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特開2023-104983仮固定材、及び、電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104983
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】仮固定材、及び、電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20230721BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230721BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230721BHJP
   C09J 179/04 20060101ALI20230721BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230721BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/30
C09J179/04
C09J11/04
C08F2/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084404
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2022517498の分割
【原出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020159178
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020159180
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020159181
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大同 和泉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 駿夫
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】林 聡史
(72)【発明者】
【氏名】星野 文香
(57)【要約】
【課題】被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる仮固定材を提供する。また、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法も提供する。
【解決手段】光硬化型接着剤を含む仮固定材であって、前記光硬化型接着剤は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を含有し、前記仮固定材は、405nmの光線透過率が10%以上であり、かつ、5%重量減少温度が350℃以上である仮固定材である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型接着剤を含む仮固定材であって、
前記光硬化型接着剤は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を含有し、
前記仮固定材は、405nmの光線透過率が10%以上であり、かつ、5%重量減少温度が350℃以上である
ことを特徴とする仮固定材。
【請求項2】
前記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、硬化後の25℃における弾性率が1×10Pa以上であることを特徴とする請求項1記載の仮固定材。
【請求項3】
前記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、硬化後の300℃における弾性率が1×10Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の仮固定材。
【請求項4】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の仮固定材。
【請求項5】
前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の仮固定材。
【化1】
一般式(4-1)~(4-4)中、R~R及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項6】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は、二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)を含み、
前記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の仮固定材。
【請求項7】
前記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)は下記一般式(1d)で表される構成単位、及び、下記一般式(1e)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0)、両末端がそれぞれX及びXで表される樹脂(2-i)であることを特徴とする請求項6記載の仮固定材。
【化2】
一般式(1d)~(1e)中、P及びPは、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。X及びXは、二重結合を有する官能基を含有しない基を表す。
【請求項8】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は、二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の仮固定材。
【請求項9】
前記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX及びXで表される化合物(1-i)であることを特徴とする請求項8記載の仮固定材。
【化3】
一般式(1a)~(1c)中、P、P及びPは、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X、X及びXからなる群より選択される少なくとも1つは、二重結合を有する官能基を表す。
【請求項10】
前記二重結合を有する官能基は、置換されてもよいマレイミド基であることを特徴とする請求項8記載の仮固定材。
【請求項11】
前記反応性樹脂は、更に、分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の仮固定材。
【請求項12】
前記反応性樹脂100重量部に占める前記分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の含有量が5重量部以上、100重量部以下であることを特徴とする請求項11記載の仮固定材。
【請求項13】
前記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)は、前記反応性樹脂100重量部に占める含有量が10重量部以上、100重量部以下であることを特徴とする請求項8記載の仮固定材。
【請求項14】
前記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)は、前記反応性樹脂100重量部に占める含有量が10重量部以上、90重量部以下であることを特徴とする請求項6記載の仮固定材。
【請求項15】
前記光硬化型接着剤は、更に、重合開始剤を含有し、前記重合開始剤は、光重合開始剤であり、前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の仮固定材。
【請求項16】
前記光硬化型接着剤は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の仮固定材。
【請求項17】
前記光硬化型接着剤は、更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の仮固定材。
【請求項18】
前記無機充填剤は、平均粒子径が5nm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項17記載の仮固定材。
【請求項19】
前記無機充填剤は、前記反応性樹脂100重量部に対する含有量が1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項17又は18記載の仮固定材。
【請求項20】
前記光硬化型接着剤は、更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19記載の仮固定材。
【請求項21】
前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項20記載の仮固定材。
【請求項22】
前記光硬化型接着剤からなる第1の光硬化型接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特と由とする請求項20又は21記載の仮固定材。
【請求項23】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の光硬化型接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項22記載の仮固定材。
【請求項24】
硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23記載の仮固定材。
【請求項25】
電子部品の製造工程に用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24記載の仮固定材。
【請求項26】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、前記仮固定材の光硬化型接着剤を硬化する硬化工程と、前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項27】
請求項22又は23記載の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の光硬化型接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の光硬化型接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の光硬化型接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる仮固定材に関する。また、本発明は、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-32946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子部品の高性能化に伴い、電子部品に種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。例えば、電子部品の表面にスパッタリングにより金属薄膜を形成する工程では、300~350℃程度の高温で加工を行うことにより、より導電性に優れた金属薄膜を形成することができる。しかしながら、従来の粘着剤組成物や粘着テープを用いて保護した電子部品に、300℃以上の高温加工処理を行うと、接着亢進を起こして、剥離時に充分に粘着力が低下しなかったり、糊残りが発生したりすることがある。
【0006】
