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特開2023-102753廃プラスチック成形物の製造方法、及び廃プラスチック成形物の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102753
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】廃プラスチック成形物の製造方法、及び廃プラスチック成形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/87 20190101AFI20230718BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20230718BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20230718BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20230718BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230718BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20230718BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20230718BHJP
   B29B 7/58 20060101ALI20230718BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20230718BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B29C48/87
B29C48/285
B29C48/395
B29C48/345
B29C48/25
B29C48/05
B29C48/80
B29B7/58
B29B7/38
B29B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180581
(22)【出願日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022003325
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関屋 政洋
(72)【発明者】
【氏名】小水流 広行
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA50
4F201AR06
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK73
4F201BL09
4F201BL10
4F201BL37
4F201BL42
4F207AA50
4F207AG14
4F207AK02
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK45
4F207KL64
4F207KM15
4F207KM16
4F207KW23
(57)【要約】
【課題】ノズルの冷却効率の低下を抑制することによって、廃プラスチック成形物の高密度化とメンテナンス負担の低減が可能な新規かつ優れた廃プラスチック成形物の製造装置、及び廃プラスチック成形物の製造方法を提供する。
【解決手段】廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、容器内で廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、容器の端部に設けられた面板に設けられて容器内と外部とを連通し、面板の容器の外方側の端面から突出されたノズルへ向かって、140℃以上に加熱された廃プラスチック原料を移送する移送工程と、ノズルの外周面に取り付けられた隔壁によってノズルの開口部側の領域と分画された、ノズルの面板側の領域の外周面へ冷媒を散布することによって、少なくとも廃プラスチック原料がノズル内を押し出される間、ノズルを100℃以下に冷却する冷却工程と、を含む、廃プラスチック成形物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、
前記容器内で前記廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、
前記容器の端部に設けられた面板に設けられて前記容器内と外部とを連通し、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルへ向かって、140℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を移送する移送工程と、
前記ノズルの外周面に取り付けられた隔壁によって前記ノズルの開口部側の領域と分画された、前記ノズルの前記面板側の領域の外周面へ冷媒を散布することによって、少なくとも前記廃プラスチック原料が前記ノズル内を押し出される間、前記ノズルを100℃以下に冷却する冷却工程と、
を含む、廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項2】
前記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射工程を更に有し、
前記面板を正面から見て、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放され、
前記ガス噴射工程では、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間内で前記ガスを噴射する、
請求項1に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程における前記冷媒として冷却水を噴射する、
請求項1又は2に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程では、前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面のうち、前記ノズルの外周面に前記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁と前記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する、
請求項1又は2に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項5】
内部に廃プラスチック原料を収容する容器と、
前記容器の前記内部において混練され、140℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を前記容器の端部に設けられた面板へ向かって移送する移送部と、
前記容器の前記端部の前記面板に設けられ、前記容器の前記内部と前記容器の外部とを連通し、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルと、
前記ノズルの外周面に取り付けられ前記ノズルの開口部側の領域と前記ノズルの前記面板側の領域とを分画する隔壁と、
前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面へ冷媒を散布することによって、前記ノズルを100℃以下に冷却する冷却部と、
を備える、廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項6】
