(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103551
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】衣服のサイズ調節機構及びそれを用いた衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 1/02 20060101AFI20230720BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A41D1/02 Z
A41D27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004131
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】522018860
【氏名又は名称】有限会社ハシモトソーイング
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真理子
【テーマコード(参考)】
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B031AC06
3B031AD01
3B035AA11
(57)【要約】
【課題】衣服の襟ぐりのサイズを調節することが可能な衣服のサイズ調節機構及びそれを用いた衣服を提供する。
【解決手段】前身頃Fと後身頃Bとを有する衣服のサイズ調節機構10であって、前身頃Fと後身頃Bとの間で肩線Lに沿って取り付けられ、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に開閉可能なプリーツ部材1と、プリーツ部材1の開閉度を調節可能なアジャスタ部材2と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と後身頃とを有する衣服のサイズ調節機構であって、
前記前身頃と前記後身頃との間で肩線に沿って取り付けられ、前記前身頃の方向及び前記後身頃の方向に開閉可能なプリーツ部材と、
前記プリーツ部材の開閉度を調節可能なアジャスタ部材と、
を備える衣服のサイズ調節機構。
【請求項2】
前記アジャスタ部材は、前記プリーツ部材の開閉度に応じて視認される部分の大きさが変化するように取り付けられている、
請求項1に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項3】
前記アジャスタ部材は、固定部と、前記固定部に接続されるとともに長さが変更可能であるベルト部とを有し、
前記ベルト部は、前記前身頃又は前記後身頃の裏側において、前記肩線に対して略直角方向に延びるように設けられ、
前記ベルト部の長さに応じて、前記プリーツ部材の開閉度が変化する、
請求項1又は2に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項4】
前記前身頃と前記プリーツ部材との境界線を前肩線と定義し、前記後身頃と前記プリーツ部材との境界線を後肩線と定義したとき、
前記ベルト部は、前記後身頃の裏側において、前記前肩線に対して略直角方向に延びるように設けられた第1ベルト部と、前記前身頃の裏側において、前記後肩線に対して略直角方向に延びるように設けられた第2ベルト部と、を含む、
請求項3に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項5】
前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とは、前記プリーツ部材の上側で重なるように設けられている、
請求項4に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項6】
前記前身頃と前記プリーツ部材との境界線を前肩線と定義し、前記後身頃と前記プリーツ部材との境界線を後肩線と定義したとき、
前記アジャスタ部材は、第3ベルト部と前記第3ベルト部を固定可能な第4ベルト部とを有し、
前記第3ベルト部は、前記前肩線から延びて、前記プリーツ部材を跨ぎ、前記後肩線から前後前身頃の裏側に挿入されるように設けられ、固定されない端部を有し、
前記第4ベルト部は、前記後身頃の裏側において、前記後肩線から前記第3ベルト部の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられ、前記後身頃の裏側に固定された端部を有し、
前記第4ベルト部に対する前記第3ベルト部の固定位置によって、前記プリーツ部材の開閉度が変化する、
請求項1又は2に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項7】
前記アジャスタ部材は、第5ベルト部と前記第5ベルト部を固定可能な第6ベルト部とを有し、
前記第5ベルト部は、前記後肩線から延びて、前記プリーツ部材を跨ぎ、前記前肩線から前記前身頃の裏側に挿入されるように設けられ、固定されない端部を有し、
前記第6ベルト部は、前記前身頃の裏側において、前記前肩線から前記第5ベルト部の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられ、前記前身頃の裏側に固定された端部を有し、
前記第6ベルト部に対する前記第5ベルト部の固定位置によって、前記プリーツ部材の開閉度が変化する、
請求項6に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項8】
前記第3ベルト部と前記第5ベルト部とは、前記プリーツ部材の上側で重なるように設けられている、
請求項7に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項9】
前記アジャスタ部材は、袖ぐりと襟ぐりとの間で前記襟ぐりに近い側に取り付けられている、
請求項1から8のいずれか一項に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項10】
前記プリーツ部材は、閉じているときに前記前肩線と前記後肩線とが近接するように構成されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の衣服のサイズ調節機構。
【請求項11】
前身頃と後身頃とを有し、
請求項1から10のいずれか一項に記載の衣服のサイズ調節機構を用いた衣服。
【請求項12】
2つの前記衣服のサイズ調節機構を備え、
2つの前記衣服のサイズ調節機構の一方が、前記前身頃と前記後身頃との間で左肩線に沿って取り付けられ、2つの前記衣服のサイズ調節機構の他方が、前記前身頃と前記後身頃との間で右肩線に沿って取り付けられている、