本発明は、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる仮固定材を提供することを目的とする。また、本発明は、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光硬化型接着剤を含む仮固定材であって、上記光硬化型接着剤は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を含有し、上記仮固定材は、405nmの光線透過率が10%以上であり、かつ、5%重量減少温度が350℃以上である仮固定材である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、光硬化型接着剤を含む仮固定材において、光硬化型接着剤剤に、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を用いることを検討した。このような光硬化型接着剤は、光の照射によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下するため、剥離時に容易に剥離できることが期待される。しかしながら、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行うと、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを充分に防止することは困難であった。
本発明者らは、検討を進めるなかで、仮固定材の光透過性が高く光硬化反応が充分進行する場合でも、耐熱性が不充分であると糊残りが生じること、耐熱性を高めても、光硬化反応が充分進行しないと接着亢進が生じてしまうことを見出した。
これに対して、本発明者らは、仮固定材の光透過性を高めることで光硬化型接着剤における光硬化反応を充分に進行させ、接着亢進を抑制させるとともに、仮固定材の耐熱性を向上させ、高温での分解をも抑えることについて検討した。検討を進めた結果、本発明者らは、仮固定材の405nmの光線透過率及び5%重量減少温度を特定範囲に調整することにより、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができ、剥離時に容易に剥離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の仮固定材は、光硬化型接着剤を含む。
本発明の仮固定材は、上記光硬化型接着剤を含んでいれば特に限定されず、液状の仮固定用接着剤であってもよく、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層を有するシート状の仮固定用接着シートであってもよい。
【0010】
上記光硬化型接着剤は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を含有する。
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は、イミド骨格を有することによって極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても主鎖の分解が起こりにくい。このため、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂を含有することにより、上記光硬化型接着剤は、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。
【0011】
上記反応性樹脂は、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含み、かつ、上記反応性樹脂全体として反応性を有していればよく、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)自体が反応性を有していてもよいし、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)自体には反応性がなくてもよい。なお、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)自体に反応性がない場合、上記反応性樹脂は、反応性官能基を有する他の成分を更に含有することにより、上記反応性樹脂全体として反応性を有する必要がある。
【0012】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は特に限定されないが、二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)、又は、二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)が好ましい。これらのイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を含むことにより、上記光硬化型接着剤は、光の照射によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下する。このため、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。
上記二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。
【0014】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)は、二重結合を有する官能基の官能基当量(重量平均分子量/二重結合を有する官能基の数)が4000以下であることが好ましい。上記官能基当量が4000以下であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。これは、樹脂の分子中に一定以上の密度で二重結合を有する官能基を有することにより、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。上記官能基当量は、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。上記官能基当量の下限は特に限定されないが、実質的には600程度が下限である。
【0015】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)は、重量平均分子量(Mw)が1000以上、10万以下であることが好ましい。上記重量平均分子量が1000以上であることにより、上記光硬化型接着剤の成膜が容易となるとともに、得られた光硬化型接着剤層がある程度の柔軟性を発揮することから、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記重量平均分子量が10万以下であることにより、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の溶媒への溶解度が低くなりすぎることを防ぐことができる。上記重量平均分子量は1500以上、5万以下であることがより好ましく、2000以上、2万未満であることが更に好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。より具体的には、APCシステム(ウォーターズ社製、又はその同等品)を用いて、移動相THF、流量1.0mL/min、カラム温度40℃、サンプル濃度0.2重量%、RI・PDA検出器の条件で測定することができる。カラムとしては、HR-MB-M 6.0×150mm(品名、ウォーターズ社製、又はその同等品)等を用いることができる。
【0016】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)において、二重結合を有する官能基は側鎖又は末端のいずれにあってもよいが、両末端に存在することが好ましく、両末端に加えて更に側鎖にも存在することがより好ましい。上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の両末端における二重結合を有する官能基は反応性が高く、光の照射により上記光硬化型接着剤をより充分に硬化させることができる。この結果、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
更に、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の側鎖に二重結合を有する官能基があることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。これは、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。また、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の側鎖に二重結合を有する官能基があることにより、上記重量平均分子量を1000以上としながら、上記官能基当量を4000以下に調整することが容易となる。これにより、上記光硬化型接着剤が充分な初期粘着力を有すると同時に、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0017】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)としては、具体的には例えば、次の樹脂が挙げられる。即ち、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX及びXで表される樹脂(1-i)が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
一般式(1a)~(1c)中、P、P及びPは、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X、X及びXからなる群より選択される少なくとも1つは、二重結合を有する官能基を表す。
【0020】
上記一般式(1a)~(1c)中、P、P及びPは、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。P、P及びPが炭素数5~50の芳香族基であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0021】
上記一般式(1a)中、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることが好ましい。Qが置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることにより、上記光硬化型接着剤は、高い光透過性を有することができる。また、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
また、Qは、後述するようなジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。なかでも、光透過性を高める観点、柔軟性を高める観点、及び、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の溶媒や他の成分との相溶性が増し光硬化型接着剤層の形成が容易となる観点から、Qは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。
【0022】
上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基として、より具体的には例えば、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。なかでも、下記一般式(4-2)で表される基がより好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
一般式(4-1)~(4-4)中、R~R及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。なお、*は結合手を表す。結合手*は、上記一般式(1a)~(1c)中のNと結合する。
【0025】
上記一般式(4-1)~(4-4)中、R~R及びR13~R20で表される炭化水素基は特に限定されず、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、RとR、RとR、RとR、RとR、R13とR14、R15とR16、R17とR18、及び、R19とR20の炭素数の合計が7以上、50以下であることが好ましい。上記炭素数の合計が上記範囲内であることで、上記光硬化型接着剤がより高い光透過性を有することができ、また、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層がより高い柔軟性を発揮することができ、更に、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の溶媒や他の成分との相溶性も更に増す。上記炭素数の合計は、より好ましくは9以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは14以上である。上記炭素数の合計は、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは18以下である。