冷却された前記ノズルから前記容器の外部に押し出されることによって成形された前記廃プラスチック原料を切断する回転刃を有する切断部を更に備え、
前記隔壁は、前記回転刃の回転面に沿って配置される、
請求項5に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項7】
前記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射部を更に有し、
前記面板を正面から見て、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放される、
請求項5又は6に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項8】
前記ノズルの外周面に前記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁を更に備え、
前記冷却部は、前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面のうち、前記仕切壁と前記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する、
請求項5又は6に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック成形物の製造方法、及び廃プラスチック成形物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみ等に含まれる廃プラスチックをリサイクルするために、コークス炉を使用して廃プラスチックを化学原料化する技術がある。コークス炉内に廃プラスチックを投入するためには、当該廃プラスチックを所定形状の成形物に成形する必要がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、所定温度以上に加熱された廃プラスチック原料に対して押出し成形を行い、廃プラスチック成形物を製造する際、押出成形中の連通部を所定温度以下に冷却する技術が開示されている。特許文献1によれば、廃プラスチック原料の溶融した表面を固化することができるので、押出し中又は連通部のノズルから押出された後の廃プラスチック成形物の膨張が抑制され、高密度化が実現される。
【0004】
また、下記特許文献2には、成形物が押し出される押出口を有するノズルと、押出口から離れた位置に設けられた遮蔽板と、押出口と遮蔽板との間に設けられた刃物とを有する押出し成形機が開示されている。下記特許文献2の押出し成形機では、成形物の押出方向における遮蔽板の手前に刃物が配置されている。このため、押出された成形物が遮蔽板に突き当たった状態で刃物が成形物を切断することにより、刃物と遮蔽板との間隔に相当する一定の長さを有する成形物を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-088120号公報
【特許文献2】特開2002-178384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1及び上記特許文献2の場合、廃プラスチック成形物の一部が切断時に飛散すると共に、飛散した廃プラスチック成形物の一部がノズルの表面に固着する場合があることが分かった。また、このため、冷却してもノズルの温度が下がり難くなり、結果、ノズルの冷却効率が低下する懸念があることが分かった。なお、本明細書では、廃プラスチック成形物の一部が固着する「ノズルの表面」とは、ノズルの外周面と開口部側の端面との両方を含む。
【0007】
通常、押し出された後の廃プラスチック成形物の一部の熱伝達率は、押出し中のノズルの熱伝達率より低い。このため、廃プラスチック成形物の一部がノズルの表面に固着すると、廃プラスチック成形物の一部がノズルの表面に固着しない場合と比べ、ノズルの冷却効率が低下する。ノズルの冷却効率が低下すると、ノズルの内部から押し出される廃プラスチック成形物の溶融表面を十分に固化できない。すなわち、廃プラスチック成形物の外周面(表面)に膜が形成され難い。結果、廃プラスチック成形物の密度が低下するという問題が生じる。
【0008】
この点、上記特許文献1及び上記特許文献2では、廃プラスチック成形物の一部がノズルの表面へ固着することを防止することは、一切考慮されていない。特に、上記特許文献2の遮蔽板は、あくまで、一定の長さを有する成形物を得ることを目的として配置されているに過ぎないため、ノズルと刃物との間に配置されていない。このため、上記特許文献2の遮蔽板によっても、廃プラスチック成形物の一部がノズルの表面へ固着することを防止することは難しい。
【0009】
また、ノズルの冷却効率が低下すると、冷却効率を改善するためのメンテナンスとして、例えば、廃プラスチック成形物の製造装置を一旦停止して、ノズルの表面に固着した成形物の一部を除去する清掃作業が必要となる。また、清掃作業に先立ち、ノズルを容器から取り外す準備作業も生じ得る。このため、メンテナンスの負担が大きくなるという問題も生じる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ノズルの冷却効率の低下を抑制することによって、廃プラスチック成形物の高密度化とメンテナンス負担の低減が可能な新規かつ優れた廃プラスチック成形物の製造装置、及び廃プラスチック成形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、上記容器内で上記廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、上記容器の端部に設けられた面板に設けられて上記容器内と外部とを連通し、上記面板の上記容器の外方側の端面から突出されたノズルへ向かって、140℃以上に加熱された上記廃プラスチック原料を移送する移送工程と、上記ノズルの外周面に取り付けられた隔壁によって上記ノズルの開口部側の領域と分画された、上記ノズルの上記面板側の領域の外周面へ冷媒を散布することによって、少なくとも上記廃プラスチック原料が上記ノズル内を押し出される間、上記ノズルを100℃以下に冷却する冷却工程と、を含む、廃プラスチック成形物の製造方法が提供される。
【0012】
上記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射工程を更に有し、上記面板を正面から見て、上記面板と上記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放され、上記ガス噴射工程では、上記面板と上記隔壁とによって挟まれた空間内で上記ガスを噴射してもよい。
【0013】
上記冷却工程における上記冷媒として冷却水を噴射してもよい。
【0014】
上記冷却工程では、上記ノズルの上記面板側の領域内の外周面のうち、上記ノズルの外周面に上記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁と上記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布してもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、内部に廃プラスチック原料を収容する容器と、上記容器の上記内部において混練され、140℃以上に加熱された上記廃プラスチック原料を上記容器の端部に設けられた面板へ向かって移送する移送部と、上記容器の上記端部の上記面板に設けられ、上記容器の上記内部と上記容器の外部とを連通し、上記面板の上記容器の外方側の端面から突出されたノズルと、上記ノズルの外周面に取り付けられ上記ノズルの開口部側の領域と上記ノズルの上記面板側の領域とを分画する隔壁と、上記ノズルの上記面板側の領域内の外周面へ冷媒を散布することによって、上記ノズルを100℃以下に冷却する冷却部と、を備える、廃プラスチック成形物の製造装置が提供される。
