(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104209
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】熱交換機、建造物の冷房設備および熱交換機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F28C 1/02 20060101AFI20230721BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230721BHJP
F25B 27/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F28C1/02
F24F5/00 101A
F25B27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005071
(22)【出願日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】509199579
【氏名又は名称】MDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 賢治
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BF01
(57)【要約】
【課題】 冷房すべき室内空気を入れ替えつつ、冷房に要する電気エネルギを抑制する。
【解決手段】 冷却対象空間から排気された空気を取り込む排気給気口と、排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、冷熱交換空間に配置する気化用材と、気化用材に冷媒を供給する供給設備と、供給設備から気化用材に供給された冷媒が排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、冷却対象空間を冷却するための冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備と、冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、を備えた熱交換機とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象空間から排気された空気を活用して冷媒を冷却し、その冷媒を前記の冷却対象空間を冷却する冷媒として用いるための熱交換機であって、
前記の冷却対象空間から排気された空気を取り込む排気給気口と、
その排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、
その冷熱交換空間に配置する気化用材と、
その気化用材に対して液体の冷媒を供給する供給設備と、
その供給設備から前記の気化用材に供給された冷媒が前記の排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、前記の冷却対象空間を冷却するための冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備と、
前記の冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、
を備えた熱交換機。
【請求項2】
前記の供給設備は、前記の冷熱交換空間における上方に配置した給水パイプと、
その給水パイプ内から前記の気化用材に向かって冷媒を滴下させる多数のノズルと、
を備え、
前記の排気給気口は、前記の冷熱交換空間よりも下方に配置し、
前記の処理済み冷媒供給設備は、前記の排気給気口よりも下方に配置し、
前記のファンは、前記の冷熱交換空間の上方から排気させるように機能させることとした
請求項1に記載の熱交換機。
【請求項3】
前記の処理済み冷媒供給設備における前記の冷熱交換空間に連通する処理済み冷媒の中に、
その処理済み冷媒を気化させる気化装置を備えた
請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項4】
前記の排気給気口から取り込む空気の温度、湿度および風量を計測する給気計測機と、
前記の供給設備から供給される冷媒の温度を計測する入冷媒計測機と、
前記の処理済み冷媒供給装置から前記冷却対象空間を冷却するために供給される冷媒の温度および流量を計測する出冷媒計測機と、
を備えた
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項5】
前記の処理済み冷媒供給設備の冷媒の貯留量を計測する貯留量計測装置と、
その貯留量計測装置にて計測された貯留量を増やすために冷媒を供給する冷媒補給装置と、
前記の貯留量計測装置にて計測された貯留量を減らすために冷媒を排出する冷媒排出装置と、
を備えた
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項6】
前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて、前記のファンを介して排気される排気量を制御する制御装置を備えた
請求項4または請求項5のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項7】
前記の制御装置は、前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて前記の冷媒排出装置を制御することとした
請求項6に記載の熱交換機。
【請求項8】
前記の制御装置は、前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて前記の気化装置を制御することとした
請求項6または請求項7のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項9】
前記の熱交換機は、クーリングタワーを流用し、
そのクーリングタワーにおける外気の取り込み口の一部を、前記の排気給気口と連通させ、
排気給気口と連通させない外気の取り込み口は閉塞することで形成することとした
請求項1から請求項8のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項10】
前記の排気給気口から取り込む空気の湿度を下げるための除湿器を備えることとした
請求項1から請求項9のいずれかに記載の熱交換機。
【請求項11】
建造物の冷房設備であって、
前記の建造物の内部空間の空気を排気する排気設備と、
外気を取り入れて前記の建造物の内部空間へ提供するための冷気へ変換する冷気用熱交換機と、
