(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103031
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】注出口栓及び包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/58 20060101AFI20230719BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D81/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003856
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA01
3E067AB01
3E067AB81
3E067BB16A
3E067BB22A
3E067BC08A
3E067CA04
3E067EA32
3E067EA34
3E067EB09
3E067EB32
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れた注出口栓、及び包装容器を提供する。
【解決手段】ポリプロピレンと、エチレンビニルアルコール共重合体と、相溶化剤とが含有され、全質量のうち、ポリプロピレンが30%以上60%以下、エチレンビニルアルコール共重合体が30%以上50%以下、相溶化剤が0%以上30%未満である、注出口栓である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンと、エチレンビニルアルコール共重合体と、相溶化剤とが含有され、
全質量のうち、前記ポリプロピレンが30%以上60%以下、前記エチレンビニルアルコール共重合体が30%以上50%以下、前記相溶化剤が0%以上30%未満である、注出口栓。
【請求項2】
前記ポリプロピレンがブロックコポリマーである、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項3】
前記エチレンビニルアルコール共重合体及び前記ポリプロピレンのいずれか一方のメルトフローレートが、他方のメルトフローレートの2倍以内である、請求項1または2に記載の注出口栓。
【請求項4】
全質量のうち、前記相溶化剤が10%以上25%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の注出口栓。
【請求項5】
表面にウエルドラインを有さない、請求項1~4のいずれかに記載の注出口栓。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の注出口栓と、容器本体とを備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口栓及び包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装容器として、樹脂を主体とした容器本体と口栓とからなる包装容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を注出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部とから構成されるチューブ容器が記載されている。
【0003】
このような包装容器においては、内容物の劣化を抑制するために、容器本体を構成するシート材にアルミニウム箔やバリアフィルムを積層して包装容器にガスバリア性を付与する方法が一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、容器本体にガスバリア性を付与したとしても、従来の包装容器では樹脂製の口栓部分のガスバリア性が不十分であった。中には、ポリプロピレン製の口栓の開口部を封止するようにバリアフィルムを設けることで、包装容器のバリア性を確保する方法も知られているが、使用時にバリアフィルムを取り除いたり破断させたりする必要があり、開封機構や製造方法が複雑であった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ガスバリア性に優れた注出口栓、及び包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、ポリプロピレンと、エチレンビニルアルコール共重合体と、相溶化剤とが含有され、全質量のうち、ポリプロピレンが30%以上60%以下、エチレンビニルアルコール共重合体が30%以上50%以下、相溶化剤が0%以上30%未満である、注出口栓である。
【0008】
本発明の他の局面は、上記口栓と、容器本体とを備える、包装容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスバリア性に優れた注出口栓、及び包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る包装容器の概略構成を示す正面図
【
図2】第1の実施形態に係る注出口栓の概略構成を示す斜視図
【
図3】
図2のIII-IIIラインに対応する断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る包装容器の概略構成を示す正面図であり、
図2は、第1の実施形態に係る注出口栓の概略構成を示す斜視図であり、
図3は、
図2のIII-IIIラインに対応する断面図である。
【0012】
包装容器100は、胴部1と、胴部1に取り付けられた注出口栓2とを備える。包装容器100は、内容物の注出及び再封が可能なチューブ状の容器である。
【0013】
