換装置が用いられた空調設備であって、電力需要家Dに係る建物または敷地など(電力需要家D内と称されることがある)に設けられる設備が、電力変換装置が用いられた冷凍および冷蔵設備(以下、冷凍冷蔵設備と称されることがある。)である例について説明する。
【0017】
図1に示された例では、送配電事業者に係る建物または敷地など(送配電事業者内と称されることがある)には演算装置10が設けられる。この演算装置10は、運転モード変更指令出力部11、還元量演算部12還元量送信部13、および寄与量演算部14を有する。ここでいう寄与量とは、各電力需要家が周波数変動の抑制に対応すべく貢献した程度を評価できる数量であればよく、寄与率や貢献の度合といった割合だけに限らず、その評価に用いた物理量や生データなどをそのまま用いても良い。
【0018】
図1に示された例では、小売電気事業者に係る建物または敷地など(小売電気事業者内と称されることがある)には演算装置20が設けられる。この演算装置20は、電気料金演算部21、および電気料金請求部22を有する。なお、これらの演算を一体的な事業者で行なうときは、上記の演算装置10および演算装置20は一体的な装置であってもよい。演算装置10および演算装置20の各部を構成する個々の機能は、ハードウェアとして構成されてもよいが、その一部または全部がソフトウェア、すなわちコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成されてもよい。
【0019】
電力需要家A内には、電力系統Sと連系可能な変圧器Mおよび上記の充放電設備が設けられる。充放電設備には、電力変換装置31、二次電池32、および電力制御装置33が設けられる。電力需要家A内には、運転モード変更指令送受信装置34がさらに設けられる。
また、電力需要家Aにおける上記構成は一例であり、例えば上記の電力変換装置31の内部に電力制御装置33を備えても良いし、充放電設備の外部に電力制御装置33が備えられる構成でもよい。運転モード変更指令送受信装置34が充放電設備内部や電力需要家Aの外部に備えられる構成でも良い。変圧器Mは、電力需要家Aの外部に備えられても良い。
【0020】
電力制御装置33を構成する後述する個々の機能および運転モード変更指令送受信装置34を構成する機能は、ハードウェアとして構成されてもよいが、その一部または全部がソフトウェアとして構成されてもよい。
【0021】
二次電池32の充電中は、電力系統Sから電力需要家A内の変圧器Mに供給された電力は電力変換装置31に供給される。二次電池32の放電中は、電力変換装置31から変圧器Mを経由し電力系統Sに電力が供給される。この変圧器Mと電力変換装置31との間の電気回路には計器用変成器VTと変流器CTと図示しない開閉装置が設けられる。
すなわち、電力変換装置31は、変圧器Mを介して電力系統Sと電気的に接続される。この変圧器Mと電力変換装置31とを繋ぐ電気回路には計器用変成器VTおよび変流器CTが設置される。
計器用変成器VTは、電気回路の電圧に応じた電圧信号VLを出力する。他の電力需要家にて設置される計器用変成器VTも同様である。変流器CTは、電力変換装置31の入出力電流に応じた電流信号ILを出力する。なお、本実施形態の変形例として、計器用変成器VTおよび変流器CTの少なくとも一方が、充放電設備に内蔵されていても良い。
【0022】
電力変換装置31は、例えばインバータおよびコンバータの少なくとも一方の機能を備える機器であり、この電力変換装置31には二次電池32が接続される。この電力変換装置31は、電力制御装置33から与えられる制御信号に従って、電力系統Sとの間の電力の入出力および二次電池32の充放電を行なう。例えば、系統電圧と電力変換装置31の出力電圧との位相差(位相角の差)をθとすると、電力変換装置31の有効電力の入出力(充放電電力)は、sinθに比例した値となる。そのため、θが0~90°の範囲では、θが大きいほど、電力変換装置31の出力が大きくなり、θが0~-90°の範囲では、θが小さいほど、電力変換装置31の入力が大きくなる。
【0023】
電力制御装置33は、電力変換装置31からの出力および二次電池32からの放電を行う場合は、電力変換装置31の出力電圧の位相が系統電圧の位相よりも進んでいる状態(0°<θ≦90°)にし、一方、電力変換装置31への入力および二次電池32への充電を行う場合は、電力変換装置31の出力電圧の位相が系統電圧の位相よりも遅れている状態(0>θ≧-90°)にする。
【0024】
電力制御装置33は、計器用変成器VTからの電圧信号VLを入力し、この信号から電圧値を測定し、変流器CTからの電流信号ILを入力し、この信号から電流値を測定する。電力制御装置33は、これらの測定した値と、入出力指令値、例えば電力変換装置31内の回路および二次電池32の特性値である出力電圧および蓄電量とに基づいて、電力変換装置31と二次電池32との間の直流電力の入出力(充放電)を制御したり、電力変換装置31と電力系統Sとの間の交流電力の入出力を制御したりする。
【0025】
電力需要家Aと同様に、電力需要家B内には、電力系統Sと連系可能な変圧器Mおよび燃料電池設備が設けられる。燃料電池設備には、電力変換装置41、燃料電池42、および電力制御装置43が設けられる。電力需要家B内には、運転モード変更指令送受信装置44がさらに設けられる。
また、電力需要家Bにおける上記構成は一例であり、例えば上記の電力変換装置41の内部に電力制御装置43を備えても良いし、燃料電池設備の外部に電力制御装置53が備えられる構成でもよい。運転モード変更指令送受信装置44が燃料電池設備内部や電力需要家Bの外部に備えられる構成でも良い。
【0026】
電力制御装置43を構成する個々の機能および運転モード変更指令送受信装置44を構成する機能は、ハードウェアとして構成されてもよいが、その一部または全部がソフトウェアとして構成されてもよい。
【0027】
電力系統Sから電力需要家B内の変圧器Mに供給された電力は電力変換装置41に供給される。この変圧器Mと電力変換装置41との間の電気回路には計器用変成器VTと変流器CTと図示しない開閉装置が設けられる。
【0028】
すなわち、電力変換装置41は、電力需要家B内の変圧器Mを介して電力系統Sと接続される。この変圧器Mと電力変換装置41とを繋ぐ電気回路には電力需要家Bに係る計器用変成器VTおよび変流器CTが設置される。
この変流器CTは、電力変換装置41の出力電流に応じた電流信号ILを出力する。なお、本実施形態の変形例として、計器用変成器VTおよび整流器CTの少なくとも一方が燃料電池設備内に内蔵されていても良い。