その冷気用熱交換機による変換にて前記の冷気と熱交換された液体の冷媒を再冷却するために、前記の建造物の室外に設置された室外熱交換機と、
その室外熱交換機および前記の冷気用熱交換機の間で前記の冷媒を連通させる冷媒配管と、
を備え、
前記の室外熱交換機は、
前記の排気設備からから排気された空気を取り込む排気給気口と、
その排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、
その冷熱交換空間に配置する気化用材と、
その気化用材に対して前記の冷媒配管から液体の冷媒を供給する供給設備と、
その供給設備から前記の気化用材に供給された冷媒が前記の排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、前記の冷媒配管と連通させることで前記の冷気用熱交換機の冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備と、
前記の冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、を備えた
建造物の冷房設備。
【請求項12】
前記の冷媒配管には、断熱措置を施した
請求項11に記載の建造物の冷房設備。
【請求項13】
前記の排気設備は、前記の建造物の内部空間から排気を実行する設備が予め設けられている場合には、当該設備の排気口と前記の室外熱交換機における前記の排気給気口とを連通させることで形成することとし、
前記の室外熱交換機は、前記の設備の排気口に隣接させて固定することとした
請求項11または請求項12のいずれかに記載の建造物の冷房設備。
【請求項14】
冷却対象空間から排気された空気を活用して冷媒を冷却し、その冷媒を前記の冷却対象空間を冷却する冷媒として用いるための熱交換機の制御方法であって、
前記の熱交換器には、冷却対象空間から排気された空気を取り込む排気給気口と、
その排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、
その冷熱交換空間に配置する気化用材と、
その気化用材に対して液体の冷媒を供給する供給設備と、
その供給設備から前記の気化用材に供給された冷媒が前記の排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、前記の冷却対象空間を冷却するための冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備と、
前記の冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、
を備え、
前記の排気給気口から取り込む空気の温度、湿度および風量を計測する取り込み空気計測手順と、
前記の供給設備から供給される冷媒の温度を計測する入冷媒計測手順と、
前記の処理済み冷媒供給装置から前記冷却対象空間を冷却するために供給される冷媒の温度および流量を計測する出冷媒計測手順と、
前記のファンの稼働を制御するファン制御手順と、
を実行させることした熱交換機の制御方法。
【請求項15】
前記の熱交換器において、前記の処理済み冷媒供給設備における前記の冷熱交換空間に連通する処理済み冷媒の中に、その処理済み冷媒を気化させる気化装置を備え、
前記の取り込み空気計測手順、前記の入冷媒計測手順、前記の出冷媒計測手順に基づいて計測したデータを用いて前記の気化装置の作動を制御する気化制御手順、
を実行させることした請求項14に記載の熱交換機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気の完全入れ替えを可能としつつ、消費エネルギを抑制して冷房効率の高い空気調和機および空気調和機を用いた建造物の冷房設備の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷房運転時に必要換気量を確保した上で、快適性向上と高効率化の両立を実現可能な空気調和システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、空気調和対象の空間にユーザが不在である時間帯に空調機を制御する技術において、換気までも積極的に制御する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、複数の空気調和機(21~25)を用いる空調対象の空間において、天井室(AT)など空調対象外の共通空間の空気を、複数の空気調和機における熱交換のために共用することによって消費エネルギを抑制する技術が開示されている(
図1参照)。
【0005】
(
図2)
さて、一般の冷房設備を、
図2とともに説明する。
空調対象の空間を冷房する場合、冷房すべき室内の空気(暖気)を熱交換器(空気調和機=エアコン=室内機)の内部に取り入れ、冷えた冷媒との熱交換をさせることでつくり出した冷気を室内へ戻す。熱交換を終えて暖まった冷媒は、空調対象の空間から隔離された熱交換器(室外機)において放熱して冷やされ、室内機たるエアコンへ戻される。
【0006】
(
図3)
冷房すべき室内に空気調和機を設置できないような場合や複数の室内を一括で冷房するような場合、
図3のようにして冷房する。
すなわち、冷気製造室およびその冷気製造室の室内の空気を冷気に変える熱交換機(エアコン)を備え、そのエアコンにてつくられた冷気を、冷供気ダクトおよび給気ファンを介して冷房すべき室内へ送り込むのである。また、給気ファンとは対象の位置には室内の暖気を追い出すための排気ファンをも備える。
なお、その排気ファンで追い出す空気は、室内気温が下がってきたら外気温よりも低いため、冷気製造室へ戻して使うことがエネルギ効率を高める。よって、
図3では、戻しダクトを介して図示している。
【0007】
さて、冷房すべき室内において感染症対策が必要とされる場合、所定時間で室内の空気を入れ換えなければならない。
図2に示した冷房のパターンにおいて、室内の空気を入れ換える場合の状態を、
図4に示す。
図3に示した冷房のパターンにおいて、室内の空気を入れ換える場合の状態を、
図5に示す。
【0008】
(
図4)
図4では、冷房すべき室内の右側に給気ファン、左側に排気ファンを備えているとして図示している。
図4(a)に示すように、給気ファンも排気ファンも稼働させず、熱交換器(エアコン)がつくりだした冷気で冷房すべき室内が満たされる。所定の時間が経過したら、
図4(b)に示すように、給気ファンを用いて暖気である新鮮な外気(A1)を屋外から取り込み、排気ファンを用いて室内の冷気(A2)を追い出すこととなる。
【0009】
(
図5)