請求項11に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服のサイズ調節機構及びそれを用いた衣服に関し、特に、子供用衣服の襟ぐりのサイズを調節することが可能なサイズ調節機構及びそれを用いた子供用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
成長期の子供が着用する衣服には、頻繁な買い換え又はサイズの調節が必要となる。サイズの調節では、例えば、スカート又はズボンの裾の伸長は、家庭でも比較的容易に行うことができる。しかし、襟ぐりの拡張は、縫い目をほどいて縫い直す等の作業が必要であることから、家庭で行うことは容易ではない。そのため、襟ぐりのサイズが合わなくなった衣服は、買い換えを余儀なくされることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、衣服の襟ぐりのサイズを調節することが可能な衣服のサイズ調節機構及びそれを用いた衣服の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、前身頃と後身頃とを有する衣服のサイズ調節機構であって、前記前身頃と前記後身頃との間で肩線に沿って取り付けられ、前記前身頃の方向及び前記後身頃の方向に開閉可能なプリーツ部材と、前記プリーツ部材の開閉度を調節可能なアジャスタ部材と、を備える衣服のサイズ調節機構を提供する(発明1)。
【0005】
かかる発明(発明1)によれば、アジャスタ部材によってプリーツ部材の開閉度を調節することにより、衣服の襟ぐりのサイズを調節することができる。サイズ調節機構により襟ぐりを拡張させると、衣服の裾の位置が下方にずれるので、衣服が例えば女児用のワンピースである場合には、ワンピースの丈をも長くすることができる。このように、サイズ調節機構を用いることで、成長期の子供が通常よりも長い期間、衣服を着用することができる。また、例えば、同じ衣服を別の子供が再使用する場合など、襟ぐりのサイズを元に戻す必要があるときにも、アジャスタ部材によってプリーツ部材の開閉度を減少させることにより、襟ぐりを縮小することができる。
【0006】
上記発明(発明1)においては、前記アジャスタ部材は、前記プリーツ部材の開閉度に応じて視認される部分の大きさが変化するように取り付けられていることが好ましい(発明2)。
【0007】
かかる発明(発明2)によれば、プリーツ部材が閉じているときに、アジャスタ部材は衣服の表側からはほとんど視認されないように構成することができる。そのため、アジャスタ部材を目隠しするために、例えば付け襟などの他の部材を設ける必要がない。そのため、衣服のデザインの多様性を確保することができる。
【0008】
上記発明(発明1,2)においては、前記アジャスタ部材は、固定部と、前記固定部に接続されるとともに長さが変更可能であるベルト部とを有し、前記ベルト部は、前記前身頃又は前記後身頃の裏側において、前記肩線に対して略直角方向に延びるように設けられ、前記ベルト部の長さに応じて、前記プリーツ部材の開閉度が変化することが好ましい(発明3)。
【0009】
かかる発明(発明3)によれば、ベルト部の長さを調節することで、プリーツ部材の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりのサイズを容易に調節することができる。
【0010】
上記発明(発明3)においては、前記前身頃と前記プリーツ部材との境界線を前肩線と定義し、前記後身頃と前記プリーツ部材との境界線を後肩線と定義したとき、前記ベルト部は、前記後身頃の裏側において、前記前肩線に対して略直角方向に延びるように設けられた第1ベルト部と、前記前身頃の裏側において、前記後肩線に対して略直角方向に延びるように設けられた第2ベルト部と、を含むことが好ましい(発明4)。
【0011】
かかる発明(発明4)によれば、第1ベルト部の長さと第2ベルト部の長さとを同程度にすることにより、衣服における肩線の位置をずらすことなく保つことができるので、美感が維持される。また、第1ベルト部の長さと第2ベルト部の長さとを異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【0012】
上記発明(発明4)においては、前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とは、前記プリーツ部材の上側で重なるように設けられていることが好ましい(発明5)。
【0013】
かかる発明(発明5)によれば、プリーツ部材が開いているとき、衣服の表側から視認されるのは第1ベルト部又は第2ベルト部のいずれか一方であるので、美感への影響が少ない。
【0014】
上記発明(発明1,2)においては、前記前身頃と前記プリーツ部材との境界線を前肩線と定義し、前記後身頃と前記プリーツ部材との境界線を後肩線と定義したとき、前記アジャスタ部材は、第3ベルト部と前記第3ベルト部を固定可能な第4ベルト部とを有し、前記第3ベルト部は、前記前肩線から延びて、前記プリーツ部材を跨ぎ、前記後肩線から前後前身頃の裏側に挿入されるように設けられ、固定されない端部を有し、前記第4ベルト部は、前記後身頃の裏側において、前記後肩線から前記第3ベルト部の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられ、前記後身頃の裏側に固定された端部を有し、前記第4ベルト部に対する前記第3ベルト部の固定位置によって、前記プリーツ部材の開閉度が変化することが好ましい(発明6)。
【0015】
かかる発明(発明6)によれば、後身頃の裏側において、第3ベルト部を第4ベルト部の任意の位置に固定させることで、プリーツ部材の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりのサイズを容易に調節することができる。
【0016】
上記発明(発明6)においては、前記アジャスタ部材は、第5ベルト部と前記第5ベルト部を固定可能な第6ベルト部とを有し、前記第5ベルト部は、前記後肩線から延びて、前記プリーツ部材を跨ぎ、前記前肩線から前記前身頃の裏側に挿入されるように設けられ、固定されない端部を有し、前記第6ベルト部は、前記前身頃の裏側において、前記前肩線から前記第5ベルト部の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられ、前記前身頃の裏側に固定された端部を有し、前記第6ベルト部に対する前記第5ベルト部の固定位置によって、前記プリーツ部材の開閉度が変化することが好ましい(発明7)。
【0017】
