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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105993
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】車両用変速機のオイルポンプ構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20230725BHJP
【FI】
F16H57/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007073
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】久留島 亜樹
(72)【発明者】
【氏名】尾之上 飛鳥
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC11
3J063BA11
3J063BB23
3J063BB41
3J063CA01
3J063CA05
3J063CB14
3J063CB41
3J063CB58
3J063CD13
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD26
3J063XD33
3J063XD72
3J063XJ08
(57)【要約】
【課題】車両の進行方向によって回転方向が変わる駆動軸からオイルポンプに駆動力が伝達される場合であっても、簡素な構造によって潤滑油必要部に潤滑油を供給できる信頼性の高い車両用変速機のオイルポンプ構造を提供すること。
【解決手段】変速機1のオイルポンプ構造は、車両の後進時には後進用出力軸13の駆動力が駆動ギヤ56からアイドラギヤ58および従動ギヤ57を介してポンプ軸52に伝達され、ポンプ軸52が車両の前進時の回転方向と同一方向に回転する。
また、車両の後進時において、変速機1のオイルポンプ構造は、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをアイドラギヤ58を介して連結し、後進用出力軸13からアイドラギヤ58を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態に切替え可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を吐出する吐出口と潤滑油を吸入する吸入口とを有し、ポンプ軸によって駆動されるオイルポンプと、
車両の進行方向に応じて回転方向が変更され、前記ポンプ軸に駆動力を伝達する駆動軸とを有する車両用変速機のオイルポンプ構造であって、
前記ポンプ軸と前記駆動軸とが同一軸線上に設置されており、
前記ポンプ軸と前記駆動軸とを一方向クラッチを介して連結し、前記駆動軸から前記一方向クラッチを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第1の状態と、前記ポンプ軸と前記駆動軸とをアイドラギヤを介して連結し、前記駆動軸から前記アイドラギヤを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能であることを特徴とする車両用変速機のオイルポンプ構造。
【請求項2】
前記アイドラギヤは、傘歯車であり、
前記ポンプ軸と前記駆動軸に、前記アイドラギヤに噛み合い可能な傘歯車がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機のオイルポンプ構造。
【請求項3】
潤滑油を吐出する吐出口と潤滑油を吸入する吸入口とを有し、ポンプ軸によって駆動されるオイルポンプと、
車両の進行方向に応じて回転方向が変更され、前記ポンプ軸に駆動力を伝達する駆動軸とを有する車両用変速機のオイルポンプ構造であって、
前記ポンプ軸と駆動軸とが平行に設置されており、
前記ポンプ軸は、第1のポンプギヤと第2のポンプギヤを有し、
前記駆動軸は、前記第1のポンプギヤに噛み合う第1の駆動ギヤと、アイドラギヤを介して第2のポンプギヤに噛み合う第2の駆動ギヤとを有し、
前記駆動軸と前記ポンプ軸とを前記第1の駆動ギヤおよび前記第1のポンプギヤによって連結し、前記駆動軸から前記第1の駆動ギヤおよび前記第1のポンプギヤを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第1の状態と、
前記駆動軸と前記ポンプ軸とを第2の駆動ギヤ、前記アイドラギヤおよび前記第2のポンプギヤによって連結し、前記駆動軸から第2の駆動ギヤ、前記アイドラギヤおよび前記第2のポンプギヤを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能であることを特徴とする車両用変速機のオイルポンプ構造。
【請求項4】
前記アイドラギヤは、前記第2の駆動ギヤと前記第2のポンプギヤとに噛み合う状態と、前記第2の駆動ギヤと前記第2のポンプギヤとに噛み合わない状態とに切替え可能であることを特徴とする請求項3に記載の車両用変速機のオイルポンプ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機のオイルポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前進時と後進時とにおいて回転方向が変わる駆動軸によって駆動されるオイルポンプ構造を備えた変速機が知られている。
【0003】