【0029】
電力変換装置41には燃料電池42が接続される。この電力変換装置41は、電力制御装置43から与えられる制御信号に従って、電力系統S側に対する電力の入出力および燃料電池42からの電力の入力を行なう。
【0030】
電力制御装置43は、電力需要家Bに係る計器用変成器VTからの電圧信号VLにより電圧値を測定し、電力需要家Bに係る変流器CTからの電流信号ILにより電流値を測定する。電力制御装置43は、これらの測定した値と、出力指令値(図示せず)とに基づいて、燃料電池42から電力変換装置41への直流電力の出力を制御したり、電力変換装置41から電力系統Sへの交流電力の出力を制御したりする。
【0031】
電力需要家C内には、空調設備が設けられる。この空調設備は、電力需要家Cに係る建物または敷地の外部の変圧器Mを介して電力系統Sと連系される。空調設備には、電力変換装置51、コンプレッサ52、および電力制御装置53が設けられる。電力需要家C内には、運転モード変更指令送受信装置54がさらに設けられる。
また、電力需要家Cにおける上記構成は一例であり、例えば上記の電力変換装置51の内部に電力制御装置53を備えても良いし、空調設備の外部に電力制御装置53が備えられる構成でもよい。運転モード変更指令送受信装置54が空調設備内部や電力需要家Cの外部に備えられる構成でも良い。変圧器Mは、電力需要家C内に備えられても良い。
【0032】
電力制御装置53を構成する個々の機能および運転モード変更指令送受信装置54を構成する機能は、ハードウェアとして構成されてもよいが、その一部または全部がソフトウェアとして構成されてもよい。
【0033】
電力系統Sから電力需要家Cに係る変圧器Mに供給された電力は電力変換装置51に供給される。この変圧器Mと電力変換装置51との間かつ電力需要家C内の電気回路には計器用変成器VTと変流器CTと図示しない開閉装置が設けられる。
【0034】
すなわち、電力変換装置51は、電力需要家Cに係る変圧器Mを介して電力系統Sと接続される。この変圧器Mと電力変換装置51とを繋ぐ電気回路には、電力需要家Cに係る計器用変成器VTおよび変流器CTが設置される。
この変流器CTは、電力変換装置51の出力電流に応じた電流信号ILを出力する。なお、本実施形態の変形例として、計器用変成器VTおよび変流器CTの少なくとも一方が、空調設備内に設けられていても良い。
【0035】
電力変換装置51は、例えばコンバータおよびインバータの少なくとも一方の機能を備える機器であり、この電力変換装置51にはコンプレッサ52が接続される。この電力変換装置51は、電力制御装置53から与えられる制御信号に従って、電力系統S側に対する電力の入出力およびコンプレッサ52への電力供給を行なう。
【0036】
電力制御装置53は、電力需要家Cに係る計器用変成器VTからの電圧信号VLにより電圧値を測定し、変流器CTからの電流信号ILにより電流値を測定する。電力制御装置53は、これらの測定した値と、制御指令値、例えば電力変換装置51内の回路およびコンプレッサ52の特性値である消費電力とに基づいて電力変換装置51からコンプレッサ52への電力の出力を制御したり、電力系統Sから電力変換装置51への交流電力の入力を制御したりする。
【0037】
電力需要家Cと同様に、電力需要家D内には、上記の冷凍および冷蔵設備が設けられる。この設備は、電力需要家Dに係る建物または敷地の外部の変圧器Mを介して電力系統Sと連系される。冷凍および冷蔵設備には、電力変換装置61、コンプレッサ62、および電力制御装置63が設けられる。電力需要家D内には、運転モード変更指令送受信装置64がさらに設けられる。
また、電力需要家Dにおける上記構成は一例であり、例えば上記の電力変換装置61の内部に電力制御装置63を備えても良いし、冷蔵および冷凍設備の外部に電力制御装置63が備えられる構成でもよい。運転モード変更指令送受信装置64が冷凍および冷蔵設備の内部や電力需要家Dの外部に備えられる構成でも良い。変圧器Mは、電力需要家D内に備えられても良い。
【0038】
電力制御装置63を構成する個々の機能および運転モード変更指令送受信装置64を構成する機能は、ハードウェアとして構成されてもよいが、その一部または全部がソフトウェアとして構成されてもよい。
【0039】
電力系統Sから電力需要家Dに係る変圧器Mに供給された電力は電力変換装置61に供給される。この変圧器Mと電力変換装置61との間かつ電力需要家D内の電気回路には計器用変成器VTと変流器CTと図示しない開閉装置が設けられる。
【0040】
すなわち、電力変換装置61は、電力需要家Dに係る変圧器Mを介して電力系統と接続される。この変圧器Mと電力変換装置61とを繋ぐ電気回路には電力需要家Dに係る計器用変成器VTおよび変流器CTが設置される。
この変流器CTは、電力変換装置61の出力電流に応じた電流信号ILを出力する。なお、本実施形態の変形例として、計器用変成器VTおよび整流器CTの少なくとも一方が冷凍、冷蔵設備に内蔵されていても良い。
【0041】
電力制御装置63は、電力需要家Dに係る計器用変成器VTからの出力VLにより電圧値を測定し、変流器CTからの出力ILにより電流値を測定する。電力制御装置63は、これらの測定した値と、制御指令値(図示せず)とに基づいて電力変換装置61からコンプレッサ62への電力の出力を制御したり、電力系統Sから電力変換装置61への交流電力を制御したりする。
【0042】
電力変換装置61および電力制御装置63のその他の機能は上記電力変換装置51および電力制御装置53の機能と同様であり、上記電力変換装置51および電力制御装置53に係る説明におけるコンプレッサ52をコンプレッサ62に読み替えることで説明される。
【0043】
次に、上記運転モードの変更(切り替え)について説明する。
送配電事業者内の演算装置10の運転モード変更指令出力部11は、各電力需要家に対し、当該電力需要家内の電力変換装置の運転モードを変更する指令である運転モード変更指令を出力する。この運転モード変更指令には変更先の運転モードの情報が含まれる。
【0044】
送配電事業者に係る運転モード変更指令出力部11は、電力系統Sの周波数調整能力の不足が予想される場合などに、電力需要家内の運転モード変更指令送受信装置、例えば電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34に、当該電力需要家A内の電力変換装置31の運転モード変更指令を出力することで、電力系統Sの周波数調整への協力を当該電力需要家Aに要請する。
【0045】
