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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106855
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】水素システム運転計画装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230726BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230726BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20230726BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALN20230726BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 170
H01M8/04 Z
H01M8/0656
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007828
(22)【出願日】2022-01-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2016年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隼祐
【テーマコード(参考)】
5G066
5H127
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066HB07
5H127AB23
5H127AB27
5H127BA14
5H127BA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水素システムにおいて効率的な運転を実現する運転計画を的確に作成可能な水素システム運転計画装置を提供する。
【解決手段】電力を用いて水素を製造する水素製造装置を備える水素システムの運転を計画する水素システム運転計画装置200は、水素システムにおける電力の需要に関するDR指令が入力され、入力されたDR指令を第1のDRグループと第1のDRグループよりも優先度が低い第2のDRグループとに分類する分類部210と、第1のDRグループに分類されたDR指令を反映するように第1の運転計画を作成する第1計画部220と、第1のDRグループに分類されたDR指令の内容を第2のDRグループに分類されたDR指令の内容よりも優先するように、第2のDRグループに分類されたDR指令の内容を第1の運転計画に反映することで第2の運転計画を作成する第2計画部230と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を用いて水素を製造する水素製造装置を備える水素システムの運転を計画する水素システム運転計画装置であって、
前記水素システムにおける前記電力の需要に関するDR指令が入力され、当該入力された前記DR指令を第1のDRグループと前記第1のDRグループよりも優先度が低い第2のDRグループとに分類する分類部と、
前記第1のDRグループに分類された前記DR指令を反映するように第1の運転計画を作成する第1計画部と、
前記第1のDRグループに分類されたDR指令の内容を前記第2のDRグループに分類されたDR指令の内容よりも優先するように、前記第2のDRグループに分類されたDR指令の内容を前記第1の運転計画に反映することで第2の運転計画を作成する第2計画部と
を有する、
水素システム運転計画装置。
【請求項2】
水素システムは、
電力を生成する発電装置
を有し、
前記分類部は、前記水素システムで生成された電力の供給に関する供給指令が入力され、当該入力された供給指令を第1の供給指令グループと前記第1の供給指令グループよりも優先度が低い第2の供給指令グループとに分類し、
前記第1計画部は、前記第1の供給指令グループに分類された供給指令を反映するように、前記第1の運転計画を作成し、
前記第2計画部は、前記第1の供給指令グループに分類された供給指令の内容、および、前記第1のDRグループに分類されたDR指令の内容を前記第2の供給指令グループに分類された供給指令の内容よりも優先して反映するように、前記第2の供給指令グループに分類された供給指令の内容を前記第1の運転計画に反映することで、前記第2の運転計画を作成する、
請求項1に記載の水素システム運転計画装置。
【請求項3】
発電装置は、
前記水素製造装置が製造した水素を用いて電力を生成する水素発電装置
を含む、
請求項2に記載の水素システム運転計画装置。
【請求項4】
発電装置は、
再生可能エネルギーから電力を生成する再生可能エネルギー発電装置
を含む、
請求項2または3に記載の水素システム運転計画装置。