図5でも、冷房すべき室内の右側に給気ファン、左側に排気ファンを備えているとして図示している。
図5(a)に示すように、冷房すべき室内から戻された暖気から冷気製造室にてつくり出された冷気によって冷房すべき室内が満たされる。所定の時間が経過したら
図5(b)に示すように、給気ファンを用いて屋外から暖気である新鮮な外気(A1’)を取り込み、排気ファンを用いて室内の冷気(A2’)を追い出すこととなる。すなわち、
図5(b)に示すタイミングでは、冷気製造室においては、冷房すべき室内から循環してきた(戻しダクトからの)空気を使わず、新鮮だが暖かい新たな外気(A1’)を取り入れることとなる。具体的には、戻しダクトに備えた弁(図示は省略)を切り替えるなどの操作によって、新鮮な空気(A1’)を取り入れ、冷却された空気(A2’)を排気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5328951号公報
【特許文献2】特開2020-153659号公報
【特許文献3】特開2019-11949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえば、
図4(b)および
図5(b)で示したいずれの場合も、外気よりは冷却された空気が排気される。その一方で、換気すべき量の外気を、冷房すべき室内の温度まで新たに冷却しなければならない。すなわち、冷房すべき室内の空気を循環させていた場合に比べて、冷房に要するエネルギは大きくなり、電気代が嵩むこととなる。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、冷房すべき室内の空気を入れ替えなければならない場合であっても、冷房に要する電気エネルギを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決するため、冷却対象空間から排気された空気を活用して冷媒を冷却し、冷却対象空間を冷却する冷媒として用いることで、冷却対象空間を換気しつつ冷却できる熱交換機に係る第一の発明、および第一の発明に係る熱交換機を制御するコンピュータプログラムに係る第二の発明を提供する。
【0014】
(第一の発明)
第一の発明は、冷却対象空間から排気された空気を活用して冷媒を冷却し、その冷媒を前記の冷却対象空間を冷却する冷媒として用いるための熱交換機(α)に係る。
この熱交換機は、前記の冷却対象空間から排気された空気を取り込む排気給気口(給気口、冷排気ダクト)と、
その排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、
その冷熱交換空間に配置する気化用材(気化用充填材)と、
その気化用材に対して液体の冷媒を供給する供給設備(給水パイプおよび散水ノズル)と、
その供給設備から前記の気化用材に供給された冷媒が前記の排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、前記の冷却対象空間を冷却するための冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備(下部水槽)と、
前記の冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、を備える(
図6、
図7)。
【0015】
(用語説明)
「冷却対象空間」とは、そこを満たしている空気の冷却と換気とが必要とされる空間である。感染症対策を施さなければならなくなっている空間であって、且つ冷房を必要とする空間であるため、対象となる冷却対象空間は増えている。たとえば、店舗、事務所などに加え、食品加工工場、大型冷蔵室、冷凍倉庫、クリーンルームなどが、本願発明においては適している。
【0016】
「冷媒」には、液体を採用する。気体の冷媒に比べ。配管設備に断熱措置を施す際に簡易でコストも安価なためである。冷媒としては、水を用いることが、コスト面、取り扱い面から一般的である。水を凍りにくくするために溶媒を溶かした不凍液を用いる場合もある。ただし、本願発明における「冷媒」は、水や不凍液に限らなくても良い。
【0017】
「供給設備」へ供給される冷媒は、熱交換を終えて温められた冷媒である。「冷却対象空間」を冷却するのに用いた冷媒であるように
図6では図示しているが、本願発明においては、それに限られない。
「処理済み冷媒供給設備」に供給された冷媒は、「冷却対象空間を冷却するための冷媒」としているが、本願発明においては、「冷却対象空間」のみを冷却するための冷媒として用いなくても良い。
【0018】
(作用)
冷却対象空間から排気された空気を排気給気口から取り込む。取り込まれた空気は、気化用材が配置された冷熱交換空間へ向かう。
一方、供給設備からは液体の冷媒が気化用材へ供給される。気化用材に供給された冷媒は、排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われる。すなわち、冷媒の一部は気化(蒸発)するものの、蒸発しなかった冷媒は冷却され、処理済み冷媒となって処理済み冷媒供給設備へ供給される。
冷却対象空間から排気された空気は、気化した冷媒の一部を含みつつ、ファンによって屋外へ排気される。
【0019】
冷却対象空間から排気された空気は、冷却対象空間へ戻ることはなく、冷却対象空間の空気を完全に入れ換えることができる。換気される空気は新たな冷却が必要であるが、その冷却は、処理済み冷媒供給設備に供給された冷媒を用いれば良い。
すなわち、冷媒を移動させるポンプ(図示を省略)やファンの動力として必要とされる電気エネルギ等があれば、冷媒は繰り返して冷却されることとなる。冷却対象空間内の空気を冷却するために熱交換をした冷媒を、再び冷却するための圧縮や気化などの作業に伴う電気の消費量を抑えつつ、冷房と換気とを実行できる。
【0020】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい(
図6参照)。
すなわち、前記の供給設備は、 前記の冷熱交換空間における上方に配置した給水パイプと、
その給水パイプ内から前記の気化用材に向かって冷媒を滴下させる多数のノズルと、を備えることとする。
また、 前記の排気給気口は、前記の冷熱交換空間よりも下方に配置し、 前記の処理済み冷媒供給設備は、前記の排気給気口よりも下方に配置する。
更に、前記のファンは、前記の冷熱交換空間の上方から排気させるように機能させることとしている。
前述の「ノズル」は、滴下させる冷媒が霧状になることが望ましいが、霧状とさせることが必須条件とはならない。
【0021】
(作用)
給水パイプのノズルから冷媒が滴下されると、冷熱交換空間に配置された気化用材へ冷媒が付着する。