次に、送配電事業者からの運転モード変更指令に応じた、各電力需要家での電力変換装置の運転モードの変更に係る手順について説明する。ここでは上記の電力需要家Aでの電力変換装置の運転モードの変更に係る手順を例として説明するが、電力需要家B,C,およびDについても同様である。
【0046】
電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34は、上記送配電事業者に係る運転モード変更指令出力部11からの運転モード変更指令を受信する。
この運転モード変更指令の内容は、電力需要家Aの管理者が所持または管理する端末装置、例えばスマートフォンまたはパーソナルコンピュータ(PC)の表示装置に表示させることができる。また、この運転モード変更指令の内容は、電力需要家A内に設けられるスマート分電盤の表示装置に表示させることもできる。運転モード変更指令の内容は、電力制御装置33の表示装置(図示せず)に表示させても良い。この運転モード変更指令の内容は、視覚的に表示する代わりに、音声、音、振動などで管理者に伝えても良い。
【0047】
電力需要家Aの管理者が、上記表示された運転モード変更指令を確認し、上記端末装置などへの操作により運転モード変更を承諾すると、運転モード変更指令送受信装置34から電力制御装置33に、電力変換装置31に係る運転モード変更指令が出力される。
電力需要家Aの管理者が、運転モード変更指令が送信される前に、運転モード変更を承諾している場合、運転モード変更指令送受信装置34は、運転モード変更指令を受信すると、電力制御装置33に、電力変換装置31に係る運転モード変更指令を出力する。
なお、この運転モード変更指令で示される、変更先の運転モードの候補が複数種類の候補である場合、上記管理者による上記端末装置などへの操作により選択された種類の運転モード変更指令が電力制御装置33に出力される。
【0048】
運転モード変更指令を受けた電力制御装置33は、電力変換装置31の運転モードを運転モード変更指令で示された変更先の運転モードに切り替える。
例えば、電力需要家A内の充放電設備の電力制御装置33は、以下のように電力変換装置31の運転モードを切り替えることができる。
【0049】
電力需要家A内の充放電設備内の電力制御装置33は、電力変換装置31の運転モードを、二次電池32に対する充電指令値および/または放電指令値に従った運転モードから、電力系統Sの交流の電気回路の電圧などの周波数の変動(電力系統Sの周波数と称することがある。)に応じて二次電池32に係る充放電電力を制御する周波数調整運転モードおよび/または電力系統Sの周波数の変動もしくは電力系統Sの交流の電気回路の電圧などの電気量の位相の変動(電力系統Sの位相の変動と称することがある。)に応じた慣性応答を模擬する慣性運転モードに切替えることができる。
【0050】
電力需要家B内の燃料電池設備内の電力制御装置43は、電力変換装置41の運転モードを、燃料電池42に対する発電指令値に従った運転モードから、電力系統Sの周波数の変動に応じて燃料電池42に係る発電電力を制御する周波数調整運転モードおよび/または電力系統Sの周波数もしく位相の変動に応じた慣性応答を模擬する慣性運転モードに切り替えることができる。
【0051】
電力需要家C内の空調設備内の電力制御装置53は、電力変換装置51の運転モードを、コンプレッサ52に係る温度制御指令値に従った運転モードから、当該運転モードに、電力系統Sの周波数の変動に応じてコンプレッサ52に係る消費電力を制御する周波数調整運転モードおよび/または電力系統Sの周波数もしくは位相の変動に応じた慣性応答を模擬する慣性運転モードが付加された運転モードに切り替えることができる。
【0052】
電力需要家D内の冷凍および冷蔵設備内の電力制御装置63は、電力変換装置61の運転モードを、コンプレッサ62に係る温度制御指令値に従った運転モードから、当該運転モードに、電力系統Sの周波数の変動に応じてコンプレッサ62に係る消費電力を制御する周波数調整運転モードおよび/または電力系統Sの周波数もしくは位相の変動に応じた慣性応答を模擬する慣性運転モードが付加された運転モードに切り替えることができる。
【0053】
図2は、第1の実施形態に係る電力制御システムの各部の詳細な構成の一例を示す図である。ここでは、電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34および電力制御装置33などの詳細について説明するが、他の電力需要家B,C,およびDにおける各部についても同様である。
この図2では、電力需要家A内の充放電設備内の電力変換装置31の上記の各種の運転モードのうち、いわゆる通常の運転モード以外の、慣性運転モードおよび周波数調整運転モードに係る構成が示される。
【0054】
図2に示されるように、送配電事業者内の演算装置10の運転モード変更指令出力部11は、慣性運転指令部11aおよび周波数調整運転指令部11bを有する。
【0055】
電力需要家Aの運転モード変更指令送受信装置34は、指令受信部34a、指令選択部34b、承認部34c、および指令送信部34dを有する。指令選択部34bはスイッチSW1,SW2,SW3,SW4,SW5,およびSW6を有する。承認部34cは、スイッチSW11およびSW12を有する。
【0056】
また、図2に示されるように、電力需要家A内の充放電設備における電力制御装置33は、指令受信部33a、慣性運転調整部33b、周波数調整運転調整部33c、電力変換装置制御部33d、手動指令設定部33e、実運転状態演算部(第1の運転状態演算部)33f、仮想運転状態演算部(第2の運転状態演算部)33g、運転状態比較演算部33h、運転状態比較データ蓄積部(電力演算部)33i、および蓄積データ送信部33jを有する。
また、慣性運転調整部33bと電力変換装置制御部33dとの間の電気回路にはスイッチSW21,SW22,およびSW23が設けられ、周波数調整運転調整部33cと電力変換装置制御部33dとの間の電気回路にはスイッチSW24,SW25,およびSW26が設けられる。
【0057】
上記演算装置10および20は、コンピュータとして構成され得る装置で、プログラム(program)を実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(processor)を備え、およびRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置、および液晶ディスプレイ等の出力装置、等が内蔵または接続される装置であってよい。図2に示される、電力需要家A内の電力制御装置33内の各部および運転モード変更指令送受信装置34内の各部も同様である。運転モード変更指令送受信装置34の各種機能は、スマートメータ、スマート配電盤、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等に備えられても良い。また、送配電事業者から送信する信号、運転モード変更指令送受信装置から送信する信号は、無線でも良い。