胴部1は、内容物を収容するための部材であり、ガスバリア性に優れたシートにより形成される。胴部1は、略平行な一対の端縁を有するシートの端縁同士を貼り合わせることで形成されている。貼り合わせの方法としては、例えば、シートの一対の端縁のそれぞれを含む帯状領域の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着させる合掌貼りや、シートの一方の端縁を含む帯状領域の外面と、シートの他方の端縁を含む帯状領域の内面とを貼り合わせる封筒貼り、または、シートの両端を突き合わせた突付け部をテープ材でシールする突付けテープ貼りなどの方法が用いられる。これらの方法を用いた貼り合わせにより、胴部1には貼り合わせ部7(背貼り部)が形成される。合掌貼りの場合、貼り合わせ部7は、胴部1の外面に沿うように折り曲げられて胴部1に貼合されても良く、例えば、胴部1を構成するフィルムの表面全体または部分的に設けられるヒートシール性の樹脂を介して溶着しても良いし、ホットメルト等の接着剤を介して接着しても良い。胴部1の一方の端部5a(
図1における下端)はシールされて閉塞されている。一方、胴部1の他方の端部5b(
図1における上端)の近傍部分は、折り畳まれた状態で、後述するフランジ部4の外面8にシールされている。
【0014】
胴部1を形成するシートとしては、内容物側の最内層に無延伸ポリプロピレン(CPP)等のシーラント層を有し、バリア性を備えたシートを使用することができる。胴部1を形成するシートとしては、例えば、バリア性PET/ナイロン/無延伸ポリプロピレン(CPP)の層構成を有するフィルムを用いることができる。
【0015】
なお、胴部1の形状、シート構成、及び製造方法は、胴部1がバリア性を有し、胴部1に注出口栓2を溶着可能であれば特に限定されない。包装容器100は一般的な紙パックやパウチ等であってもよい。
【0016】
注出口栓2は、胴部1に収容された内容物を外部に注出するためのスパウトであり、筒状の注出筒部3とフランジ部4とを備える。フランジ部4は、注出筒部3の一方の端部6a(
図1における下端)に接続され、注出筒部3の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、フランジ部4は、注出筒部3の軸方向と直交する方向(
図1における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、フランジ部4は、円環状に形成されているが、胴部1を接合することができる限り、フランジ部4の形状は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0017】
注出口栓2は、熱可塑性樹脂、バリア樹脂、及び相溶化剤を含む材料により成型される。
【0018】
注出口栓2に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)を用いることができる。また、PPは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれでも良いが、耐衝撃性を高める観点からブロックコポリマーであることが好ましい。本実施形態で用いるポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は25g/10min以上35g/10min以下が好適である。ポリプロピレンのMFRが低過ぎる場合、量産金型を用いる場合の成形性が悪いため好ましくない。ポリプロピレンは、スリップ剤や帯電防止剤、酸化防止剤を含有しないことが好ましい。
【0019】
バリア樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いることができる。エチレンビニルアルコール共重合体のMFRは、例えば、21g/10min(at 210℃)のものを用いることができる。
【0020】
相溶化剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン系の接着性樹脂を用いることができる。注出口栓2に相溶化剤を所定量添加することで、ポリプロピレンとエチレンビニルアルコール共重合体の相溶性が向上し、混合樹脂材料を用いて口栓を成形したときに発生するウエルドライン部の強度(ウエルドの溶着強度)が低下するのを抑制できる。そのため、離型時に割れが生じやすいウエルドラインのクラックの発生を低減させることができる。
【0021】
ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール共重合体の一方のMFRは、他方のMFRの2倍以内であることが好ましい。この条件を満たすポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール共重合体を用いると、両者のMFRが近くなる。MFRを近づけることによって、エチレンビニルアルコール共重合体の分散性を向上させることができる。ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール共重合体の混合樹脂を成形した場合、注出口栓2の表層であるスキン層においてはポリプロピレンの含有割合が相対的に高く、内部のコア層においてはエチレンビニルアルコール共重合体が層状に分布し、ポリプロピレンの含有割合が相対的に低くなる傾向がある。スキン層は、注出口栓2に胴部1を溶着するシール強度に関係しており、高いシール強度を得るために、スキン層におけるポリプロピレンの含有割合が一定以上であることが好ましい。ただし、スキン層の内側にあるコア層のポリプロピレンの含有割合が低すぎると(つまり、コア層のエチレンビニルアルコール共重合体の含有割合が高すぎると)、スキン層とコア層との接合強度が低くなり、スキン層とコア層の層間剥離が生じやすい。この結果、抽出口栓にシールした胴部1がスキン層と共に剥離しやすい。ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール共重合体のMFRが上記条件を満たさない場合、ポリプロピレンを多く含むスキン層の内側に、エチレンビニルアルコール共重合体の層が偏在しやすく、上述したスキン層が剥離しやすいという問題が生じる。本実施形態では、ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール共重合体のMFRが近く、エチレンビニルアルコール共重合体が均一に分散するため、スキン層の内側にエチレンビニルアルコール共重合体が偏在せず、コア層が一定以上のポリプロピレンを含有する混合樹脂により形成されるため、スキン層及びコア層の接合強度が高い。これにより、注出口栓2にバリア性を付与しつつ、注出口栓2に対する胴部1の接合強度(シール強度)を向上させることができる。