【0016】
冷却された上記ノズルから上記容器の外部に押し出されることによって成形された上記廃プラスチック原料を切断する回転刃を有する切断部を更に備え、上記隔壁は、上記回転刃の回転面に沿って配置されてもよい。
【0017】
上記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射部を更に有し、上記面板を正面から見て、上記面板と上記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放されてもよい。
【0018】
上記ノズルの外周面に上記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁を更に備え、上記冷却部は、上記ノズルの上記面板側の領域内の外周面のうち、上記仕切壁と上記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように本発明によれば、ノズルの冷却効率の低下を抑制することによって、廃プラスチック成形物の高密度化とメンテナンス負担の低減が可能な新規かつ優れた廃プラスチック成形物の製造装置、及び廃プラスチック成形物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置の構成例を示す正面図である。
図2】同実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置の構成例を示す平面図である。
図3図1における3-3線断面図である。
図4A】同実施形態に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。
図4B図4AにおけるA-A’端面図である。
図5A】同実施形態に係る廃プラスチック成形物を模式的に説明する外観図である。
図5B図5AにおけるB-B’端面図である。
図6】同実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る廃プラスチック成形物の製造装置の構成例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.廃プラスチック成形物の製造装置の構成>
図1図3を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す正面図である。図2は、同実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す平面図である。図3は、同実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す断面図である。
【0023】
本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、廃プラスチック原料Mに対して、混練及び加熱等の処理を行った後、押出成形することで、所定の形状を有する廃プラスチック成形物Pを成形するための装置である。廃プラスチック成形物Pは、例えば、石炭とともにコークス炉内へ挿入され、化学原料としてリサイクルされる。
【0024】
ここで、廃プラスチック原料Mには、使用済みプラスチック容器をはじめとするプラスチックごみが含まれる。具体的には、廃プラスチック原料Mには、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリプロピレン等の樹脂材料を主成分とするプラスチックごみが含まれる。
【0025】
廃プラスチック原料Mは、廃プラスチック成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度破砕された状態であってもよい。また、廃プラスチック原料Mは、廃プラスチック成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度、混練され、加熱された状態であってもよい。この場合、容器110内での廃プラスチック原料Mに対する混練、加熱を省略又は簡易的に行うようにしてもよい。
【0026】
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、図1に示すように、容器110と、移送部120と、連通部130と、冷却部140と、ガス噴射部190と、隔壁200とを有している。
【0027】
(容器)
容器110は、廃プラスチック原料Mを収容することが可能な筐体部分である。容器110は、図1におけるY方向の一端部111側に、Z方向に向かって開口されたホッパ113を有する。かかるホッパ113を介して、容器110内に廃プラスチック原料Mが投入される。廃プラスチック原料Mは、容器110の内部において、混練されるとともに、140℃以上に加熱される。
【0028】
容器110内での加熱温度が、140℃未満であると、廃プラスチック原料Mの溶融が十分でなく、後述する廃プラスチック成形物Pの成形過程において、表面側の固化が十分に行われない。この結果、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されない。また、容器110内において、廃プラスチック原料Mが140℃以上に加熱されるとは、容器110内の全ての領域において、140℃以上に加熱されていることを意味するものではなく、連通部130の近傍において押出し成形される状態となった廃プラスチック原料Mが、140℃以上に加熱されていれば足りる。具体的には、後述する面板117内に設けられた温度センサ170によって、容器110内の温度が測定される。さらに、温度センサ170は、面板117内に設けられたヒータ151の加熱温度を検出可能な範囲内に設けられる。
【0029】
さらに、容器110内には、移送部120の一部が設けられ、かかる移送部120によって、容器110のY方向の他端部115へ向かって廃プラスチック原料Mが移送される。容器110の他端部115には、面板117が設けられている。面板117は、容器110の他端部115に設けられた板状部材であり、面板117には、連通部130が設けられている。連通部130の詳細については、後述する。面板117の板厚、形状等は、押出し成形における押圧力等を考慮して、適宜設定され得る。
【0030】
(移送部)
移送部120は、容器110内の廃プラスチック原料Mを容器110の他端部115へ向かって移送する。具体的には、移送部120は、図2に示すように、いわゆる2軸押出し機構を有している。図1及び図2に示すように、移送部120は、一例として、容器110内において軸方向がY方向に沿って設けられた一対のシャフト121と、シャフト121の軸方向端部と連結された減速機構123と、減速機構123を介してシャフト121に回転力を付与する駆動源125とを有している。
【0031】
一対のシャフト121の外周面には、らせん状に設けられた刃状部分を有するスクリュー部127が設けられている。かかるスクリュー部127によって、シャフト121の回転に伴い、廃プラスチック原料Mが容器110の一端部111側から他端部115側へ移送される。また、一対のシャフト121に設けられたスクリュー部127同士の回転によって、廃プラスチック原料Mが混練されるとともに、摩擦によって加熱される。一対のシャフト121の回転方向は、同じ方向であってもよいし、逆方向であってもよく、容器110内の廃プラスチック原料Mの混練、加熱状態等に応じて適宜設定される。
【0032】