【請求項5】
第1の計画作成時T1において前記第2計画部が作成した前記第2の運転計画のうち前記DR指令に応じた計画部分を外部へ通知する通知部
を有し、
前記第1計画部は、前記第1の計画作成時T1よりも後の第2の計画作成時T2において前記第1の運転計画を更新する際には、前記通知部が外部へ通知した前記第1の計画作成時T1の前記計画部分の内容を前記第1のDRグループに分類されたDR指令の内容よりも優先し、
前記第2計画部は、前記第2の計画作成時T2において前記第2の運転計画を更新する際には、前記通知部が外部へ通知した前記第1の計画作成時T1の前記計画部分の内容を前記第2のDRグループに分類されたDR指令の内容よりも優先する、
請求項1から4のいずれかに記載の水素システム運転計画装置。
【請求項6】
電力を用いて水素を製造する水素製造装置と前記水素製造装置で製造された水素を貯蔵する水素貯蔵装置とを備える水素システムの運転を計画する水素システム運転計画装置であって、
前記水素システムから水素を外部へ出荷する水素出荷量に関する水素出荷指令に基づいて運転計画を作成する計画部
を有し、
前記水素出荷指令は、
前記水素システムから基準時に水素を出荷する出荷基準量に関する基準時出荷情報と、
前記出荷基準量のうち前記基準時よりも前の時点に前記水素システムから水素を出荷し得る出荷前倒し可能量に関する前倒し出荷情報と、
前記出荷基準量のうち前記基準時よりも後の時点に前記水素システムから水素を出荷し得る出荷後倒し可能量に関する後倒し出荷情報と
を含み、
前記計画部は、
前記基準時よりも前の時点に前記水素製造装置で水素を製造する水素前倒し製造量が前記出荷前倒し可能量以下であり、
前記基準時よりも後の時点に前記水素製造装置で水素を製造する水素後倒し製造量が前記出荷後倒し可能量以下であり、
前記基準時に前記水素製造装置で水素を製造する基準時水素製造量が、前記出荷基準量から前記水素前倒し製造量と前記水素後倒し製造量との合計量を差分した値になるように、前記運転計画を作成する、
水素システム運転計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素システム運転計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素システムは、電力を用いて水素を製造する水素製造装置や、水素から電力を生成する水素発電装置等を備える。水素システムは、電力網において電力の供給が過多である場合には、その電力網から電力を需要して水素製造装置で水素を製造することができる。また、電力網において電力の需要が過多である場合には、水素発電装置で水素から電力を生成して電力網に供給することができる。このため、水素システムは、電力網の安定化に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/203520
【特許文献2】WO2020/179849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素システムは、外部から受けた指令に応じて作成された運転計画で運転を実行する。運転計画は、水素システムにおいて効率的な運転を実現することが要求される。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、水素システムにおいて効率的な運転を実現する運転計画を的確に作成可能な水素システム運転計画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の水素システム運転計画装置は、分類部と第1計画部と第2計画部とを有し、電力を用いて水素を製造する水素製造装置を備える水素システムの運転を計画する。分類部は、水素システムにおける電力の需要に関するDR指令が入力され、当該入力されたDR指令を第1のDRグループと第1のDRグループよりも優先度が低い第2のDRグループとに分類する。第1計画部は、第1のDRグループに分類されたDR指令を反映するように第1の運転計画を作成する。第2計画部は、第1のDRグループに分類されたDR指令の内容を第2のDRグループに分類されたDR指令の内容よりも優先するように、第2のDRグループに分類されたDR指令の内容を第1の運転計画に反映することで第2の運転計画を作成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る水素システム100および水素システム運転計画装置200を含む全体構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200において作成される、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200において作成される、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の一例を示す図である。