【0026】
上記一般式(4-1)で表される基、上記一般式(4-2)で表される基、上記一般式(4-3)で表される基、及び、上記一般式(4-4)で表される基において光学異性は特に限定されず、いずれの光学異性も含む。
【0027】
上記一般式(1b)中、Qは、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。Qが置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0028】
上記一般式(1c)中、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。Rが置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることにより、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
【0029】
上記一般式(1c)中、Rは芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、Rにおける該芳香族エステル基又は該芳香族エーテル基はXと結合していることが好ましい。
ここで、「芳香族エステル基」とは、芳香族環にエステル基が直接結合した基を意味し、「芳香族エーテル基」とは、芳香族環にエーテル基が直接結合した基を意味する。このようにエステル基やエーテル基に結合する部分を芳香族基にすることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。一方、Xが芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を介してRに結合することにより、X中の二重結合がRと共役することがないことから、加熱又は光を照射したときの重合架橋を妨げることがない。
【0030】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)中、二重結合を有する官能基(架橋性不飽和結合)は、X、X及びXからなる群より選択される少なくとも1つであればよいが、少なくともXが二重結合を有する官能基であることが好ましい。少なくともXが二重結合を有する官能基であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
上記X、X及びXのいずれかが二重結合を有する官能基以外の官能基(二重結合を有さない官能基)である場合、該二重結合を有さない官能基としては、それぞれ独立して、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の片末端未反応物が挙げられる。
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)中、二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基又はアリル基が好適であり、特に高い接着性が得られることから、アリル基を1つ以上有するトリ(イソ)シアヌレート基がより好適である。
【0031】
上記一般式(1a)~(1c)中、s、t及びuは、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)中における上記一般式(1a)で表される構成単位、上記一般式(1b)で表される構成単位、及び、上記一般式(1c)で表される構成単位それぞれの含有量(モル%)に対応するものである。
上記一般式(1a)で表される構成単位の含有量(s)は0モル%よりも大きく、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。上記一般式(1b)で表される構成単位の含有量(t)は0モル以上%、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1c)で表される構成単位の含有量(u)は0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1a)~(1c)においてそれぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
なお、上記一般式(1a)で表される構成単位、上記一般式(1b)で表される構成単位、及び、上記一般式(1c)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0032】
上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を製造する方法は特に限定されない。例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の官能基に、該官能基と反応する官能基と二重結合を有する官能基とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という。)を反応させることにより得ることができる。また、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の末端に、例えば無水マレイン酸等を反応させることにより得ることもできる。
【0033】
上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができる。
上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、上記光硬化型接着剤は、高い光透過性を有することができ、また、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記ジアミン化合物として芳香族ジアミン化合物を用いることにより、上記光硬化型接着剤の耐熱性がより向上する。また、上記ジアミン化合物として、官能基を有するジアミン化合物を用い、該官能基に上記官能基含有不飽和化合物を反応させることにより、側鎖に二重結合を有する官能基を有する樹脂(1-I)を製造することができる。
これらの脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物及び官能基を有するジアミン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ダイマージアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノメンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、ジアミノマレオニトリル、1,3-ジアミノペンタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ(5.2.1.02,6)デカン等が挙げられる。
【0035】
上記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、9,10-ジアミノフェナントレン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,7-ジアミノ-2-メトキシフルオレン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノアントラキノン、2,6-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、1,8-ジアミノナフタレン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,4-クメンジアミン、1,3-ビスアミノメチルベンゼン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2-クロロ-1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ビス(アミノ-3-クロロフェニ)エタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルジアミノフルオレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノフェノール、-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、4,4’-ジアミノフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、2,2-ビス(4,(4アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-オキシジアニリン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、Bisaniline M、Bisaniline P、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o‐トリジンスルホン、メチレンビス(アントラニル酸)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、4,4’-ジアミノベンザニリド、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ポリオキシアルキレンジアミン類(たとえば、HuntsmanのJeffamine D-230、D400、D-2000およびD-4000)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、光透過性を高める観点、柔軟性を高める観点、及び、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の溶媒や他の成分との相溶性が増し光硬化型接着剤層の形成が容易となる観点から、ダイマージアミンが好ましい。
上記ダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の2量体として得られる環式及び非環式ダイマー酸を、還元しアミノ化して得られるジアミン化合物であり、例えば、直鎖型、単環型、多環型等のダイマージアミンが挙げられる。上記ダイマージアミンは、炭素-炭素不飽和二重結合を含んでもよく、水素が付加した水素添加物であってもよい。上記ダイマージアミンとして、より具体的には例えば、上述した一般式(4-1)で表される基、一般式(4-2)で表される基、一般式(4-3)で表される基、及び、一般式(4-4)で表される基を構成することのできるダイマージアミン等が挙げられる。
【0037】
上記官能基を有するジアミン化合物としては、例えば、水酸基を有するジアミン化合物、カルボキシル基を有するジアミン化合物、ハロゲン基を有するジアミン化合物等が挙げられる。
上記水酸基を有するジアミン化合物としては、例えば、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、3,5-ジアミノフェノキシエタノール、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシン2塩酸塩、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。上記カルボキシル基を有するジアミン化合物としては、例えば、3,5-ジアミノ安息香酸等が挙げられる。上記ハロゲン基を有するジアミン化合物としては、例えば、2,4-ジアミノクロロベンゼン等が挙げられる。
【0038】
上記芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-スルホニルジフタル酸、1-トリフルオロメチル-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)-ビス(フタル酸)等が挙げられる。
【0039】
上記官能基含有不飽和化合物としては、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基に応じて選択して用いる。