排気給気口は、冷熱交換空間よりも下方に配置し、処理済み冷媒供給設備は、排気給気口よりも下方に配置しており前記のファンは、冷熱交換空間の上方から排気させるように機能する。したがって、冷熱交換によって冷却された冷媒は、冷熱交換空間を落下するだけであり、移動させるための動力が不要である。
【0022】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の処理済み冷媒供給設備における前記の冷熱交換空間に連通する処理済み冷媒の中に、その処理済み冷媒を気化させる気化装置を備えることとするのである(
図8参照)。
【0023】
(用語説明)
「気化装置」とは、たとえば、超音波振動子を用いた装置である。省電力で冷媒を気化させることができる。
【0024】
(作用)
気化装置を介して気化した冷媒は、冷熱交換空間へ移動し、給水ノズルから供給された冷媒から熱を奪うことに寄与する。
【0025】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の排気給気口から取り込む空気の温度、湿度および風量を計測する給気計測機と、
前記の供給設備から供給される冷媒の温度を計測する入冷媒計測機と、
前記の処理済み冷媒供給装置から前記冷却対象空間を冷却するために供給される冷媒の温度および流量を計測する出冷媒計測機と、
を備えるのである(
図8参照)。
【0026】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記の処理済み冷媒供給設備の冷媒の貯留量を計測する貯留量計測装置(たとえば水位計)と、
その貯留量計測装置にて計測された貯留量を増やすために冷媒を供給する冷媒補給装置(たとえば補給水弁)と、
前記の貯留量計測装置にて計測された貯留量を減らすために冷媒を排出する冷媒排出装置(たとえば排水弁)と、
を備えるのである(
図8参照)。
【0027】
(用語説明)
貯留量計測装置については、正確な貯留量を計測する必要はなく、たとえば水位計でもよい。その水位計にフロートを採用し、フロートが捉える液面の上下動に連動して、冷媒補給装置としての補給水弁の開閉量を制御することとしても良い。
貯留量計測装置は、理済み冷媒供給設備の冷媒の貯留量を計測する。貯留量計測装置にて計測された貯留量を増やす必要がある場合、冷媒補給装置が冷媒を供給し、貯留量を減らす必要がある場合、冷媒排出装置が冷媒を排出する。
【0028】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明における前記のバリエーション3または4は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて、前記のファンを介して排気される排気量を制御する制御装置を備えるのである。
【0029】
(作用)
給気計測機は、排気給気口から取り込む空気の温度、湿度および風量を計測する。入冷媒計測機は、給設備から供給される冷媒の温度を計測する。出冷媒計測機は、処理済み冷媒供給装置から前記冷却対象空間を冷却するために供給される冷媒の温度および流量を計測する。
それぞれの計測結果に基づいて、制御可能な機器(たとえば、ファンを稼働させるファン用モータ等)を制御することで、処理済み冷媒についての必要な温度や流量を確保する。
【0030】
(第一の発明のバリエーション6)
第一の発明における前記のバリエーション5は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の制御装置は、前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて前記の冷媒排出装置を制御することとするのである。
【0031】
(第一の発明のバリエーション7)
第一の発明における前記のバリエーション5または6は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の制御装置は、前記の給気計測機、前記の入冷媒計測機、前記の出冷媒計測機が計測した計測値に基づいて前記の気化装置を制御することとするのである。
【0032】
(第一の発明のバリエーション8)
第一の発明に係る熱交換機は、クーリングタワーを流用することとしてもよい。そのクーリングタワーにおける外気の取り込み口の一部を、前記の排気給気口と連通させ、 排気給気口と連通させない外気の取り込み口は閉塞することで形成することするのである。
【0033】
(作用)
クーリングタワーを改造することで本願発明に係る熱交換機を形成することができるので、一から設計して製造する場合に比べて、さまざまな手間を軽減できる。
【0034】
(第一の発明のバリエーション9)
第一の発明に係る熱交換機は、前記の排気給気口から取り込む空気の湿度を下げるための除湿器(除湿ロータ)を備えることとしても良い(
図13)。
【0035】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係る熱交換機を採用した建造物の冷房設備に係る(
図12参照)。
その建造物の冷房設備は、
前記の建造物の内部空間(R)の空気を排気する排気設備(排気ファン、排気ダクト)と、
外気を取り入れて前記の建造物の内部空間(R)へ提供するための冷気へ変換する冷気用熱交換機(外調機および室外機)と、
その冷気用熱交換機による変換にて前記の冷気と熱交換された液体の冷媒を再冷却するために、前記の建造物の室外(たとえば当該建造物の屋上)に設置された室外熱交換機(α;
図6参照)と、
その室外熱交換機(α)および前記の冷気用熱交換機の間で前記の冷媒を連通させる冷媒配管と、
を備える。
前記の室外熱交換機(α)は、
前記の排気設備からから排気された空気を取り込む排気給気口(給気口、冷排気ダクト)と、
その排気給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、
その冷熱交換空間に配置する気化用材(気化用充填材)と、
その気化用材に対して前記の冷媒配管から液体の冷媒を供給する供給設備(給水パイプおよび散水ノズル)と、
その供給設備から前記の気化用材に供給された冷媒が前記の排気給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却された処理済み冷媒を、前記の冷媒配管と連通させることで前記の冷気用熱交換機の冷媒として供給する処理済み冷媒供給設備(下部水槽)と、
前記の冷熱交換空間にて熱交換を終えた空気を屋外へ排気させるファンと、を備える。
【0036】
(用語説明)