このような構成を有するオイルポンプは、車両の後進時にオイルポンプが逆回転するので、潤滑油必要部の潤滑油がオイルポンプに吸入され、潤滑油によって潤滑油必要部の潤滑を行うことができない事態が生じるおそれがある。
【0004】
このような事態が生じることを防止できるオイルポンプ構造を備えたものとして、特許文献1に記載される四輪駆動装置用油圧装置が知られている。
【0005】
この四輪駆動装置用油圧装置は、変速機から出力される駆動力を前輪と後輪とに伝達するとともに、前輪または後輪と一体で回転する回転部材にオイルポンプドライブギヤが取付けられており、オイルポンプドライブギヤからオイルポンプに駆動力が伝達される。
【0006】
回転部材は、一部が潤滑油に浸漬されているハイポイドギヤマウントケースであり、回転部材には後進時に非係合となる一方向クラッチを介してオイルポンプドライブギヤが取付けられている。
【0007】
この四輪駆動装置用油圧装置によれば、車両の後進時に回転部材が逆回転したときに一方向クラッチの係合が外れることにより、オイルポンプドライブギヤが逆回転することを防止している。
【0008】
また、上述した事態が生じることを防止できるオイルポンプ構造を備えたものとして、特許文献2に記載される変速機の潤滑回路が知られている。
【0009】
この変速機の潤滑回路は、正転または逆転するオイルポンプと、油溜りに連通する吸入ポートで分岐してオイルポンプに連通する一対の吸入路と、吸入路に設けられオイルポンプ側にのみ潤滑油を供給する一対の逆止弁と、オイルポンプに連通し吐出ポートで合流する一対の吐出路と、吐出路に設けられ吐出ポート側にのみ潤滑油を供給する一対の逆止弁を備えている。
【0010】
この変速機の潤滑回路によれば、オイルポンプの正転時には、吸入路の一方の逆止弁が開き、他方の逆止弁が閉じ、吐出路の一方の逆止弁が開き、他方の逆止弁が閉じる。
【0011】
一方、オイルポンプの逆転時には、吸入路の他方の逆止弁が開き、一方の逆止弁が閉じ、吐出路の他方の逆止弁が開き、一方の逆止弁が閉じる。
【0012】
これにより、オイルポンプへの入力回転が正転または逆転しても、オイルポンプから潤滑油を吐出することができ、正転時または逆転時の両方で潤滑を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開平1-141315号公報
【特許文献2】実開平6-20951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載される四輪駆動装置用油圧装置にあっては、車両の後進時に回転部材が逆回転したときに一方向クラッチの係合が外れることにより、オイルポンプドライブギヤが回転しないので、車両の後進時に潤滑油必要部に潤滑油を供給することができない。特に、後退で登坂走行する場合では、高負荷運転状態のモータに冷却用の潤滑油を供給することができないので、冷却不足でも耐久性のある高額のモータや他の冷却装置を使用しなければならなくなっていた。
【0015】
また、特許文献2に記載される変速機の潤滑回路にあっては、多数の逆止弁が必要となるので油圧経路(油路)が複雑になるとともに、漏れの少ない油圧経路やオイルポンプが必要となるため、潤滑回路の部品精度が要求される。
【0016】
これに加えて、逆止弁を作動させる必要があるため、比較的高圧な油圧を発生する必要があり、変速機の駆動力伝達効率が悪化するおそれがある。
【0017】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両の進行方向によって回転方向が変わる駆動軸からオイルポンプに駆動力が伝達される場合であっても、簡素な構造によって潤滑油必要部に潤滑油を供給できる信頼性の高い車両用変速機のオイルポンプ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、潤滑油を吐出する吐出口と潤滑油を吸入する吸入口とを有し、ポンプ軸によって駆動されるオイルポンプと、車両の進行方向に応じて回転方向が変更され、前記ポンプ軸に駆動力を伝達する駆動軸とを有する車両用変速機のオイルポンプ構造であって、前記ポンプ軸と前記駆動軸とが同一軸線上に設置されており、前記ポンプ軸と前記駆動軸とを一方向クラッチを介して連結し、前記駆動軸から前記一方向クラッチを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第1の状態と、前記ポンプ軸と前記駆動軸とをアイドラギヤを介して連結し、前記駆動軸から前記アイドラギヤを介して前記ポンプ軸に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように上記の本発明によれば、車両の進行方向によって回転方向が変わる駆動軸からオイルポンプに駆動力が伝達される場合であっても、簡素な構造によって潤滑油必要部に潤滑油を供給できる信頼性の高い車両用変速機のオイルポンプ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を備えた車両用変速機のスケルトン図であり、車両の前進時のオイルポンプ構造の状態を示している。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を備えた車両用変速機のスケルトン図であり、車両の後進時のオイルポンプ構造の状態を示している。
図3図3は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を備えた車両用変速機のスケルトン図であり、車両の前進時のオイルポンプ構造の状態を示している。