例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基が水酸基の場合には、カルボキシル基を有するマレイミド化合物が挙げられる。該カルボキシル基を有するマレイミド化合物としては、例えば、酢酸マレイミド、マレイミドプロピオン酸、マレイミド酪酸、マレイミドヘキサン酸、trans-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、19-マレイミド-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザノナデカン酸等が挙げられる。更に、ブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニル化合物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を有するアリル化合物、アリルグリシジルエーテル、グリセリンジアリルモノグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。更に、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシヘキシルビニルエーテル、グリシジルジエチレングリコールビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のグリシジル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。更に、アリルイソシアネート等のイソシアネート基を有するアリル化合物、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリロイル化合物等が挙げられる。
また、例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基がカルボキシル基の場合には、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の水酸基を有するアリル化合物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を有するアリル化合物等が挙げられる。更に、アリルグリシジルエーテル、グリセリンジアリルモノグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。更に、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシヘキシルビニルエーテル、グリシジルジエチレングリコールビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のグリシジル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0040】
上記反応性樹脂が上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を含む場合、該樹脂(1-I)の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に占める好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部である。上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の含有量のより好ましい下限は20重量部、更に好ましい下限は30重量部であり、より好ましい上限は90重量部、更に好ましい上限は80重量部、更により好ましい上限は70重量部である。
【0041】
上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることが好ましい。上記重量平均分子量が2万以上であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。上記重量平均分子量は5万以上であることがより好ましい。上記重量平均分子量の上限は特に限定されないが、溶媒への溶解度の観点から、好ましい上限は60万、より好ましい上限は30万である。
なお、上記重量平均分子量は、上述した上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)と同様にして測定することができる。
【0042】
上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)としては、具体的には例えば、下記一般式(1d)で表される構成単位、及び、下記一般式(1e)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0)、両末端がそれぞれX及びXで表される樹脂(1-ii)が挙げられる。
【0043】
【化3】
【0044】
一般式(1d)~(1e)中、P及びPは、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。X及びXは、二重結合を有さない官能基を表す。
【0045】
上記一般式(1d)~(1e)中、P及びPは、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。P及びPが炭素数5~50の芳香族基であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0046】
上記一般式(1d)中、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることが好ましい。Qが置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることにより、上記光硬化型接着剤は、高い光透過性を有することができる。また、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
また、Qは、上述したようなジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。なかでも、光透過性を高める観点、柔軟性を高める観点、及び、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)の溶媒や他の成分との相溶性が増し上記光硬化型接着剤からの光硬化型接着剤の形成が容易となる観点から、Qは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。
即ち、本発明の仮固定材においては、上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)と、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)との少なくともいずれかが、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することが好ましい。つまり、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)が、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することが好ましい。
【0047】
上記一般式(1e)中、Qは、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。Qが置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0048】
上記X及びXで表される二重結合を有さない官能基としては、それぞれ独立して、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の片末端未反応物が挙げられる。
【0049】
上記一般式(1d)~(1e)中、s、及びtは、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)中における上記一般式(1d)で表される構成単位、及び、上記一般式(1e)で表される構成単位それぞれの含有量(モル%)に対応するものである。
上記一般式(1d)で表される構成単位の含有量(s)は0モル%よりも大きく、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。上記一般式(1e)で表される構成単位の含有量(t)は0モル以上%、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1d)~(1e)においてそれぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
なお、上記一般式(1d)で表される構成単位、及び、上記一般式(1e)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0050】
上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)を製造する方法は特に限定されず、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させることにより得ることができる。上記ジアミン化合物及び上記芳香族酸無水物は、上述したような二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)におけるジアミン化合物及び芳香族酸無水物と同様のものであってよい。
【0051】
上記反応性樹脂が上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)を含む場合、該樹脂(1-II)の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に占める好ましい下限は10重量部、好ましい上限は90重量部である。上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0052】
上記反応性樹脂は、更に、分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)(以下、単に「多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)」ともいう。)を含むことが好ましい。
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)を含むことにより、上記光硬化型接着剤は、光の照射による三次元網状化がより効率よくなされるようになり、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0053】
なお、上述したように、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)自体に反応性がない場合、上記反応性樹脂は、反応性官能基を有する他の成分を更に含有することにより、上記反応性樹脂全体として反応性を有する必要がある。このような反応性官能基を有する他の成分として、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)を用いることが好ましい。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)自体に反応性がない場合としては、例えば、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)が、上記二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)のみを含有する場合等が挙げられる。
【0054】
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)における二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。
【0055】
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)は、ジアミン化合物に由来する脂肪族基を有することが好ましい。上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができるが、脂肪族ジアミン化合物が好ましい。上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、上記光硬化型接着剤は、高い光透過性を有することができ、また、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
