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特開2023-10292ダイノズルおよびそれを用いた塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010292
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ダイノズルおよびそれを用いた塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230113BHJP
   B05C 11/04 20060101ALI20230113BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/04
H01M4/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114328
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】上山 康博
(72)【発明者】
【氏名】森 将人
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA13
4F041CA23
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA25
4F042DD10
4F042DD22
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA22
5H050GA29
5H050GA30
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料を基材に塗布乾燥して機能性薄膜を形成する塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布装置は、ロール上に連続走行させる基材の上に塗料を塗布する液供給ノズルと、液供給ノズルに塗料を供給する送液手段と、を備え、基材がノズルに対して接近する方を上流、基材がノズルに対して離合して行く方を下流と定義した場合、液供給ノズルは、少なくとも基材の走行方向に沿って下流側ノズルを画成する第1ブロックと上流側ノズルを画成する第2ブロックとによって構成され、第1ブロックの先端には、凹凸形状を有するワイヤーバーが設けられており、ワイヤーバーは、第2ブロックの先端の上面に接している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール上に連続走行する基材の上に塗料を塗布する液供給ノズルと、
前記液供給ノズルに塗料を供給する送液手段と、
を備え、
前記基材が前記液供給ノズルに対して接近する側を上流側、前記基材が前記液供給ノズルに対して離合して行く側を下流側と定義した場合、前記液供給ノズルは、少なくとも前記基材の走行方向に沿って下流側ノズルを画成する第1ブロックと上流側ノズルを画成する第2ブロックとによって構成され、
前記第1ブロックの先端には、凹凸形状を有するワイヤーバーが設けられており、前記ワイヤーバーは、前記第2ブロックの先端の上面に接している、ダイノズル。
【請求項2】
前記第1ブロックは、前記下流側ノズルの先端の凹凸の底面と頂点との差が50~300μmとした凹凸形状を有する部材である、請求項1に記載のダイノズル。
【請求項3】
前記液供給ノズルのスリットギャップは0.1mm以上、2mm以下である、請求項1又は2に記載のダイノズル。
【請求項4】
前記液供給ノズルに設けた上流側の前記第2ブロックの先端のリップ面は平面状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のダイノズル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の前記ダイノズルと、
前記ダイノズルの前記液供給ノズルと対向する位置に設けられ、前記基材を連続走行させるロールと、
を備え、
前記ロールは、前記ダイノズルの前記液供給ノズルと対面する範囲に樹脂からなる部材を配置してなる、塗布装置。
【請求項6】
前記ロールは、直径が50mm以上である、請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の塗布装置を用いた電池電極の製造方法であって、前記送液手段により前記液供給ノズルに供給した活物質ペーストを連続走行する前記基材である集電体上に塗布する塗布工程を有し、
