(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107384
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230727BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B65D65/40 D BRH
B65D81/34 U BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008556
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村木 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD12
3E013BE01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA23
3E086BA24
3E086BA33
3E086BB41
3E086BB85
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】電子レンジによる内容物の加熱調理可能なパウチにおいて、パウチの形状や製袋の工程を変更することなく、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチを提供すること。
【解決手段】プラスチックフィルムを基材として、最外層にシーラント層を有する積層体から構成されるパウチであって、パウチはシーラント層同士を対向させてシールして製袋されており、パウチはその内部に内容物を収納、密封可能であって、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m
2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m
2)であることを特徴とする、パウチ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムを基材として、最外層にシーラント層を有する積層体から構成されるパウチであって、
パウチはシーラント層同士を対向させてシールして製袋されており、
パウチはその内部に内容物を収納、密封可能であって、
積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、
10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)
であることを特徴とする、パウチ。
【請求項2】
前記積層体は、各層のプラスチック材料が同一のプラスチック素材からなることを特徴とする、請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記積層体は、積層体内部にガスバリア層を有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に係るものである。特に、プラスチックフィルムを基材としてシーラント層を有する積層体からなる包装袋であって、これは一般にパウチとも呼ばれ、本発明は電子レンジよる加熱調理が可能なパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料の一種であるパウチは、プラスチックフィルムを基材とするフィルム単体、またはプラスチックフィルムを基材とした積層体から構成されるものが広く普及しており、さまざまな形態のものが、幅広い用途に用いられており、現代生活にとっては不可欠なものとなっている。
【0003】
例えばプラスチックフィルムの有する耐水性から、液体容器としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられているほか、日用品やトイレタリーの分野でも、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。そのほかにも、液体容器を中心に様々な用途展開がなされている。
【0004】
また、単なる容器としてではなく、パウチの内部に食品を収納して、電子レンジによる加熱調理が可能なパウチもその利便性の高さから多く用いられている。
【0005】
パウチの利点は、缶や瓶などの容器に比べて価格が安いことや、要求品質によってきめ細かい材料設計で対応できる点、あるいは内容物充填前および流通や保管においても軽量で省スペースであることが挙げられる。またパウチは、廃棄物を減らすという観点からも環境適応型であるといえる。
【0006】
またパウチの表面から見える層への高精細の印刷によって、商品のイメージアップを図ることができ、内容物に関する必要な情報を表示することが可能であり、バーコードの印刷などは、商品の流通やマーケティング情報の源泉ともなっている。
【0007】
このようなパウチは、プラスチックフィルムを基材としてシーラント層を有する積層体をシーラント層同士を対向させて重ねて対向させて胴部を形成し、周縁部をシールして製袋してパウチとしているが、内容物を充填したパウチに、落下衝撃が加わった場合に、シール部分などで破袋する恐れがあった。
【0008】
そのほか積層体の材料構成によっては、加熱による溶融ピンホールが発生したり、落下衝撃によって破袋する恐れがあった。
【0009】
一方で、プラスチック材料に起因する環境問題は深刻さを増しており、モノマテリアル包装材料として、リサイクル可能な材料構成は歓迎されるものである。
【0010】
特にオールポリエチレン、あるいはオールポリオレフィンの材料構成の場合には、リサイクルの徹底により効果的であり、同時にその弱点とされる機械的強度の向上が強く求められているところである。
【0011】
特許文献1及び特許文献2に記載されたパウチは、積層体の材料構成や厚さを選択することによって、問題解決を図ろうとするものであるが、破袋強度を上げることによって、他の特性に影響する場合もあり、一方で過剰品質とならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7-237281号公報
【特許文献2】特開平7-241967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、電子レンジによる内容物の加熱調理可能なパウチにおいて、パウチの形状や製袋の工程を変更することなく、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
プラスチックフィルムを基材として、最外層にシーラント層を有する積層体から構成されるパウチであって、
パウチはシーラント層同士を対向させてシールして製袋されており、
パウチはその内部に内容物を収納、密封可能であって、
積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、
10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)
であることを特徴とする、パウチである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、
前記積層体は、各層のプラスチック材料が同一のプラスチック素材からなることを特徴とする、請求項1に記載のパウチである。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、
前記積層体は、積層体内部にガスバリア層を有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のパウチである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理可能なパウチにおいて、パウチの形状や製袋の工程を変更することなく、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチの提供が可能である。
【0018】
すなわちパウチを構成する積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあることによって、パウチに機械的強度、及び断熱性が付与され、その結果、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチの提供が可能となる。
【0019】
また、特に網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)の範囲であることによって、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋を、より効果的に抑制することが可能である。
【0020】
また、特に請求項2に記載に発明によれば、積層体は、各層のプラスチック材料が同一のプラスチック素材からなることによって、モノマテリアル包装材料として、リサイクルの徹底が可能なパウチであり、かつ落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れがないパウチとすることができる。
【0021】
また特に請求項3に記載の発明によれば、積層体は、積層体内部にガスバリア層を有していることによって、パウチが包装材料として内容物の環境による変化や劣化を抑え、また内容物の、例えば揮発成分やにおい成分などの外部への漏出を抑制することが可能なパウチとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係るパウチを構成する積層体の一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【