図4図4は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造のスケルトン図である。
図5図5は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を備えた車両用変速機のスケルトン図であり、車両の後進時のオイルポンプ構造の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機のオイルポンプ構造は、潤滑油を吐出する吐出口と潤滑油を吸入する吸入口とを有し、ポンプ軸によって駆動されるオイルポンプと、車両の進行方向に応じて回転方向が変更され、ポンプ軸に駆動力を伝達する駆動軸とを有する車両用変速機のオイルポンプ構造であって、ポンプ軸と駆動軸とが同一軸線上に設置されており、ポンプ軸と駆動軸とを一方向クラッチを介して連結し、駆動軸から一方向クラッチを介してポンプ軸に駆動力を伝達する第1の状態と、ポンプ軸と駆動軸とをアイドラギヤを介して連結し、駆動軸からアイドラギヤを介してポンプ軸に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能である。
【0022】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機のオイルポンプ構造は、車両の進行方向によって回転方向が変わる駆動軸からオイルポンプに駆動力が伝達される場合であっても、簡素な構造によって潤滑油必要部に潤滑油を供給できる信頼性の高い車両用変速機のオイルポンプ構造を得ることができる。
【実施例0023】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造について、図面を用いて説明する。
【0024】
(第1の実施例)
図1図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を示す図である。
【0025】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両としての車両は、変速機1と、エンジン2と、モータ32とを備えている。本実施例の変速機1は、車両用変速機を構成する。
【0026】
変速機1にはエンジン2が連結されている。エンジン2は、クランク軸9を備えており、クランク軸9は、車両の幅方向に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン2は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。
【0027】
変速機1は、入力軸11、前進用出力軸12、後進用出力軸13、終減速機構14およびディファレンシャル装置15を備えている。
【0028】
入力軸11、前進用出力軸12および後進用出力軸13は、車両の左右方向に沿って平行に設置されている。
【0029】
入力軸11は、クラッチ10を介してエンジン2に連結されており、クラッチ10を介してエンジン2の駆動力が伝達される。入力軸11は、1速段用の入力ギヤ16A、2速段用の入力ギヤ16B、3速段用の入力ギヤ16C、4速段用の入力ギヤ16D、5速段用の入力ギヤ16Eおよび6速段用の入力ギヤ16Fを有する。
【0030】
入力ギヤ16A、16Bは、入力軸11に固定されており、入力軸11と一体で回転する。入力ギヤ16Cから入力ギヤ16Fは、入力軸11と相対回転自在となっている。
【0031】
前進用出力軸12は、1速段用の出力ギヤ17A、2速段用の出力ギヤ17B、3速段用の出力ギヤ17C、4速段用の出力ギヤ17D、5速段用の出力ギヤ17E、6速段用の出力ギヤ17Fおよび前進用のファイナルドライブギヤ17Gを有する。
【0032】
出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fは、同一の変速段を構成する入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fに噛み合っている。例えば、4速段用の出力ギヤ17Dは4速段用の入力ギヤ16Dに噛み合っている。
【0033】
出力ギヤ17A、17Bは、前進用出力軸12と相対回転自在となっている。出力ギヤ17Cから出力ギヤ17Fおよびファイナルドライブギヤ17Gは、前進用出力軸12に固定されており、前進用出力軸12と一体で回転する。
【0034】
1速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Aおよび出力ギヤ17Aを介して前進用出力軸12に伝達される。2速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Bおよび出力ギヤ17Bを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0035】
出力ギヤ17Aと出力ギヤ17Bの間において前進用出力軸12上には第1の同期装置18が設けられている。
【0036】
シフト操作によって1速段にシフトされると、第1の同期装置18は、1速段の出力ギヤ17Aを前進用出力軸12に連結する。シフト操作によって2速段にシフトされると、第1の同期装置18は、2速段用の出力ギヤ17Bを前進用出力軸12に連結する。
【0037】
このように、シフト操作によって1速段または2速段にシフトされると、出力ギヤ17Aまたは出力ギヤ17Bは、前進用出力軸12と一体で回転する。
【0038】