また、運転モード変更指令送受信装置34のスイッチが手動で切り替え可能なもので、送配電事業者から送信する運転モード変更指令が電話、電子メール等であって、当該電話、電子メール等を受けた管理者が指令選択部34bのスイッチおよび/または承認部34cのスイッチを手動で切り替えても良い。
【0058】
送配電事業者内の演算装置10内の運転モード変更指令出力部11の慣性運転指令部11aは、慣性運転指令A,B,およびCのいずれかを出力することができる。また、運転モード変更指令出力部11の周波数調整運転指令部11bは、周波数調整運転指令A,B,およびCのいずれかを出力することができる。
【0059】
また、電力制御装置33は、電力変換装置の運転モードの切り替え前の運転状態を継続した場合の仮想運転状態と運転モードの切り替え後の実運転状態との差分、例えば電力変換装置31の仮想有効電力と実有効電力の差分のデータを送配電事業者内の演算装置10の寄与量演算部14に出力する。この差分のデータの計算については後述する。
【0060】
寄与量演算部14は、電力制御装置33から入力したデータに基づいて、電力系統Sの周波数調整に対する電力需要家Aの寄与量、すなわち電力系統Sの周波数変動を抑制するための協力の要請に基づく、電力需要家Aの寄与量を演算し、送配電事業者内の演算装置10の還元量演算部12および小売電気事業者内の演算装置20の電気料金演算部21に出力する。
【0061】
還元量演算部12は、寄与量演算部14から出力された寄与量およびスマートメータ等から送信される電力需要家Aによる電力使用量等のデータ(図示せず)に基づいて、この寄与量が考慮された、各電力需要家Aに係る還元量、例えば電力使用量等に基づく通常の還元量から寄与量に相当する金額が割引かれた電気料金などを演算し、この演算の結果を還元量送信部13に出力する。
還元量送信部13は、還元量演算部12により演算された還元量の情報を小売電気事業者内の演算装置20の電気料金演算部21に送信する。
【0062】
電気料金演算部21は、還元量送信部13から送信された情報で示される還元量と、送配電事業者から送信される電力需要家Aによる電力使用量のデータ(図示せず)とに基づいて、電力需要家Aに係る電気料金、例えば電力使用量等に基づく通常の電気料金から寄与量分が割引かれた料金など、を演算し、この演算の結果を電気料金請求部22に出力する。
【0063】
電気料金請求部22は、電気料金演算部21から出力された演算結果で示される電気料金データを、電力需要家A内の図示しない装置に送信することにより、電気料金を電力需要家Aに請求する。ここでは電力需要家Aに係る各種料金の演算などについて説明したが、他の電力需要家B,C,およびDに係る各種料金についても同様に演算できる。なお、電気料金請求部22が電気料金データを送信する先は、電力需要家Aが指定した金融機関、クレジットカード会社等に設置される装置(図示せず)でも良い。
【0064】
次に、図2に示される、電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34および電力制御装置33を含む、電力需要家A内の各部の構成および機能について説明する。ここでは電力需要家Aを例として説明するが、他の電力需要家B,C,およびD内の各部の構成および機能についても同様である。
【0065】
図2に示された例では、運転モード変更指令出力部11から出力される運転モード変更指令の要素は、電力系統Sの周波数もしくは位相の変動に応じた慣性運転指令および電力系統Sの周波数の変動に応じた周波数調整運転指令でなる2つの要素である。電力制御装置33は、慣性運転指令が入力されると、電力系統Sの周波数もしくは位相の変動に応じて電力変換装置31の入力および/または出力が同期機の慣性応答と近似した応答(擬似慣性応答)になるように電力変換装置31を制御する。また、電力制御装置33は、周波数調整運転指令が入力されると、電力系統Sの周波数の変動に応じて電力変換装置31の入力および/または出力を制御する。
【0066】
また、図2に示された例では、各要素の水準は、指令A(慣性運転指令Aまたは周波数調整運転指令A)、指令B(慣性運転指令Bまたは周波数調整運転指令B)、および指令C(慣性運転指令Cまたは周波数調整運転指令C)でなる3つの水準である。なお、いずれかの水準に、慣性運転停止、周波数調整運転停止の指令を含んでも良いし、いずれの水準の指令も出力されていない場合に、慣性運転や周波数調整運転を停止しても良い。
【0067】
電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34内の指令受信部34aは、送配電事業者内の演算装置10の運転モード変更指令出力部11から出力される運転モード変更指令を受信する。この受信された運転モード変更指令の内容は、電力需要家A内の表示装置に表示され得る。
【0068】
次に、指令選択部34bに係る構成および機能について説明する。
上記のように、運転モード変更指令出力部11からは、3種類の慣性運転指令と、3種類の周波数調整運転指令が送信される。電力需要家Aの運転モード変更指令送受信装置34の表示装置(図示せず)には、これらの3種類の慣性運転指令と3種類の周波数調整運転指令が表示される。
電力需要家Aに係る管理者が指令選択部34b内のスイッチSW1~SW3のいずれかを操作することで、送配電事業者内の演算装置10の慣性運転指令部11aから送信された各種の慣性運転指令のうち承認部34cに出力される指令が、電力需要家Aによる所望の種類の指令として選択され得る。ここでは、上記操作により、各々の慣性運転指令のうち1つが選択され得る。
【0069】
具体的には、第1に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW1が操作されることで、慣性運転指令部11aから送信された慣性運転指令Aが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
