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特開2023-102880プレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラム
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  • 特開-プレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102880
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】プレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230719BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230719BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20230719BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20230719BHJP
   G06F 113/22 20200101ALN20230719BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20230719BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/10 100
B21D22/00
G06F111:10
G06F113:22
G06F119:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003607
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】卜部 正樹
【テーマコード(参考)】
4E137
5B146
【Fターム(参考)】
4E137AA05
4E137AA10
4E137AA21
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA12
4E137CB01
4E137CB03
4E137EA01
4E137GA03
4E137GA17
4E137GB03
5B146AA06
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA15
5B146EC08
(57)【要約】
【課題】異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された2つのプレス成形品のスプリングバック量を比較して評価するプレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法は、第1の成形条件でプレス成形した第1のプレス成形品11について、成形下死点形状に相当する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17を弾性力学的解析により取得し(S1)、そのスプリングバック解析によりスプリングバック量を算出し(S3)、第2の成形条件でプレス成形した第2のプレス成形品21について、成形下死点形状に相当する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27を弾性力学的解析により取得し(S5)、そのスプリングバック解析によりスプリングバック量を算出し(S7)、これらのスプリングバック量を比較・評価する(S9)ものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価方法であって、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップと、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップと、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価ステップと、を含むことを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価方法。
【請求項2】
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップ及び前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記弾性力学的解析は弾性有限要素解析であることを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法。
【請求項3】
前記第1のプレス成形品及び前記第2のプレス成形品をプレス成形する過程がそれぞれの部位ごとに成形工程が分かれている場合において、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップ及び前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記第1金型モデル及び前記第2金型モデルは、前記第1のプレス成形品及び前記第2のプレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデルとしたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法。
【請求項4】
異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価装置であって、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出部と、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データからから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、を備えていることを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価装置。
【請求項5】
異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムであって、
コンピュータを、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出部と、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データからから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、して実行させる機能を有することを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された2つのプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板(ブランク)のプレス成形においては、プレス成形品に対して高い寸法精度が要求される。しかしながら、プレス成形では、金型の所定位置(例えば成形下死点)までブランクをプレス成形した後、プレス成形品を金型から取り出して離型する段階において、プレス成形品の弾性的な形状回復、すなわちスプリングバックが発生することで、プレス成形品の形状が成形下死点の状態から変化し、これがしばしば寸法精度不良の要因となる。また、プレス成形品の量産時にはブランクの機械的性質や形状、金型とブランクの摩擦条件、ブランクの金型へのセット位置、金型の摩耗や変形、等の要因で成形条件が変動する。そして、このような成形条件の変動に伴ってプレス成形品の形状も変動してしまうことがあり、プレス成形品の量産を行う上で大きな課題となる。そこで、成形条件の変動に伴うプレス成形品の寸法精度変動を評価する方法が必要となる。