図5図5は、第2実施形態に係る水素システム運転計画装置200bの構成を示すブロック図である。
図6図6は、第3実施形態に係る水素システム運転計画装置200cの構成を示すブロック図である。
図7図7は、第3実施形態に係る水素システム運転計画装置200cにおいて、計画部270に入力される水素出荷指令CH、および、計画部270が作成する運転計画FPの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
[A]全体構成
図1は、第1実施形態に係る水素システム100および水素システム運転計画装置200を含む全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0009】
[A-1]水素システム100
図1に示すように、水素システム100は、水素製造装置110と水素貯蔵装置115と発電装置120とを備え、水素システム運転計画装置200において作成された運転計画で運転を実行するように構成されている。水素システム100を構成する各部について順次説明する。
【0010】
[A-1-1]水素製造装置110
水素製造装置110は、電力を用いて水素を製造するように構成されている。水素製造装置110は、例えば、水素電解装置であって、水素電解装置が水を電気分解することによって水素を生成する。ここでは、水素製造装置110は、電力系統10(電力網)から供給される電力と発電装置120から供給される電力との少なくとも一方を用いて、水素の製造を行うように構成されている。
【0011】
[A-1-2]水素貯蔵装置115
水素貯蔵装置115は、水素製造装置110で製造された水素を貯蔵するように構成されている。水素貯蔵装置115は、例えば、ガスタンクであって、水素ガスを貯蔵する。ここでは、水素貯蔵装置115は、電力系統10から供給される電力と発電装置120からから供給される電力との少なくとも一方を用いて、例えば、水素製造装置110で製造された水素ガスを圧縮して貯蔵する。この他に、水素貯蔵装置115は、例えば、液化タンクであって、液化された水素を貯蔵するように構成されていてもよい。水素貯蔵装置115で貯蔵された水素は、水素発電装置121へ燃料として供給される他に、水素流通網300へ供給される。
【0012】
[A-1-3]発電装置120
発電装置120は、水素発電装置121と再生可能エネルギー発電装置123とを含み、電力を生成するように構成されている。発電装置120において生成された電力は、電力系統10へ供給される。
【0013】
発電装置120のうち、水素発電装置121は、水素製造装置110が製造した水素を用いて電力を生成する。水素発電装置121は、例えば、燃料電池装置であって、水素極に供給された水素と酸素極に供給された酸素とが電解質膜を介して反応することで電力を生成する。水素発電装置121は、電力の生成のために、電力系統10から供給される電力を利用する。また、水素発電装置121では、発電で生じた熱で温水が生成される。水素発電装置121で生成された温水は、温水流通網400へ供給される。
【0014】
発電装置120のうち、再生可能エネルギー発電装置123は、再生可能エネルギーから電力を生成する。再生可能エネルギー発電装置123は、例えば、太陽光発電装置であって、太陽光パネルで太陽光を受光し光電変換を行うことによって電力を生成する。この他に、再生可能エネルギー発電装置123は、風力発電装置やバイオマス発電装置等であってもよい。再生可能エネルギー発電装置123において生成された電力は、水素製造装置110および水素貯蔵装置115に供給されて利用される。
【0015】
[A-2]水素システム運転計画装置200
水素システム運転計画装置200は、水素システム100の運転を計画するために設けられている。ここでは、水素システム運転計画装置200は、水素システム100を構成する各部に関する情報が水素システム100から入力されると共に、水素システム100の運転に関する指令が外部から入力される。そして、水素システム運転計画装置200は、入力された情報および指令に基づいて、水素システム100の運転計画を作成し、その運転計画を水素システム100へ出力する。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200の構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、水素システム運転計画装置200は、分類部210と第1計画部220と第2計画部230とを有する。水素システム運転計画装置200は、演算器(コンピュータ)と記憶装置とを含み、記憶装置が記憶するプログラムを用いて、演算器が、分類部210、第1計画部220、および、第2計画部230として機能するよう構成されている。
【0018】
[A-2-1]分類部210