【0056】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、光透過性を高める観点、柔軟性を高める観点、及び、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の溶媒や他の成分との相溶性が増し光硬化型接着剤層の形成が容易となる観点から、上述したようなダイマージアミンが好ましい。
【0057】
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に占める好ましい下限は5重量部、好ましい上限は100重量部である。上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0058】
上記反応性樹脂が上記二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)とを含む場合、該含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に占める上記合計含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記樹脂(1-I)と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)との合計含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記樹脂(1-I)と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)との合計含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限40重量部、更により好ましい下限は50重量部であり、より好ましい上限は70重量部である。
【0059】
上記光硬化型接着剤は、上記反応性樹脂を含有していればよいが、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことが好ましい。
上記シリコーン化合物及びフッ素化合物は、耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工処理を経ても上記光硬化型接着剤の焦げ付きを防止し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離をより容易にする。
上記シリコーン化合物は特に限定されず、例えば、シリコーンオイル、シリコーンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。上記フッ素化合物は特に限定されず、例えば、フッ素原子を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
【0060】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することにより、光の照射や架橋剤等との反応により上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記反応性樹脂と化学反応して上記反応性樹脂中に取り込まれる。このため、被着体に上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が付着して汚染することを抑制することができる。上記反応性樹脂と架橋可能な官能基は特に限定されず、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、置換されてもよいマレイミド基)、ヒドロキシ基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
なかでも、環境にやさしく、廃棄が容易であるという観点から、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物が好適である。
【0061】
上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物としては、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
上記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物は特に限定されないが、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。これらのシリコーン化合物は、耐熱性が特に高く、極性が高いために上記光硬化型接着剤からのブリードアウトが容易である。
【0062】
【化4】
【0063】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を有する官能基を表す。
【0064】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、Rで表される二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。なお、上記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)において、Rが複数存在する場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表されるシリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもダイセル・サイテック社製)等が挙げられる。更に、BYK-UV3500(ビックケミー社製)、TEGO RAD2250(エボニック社製)(いずれもRがアクリル基)等が挙げられる。
【0066】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤が被着体を汚染することなく優れた剥離性を発揮することができる。汚染を抑制しつつも剥離性を更に高める観点から、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、上記光硬化型接着剤は耐熱性に優れることから、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量を比較的少なくしても充分な効果を発揮することができる。そのため、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物による汚染の可能性をより一層少なくすることができる。
【0067】
上記光硬化型接着剤は、更に、無機充填剤を含んでいてもよい。
上記無機充填剤を含むことにより、上記光硬化型接着剤は、高温における弾性率の低下が抑えられることから、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても高温加工処理中の剥がれをより抑えることができる。
【0068】
上記無機充填剤は特に限定されず、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤が挙げられる。なかでも、市販品で安価かつ入手が容易なことから、シリカやタルクが好ましい。
【0069】
上記無機充填剤は、表面修飾されていてもよい。上記無機充填剤を表面修飾する修飾官能基は特に限定されず、例えば、アルキルシラン基、メタクリロイル基及びジメチルシロキサン基等が挙げられる。なかでも、適度な疎水性を有することから、ジメチルシロキサン基が好ましい。
【0070】
上記無機充填剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は5nm、好ましい上限は30μmである。上記無機充填剤の平均粒子径がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、剥離時にピール処理により剥離することができる。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は20μmであり、更に好ましい下限は15nm、更に好ましい上限は15μmである。
なお、上記平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記平均粒子径は、例えば、任意の無機充填剤50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機充填剤の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0071】
上記無機充填剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤は、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、剥離時にピール処理により剥離することができる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
【0072】
上記光硬化型接着剤は、更に、光重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。なかでも、上記反応性樹脂の吸収波長と重なりにくく、仮固定材に光照射した際に充分に活性化されることから、上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が200以上である光重合開始剤を含有することがより好ましく、405nmにおけるモル吸光係数が350以上である光重合開始剤を含有することが更に好ましい。上記405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤の405nmにおけるモル吸光係数の上限は特に限定されないが、例えば2000、1500等が上限である。
上記光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物等が挙げられる。更に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、光の照射により上記光硬化型接着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下して、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0074】
上記光硬化型接着剤は、更に、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含んでもよい。上記気体発生剤を含有することにより、300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより発生した気体が被着体との界面に放出されることから、より容易に、かつ、糊残りすることなく被着体を剥離することができる。また、300℃以上の高温加工処理を行った後、薄い被着体を剥離する場合であっても、被着体の破損を防止することができる。
【0075】
上記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であれば、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても上記気体発生剤の分解が起こりにくく、上記光硬化型接着剤は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
なお、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定は、例えば、TG-DTA装置(STA7200RV、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて行うことができる。
【0076】
上記気体発生剤としては、例えば、加熱することにより気体を発生する気体発生剤、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤が好ましく、紫外線を照射することにより気体を発生する気体発生剤がより好ましい。
上記光を照射することにより気体を発生する気体発生剤としては、例えば、例えば、テトラゾール化合物又はその塩、トリアゾール化合物又はその塩、アゾ化合物、アジド化合物、キサントン酢酸、炭酸塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に耐熱性に優れることから、テトラゾール化合物又はその塩が好適である。
【0077】