前記活物質ペーストを前記第1ブロックの先端に設けられた前記ワイヤーバーの凹凸形状と前記第2ブロックの先端の平面との間から吐出し、前記集電体上に塗布形成する、電池電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料を基材に塗布乾燥し、機能性薄膜を形成するダイノズルおよびそれを用いた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイノズルおよびそれを用いた塗布装置としては、ダイノズルから塗布液を押し出しながら基材に塗膜形成するダイ方式や、グラビア版の凹部に塗布液を転移しドクターブレードにより表面の塗布液をそぎ落とし、基材に転写するグラビア方式を用いた装置がある。それらの装置を用いて直接基材に塗布して機能性薄膜を形成する。
【0003】
一般的に薄い機能性薄膜の形成にはグラビア方式が優れているが、広範囲への機能性薄膜形成においてはダイノズル方式が優れる。そこで、薄い機能性薄膜の形成において、ダイノズル方式を用いる場合、ノズル先端に配置されたバーコータの両側に形成されたスリット部より塗料を両側から供給し、余剰のインクを片側から排出する装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図8は、特許文献1に記載された従来の塗布装置と展開図を示す図である。
所定量の塗布液812をウェブ811の搬送方向の上流側と下流側とから回転するバー829に供給することと、排出をする機構を有することとによって、薄い機能性薄膜を形成することを可能としている。
【0005】
また、従来のダイノズル方式の塗布装置として、下向きに設置されたノズル先端が塗布対象物に接触して塗布される際にノズル内に多孔質部材を埋設して多孔質部材が塗布対象物に接触するように塗布する装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
図9は、特許文献2に記載された従来の塗布装置を示す図である。この従来の塗布装置は、多孔質材と塗布対象物とが当接して塗布対象物に塗布液を塗布する装置である。この塗布装置は、一端から塗布液が供給され、他端から前記塗布液を塗布対象物に塗布する多孔質材と、前記塗布対象物と前記多孔質材とを相対的に移動させる搬送機と、前記多孔質材の一端に前記塗布液を供給する液供給ノズルとを有する。この塗布装置によれば、他端側領域の前記多孔質材の気泡径は一端領域の前記多孔質材の気泡径より大きい。そこで、多孔質材の塗布液が供給される領域の気泡径を、基板と当接する領域の気泡径よりも小さくすると共に、多孔質材の幅方向にわたり均一に塗布液を供給することができる。これにより、反りやうねりが存在する基板であっても、容易にかつ均一に膜を塗布することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5150907号公報
【特許文献2】特許第5442054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、塗布量を調整するバー829の回転運動に伴ってウェブ811に塗布液を塗布するバーコータを用いた塗布装置において、上流キャビティーブロック823及び下流キャビティーブロック824を中央に配置された基本ブロック850、853と、基本ブロック850、853の両端に配置された幅決めブロック851、852、854、855とから構成される。このため、各基本ブロックの寸法精度及びバーコータ―の寸法精度、加えて基本ブロックの精密な組み立て精度が要求される。部品寸法精度、及び組み立て精度に問題があると、塗りムラや塗工スジが発生し、安定した塗膜形成が困難となる。また、バーコータが回転する機構となっているため、摺動部の摩耗により部品の寸法が経時変化するため、高度かつ頻度高くメンテナンスが必要となる課題を有していた。また、非常に高い寸法精度が求められるため、部品のコストが非常に高価になる課題を有している。
【0009】