かかる発明(発明7)によれば、前身頃の裏側において、第5ベルト部を第6ベルト部の任意の位置に固定させることで、プリーツ部材の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりのサイズを容易に調節することができる。また、アジャスタ部材が、第3ベルト部及び第4ベルト部に加えて、第5ベルト部及び第6ベルト部も備える場合には、第3ベルト部の固定位置と第5ベルト部の固定位置とを同程度にすることにより、衣服における肩線の位置をずらすことなく保つことができるので、美感が維持される。また、第3ベルト部の固定位置と第5ベルト部の固定位置とを異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【0018】
上記発明(発明7)においては、前記第3ベルト部と前記第5ベルト部とは、前記プリーツ部材の上側で重なるように設けられていることが好ましい(発明8)。
【0019】
かかる発明(発明8)によれば、プリーツ部材が開いているとき、衣服の表側から視認されるのは第3ベルト部又は第5ベルト部のいずれか一方であるので、美感への影響が少ない。
【0020】
上記発明(発明1-8)においては、前記アジャスタ部材は、袖ぐりと襟ぐりとの間で前記襟ぐりに近い側に取り付けられていることが好ましい(発明9)。
【0021】
かかる発明(発明9)によれば、アジャスタ部材によって、プリーツ部材が閉じられているときに前肩線と後肩線とが近接しやすくなるので、美感が向上する。
【0022】
上記発明(発明1-9)においては、前記プリーツ部材は、閉じているときに前記前肩線と前記後肩線とが近接するように構成されていることが好ましい(発明10)。
【0023】
かかる発明(発明10)によれば、プリーツ部材が閉じられているときの美感が向上する。
【0024】
上記課題を解決するために、第二に本発明は、前身頃と後身頃とを有し、発明1から発明10のいずれか一つの衣服のサイズ調節機構を用いた衣服を提供する(発明11)。
【0025】
かかる発明(発明11)によれば、衣服のサイズ調節機構のアジャスタ部材によってプリーツ部材の開閉度を調節することにより、衣服の襟ぐりのサイズを調節することができる。
【0026】
上記発明(発明11)においては、2つの前記衣服のサイズ調節機構を備え、2つの前記衣服のサイズ調節機構の一方が、前記前身頃と前記後身頃との間で左肩線に沿って取り付けられ、2つの前記衣服のサイズ調節機構の他方が、前記前身頃と前記後身頃との間で右肩線に沿って取り付けられていることが好ましい(発明12)。
【0027】
かかる発明(発明12)によれば、左肩線及び右肩線のそれぞれに衣服のサイズ調節機構が取り付けられているので、衣服の左右のバランスが維持されやすい。また、左右の衣服のサイズ調節機構におけるプリーツ部材の開閉度を異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の衣服のサイズ調節機構によれば、アジャスタ部材によってプリーツ部材の開閉度を調節することにより、衣服の襟ぐりのサイズを調節することができる。サイズ調節機構により襟ぐりを拡張させると、衣服の裾の位置が下方にずれるので、衣服が例えば女児用のワンピースである場合には、ワンピースの丈をも長くすることができる。このように、サイズ調節機構を用いることで、成長期の子供が通常よりも長い期間、衣服を着用することができる。また、例えば、同じ衣服を別の子供が再使用する場合など、襟ぐりのサイズを元に戻す必要があるときにも、アジャスタ部材によってプリーツ部材の開閉度を減少させることにより、衣服の襟ぐりを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】衣服に取り付けられた本発明の第一実施形態に係る衣服のサイズ調節機構を表側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図2】衣服に取り付けられた本発明の第一実施形態に係る衣服のサイズ調節機構を裏側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図3】衣服に取り付けられた本発明の第一実施形態に係る衣服のサイズ調節機構の模式的断面図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図4】
図1~3の衣服のサイズ調節機構のアジャスタ部材が有する固定部の一例を示す図である。
【
図5】
図1~3の衣服のサイズ調節機構のアジャスタ部材に用いられる長さ調節具の一例を示す図である。
【
図6】衣服に取り付けられた本発明の第二実施形態に係る衣服のサイズ調節機構を表側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図7】衣服に取り付けられた本発明の第二実施形態に係る衣服のサイズ調節機構を裏側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図8】衣服に取り付けられた本発明の第二実施形態に係る衣服のサイズ調節機構の模式的断面図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る衣服の模式図である。
【
図10】
図9の衣服を上側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材が閉じている状態、(b)はプリーツ部材が開いている状態を示している。
【
図11】
図9の衣服を裏返した状態の模式図であって、
図1~3の衣服のサイズ調節機構を用いた場合を示している。
【
図12】
図9の衣服を裏返した状態の模式図であって、
図6~8の衣服のサイズ調節機構を用いた場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の衣服のサイズ調節機構及びそれを用いた衣服の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0031】
[第一実施形態]
〔衣服のサイズ調節機構〕
まず、第一実施形態に係る衣服のサイズ調節機構100(以下、単にサイズ調節機構100という。)について、
図1~5を参照しつつ詳説する。
【0032】
サイズ調節機構100は、前身頃Fと後身頃Bとを有する衣服のサイズ調節機構である。サイズ調節機構100は、前身頃Fと後身頃Bとの間で肩線Lに沿って取り付けられ、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に開閉可能なプリーツ部材11と、プリーツ部材11の開閉度を調節可能なアジャスタ部材21とを備える。
図1は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構100を表側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