さらに、一対のシャフト121には、ニーディングディスク部129が設けられてもよい。ニーディングディスク部129は、図2に示すように、シャフト121の軸方向中間に設けられている。一対のシャフト121に設けられたニーディングディスク部129同士の回転によって、廃プラスチック原料Mがより混練されるとともに、摩擦によって加熱される。
【0033】
(連通部)
図1に示すように、連通部130は、容器110の他端部に設けられた、横断面が円形の筒状部分であり、容器110内と外部とを連通している。廃プラスチック原料Mが、連通部130内を押し出されることにより、所定形状に成形され、廃プラスチック成形物Pとなる。
【0034】
図3に示すように、連通部130は、容器110の面板117に複数設けられる。特に、連通部130は、面板117におけるスクリュー部127の外周側に対応する位置に周状に設けられる。また、連通部130は、面板117の外方側の端面117Aから突出したノズル131を有している。ノズル131を有することにより、廃プラスチック原料Mが、連通部130の内周面131Aと接触する距離が長くなる。これにより、後述するように所定の温度以下とされた連通部130との接触に伴う放熱による冷却によって、廃プラスチック原料Mの溶融表面を固化することができる。
【0035】
また、廃プラスチック原料Mが、連通部130の内周面131Aと接触する距離が長くなることで、廃プラスチック成形物Pの成形性が向上する。すなわち、押し出し成形後、廃プラスチック成形物Pが所定の径を有する。例えば、ノズル131の距離Lは、20mm以上に設定される。
【0036】
(冷却部)
冷却部140は、連通部130を100℃以下に冷却する。冷却部140による冷却によっても連通部130の温度が100℃より高い温度であると、溶融した廃プラスチック原料Mの表面が、十分に固化されない。この結果、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されない。また、連通部130が100℃以下に冷却されるとは、連通部130の全ての領域において、100℃以下に冷却されていることを意味するものではなく、廃プラスチック原料Mを固化するために必要な範囲の連通部130が、100℃以下に冷却されていれば足りる。具体的には、図1に示すように、連通部130に設けられた温度センサ131Cによって、連通部130の温度が測定される。さらに、温度センサ131Cは、後述する水冷ノズル141の直下であって、連通部130の肉厚の径方向の中間部分の温度を測定可能な位置に設けられる(後述する図4A参照)。温度センサ131Cの一例としては熱電対が挙げられる。
【0037】
また、連通部130の冷却される範囲として、例えば、連通部130の全体の長さの内、連通部130の先端側(容器110の外方側)の少なくとも半分が100℃以下に冷却されていれば足りる。この場合、温度センサ131Cは、連通部130の長手方向において連通部130の先端側に設けられる。
【0038】
また、好ましくは、冷却部140は、連通部130を70℃以下に冷却する。連通部130が70℃以下とされることにより、溶融した廃プラスチック原料Mの表面が、より十分に固化される。この結果、押し出し成形後の廃プラスチック原料Mの膨張がより抑制され、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現される。
【0039】
特に、連通部130は、冷却部140により供給された冷却水Wによる抜熱によって冷却される。冷却効率の比較的高い冷却水Wによる冷却を行うことで、廃プラスチック原料Mの溶融した表面の固化が効率的に実現される。
【0040】
図1に示すように、冷却部140は、水冷ノズル141と、水冷ノズル141へ冷却水Wを供給するポンプ143を有する。水冷ノズル141の先端部は、連通部130に対向する位置に設けられ、水冷ノズル141の先端部から、連通部130のノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布される。図3に示すように、冷却部140は、複数の水冷ノズル141を有し、各水冷ノズル141は、連通部130の各ノズル131に対して、1つ設けられる。なお、冷却水Wの散布には、冷却水Wの水流を連通部130へ向けて流出させる形態、又はミスト状の冷却水Wを連通部130へ噴射する形態が含まれる。
【0041】
連通部130のノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布されることにより、冷却水Wと連通部130との接触面積が、ノズル131を有さない場合と比較して大きくなる。この結果、冷却部140による冷却の効率がより高くなる。また、ノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布されることにより、冷却水Wが押出し成形中の廃プラスチック原料Mに直接かかることが抑制され、廃プラスチック成形物Pに含まれる余計な水分量が低減される。
【0042】
(水蒸気)
連通部130への冷却水Wの散布によって、連通部130及び連通部130の周囲から水蒸気Sが発生する。本実施形態では、成形プロセス中、冷却水Wが連続して散布されるので、水蒸気Sも連続して発生する。散布された冷却水Wの一部が、水蒸気Sとなって、連通部130のノズルの周囲に滞留する。
【0043】
連通部130のノズルが100℃以下に冷却されても、連通部130のノズルの温度は、成形プロセス中に変動する。すなわち、変動の中で連通部130のノズルの温度が100℃である状態が形成される。また、成形プロセス中、連通部130のノズルの温度が100℃以上の状態も生じ得る。このため、連通部130のノズルが100℃以下に冷却されても、成形プロセス中、連通部130のノズルから水蒸気Sが発生し得る。なお、水蒸気Sは、連通部130のノズルからだけでなく、連通部130の周囲において、冷却水が接触する面板117からも発生し得る。
【0044】
(ガス噴射部)
ガス噴射部190は、図1に示すように、面板117の近傍に開口したエアノズル191と、エアノズル191に接続されたエアポンプ193とを有する。エアポンプ193は、制御部180に接続される。ガス噴射部190は、冷却水Wの散布によって発生した水蒸気Sに対してガスGを噴射する。なお、図2中では、見易さのため、ガス噴射部190の図示を省略する。
【0045】
図3に示すように、本実施形態では、ガスGは、複数の位置に配置されたエアノズル191から噴射される。具体的には、図3中の左側に上下に間を空けて配置された2本のエアノズル191は、それぞれ、右上側に向かってガスGを噴射する。また、図3中の右側に上下に間を空けて配置された2本のエアノズル191は、それぞれ、左上側に向かってガスGを噴射する。
【0046】
なお、本実施形態では、図3中に、面板117の矩形の4辺のうち左右の二辺のそれぞれに、2本のエアノズル191が配置された場合が例示されたが、本発明では、これに限定されない。例えば、面板117の矩形の4辺のうち、上下左右のうちのいずれか一辺のみに1個以上のエアノズル191が配置され、配置された1個以上のエアノズル191が、連通部130のノズルに対して一方向からのみガスを噴射してもよい。本発明では、面板の形状及び1個以上の連通部の配置パターンに関わらず、面板を正面から見て、連通部の周囲360°における任意の位置に、1個以上のエアノズルが任意の噴射方向を有して配置されてよい。
【0047】
また、図3に示すように、面板117を正面から見て、エアノズル191は、水冷ノズル141と重ならないように、水冷ノズル141と離れた位置に配置される。このため、本実施形態では、冷却水Wを散布する位置から離れた位置でガスGを噴射することが可能になる。なお、本発明では、面板117を正面から見て、エアノズル191と水冷ノズル141とが重なるように、それぞれを同じ位置に配置してもよい。
【0048】
(加熱部)