【0003】
プレス成形品の寸法精度を評価する技術として、非特許文献1には、プレス成形品を検査治具に乗せて位置決めピン及びクランプで位置決めし、検査治具の断面ゲージとプレス成形品との隙間を測定することで、プレス成形品の寸法精度評価を行う方法が開示されている。当該方法を複数のプレス成形品に対して実施し、その測定値の比較を行うことで、成形条件の違いによるプレス成形品の寸法精度変動を評価することができる。
【0004】
また、プレス成形品の三次元表面形状測定を行って複数のプレス成形品の形状データを取得し、それらを比較する方法も考えられる。
複数のプレス成形品の形状データの比較を行うためには、まず、各プレス成形品の形状データの位置合わせが必要である。この位置合わせの方法として、一のプレス成形品の形状データを基準として、他のプレス成形品の形状データを平行移動及び/又は回転移動させることにより、一のプレス成形品と他のプレス成形品との間の相対距離分布から計算される誤差値が最小となるような場所に他方のプレス成形品の形状データを移動させる、ベストフィットと呼ばれる手法が一般的に使用されている(例えば、非特許文献2参照)。このようなベストフィットにおいては、プレス成形品の形状データ全体を対象とする方法と、形状データの一部を対象とする方法の2種類があり、その目的によって使い分けられる。
【0005】
さらに、プレス成形品の寸法精度を評価する技術として、非特許文献1に開示されているように、一のプレス成形品の形状データに複数の基準点を設定し、これらの基準点に合わせて他のプレス成形品の形状データを平行移動、あるいは回転移動させることにより、二つのプレス成形品の形状データの位置合わせを行う方法も用いられる。
そして、上記のように2つのプレス成形品の形状データの位置合わせを行った後に、2つの形状データ間の相対距離の分布を評価することで、成形条件の異なる二つのプレス成形品の寸法精度を比較して評価することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】プレス成形難易ハンドブック第3版、薄鋼板成形技術研究会編、pp.341-342
【非特許文献2】松浦勇、曲面形状の高精度三次元ベストフィット、あいち産業科学技術総合センター研究方向2012、p.22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示されているような検査治具を用いてプレス成形品の寸法精度評価を行う方法は、広く一般的に行われているが、いくつかの課題があった。まず、検査治具の作成が必要となり、これには費用が発生していた。また、検査治具を用いた寸法精度評価には、金型の取り付けや、隙間の測定には技術を持った作業者が必要であり、ここにも費用を要した。さらに、プレス成形品の形状が一定以上の誤差を有する場合には検査治具に取り付けることができず、検査治具とプレス成形品との隙間の測定そのものが実施できない場合があった。
【0008】
一方で、三次元形状測定データを用いて複数のプレス成形品の形状を比較する方法にも課題があった。非特許文献2に開示されているベストフィットによる物体の位置合わせ方法は、極めて汎用性の高い方法であるが、位置合わせの基準点が存在しないため、その後の形状比較において、両者の形状の差異がどのように発生しているのかを判断しにくい。例えば、両者の形状の違いの要因がねじれなのか、稜線の曲げ角度の違いによるものであるのか、等を評価しにくいという問題があった。特に、2つのプレス成形品の形状が成形品の全体にわたって大きく異なる場合、つまり一のプレス成形品の形状と他のプレス成形品の形状が大きく乖離する場合には、これらの形状データを位置合わせする困難の度合いが高かった。
また、ベストフィットをプレス成形品の全体に対してベストフィットする場合と、一部に対してベストフィットする場合とでは、形状比較した結果に違いが生じることも問題であった。
【0009】
図5(c)に、一例として、異なる成形条件で同一の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品11と第2のプレス成形品21について、これらの形状データ(第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13、第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23)を、(i)第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13と第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23の全体に対してベストフィットした場合と、(ii)パンチ底部13aとパンチ底部23aとに対してベストフィットした場合と、における形状の乖離量を求め、第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13にマッピングしたコンター図を示す。
【0010】
図5に示すように、ベストフィットする対象(全体又は一部)の違いにより、第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13と第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23の形状の乖離量が異なった分布となっている。そのために、第1のプレス成形品11と第2のプレス成形品21のスプリングバック量を比較することが困難であり、成形条件の違いによる寸法精度不良の要因となるスプリングバックが生じている部位を適切に判別することはできなかった。
【0011】
さらに、一のプレス成形品に基準点を設定して他のプレス成形品の位置合わせを行う方法においては、設定した複数の基準点の相対位置が複数のプレス成形品の形状データで異なる場合には、厳密な位置合わせは不可能であった。このような場合には、複数の基準点を近傍に設定せざるを得なくなり、かつ、これら基準点を含む領域での両形状データの形状差異が大きい場合には、全体的な形状データの差異を実際よりも大きく見せてしまう危険性があった。
そのため、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された二つのプレス成形品を同一の基準で位置合わせをすることにより、スプリングバック量を比較し、適切に評価することができる技術が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された二つのプレス成形品のスプリングバック量を比較し、適切に評価することができるプレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法は、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップと、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップと、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0014】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップ及び前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記弾性力学的解析は弾性有限要素解析であることを特徴とするものである。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、