【0022】
注出口栓2の全質量のうち、PPは35%以上60%以下、バリア樹脂は30%以上50%以下、相溶化剤は0%以上30%未満であることが好ましい。これにより、注出口栓2はバリア性を有する。また、相溶化材は10%以上25%以下であることがさらに好ましい。これにより、注出口栓2の良好な成型性や胴部1との熱溶着性を維持しつつ、注出口栓2にバリアフィルム並のバリア性を付与でき、割れも抑制することができる。また、注出口栓2は所定量以上のポリプロピレンを含有しているため、包装容器100の胴部1として一般的なレトルトパウチを採用することで、包装容器100にレトルト殺菌処理を施すことも可能となる。
【0023】
注出口栓2の成型方法は特に限定されず、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。射出成形の場合、一般的には、注出筒部3の中心軸に対して点対称な位置に2つのゲートを設けて樹脂を注入することで注出口栓2が成形される。この場合、一方のゲートから注入された樹脂と他方のゲートから注入された樹脂との会合部にウエルドラインが発生する。本実施形態のように、相溶性が低い樹脂をブレンドしたブレンド樹脂を用いる場合、ウエルドラインでの割れが生じやすい。そこで、注出口栓2の割れを抑制すること考慮し、ウエルドラインが形成されない方法で注出口栓2を成形する。ウエルドラインが形成されない注出口栓2の成形方法として、例えば、注出筒部3を閉鎖する閉鎖板が設けられた形状に対応するキャビティと、当該閉鎖板の略中央に対応する位置に設けられたゲートとを有する金型を用い、成形後に、閉鎖板を除去する方法がある。また、金型の加熱と冷却を行うヒートアンドクール方式でウエルドラインの発生を抑えてもよい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、フランジ部4の外面8(注出筒部3の端部6bが接続される面)には、円環状の凸部9及び凹部10が設けられてもよい。フランジ部4に胴部1を溶着する際、凸部9が最初に溶融し、溶融した樹脂が胴部1の内面とフランジ部4との間に広がる。また、溶融した樹脂の一部は凹部10に流れ込む。この結果、凸部9が溶融した樹脂を介して、胴部1の内面とフランジ部4の外面8とを面で溶着することができ、溶着強度を向上できる。
【0025】
包装容器100の製造時に胴部1及び注出口栓2を溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着、胴部インサートのコンプレッション成型等を利用することができる。
【0026】
包装容器100は、
図1に示すように、注出口栓2の注出筒部3に螺合により着脱可能なスクリューキャップ11を更に備えていても良い。包装容器100がスクリューキャップ11を備える場合、包装容器100の開封後に再封することが容易となる。
【0027】
また、包装容器100は、スクリューキャップ11に代えて、ヒンジキャップを備えていても良い。ヒンジキャップを設ける場合、
図1に示した注出筒部3に螺合によりヒンジキャップを注出口栓2に取り付けても良い。あるいは、注出筒部3の外面にネジ山の代わりにリブを設け、リブを介した嵌合によりヒンジキャップを注出口栓2に取り付けても良い。また、包装容器100は、スクリューキャップ11に代えて、注出筒部3と打栓により嵌合するキャップを備えてもよい。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態においては、注出口栓2にポリプロピレンと、エチレンビニルアルコール共重合体とが含有される。そのため、本実施形態に係る注出口栓2は、バリア性を有する。
【0029】
また、注出口栓2には更に相溶化剤が含有され、口栓の全質量のうち、ポリプロピレンが35%以上60%以下、エチレンビニルアルコール共重合体が30%以上50%以下、相溶化剤が10%以上25%未満である。そのため、本実施形態に係る注出口栓2は、熱溶着性とバリア性とを両立し、かつ、割れが発生しにくい。
【0030】
また、注出口栓2に用いられるポリプロピレンとして、ブロックコポリマーを用いることにより、注出口栓2の耐衝撃性を向上させることができる。
【0031】
また、エチレンビニルアルコール共重合体及びポリプロピレンのいずれか一方のメルトフローレートが、他方のメルトフローレートの2倍以内とすることで、スキン層及びコア層の接合強度が高まり、注出口栓2にバリア性を付与しつつ、注出口栓2に対する胴部1の接合強度(シール強度)を向上させることができる。
【0032】
また、注出口栓2がウエルドラインを有さない場合、ウエルドラインを起点とした割れの発生を抑制できる。
【実施例0033】
(実施例1)
ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、商品名:PM761A)と、EVOH(株式会社クラレ製、商品名:C109B)と、相溶化材(東ソー株式会社製、商品名:メルセン(登録商標)H3029A)とを用いて、射出成型にてウエルドラインを有する注出口栓2を作製した。用いたポリプロピレンのMFRは10g/minであり、EVOHのMFRは21g/10min(at 210℃)であった。注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを70%、バリア樹脂を30%、相溶化剤を0%とした。