入力ギヤ16Cと入力ギヤ16Dの間において入力軸11上には第2の同期装置19が設けられている。
【0039】
シフト操作によって3速段にシフトされると、第2の同期装置19は、入力ギヤ16Cを入力軸11に連結する。シフト操作によって4速段にシフトされると、第2の同期装置19は、入力ギヤ16Dを入力軸11に連結する。このように、シフト操作によって3速段または4速段にシフトされると、入力ギヤ16Cまたは入力ギヤ16Dが入力軸11と一体で回転する。
【0040】
3速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Cおよび出力ギヤ17Cを介して前進用出力軸12に伝達される。4速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Dおよび出力ギヤ17Dを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0041】
このように入力軸11上に設けられた第2の同期装置19は、入力ギヤ16Cと出力ギヤ17Cからなる1つの変速ギヤ組と、入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dからなる1つの変速ギヤ組との中から1つの変速ギヤ組を選択し、入力軸11から選択された変速ギヤ組を介して前進用出力軸12に駆動力を伝達させる。
【0042】
入力ギヤ16Eと入力ギヤ16Fの間において入力軸11上には第3の同期装置20が設けられている。
【0043】
シフト操作によって5速段にシフトされると、第3の同期装置20は、入力ギヤ16Eを入力軸11に連結する。シフト操作によって6速段にシフトされると、第3の同期装置20は、入力ギヤ16Fを入力軸11に連結する。
【0044】
このように、シフト操作によって5速段または6速段にシフトされると、入力ギヤ16Eまたは入力ギヤ16Fが入力軸11と一体で回転する。
【0045】
5速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Eおよび出力ギヤ17Eを介して前進用出力軸12に伝達される。6速段においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16Fおよび出力ギヤ17Fを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0046】
後進用出力軸13にはリバースギヤ22Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bが設けられている。リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13と相対回転自在となっており、出力ギヤ17Aに噛み合っている。ファイナルドライブギヤ22Bは、後進用出力軸13に固定されており、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0047】
後進用出力軸13には第4の同期装置21が設けられている。シフト操作によってリバース位置にシフトされると、第4の同期装置21は、リバースギヤ22Aを後進用出力軸13に連結する。これにより、リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0048】
リバース位置においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16A、前進用出力軸12と相対回転する出力ギヤ17Aおよびリバースギヤ22Aを介して後進用出力軸13に伝達される。
【0049】
前進用のファイナルドライブギヤ17Gおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bは、ディファレンシャル装置15のファイナルドリブンギヤ15Aに噛み合っている。これにより、前進用出力軸12の駆動力および後進用出力軸13の駆動力は、前進用のファイナルドライブギヤ17Gまたは後進用のファイナルドライブギヤ22Bを経てディファレンシャル装置15に伝達される。
【0050】
ディファレンシャル装置15は、ファイナルドリブンギヤ15Aと、ファイナルドリブンギヤ15Aが外周部に取付けられたデフケース15Bと、デフケース15Bに内蔵された差動機構15Cとを有する。
【0051】
差動機構15Cには右側のドライブシャフト24Rと左側のドライブシャフト24Lのそれぞれの一端部が連結されており、左右のドライブシャフト24L、24Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0052】
ディファレンシャル装置15は、エンジン2の駆動力を差動機構15Cによって左右のドライブシャフト24L、24Rに分配して駆動輪に伝達する。
【0053】
モータ32は、いずれも図示しないロータとコイルが巻き付けられたステータと、ロータと一体回転するモータ軸32Aとを備えている。
【0054】
モータ32は、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ軸32Aと一体のロータを回転駆動させる。
【0055】
変速機1は、減速機構33を有する。減速機構33は、モータ32のモータ軸32Aに設けられた第1のドライブギヤ34と、第1の中間軸35と、第2の中間軸36と、前進用出力軸12に設けられた4速段用の出力ギヤ17Dとで構成されている。
【0056】