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、面板117周辺の温度を調節可能な加熱部150を有している。図1に示すように、加熱部150は、一例として、面板117内に設けられた抵抗加熱式のヒータ151である。ヒータ151は、加熱用電源153と接続され、面板117内部での発熱によって、面板117及び、その近傍を加熱する。容器110の他端部115の面板117に設けられた加熱部150による加熱によって、廃プラスチック原料Mの温度低下が抑制される。つまり、連通部130内における廃プラスチック原料Mの溶融状態が、冷却部140による冷却直前まで維持される。
【0049】
(切断部)
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、切断部160を有している。図1に示すように、切断部160は、一例として、回転刃161と、駆動源163と、切断部シャフト165と有する。回転刃161は、放射状に延びたアームの先端に刃がついた部位である。回転刃161のアームの放射方向の中心には、切断部シャフト165の一端が設けられる。切断部シャフト165の他端には、駆動源163が取り付けられる。駆動源163は、切断部シャフト165を介して、回転刃161に対して回転力を付与する。回転刃161の当接によって、連通部130から押し出された廃プラスチック原料Mが切断され、廃プラスチック成形物Pとされる。
【0050】
また、切断部160は、所定の温度以下とされた連通部130において押し出し成形された廃プラスチック原料Mを切断する。廃プラスチック原料Mは、冷却された連通部130から容器110の外部に押し出されることによって成形される。このため、廃プラスチック原料Mの外周面が固化し、廃プラスチック原料Mの外形が維持された状態となるので、切断が容易となる。さらに、廃プラスチック原料Mが自重で適当な長さで折れる場合、又は外周面が固化されず押出し成形後に膨張した廃プラスチック原料Mを切断する場合と比較して、切断箇所がよく制御される。この結果、廃プラスチック成形物Pの形状、寸法が均一化し、廃プラスチック成形物Pの高密度化に加えて、かさ密度の向上が実現される。
【0051】
(隔壁)
隔壁200は、図4Aに示すように、ノズル131の開口部側の領域R1とノズル131の面板117側の領域R2とを分画する。本実施形態の隔壁200は、矩形状であるが、本発明では、隔壁の形状は、適宜設定できる。本実施形態の隔壁200の素材は、例えば鉄板であるが、本発明では、隔壁の素材は、他の素材であってよい。
【0052】
本実施形態の隔壁200の図3中の上下方向(Z方向)の長さ及び左右方向(X方向の長さ)は、面板117より長い。すなわち、隔壁200は、正面から見たXZ面において、面板117よりも大きな外形を有する。しかし、本発明では、隔壁の寸法は、これに限定されず、ノズル131の表面への廃プラスチック成形物の一部の固着を防止できる限り、適宜変更できる。
【0053】
また、例えば本発明では、回転刃161が隔壁200に接触した際の衝撃や破損に対する部材の強度を高める目的で、隔壁200の肉厚を大きくしてもよい。肉厚を大きくする方法として、例えば、2枚の鉄板を貼り合わせることができる。
【0054】
隔壁200は、図2に示すように、ボルト等の固定具220によって面板117に取り付けられる。固定具220の個数は、1個以上、任意に設定できる。なお、図1中では、見易さのため、固定具220の図示を省略する。隔壁200は、一定の距離を空けて、面板117と隙間を空けて対向した状態で設置される。
【0055】
また、本実施形態では、補助壁210が、ノズル131の根元側(図1中のノズル131の右側)で、面板117に接触した状態で、隔壁200と対向して設けられる。
【0056】
本実施形態の補助壁210は、隔壁200と同じ鉄板であり、隔壁200とほぼ同じ寸法及び形状を有する。このため、本実施形態では、補助壁210は、正面から見たXZ面において面板117よりも大きな外形を有する。補助壁210が設けられることによって、冷却水Wが面板117側に飛散することが防止され、結果、ノズル131の冷却効率の低下を抑制できる。なお、本発明の補助壁210の素材、寸法及び形状等は、隔壁200と同様に、適宜変更できる。
【0057】
本実施形態では、隔壁200と補助壁210との間に散水エリアとしての空間Fが形成されると共に、空間Fの上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放される。なお、本発明では、補助壁210は必須ではない。本発明では、補助壁210が設けられることなく、面板117と隔壁200との間に散水エリアが形成されると共に、面板117と隔壁200とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方が、大気中に開放されてもよい。すなわち、本発明では、補助壁210の有無に関わらず、冷却水Wは、ノズル131の面板117側の領域R2内の外周面へ散布されればよい。
【0058】
隔壁200と補助壁210との間に形成される空間Fの幅(図1中のY方向の長さ)は、例えば50mm程度に設定できるが、本発明では、これに限定されず、適宜変更できる。
【0059】
また、本実施形態では、隔壁200は、面板117から離れた切断部160側において、ノズル131の外周面131Bに取り付けられる。具体的には、隔壁200においてノズル131の開口部に対応する位置には、貫通孔が形成される。隔壁200の貫通孔の径は、ノズル131の開口部の外径と、ほぼ同じである。隔壁200の貫通孔には、ノズル131の開口部が嵌合する。このため、隔壁200の貫通孔の内周面とノズル131の開口部の外周面とは、隙間がほぼ存在せず、密に接触する。
【0060】
なお、本発明では、隔壁200の貫通孔の内周面とノズル131の開口部の外周面との間にシールが施されてもよい。シールによって、ノズル131の表面への廃プラスチック成形物Pの一部の固着効果を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態では、図4Aに示すように、隔壁200の切断部160側の外側面が、ノズル131の開口部の端面と面一である。このため、ノズル131の開口部側の領域R1は、実質的に、ノズル131の端面の部分のみである。また、ノズル131の面板117側の領域R2は、図4A中で隔壁200の右側に位置する、ノズル131の外周面131Bの部分である。
【0062】
なお、本発明では、隔壁200の切断部160側の外側面がノズル131の開口部の端面と面一であることは必須ではない。本発明では、例えば、隔壁200の切断部160側の外側面の位置がノズル131の開口部の端面から面板117側にずれて配置されることによって、ノズル131の開口部側の外周面が、隔壁200から切断部160側に部分的に突出してもよい。
【0063】
ノズル131の開口部側の外周面が隔壁200から切断部160側に部分的に突出する場合、突出したノズル131の開口部側の外周面の部分とノズル131の端面の部分とが、ノズル131の開口部側の領域R1である。すなわち、冷却領域として必要な部分のノズル131の表面(外周面)への成形物の一部の固着が防止される限り、ノズル131の外周面131B上における、隔壁200の切断部160側の外側面の位置は限定されない。
【0064】
本実施形態では、図2に示すように、隔壁200は、回転刃161の回転面161Aに沿って配置される。回転面161Aは、回転刃161の回転の軌跡である。なお、本発明では、隔壁200が回転刃161の回転面161Aに沿って配置されることは、必須ではない。
【0065】
(温度センサ,制御部)