【0034】
(実施例2)
注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを60%、バリア樹脂を40%、相溶化剤を0%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0035】
(実施例3)
注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを50%、バリア樹脂を50%、相溶化剤を0%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0036】
(実施例4)
注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを55%、バリア樹脂を30%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0037】
(実施例5)
注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを45%、バリア樹脂を40%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0038】
(実施例6)
注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンが35%、バリア樹脂を50%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0039】
(実施例7)
実施例4に対して、材料の混合比を同じとし、用いたポリプロピレンのMFRを変更した。具体的には、MFRが30g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:207RT)を用いたこと、及び、注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを55%、バリア樹脂を30%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0040】
(実施例8)
実施例5に対して、材料の混合比を同じとし、用いたポリプロピレンのMFRを変更した。具体的には、MFRが30g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:207RT)を用いたこと、及び、注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを45%、バリア樹脂を40%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0041】
(実施例9)
実施例6に対して、材料の混合比を同じとし、用いたポリプロピレンのMFRを変更した。具体的には、MFRが30g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:207RT)を用いたこと、及び、注出口栓2の全質量のうち、ポリプロピレンを35%、バリア樹脂を50%、相溶化剤を15%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0042】
(比較例1)
注出口栓の全質量のうち、PPが100%、バリア樹脂を0%、相溶化剤を0%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓を作製した。
【0043】
(比較例2)
MFRが20g/10minのポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、商品名:PM854X)を用いたこと、及び、注出口栓の全質量のうち、ポリプロピレンを100%、バリア樹脂を0%、相溶化剤を0%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓を作製した。
【0044】
(比較例3)
MFRが30g/10minのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:207RT)を用いたこと、及び、注出口栓の全質量のうち、ポリプロピレンを100%、バリア樹脂を0%、相溶化剤を0%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓を作製した。
【0045】
(比較例4)
実施例1に対して、用いたポリプロピレンのMFRを同じとし、材料の混合比を変更した。具体的には、注出口栓の全質量のうち、ポリプロピレンを40%、バリア樹脂を30%、相溶化剤を30%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0046】
(比較例5)
実施例1に対して、用いたポリプロピレンのMFRを同じとし、材料の混合比を変更した。具体的には、注出口栓の全質量のうち、ポリプロピレンを30%、バリア樹脂を40%、相溶化剤を30%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0047】
(比較例6)
実施例1に対して、用いたポリプロピレンのMFRを同じとし、材料の混合比を変更した。具体的には、注出口栓の全質量のうち、ポリプロピレンを20%、バリア樹脂を50%、相溶化剤を30%としたことを除き、実施例1と同様にして注出口栓2を作製した。
【0048】
表1に各実施例及び比較例に係る注出口栓の構成を示す。
【0049】
【0050】