前記第1のプレス成形品及び前記第2のプレス成形品をプレス成形する過程がそれぞれの部位ごとに成形工程が分かれている場合において、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップ及び前記第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記第1金型モデル及び前記第2金型モデルは、前記第1のプレス成形品及び前記第2のプレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデルとしたものであることを特徴とするものである。
【0016】
(4)本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置は、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出部と、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データからから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
(5)本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムは、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、
コンピュータを、
スプリングバック後の前記第1のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第1のプレス成形品の設計目標形状である第1プレス成形品目標形状設計データから第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第1プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の第1金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第1のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品スプリングバック量算出部と、
スプリングバック後の前記第2のプレス成形品の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ又は前記第2のプレス成形品の設計目標形状である第2プレス成形品目標形状設計データからから第2プレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該第2プレス成形品ワーク形状モデルを前記第1金型モデルと同一又は同形状の第2金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部と、
該取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により前記第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルに生じたスプリングバック量を前記第2のプレス成形品のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記第1プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第1のプレス成形品のスプリングバック量と、前記第2プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記第2のプレス成形品のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、して実行させる機能を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、異なる成形条件で同一又は同形状の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2の成形品のそれぞれについてプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、プレス成形品ワーク形状モデルについて金型モデルを用いて成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析により成形下死点におけるプレス成形品ワーク下死点形状モデルを取得し、プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック解析により算出したスプリングバック量を各プレス成形品のスプリングバック量として算出することにより、第1のプレス成形品と第2のプレス成形品とを同一又は同形状の金型モデルの成形下死点で位置合わせすることができ、第1のプレス成形品のスプリングバック量と第2のプレス成形品のスプリングバック量とを直接比較し、それぞれを適切に評価することができる。
これにより、プレス成形品の量産時における寸法精度変動の一因であるスプリングバックの量及び形態の変化を適切に評価すれば、例えば金型の摩耗や変形等の成形条件の変動の兆候を把握できるので、プレス成形品の寸法精度不良の大量発生を抑止できる。また生産準備段階において、意図的に複数の異なるプレス条件を与えてプレス成形を行い、得られたプレス成形品同士を比較することで、変動の原因を把握し、適切に対策することで、寸法精度変動の少ない、良好なプレス成形品を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法の処理の流れを説明するフロー図である。
図2】本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法において、第1のプレス成形品及び第2のプレス成形品に生じるスプリングバック量を算出する過程を説明する図である((a)実プレス成形工程、(b)三次元表面形状測定、(c)三次元表面形状測定データのプレス成形品ワーク形状モデルへの変換(リメッシュ及びオフセット)、(d)金型モデルで挟み込む過程の弾性有限要素解析、(e)スプリングバック解析)。
図3】本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法により算出した、(a)第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック量のコンター図、(b)第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック量のコンター図、(c)第1プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック量に対する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック量の差分を示すコンター図、である。
図4】本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置のブロック図、及び、本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムの機能を説明する図である。