上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であると、上記光硬化型接着剤が特に優れた剥離性を発揮することができる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は8重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0078】
上記光硬化型接着剤は、例えば、光増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0079】
上記光硬化型接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)を含む反応性樹脂、及び、必要に応じて配合する添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0080】
上述したように、本発明の仮固定材は、上記光硬化型接着剤を含んでいれば特に限定されず、液状の仮固定用接着剤であってもよく、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層を有するシート状の仮固定用接着シートであってもよい。
上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、硬化後のゲル分率の好ましい下限が20重量%、好ましい上限が99重量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であることで、上記光硬化型接着剤層は、剥離時により容易に剥離することができる。上記硬化後のゲル分率のより好ましい下限は40重量%、更に好ましい下限は60重量%、更により好ましい下限は80重量%、より好ましい上限は95重量%である。
なお、上記硬化後のゲル分率は、光硬化型接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、以下の方法により測定される。
光硬化型接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、光硬化型接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (1)
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0081】
上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、硬化後の25℃における弾性率が1×10Pa以上であることが好ましい。
上記硬化後の25℃における弾性率が上記範囲内であることで、仮固定材を被着体から剥離する際に破断しにくくすることができる。この結果、糊残りをより抑制することができる。上記硬化後の25℃における弾性率は5×10Pa以上であることがより好ましく、1×10Pa以上であることが更に好ましい。上記硬化後の25℃における弾性率の上限は特に限定されないが、粘着力の観点から、1×1010Pa以下であることが好ましい。
【0082】
上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層は、硬化後の300℃における弾性率が1×10Pa以上であることが好ましい。
上記硬化後の300℃における弾性率が上記範囲内であることで、仮固定材の加熱中に接着力が増大することを抑制することができる。上記硬化後の300℃における弾性率は5×10Pa以上であることがより好ましく、1×10Pa以上であることが更に好ましい。上記硬化後の300℃における弾性率の上限は特に限定されないが、粘着力の観点から、1×10Pa以下であることが好ましく、1×10Pa以下がより好ましい。
【0083】
上記硬化後の25℃における弾性率、及び、上記硬化後の300℃における弾性率は、以下の方法により測定することができる。
光硬化型接着剤層について、5mm×35mm×厚み0.03mmの試験片を作製する。得られた試験片を硬化させる。硬化後のサンプルを液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(例えば、DVA-200、アイティー計測制御社製等)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、貯蔵弾性率を測定する。得られた貯蔵弾性率の結果から、硬化後の25℃における弾性率、及び、硬化後の300℃における弾性率を求める。
なお、硬化は、光硬化型接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで行う。
【0084】
上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は550μmである。上記厚みが5μm以上であれば、上記光硬化型接着剤層が充分な初期粘着力を有することができる。上記厚みが550μm以下であれば、上記光硬化型接着剤層は、高い光透過性を有することができ、また、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は400μmであり、更に好ましい下限は20μm、更に好ましい上限は300μmであり、更により好ましい下限は30μm、更により好ましい上限は200μm、一層好ましい上限は150μmである。
【0085】
本発明の仮固定材は、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層を有するシート状の仮固定用接着シートであることがより好ましい。この場合、本発明の仮固定材は、基材の一方又は両方の面に上記光硬化型接着剤層を有していてもよく、基材を有していなくてもよい。上記基材を有さない場合、光透過性と耐熱性とをともに有する基材を選定する必要がなく、仮固定材は、より安価かつ簡易な構成とすることができる。
上記基材を有する場合、該基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)等の樹脂シートが挙げられ、光透過性の高い樹脂シートを好適に用いることができる。また、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート、ガラス等も用いることができる。
上記基材の厚みは特に限定されないが、光透過性を高める観点、及び、柔軟性を高める観点から、好ましい下限は5μm、好ましい上限は150μmであり、より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は100μmである。
【0086】
上記光硬化型接着剤が上記気体発生剤を含有する場合、本発明の仮固定材は、上記光硬化型接着剤からなる第1の光硬化型接着剤層と、第2の接着剤層とを有することが好ましい。
上記第1の光硬化型接着剤層は、上記気体発生剤を含有するものであり、気体を発生することのできる硬化型接着剤層である。
本発明の仮固定材は、上記第1の光硬化型接着剤層と上記第2の接着剤層とを有する場合、更に、上記基材を有し、上記基材の両面にそれぞれ上記第1の光硬化型接着剤層及び上記第2の接着剤層が積層されていてもよい。
【0087】
上記第1の光硬化型接着剤層は、硬化後のゲル分率の好ましい下限が50重量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であることで、上記第1の光硬化型接着剤層は、剥離時により容易に剥離することができる。上記硬化後のゲル分率のより好ましい下限は80重量%である。
なお、上記硬化後のゲル分率は、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することにより硬化した後、以下の方法により測定される。
第1の光硬化型接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、第1の光硬化型接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (1)
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0088】
上記第1の光硬化型接着剤層は、硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し冷却後)の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることが好ましい。上記対ガラス粘着力が上記範囲内であることで、上記第1の光硬化型接着剤層は、剥離時により容易に剥離することができる。上記対ガラス粘着力は1.2N/inch以下であることがより好ましく、1.1N/inch以下であることが更に好ましく、1.0N/inch以下であることが更により好ましい。
なお、上記対ガラス粘着力は、以下の方法により測定される。
第1の光硬化型接着剤層を石英ガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2 S9112)に100℃のラミネーター(ラミーコーポレーション社製「leon3DX」、又はその同等品)にて加熱ラミネートする。加熱ラミネートとしては、温度設定値100℃、速度設定値5の条件で、一回ラミネートする。加熱ラミネート後、超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射し硬化した後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱する。硬化後かつ300℃10分加熱後の第1の光硬化型接着剤層に対して、25℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行い、粘着力を測定する。
【0089】
上記第1の光硬化型接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は550μmである。上記厚みが5μm以上であれば、上記第1の光硬化型接着剤層が充分な初期粘着力を有することができる。上記厚みが550μm以下であれば、上記第1の光硬化型接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は20μm、更により好ましい下限は30μmである。上記厚みのより好ましい上限は400μm、更に好ましい上限は300μm、更により好ましい上限は200μm、一層好ましい上限は150μmである。
【0090】
上記第2の接着剤層は特に限定されず、上記第1の光硬化型接着剤層と同様の組成、物性、厚み等を有する硬化型接着剤層を用いることができる。上記第2の接着剤層は、上記気体発生剤を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0091】
本発明の仮固定材は、405nmの光線透過率が10%以上である。上記405nmの光線透過率が10%以上であることにより、上記光硬化型接着剤は、光硬化反応が充分に進行し、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。上記405nmの光線透過率は15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、55%以上であることが更により好ましい。上記405nmの光線透過率の上限は特に限定されないが、実質的には90%程度が上限である。
なお、上記405nmの光線透過率は、紫外線積算照度計(UVPF-A2、アイグラフィックス社製)を使用することにより測定される。より具体的には、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を10秒間照射したときの積算光量(I)と、照度計の受光器上に仮固定材を貼り付けて405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を10秒間照射したときの積算光量(I)から下記式により算出することができる。
405nmの光線透過率(%)=100×I/I
【0092】
本発明の仮固定材は、5%重量減少温度が350℃以上である。上記5%重量減少温度が350℃以上であることにより、上記光硬化型接着剤は、高い耐熱性を発揮することができる。即ち、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。上記5%重量減少温度は380℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが更に好ましい。上記5%重量減少温度の上限は特に限定されないが、実質的には600℃程度が上限である。