実施例1~9および比較例1~6で作製した注出口栓に対して、ウエルドライン部の溶着強度、バリア性、注出口栓と胴部との剥離強度の評価をそれぞれ行った。なお、剥離強度評価は、0°剥離強度及び90°剥離強度の両方について評価した。
【0051】
(圧縮割れ強度評価)
図4に示すように、圧縮試験機Xを用いて注出口栓のフランジ部を挟み(
図4(a))、抽出口栓を圧縮した。抽出口栓は、中心軸に対して点対称となるようにフランジ部に位置する2点のゲートを結ぶ直線がほぼ垂直方向となり、ウエルドライン部がほぼ水平方向となるように配置した。抽出口栓を圧縮し、ウエルドライン部が割れたときの圧縮強度を測定し(
図4(b))、測定した圧縮強度を圧縮割れ強度評価の評価値とした。圧縮割れ強度が40.0N/15mm以上であれば良好であり、60.0N/15mm以上であればさらに良好である。
【0052】
(バリア性評価)
厚み12μmの透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)と、厚み25μmの延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名:ONBC)と、厚み60μmの無延伸ポリプロピレン(フタムラ化学株式会社製、商品名:FRTKG)とが積層されたシートを用いて、直径35mm×長さ180mmのガスバリア性を有する背張りパウチ(胴部1)を作製した。実施例1~9および比較例1~6で作製した注出口栓を、胴部1に超音波溶着することにより、チューブ型の包装容器を作製した。酸素と反応すると黄から青に変色するメチレンブルーを含有させた寒天ゲルを包装容器に充填して常温で7日間静置した。包装容器を縦方向に切断し、注出口栓内の寒天ゲルの変色の有無を確認した。
【0053】
(0°剥離強度評価)
厚み60μmの無延伸ポリプロピレン(フタムラ化学株式会社製、商品名:FRTKG)から成るシートを用いて、直径35mm×長さ180mmであり、胴部の一方の端部5a(
図1における下端)が閉鎖されていない状態のスリーブを作製した。実施例1~9および比較例1~6で作製した注出口栓をスリーブに超音波溶着することにより、チューブ型の包装容器を作製した。胴部の合掌貼り部分(合掌部)を略中心に含むように包装容器の長さ方向に伸びる15mm幅の切込みを形成し、さらに、同様の幅の切込みを、90°ごとに3か所形成して、評価用のサンプルを作製した。作製したサンプルに対して、剥離速度300mm/min、フランジ部に対して剥離角度0°で、剥離強度を測定した。測定結果を表2に示す。0°剥離強度が50.0N/15mm以上であれば良好である。なお、剥離強度は、それぞれ向かい合う切込み同士の0°剥離強度の平均値を算出し、さらに当該算出した平均値を平均したもの(前後・左右平均)である。
【0054】
【0055】
(90°剥離強度評価)
0°剥離強度評価と同様にスリーブを作製した。実施例1~9および比較例1~6で作製した注出口栓をスリーブに超音波溶着することにより、チューブ型の包装容器を作製した。胴部の合掌貼り部分(合掌部)を略中心に含むように、包装容器の長さ方向に伸びる15mm幅の切込みを形成した評価用のサンプルを作製した。作製したサンプルに対して、剥離速度300mm/min、フランジ部に対して剥離角度90°で、合掌貼りを含む部分、及び、合掌部以外の部分の剥離強度をそれぞれ測定した。測定結果を表3に示す。90°剥離強度が18.0N/15mm以上であれば良好であり、20.0N/15mm以上であればさらに良好である。
【0056】
【0057】
溶着強度、バリア性、0°及び90°剥離強度の評価結果を表4に示す。
【0058】
【0059】
実施例1~9に係る注出口栓2は、溶着強度評価において、いずれもウエルドラインにおける溶着強度が40Nを超えており、割れが発生しにくかった。特に、実施例4~9に係る注出口栓2は、溶着強度が60Nを超えており、より割れが発生しにくかった。また、実施例1~9に係る注出口栓2は、ガスバリア性評価において、寒天ゲルの変色が少なく、ガスバリア性に優れていた。さらに、0°剥離強度評価において50N/15mm以上の強度を有しており、注出口栓2と胴部との剥離が生じにくかった。また、90°剥離強度において、実施例1~5、7~9は合掌部、合掌部以外のいずれも20N/15mm以上の強度を有しており、実施例6においても、合掌部に関しては20N/15mm以上の強度を有していた。
【0060】
実施例1~3は、注出口栓のEVOH及びポリプロピレンの含有量が充分であったため、バリア性及び剥離強度は優れていた。一方で、メルセンが混合されていないことから、他の実施例と比較してウエルドラインの溶着強度が低かった。
【0061】
比較例1~3に係る注出口栓は、材料の構成がポリプロピレン100%であったため、溶着強度評価において、ウエルドラインの溶着強度は200Nを超え、非常に割れにくかった。しかし、注出口栓にバリア性樹脂が含有されていなかったため、ガスバリア性評価においては、寒天ゲルの変色が顕著に見られ、ガスバリア性に問題があった。
【0062】
比較例4~6は、EVOH及びメルセンの含有量が充分であったため、バリア性及び溶着強度は優れていた。一方で、ポリプロピレンの含有量が少なく、メルセンの含有量が多かったため、0°剥離強度評価、及び90°剥離強度のいずれかの評価項目において、剥離強度が弱かった。
【0063】
バリア性評価に着目して実施例1~9及び比較例1~6をそれぞれ比較してみると、ポリプロピレンのMFRの値によって、EVOHの混合比とバリア性との相関関係が異なることがわかった。具体的には、ポリプロピレンのMFRが10g/minであるとき、バリア性はいずれも高く、EVOHの混合比によるバリア性の差もほぼ見られなかった。ポリプロピレンのMFRが30g/minであるとき、バリア性はいずれも他のEVOHを含有した実施例よりも低く、さらに、EVOHの混合比とバリア性との間に相関関係は見られなかった。