図2は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構100を裏側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
図3は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構100の模式的断面図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
【0033】
図1~3は、衣服の左肩線及び右肩線のうちの右肩線(肩線L)に沿って取り付けられた1つのサイズ調節機構100を例示している。衣服に用いられる場合、1つのサイズ調節機構100が、左肩線及び右肩線のうちのいずれかに沿って取り付けられていてもよい。衣服に用いられる場合、2つのサイズ調節機構100のうち、一方が左肩線に沿って取り付けられ、他方が右肩線に沿って取り付けられていてもよい。
【0034】
サイズ調節機構100によれば、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を調節することにより、衣服の襟ぐりCのサイズを調節することができる。サイズ調節機構100により襟ぐりCを拡張すると、衣服の裾の位置が下方にずれるので、衣服が例えば女児用のワンピースである場合には、ワンピースの丈をも長くすることができる。例えば、1つのサイズ調節機構100が、左肩線及び右肩線のうちのいずれかに沿って取り付けられており、プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計2cm拡張できるとともに、前身頃F及び後身頃Bの丈を1cmずつ長くすることができる。例えば、2つのサイズ調節機構100のうち、一方が左肩線に沿って取り付けられ、他方が右肩線に沿って取り付けられており、各プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計4cm拡張できるとともに、前身頃F及び後身頃Bの丈を2cmずつ長くすることができる。このように、サイズ調節機構100を用いることで、成長期の子供が通常よりも長い期間、衣服を着用することができる。また、例えば、同じ衣服を別の子供が再使用する場合など、襟ぐりCのサイズを元に戻す必要があるときにも、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を減少させることにより、衣服の襟ぐりCを縮小することができる。
【0035】
(プリーツ部材)
本実施形態において、プリーツ部材11は、第1面12と、第1面12の両端に位置する折線Lvで第1面12に連結する一対の第2面13とから構成されている。折線Lvは、衣服の表側から見た場合には谷折線であり、衣服の裏側から見た場合には山折線である。
図1~3に示すように、各第2面13は、第1面12を中央線(
図1~3では肩線Lに等しい)で切断した形状及び大きさを有している。
図1(a)、
図2(a)、及び
図3(a)に示すプリーツ部材11が閉じている状態とは、折線Lvにおいて一対の第2面13を第1面12に対して折り畳んだ状態を意味する。
図1(b)、
図2(b)、及び
図3(b)に示すプリーツ部材11が開いている状態とは、折線Lvにおいて一対の第2面13を第1面12に対して展開した状態を意味する。なお、
図2及び
図3において、符号13sは、第2面13の縫い代を示している。
【0036】
プリーツ部材11の構成は、
図1~3に示す形態に限られない。例えば、プリーツ部材11は、複数の第1面12と複数の第2面13とが、複数の折線Lvにより折り畳まれたり展開されたりすることによって開閉度が変化するように構成されていてもよい。すなわち、プリーツ部材11は、山折と谷折の繰り返しによるいわゆる蛇腹構造を有していてもよい。この場合、複数の第1面12の形状及び大きさは、複数の第2面13の形状及び大きさと等しくてもよく、異なっていてもよい。また、例えば、プリーツ部材11は、第1面12のみを有し、折線Lvを有さず、第1面12にひだを寄せたり広げたりすることによって開閉度が変化するように構成されていてもよい。すなわち、プリーツ部材11は、いわゆるギャザー構造を有していてもよい。この場合、第1面12は、ひだが寄せやすいよう、柔らかい布地で構成されていることが好ましい。
【0037】
プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向にどの程度開くかは、適宜設定することができる。本実施形態においては、プリーツ部材11の第2面13の幅は、0.5~2cmであることが好ましい。このような構成であることにより、プリーツ部材11は、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に0.5~2cmずつ開くことが可能となる。
【0038】
(アジャスタ部材)
アジャスタ部材21は、固定部22と、固定部22に接続されるとともに長さが変更可能であるベルト部23とを有する。ベルト部23は、前身頃F又は後身頃Bの裏側において、肩線Lに対して略直角方向に延びるように設けられている。ベルト部23の長さMに応じて、プリーツ部材11の開閉度が変化する。ベルト部23は、肩線Lに対して略直角方向に延びるように設けられていればよく、必ずしも肩線Lに対して直角方向に延びるように設けられている必要はない。例えば、ベルト部23は、襟ぐりCの曲線に概ね沿うように、肩線Lに対して斜め方向に延びるように設けられていてもよい。
【0039】
固定部22は、ベルト部23の長さMが変更可能であるようにベルト部23を接続するものであれば、特に限定されない。なお、「ベルト部23の長さM」とは、
図3に示すように、前身頃F又は後身頃Bにおけるベルト部23の長さM(M1、M2)を意味し、プリーツ部材11を拡張したときに衣服の表側に現れるベルト部23の長さは含まない。
図1~3では、固定部22として丸カンを用いた場合を例示している。丸カンの例を
図4に示す。
図1~3では、固定部22として丸カンを用いているので、ベルト部23とは逆側に延びるテープ部材を丸カンに通し、このテープ部材の端部を前身頃F又は後身頃Bの裾に取り付ければ、固定部22の取付位置を衣服の表側から分かりにくくすることができる。ただし、固定部22は、前身頃F又は後身頃Bの裏側の所定箇所に取り付けられていてもよい。
【0040】
本実施形態において、ベルト部23の長さMは、長さ調節具24によって調節可能であるように構成されている。長さ調節具24は、固定部22としての丸カンを通したベルト部23の折り返し部分の任意の箇所に取り付けることができる。