第1の中間軸35には第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドライブギヤ35Bが設けられている。第2の中間軸36には第2のドリブンギヤ36Aおよび第3のドライブギヤ36Bが設けられている。
【0057】
第3のドライブギヤ36Bは、第2の中間軸36に一体に形成されている。第2のドリブンギヤ36Aは図示しないボールスプライン軸受を介して第2の中間軸36に取付けられており、第2の中間軸36に対して周方向では一体的に回転し軸方向に移動可能となっている。
【0058】
第1のドリブンギヤ35Aは、第1のドライブギヤ34の直径よりも大径に形成されており、第1のドライブギヤ34に噛み合っている。
【0059】
第2のドライブギヤ35Bは、第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドリブンギヤ36Aの直径よりも小径に形成されており、第1のドリブンギヤ35Aの左側に配置されて、第2のドリブンギヤ36Aに噛み合っている。
【0060】
第3のドライブギヤ36Bは、第2のドリブンギヤ36Aの直径と略同一径で、かつ、4速段用の出力ギヤ17Dの直径よりも小径に形成されており、第2のドリブンギヤ36Aの右側に配置されて、4速段用の出力ギヤ17Dに噛み合っている。なお、互いに噛み合うギヤ対において、大径のギヤは小径のギヤより歯数が多く形成されている。
【0061】
減速機構33は、ドライブギヤ34、35B、36Bおよびドリブンギヤ35A、36A、4速段用の出力ギヤ17Dの直径および歯数が任意の減速比となるように設定されることにより、モータ32の駆動力を減速して前進用出力軸12に伝達する。
【0062】
後進用出力軸13にはワンウェイクラッチ50を介してオイルポンプ51のポンプ軸52が連結されており、後進用出力軸13とポンプ軸52は、同一軸線上に設置されている。本実施例のワンウェイクラッチ50は、一方向クラッチを構成する。
【0063】
オイルポンプ51は、例えば、トロコイドポンプから構成されており、オイルポンプ51には潤滑油を吐出する吐出口51aと、潤滑油が吸入される吸入口51bとが設けられている。
【0064】
吐出口51aは、オイル配管53を介してモータ32に接続されており、吸入口51bは、オイル配管54を介してオイルパン55に接続されている。
【0065】
ポンプ軸52には図示しない外歯車からなるインナロータが取付けられている。インナロータは、内歯車からなる図示しないアウタロータに噛み合っており、ポンプ軸52が一方向に回転すると、インナロータとアウタロータが噛み合って回転する。
【0066】
このとき、オイルポンプ51は、オイルパン55に貯留される潤滑油をオイル配管54から吸入口51bを通して吸入し、吸入した潤滑油を吐出口51aからオイル配管53を通してモータ32に供給する。これによってモータ32が潤滑油によって冷却される。
【0067】
オイル配管54を流れる潤滑油は、図示しないオイルクーラによって冷却される。本実施例のモータ32は、潤滑油必要部を構成する。なお、潤滑油必要部はモータ32に限定されるものではなく、変速機1を構成する部品において潤滑や冷却が必要な部品であれば何でもよい。
【0068】
このようにオイルポンプ51は、後進用出力軸13からポンプ軸52に伝達される駆動力によって駆動される。
【0069】
車両の前進時において、後進用出力軸13には第4の同期装置21が連結されていないので、リバースギヤ22Aは空転してリバースギヤ22Aからの回転は後進用出力軸13には伝達されないが、ディファレンシャル装置15のファイナルドリブンギヤ15Aの回転がファイナルドライブギヤ22Bを介して後進用出力軸13に伝達される。
【0070】
このため、車両の前進時では、後進用出力軸13がファイナルドリブンギヤ15Aと逆の方向(A方向)に回転し、後進用出力軸13からワンウェイクラッチ50を介してポンプ軸52に駆動力が伝達される。これにより、オイルポンプ51が駆動され(A方向に回転する)、オイルポンプ51の吐出口51aから潤滑油が吐出される。
【0071】
ワンウェイクラッチ50は、オイルポンプ51に対してA方向の駆動力のみを伝達するものであって、車両の前進時に回動する一方向(A方向)に関してポンプ軸52が後進用出力軸13よりも早い回転速度で回動する時を除き、後進用出力軸13がA方向に回転するときに後進用出力軸13からポンプ軸52に駆動力を伝達し、他方に回転するときには後進用出力軸13からポンプ軸52に駆動力を伝達しない。つまり、ワンウェイクラッチ50は、後進時に後進用出力軸13からポンプ軸52に駆動力を伝達しない。
【0072】
また、車両の後進時には第4の同期装置21がリバースギヤ22Aを後進用出力軸13に連結する。これにより、リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0073】
リバース位置においては、エンジン2の駆動力が入力軸11から入力ギヤ16A、前進用出力軸12と相対回転する出力ギヤ17Aおよびリバースギヤ22Aを介して後進用出力軸13に伝達されるので、後進用出力軸13は、車両の前進時の回転方向と逆方向に回転する。
【0074】
すなわち、後進用出力軸13は、車両の進行方向に応じて回転方向が変更され、車両の前進時および後進時にポンプ軸52に駆動力を伝達する。本実施例の後進用出力軸13は、駆動軸を構成する。
【0075】
後進用出力軸13には傘歯車からなる駆動ギヤ56が設けられている。駆動ギヤ56は、後進用出力軸13に固定されており、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0076】