第2に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW2が操作されることで、慣性運転指令部11aから送信された慣性運転指令Bが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
第3に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW3が操作されることで、慣性運転指令部11aから送信された慣性運転指令Cが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
【0070】
例えば、慣性運転指令Aは、慣性応答「大」、慣性運転指令Bは、慣性応答「中」、慣性運転指令Cは、慣性応答「小」の運転モード指令である。慣性応答「大」の場合、周波数安定化に対する寄与量が大きい代わりに、電力変換装置31の入出力変動幅が大きくなる。慣性応答「小」の場合、周波数安定化に対する寄与量が小さい代わりに、電力変換装置31の入出力変動幅が小さくなる。慣性応答「中」の場合、電力変換装置31の入出力変動幅は、慣性応答「大」と慣性応答「小」の間になる。
【0071】
また、電力需要家Aに係る管理者が指令選択部34b内のスイッチSW4~SW6のいずれかを操作することで、送配電事業者内の演算装置10の周波数調整運転指令部11bから送信された各種の周波数調整運転指令のうち承認部34cに出力される指令が、電力需要家Aによる所望の種類の指令として選択され得る。ここでは、上記操作により、各々の周波数調整運転指令のうち1つが選択され得る。
【0072】
具体的には、第1に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW4が操作されることで、周波数調整運転指令部11bから送信された周波数調整運転指令Aが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
第2に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW5が操作されることで、周波数調整運転指令部11bから送信された周波数調整運転指令Bが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
第3に、電力需要家Aに係る管理者により指令選択部34b内のスイッチSW6が操作されることで、周波数調整運転指令部11bから送信された周波数調整運転指令Cが、承認部34cに出力される指令として選択され得る。
【0073】
例えば、周波数調整運転指令Aは、調整能力「大」、周波数調整運転指令Bは、調整能力「中」、周波数調整運転指令Cは、調整能力「小」の運転モード指令である。調整能力「大」の場合、周波数安定化に対する寄与量が大きい代わりに、電力変換装置31の入出力変動幅が大きくなる。調整能力「小」の場合、周波数安定化に対する寄与量が小さい代わりに、電力変換装置31の入出力変動幅が小さくなる。調整能力「中」の場合、電力変換装置31の入出力変動幅は、調整能力「大」と調整能力「小」の間になる。
【0074】
次に、承認部34cに係る構成および機能について説明する。
電力需要家Aに係る管理者が承認部34c内のスイッチSW11を操作することで、指令選択部34b内のスイッチSW1~SW3のいずれかの操作により選択された慣性運転指令A,B,またはCは、指令送信部34dを介して電力制御装置33に送信される指令として承認される。選択操作、承認操作でなる2段階操作が不要な場合、すなわち選択操作のみで良い場合、承認部34cのSW11は、省略しても良いし、常時「入」の状態でも良い。
また、電力需要家Aに係る管理者が承認部34c内のスイッチSW12を操作することで、指令選択部34b内のスイッチSW4~SW6のいずれかの操作により選択された周波数調整運転指令A,B,またはCは、指令送信部34dを介して電力制御装置33に送信される指令として承認される。選択操作、承認操作でなる2段階操作が不要な場合、承認部34cのSW12は、省略しても良いし、常時「入」の状態でも良い。
【0075】
また、電力需要家Aに係る管理者が承認部34c内のスイッチSW11およびSW12をともに操作することで、上記スイッチSW1~SW3のいずれかの操作により選択された慣性運転指令および上記スイッチSW4~SW6のいずれかの操作により選択された周波数調整運転指令は、指令送信部34dを介して電力制御装置33に送信される指令としてともに承認される。
【0076】
運転モード変更指令送受信装置34内の指令送信部34dは、承認部34cにより承認された指令、すなわち慣性運転指令および周波数調整運転指令の少なくとも一方を、電力制御装置33の指令受信部33aに送信する。なお、選択操作、承認操作でなる2段階操作が不要な場合、承認部34cは、省略しても良い。
【0077】
次に、電力制御装置33内の各部の構成および機能について説明する。
電力制御装置33の指令受信部33aは、運転モード変更指令送受信装置34内の指令送信部34dから送信された指令を受信する。
【0078】
電力制御装置33内の慣性運転調整部33bの内部メモリには慣性運転調整関数A,B,およびCに係る情報が記憶されている。慣性運転調整関数A,B,およびCの各々は、用いられる関数および定数のうち少なくとも関数が異なる。慣性運転調整部33bは、電力制御装置33内のスイッチSW21,SW22,およびSW23に接続され、指令受信部33aからの信号により、これらのスイッチのいずれかが電力需要家Aに係る管理者により操作されることで、慣性運転調整関数A,B,およびCのいずれかを電力変換装置制御部33dに出力する。
なお、慣性運転調整部33bの内部に記憶されている情報は、運転モード変更指令送受信装置34からの指令により変更可能なものでも良いし、あらかじめ設定され変更不能なものでも良い。
【0079】
電力制御装置33内の周波数調整運転調整部33cの内部メモリには周波数調整関数(周波数調整運転調整関数とも称される)A,B,およびCに係る情報が記憶されている。周波数調整関数A,B,およびCの各々は、用いられる関数および定数のうち少なくとも関数が異なる。周波数調整運転調整部33cは、電力制御装置33内のスイッチSW24,SW25,およびSW26に接続され、指令受信部33aからの信号により、これらのスイッチのいずれかが電力需要家Aに係る管理者により操作されることで、周波数調整関数A,B,およびCのいずれかを電力変換装置制御部33dに出力する。