図1~3に示すように、長さ調節具24を用いてベルト部23の長さMを調節することによって、衣服の表側に現れるベルト部23の長さが変化し、これにより、プリーツ部材11の開閉度が変化する。
【0041】
長さ調節具24は、ベルト部23の長さMが調節可能であれば特に限定されない。
図1~3では、長さ調節具24としてエイトカンを用いた場合を例示している。エイトカンの例を
図5に示す。長さ調節具24がエイトカンであると、プリーツ部材11の開閉度の微妙な調節が可能となる。
【0042】
このような構成であることにより、ベルト部23の長さMを調節することによって、プリーツ部材11の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりCのサイズを容易に調節することができる。
図3に示すように、ベルト部23の長さMを小さくすると、プリーツ部材11の開閉度は大きくなる。ベルト部23の長さMを大きくすると、プリーツ部材11の開閉度は小さくくなる。
【0043】
ここで、
図1に示すように、前身頃Fとプリーツ部材1との境界線を前肩線L1と定義し、後身頃Bとプリーツ部材1との境界線を後肩線L2と定義する。本実施形態において、ベルト部23は、後身頃Bの裏側において、前肩線L1に対して略直角方向に延びるように設けられた第1ベルト部231と、前身頃Fの裏側において、後肩線L2に対して略直角方向に延びるように設けられた第2ベルト部232と、を含む。
【0044】
第1ベルト部231及び第2ベルト部232はいずれも帯状であり、略同じ幅を有している。第1ベルト部231は、前肩線L1から延びて、プリーツ部材11を跨ぎ、後肩線L2から後身頃Bの裏側に挿入されるように設けられている。第2ベルト部232は、後肩線L2から延びて、プリーツ部材11を跨ぎ、前肩線L1から後身頃Bの裏側に挿入されるように設けられている。なお、
図3において、符号23sは、ベルト部23の縫い代を示している。
【0045】
このような構成であることにより、第1ベルト部231の長さM1と第2ベルト部232の長さM2とを同程度にすることにより、衣服における肩線Lの位置をずらすことなく保つことができるので、美感が維持される。また、第1ベルト部231の長さM1と第2ベルト部232の長さM2とを異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【0046】
本実施形態において、アジャスタ部材21は、
図1~3に示すように、プリーツ部材11の開閉度に応じて視認される部分の大きさが変化するように取り付けられている。そのため、プリーツ部材11が閉じているときに、アジャスタ部材21は衣服の表側からはほとんど視認されないように構成することができる。したがって、アジャスタ部材21を目隠しするために、例えば付け襟などの他の部材を設ける必要がない。そのため、衣服のデザインの多様性を確保することができる。
【0047】
図1~3に示されるように、第1ベルト部231と第2ベルト部232とは、平面視においてプリーツ部材11の上側で重なるように設けられていることが好ましい。言い換えると、第1ベルト部231と第2ベルト部232とは、断面視において異なる高さ位置にあり、それぞれが移動するときに上下ですれ違うように設けられていることが好ましい。
【0048】
このような構成であることにより、プリーツ部材11が開いているとき、衣服の表側から視認されるのは第1ベルト部231又は第2ベルト部232のいずれか一方であるので、美感への影響が少ない。なお、
図1~3では、断面視において第1ベルト部231が第2ベルト部232よりも高い位置にあるように設けられている。
【0049】
アジャスタ部材21は、袖ぐりSと襟ぐりCのとの間で襟ぐりCに近い側に取り付けられていることが好ましい。第1ベルト部231及び/又は第2ベルト部232の襟ぐりC側の側線と襟ぐりCとの距離は、特に限定されないが、例えば、1~2cmの範囲内であることが好ましい。このような構成であることにより、アジャスタ部材21によって、プリーツ部材11が閉じられているときに前肩線L1と後肩線L2とが近接しやすくなるので、美感が向上する。言い換えると、プリーツ部材11は、閉じているときに前肩線L1と後肩線L2とが近接するように構成されていることが好ましい。プリーツ部材11は、閉じているときに前肩線L1と後肩線L2とが接触するように構成されていてもよい。
【0050】
アジャスタ部材21、詳細には、第1ベルト部231及び第2ベルト部232は、伸縮性が小さい布地で構成されていることが好ましい。このような構成であることにより、調節後の襟ぐりCのサイズを維持することができる。
【0051】
〔衣服のサイズ調節方法〕
次に、第一実施形態のサイズ調節機構100を用いた衣服のサイズ調節方法について説明する。
【0052】
初期段階において、第1ベルト部231は長さ調節具24によりプリーツ部材11が閉じるような長さM1に調節されており、第2ベルト部232は長さ調節具24によりプリーツ部材11が閉じるような長さM2に調節されている。初期段階は、
図1(a)、
図2(a)及び
図3(a)に示される段階である。このとき、プリーツ部材11は閉じている。すなわち、初期段階におけるプリーツ部材11の開閉度は0%である。
【0053】
衣服の着用者の成長により、襟ぐりCの拡張が必要になった場合、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を増加させることにより、衣服の襟ぐりCのサイズを拡張することができる。具体的には、まず、プリーツ部材11が目標とする開閉度となるよう、長さ調節具24を用いて第1ベルト部231の長さM1を調節する。同様に、長さ調節具24を用いて第2ベルト部232の長さM2を調節する。これにより、衣服の襟ぐりCのサイズを拡張することができる。このとき、プリーツ部材11の開閉度は0%より大きく、100%未満であり、例えば50%である。
【0054】
衣服の着用者のさらなる成長により、襟ぐりCの拡張がさらに必要になった場合、上記と同じ手順により、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11を完全に展開することにより、衣服の襟ぐりCのサイズを最大限まで拡張することができる。このとき、プリーツ部材11の開閉度は100%である。
【0055】
例えば、同じ衣服を別の着用者が再使用する場合など、襟ぐりCのサイズを元に戻す必要が生じた場合、上記と逆の手順により、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を減少させることで、衣服の襟ぐりCを縮小することができる。