ポンプ軸52には傘歯車からなる従動ギヤ57が設けられており、従動ギヤ57は、駆動ギヤ56と同一形状に形成されている。すなわち、駆動ギヤ56と従動ギヤ57は、同一径で、かつ同じ歯数を有する。従動ギヤ57は、ポンプ軸52に固定されており、ポンプ軸52と一体で回転する。従動ギヤ57と駆動ギヤ56とは、ワンウェイクラッチ50を挟んで対向して配置されている。
【0077】
駆動ギヤ56と従動ギヤ57には傘歯車からなるアイドラギヤ58が噛み合い可能となっている。後進用出力軸13の駆動力は、駆動ギヤ56からアイドラギヤ58、従動ギヤ57を介してポンプ軸52に伝達可能となっている。
【0078】
アイドラギヤ58は、図示しないアクチュエータによって駆動ギヤ56と従動ギヤ57とに噛み合う噛み合い位置(図2参照)と、駆動ギヤ56と従動ギヤ57とに噛み合わない非噛み合い位置(図1参照)とに移動自在となっている。
【0079】
アクチュエータは、シフト位置がリバース位置(R位置)に操作されたときに、アイドラギヤ58を噛み合い位置に移動させ、シフト位置がリバース位置以外に操作されたときに、アイドラギヤ58を非噛み合い位置に移動させる。
【0080】
本実施例の変速機1は、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをワンウェイクラッチ50を介して連結し、後進用出力軸13からワンウェイクラッチ50を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態と、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをアイドラギヤ58を介して連結し、後進用出力軸13からアイドラギヤ58を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能となっている。
【0081】
次に、作用を説明する。
車両の前進時にはシフト位置がリバース位置以外のシフト位置に位置しているので、アイドラギヤ58は、アクチュエータによって駆動ギヤ56と従動ギヤ57とに噛み合わない非噛み合い位置に位置している。
【0082】
車両の前進時には後進用出力軸13が一方向(A方向)に回転し、後進用出力軸13からワンウェイクラッチ50を介してポンプ軸52に駆動力が伝達されるので、ポンプ軸52が後進用出力軸13の回転方向と同方向(A方向)に回転し、ポンプ軸52によってオイルポンプ51が駆動される。この時、オイルポンプ51は、潤滑油をオイル配管54から吸入口51bを通して吸入し、吸入した潤滑油を吐出口51aからオイル配管53に送り出す。
【0083】
すなわち、車両の前進時において、変速機1のオイルポンプ構造は、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをワンウェイクラッチ50を介して連結し、後進用出力軸13からワンウェイクラッチ50を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態に切替えられている。
【0084】
第1の状態では、吐出口51aからオイル配管53を通して潤滑油がモータ32に供給されてモータ32が潤滑油によって冷却される。
【0085】
一方、車両の後進時にはシフト位置がリバース位置に位置しているので、アクチュエータによってアイドラギヤ58が駆動ギヤ56と従動ギヤ57とに噛み合う噛み合い位置に移動される。
【0086】
車両の後進時には後進用出力軸13が車両の前進時と反対の他方向に回転し、後進用出力軸13の回転はワンウェイクラッチ50で遮断されてポンプ軸52に駆動力が伝達されない。
【0087】
本実施例の変速機1のオイルポンプ構造は、車両の後進時には後進用出力軸13の駆動力が駆動ギヤ56からアイドラギヤ58および従動ギヤ57を介してポンプ軸52に伝達され、ポンプ軸52が車両の前進時の回転方向と同一方向に回転する。つまり、車両の後進時には後進用出力軸13は逆転(反A方向の回転)するが、後進用出力軸13の回転がアイドラギヤ58を介することで逆転してポンプ軸52に伝達されるので、ポンプ軸52が車両の前進時の回転方向(A方向)と同一方向に回転する。
【0088】
すなわち、車両の後進時において、変速機1のオイルポンプ構造は、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをアイドラギヤ58を介して連結し、後進用出力軸13からアイドラギヤ58を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態に切替え可能となっている。
【0089】
このため、ポンプ軸52が車両の前進時と反対方向に回転することがなく、オイル配管53から吐出口51aを通して潤滑油を吸引し、吸入口51bから潤滑油が吐出されることを防止できる。
【0090】
この結果、後退時でも潤滑油の同一方向への流れを継続でき、吐出口51aからオイル配管53を通してモータ32に潤滑油を確実に供給でき、車両の後進時においてもモータ32を確実に冷却することができる。
【0091】