なお、周波数調整運転調整部33cの内部に記憶されている情報は、運転モード変更指令送受信装置34からの指令により変更可能なものでも良いし、あらかじめ設定され変更不能なものでも良い。
【0080】
次に、慣性運転調整関数および周波数調整関数の選択について説明する。
指令受信部33aは、上記受信した指令に基づいて、電力制御装置33内のスイッチSW21~SW26のいずれかをONにすることで、慣性運転指令の調整関数および/または周波数調整運転指令の調整関数のうち電力変換装置制御部33dに出力される調整関数を選択する。
【0081】
慣性運転調整関数の選択について、具体的には、第1に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された慣性運転指令Aを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW21をONにすることで、慣性運転調整関数Aを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0082】
第2に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された慣性運転指令Bを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW22をONにすることで、慣性運転調整関数Bを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0083】
第3に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された慣性運転指令Cを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW23をONにすることで、慣性運転調整関数Cを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0084】
周波数調整関数の選択について、具体的には、第1に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された周波数調整運転指令Aを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW24をONにすることで、周波数調整関数Aを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0085】
第2に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された周波数調整運転指令Bを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW25をONにすることで、周波数調整関数Bを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0086】
第3に、承認部34cにより承認されて指令送信部34dにより送信された周波数調整運転指令Cを受信したときは、指令受信部33aは、電力制御装置33内のスイッチSW26をONにすることで、周波数調整関数Cを電力変換装置制御部33dに出力される調整関数として選択する。
【0087】
電力変換装置制御部33dは、上記のように選択された調整関数に従って、電力変換装置31を制御する。
図2に示された例では、電力需要家Aにより慣性運転指令Bの承認に応じてスイッチSW22がONにされることで慣性運転調整関数Bが選択され、かつ周波数調整運転指令Aの承認に応じてスイッチSW24がONにされることで周波数調整関数Aが選択される。
【0088】
電力変換装置制御部33dは、上記のように選択された慣性運転調整関数に応じた慣性運転モードおよび/または上記のように選択された周波数調整関数に応じた周波数調整運転モードに従って、電力変換装置31の入力および/または出力を制御する。これにより、電力系統Sなどの周波数の変動の抑制に寄与することができる。
そのため、送配電事業者は、電力系統Sなどの周波数を調整するために調達される電力量である電力調達量を減らすことができるので、電力系統Sなどの電気回路の運用を合理化することができる。
【0089】
電力制御装置33の手動指令設定部33eは、電力需要家Aに係る管理者等の手動操作により、SW21からSW26を操作して慣性運転指令A~Cのいずれか、および/または周波数調整運転指令A~Cのいずれかを選択することが可能な機能を有する。
また、手動指令設定部33eは、電力需要家Aに係る管理者等の手動操作により、慣性運転指令A~Cおよび周波数調整運転指令A~Cの関数および/または定数を変更することが可能な機能を有する。
例えば、電力需要家Aが送配電事業者等と電話連絡による周波数安定化協力の契約を結んでいる場合、電力需要家Aに係る管理者等は、送配電事業者等から電話にて周波数安定化協力の指令を受け、手動指令設定部33eによりSW21からSW26を操作したり、関数、定数を変更したりする。
【0090】
また、電力需要家Aの運転モード変更指令送受信装置34に指令送信部34dが無い場合、電力需要家Aに係る管理者等は、運転モード変更指令送受信装置34に表示された指令に従い、手動指令設定部33eによりSW21からSW26を操作したり、関数、定数を変更したりする。
また、運転モード変更指令送受信装置34の指令送信部34dの故障などの理由で、指令受信部33aが慣性運転指令A~Cのいずれか、および/または周波数調整運転指令A~Cを受信できずに電力制御装置33内のスイッチSW21~26のいずれかをONにする操作を行なえないときに、電力需要家Aに係る管理者等は、運転モード変更指令送受信装置34に表示された指令に従い、手動指令設定部33eを操作し、受信した指令を指令受信部33aに出力する。
【0091】
また、指令受信部33a自体の不具合または故障などが発生したなどの理由で、指令受信部33aが電力制御装置33内のスイッチSW21~26のいずれかをONにする操作を行なえないときは、電力需要家Aに係る管理者等は、運転モード変更指令送受信装置34に表示された指令に従い、手動指令設定部33eを操作し、電力制御装置33内のスイッチSW21~SW26のいずれかをONにすることで、慣性運転指令の調整関数および/または周波数調整運転指令の調整関数のうち電力変換装置制御部33dに出力される調整関数を選択したり、関数や定数を変更したりする。