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、図1に示すように、面板117周辺の温度を検出可能な温度センサ170を有している。温度センサ170は、一例として、面板117内に挿入された状態で使用される熱電対である。
【0066】
また、廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、図1に示すように、制御部180を有している。制御部180は、廃プラスチック成形物Pの製造装置100における廃プラスチック成形物Pの成形工程を制御する。制御部180は、具体的には、冷却部140による冷却の際、温度センサ131Cからの出力に基づいて、散布される冷却水Wの水量、水圧を制御する。また、制御部180は、温度センサ131Cからの出力に基づいて、ガス噴射部190によるガスGの噴射流量を制御する。また、制御部180は、温度センサ170からの出力に基づいて、加熱部150による面板117周辺の加熱を制御する。さらに、制御部180は、切断部160の駆動源163、移送部120の駆動源125の回転数等を制御する。制御部180としての機能は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の協働によって実現される。以上、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の概略構成について説明した。
【0067】
<2.廃プラスチック成形物の成形過程>
次に、図4A図4B図5A、及び図5Bを参照しながら、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの成形過程について説明する。図4Aは、本実施形態に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。また、図4Bは、図4AにおけるA-A’端面図である。図5Aは、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pを模式的に説明する外観図である。図5Bは、図5AにおけるB-B’端面図である。
【0068】
まず、容器110内で混練され、140℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mは、面板117の設けられた他端部115へ向かって容器110内を移送される。このとき、140℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mは、容器110内で少なくとも外表面が溶融状態である。その後、図4Aに示すように、廃プラスチック原料Mは、押し出されながら連通部130内を通過する。このとき、廃プラスチック原料Mと連通部130の内周面131Aとの接触に伴う放熱によって、廃プラスチック原料Mの温度が低下する。特に、連通部130がノズル131を有する場合、摩擦の生じる距離が長くなることで、廃プラスチック原料Mの温度がより低下する。
【0069】
また、連通部130は、冷却部140によって少なくとも廃プラスチック原料Mが押し出される間、冷却されている。ここで、冷却部140は、溶融状態の廃プラスチック原料Mの固化が開始される温度である100℃以下に連通部130を冷却している。具体的には、冷却部140は、連通部130の外周面131Bに冷却水Wを散布する。また、ガス噴射部190は、冷却水Wの散布によって発生した水蒸気Sに対して、ガスGを噴射する。ガスGの噴射によって水蒸気Sが連通部130の周囲から排気されるので、水蒸気Sが連通部130の周囲に滞留することが防止される。結果、連通部130の冷却効率の低下を抑制しつつ、連通部130における冷却が進行する。
【0070】
このため、連通部130を通過している間に、溶融状態であった廃プラスチック原料Mは、連通部130と接触する外周側から固化していく。すなわち、図4Bに示すように、廃プラスチック原料Mは、その外周側に固化した領域M1を形成しながら、連通部130内を押し出され、廃プラスチック成形物Pとして成形される。連通部130内を通過中に、廃プラスチック成形物Pの外周側に固化した領域P1が形成されることから、連通部130から押し出された後も、廃プラスチック成形物Pが、径方向外側に膨張することが抑制される。
【0071】
図5Aに示すように、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pは、硬質な外殻を有する短尺な略棒状の成形物である。また、図5Bに示すように、廃プラスチック成形物Pには、廃プラスチック成形物Pの横断面視で外周面側に固化した領域P1が形成されている。図5Bに破線で外形を示した冷却しない場合の廃プラスチック成形物Qと比較して、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pは、径方向の膨張が抑制されている。以上、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの成形過程について説明した。
【0072】
<3.廃プラスチック成形物の製造方法>
次に、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、廃プラスチック原料Mが容器110へ投入される(S101)。続いて、容器110内で廃プラスチック原料Mが混練され、加熱される(S103)。このとき、容器110内の温度を調整するために、容器110内に水を散布してもよい。
【0073】
さらに、容器110の端部に設けられて容器110内と外部とを連通する連通部130へ向かって、140℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mが移送される(S105)。ステップS105において、廃プラスチック原料Mが容器110の端部へ移送され、廃プラスチック原料Mは、連通部130内を押し出される。このとき、少なくとも廃プラスチック原料Mが連通部130内を押出される間、連通部130は100℃以下に冷却される(S107)。本実施形態の冷却工程(S107)では、冷却水Wは、隔壁200と補助壁210との間の空間F内で、ノズル131の面板117側の領域R2の外周面へ散布される。また、冷却水Wは、面板117に沿って平行に散布される。冷却水Wの散布によって、水蒸気Sが発生する。
【0074】
また、ステップS108において、発生した水蒸気Sに対して、ガスGを噴射する。本実施形態では、ガス噴射工程(S108)では、ガスGは、冷却水Wの散布方向と同様に、面板117に沿って平行に噴射される。
【0075】
なお、本実施形態では、ガスGが面板117に沿って平行に噴射される場合が例示されたが、本発明では、面板117に沿って平行に行われなくてもよい。例えば、水冷ノズル141の近傍にガス噴射部190の接地スペースを確保することが難しいような場合、連通部130の開口部に対向して配置された複数の切断部160(切断機)同士の隙間にガス噴射部190を設置し、複数の切断部160同士の隙間から、面板117に向かってガスGを噴射することもできる。また、ガスGの噴射を冷却水Wの散布方向と揃えて面板117に沿って平行に行うことが難しい場合であっても、例えば、大容量のファンやブロワー等を用いることによって、水蒸気Sを排気するのに十分なガスGの噴射を可能にすることができる。
【0076】
最終的に、廃プラスチック原料Mは連通部130から押出され、切断部160により切断されて、廃プラスチック成形物Pが成形される。
【0077】
なお、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法において、ステップS103とステップS105とは、別の工程として説明したが、これらの工程は同時に行われてもよい。つまり、容器110内で廃プラスチック原料Mが混練、加熱されながら、容器110の他端部115へ移送されてもよい。