「建造物」とは、たとえば、ビルディング、会館など、多数の人間が出入りすることが想定される内部空間を確保した建物類である。
【0037】
(作用)
建造物の屋外に室外熱交換機(α)を設置し、その室外熱交換機(α)と建造物の内部空間(R)を排気設備(排気ファン、排気ダクト)で連通させる。これによって内部空間(R)の空気を室外熱交換機(α)へ引き込むことができ、且つ室外熱交換機(α)を介して排気させることとなる。すなわち、排気設備に入った空気は、内部空間(R)へ戻ることなく外気へと排出されるので、完全換気を実現できる。
冷気用熱交換機は、取り入れた外気を熱交換することで冷気をつくり出し、つくり出した冷気を内部空間(R)へ提供する。その外気から奪った熱を蓄えた液体の冷媒は、冷媒配管を介して室外熱交換機(α)へ運ばれる。
室外熱交換機(α)では、建造物の内部空間(R)からの排気が、気化用材を介して液体の冷媒から熱を奪うため冷媒は冷却され、冷気用熱交換機に戻される。
【0038】
液体の冷媒を循環させるためのポンプ、室外熱交換機(α)のファンなどの動力が必要であるものの、冷媒を冷却するための圧縮機などが不要であり、省エネルギで建造物の内部空間(R)を冷房できる。また、建造物の内部空間(R)からの排気は循環させずに室外熱交換機(α)から排気されるので、内部空間(R)の空気は常に入れ替わっている。そのため、感染症予防に効果的である。
【0039】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明における前記の冷媒配管には、断熱措置を施すと、より好ましい。
【0040】
(作用)
冷媒配管は、液体(代表的には水)を用いているため、気体の配管を断熱するよりも簡易かつ費用も抑制でき、断熱効果も高い。
【0041】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の排気設備は、前記の建造物の内部空間から排気を実行する設備が予め設けられている場合には、当該設備の排気口と前記の室外熱交換機における前記の排気給気口とを連通させることで形成することとし、
前記の室外熱交換機(α)は、前記の設備の排気口に隣接させて固定することとするのである。
【0042】
(作用)
本発明に係る建造物の冷房設備を、既存の建造物に採用する場合、当該建造物には、内部空間の換気を実行するために、排気を実行する設備が予め備えられている。
その排気設備における排気口に隣接させた位置へ室外熱交換機(α)を固定し、その排気口と室外熱交換機における排気給気口とを連通させ、冷媒配管を敷設するだけで、本発明に係る建造物の冷房設備を設置できる。
【0043】
(第三の発明)
第三の発明は、第一の発明に係る熱交換機を制御する方法に係る。結果として、第二の発明を制御する方法ともなる。
すなわち、 前記の排気給気口から取り込む空気の温度、湿度および風量を計測する取り込み空気計測手順と、
前記の供給設備から供給される冷媒の温度を計測する入冷媒計測手順と、
前記の処理済み冷媒供給装置から前記冷却対象空間を冷却するために供給される冷媒の温度および流量を計測する出冷媒計測手順と、
前記のファンの稼働を制御するファン制御手順と、
を実行させることした熱交換機の制御方法である(
図8参照)。
【0044】
(第三の発明のバリエーション1)
第三の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の熱交換器において、前記の処理済み冷媒供給設備における前記の冷熱交換空間に連通する処理済み冷媒の中に、その処理済み冷媒を気化させる気化装置を備え、
前記の取り込み空気計測手順、前記の入冷媒計測手順、前記の出冷媒計測手順に基づいて計測したデータを用いて前記の気化装置の作動を制御する気化制御手順、
を実行させることとするのである。
【0045】
(第三の発明のバリエーション2)
第三の発明におけるファン制御手順や気化制御手順を実行するために必要なデータを入力するデータ入力手順と、そのデータ入力手順にて入力されたデータを用いて必要な制御を実行するための制御信号を作成する制御信号作成手順と、その制御信号作成手順で作成した制御信号をファンおよび/または気化装置へ出力する信号出力手順と、を制御装置に実行させることとしても良い。
【0046】
(第三の発明のバリエーション3)
第三の発明のバリエーション2に示した制御装置は、制御信号作成手順を実行させるデータ入力装置、制御信号作成手順を実行するために必要な記憶装置および演算装置、信号出力手順を実行させるための出力装置を備えたコンピュータとすることができる。
よって、制御装置たるコンピュータを制御するコンピュータプログラムを提供することも可能である。
【発明の効果】
【0047】
第一の発明によれば、冷房すべき室内の空気を入れ替えなければならない場合であっても、冷房に要する電気エネルギを抑制可能な熱交換機を提供することができた。
第二の発明によれば、建造物における内部空間の空気を入れ替えなければならない場合であっても、冷房に要する電気エネルギを抑制可能な建造物の冷房設備を提供することができた。
第三の発明によれば、冷房すべき室内の空気を入れ替えなければならない場合であっても、冷房に要する電気エネルギを抑制可能な熱交換機の制御方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】特許文献3に開示された技術の主要部を示すブロック図である。
【
図2】室内を冷房する際に室内機および室外機を用いる場合を概念的に示した概念図である。
【
図3】室内機および室外機を用いて室内を冷房する際に冷気製造室を用いる場合を概念的に示した概念図である。
【
図4】室内機および室外機を用いて冷房および換気をしなければならない場合について、冷房中(a)と換気中(b)とを概念的に示した概念図である。
【
図5】冷気製造室を用いて冷房および換気をしなければならない場合について、冷房中(a)と換気中(b)とを概念的に示した概念図である。
【
図6】本発明に係る第一の実施形態を示す概念図である。
【
図7】本発明に係る第二の実施形態を示す概念図である。
【
図8】本発明に係る第三の実施形態を示す概念図である。
【
図9】本発明に係る熱交換機の製造に用いることができるクーリングタワーの構造を示す概念図である。
【
図10】本発明に係る第四の実施形態を示す概念図である。
【
図11】本発明に係る第五の実施形態を示す概念図である。
【
図12】既存のビルに本発明を採用する場合として第六の実施形態を示す概念図である。
【
図13】本発明に係る第七の実施形態を示す概念図である。
【
図14】本発明の実施形態における湿り空気h-c線図の一例である。
【