前記特許文献2の構成では塗布液が微粒子を含む塗布液を用いる場合、その微粒子が多孔質材の孔に閉塞するため、時間とともに孔の閉塞が増加する。従って、塗布液を安定的に供給することが困難となる。一定時間使用した後、洗浄を行う工程の増加や、洗浄でも孔の閉塞が十分解消できない場合は、塗膜形成ばらつきや、多孔質材が消耗品となり部品交換となる課題を有していた。また、塗布対象物にノズル部が線状に接触するため、基材へのダメージや、ノズル部の摩耗による膜厚の経時変化によるばらつきが発生する課題を有していた。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するもので、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料を基材に塗布乾燥して機能性薄膜を形成するダイノズルおよびそれを用いた塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るダイノズルは、ロール上に連続走行させる基材の上に塗料を塗布する液供給ノズルと、液供給ノズルに塗料を供給する送液手段と、を備え、基材が液供給ノズルに対して接近する側を上流側、基材が液供給ノズルに対して離合して行く側を下流側と定義した場合、液供給ノズルは、少なくとも基材の走行方向に沿って下流側ノズルを画成する第1ブロックと上流側ノズルを画成する第2ブロックとによって構成され、第1ブロックの先端には、凹凸形状を有するワイヤーバーが設けられており、ワイヤーバーは、第2ブロックの先端の上面に接している。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係るダイノズルおよびそれを用いた塗布装置によれば、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料をばらつきが少なく、かつ摩耗によるダイコート部の部品消耗も低減し、基材に塗布乾燥して薄い機能性薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係るダイノズルおよびそれを用いた塗布装置の基本構成を示す概略断面図である。
図2】実施の形態1に係る塗布装置における第1ブロックの先端に設けられたワイヤーバーの形状を示す拡大図である。
図3-1】実施の形態1に係る塗布装置における液供給ノズルの拡大図である。
図3-2】図3-1の上流側の第2ブロックの先端のリップ面を示す概略部分拡大図である。
図3-3】図3-1の液供給ノズルの構成を示す分解斜視図である。
図4】実施の形態1における機能性薄膜の形成プロセスの概略図である。
図5】実施の形態2に係るワイヤーバーの緩衝機能を有するダイノズル及び塗布装置の断面構成を示す概略断面図である。
図6】実施の形態2に係る塗布装置におけるワイヤーバーの荷重制御部を有する液供給ノズルの拡大図である。
図7】実施の形態2に係る塗布装置における緩衝機能を有するロールの概略図である。
図8】特許文献1に記載された従来の塗布装置の展開図である。
図9】特許文献2に記載された従来の塗布装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様に係るダイノズルは、ロール上に連続走行する基材の上に塗料を塗布する液供給ノズルと、液供給ノズルに塗料を供給する送液手段と、を備え、基材が液供給ノズルに対して接近する側を上流側、基材が液供給ノズルに対して離合して行く側を下流側と定義した場合、液供給ノズルは、少なくとも基材の走行方向に沿って下流側ノズルを画成する第1ブロックと上流側ノズルを画成する第2ブロックとによって構成され、第1ブロックの先端には、凹凸形状を有するワイヤーバーが設けられており、ワイヤーバーは、第2ブロックの先端の上面に接している。
【0015】
本構成による下流側の第1ブロック106の先端に凹凸となるR曲面を有するワイヤーバー108の凹凸部であるブレードを配置することで、ワイヤーバー108を基材に接触させて塗布することが可能となる。ワイヤーバー108のR曲面が凹凸を有することでインクの流路が狭められることで流速が上がり基材への安定した塗膜形成が可能となる。また、上流側の第2ブロック107の先端に、上記ブレードを接触させることで、開口面積が狭くなり、送液量が微量でもノズル先端までインクを供給することが可能となり、薄い膜形成が可能となる。
【0016】
第2の態様に係るダイノズルは、上記第1の態様において、前記第1ブロックは、前記下流側ノズルの先端の凹凸の底面と頂点との差が50~300μmとした凹凸形状を有する部材であってもよい。
【0017】
第3の態様に係るダイノズルは、上記第1又は第2の態様において、前記液供給ノズルのスリットギャップは0.1mm以上、2mm以下であってもよい。
【0018】
第4の態様に係るダイノズルは、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記液供給ノズルに設けた上流側の第2ブロックの先端のリップ面は平面状であってもよい。