【0078】
また、冷却工程であるステップS107とガス噴射工程であるステップS108とは、これらの工程の開始は、同時であってもよいし、或いは、ガス噴射工程の開始が、冷却工程の開始の後であってもよい。また、ガス噴射工程は、冷却工程と並行して行われるが、冷却工程が行われる間中の全体に亘って並行実施されてもよいし、或いは、1回以上の休止状態を挟んで間欠的に並行実施されてもよい。以上、本発明の一の実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法について説明した。
【0079】
(作用効果)
本実施形態では、隔壁200によって、ノズル131の開口部側の領域R1とノズル131の面板117側の領域R2とが分画される。また、冷媒である冷却水Wは、ノズル131の面板117側の領域R2の外周面に対して散布される。このため、ノズル131の開口部から押し出し成形される廃プラスチック成形物Pから一部が飛散しても、廃プラスチック成形物Pの一部は、ノズル131の面板117側の領域R2に移動し難い。よって、廃プラスチック成形物Pの一部がノズル131の表面に固着することが防止される。このため、連通部の冷却効率低下を抑制できると共に、冷却効率を安定的に維持できる。
【0080】
また、本実施形態では、隔壁200と面板117とによって挟まれた空間は、冷媒である冷却水Wの散布エリアとして働く。また、散布エリア内では、噴射されたガスによって、ノズル131の周囲から水蒸気が排気される。ここで、散布エリアの上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放されるので、水蒸気の排気の際、散布エリアの上方、下方、及び左右両側方からなる四方のすべてを大気中への開放経路として利用できる。このため、散布エリアの四方のすべてが大気中に開放されていない場合に比べ、水蒸気をより速やかに連通部から排気できる。
【0081】
また、本実施形態では、冷媒として冷却水Wが噴射される。ここで、廃プラスチック成形物Pに不純物が含まれる場合であっても、隔壁200によって、不純物が冷却水W中へ混入することが防止される。廃プラスチック成形物Pに含まれる不純物としては、例えば、塩化ビニルから溶け出した塩素等である。このため、不純物が混入した冷却水Wが下水等へ排出されることで環境負荷が高まることを防止できる。なお、不純物が混入した冷却水Wを回収し、回収された冷却水Wを再利用する場合には、不純物に起因して冷却効率が低下することを回避できる。
【0082】
また、本実施形態では、回転刃161の回転面161Aに沿って回転刃161が配置されるので、回転する回転刃の隔壁200への接触が防止される。
【0083】
<他の実施形態>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態において、一対のシャフトを有する2軸押出し成形の例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、1本のシャフトによる1軸押出し成形でもよい。
【0085】
また、上記実施形態において、冷媒が水である例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、空気などを冷媒とする空冷によって冷却されてもよく、連通部130を冷却することが可能な液体を冷媒とした冷却(油冷、ポリマー水溶液による冷却等)が行われてもよい。
【0086】
<変形例>
次に、他の実施形態の一例として、変形例に係る廃プラスチック成形物の製造装置100Aを、図7を参照して説明する。図7に示すように、廃プラスチック成形物の製造装置100Aは、図1中に例示された廃プラスチック成形物の製造装置100の構成に加え、仕切壁222を更に備える。なお、変形例に係る廃プラスチック成形物の製造装置100Aにおける仕切壁222以外の構成は、本実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置100と同様であるため、以下、仕切壁222について主に説明すると共に、仕切壁222以外の構成についての説明を省略する。
【0087】
(仕切壁)
仕切壁222は、図7に示すように、ノズル131の外周面に面板117から離れて取り付けられる。仕切壁222は、ノズル131の面板117側の領域内の外周面のうち、隔壁200と面板117との間の外周面を仕切る。
【0088】
本実施形態の仕切壁222は、矩形状であるが、本発明では、仕切壁の形状は、適宜設定できる。本実施形態の仕切壁222の素材は、例えば鉄板であるが、本発明では、仕切壁の素材は、他の素材であってよい。また、図7中に例示された変形例の仕切壁222の個数は、2つであるが、本発明では、仕切壁の個数は、1つであってもよいし、或いは、3つ以上であってもよい。
【0089】
本実施形態の仕切壁222の図7中の上下方向(Z方向)の長さ及び奥行方向(X方向の長さ)は、面板117より長い。すなわち、仕切壁222は、正面から見たXZ面において、面板117よりも大きな外形を有する。しかし、本発明では、仕切壁の寸法は、これに限定されず、適宜変更できる。本発明の仕切壁の寸法及び形状等は、隔壁200と同様に、適宜変更できる。
【0090】
仕切壁222は、図2中に例示された隔壁200における固定具220と同様に、ボルト等の固定具によって、面板117に取り付けられることができる。図7中では、見易さのため、仕切壁222を取り付けるための固定具の図示を省略する。また、仕切壁222を取り付けるための固定具の個数は、1個以上、任意に設定できる。
【0091】
図7中に例示された変形例では、仕切壁222は、隔壁200及び面板117と平行に取り付けられる。なお、本発明では、仕切壁222が隔壁200及び面板117と平行であることは、必須ではない。
【0092】
仕切壁222においてノズル131の外周面に対応する位置には、貫通孔が形成される。仕切壁222の貫通孔の径は、ノズル131の外周面の外径と、ほぼ同じである。仕切壁222の貫通孔には、ノズル131の外周面が嵌合する。このため、仕切壁222の貫通孔の内周面とノズル131の外周面とは、隙間がほぼ存在せず、密に接触する。
【0093】
なお、本発明では、仕切壁222の貫通孔の内周面とノズル131の外周面との間にシールが施されてもよい。シールによって、ノズル131の表面への廃プラスチック成形物Pの一部の固着効果を高めることができる。
【0094】
また、変形例では、図7中の2枚の仕切壁222のうち右側の仕切壁222のように、面板117に対する取り付け位置が、Y方向に沿って変更可能である。図7中には、想像線で描かれた仕切壁222によって、仕切壁222の取り付け位置が変更可能であることが例示されている。仕切壁222の取り付け位置は、具体的には例えば、仕切壁222を取り付ける固定具の面板117からの突出長さを変えることによって変更できる。或いは、他の公知の方法によって、仕切壁222の取り付け位置が変更されてもよい。仕切壁222の面板117に対する取り付け位置が変更されることによって、仕切壁222と隔壁200との離隔距離も変更される。
【0095】
変形例では、隔壁200と、隔壁200から最も離れた仕切壁222(図7中の2枚の仕切壁222のうち右側の仕切壁222)との間に形成される離隔距離Dは、例えば30mm程度である。なお、本発明では、隔壁と仕切壁との間の離隔距離は、これに限定されず、適宜変更できる。
【0096】