図15】本発明に係る熱交換機を複数備えた場合に、一台の管理サーバが管理をする様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について、図面(
図6から
図15)を参照して説明する。本発明は、実施形態に限定されるものではなく、本発明をより具体的に解釈するための形態が以下の実施形態である。
【0050】
(
図6)
図6は、冷却後の排気利用システム(A)を示している。すなわち、第一の実施形態に係る熱交換機(α)を、冷房すべき室内、およびその冷房すべき室内の暖気との熱交換をする熱交換機(2)とともに示している。
冷房すべき室内は、室内の暖気を熱交換機(2)の内部に取り込む。取り込まれた暖気は、熱交換機(2)を循環する、たとえば摂氏18度以下の冷媒(本実施例では「水道水」を採用する)との熱交換をして摂氏25度前後の冷気となって、室内へ戻される。
【0051】
冷房すべき室内に対して、感染症の予防などの目的で換気を必要とする場合、屋外から新鮮な外気(A1)が取り込まれ、その一方で、取り込まれた外気(A1)の分だけ、冷却された冷気(A2)が排気される。その冷気(A2)は、冷排気ダクトを介して熱交換機(α)へ送られる。
【0052】
熱交換機(α)は、冷排気ダクトから送り込まれた空気(A2)を取り込む給気口と、その給気口から取り込んだ空気を通過させる冷熱交換空間と、熱交換機(α)の上端に設置されたファンと、を備えている。
一方、冷房すべき室内のエアコンとして使われた熱交換機(2)で冷熱交換をして暖まった冷媒は、熱交換機(α)における冷熱交換空間の上部に接続された給水パイプを介して熱交換機(α)へ運ばれる。冷媒が移動するための動力をつくり出すポンプについては、図示を省略している。
【0053】
熱交換機(α)の冷熱交換空間には、水平方向に波打った薄板状の気化用充填材が配置されている。そして、その気化用充填材に対して、給水パイプに設けられた散水ノズルで、冷媒(たとえば摂氏20~30度の水道水)を散水する。
散水ノズルから気化用充填材に供給された冷媒は、給気口から取り込んだ空気によって気化熱を奪われることで冷却されて下部水槽へ落下し、摂氏19~22度程度の処理済み冷媒となる(
図14参照)。
【0054】
下部水槽に貯留した冷媒は、冷房すべき室内を冷却するための熱交換機(2)の冷媒として供給される。
気化用充填材に散水された水(熱交換機(2)で用いられる冷媒)から熱を奪った排気(A3)は、ファン用モータによって稼働するファンによって屋外へ排気される。冷房すべき室内で冷気が循環するシステムとは全く異なり、冷房すべき室内の空気は新鮮な外気(A1)と入れ替わっていくのが、この冷却後の排気利用システム(A)である。
【0055】
冷房すべき室内は、所定時間内で全ての空気が入れ替わるように、新鮮な外気(A1)が屋外から取り入れられる。取り入れられた外気は室温よりも高いので冷やす必要があり、熱交換機(2)で冷気にする。その冷気にするために熱交換される冷媒は、熱交換機(α)の戻しパイプから供給されるのであり、冷却設備としての室外機を稼働させなくて済む。冷却された排気(A2)が熱交換機(α)へ提供されるまでの時間帯は室外機の稼働が必要であるが、冷却された排気(A2)が熱交換機(α)へ提供された後は、換気と省エネルギによる冷房とを両立できる。
【0056】
(
図7)
図7は、冷却後の排気利用システム(B)を示している。すなわち、冷房すべき室内(1,2)が2つ存在し、その2つの室内には、一つの冷気製造室から冷給気ダクトを介して冷気を送り込む実施形態を示している。
【0057】
図6に示した冷却後の排気利用システム(A)と異なるのは、冷房すべき室内(1,2)において換気される空気としての新鮮な外気(A1)は、各室(1,2)にて取り込まれるのではなく、冷気製造室にて取り込まれるようにしている点である。
【0058】
なお、図示の都合上、冷房すべき室内(2)にて冷却された排気を示すことができていないが、冷房すべき室内(1)と同じように、冷排気ダクトを介して熱交換機(α)に取り込まれ、熱交換を終えたらファンを介して屋外へ排気される(A3)。
【0059】
(
図8)
図8は、冷却後の排気利用システムにおける制御系を示している。
前述してきた本発明に係る熱交換機は、冷房すべき室内を冷却するために用いられる冷媒を循環させて冷却するが、気化用充填材における熱交換の際に一部が蒸発し、屋外へ排気される。そのため、補給が必要である。
【0060】
(冷媒量の制御)
この補給については、下部水槽の内壁面に固定された水位計によって、水位を計測し、水位が下がったら冷媒(補給水)を下部水槽へ補給する補給水弁を開放することで補給する。
下部水槽への供給は、フロート弁にて補給水弁の開閉(およびその開放レベル)を機構的に実行することで補給水の供給オンオフ制御を可能とすれば、電気的な制御は不要となるので、望ましい。
【0061】
前記の水位が上がりすぎた場合、排水弁を開放し、所定の水位に下がるまで排水する。
図8に示した実施形態では、制御装置が水位データを受信し、制御装置が排水弁の制御信号を出力するようにしている。しかし、フロート弁にて排水弁の開閉(およびその開放レベル)を機構的に実行することで排水のオンオフ制御を可能とすれば、電気的な制御は不要となるので、望ましい。
【0062】
(冷却後の排気に関する計測データ)
熱交換機に取り込まれる冷却後の排気(A2)については、その気温(入気温)、湿度(入湿度)、および風量(入風量)を計測し、計測データを制御装置へ送信している。
【0063】
(使用後の冷媒、処理済みの冷媒)
冷房すべき室内の空気を冷却することで温まった冷媒は、給水パイプを介して熱交換機に取り込まれるが、その水温は、水温計にて計測する。
また、熱交換機にて冷却された処理済みの冷媒は、下部水槽から冷房すべき室内の空気を冷却するための冷媒として戻されるが、その冷媒の水温および流量は、水温計および流量計にて計測する。
【0064】
(制御対象)
冷却後の排気、温まった冷媒、処理済みの冷媒について計測されたデータは、制御装置に送信される。
制御装置は、入力された各種のデータを用いて、たとえば前述した排水弁の開閉を制御するほか、ファン用モータの出力を制御する。たとえば、ファンの出力が複数段階である場合には、強運転、弱運転、停止などを選択する。ファンの出力が無段階である場合には、連続的に出力の強弱を制御する。
【0065】
(超音波振動子)
下部水槽には、処理済み冷媒を気化させるための気化装置(超音波振動子)を水没させてある。そして、この気化装置の運転も、冷却後の排気、温まった冷媒、処理済みの冷媒について計測されたデータを用いて制御する。
超音波振動子を用いた気化装置は、省電力で冷媒を気化させることができる。