【0056】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る衣服のサイズ調節機構200(以下、単にサイズ調節機構200という。)について、
図6~8を参照しつつ詳説する。サイズ調節機構200は、アジャスタ部材の構成が異なることを除き、第一実施形態に係るサイズ調節機構100と同じ構成を有する。そのため、第一実施形態に係るサイズ調節機構100と共通する要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0057】
サイズ調節機構200は、前身頃Fと後身頃Bとを有する衣服のサイズ調節機構である。サイズ調節機構200は、前身頃Fと後身頃Bとの間で肩線Lに沿って取り付けられ、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に開閉可能なプリーツ部材11と、プリーツ部材11の開閉度を調節可能なアジャスタ部材31とを備える。
図6は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構200を表側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
図7は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構200を裏側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
図8は、衣服に取り付けられたサイズ調節機構200の模式的断面図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
【0058】
図6~8は、衣服の左肩線及び右肩線のうちの右肩線(肩線L)に沿って取り付けられた1つのサイズ調節機構200を例示している。衣服に用いられる場合、1つのサイズ調節機構200が、左肩線及び右肩線のうちのいずれかに沿って取り付けられていてもよい。衣服に用いられる場合、2つのサイズ調節機構200のうち、一方が左肩線に沿って取り付けられ、他方が右肩線に沿って取り付けられていてもよい。
【0059】
サイズ調節機構200によれば、アジャスタ部材31によってプリーツ部材11の開閉度を調節することにより、衣服の襟ぐりCのサイズを調節することができる。サイズ調節機構200により襟ぐりCを拡張すると、衣服の裾の位置が下方にずれるので、衣服が例えば女児用のワンピースである場合には、ワンピースの丈をも長くすることができる。例えば、1つのサイズ調節機構200が、左肩線及び右肩線のうちのいずれかに沿って取り付けられており、プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計2cm拡張できるとともに、前身頃F及び後身頃Bの丈を1cずつ長くすることができる。例えば、2つのサイズ調節機構200のうち、一方が左肩線に沿って取り付けられ、他方が右肩線に沿って取り付けられており、各プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計4cm拡張できるとともに、前身頃F及び後身頃Bの丈を2cmずつ長くすることができる。このように、サイズ調節機構200を用いることで、成長期の子供が通常よりも長い期間、衣服を着用することができる。また、例えば、同じ衣服を別の子供が再使用する場合など、襟ぐりCのサイズを元に戻す必要があるときにも、アジャスタ部材31によってプリーツ部材11の開閉度を減少させることにより、衣服の襟ぐりCを縮小することができる。
【0060】
(アジャスタ部材)
アジャスタ部材31は、プリーツ部材11の開閉度を調節可能であるように、前身頃F又は後身頃Bの裏側において、プリーツ部材11の長手方向に対して、すなわち肩線Lに対して略直角方向に延びるように設けられている。アジャスタ部材31は、肩線Lに対して略直角方向に延びるように設けられていればよく、必ずしも肩線Lに対して直角方向に延びるように設けられている必要はない。例えば、アジャスタ部材31は、襟ぐりCの曲線に概ね沿うように、肩線Lに対して斜め方向に延びるように設けられていてもよい。
【0061】
本実施形態において、アジャスタ部材31は、
図6~8に示すように、プリーツ部材11の開閉度に応じて視認される部分の大きさが変化するように取り付けられている。そのため、プリーツ部材11が閉じているときに、アジャスタ部材31は衣服の表側からはほとんど視認されないように構成することができる。したがって、アジャスタ部材31を目隠しするために、例えば付け襟などの他の部材を設ける必要がない。そのため、衣服のデザインの多様性を確保することができる。
【0062】
本実施形態において、アジャスタ部材31は、第3ベルト部33と、第3ベルト部33を固定可能な第4ベルト部34とを有する。第3ベルト部33及び第4ベルト部34はいずれも帯状であり、略同じ幅を有している。第3ベルト部33は、前肩線L1から延びて、プリーツ部材11を跨ぎ、後肩線L2から後身頃Bの裏側に挿入されるように設けられている。第3ベルト部33は、固定されない端部33eを有する。第4ベルト部34は、後身頃Bの裏側において、後肩線L2から第3ベルト部33の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられている。第4ベルト部34は、後身頃Bの裏側に固定された端部34eを有する。なお、
図8において、符号33sは、第3ベルト部33の縫い代を示している。
【0063】
本実施形態において、第3ベルト部33と第4ベルト部34とは、長さ調節具37によって、第4ベルト部34に対する第3ベルト部33の固定位置が調節可能であるように構成されている。長さ調節具37は、第3ベルト部33と第4ベルト部34とが重なり合う任意の箇所に取り付けることができる。
図6~8に示すように、第4ベルト部34に対する第3ベルト部33の固定位置によって、衣服の表側に現れる第3ベルト部33の長さが変化し、これにより、プリーツ部材11の開閉度が変化する。長さ調節具37は、
図6~8に示すように、第3ベルト部33の端部33eに取り付けられたオス型スナップボタンと、第4ベルト部34の長さ方向に移動可能なメス型のスナップボタンとから構成されてもよい。このような長さ調節具37として、例えば、フリーアジャストテーピー(登録商標)(モリト社製)が挙げられる。フリーアジャストテーピー(登録商標)によれば、第4ベルト部34に対する第3ベルト部33の固定位置を自由に調節することができる。長さ調節具37は、例えば、第3ベルト部33の端部33eに取り付けられたオス型スナップボタンと、第4ベルト部34の長さ方向に渡って一定間隔で取り付けられた複数のメス型のスナップボタンとから構成されてもよい。
【0064】