分類部210は、水素システム100における電力の需要に関するDR指令CDが入力される。DR指令CDは、いわゆる「デマンドレスポンス(需要家応答)」に関する指令であって、例えば、電力差分DR、電力DR、および、電力量DRに関する指令である。そして、分類部210は、その入力されたDR指令CDを第1のDRグループGD1と、第1のDRグループGD1よりも優先度が低い第2のDRグループGD2とに分類する。
【0019】
また、分類部210は、水素システム100で生成された電力の供給に関する供給指令CSが入力される。供給指令CSは、例えば、逆潮流電力量指令、逆潮流電力指令
である。そして、分類部210は、その入力された供給指令CSを、第1の供給指令グループGS1と、第1の供給指令グループGS1よりも優先度が低い第2の供給指令グループGS2とに分類する。
【0020】
分類部210は、予め定めた分類基準に従って、上記の分類を実行する。例えば、分類部210は、経済的な価値(例えば、DR報酬、買電額、および、売電額に応じた利益)を示す評価値を分類基準として分類を実行する。分類部210は、この他に、指令を受信した順序を、分類基準として分類を実行してもよく、二酸化炭素の排出量や再生可能エネルギーを有効利用した割合などのように、環境に対する影響を示す評価値を分類基準として分類を実行してもよい。評価値は、推定値を含む。評価値は、複数の因子の重み付き和であってもよい。
【0021】
[A-2-2]第1計画部220
第1計画部220は、分類部210において第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDの内容、および、分類部210において第1の供給指令グループGS1に分類された供給指令CSの内容に基づいて、第1の運転計画FP1(第1の指令反映計画)を作成する。
【0022】
第1の運転計画FP1の作成では、第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDの内容、および、第1の供給指令グループGS1に分類された供給指令CSの内容を反映させる。
【0023】
[A-2-3]第2計画部230
第2計画部230は、分類部210において第2のDRグループGD2に分類されたDR指令CDの内容、および、分類部210において第2の供給指令グループGS2に分類された供給指令CSの内容に基づいて、第2の運転計画FP2(第2の指令反映計画)を作成する。
【0024】
第2の運転計画FPの作成では、第2のDRグループGD2に分類されたDR指令CDの内容、および、分類部210において第2の供給指令グループGS2に分類された供給指令CSの内容を、第1計画部220で作成された第1の運転計画FP1に反映させる。
【0025】
第2の運転計画FP2の作成の際には、第2計画部230は、第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDの内容を、第2のDRグループGD2に分類されたDR指令CDの内容および第2の供給指令グループGS2に分類された供給指令CSの内容よりも優先する。
【0026】
そして、第2計画部230で作成された第2の運転計画FP2は、各指令を反映した計画部分が認識できるように、表示装置(図示省略)の表示画面に表示される。また、第2計画部230で作成された第2の運転計画FP2は、水素システム100に出力され、水素システム100では、第2の運転計画FP2に応じて、運転が行われる。
【0027】
なお、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の作成では、分類部210から入力された指令の他に、計画対象期間における水素システム100の状況が考慮される。具体的には、計画対象期間において水素貯蔵装置115で貯蔵することが可能な水素貯蔵量や、計画対象期間において再生可能エネルギー発電装置123で発電することが可能な発電量などが考慮される。また、水素システム100を構成する各部において計量される対象が応動する応動時間を考慮してもよい。計画対象期間における水素システム100の状況については、例えば、過去のデータを学習することで求めた推定値(予測値)でもよい。計画対象期間における水素システム100の状況によってDR指令CDおよび供給指令CSの内容を完全には反映できない場合には、当然ながら、DR指令CDおよび供給指令CSの内容の一部を反映するか、DR指令CDおよび供給指令CSの内容を反映せずに、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の作成が行われる。
【0028】
また、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2は、予め定めた評価値が最適値になるように最適化される。評価値は、例えば、経済的な価値である。この他に、評価値は、二酸化炭素の排出量などの環境に対する影響を示す値等であってもよい。評価値は、推定値を含む。評価値は、複数の因子の重み付き和であってもよい。