【0019】
第5の態様に係る塗布装置は、上記第1から第4のいずれかの態様に係るダイノズルと、ダイノズルの液供給ノズルと対向する位置に設けられ、基材を連続走行させるロールと、を備え、ロールは、液供給ノズルと対面する範囲に樹脂からなる部材を配置してなる。
【0020】
第6の態様に係る塗布装置は、上記第5の態様において、ロールは、直径が50mm以上としてもよい。
【0021】
第7の態様に係る電池電極の製造方法は、上記第5又は第6の態様に係る塗布装置を用いた電池電極の製造方法であって、送液手段により液供給ノズルに供給した活物質ペーストを連続走行する基材である集電体上に塗布する塗布工程を有し、活物質ペーストを第1ブロックの先端に設けられたワイヤーバーの凹凸形状と第2ブロックの先端の平面との間から吐出し、集電体上に塗布形成する。
【0022】
以下、実施の形態に係るダイノズル及び塗布装置について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るダイノズル100およびそれを用いた塗布装置200の基本構成を示す概略断面図である。なお、図面において、便宜上、塗料の塗布方向をX方向、鉛直上方をZ方向、紙面の奥行き方向をY方向(幅方向)として示している。
このダイノズル100は、液供給ノズル105と、連続走行するロール110の上の基材109に塗料を塗布する液供給ノズル105に塗料を供給する送液手段と、を備える。ここで、基材109が液供給ノズル105に対して接近する側を上流側、基材109が液供給ノズル105に対して離合して行く側を下流側と定義する。液供給ノズル105は、下流側ノズルを画成する第1ブロック106と上流側ノズルを画成する第2ブロック107とで構成されている。第1ブロック106の先端には、凹凸形状を有するワイヤーバー108が設けられている。ワイヤーバー108は、第2ブロック107の先端の上面に接触している。また、ワイヤーバー108は、Y方向に延在している。
【0024】
このダイノズル100によれば、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料をばらつきが少なく、かつ摩耗によるダイコート部の部品消耗も低減し、基材に塗布乾燥して薄い機能性薄膜を形成することができる。
【0025】
また、上記ダイノズル100と、ダイノズル100の液供給ノズル105と対向する位置に設けられ、基材109を連続走行させるロール110と、によって塗布装置200を構成する。
【0026】
以下に、この塗布装置200を構成する各部材について説明する。
【0027】
<塗料>
塗料である塗布液101は、例えば、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料である。
【0028】
<送液手段>
送液手段は、例えば、塗布液101を入れるタンク部102と、塗布液101を精度よく定量に送る送液機構103と、塗布液を水平方向(XY面内)へ広げる液スプレッド機構104と、を含む。
【0029】
<液供給ノズル>
液供給ノズル105は、上流側ノズルを画成する第1ブロック106と下流側ノズルを画成する第2ブロック107とによって構成される。第1ブロック106の先端には、凹凸形状を有するワイヤーバー108が設けられている。ワイヤーバー108は、第2ブロック107の先端の上面に接している。なお、ワイヤーバー108は、図2に示すように、Y方向に延在している。
【0030】
<ロール>
ロール110は、薄膜を形成する基材109を巻き付けて、連続走行が可能である。また、ロール110は、X方向について液供給ノズル105と対向して配置されている。ロール110は、時計回りに回転可能である。
【0031】
図2は、実施の形態1に係る塗布装置における第1ブロックの先端に設けられたワイヤーバー108の形状を示す拡大図である。ワイヤーバー108には、R曲面201が施されており、寸法Aを凹凸ピッチ、寸法Bを凹凸高さと定義する。
【0032】
図3-1は、実施の形態1に係る塗布装置における液供給ノズル105の拡大図である。図3-2は、図3-1の上流側の第2ブロック107の先端のリップ面202を示す概略部分拡大図である。図3-3は、図3-1の液供給ノズル105の構成を示す分解斜視図である。