このような構成であることにより、後身頃Bの裏側において、第3ベルト部33を第4ベルト部34の任意の位置に固定させることで、プリーツ部材11の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりCのサイズを容易に調節することができる。
【0065】
本実施形態において、アジャスタ部材31はさらに、第5ベルト部35と、第5ベルト部35を固定可能な第6ベルト部36とを有する。第5ベルト部35及び第6ベルト部36いずれも帯状であり、略同じ幅を有している。第5ベルト部35は、後肩線L2から延びて、プリーツ部材11を跨ぎ、前肩線L1から前身頃Fの裏側に挿入されるように設けられている第5ベルト部35は、固定されない端部35eを有する。第6ベルト部36は、前身頃Fの裏側において、前肩線L1から第5ベルト部35の延びる方向と同じ方向に延びるように設けられている。第6ベルト部36は、前身頃Fの内側に固定された端部36eを有する。なお、
図8において、符号35sは、第5ベルト部35の縫い代を示している。
【0066】
本実施形態において、第5ベルト部35と第6ベルト部36とは、長さ調節具37によって、第6ベルト部36に対する第5ベルト部35の固定位置が調節可能であるように構成されている。長さ調節具37は、第5ベルト部35と第6ベルト部36とが重なり合う任意の箇所に取り付けることができる。
図6~8に示すように、第6ベルト部36に対する第5ベルト部35の固定位置によって、衣服の表側に現れる第5ベルト部35の長さが変化し、これにより、プリーツ部材11の開閉度が変化する。
【0067】
このような構成であることにより、前身頃Fの裏側において第5ベルト部35を第6ベルト部36の任意の位置に固定させることで、プリーツ部材11の開閉度が着用者の首回りに適するよう、衣服の襟ぐりCのサイズを容易に調節することができる。また、アジャスタ部材31が、第3ベルト部33及び第4ベルト部34に加えて、第5ベルト部35及び第6ベルト部36も備える場合には、第3ベルト部33の固定位置と第5ベルト部35の固定位置とを同程度にすることにより、衣服における肩線Lの位置をずらすことなく保つことができるので、美感が維持される。また、第3ベルト部33の固定位置と第5ベルト部35の固定位置とを異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【0068】
本実施形態において、アジャスタ部材31は、第3ベルト部33及び第4ベルト部34に加えて、第5ベルト部35及び第6ベルト部36を備えている。しかし、アジャスタ部材31は、第3ベルト部33及び第4ベルト部34のセット、及び、第5ベルト部35及び第6ベルト部36のセットから選ばれる少なくとも1つのセットを備えていればよい。アジャスタ部材31が、第3ベルト部33及び第4ベルト部34のセット、及び、第5ベルト部35及び第6ベルト部36のセットをいずれも備える場合には、よりバランスよくプリーツ部材11の開閉度を調節することができる。
【0069】
図6~8に示されるように、第3ベルト部33と第5ベルト部35とは、平面視においてプリーツ部材11の上側で重なるように設けられていることが好ましい。言い換えると、第3ベルト部33と第5ベルト部35とは、断面視において異なる高さ位置にあり、それぞれが移動するときに上下ですれ違うように設けられていることが好ましい。
【0070】
このような構成であることにより、プリーツ部材11が開いているとき、衣服の表側から視認されるのは第3ベルト部33又は第5ベルト部35のいずれか一方であるので、美感への影響が少ない。なお、
図6~8では、断面視において第3ベルト部33が第5ベルト部35よりも高い位置にあるように設けられている。
【0071】
アジャスタ部材31は、袖ぐりSと襟ぐりCのとの間で襟ぐりCに近い側に取り付けられていることが好ましい。第3ベルト部33及び/又は第5ベルト部35の襟ぐりC側の側線と襟ぐりCとの距離は、特に限定されないが、例えば、1~2cmの範囲内であることが好ましい。このような構成であることにより、アジャスタ部材31によって、プリーツ部材11が閉じられているときに前肩線L1と後肩線L2とが近接しやすくなるので、美感が向上する。言い換えると、プリーツ部材11は、閉じているときに前肩線L1と後肩線L2とが近接するように構成されていることが好ましい。プリーツ部材11は、閉じているときに前肩線L1と後肩線L2とが接触するように構成されていてもよい。
【0072】
アジャスタ部材31、詳細には、第3ベルト部33、第4ベルト部34、第5ベルト部35及び第6ベルト部36は、伸縮性が小さい布地で構成されていることが好ましい。このような構成であることにより、調節後の襟ぐりCのサイズを維持することができる。
【0073】
〔衣服のサイズ調節方法〕
次に、第二実施形態のサイズ調節機構200を用いた衣服のサイズ調節方法について説明する。
【0074】
初期段階において、第3ベルト部33は第4ベルト部34に対して長さ調節具37によりプリーツ部材11が閉じるような位置で固定されており、第5ベルト部35は第6ベルト部36に対して長さ調節具37によりプリーツ部材11が閉じるような位置で固定されている。初期段階は、
図6(a)、
図7(a)及び
図8(a)に示される段階である。このとき、プリーツ部材11は閉じている。すなわち、初期段階におけるプリーツ部材11の開閉度は0%である。
【0075】
衣服の着用者の成長により、襟ぐりCの拡張が必要になった場合、アジャスタ部材31によってプリーツ部材11の開閉度を増加させることにより、衣服の襟ぐりCのサイズを拡張することができる。具体的には、まず、プリーツ部材11が目標とする開閉度となるよう、第3ベルト部33を前身頃Fの方向に移動させるとともに、第5ベルト部35を後身頃Bの方向に移動させる。プリーツ部材11が目標とする開閉度になったなら、各長さ調節具37により、第4ベルト部34に対する第3ベルト部3の位置及び第6ベルト部36に対する第5ベルト部35の位置を固定する。これにより、衣服の襟ぐりCのサイズを拡張することができる。このとき、プリーツ部材11の開閉度は0%より大きく、100%未満であり、例えば50%である。
【0076】
衣服の着用者のさらなる成長により、襟ぐりCの拡張がさらに必要になった場合、上記と同じ手順により、アジャスタ部材31によってプリーツ部材11を完全に展開することにより、衣服の襟ぐりCのサイズを最大限まで拡張することができる。このとき、プリーツ部材11の開閉度は100%である。
【0077】
例えば、同じ衣服を別の着用者が再使用する場合など、襟ぐりCのサイズを元に戻す必要が生じた場合、上記と逆の手順により、アジャスタ部材31によってプリーツ部材11の開閉度を減少させることで、衣服の襟ぐりCを縮小することができる。