図2】
図2は本発明によるパウチの、実施例1の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図3】
図3は本発明によるパウチの、実施例2の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図4】
図4は本発明によるパウチの、実施例3の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図5】
図5は本発明によるパウチの、実施例4の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明によらないパウチの、比較例1の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明によらないパウチの、比較例2の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図8】
図8は、本発明によらないパウチの、比較例3の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図9】
図9は、本発明によらないパウチの、比較例4の評価用サンプルを構成する積層体の構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図10】
図10は、本発明によらないパウチの、比較例5の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図11】
図11は、本発明によらないパウチの、比較例6の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0024】
本発明は、パウチに関するものである。特に電子レンジよる加熱調理が可能なパウチに関するものであって、落下耐性に優れ、また加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチに関するものである。
【0025】
図1は本発明に係るパウチを構成する積層体の一実施態様を説明するための部分断面模式図である。
【0026】
パウチはプラスチックフィルムを基材(1)として、最外層にシーラント層(3)を有する積層体(5)から構成されるパウチであって、製袋されたパウチはその内部に内容物を収納、密封可能である。
【0027】
パウチはシーラント層(3)同士を対向させてシールして製袋されており、パウチを構成する積層体(5)には、シーラント層(3)に接して、プラスチック素材からなる網目状シート(2)層を設けてある。
【0028】
この網目状シート(2)層を設けることによって、パウチに機械的強度、また断熱性が付与され、それによって落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチの提供が可能である。
【0029】
我々は、本発明を鋭意検討する過程で、網目状シート(2)の坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることが、より落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋を、より効果的に抑制できることを見出した。
【0030】
このプラスチック素材からなる網目状シート(2)には特段の限定を加えるものではないが、例えば市販品の中から住化積水フィルム株式会社製ソフ(登録商標)などを用いることができる。
【0031】
また、本発明において、パウチを構成する積層体(5)は、各層のプラスチック材料を同一のプラスチック素材とすることができる。このようなモノマテリアルなパウチは、リサイクルの徹底が可能なパウチであり、かつ本発明が課題とするところの、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れがないパウチを実現することができる。
【0032】
また、積層体内部にガスバリア層を設けることができる。この場合には外部環境による内容物の変質、劣化を防止することができ、また例えば揮発成分やにおい成分などの内容物の成分の、外部への漏出を抑制することが可能なパウチとすることが可能である。
【0033】
ここで、積層体(5)を構成する各層の材料について説明を加える。基材(1)とするプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
【0034】
特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルムとする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。そのほか延伸ポリアミドフィルムを用いる場合には、積層体に突き刺しに対する強靭性や、衝撃に対する強靭性を付与することができる。
【0035】
またプラスチックフィルムは、接着剤層を介して他の層と積層して積層体とすることができる。積層体の層構成やその材料構成、厚さなどは、パウチに対する要求品質に応じて適宜設計することができる。
【0036】
また、たとえば内容物の保存性を向上させることなどを目的として、積層体中にガスバリア層を設けることができる。ガスバリア層は、ガスバリア性の高い樹脂層のコーティングやラミネートのほか、たとえば、プラスチックフィルムの表面にガスバリア層を設けてなるガスバリアフィルムを用いることができる。
【0037】
またアルミニウムなどの金属箔もガスバリア層として有効ではあるが、電子レンジでの調理には、高周波によるスパークなどが発生するために不適当である。
【0038】
ガスバリアフィルムの場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
エチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0039】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、コーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0040】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0041】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0042】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0043】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0044】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0045】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0046】
またガスバリア層として、たとえばSiOを用いる場合にはその被膜は透明であるために、内容物をパウチの外側から目で見ることが可能である。これらは、用途、要求品質によって適宜使い分けをすればよい。
【0047】
シーラント層(3)は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、パウチに製袋することを可能にする。例えば矩形の2枚の積層体(5)を用いて、その周縁をシールして、矩形のパウチとして密封することができる。
【0048】
シーラント層(3)の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン
樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0049】
シーラント層(3)の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体(5)上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体(5)の表面にシーラント層(3)を形成することも可能である。
【0050】
また
図1には示していないが、必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、プラスチックフィルムを基材とする積層体(5)中の、パウチ外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層はパウチの最外層に設けるのでも構わない。
【0051】
また印刷層は、パウチの一部に設けるのでもよく、またパウチの全面に渡って設けるのでもよい。あるいは、印刷層を用いずに表示部を設ける方法としては、たとえばパウチの表面に印刷されたシールを貼着することも可能である。
【0052】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、特段の制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮すれば適宜選択してよい。
【0053】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0054】