【0066】
処理済み冷媒の水温が、所望する水温よりも高い場合、気化装置の出力を上げて冷媒を気化させる。気化した冷媒は気化用充填材の付近へ移動し、給水ノズルから供給された冷媒から熱を奪うことに寄与する。その結果、処理済み冷媒の水温を下げることとなる。
【0067】
(
図9)
図6から
図8に示した熱交換機(α)は、普及品であるクーリングタワー(冷却塔)を改造することで形成できることから、一般のクーリングタワーの構造を示している。
【0068】
クーリングタワーは、上部の開口を絞ったような円筒状の外形をなしている。下部に設けた空気取入口から外気を取り入れ、筒状内部に備えた充填材を通過させ、上部の開口から排出させる。取り入れた外気を上部の開口から排出させるための動力は、開口付近に備えたファンおよびそのファンを稼働させるファンモータによる。
【0069】
水道水などの水が流れる散水用配管を充填材の上方に配置し、散水用配管に備えた散水ノズルで充填材へ撒水させる。
充填材に付着した水は、空気取り入れ口から上部開口に向かって流れる外気に気化熱を奪われることで一部が蒸発しつつ、残った水は水温が下がる。水温の下がった水は、下部水槽に貯留された後に、冷却水供給配管を介して、冷房設備などに用いられる。
【0070】
下部水槽には、多すぎた場合に排水をする排水弁、少ない場合に給水する給水弁(図示を省略)、排水弁および給水弁の開閉させるフロートが備えられている。
【0071】
日本国内で使用されることを前提として普及しているクーリングタワーは、外気温が摂氏34度で湿度が58.4%である場合に湿球温度が摂氏27度であるとして設計されている。このクーリングタワーを用いた場合について、
図14に示す。
外気温が摂氏34.4度、湿度57%の場合であって、室内排気の入り口乾球温度が摂氏27度、相対湿度50%、湿球温度19.5度で1時間当たり6000立方メートルが流入したとする(CASE1)。この場合、クーリングタワーの出口では、室内冷房に用いる冷媒として、乾球温度が摂氏22.4度の冷却水を得ることができる。このときの冷却熱量は、23.6KWである。
【0072】
このようなクーリングタワーにおける外気の取り込み口の一部を、前記の排気給気口と連通させ、排気給気口と連通させない外気の取り込み口は閉塞することで、
図6等で示した熱交換機(α)を形成することができる。 既存のクーリングタワーを改造することで本願発明に係る熱交換機を形成することができるため、一から設計して製造する場合に比べて、さまざまな手間を軽減できる。
【0073】
クーリングタワー(冷却塔)を改造して熱交換機(α)を構成した場合、
図8に示した気化装置が有効である。なぜならば、一般のクーリングタワーは、
図6等で示した「散水ノズル」を、製造コストの低減を意図して、冷却水戻り配管に孔を設けただけとしているものが多い。その場合、冷媒が滴下するだけであり、充填材での熱交換が不十分となり、結果として処理後の冷媒の水温が所望する水温にまで下がらないことがある(所望する水温にまで下げるための工夫として、
図8に示した超音波振動子を用いて、下部水槽に貯留した水を蒸発させ、気化用充填材での放熱口かを高めるのである)。
【0074】
(
図10)
図10では、複数の冷房すべき室内(R,S)を冷房するために用いる冷媒を、一台の熱交換機(α)によって供給する場合を示している。
たとえば、フロア面積の小さなビルの屋上に一台の熱交換機(α)を設置し、そのビルにおける複数のフロアを冷房するための熱交換機に対して、熱交換機(α)にて冷媒を循環させるとともに、各フロアの冷排気を熱交換機(α)へ供給して熱交換をさせた後に排気させることができる。
【0075】
冷房すべき室内(R)は、冷気製造室から提供される冷気によって冷房され、冷排気は、排気ファン、冷排気ダクトを介して熱交換機(α)へ送られるようにしている。冷気製造室は、給気ファンから取り入れた外気(暖気)を吸い込み、熱交換機(2)を用いて冷気をつくり出す。そして、供気ファン、冷給気ダクトおよび給気ファンを介して冷房すべき室内(R)へ冷気を提供する。
【0076】
熱交換機(2)は冷気をつくり出す代わりに、冷媒が温まってしまう。その温まった冷媒は、冷媒配管を介して熱交換機(α)へ送り込む。その熱交換機(α)では、冷房すべき室内(R、S)の排気である冷排気との熱交換によって冷却処理され、冷媒配管を介して熱交換機(2)へ戻される。
【0077】
冷房すべき室内(S)は、室内機(3)および室外機(4)を介して冷房されている。給気ファンを介して室内(S)に取り込まれた外気(暖気)を室内機(3)に取り込み、室外機(4)がつくり出した冷媒を用いて暖気から熱を奪い、冷気を提供する。暖気によって温まった冷媒は室外機(4)および冷媒配管(破線で図示)を経由して熱交換機(α)へ送られる。また、室内(S)の冷気は、排気ファン、冷排気ダクトを介して熱交換機(α)へ送られる。
【0078】
熱交換機(α)においては、室内(R,S)の排気として熱交換機(α)に取り込まれた冷気が、熱交換機(2)や室外機(4)にて温まった冷媒が散水されることで、その冷媒から熱を奪って排気される。熱を奪われる処理をされて冷却された冷媒は、冷媒配管を介して熱交換機(2)や室外機(4)へ戻される。
【0079】
冷房すべき室内が冷気製造室を用いる場合であっても、室内機および室外機の組み合わせの場合であっても、熱交換機(α)を介して冷媒を循環させることができ、且つ冷房すべき室内の換気を実行できる。
【0080】
(
図11)
図11では、冷房すべき室内の空間容積が大きく、本願に係る熱交換機(α、β)を複数用いる場合について示している。
【0081】
給気ファンを介して外気を取り込み、その外気(暖気)を、複数の室内機である熱交換機(3,4)にて冷気にして室内を冷房する。
熱交換機(3,4)にて暖気から熱を吸収して温まった冷媒は、冷媒配管を介して熱交換機(α、β)に送られる。また、室内の冷気は、室内の空気を入れ換えるために、排気ファンおよび冷排気ダクトを介して熱交換機(α、β)に送られる。
【0082】
熱交換機(α、β)においては、室内の排気として熱交換機(α、β)に取り込まれた冷気が、熱交換機(3,4)にて温まった冷媒が散水されることで、その冷媒から熱を奪って排気される。熱を奪われる処理をされて冷却された冷媒は、冷媒配管を介して熱交換機(3,4)へ戻される。
は、
【0083】