【0078】
[第三実施形態]
〔衣服〕
次に、第三実施形態に係る衣服10(以下、単に衣服10という。)について、
図9~12を参照しつつ詳説する。衣服10には、上記で説明したサイズ調節機構100又は200が用いられている。
【0079】
図9は、衣服10の模式図である。
図10は、衣服10を上側から見た模式図であって、(a)はプリーツ部材11が閉じている状態、(b)はプリーツ部材11が開いている状態を示している。
図11は、衣服10を裏返した状態の模式図であって、
図1~3のサイズ調節機構100を用いた場合を示している。
図12は、衣服10を裏返した状態の模式図であって、
図6~8のサイズ調節機構200を用いた場合を示している。本実施形態において、衣服100の前身頃F及び後身頃Bにはそれぞれ裏地が存在しており、サイズ調節機構100は、特にアジャスタ部材21又は31は、前身頃F(表地)と裏地との間及び後身頃B(表地)と裏地との間に位置するよう取り付けられているが、
図11及び12では、サイズ調節機構100の取り付け方を分かり易くするために裏地を省略して示している。なお、衣服100の前身頃F及び後身頃Bには裏地が存在していなくてもよい。以下では、
図1~3のサイズ調節機構100(100a、100b)を用いた衣服10について説明し、
図6~8のサイズ調節機構200(200a、200b)を用いた衣服10についての説明は省略する。
【0080】
衣服10は、2つのサイズ調節機構100a及び100bを備え、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100aが、前身頃Fと後身頃Bとの間で左肩線Laに沿って取り付けられ、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100bが、前身頃Fと後身頃Bとの間で右肩線Lbに沿って取り付けられている。衣服10は、1つのサイズ調節機構100を備え、1つのサイズ調節機構100が、左肩線La及び右肩線Lbのうちのいずれかに沿って取り付けられていてもよい。衣服10は、
図9~11に示すように、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100aが左肩線Laに沿って取り付けられ、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100bが右肩線Lbに沿って取り付けられていてもよい。
図9~11に例示する構成を有する場合には、衣服10の左右のバランスが維持されやすい。また、左右のサイズ調節機構100におけるプリーツ部材1の開閉度を異ならせることにより、体型や体格に応じたサイズの調節もできる。
【0081】
衣服10は、サイズ調節機構100が用いられていることにより、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を調節することで、
図10に示すように、襟ぐりCのサイズを調節することができる。襟ぐりCを拡張すると、衣服10の裾の位置が下方にずれる。そのため、衣服10が例えば、
図9に示すような女児用のワンピースである場合には、アジャスタ部材21によってプリーツ部材11の開閉度を調節することで、ワンピースの丈をも長くすることができる。例えば、衣服10が1つのサイズ調節機構100を備え、1つのサイズ調節機構100が、左肩線La及び右肩線Lbのうちのいずれかに沿って取り付けられており、プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計2cm拡張できるとともに、衣服10の丈を前後に1cmずつ長くすることができる。例えば、衣服10が、
図9~11に示すように、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100aが左肩線Laに沿って取り付けられ、2つのサイズ調節機構100a及び100bのうち100bが右肩線Lbに沿って取り付けられており、各プリーツ部材11が、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に1cmずつ開くように構成されている場合には、襟ぐりCを合計4cm拡張できるとともに、衣服10の丈を前後に2cmずつ長くすることができる。このように、衣服10は、サイズ調節機構100が用いられていることにより、通常よりも長い期間、成長期の子供によって着用されることが可能である。また、例えば、同じ衣服10を別の子供が再使用する場合など、襟ぐりCのサイズを元に戻す必要があるときにも、サイズ調節機構100が用いられていることにより、襟ぐりCを縮小することができる。
【0082】
本実施形態において、サイズ調節機構100のプリーツ部材11は、肩線L(左肩線La、右肩線Lb)と袖ぐりSとの接点を軸として、前身頃Fの方向及び後身頃Bの方向に、略扇型に開閉可能であるように取り付けられている。このような構成であることにより、袖ぐりSのラインに影響を与えることなく、襟ぐりCのサイズを調節することができる。
【0083】
以上、本発明について図面を参照して説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。第三実施形態では、衣服10として、女児用のワンピースが例示されているが、衣服10はこれに限られず、例えば、シャツ等であってもよく、また衣服10の着用者の性別や年齢が問われるものでもない。サイズ調節機構200(200a、200b)を用いた衣服10を示す
図12において、第6ベルト部36の端部36eは、前身頃Fの裏側の所定箇所に取り付けられているが、第6ベルト部36の端部36eは、前身頃Fの裾に取り付けられていてもよい。このようにすることで、第6ベルト部36の端部36eの取付位置を衣服の表側から分かりにくくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、特に、成長期の子供が着用する衣服に有用である。
【符号の説明】
【0085】
100 サイズ調節機構
11 プリーツ部材
12 第1面
13 第2面
21 アジャスタ部材
22 固定部
23 ベルト部
231 第1ベルト部
232 第2ベルト部
24 長さ調節具
M ベルト部の長さ
M1 第1ベルト部の長さ
M2 第2ベルト部の長さ
200 サイズ調節機構
31 アジャスタ部材
33 第3ベルト部
33e 端部
34 第4ベルト部
34e 端部
35 第5ベルト部
35e 端部
36 第6ベルト部
36e 端部
37 長さ調節具
10 衣服
F 前身頃
B 後身頃
C 襟ぐり
S 袖ぐり
L 肩線
L1 前肩線
L2 後肩線
Lv 折線
La 左肩線
Lb 右肩線