なお、本実施形態では電力需要家Aに係る管理者等が運転モード変更指令送受信装置34に表示された指令に従い、手動指令設定部33eを操作する方法について説明したが、上記管理者等は、表示された指令の代わりに、音声、音、振動による指令等、表示された指令以外の指令に従い、手動指令設定部33eを操作しても良い。
【0092】
次に、上記の電力変換装置の運転モードの切り替え前の運転状態と運転モードの切り替え後の運転状態との差分に基づく寄与量の演算について説明する。
電力制御装置33の実運転状態演算部33fは、計器用変成器VTにより出力された電圧信号VLと、変流器CTにより出力された電流信号ILとを測定し、この測定の結果に基づいて、電力変換装置31の実際の運転状態を示す電気量、例えば、周波数、電圧振幅、電圧位相、電流振幅、電流位相、制御用電圧位相基準、有効電力、無効電力、皮相電力の少なくとも1つを演算する。
【0093】
電力制御装置33の仮想運転状態演算部33gは、計器用変成器VTにより出力された電圧信号VLと、変流器CTにより出力された電流信号ILを測定する。
仮想運転状態演算部33gは、この測定の結果と、電力制御装置33内のスイッチSW21~23のオンオフ状態と、電力制御装置33内のスイッチSW24~26のオンオフ状態とに基づいて、電力変換装置31の運転モードが通常運転モードであった場合の、電力変換装置31の仮想的な運転状態を示す電気量、例えば、周波数、電圧振幅、電圧位相、電流振幅、電流位相、制御用電圧位相基準、有効電力、無効電力、皮相電力の少なくとも1つを演算する。
また、仮想運転状態演算部33gは、一部の電気量、例えば、電圧信号VLを測定せずに定格値や設定値で一定と仮定した上で、この定格値や設定値に係る電気量以外の電気量の測定の結果と、各種スイッチのオンオフ状態とに基づいて上記電気量を演算してもよい。
仮想運転状態演算部33gは、電力変換装置31の運転状態が変更された後の、交流電気回路と電力変換装置31との間に係る電気量、および運転状態が変更される前の、交流電気回路と電力変換装置31との間に係る仮想的な電気量に基づいて、電力変換装置31の運転状態が変更されなかった場合の電力変換装置31の仮想的な運転状態を示す電気量を演算することができる。
【0094】
電力制御装置33の運転状態比較演算部33hは、実運転状態演算部33fによる演算結果と、仮想運転状態演算部33gによる演算結果とを比較することで、両者の電気量の差分を、例えば、周波数、電圧振幅、電圧位相、電流振幅、電流位相、制御用電圧位相基準、有効電力、無効電力、皮相電力の少なくとも一つの電気量の差分を演算する。この差分は、運転モードの変更に伴う各種電気量の差分に相当する。
【0095】
電力制御装置33の運転状態比較データ蓄積部33iは、記憶装置を備え、運転状態比較演算部33hによる演算結果である運転状態比較データに対する積分演算を行なうことで、運転モードの変更前後における、電気量の差分、すなわち上記周波数変動の抑制への協力の要請に基づいて変動した上記電気量の差分を演算し、この演算結果を蓄積する。差分の代わりに、倍率、比率などの量を用いても良い。
【0096】
電力制御装置33の蓄積データ送信部33jは、運転状態比較データ蓄積部33iに蓄積された演算結果を、送配電事業者内の演算装置10の寄与量演算部14に送信する。
【0097】
このように、電力制御装置33の蓄積データ送信部33jからの演算結果が送信されることで、上記のように、寄与量演算部14は、電力系統Sの周波数調整に対する電力需要家Aの寄与量を演算できる。例えば、電力需要家Aの実際の消費電力量(有効電力の積分値)が80[kWh]、運転モードを変更しなかったと仮定した場合の仮想消費電力量(仮想有効電力の積分値)が100[kWh]であった場合、電力需要家Aは、20[kWh]分の周波数変動抑制に寄与したことになる。
【0098】
次に、上記で説明した、運転モードの変更から電気料金の演算までの手順について説明する。図3は、第1の実施形態に係る電力制御システムによる運転モードの変更から電気料金の演算までの手順の一例を示すフローチャートである。
まず、送配電事業者内の運転モード変更指令出力部11から、各電力需要家内の運転モード変更指令送受信装置、例えば電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34へ、運転モード変更指令が送信される(S11)。
各電力需要家内の運転モード変更指令送受信装置、例えば電力需要家A内の運転モード変更指令送受信装置34が、運転モード変更指令を受信する(S12)。
【0099】
電力需要家が周波数変動抑制に協力するとき(S13のYes)、この電力需要家は、運転モード変更指令送受信装置で所望の運転モードを選択し、運転モード変更を承認すると、運転モード変更指令送受信装置は、電力制御装置、例えば電力需要家A内の電力制御装置33に、選択した運転モードの指令を送信する(S14)。
【0100】
この電力制御装置は、受信した運転モードの指令に基づいて調整関数を選択し、電力変換装置、例えば電力需要家A内の電力変換装置31を制御する(S15)。
電力制御装置は、実運転状態のデータと、運転モードを変更しなかった場合の仮想運転状態のデータを比較した結果(差、比率など)を蓄積し、送配電事業者内の寄与量演算部14に送信する(S16)。
【0101】
また、電力需要家が周波数変動の抑制に協力しないとき(S13のNo)、この電力需要家は、運転モード変更指令に対する制御なしに運転を継続する(S17)。
この電力制御装置は、実運転状態のデータと、仮想運転状態のデータを比較したデータを蓄積し、送配電事業者内の寄与量演算部14に送信する(S18)。但し、運転状態比較演算部の演算が差分を求める演算の場合、実運転状態のデータと仮想運転状態のデータが等しいので、差が0になる。
【0102】
寄与量演算部14は、S16またはS18により各電力需要家内の蓄積データ送信部から受信した運転状態のデータに基づき、周波数変動抑制への各電力需要家の寄与量があるときは、これを算出し、この寄与量を送配電事業者内の還元量演算部12、小売電気事業者内の電気料金演算部21へ送信する(S19)。
【0103】
還元量演算部12は、寄与量演算部14から受信した寄与量および各電力需要家による電力使用量等に基づき、各電力需要家に係る還元量(料金割引、キャッシュバック、ポイント還元など)、すなわち周波数変動の抑制に協力した電力需要家への対価を演算する(S20)。
還元量送信部13は、還元量演算部12による還元量の演算結果を小売電気事業者内の電気料金演算部21へ送信する(S21)。
電気料金演算部21は、還元量送信部13から送信された各電力需要家に係る還元量および各電力需要家による電力使用量等に基づき、各電力需要家へ請求する電気料金を演算する(S22)。