【0029】
最適化は、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の作成を、予め定めた繰り返し数で繰り返すことで実行してもよい。また、第1計画部220での最適化の精度よりも、第2計画部230での最適化の精度を低下させることで、計画作成の高速化を実現してもよい。
【0030】
[B]水素システム運転計画装置200の動作
本実施形態の水素システム運転計画装置200の動作について説明する。
【0031】
[B-1]ケース1
図3は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200において作成される、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の一例を示す図である。
【0032】
図3において、横軸は、時間tであり、縦軸は、水素製造量P(水素製造で使用する電力量に相当)である。図3では、計画対象期間が開始時点t10から最終時点t20の範囲である場合を示している。
【0033】
図3では、DR指令CDとして、第1の上げDR指令と、第1の上げDR指令と異なる第2の上げDR指令とが分類部210に入力されたときに、分類部210が第1の上げDR指令を第1のDRグループGD1に分類すると共に、分類部210が第2の上げDR指令を第2のDRグループGD2に分類した場合(ケース1)に関して示している。
【0034】
[B-1-1]第1の運転計画FP1の作成
この場合において、第1の運転計画FP1を作成する際には、図3の上段に示すように、分類部210において第1のDRグループGD1に分類された第1の上げDR指令の内容を第1計画部220が反映する。
【0035】
ここでは、計画対象期間について予め作成した運転計画において、例えば、時点t11から時点t12までの範囲に水素製造量Pを増加させて水素製造で需要する電力量を増加させることによって、第1の上げDR指令の内容を反映している。
【0036】
第1の運転計画FP1の作成では、計画対象期間における水素システム100の状況が考慮される。例えば、水素製造量Pの増加量および水素製造量Pを増加させる時間帯は、計画対象期間において水素貯蔵装置115で貯蔵することが可能な水素貯蔵量(推定量を含む)の上限値を超えないように、適宜、調整される。例えば、計画対象期間の最終時点t20において、水素貯蔵量の上限値に到達するように、水素製造量Pの増加量および水素製造量Pを増加させる時間帯が設定される。
【0037】
[B-1-2]第2の運転計画FP2の作成
つぎに、第2の運転計画FP2を作成する際には、図3の下段に示すように、分類部210において第2のDRグループGD2に分類された第2の上げDR指令の内容を第2計画部230が反映する。
【0038】
第2の運転計画FP2の作成の際には、第1のDRグループGD1に分類された第1の上げDR指令の内容が、第2のDRグループGD2に分類された第2の上げDR指令の内容よりも優先される。
【0039】
このため、例えば、第1の上げDR指令の内容を反映した時間帯(t11からt12)を除いた時間帯に、第2の上げDR指令の内容が反映される。ここでは、時点t15から時点t16までの範囲に水素製造量Pを増加させて水素製造で需要する電力量を増加させることによって、第2の上げDR指令の内容を反映している。
【0040】
第2の運転計画FP2の作成においても、第1の運転計画FP1の作成の場合と同様に、計画対象期間における水素システム100の状況が考慮される。例えば、第2の上げDR指令の内容を反映した場合に、計画対象期間において水素貯蔵装置115で貯蔵することが可能な水素貯蔵量(推定量を含む)の上限値を超える場合には、第2の上げDR指令の内容を反映した時間帯(t15からt16)よりも前の時間帯に、水素製造量Pを減少させる。ここでは、第1の上げDR指令の内容を反映した時間帯(t11からt12)を除いた時間帯である、時点t13から時点t14までの範囲に水素製造量Pを減少させている。
【0041】
[B-2]ケース2
図4は、第1実施形態に係る水素システム運転計画装置200において作成される、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の一例を示す図である。
【0042】
図4においては、図3の場合と同様に、横軸は、時間tであり、縦軸は、水素製造量P(水素製造で使用する電力量に相当)である。図4においても、図3の場合と同様に、計画対象期間が開始時点t10から最終時点t20の範囲である場合を示している。
【0043】
図4では、DR指令CDとして下げDR指令が分類部210に入力されると共に、供給指令CSとして逆潮流指令が分類部210に入力されたときに、分類部210が逆潮流指令を第1の供給指令グループGS1に分類すると共に、分類部210が下げDR指令を第2のDRグループGD2に分類した場合(ケース2)に関して示している。