このように本実施例の変速機1のオイルポンプ構造は、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをワンウェイクラッチ50を介して連結し、後進用出力軸13からワンウェイクラッチ50を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態と、ポンプ軸52と後進用出力軸13とをアイドラギヤ58を介して連結し、後進用出力軸13からアイドラギヤ58を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能となっている。
【0092】
これにより、車両の進行方向によって回転方向が変わる後進用出力軸13から駆動力を得てオイルポンプ51を駆動する場合であっても、車両の前進時および後進時に吐出口51aからモータ32に潤滑油に供給できる。
【0093】
また、本実施例のオイルポンプ構造は、多数の逆止弁が必要ではなく、ワンウェイクラッチ50、駆動ギヤ56、従動ギヤ57およびアイドラギヤ58からなる簡素な構造によってモータ32に潤滑油を供給することができ、信頼性の高いオイルポンプ構造を得ることができる。
【0094】
さらに、逆止弁が必要でないため、高圧な油圧をオイルポンプ51が生成する必要がなく、変速機1の駆動力伝達効率が悪化することを防止できる。
【0095】
また、本実施例の変速機1のオイルポンプ構造によれば、アイドラギヤ58が傘歯車であり、ポンプ軸52と後進用出力軸13に、アイドラギヤ58に噛み合い可能な傘歯車からなる駆動ギヤ56と従動ギヤ57が設けられている。
【0096】
これにより、油圧回路や油圧装置を利用せずに駆動ギヤ56、従動ギヤ57およびアイドラギヤ58によって車両の後進時のポンプ軸52の回転方向を車両の前進時の回転方向と同一方向に変更できる。
【0097】
(第2の実施例)
図3から図5は、本発明の第2の実施例に係る車両用変速機のオイルポンプ構造を示す図であり、第1の実施例と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0098】
図3から図5において、後進用出力軸13には第1の駆動ギヤ61、第2の駆動ギヤ62および切替え装置のハブギヤ63が設けられている。
【0099】
第1の駆動ギヤ61と第2の駆動ギヤ62は、後進用出力軸13と相対回転自在となっており、ハブギヤ63は、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0100】
ポンプ軸52には第1のポンプギヤ64と第2のポンプギヤ65が設けられており、第1のポンプギヤ64と第2のポンプギヤ65は、ポンプ軸52と一体で回転する。
【0101】
第1の駆動ギヤ61は、第1のポンプギヤ64に噛み合っており、第1のポンプギヤ64よりも小径に形成されている。
【0102】
変速機1にはアイドラ軸66が設けられており、アイドラ軸66は、後進用出力軸13およびポンプ軸52と平行に設置されている。また、後進用出力軸13とポンプ軸52は平行に設置されている。
【0103】
アイドラ軸66にはアイドラギヤ67が設けられており、アイドラギヤ67は、アイドラ軸66と相対回転自在となっている。図4に示すように、アイドラギヤ67には図示しないシフトフォークが係合するフォーク溝67aが設けられている。
【0104】
そして、フォーク溝67aに係合するシフトフォークによって、アイドラギヤ67はアイドラ軸66の軸に沿って移動可能に設けられている。
【0105】
後進用出力軸13には、ハブギヤ63と共に切替え機構を構成するスリーブ68が設けられており、スリーブ68は、後進用出力軸13の軸方向に移動自在となっている。
【0106】
スリーブ68にはその外周にフォーク溝68aが設けられており、フォーク溝68aには、図示しないシフトフォークが係合している。そして、フォーク溝68aに係合するシフトフォークによって、スリーブ68は後進用出力軸13の軸方向に移動する。
【0107】
アイドラギヤ67とスリーブ68は、一体的に後進用出力軸13とアイドラ軸66の軸方向に移動するように切替え時の移動量が設定されていて、切替えの操作部材の構成を簡素化できるようになっている。
【0108】
スリーブ68の内周面には内周スプライン68bが形成されている。第1の駆動ギヤ61と第2の駆動ギヤ62にはドグギヤ61a、62aが設けられており、ドグギヤ61a、62aにはスリーブ68の内周スプライン68bが噛み合い可能となっている。
【0109】
スリーブ68は、図示しないアクチュエータによって、第1の駆動ギヤ61のドグギヤ61aとハブギヤ63とに噛み合う前進時噛み合い位置(図3図4参照)と、第2の駆動ギヤ62のドグギヤ62aとハブギヤ63とに噛み合う後進時噛み合い位置(図5参照)とに移動自在となっている。
【0110】
アクチュエータは、シフト位置がリバース位置に操作されたときに、スリーブ68を後進時噛み合い位置に移動させ、シフト位置がリバース位置以外に操作されたときに、スリーブ68を前進時噛み合い位置に移動させる。
【0111】
すなわち、本実施例の変速機1のオイルポンプ構造は、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64によって連結し、後進用出力軸13から第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態と、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65によって連結し、後進用出力軸13から第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能である。
【0112】
次に、作用を説明する。