なお、上記5%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(STA7200RV、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)により測定される。より具体的には、光硬化型接着剤に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、光硬化型接着剤をアルミパンに秤取する。アルミパンを装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分で昇温する。昇温前の重量と比較して、サンプル重量が5%減少した時点の温度を5%重量減少温度とする。
【0093】
上記405nmの光線透過率を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記光硬化型接着剤の組成を調整して光透過性を高める方法が挙げられる。より具体的には、例えば、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)及び上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)からなる群より選択される少なくとも1つとして、ジアミン化合物に由来する脂肪族基を有するものを用いることが好ましく、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有するものを用いることがより好ましい。また、上記405nmの光線透過率を上記範囲に調整する方法としては、例えば、上記光硬化型接着剤からなる光硬化型接着剤層の厚みを調整する方法、上記基材を有する場合、その材質及び厚みを調整する方法等も挙げられる。
上記5%重量減少温度を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記光硬化型接着剤の組成を調整して耐熱性を高める方法が挙げられる。より具体的には、例えば、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)として、芳香族基を有するものを用いることが好ましい。
このように、上記405nmの光線透過率及び上記5%重量減少温度をいずれも上記範囲に調整するためには、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1)及び上記多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)における脂肪族基と芳香族基との割合を適切に調整する必要がある。
【0094】
本発明の仮固定材は、硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し放冷後)、25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることが好ましい。上記対ガラス粘着力が上記範囲内であることで、上記光硬化型接着剤は、剥離時により容易に剥離することができる。上記対ガラス粘着力は1.2N/inch以下であることがより好ましく、1.1N/inch以下であることが更に好ましく、1.0N/inch以下であることが更により好ましい。
なお、上記対ガラス粘着力は、以下の方法により測定される。
仮固定材をガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX)にて加熱ラミネートする。加熱ラミネートとしては、温度設定値100℃、速度設定値5の条件で、一回ラミネートする。加熱ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射する。硬化後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱する。加熱後室温になるまで放冷し、硬化後かつ300℃10分加熱後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行い、粘着力を測定する。
【0095】
本発明の仮固定材は、初期粘着力を有する一方、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができ、剥離時に容易に剥離することができる。
このため、本発明の仮固定材は、300℃以上の高温加工処理を行う被着体の保護及び仮固定に好適に用いることができる。とりわけ、半導体等の電子部品の加工時において、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、仮固定材を介して電子部品を支持板に固定したり、仮固定材を電子部品に貼付したりして保護するのに好適に用いることができる。即ち、本発明の仮固定材は、電子部品の製造工程に用いられることが好ましい。
【0096】
本発明の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、本発明の仮固定材の光硬化型接着剤を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、本発明の仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程とを含む電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の仮固定材の光硬化型接着剤を硬化する硬化工程は、本発明の仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程の直前に行ってもよいが、本発明の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程の後、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に行うことが好ましい。上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に本発明の仮固定材の光硬化型接着剤を硬化する硬化工程を行うことにより、仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
【0097】
上記気体発生剤を含有する上記光硬化型接着剤からなる第1の光硬化型接着剤層と、第2の接着剤層とを有する本発明の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、上記仮固定材の第1の光硬化型接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、上記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、上記第1の光硬化型接着剤層及び上記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、上記第1の光硬化型接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、上記支持体と上記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記硬化工程は、上記気体発生工程の直前に行ってもよいが、上記支持体貼付工程及び上記被着体貼付工程の後、上記熱処理工程の前に行うことが好ましい。上記熱処理工程の前に上記硬化工程を行うことにより、仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
上記支持体としては、例えば、ガラス、石英基板等が挙げられる。上記被着体としては、例えば、シリコンウエハ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0098】
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理(例えば300~450℃の加熱)を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる仮固定材を提供することができる。また、本発明によれば、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0100】
(二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の調製)
(合成例1)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水ピロメリット酸19.1g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、下記式(A)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は5000であった。
【0101】
【化5】
【0102】
(二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の調製)
(合成例2)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(東京化成工業社製)36g(0.1モル)と、無水ピロメリット酸19.1g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、下記式(B)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は10000であった。
【0103】
【化6】
【0104】
(二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)の調製)
(合成例3)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ポリエチレンオキサイドジアミン(ジェファーミンD-2000、ハンツマン社製)200g(0.1モル)と、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱瓦斯化学株式会社製、HPMDA)20g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-I)を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は40000であった。
【0105】
(二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)31.9g(0.06モル)、Bis-AP-AF5.5g(0.015モル)及び4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物39g(0.075モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、褐色固体状の、下記式(D)で表される二重結合を有する官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(1-II)を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は72000であった。
【0106】
【化7】
【0107】
(多官能モノマー又は多官能オリゴマー(2)の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水マレイン酸19.6g(0.2モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5gを加えた。溶液を12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により塩を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、茶色液状の、下記式(E)で表されるビスマレイミドモノマー(2)を得た。
【0108】
【化8】
【0109】
(アクリル系硬化性樹脂の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル6重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量50万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させてアクリル系反応性樹脂を得た。