図5】従来のプレス成形品のスプリングバック量評価方法により算出した、(a)第1のプレス成形品の三次元表面形状測定データ、(b)第2のプレス成形品の三次元表面形状測定データ、(c)第1のプレス成形品と第2のプレス成形品との間の形状の乖離量。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラムについて、図1図4を参照して説明する。なお、本実施の形態では、一例として図2に示す、自動車のAピラーアッパーを模擬したハット断面形状の第1のプレス成形品11及び第2のプレス成形品21を対象とした。第1のプレス成形品11及び第2のプレス成形品21は、同一の金型を用いて、980MPa級、板厚1.4mmの冷延鋼板をプレス成形したものである。
【0021】
なお、本実施の形態において、第1のプレス成形品11は実際にプレス成形したものであるのに対し、第2のプレス成形品21は、成形条件の違いにより長手方向全体にねじり変形が生じていると想定したものである。そして、第2のプレス成形品21の形状データ(後述する第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23、図2参照)は、第1のプレス成形品11の表面形状の測定により取得した形状データ(後述する第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13、図2参照)をコンピュータソフトウエア上でねじり変形を与えて作成したものである。
【0022】
また、本願の図2図3及び図5におけるX、Y及びZは、第1のプレス成形品11及び第2のプレス成形品21、第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13及び第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23、第1プレス成形品ワーク形状モデル15及び第2プレス成形品ワーク形状モデル25、並びに、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17及び第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27の長手方向(X方向)、幅方向(Y方向)及び高さ方向(Z方向)を示している。
【0023】
<プレス成形品のスプリングバック量評価方法>
本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法は、一例として図2(a)に示すように、異なる成形条件で同一の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品11と第2のプレス成形品21のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、図1に示すように、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1と、第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3と、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5と、第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップS7と、スプリングバック量比較・評価ステップS9と、を含むものである。
以下、上記の各ステップについて説明する。
【0024】
≪第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップ≫
第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1は、図2に示すように、スプリングバック後の第1のプレス成形品11の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13から第1プレス成形品ワーク形状モデル15を作成し、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1の金型の第1金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17を取得するステップである。
【0025】
第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1は、まず、図2(b)に示すように、第1のプレス成形品11の表面形状の測定により第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13を取得する(S1a)。
【0026】
次に、取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13を力学的解析、すなわち弾性力学的解析のシェル要素として扱えるようにするために、図2(c)に示すように、一定の要素サイズの要素(例えば、三角形要素)にリメッシュし、その後、板厚中央に相当する位置にオフセットすることにより、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を作成する(S1b)。ここで、必要に応じて、第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13は、エッジ(輪郭)付近のノイズを除去する操作を行ってもよい。
本実施の形態では、第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13に対してエッジ(外周部)を含めてノイズを除去した上で一辺が約1.2mmの三角形要素にリメッシュを行い、第1プレス成形品ワーク形状モデル15の板厚は初期板厚1.4mmのまま一定として扱い、板厚(=1.4mm)中央相当になるように板厚の半分(=0.7mm)だけオフセットし、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を作成した。ここで、板厚を一定とせず、要素ごと、或いは領域ごとに測定した板厚を与えてもよい。なお、第1プレス成形品ワーク形状モデル15をシェル要素で作成するかわりに、取得した表面側の第1プレス成形品三次元表面形状測定データを板厚分だけ裏面側にオフセットさせて裏面側の第1プレス成形品三次元表面形状測定データを作成し、あるいは表面側及び裏面側それぞれの第1プレス成形品三次元表面形状測定データを測定することで表裏両面の第1プレス成形品三次元表面形状測定データを取得し、これら表裏両面の第1プレス成形品三次元表面形状測定データに挟まれた三次元空間を、ソリッド要素に分割して第1プレス成形品ワーク形状モデルを作成する方法を用いてもよい。
【0027】
次に、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1で挟み込める位置に配置する(S1c)。このとき、第1プレス成形品ワーク形状モデル15の位置決めは、第1金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程において第1プレス成形品ワーク形状モデル15が大きくずれないように大まかに手動で調整するとよい。
【0028】
具体的には、第1プレス成形品ワーク形状モデル15と第1金型モデル1の稜線部形状や外周形状、位置決め穴/ピンなどの特徴形状を目印に、第1金型モデル1で挟んだ際に、第1プレス成形品ワーク形状モデル15の特徴形状部位がずれないように平行移動及び/又は回転移動を行う。
あるいは、一旦、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1の下型モデル3を基準としてベストフィット等の自動的な位置合わせを行い、続いて、上型モデル5をプレス成形方向に沿って下型モデル3と接触しないところまで平行移動させてもよい。