【0044】
[B-2-1]第1の運転計画FP1の作成
この場合において、第1の運転計画FP1を作成する際には、図4の上段に示すように、分類部210において第1の供給指令グループGS1に分類された逆潮流指令の内容を第1計画部220が反映する。
【0045】
ここでは、計画対象期間について予め作成された運転計画(基本運転計画)において、例えば、時点t13から時点t14までの範囲に水素製造量Pをゼロに減少させて水素製造装置110の運転を停止し、発電装置120から電力系統10へ電力を売電することによって、逆潮流指令の内容を反映している。
【0046】
[B-2-2]第2の運転計画FP2の作成
つぎに、第2の運転計画FP2を作成する際には、図4の下段に示すように、分類部210において第2のDRグループGD2に分類された下げDR指令の内容を第2計画部230が反映する。
【0047】
第2の運転計画FP2の作成の際には、第1のDRグループGD1に分類された逆潮流指令の内容が、第2のDRグループGD2に分類された下げDR指令の内容よりも優先される。
【0048】
このため、例えば、逆潮流指令の内容を反映した時間帯(t13からt14)を除いた時間帯に、下げDR指令の内容が反映される。ここでは、時点t15から時点t16までの範囲に水素製造量Pを減少させて水素製造で需要する電力量を減少させることによって、下げDR指令の内容を反映している。
【0049】
第2の運転計画FP2の作成では、上述したように、計画対象期間における水素システム100の状況が考慮される。例えば、計画対象期間において下げDR指令の内容を反映したときに水素貯蔵装置115で貯蔵する水素貯蔵量が設定値以下である場合には、下げDR指令の内容を反映した時間帯(t15からt16)よりも前の時間帯に、水素製造量Pを増加させる。例えば、逆潮流指令の内容を反映した時間帯(t13からt14)を除いた時間帯である、時点t11から時点t12までの範囲に水素製造量Pを増加させる。このとき、水素製造装置110が水素を製造可能な最大水素製造量Pmaxを超えないように、水素製造量Pを増加させる時間帯の範囲が適宜調整される。
【0050】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の水素システム運転計画装置200において、分類部210は、DR指令CDを第1のDRグループGD1と第2のDRグループGD2とに分類すると共に、供給指令CSを第1の供給指令グループGS1と第2の供給指令グループGS2とに分類する。第1計画部220は、第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDおよび第1の供給指令グループGS1に分類された供給指令CSを反映するように、第1の運転計画FP1を作成する。第2計画部230は、第2のDRグループGD2に分類されたDR指令CDの内容および第2の供給指令グループGS2に分類された供給指令CSの内容を第1の運転計画FP1に反映することで、第2の運転計画FP2を作成する。ここでは、第2計画部230は、第2の運転計画FP2を作成する際には、第1の供給指令グループGS1に分類された供給指令CSの内容、および、第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDの内容を第2の供給指令グループGS2に分類された供給指令CSの内容よりも優先して第1の運転計画FP1に反映する。
【0051】
したがって、本実施形態の水素システム運転計画装置200では、水素システム100において効率的な運転を実現する運転計画を、DR指令CDおよび供給指令CSに対して的確に作成可能である。その結果、本実施形態では、電力系統10(電力網)の安定化に寄与することができる。
【0052】
<第2実施形態>
[A]水素システム運転計画装置200bの構成
図5は、第2実施形態に係る水素システム運転計画装置200bの構成を示すブロック図である。
【0053】
図5に示すように、水素システム運転計画装置200bは、分類部210と第1計画部220と第2計画部230とを有する他に、第1実施形態の場合(図2参照)と異なり、通知部250を更に有する。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0054】
水素システム運転計画装置200bでは、分類部210、第1計画部220、および、第2計画部230と同様に、水素システム運転計画装置200bを構成する演算器がプログラムによって通知部250として機能するよう構成されている。
【0055】
通知部250は、第1の計画作成時T1において第2計画部230が作成した第2の運転計画FP2のうちDR指令CDに応じた計画部分を外部へ通知するために設けられている。通知は、例えば、外部のアグリゲータなどの機関に対して実行される。通知は、例えば、入力された通知指示に従って実行される。