このようにして、本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理可能なパウチにおいて、パウチの形状や製袋の工程を変更することなく、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチの提供が可能である。
【実施例0055】
以下本発明を、実施例及び比較例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0056】
評価用のパウチを実施例1~実施例4、比較例1~比較例6として計10種類作成した。評価用のサンプル数は、各々10個とした。なお、網目状ポリエチレン層には、住化積水フィルム株式会社製ソフ(登録商標)を用いた。
【0057】
評価項目及び評価方法は下記のとおりである。
【0058】
(評価1)レンジ耐熱評価
電子レンジを用いて内容物の加熱を行ない、評価を行った。
蒸気口を設けたパウチに液状のカレーを500g充填、密封し、1000Wの出力で40秒加熱した。
【0059】
評価基準:加熱後のパウチの外観において、破れ、ピンホールの有無を目視で確認した。10個中、10個ともに破れ、ピンホールがないものを○評価とした。それ以外は×評価とした。
【0060】
(評価2)落下試験
パウチに液状のカレーを500g充填、密封し、80cmの高さから落下させて評価した。
【0061】
評価基準:パウチを落下させたのち、破袋の有無を目視にて確認した。10個中、10個ともに破れがないものを○評価とした。それ以外は×評価とした。
【0062】
<実施例1>
図2は本発明によるパウチの、実施例1の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0063】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/網目状ポリエチレン層ソフ(登録商標 坪量10g/m2)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ30μm)
とした。
これは本発明において規定する範囲内の構成である。
【0064】
<実施例2>
図3は本発明によるパウチの、実施例2の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0065】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/網目状ポリエチレン層ソフ(登録商標 坪量17g/m2)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ30μm)
とした。
これは本発明において規定する範囲内の構成である。
【0066】
<実施例3>
図4は本発明によるパウチの、実施例3の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0067】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリプロピレン層(厚さ20μm)/網目状ポリプロピレン層ソフ(登録商標 坪量17g/m2)/押し出しポリプロピレン層(厚さ20μm)/無延伸ポリプロピレン層(厚さ30μm)
とした。
但し、実施例3においては、網目状ポリプロピレン層ソフ(登録商標 坪量17g/m2)を用いており、プラスチック層はすべてポリプロピレンであって同一素材から構成されている。
これは本発明において規定する範囲内の構成である。
【0068】
<実施例4>
図5は本発明によるパウチの、実施例4の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説
明するための、部分断面模式図である。
【0069】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/網目状ポリエチレン層ソフ(登録商標 坪量28g/m2)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ30μm)
とした。
これは本発明において規定する範囲内の構成である。
【0070】
<比較例1>
図6は、本発明によらないパウチの、比較例1の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0071】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ100μm)
とした。
【0072】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートを設けていない点で逸脱している。
【0073】
<比較例2>
図7は、本発明によらないパウチの、比較例2の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0074】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ100μm)
とした。
【0075】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートを設けていない点で逸脱している。
【0076】
<比較例3>
図8は、本発明によらないパウチの、比較例3の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0077】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)/接着剤層/無延伸ポリプロピレン層(厚さ100μm)
とした。
【0078】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートを設けていない点で逸脱している。
【0079】
<比較例4>
図9は、本発明によらないパウチの、比較例4の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0080】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリプロピレン層(厚さ20μm)/無延伸ポリプロピレン層(厚さ100μm)
とした。
【0081】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートを設けていない点で逸脱している。
【0082】
<比較例5>
図10は、本発明によらないパウチの、比較例5の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0083】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/網目状ポリエチレン層ソフ(登録商標 坪量7g/m2)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ30μm)
とした。
【0084】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートの坪量が下限値を下回っている点で逸脱している。
【0085】
<比較例6>
図11は、本発明によらないパウチの、比較例6の評価用サンプルを構成する積層体の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0086】
積層体の層構成は、パウチ外側になる面から、
延伸ポリエチレンフィルム(厚さ20μm)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/網目状ポリエチレン層ソフ(登録商標 坪量32g/m2)/押し出しポリエチレン層(厚さ20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ30μm)
とした。
【0087】
この構成は、本発明が特徴の一つとするところの、積層体には、シーラント層に接して、プラスチック素材からなる網目状シート層を設けてあり、網目状シートの坪量は、10(g/m2)≦網目状シートの坪量≦28(g/m2)であることのうち、網目状シートの坪量が上限値を超えている点で逸脱している。
【0088】
評価結果を表1に示す
【0089】
【0090】
表1に示す結果から明らかなように、本発明による規定を満足する実施例1~実施例4
はいずれも、レンジ耐熱性、落下試験の評価においてすべて○評価である。
【0091】
これに比べて本発明による規定の範囲を逸脱するところのある比較例1~比較例6においては、レンジ耐熱性、落下試験の評価において、いずれか又は両方が×評価であった。
【0092】
特に、本発明の特徴のひとつであるプラスチック素材からなる網目状シート層を、設けていない比較例1~比較例4においては、レンジ耐熱性、落下試験のいずれの評価においても×評価であり、この網目状シート層が本発明の課題可決には不可欠であることが明らかである。
【0093】
このようにして、本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理可能なパウチにおいて、パウチの形状や製袋の工程を変更することなく、落下耐性に優れ、また電子レンジによる加熱調理時の溶融ピンホールの発生や破袋の恐れのないパウチを提供することが可能であることを検証することができた。