【0029】
次に、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1で挟む過程の弾性力学的解析を行い(S1d)、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17を取得する。
【0030】
第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1において弾性力学的解析を行う理由は以下のとおりである。
第1金型モデル1で挟み込んで取得した成形下死点での第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17は、次の第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3におけるスプリングバック解析により第1金型モデル1で挟み込む前の第1プレス成形品ワーク形状モデル15の形状に戻すことで、適切にスプリングバック量を算出するためである。
そして、本実施の形態では、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1における弾性力学的解析として、弾性有限要素解析を行う(図2(d)、S1d)。
【0031】
このように、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性有限要素解析を行うことにより、第1金型モデル1を基準として第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17の位置合わせが可能となる。
【0032】
≪第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップ≫
第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3は、図2(e)に示すように、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1において取得した第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に生じたスプリングバック量を第1のプレス成形品11のスプリングバック量として算出するステップである。
【0033】
第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3でのスプリングバック解析において第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に対して拘束条件を与える理由は以下の2つである。
【0034】
まず、1つ目の理由は、力学的に安定的な解を得るために必要な措置であり、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17の並進方向及び回転方向に制約条件を与えることで、複数の解が発生することを防止するためである。
【0035】
2つ目の理由は、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17の寸法及び形状の精度を評価する上で、基準となる部位を設定するためである。
したがって、第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3において与える所定の拘束条件は、上記の1つ目の理由で述べた複数の解が発生しないことを前提として、各々のプレス成形品の用途や品質評価基準にしたがい、適宜設定すればよい。
【0036】
所定の拘束条件の代表的な例としては、(1)ある基準領域、例えばブランクの金型における位置決め用に設定されたブランク(プレス成形品)上の基準形状(穴や座面)の内部又は周辺部の1点又は複数点に対し、並進及び回転方向の拘束を付与する条件、(2)プレス成形品上の離れた3点について、それぞれ三次元空間の並進方向のうち3方向固定、2方向固定又は1方向固定を与える条件、等が挙げられる。
【0037】
本実施の形態では、図3(a)に示すように、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に三つの拘束点A、拘束点B及び拘束点Cを設定し、拘束点AについてはY方向とZ方向の並進及び回転方向の拘束を付与する条件(以下、「YZ固定」と称する)を与え、拘束点BについてはX方向、Y方向及びZ方向の並進及び回転方向の拘束を付与する条件(以下、「XYZ固定」と称する)を与え、拘束点CについてはZ方向の並進及び回転方向拘束を付与する条件(以下、「Z固定」と称する)を与えた。
【0038】
また、第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3におけるスプリングバック解析として、弾性有限要素解析を行う。これにより、スプリングバックした後の第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17は、第1金型モデル1で挟み込む前の第1プレス成形品ワーク形状モデル15、すなわち、第1のプレス成形品11と同じ形状に戻り、第1のプレス成形品11に生じたスプリングバック量を適切に算出することができる。
【0039】
≪第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップ≫
第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5は、図2に示すように、スプリングバック後の第2のプレス成形品21の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23から第2プレス成形品ワーク形状モデル25を作成し、第2プレス成形品ワーク形状モデル25を第1金型モデル1と同一の第2金型モデル7によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27を取得するステップである。
【0040】
第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5において第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27を取得する具体的な手順は、前述した第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1と同様である(図2、S1a~S1d)。
さらに、本実施の形態において、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5での弾性力学的解析は、前述した第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1と同様に、弾性有限要素解析を行う。
【0041】
なお、本実施の形態においては、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5を実行するに先立って、第2金型モデル7(図2(d))を予め取得しておく。第2金型モデル7は、第1金型モデル1と同一のものであってもよいし、第1金型モデル1と同一形状である別のものであってもよい。
【0042】
≪第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップ≫