変形例では、仕切壁222によって、隔壁200と補助壁210との間に形成された散水エリアとしての空間Fが、ノズル131の長さ方向(Y方向)に沿って更に複数に隔てられる。変形例では、仕切壁222によって隔てられた区画ごとに、水冷ノズル141からの冷却水Wの散布量を変更できる。図7中では、空間Fが長さ方向に沿って3つに隔てられた場合が例示されると共に、3つに隔てられた空間Fのうち、中央の部分に対して冷却水Wが、水冷ノズル141から散布された状態が例示されている。
【0097】
すなわち、冷却部140の水冷ノズル141は、ノズル131の面板117側の領域内の外周面のうち隔壁200と仕切壁222との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する。換言すると、ノズル131の冷却パターンが、精細化される。
【0098】
変形例に係る廃プラスチック成形物の製造装置100Aにおいても、本実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置100と同様に、廃プラスチック成形物Pの高密度化とメンテナンス負担の低減を図ることができる。また、変形例では、冷却部140の水冷ノズル141は、ノズル131の面板117側の領域内の外周面のうち仕切壁222と隔壁200との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する。このため、仕切壁222が、冷却水Wの面板117側への飛散を防止する。また、仕切壁222と面板117との間が隔てられているので、冷却水Wとの接触によって仕切壁222の温度が低下しても、仕切壁222の温度低下が、面板117に影響し難い。このため、面板117における加熱のばらつきを低減できる。
【0099】
また、変形例では、仕切壁222によって、面板117から外側に突出するノズル131の部分のうち、特定の部位に対して冷却水Wが散布されると共に、他の部位に対して冷却水Wが散布されない状態を形成できる。すなわち、冷却水Wの散布位置を調整できる。このため、例えば、ノズル131の根元部や先端部には冷却水Wが散布されないことによって、根元部や先端部の過剰冷却を抑制できる。過剰冷却の抑制によって、ノズル131の根元部や先端部における廃プラスチック成形物Pの詰まりを抑制できるので、廃プラスチック成形物Pの生産性を向上できる。
【0100】
また、他の実施形態として、本発明は、図1図7中に示した廃プラスチック成形物の製造装置の一部を組み合わせて構成することもできる。
【0101】
≪付記≫
本明細書からは、以下の態様が概念化される。
【0102】
態様1は、
廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、
前記容器内で前記廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、
前記容器の端部に設けられた面板に設けられて前記容器内と外部とを連通し、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルへ向かって、140℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を移送する移送工程と、
前記ノズルの外周面に取り付けられた隔壁によって前記ノズルの開口部側の領域と分画された、前記ノズルの前記面板側の領域の外周面へ冷媒を散布することによって、少なくとも前記廃プラスチック原料が前記ノズル内を押し出される間、前記ノズルを100℃以下に冷却する冷却工程と、
を含む、廃プラスチック成形物の製造方法。
【0103】
態様2は、
前記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射工程を更に有し、
前記面板を正面から見て、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放され、
前記ガス噴射工程では、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間内で前記ガスを噴射する、
態様1に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【0104】
態様3は、
前記冷却工程における前記冷媒として冷却水を噴射する、
態様1又は2に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【0105】
態様4は、
前記冷却工程では、前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面のうち、前記ノズルの外周面に前記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁と前記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する、
態様1~3のいずれかに記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【0106】
態様5は、
内部に廃プラスチック原料を収容する容器と、
前記容器の前記内部において混練され、140℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を前記容器の端部に設けられた面板へ向かって移送する移送部と、
前記容器の前記端部の前記面板に設けられ、前記容器の前記内部と前記容器の外部とを連通し、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルと、
前記ノズルの外周面に取り付けられ前記ノズルの開口部側の領域と前記ノズルの前記面板側の領域とを分画する隔壁と、
前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面へ冷媒を散布することによって、前記ノズルを100℃以下に冷却する冷却部と、
を備える、廃プラスチック成形物の製造装置。
【0107】
態様6は、
冷却された前記ノズルから前記容器の外部に押し出されることによって成形された前記廃プラスチック原料を切断する回転刃を有する切断部を更に備え、
前記隔壁は、前記回転刃の回転面に沿って配置される、
態様5に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【0108】
態様7は、
前記冷媒の散布によって発生した水蒸気に対してガスを噴射するガス噴射部を更に有し、
前記面板を正面から見て、前記面板と前記隔壁とによって挟まれた空間の上方、下方、及び左右両側方は、大気中に開放される、
態様5又は6に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【0109】
態様8は、
前記ノズルの外周面に前記面板から離れて取り付けられた1つ以上の仕切壁を更に備え、
前記冷却部は、前記ノズルの前記面板側の領域内の外周面のうち、前記仕切壁と前記隔壁との間の外周面へ部分的に冷媒を散布する、
態様5~7のいずれかに記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【符号の説明】
【0110】
100,100A 廃プラスチック成形物の製造装置
110 容器
117 面板
117A 端面
120 移送部
130 連通部
131 ノズル
131A ノズル内周面
131B ノズル外周面
140 冷却部
150 加熱部
160 切断部
161 回転刃
161A 回転面
190 ガス噴射部
200 隔壁
210 補助壁
222 仕切壁
R1 ノズルの開口部側の領域
R2 ノズルの面板側の領域
F 面板と隔壁とに挟まれた空間
G ガス
M 廃プラスチック原料
P 廃プラスチック成形物
S 水蒸気
W 冷却水
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7