図3-1乃至図3-3を用いて、詳細を説明する。本実施の形態1に係る塗布装置の液供給ノズル105は、まず塗布幅以上の幅を有する2枚のSUSやAl等からなる第1ブロック106の先端に機械加工によりR曲面が設けられたワイヤーバー108が埋設されている。そのワイヤーバー108は、第2ブロック107の上面に接触した構造となっている。例えば、機能性粉末の平均粒径が2μmの場合、ワイヤーバー108のR曲面の凹凸ピッチAは、例えば、100μmであり、凹凸高さBは、例えば、50~300μmとしてもよい。ワイヤーバー108の凹凸ピッチA、R曲面201としては、金属製丸棒に当該の寸法の金属ワイヤーを巻き付けたものであってもよく、金属丸棒を切削して凹凸形状になるよう機械加工してもよい。
【0033】
塗膜形成プロセスに関して図1を用いて説明する。
(1)所定の速度で塗布液101が送液機構103を介して液供給ノズル105へ供給され、ワイヤーバー108の凹凸部を通り、基材109上に塗布膜111を形成する。
(2)塗布膜の幅は塗布液を水平方向へ広げる液スプレッド機構104により幅方向へ広がり、所定の幅となるように制御される。
(3)塗布液が基材109に塗布される際、第1ブロック106の先端に設けられたワイヤーバー108がR曲面の凹凸を有することでインクの流路が狭められ、塗布液の流速が上がり基材109に高精度な薄膜形成が可能となる。加えて第2ブロック107の先端に上記ワイヤーバーの凹凸部であるブレードを接触させることで、開口面積が極小でも安定に制御されるため、送液量が微量でもばらつきなく、ノズル先端までインクを供給することが可能となる。
(4)ワイヤーバー108の凹凸部から出てきた塗布液が第2ブロック107の先端で液だまりを形成して、基材109の表面に薄膜形成することが可能となる。図3-2に示すように、第2ブロック107の先端部をリップ面202と称するが、形状は鋭角なエッジでもよく、平らな部分を設けた形状でもよく、塗布液の流動性や薄膜の厚みによって選択することが可能である。なお、リップ面202は、例えば、0.1mm程度のわずかな平面であってもよい。
【0034】
塗膜の厚みは液供給ノズルのスリットギャップ301が重要となる。塗布直後の未乾燥状態での厚みが15μm~1mmの薄い膜を形成する場合、スリットギャップ301は、0.1mm以上、2mm以下にて設定する。塗布液の粘度やチクソ性によりそのスリットギャップが決定されることが望ましい。
【0035】
このように安定的に供給された塗布液は、ロール110に巻き付けられた基材109に塗布され、薄い機能性薄膜111が形成される。
【0036】
図4(a)から(c)は、機能性薄膜形成プロセスにおける塗布面の表面形状の時間変化を示す概略断面図である。
塗布直後はノズル先端部に設けられたワイヤーバー108のR曲面形状が転写されR曲面形状401となる(図4(a))が、時間とともに、塗布液が水平方向へだれ、平滑な塗膜402が形成される(図4(b))。乾燥後、機能性薄膜111となる(図4(c))。乾燥するまでに平滑な塗膜となる必要があるため、塗布液の粘度を調整する揮発性溶媒の濃度などを用いて塗布液を調整する。
【0037】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係るワイヤーバー108の緩衝機構501を有するダイノズル100a及び塗布装置200aの断面構成を示す概略断面図である。図5では、ワイヤーバー108がロール110の対向方向へ動作可能となる緩衝機構501を有する塗布装置の全体図を示す。
【0038】
さらなる課題として、機能性薄膜111を形成する基材109によっては、厚みの寸法精度が一定となっていない部材がある場合がある。このような場合、下流側ノズルには、ノズルの先端が凹凸形状を有するワイヤーバー108が設けられており、ロール110にて送られた基材109にワイヤーバー108が接する状態で塗布液が塗布される。
そのため、基材109の厚みのばらつきにより、ワイヤーバー108が基材109に平行に接する状態が妨げられ、局所的に基材109を削る、もしくはワイヤーバー108が基材109に接触しないため、厚く塗膜形成される場合が発生する。その場合、塗りムラや塗工スジの発生、および、基材109へのダメージを与える可能性がある。
【0039】
また、特に薄い機能性薄膜を形成するためには、安定した塗布液の塗布を行うため、ノズルとロール110との平行度が重要となる。部材の取り付け精度や部品の寸法精度が十分でない場合、上記同様に、ワイヤーバー108が基材109に平行に接する状態が妨げられ、局所的に基材109を削る、もしくはワイヤーバー108が基材109に接触しないため、厚く塗膜形成される場合が発生する。その場合、塗りムラや塗工スジの発生および、基材109へのダメージを与える可能性がある。