第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップS7は、図2(e)に示すように、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5において取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27に第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3において第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に与えた所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27に生じたスプリングバック量を第2のプレス成形品21のスプリングバック量として算出するステップである。
【0043】
本実施の形態では、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に設定した拘束条件(図3(a))と同様、図3(b)に示すように、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27に三つの拘束点A、拘束点B及び拘束点Cを設定し、拘束点AにはYZ固定、拘束点BにはXYZ固定、及び、拘束点CにはZ固定の拘束条件を与えた。
【0044】
また、第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップS7におけるスプリングバック解析として、弾性有限要素解析を行う。これにより、前述した第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3と同様、第2のプレス成形品21に生じたスプリングバック量を適切に算出することができる。
【0045】
≪スプリングバック量比較・評価ステップ≫
スプリングバック量比較・評価ステップS9は、図1に示すように、第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3において算出した第1のプレス成形品11のスプリングバック量と、第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップS7において算出した第2のプレス成形品21のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するステップである。
【0046】
本実施の形態は、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を基準として、第2のプレス成形品21のスプリングバック量を評価した。
図3に、一例として、(a)第1のプレス成形品11のスプリングバック量として算出した第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17のスプリングバック量のコンター図、(b)第2のプレス成形品21のスプリングバック量として算出した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27のスプリングバック量のコンター図、(c)第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17のスプリングバック量に対する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27のスプリングバック量の差分のコンター図、を示す。
図3(c)に示す乖離量は、第2のプレス成形品21のZ方向(金型ストローク方向)のスプリングバック量の乖離量の分布を示したものである。この乖離量の算出においては、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17と第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27の位置合わせを改めて行っていない。
図3(c)に示した乖離量の結果から、第2のプレス成形品21は、第1のプレス成形品11に対して、長手方向左端部(図中の破線楕円で示した部位)のスプリングバック量が+側(成形品高さ方向のプラス側)に振れ、長手方向中央部上側(図中の点線楕円で示した部位)の-方向の変位がマイナス側に振れた結果となった。これより、第2のプレス成形品21は、第1のプレス成形品11に対して長手方向左端部の下部を持ち上げる形でねじれていることが分かった。
【0047】
このように、本実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法においては、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を算出するための第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17と、第2のプレス成形品のスプリングバック量を算出するための第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27と、がいずれも、同一の第1金型モデル1及び第2金型モデル7で位置合わせがされたものであるため、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を基準として第2のプレス成形品21のスプリングバック量を直接比較し、適切に評価することが可能となる。
【0048】
また、上記の説明は、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を基準として、第2のプレス成形品21のスプリングバック量を評価する場合についてのものであったが、本発明は、第2のプレス成形品21のスプリングバック量を基準として、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を比較するものであってもよい。これにより、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を適切に評価することが可能となる。
これにより、プレス成形品の量産時における寸法精度変動の一因であるスプリングバックの量及び形態の変化を適切に評価すれば、例えば金型の摩耗や変形等の成形条件の変動の兆候を把握できるので、プレス成形品の寸法精度不良の大量発生を抑止できる。また生産準備段階において、意図的に複数の異なるプレス条件を与えてプレス成形を行い、得られたプレス成形品同士を比較することで、変動の原因を把握し、適切に対策することで、寸法精度変動の少ない、良好なプレス成形品を安定して得ることができる。
【0049】
<プレス成形品のスプリングバック量評価装置>
本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置31(以下、「スプリングバック量評価装置31」という)は、一例として図2(a)に示すように、異なる成形条件で同一の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品11と第2のプレス成形品21のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、図4に示すように、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33と、第1プレス成形品スプリングバック量算出部35と、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37と、第2プレス成形品スプリングバック量算出部39と、スプリングバック量比較・評価部41と、を備えたものである。