得られたアクリル系反応性樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は55万であった。
【0110】
(実施例1)
(1)仮固定材の製造
トルエン150mLに、上記で得られた樹脂(1-II)を70重量部、上記で得られたビスマレイミドモノマー(2)を30重量部加えた。更に、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASF社製、405nmにおけるモル吸光係数450)を2重量部加え、光硬化型接着剤のトルエン溶液を調製した。
得られた光硬化型接着剤のトルエン溶液を、片面離型処理の施された50μmのPETフィルムの離型処理面上に、乾燥皮膜の厚みが表1に示す厚みとなるようにドクターナイフで塗工し、130℃、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。これにより光硬化型接着剤層を有する仮固定材(ノンサポートタイプ)を得た。
【0111】
(実施例2~14、比較例1~4)
光硬化型接着剤の組成及び厚みを表1~2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤のトルエン溶液及び仮固定材を得た。使用した材料を下記に示す。
・アクリル系非硬化性樹脂(SKダイン1604N、綜研化学社製)
・多官能アクリルモノマー(SR-387、アルケマ社製、Tris(2-acryloxyethyl)Isocyanulate)
・シリコーン化合物(2官能シリコーンアクリレート、ダイセルオルネクス社製、EBECRYL350)
・シリコーン化合物(アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミー社製、BYK-UV3500)
・架橋剤(イソシアネート系架橋剤、コロネートL、日本ウレタン工業社製)
【0112】
(実施例15)
(1)第1の光硬化型接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)の形成
トルエン300mLに、表3に示す反応性樹脂を100重量部、気体発生剤として5,5’-Bi-1H-tetorazole disodium salt(BHT-2Na)を30重量部、シリコーン化合物としてEBECRYL350を5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASF社製)を2重量部加えた。これにより、5,5’-Bi-1H-tetorazole disodium salt(BHT-2Na)が分散した光硬化型接着剤のトルエン溶液を調製した。
得られた光硬化型接着剤のトルエン溶液を、セパレーターとして準備した表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるようにドクターナイフで塗工した。あらかじめ110℃に加熱しておいたオーブンを用いて、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、第1の光硬化型接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)を得た。
【0113】
(2)第2の接着剤層の形成
トルエン300mLに、表3に示す反応性樹脂を100重量部、シリコーン化合物としてEBECRYL350を5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASF社製)を2重量部加えた。これにより、光硬化型接着剤のトルエン溶液を調製した。
得られた光硬化型接着剤のトルエン溶液を、セパレーターとして準備した表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるようにドクターナイフで塗工し、あらかじめ110℃に加熱しておいたオーブンを用いて、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させて、第2の接着剤層を得た。
【0114】
(3)仮固定材の製造
得られた第1の光硬化型接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)及び第2の接着剤層のそれぞれ接着剤層表面同士をラミネートして、両表面がセパレーターで覆われた仮固定材を得た。
【0115】
(実施例16)
光硬化型接着剤層及び接着剤層の組成及び厚みを表3に示すように変更したこと以外は実施例15と同様にして、光硬化型接着剤及び仮固定材を得た。
【0116】
(実施例17~22)
光硬化型接着剤の組成、厚み及び無機充填剤の含有量を表4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤のトルエン溶液及び仮固定材を得た。使用した材料を下記に示す。
・フッ素化合物(光反応性フッ素化合物、DIC社製、メガファックRS-56)
・無機充填剤(シリカ粒子、トクヤマ社製、MT-10、平均粒子径15nm)
・無機充填剤(シリカ粒子、龍森社製、5x、平均粒子径1μm)
【0117】
<物性測定>
(光線透過率の測定)
得られた仮固定材を紫外線積算照度計(UVPF-A2、アイグラフィックス社製)の受光器上に仮固定材を貼り付けて405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を10秒間照射したときの積算光量(I)を測定した。405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を10秒間照射したときの積算光量(I)を測定し、仮固定材の405nmの光線透過率を下記式より算出した。
405nmの光線透過率(%)=100×I/I
【0118】
(5%重量減少温度の測定)
得られた仮固定材に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射し、10mgをアルミパンに秤量した。アルミパンを装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分で昇温した。昇温前と比較してサンプル重量が5%減少した温度を5%重量減少温度とした。
【0119】
(硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃対ガラス粘着力の測定)
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX、速度メモリ5)にて加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し放冷後)の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。
なお、実施例15及び16においては、第1の光硬化型接着剤層及び第2の光硬化型接着剤層のそれぞれの面について測定を行った。第1の光硬化型接着剤層の対ガラス粘着力については、300℃10分加熱し放冷後に、ガラス側から高圧水銀灯を用いて、254nmの紫外線を20mW/cmの強度で、180秒間照射し、ガス発生させた後に25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。
【0120】
(弾性率の測定)
得られた仮固定材について、5mm×35mm×厚み0.03mmの試験片を作製した。得られた試験片に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射することで硬化させた。硬化後のサンプルを液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、貯蔵弾性率を測定した。得られた貯蔵弾性率の結果から、25℃における弾性率及び300℃における弾性率を求めた。
【0121】
<評価>
実施例及び比較例で得た仮固定材について、以下の方法により評価を行った。結果を表1~4に示した。
【0122】
(1)硬化後のゲル分率の測定
得られた仮固定材の光硬化型接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、以下の方法によりゲル分率を測定した。
仮固定材を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。なお、試験片には、光硬化型接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
また、実施例15及び16においては、第2の接着剤層に405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射して第2の接着剤層を硬化させた後に、第2の接着剤層を秤取し、試験片とした。秤取した試験片について、同様にしてゲル分率を測定した。なお、この試験片は基材を有さないため、Wは0とした。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (1)
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0123】
以下の基準により評価した。
◎:ゲル分率80%以上
〇:ゲル分率60%以上80%未満
△:ゲル分率20%以上60%未満
×:ゲル分率20%未満
【0124】
(2)硬化後かつ300℃10分加熱後の残渣の評価
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX)にて加熱ラミネートした。加熱ラミネートとしては、温度設定値100℃、速度設定値5の条件で、一回ラミネートした。加熱ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃加熱後の仮固定材を放冷した後の試験サンプルについて、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。なお、実施例15及び16については、第2の接着剤層をガラスに貼付し、同様にして試験サンプルを作製し評価を行った。
仮固定材を剥離した後のガラスの表面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
◎:糊残りは認められなかった
〇:ガラス面積の5%未満に糊残りが認められた
△:ガラスの面積の5%以上10%未満に糊残りが認められた
×:ガラスの面積の10%以上に糊残りが認められた
【0125】
(3)硬化後かつ300℃20分加熱後の剥がれ性及び剥離性の評価
実施例1、10及び17~22で得られた仮固定材については、更に下記の評価を行った。
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラスに熱ラミネーター(Leon13DX)にて100℃、速度メモリ3で1回加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの照射強度が70mW/cmの紫外線を1000mJ/cm照射した。硬化後、離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで20分間加熱した。なお、この試験を5回行った。硬化後かつ300℃20分加熱後の仮固定材の外観を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:5回すべての試験において、ガラスとの間に剥がれが認められなかった
×:5回のうち1回以上の試験において、ガラスとの間が一部浮いていた
【0126】
硬化後かつ300℃20分加熱後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。なお、この試験を5回行った。仮固定材の剥離性について、以下の基準により評価した。なお、剥がれの試験において浮きが生じたものは評価を行わなかった。
◎:5回すべての試験において、剥離可能であった
○:5回のうち1~4回の試験において、剥離可能であった
×:5回すべての試験において、剥離できなかった
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる仮固定材を提供することができる。また、本発明によれば、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。