【0056】
図3で示した場合について例示すると、通知部250は、例えば、第1の上げDR指令に応じて時点t11から時点t12までの時間帯に電力の需要を増加する計画部分、および、第2の上げDR指令に応じて時点t15から時点t16までの時間帯に電力の需要を増加する計画部分に関して、通知を行う。
【0057】
通知部250が通知した計画部分に関する情報は、第1計画部220および第2計画部230に入力され、第1の計画作成時T1よりも後の第2の計画作成時T2において第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の更新を行う際に優先される。
【0058】
ここでは、第1計画部220は、第2の計画作成時T2において第1の運転計画FP1を更新する際には、通知部250が外部へ通知した第1の計画作成時T1の計画部分の内容を、第1のDRグループGD1に分類されたDR指令CDの内容よりも優先する。
【0059】
第2計画部230は、第2の計画作成時T2において第2の運転計画FP2を更新する際には、通知部250が外部へ通知した第1の計画作成時T1の計画部分の内容を、第2のDRグループGD2に分類されたDR指令CDの内容よりも優先する。
【0060】
図3で示した場合について例示すると、第1計画部220は、例えば、第1の上げDR指令に応じて時点t11から時点t12までの時間帯に電力の需要を増加する計画部分を保持した状態で、第1の運転計画FP1の更新を実行する。同様に、第2計画部230は、例えば、第1の上げDR指令に応じて時点t11から時点t12までの時間帯に電力の需要を増加する計画部分、および、第2の上げDR指令に応じて時点t15から時点t16までの時間帯に電力の需要を増加する計画部分を保持した状態で、第2の運転計画FP2の更新を実行する。
【0061】
なお、通知部250が通知した計画部分に関する情報を、計画の変更がない確定情報として通知するか、計画の変更があり得る未確定情報として通知するかに応じて、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の更新の際の優先度(重み付け)を変更してもよい。例えば、確定情報として計画部分を通知する場合には、その通知した計画部分を変更せずに保持して、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の更新を実行する。これに対して、未確定情報として計画部分を通知する場合には、その通知した計画部分の変更を許容して、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の更新を実行する。
【0062】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の水素システム運転計画装置200bでは、通知部250が外部へ通知した計画部分に関する情報が、第1の運転計画FP1および第2の運転計画FP2の更新を行う際に考慮される。
【0063】
したがって、本実施形態の水素システム運転計画装置200bでは、通知部250が水素システム100の運転計画について外部へ通知を行った場合であっても、水素システム100において効率的な運転を実現する運転計画を的確に作成可能である。その結果、本実施形態では、電力系統10(電力網)の安定化に寄与することができる。
【0064】
<第3実施形態>
[A]水素システム運転計画装置200bの構成
図6は、第3実施形態に係る水素システム運転計画装置200cの構成を示すブロック図である。
【0065】
図6に示すように、水素システム運転計画装置200cは、計画部270を有する。水素システム運転計画装置200cは、演算器(コンピュータ)を含み、プログラムによって、演算器が計画部270として機能するよう構成されている。水素システム運転計画装置200cの構成が異なる点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0066】
計画部270は、水素システム100の水素貯蔵装置115から水素を外部(水素流通網300(図1参照))へ出荷する水素出荷量に関する水素出荷指令CHが入力され、その入力された水素出荷指令CHに基づいて、運転計画FP(出荷指令反映計画)を作成する。そして、計画部270は、運転計画FPを水素システム100へ出力する。
【0067】
図7は、第3実施形態に係る水素システム運転計画装置200cにおいて、計画部270に入力される水素出荷指令CH、および、計画部270が作成する運転計画FPの一例を示す図である。
【0068】
図7の上段は、計画部270に入力される水素出荷指令CHを示しており、横軸は、時間tであり、縦軸は、水素出荷量Sである。これに対して、図7の下段は、計画部270が作成する運転計画FPを示しており、横軸は、時間tであり、縦軸は、水素製造量FSである。
【0069】