【0050】
スプリングバック量評価装置31は、コンピュータ(PC等)のCPU(中央演算処理装置)によって構成されたものであってもよい。この場合、上記の各部は、コンピュータのCPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
【0051】
≪第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部≫
第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33は、スプリングバック後の第1のプレス成形品11の表面形状を測定して取得した第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13から第1プレス成形品ワーク形状モデル15を作成し、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を金型の第1金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17を取得するものである。
【0052】
本実施の形態において、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33は、前述したプレス成形品のスプリングバック量評価方法の第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS1を実行する。
【0053】
なお、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33により第1プレス成形品三次元表面形状測定データ13から作成した第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1にセットするときの位置決めは、第1金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程において第1プレス成形品ワーク形状モデル15が大きくずれないように、操作者が大まかに手動で調整するとよい。
【0054】
あるいは、一旦、第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1の下型モデル3を基準としてベストフィット等の自動的な位置合わせを行い、続いて、上型モデル5をプレス成形方向に沿って下型モデル3と接触しないところまで操作者が手動で第1プレス成形品ワーク形状モデル15を平行移動させてもよい。
【0055】
≪第1プレス成形品スプリングバック量算出部≫
第1プレス成形品スプリングバック量算出部35は、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33により取得した第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に生じたスプリングバック量を第1のプレス成形品11のスプリングバック量として算出するものである。
【0056】
本実施の形態において、第1プレス成形品スプリングバック量算出部35は、前述したプレス成形品のスプリングバック量評価方法の第1プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3を実行する。
【0057】
≪第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部≫
第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37は、スプリングバック後の第2のプレス成形品21の表面形状を測定して取得した第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23から第2プレス成形品ワーク形状モデル25を作成し、第2プレス成形品ワーク形状モデル25を第1金型モデル1と同一の第2金型モデル7によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27を取得するものである。
【0058】
本実施の形態において、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37は、前述したプレス成形品のスプリングバック量評価方法の第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得ステップS5を実行する。
【0059】
なお、本実施の形態では、第2プレス成形品三次元表面形状測定データ23に対しては、前述した第1プレス成形品ワーク形状モデル15の作成と同様に、ノイズ除去、リメッシュ及びオフセットを施し、第2プレス成形品ワーク形状モデル25を作成した。
【0060】
さらに、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37により第2プレス成形品ワーク形状モデル25を第2金型モデル7にセットするときの位置決めは、前述した第1プレス成形品ワーク形状モデル15を第1金型モデル1にセットするときと同様に行えばよい。
【0061】
≪第2プレス成形品スプリングバック量算出部≫
第2プレス成形品スプリングバック量算出部39は、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37により取得した第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27に第1プレス成形品スプリングバック量算出部35により第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17に与えた所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27に生じたスプリングバック量を第2のプレス成形品21のスプリングバック量として算出するものである。
【0062】
本実施の形態において、第2プレス成形品スプリングバック量算出部39は、前述したプレス成形品のスプリングバック量評価方法の第2プレス成形品スプリングバック量算出ステップS7を実行する。
【0063】
≪スプリングバック量比較・評価部≫
スプリングバック量比較・評価部41は、第1プレス成形品スプリングバック量算出部35により算出した第1のプレス成形品11のスプリングバック量と、第2プレス成形品スプリングバック量算出部39により算出した第2のプレス成形品21のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するものである。
【0064】
本実施の形態において、スプリングバック量比較・評価部41は、前述したプレス成形品のスプリングバック量評価方法のスプリングバック量比較・評価ステップS9を実行する。
【0065】
<プレス成形品のスプリングバック量評価プログラム>
本発明の実施の形態は、プレス成形品のスプリングバック量評価プログラムとして構成することができる。
すなわち、本発明の実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムは、異なる成形条件で同一の金型を用いてプレス成形された第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のスプリングバック量を比較し、それぞれを評価するものであって、図4に示すように、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部33と、第1プレス成形品スプリングバック量算出部35と、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部37と、第2プレス成形品スプリングバック量算出部39と、スプリングバック量比較・評価部41と、して実行させる機能を有するものである。