図11に示した本願発明に係る熱交換機(α、β)は、室内機として用いられる熱交換機(3,4)の室外機として機能していることとなる。一般の室外機は、冷媒を圧縮するなどの機構やその機構を稼働させるための電気エネルギを必要とするが、熱交換機(α、β)ではそうした機構が不要となる。熱交換機(α、β)が冷排気を移動させるためのファン、冷媒配管を循環させるためのポンプ(図示を省略)などに電気エネルギを必要とするものの、一般の室外機で消費する電力よりも小さい。したがって、消費する電気エネルギ(同時に電気代)を抑制することに寄与する。
【0084】
(
図12)
図12では、既存のビル(建造物)における冷房すべき室内(R)を冷房する場合の実施形態を示す。
冷房すべき室内(R)に対しては、その室内へ冷気を提供するために、既設の外調機が固定されている。また、その室内の排気を実行するための排気ファンには、ビルの屋上へ排気を排出させるための排気ダクト(図中に点線で表記)が設けられている。
【0085】
屋上の既設の排気口に隣接させて、屋上に台座(図中に点線で表記)を設置する。そして、その台座には、
図6に示した熱交換機(α)を固定する。
その熱交換機(α)における給気口には、既設の排気ダクトにおける排気口の位置を変更して連通させる。すなわち、既設の排気口から延長ダクトを敷設して熱交換機(α)の給気口に連結するなどの措置を施す。
【0086】
既設の外調機に対しては、室外機を新設する。その室外機から外調機に対して冷気を提供し、外調機から冷房すべき室内(R)へ冷気を提供するのである。
新設した室外機は、外気を取り入れ、室外熱交換機(α)から提供される冷媒によって外気から熱を奪う。熱を蓄えた冷媒は、冷媒配管(温)を介して室外熱交換機(α)へ戻す。室外熱交換機(α)にて気化用充填材へ散水され、排気によって気化熱を奪われて冷却される(
図6参照)。冷却されて下部水槽に回収された冷媒は、冷却されたら冷媒配管(冷)を介して室外機にて熱交換される。
【0087】
冷媒配管(温、冷)は新設する。液体の冷媒管なので、断熱材を巻き付けるなどの断熱処理を施す。安価な費用であるが、エネルギ効率、すなわち消費電力を抑制する効果は大きい。一方、排気ダクトを必要性は高くない。費用対効果が小さいからである。
【0088】
冷房すべき室内(R)は、排気ファンから排気した空気が循環することはなく、所定時間で室内の空気が完全に入れ替わる。そのため、感染症対策などに効果的である。
液体の冷媒を循環させるためのポンプ(図示を省略)、室外熱交換機(α)のファンなどの動力が必要であるものの、冷媒を冷却するための圧縮機などが不要であり、省エネルギで建造物の内部空間(R)を冷房できる。すなわち、既存の設備を大幅に変更することなく、完全換気かつ省エネルギの冷房を実現可能である。
【0089】
たとえば、冷房すべき室内が複数(Rの他にS)存在する場合、複数の室内で必要とされる冷媒を、室外熱交換機(α)にて提供可能であれば、更に効率的である。
また、一台の室外熱交換機(α)では能力的に足りない場合には、大型の室外熱交換機とする、あるいは、屋上に設置スペースがあれば、複数台の室外熱交換機(α)を設置すればよい。
【0090】
(
図13)
図13では、
図6などに示した実施形態と主要部の構成は同じであるが、排気給気口から取り込む空気の湿度を下げるための除湿ロータを備えることとした実施形態を示す。
ここで、除湿ロータとは、たとえば、吸着剤または吸湿剤を結合したハニカム積層体を円筒状に形成し、セパレータにて吸着ゾーンおよび再生ゾーンに分離して形成したものである。
【0091】
高温低湿(たとえば、気温摂氏約50度で湿度約5~10%)な排気(A4)を出しているような設備では、前述の除湿ロータにおける再生ゾーンへ、その高温低湿な排気(A4)を取り込めるように配管などを整備する。すると、吸着ゾーンにて排気給気口から取り込む空気の湿度を下げることができる。その結果、熱交換機αにて得られる処理済み冷媒の温度を摂氏20度以下まで下げることができる場合が出てくる。
【0092】
図6から
図13に示した本願発明に係る熱交換機(α、β)は室外に設置されているため、処理済み冷媒に砂、埃などの不純物が混入している可能性がある。よって、処理済み冷媒を用いる冷却用の冷媒として用いる直前付近に、不純物処理装置、たとえばマルチサイクロンを熱交換器の入り口へ取り付ける。そのマルチサイクロンによる遠心分離によって、汚れを除去し、継続的な運転を可能とする。
【0093】
(
図15)
図15では、本発明に係る熱交換機(α、β、・・・)を遠隔で、複数台操作する場合について示す概念図である。
熱交換機α、βは、管理サーバとの間で、通信ネットワークを介してデータの送受信が可能である。
【0094】
前述した制御装置は、管理サーバに存在させて一括制御とすることも可能である。一方、各空気調和機にローカルな制御装置を存在させつつ、管理サーバにおける総合的な制御装置が、ローカルな制御装置へ制御用プログラムの最新バージョンを伝送し、制御用プログラムを更新させることとしてもよい。
【0095】
熱交換機α、β、・・・からは、各温度計、各湿度計、各流量計からの計測データが管理サーバへ送信される。
管理サーバにおいては、各熱交換機α、β、・・・から送信されてくる計測データを受信する測定データ受信手段と、その計測データを蓄積する計測データベースと、受信した計測データおよび過去の計測データを用いて制御用データを演算する演算手段と、演算された制御用データを各熱交換機α、β、・・・へ送信する制御用データ送信手段と、を備えている。
【0096】
制御用データを受信した各熱交換機α、β、・・・は、その受信した制御用データにて、外気引き込みファン、調整エア送風ファン、各ポンプ、各弁、などを制御し、最適な運転を継続する。
【0097】
(天気予報データの活用)
管理サーバは、天気予報データを受信する天気予報データ受信手段を備えることとしてもよい。
その場合、
図15に示した演算手段は、受信した天気予報データをも用いて制御データを演算する。それによって、気温や湿度の変化を予測し、トータルでの合理的な運転となるように制御することに寄与する。
【0098】
たとえば、最高気温の予想時間帯の直前に稼働を高めておいて、最高気温の時間帯には稼働を弱める、など、電気料金を重視したり、冷房効果を重視したりする。
また、
図13に示したような高温低湿の排気(A4)が得られないとしても除湿ロータを備えておき、天気予報データによる外気が高温低湿である場合には、その外気を除湿ロータの再生ゾーンに取り込むこととしてもよい。以上のように、各種のセンシングによるデータや天気予報データを制御に活用し、合理的な運転に寄与させる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、熱交換機の製造業、熱交換機の制御プログラムを提供する情報サービス業、空気調和に関するコンサルティング業、などにおいて利用可能性を有する。