図7の上段に示すように、水素出荷指令CHは、出荷基準量S0に関する基準時出荷情報と、出荷前倒し可能量Sbに関する前倒し出荷情報と、出荷後倒し可能量Saに関する後倒し出荷情報とを含む。
【0070】
出荷基準量S0は、水素システム100から基準時t0に水素を外部へ出荷する水素出荷量である。具体的には、出荷基準量S0は、基準時t0に水素システム100からの出荷を待機する予定の水素タンクトレーラ(水素運搬車両)の台数(出荷容量)に相当する。
【0071】
出荷前倒し可能量Sbは、出荷基準量S0のうち基準時t0よりも前の時点tbに水素システム100から水素を出荷し得る水素出荷量である。具体的には、出荷前倒し可能量Sbは、基準時t0に水素システム100からの出荷を受ける予定の水素タンクトレーラのうち、基準時t0よりも前の時点tbに出荷の待機を行う可能性がある水素タンクトレーラの台数(出荷容量)に相当する。
【0072】
出荷後倒し可能量Saは、出荷基準量S0のうち基準時t0よりも後の時点taに水素システム100から水素を出荷し得る水素出荷量である。具体的には、出荷後倒し可能量Saは、基準時t0に水素システム100からの出荷を受ける予定の水素タンクトレーラのうち、基準時t0よりも後の時点taに出荷の待機を行う可能性がある水素タンクトレーラの台数(出荷容量)に相当する。
【0073】
計画部270は、図7の上段に示すように、出荷基準量S0に関する基準時出荷情報と、出荷前倒し可能量Sbに関する前倒し出荷情報と、出荷後倒し可能量Saに関する後倒し出荷情報とを含む水素出荷指令CHに基づいて、図7の下段に示すように、水素システム100の運転計画FPを作成する。
【0074】
ここでは、計画部270は、図7の下段に示すように、水素前倒し製造量Pb、水素後倒し製造量Pa、および、基準時水素製造量P0について、運転計画FPを作成する。
【0075】
水素前倒し製造量Pbは、基準時t0よりも前の時点tbに水素システム100の水素製造装置110で水素を製造する水素製造量である。計画部270は、水素前倒し製造量Pbを出荷前倒し可能量Sb以下に設定する。
【0076】
水素後倒し製造量Paは、基準時t0よりも後の時点taに水素システム100の水素製造装置110で水素を製造する水素製造量である。計画部270は、水素後倒し製造量Paを出荷後倒し可能量Sa以下に設定する。
【0077】
基準時水素製造量P0は、基準時t0に水素システム100の水素製造装置110で水素を製造する水素製造量である。計画部270は、出荷基準量S0から水素前倒し製造量Pbと水素後倒し製造量Paとの合計量を差分した値に基準時水素製造量P0がなるように、基準時水素製造量P0を設定する。
【0078】
運転計画FPの作成では、計画対象期間(tbからtaの間)における水素システム100の状況が考慮される。具体的には、計画対象期間において水素貯蔵装置115で貯蔵することが可能な水素貯蔵量や、計画対象期間において再生可能エネルギー発電装置123で発電することが可能な発電量などが考慮される。計画対象期間における水素システム100の状況については、例えば、過去のデータを学習することで求めた推定値(予測値)でもよい。
【0079】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の水素システム運転計画装置200cでは、水素システム100から水素を外部へ出荷する水素出荷量に関する水素出荷指令に基づいて、計画部270が水素システム100の運転計画FPを作成する。ここでは、計画部270は、水素前倒し製造量Pbが出荷前倒し可能量Sb以下であり、水素後倒し製造量Paが出荷後倒し可能量Sa以下であり、基準時水素製造量P0が、出荷基準量S0から水素前倒し製造量Pbと水素後倒し製造量Paとの合計量を差分した値になるように、運転計画FPを作成する。
【0080】
したがって、本実施形態の水素システム運転計画装置200cでは、水素システム100から水素を外部へ出荷する状況に応じて、水素システム100の運転計画FPを的確に作成可能である。
【0081】
なお、第1実施形態および第2実施形態で説明したように、DR指令CDや供給指令CSを考慮して、計画部270が運転計画FPの作成を実行してもよい。
【0082】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10:電力系統、100:水素システム、110:水素製造装置、115:水素貯蔵装置、120:発電装置、121:水素発電装置、123:再生可能エネルギー発電装置、200:水素システム運転計画装置、200b:水素システム運転計画装置、200c:水素システム運転計画装置、210:分類部、220:第1計画部、230:第2計画部、250:通知部、270:計画部、300:水素流通網、400:温水流通網。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7