【0066】
以上、本実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置及びプログラムにおいても、前述した本実施の形態に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法と同様に、第1のプレス成形品11のスプリングバック量として算出する第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17と、第2のプレス成形品21のスプリングバック量として算出する第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27と、は、いずれも、同一の第1金型モデル1及び第2金型モデル7で位置合わせがされたものであるため、第1のプレス成形品11のスプリングバック量を基準として第2のプレス成形品21のスプリングバック量を比較して評価することが可能となる。
【0067】
さらに、本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置及びプログラムは、第2のプレス成形品のスプリングバック量を基準として、第1のプレス成形品のスプリングバック量を比較することにより、第1のプレス成形品のスプリングバック量を評価することが可能となる。
これにより、プレス成形品の量産時における寸法精度変動の一因であるスプリングバックの量及び形態の変化を適切に評価すれば、例えば金型の摩耗や変形等の成形条件の変動の兆候を把握できるので、プレス成形品の寸法精度不良の大量発生を抑止できる。また生産準備段階において、意図的に複数の異なるプレス条件を与えてプレス成形を行い、得られたプレス成形品同士を比較することで、変動の原因を把握し、適切に対策することで、寸法精度変動の少ない、良好なプレス成形品を安定して得ることができる。
【0068】
なお、上記の説明において、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17を成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析で用いる第1金型モデル1と、第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27を成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析で用いる第2金型モデル7と、は同一のものであったが、本発明において、第1金型モデルと第2金型モデルは同形状のものであってもよい。
【0069】
また、上記の本発明の実施の形態に係る説明は、第1のプレス成形品11及び第2のプレス成形品21の全体を単一工程でプレス成形する場合を対象とするものであった。もっとも、本発明は、第1のプレス成形品及び第2のプレス成形品をプレス成形する過程が部位ごとに複数工程に分かれている場合であってもよい。
この場合、本発明は、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル及び第2プレス成形品ワーク下死点形状モデルのスプリングバック量の算出に用いる第1金型モデル及び第2金型モデルは、第1のプレス成形品及び第2のプレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデル(第1金型モデル及び第2金型モデル)とすればよい。
【0070】
さらに、第1プレス成形品ワーク形状モデル及び第2プレス成形品ワーク形状モデルを成形下死点まで挟み込み過程の解析においては、第1のプレス成形品及び第2のプレス成形品の一部の部位を成形する金型の金型モデルを用いてもよい。
そして、金型モデルにより第1プレス成形品ワーク形状モデルを挟み込んだ部位と、当該部位に相当する第2プレス成形品ワーク形状モデルにおける部位と、を位置合わせすればよい。
【0071】
第1のプレス成形品と第2のプレス成形品のいずれか一方は、その三次元表面形状測定データの代わりに目標形状設計データ(第1プレス成形品目標形状設計データ又は第2プレス成形品目標形状設計データ)を用いてもよい。これにより、スプリングバックによる設計目標形状からの乖離を評価することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態は、下型と上型とを備えた金型により第1のプレス成形品11及び第2のプレス成形品21をフォーム成形する場合を対象とするものであったが、ドロー成形の場合には上型と協働してブランクを挟持するクッションが金型に備えられている。この場合、第1金型モデル及び第2金型モデルは、クッションモデル(図示なし)を備えたものとし、クッションモデルをはじめから成形下死点位置に配置し、第1プレス成形品ワーク形状モデル及び第2プレス成形品ワーク形状モデルを下型モデルと上型モデルとで挟み込む過程の解析を行えばよい。
【0073】
また、上記の説明において、金型の成形下死点とは、下型と上型との間の間隔がブランクの板厚と同等となった時点である場合を想定したものであった。もっとも、本発明において、成形下死点とは、成形下死点の手前(5mmや10mm等、10mm以内)で金型を止めた場合を含み、成形下死点手前まで成形した第1のプレス成形品と第2のプレス成形品との比較を行うものであってもよい。
【0074】
また、本実施の形態において第1プレス成形品ワーク形状モデル15、第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル17、第2プレス成形品ワーク形状モデル25及び第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル27は、いずれも、シェル要素(例えば、三角形要素)でモデル化されたものであったが、本発明は、ソリッド要素でモデル化されたものであってもよい。
【0075】
なお、本実施の形態で用いた第1金型モデル1、第2金型モデル7は剛体であったが、本発明において、金型モデルは弾性体であってもよいし、弾塑性体であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 第1金型モデル
3 下型モデル
5 上型モデル
7 第2金型モデル
11 第1のプレス成形品
13 第1プレス成形品三次元表面形状測定データ
13a パンチ底部
15 第1プレス成形品ワーク形状モデル
17 第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル
21 第2のプレス成形品
23 第2プレス成形品三次元表面形状測定データ
23a パンチ底部
25 第2プレス成形品ワーク形状モデル
27 第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル
31 プレス成形品のスプリングバック量評価装置
33 第1プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部
35 第1プレス成形品スプリングバック量算出部
37 第2プレス成形品ワーク下死点形状モデル取得部
39 第2プレス成形品スプリングバック量算出部
41 スプリングバック量比較・評価部
図1
図2
図3
図4
図5