車両の前進時にはシフト位置がリバース位置以外のシフト位置に位置しているので、スリーブ68は、第1の駆動ギヤ61のドグギヤ61aとハブギヤ63とに噛み合う前進時噛み合い位置に位置している。これにより、第1の駆動ギヤ61が後進用出力軸13に連結されて後進用出力軸13と一体で回転可能となる。
【0113】
車両の前進時には後進用出力軸13が一方向に回転し、後進用出力軸13から第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64を介してポンプ軸52に駆動力が伝達される。
【0114】
これにより、ポンプ軸52によってオイルポンプ51が駆動され、ポンプ軸52が後進用出力軸13の回転方向と反対方向に回転し、ポンプ軸52によってオイルポンプ51が駆動される。
【0115】
すなわち、車両の前進時において、変速機1のオイルポンプ構造は、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64によって連結し、後進用出力軸13から第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態に切替えられている。
【0116】
第1の状態では、吐出口51aからオイル配管53を通して潤滑油がモータ32に供給されてモータ32が潤滑油によって冷却される。
【0117】
一方、車両の後進時にはシフト位置がリバース位置に位置しているので、アクチュエータによってスリーブ68が第2の駆動ギヤ62のドグギヤ62aとハブギヤ63とに噛み合う後進時噛み合い位置に移動される。これにより、第2の駆動ギヤ62が後進用出力軸13に連結されて後進用出力軸13と一体で回転可能となる。
【0118】
車両の後進時には後進用出力軸13が車両の前進時と反対の他方向に回転する。
本実施例の変速機1のオイルポンプ構造は、車両の後進時には後進用出力軸13の駆動力が第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65を介してポンプ軸52に伝達され、ポンプ軸52が車両の前進時の回転方向と同一方向に回転する。
【0119】
すなわち、車両の後進時において、変速機1のオイルポンプ構造は、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65によって連結し、後進用出力軸13から第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態に切替え可能となっている。
【0120】
このため、ポンプ軸52が車両の前進時と反対方向に回転することを防止して、オイル配管53から吐出口51aを通して潤滑油を吸引し、吸入口51bから潤滑油が吐出されることを防止できる。
【0121】
この結果、吐出口51aからオイル配管53を通してモータ32に潤滑油を確実に供給でき、車両の後進時にモータ32を確実に冷却できる。
【0122】
このように本実施例の変速機1のオイルポンプ構造は、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64によって連結し、後進用出力軸13から第1の駆動ギヤ61および第1のポンプギヤ64を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第1の状態と、後進用出力軸13とポンプ軸52とを第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65によって連結し、後進用出力軸13から第2の駆動ギヤ62、アイドラギヤ67および第2のポンプギヤ65を介してポンプ軸52に駆動力を伝達する第2の状態とに切替え可能となっている。
【0123】
これにより、車両の進行方向によって回転方向が変わる後進用出力軸13からオイルポンプ51に駆動力が伝達される場合であっても、車両の前進時および後進時に吐出口51aからモータ32に潤滑油に供給できる。
【0124】
また、本実施例のオイルポンプ構造は、多数の逆止弁が必要ではなく、第1の駆動ギヤ61、第2の駆動ギヤ62、ハブギヤ63、第1のポンプギヤ64、第2のポンプギヤ65、アイドラギヤ67およびスリーブ68からなる簡素なギヤ構造によってモータ32を潤滑でき、信頼性の高いオイルポンプ構造を得ることができる。
【0125】
さらに、逆止弁が必要でないため、比較的高圧な油圧を確保する必要がなく、変速機1の駆動力伝達効率が悪化することを防止できる。
【0126】
また、本実施例の変速機1のオイルポンプ構造によれば、アイドラギヤ67は、第2の駆動ギヤ62と第2のポンプギヤ65に噛み合う状態と、第2の駆動ギヤ62と第2のポンプギヤ65に噛み合わない状態とに切替え可能である。
【0127】
これにより、アイドラギヤ67と、第2の駆動ギヤ62および第2のポンプギヤ65との噛み合いおよび非噛み合いとによって車両の後進時のポンプ軸52の回転方向を車両の前進時の回転方向と同一方向に変更できる。
【0128】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0129】
1...変速機(車両用変速機)、13...後進用出力軸(駆動軸)、32...モータ、50...ワンウェイクラッチ(一方向クラッチ)、51...オイルポンプ、51a...吐出口、51b...吸入口、52...ポンプ軸、56...駆動ギヤ(傘歯車)、57...従動ギヤ(傘歯車)、58,67...アイドラギヤ、61...第1の駆動ギヤ、62...第2の駆動ギヤ、64...第1のポンプギヤ、65...第2のポンプギヤ
図1
図2
図3
図4
図5