すなわち、この電気料金演算部21は、寄与量演算部14から受信した寄与量および各電力需要家による電力使用量等に基づき、各電力需要家に係る還元量(料金割引、キャッシュバックなど)を反映した電気料金を演算する。
【0104】
本実施形態では、小売電気事業者は、電力需要家における寄与量に応じた還元量に基づいて計算された、低減(割引)された電気料金を電力需要家に請求したり、需要家に、電気料金またはその他の料金に充当可能なポイント等で還元したりすることができる。電力需要家では、電力使用量等に基づく通常の電気料金を寄与量に応じて低減させたり、ポイント等で受け取ったりすることができる。
【0105】
すなわち、本実施形態によれば、電力系統の周波数調整能力(慣性応答の模擬、負荷入力調整)の不足が予想される時に、通常運転時に周波数調整に寄与しない発電設備、二次電池、負荷等を周波数調整に用いることができるので、電力系統の周波数変動を抑制することができる。
また、周波数調整用の発電設備、周波数調整用電力を減らすことができるので、電力系統運用を合理化することができる。さらに需要家は、寄与量に応じてインセンティブを得ることができる。
上記により、本実施形態では、電力系統の周波数変動の適切な抑制を実現することができる。
【0106】
図1および図2に示された、送配電事業者内の運転モード変更指令出力部11、還元量演算部12、および還元量送信部13の一部または全部は、送配電事業者以外の事業者、例えば小売電気事業者の設備に備えられていても良い。また、図1および図2に示された寄与量演算部14、電気料金演算部21、および電気料金請求部22の一部または全部は、小売電気事業者以外の事業者に備えられていても良い。また、図1および図2に示される寄与量演算部14は、電力需要家内に備えられていても良い。また、運転状態比較演算部、例えば図2に示される運転状態比較演算部33hは、運転状態を比較した結果から寄与量を演算し出力し、運転状態比較データ蓄積部、例えば図2に示される運転状態比較データ蓄積部33iは、運転状態比較データの代わりに寄与量データを蓄積し出力しても良い。
また、上記の寄与量に対する電力需要家への対価は、上記説明した電気料金の割引、ポイント還元などに限らず、例えば、電力需要家への現金、品物、サービスによる還元などでも良い。
【0107】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態に係る電力制御システムが適用された電力系統の構成の一例を示す図である。この第2の実施形態では、第1の実施形態で示される、各電力需要家内の電力制御装置に備えられる慣性運転調整部を電力制御装置の外部に慣性運転調整装置とした備えたものである。
【0108】
第1の実施形態では、図2に示されるように、電力需要家А内の電力制御装置33に慣性運転調整部33bが備えられるが、第2の実施形態では、電力制御装置33に慣性運転調整部33bが設けられず、一方で、図4に示されるように、慣性運転調整部33bと同じ機能を有する慣性運転調整装置35が、電力需要家А内における電力制御装置33の外部に備えられる。電力需要家А内でのその他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0109】
同様に、電力需要家Bでは、第1の実施形態にて、この電力需要家B内の電力制御装置43に備えられる慣性運転調整部と同じ機能を有する慣性運転調整装置45が、電力需要家B内における電力制御装置43の外部に備えられる。電力需要家B内でのその他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0110】
同様に、電力需要家Cでは、第1の実施形態にて、この電力需要家C内の電力制御装置53に備えられる慣性運転調整部と同じ機能を有する慣性運転調整装置55が、電力需要家C内における電力制御装置53の外部に備えられる。電力需要家C内でのその他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0111】
同様に、電力需要家Dでは、第1の実施形態にて、この電力需要家D内の電力制御装置63に備えられる慣性運転調整部と同じ機能を有する慣性運転調整装置65が、電力需要家D内における電力制御装置63の外部に備えられる。電力需要家D内でのその他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0112】
また、上記では、各電力需要家内の慣性運転調整部と同じ機能を有する慣性運転調整装置が、当該電力需要家内における電力制御装置の外部に備えられる構成を説明したが、これに限らず、例えば、各電力需要家内の周波数調整運転調整部と同じ機能を有する周波数調整装置が、当該電力需要家内における電力制御装置の外部に備えられる構成をなしてもよい。電力変換装置内のその他の各部についても同様である。
上記した実施形態では、送配電事業者から需要家へ指令が送信される例を説明したが、小売電気事業者またはアグリゲータなどから需要家へ指令が送信されても良い。
上記実施形態では、需要家から送配電事業者に蓄積データが送信される例を説明したが、需要家から小売電気事業者またはグリゲータなどに蓄積データが送信されても良い。
上記実施形態では、寄与量演算部および還元量演算部が送配電事業者内に備えられる例を説明したが、寄与量演算部および還元量演算部は、小売電気事業者またはアグリゲータ内に備えられても良い。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
10,20…演算装置、11…運転モード変更指令出力部、11a…慣性運転指令部、11b…周波数調整運転指令部、12…還元量演算部、13…還元量送信部、14…寄与量演算部、21…電気料金演算部、22…電気料金請求部、31,41,51,61…電力変換装置、32…二次電池、33,43,53,63…電力制御装置、33a,34a…指令受信部、33b…慣性運転調整部、33c…周波数調整運転調整部、33d…電力変換装置制御部、33e…手動指令設定部、33f…実運転状態演算部、33g…仮想運転状態演算部、33h…運転状態比較演算部、33i…運転状態比較データ蓄積部、33j…蓄積データ送信部、34,44,54,64…運転モード変更指令送受信装置、34b…指令選択部、34c…承認部、34d…指令送信部、35,45,55,65…慣性運転調整装置、42…燃料電池、52,62…コンプレッサ。
図1
図2
図3
図4