【0040】
そこで、実施の形態2に係るダイノズル100a及び塗布装置200aでは、ワイヤーバー108が取り付けられる部分に緩衝機構501を設けている。これにより、基材109の寸法精度のばらつきやノズルとロール110の平行度を担保することが可能となり、安定した塗膜液の塗布により、薄い機能性薄膜の形成が可能となる。
【0041】
図6は、実施の形態2に係る塗布装置におけるワイヤーバーの荷重制御部を有する液供給ノズルの拡大図である。
上流側ノズルは、ノズルの先端に凹凸形状を有するワイヤーバー108と、ワイヤーバー108がロール110の対向方向へ動作可能となる緩衝機構501と、加重制御部と、を有する。
【0042】
緩衝機構501としては、例えば、樹脂材料や粘弾性特性を有するエラストマー材料を用いることができる。
【0043】
加重制御部は、取り付けにばね601を設けることにより、一定加重にてワイヤーバー108とロール110とを接触させることが可能となる。
【0044】
図7は、実施の形態2に係る塗布装置200aにおける緩衝機能701を有するロール110の概略図である。
上述のように、基材109の厚みのばらつきや部材の取り付け精度の低下に起因する基材109を削る、もしくはワイヤーバー108が基材109に接触しないため、厚く塗膜形成される場合が発生する。図7に示すように、ロール110へ緩衝機能701を設けることで、上記の基材109の厚みのばらつきや部材の取り付け精度の低下を吸収でき、これによって、塗りムラや塗工スジの発生および、基材109へのダメージを抑制することができる。
【0045】
ロール110の緩衝機能701としては、例えば、ロール110の表層に樹脂材料や粘弾性特性を有するエラストマー材料などのシートを用いることができる。
【0046】
ここで、前記ワイヤーバー108の素材は、例えば、機能性粉末と結合剤樹脂と溶媒からなる機能性塗料である塗布液により摩耗対策として、金属である鉄系の材料(SUS等)やチタン、Ni合金など耐久性に優れた材料を用いてもよい。
【0047】
また、ワイヤーバー108の摩耗を考慮する必要のない塗布液を用いる場合は、例えば、エンジニアリングプラスチックなどの樹脂材料を用いてもよい。
【0048】
また、基材109へのワイヤーバー108によるダメージが想定される場合も、基材109に応じて硬さを調整したやわらかいプラスチック材料を用いることで、基材109へのダメージもなく薄い機能性薄膜の形成が可能となる。
【0049】
また、本開示に係る塗布装置を用いて、リチウム二次電池に用いる電池電極を製造してもよい。例えば、上記送液手段により液供給ノズルに供給した活物質ペーストを連続走行する基材である集電体上に塗布してもよい。この場合、上記塗布工程において、活物質ペーストを第1ブロックの先端に設けられたワイヤーバーの凹凸形状と第2ブロックの先端の平面との間から吐出し、集電体上に塗布形成できる。
【0050】
この他、プラスチックフィルム基材109への導電性粒子を含有する塗膜液を用いて帯電防止機能膜を形成できる。また、酸化チタン粒子やチタン酸バリウム粒子を含有する塗膜液を用いて反射防止膜などの薄い機能性薄膜も形成できる。
【0051】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るダイノズルおよびそれを用いた塗布装置は、例えば、リチウム二次電池に用いる金属製基材109への活物質材料を含む塗布液を用いて形成する電池電極形成や、プラスチックフィルム基材109への導電性粒子を含有する塗膜液を用いて形成する帯電防止機能膜形成や、酸化チタン粒子やチタン酸バリウム粒子を含有する塗膜液を用いて形成する反射防止膜などの薄い機能性薄膜の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
100 ダイノズル
101 塗布液
102 タンク部
103 送液機構
104 液スプレッド機構
105 液供給ノズル
106 第1ブロック
107 第2ブロック
108 ワイヤーバー
109 基材
110 ロール
111 機能性薄膜
200 塗布装置
201 R曲面
202 リップ面
301 スリットギャップ
401 R曲面形状
402 平滑な塗膜
501 緩衝機構
601 ばね
701 緩衝機能
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7
図8
図9