(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108273
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230728BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B62D25/08 K
B62D25/08 L
B62D25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009304
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】西山 友士郎
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA03
3D203AA04
3D203BB24
3D203BB56
3D203BB57
3D203BB77
3D203BC10
3D203CA53
3D203CA57
3D203CB04
3D203CB19
3D203CB24
3D203DA36
3D203DA39
3D203DA51
3D203DA73
3D203DA87
3D203DA88
(57)【要約】
【課題】車両側部における後部の回転モードを抑制しクォータパネルの変形を抑制する。
【解決手段】車両側部構造のクォータインナパネル3の内側には、アブソーバ取付部14を跨ぐように延び、上下方向に延びているリアピラーインナリンフォースメント20が配置される。リアピラーインナリンフォースメント20の前部及び後部は、上方に向かうに従い互いに離れるように傾斜する。リアピラーインナリンフォースメント20の前部における上部は、バックドア開口部の上側角部に接合され、リアピラーインナリンフォースメント20の後部における上部は、リアピラー部6の中間部に接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部に配置されるサイドボディアウタパネルと、該サイドボディアウタパネルの車幅方向内側に配置されるクォータインナパネルと、前記クォータインナパネルの下部から車両内側に膨出し、後輪を車両上方から覆うホイールハウスインナパネルと、該ホイールハウスインナパネルに設けられ、リアショックアブソーバが取り付けられるアブソーバ取付部と、前記サイドボディアウタパネルの車両後方側でバックドア開口部の車幅方向外側部に配置され、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜して延びるピラー部と、を有している、車両側部構造において、
前記クォータインナパネルの車幅方向内側には、前記アブソーバ取付部を跨ぐように車両前後方向に延び、且つ車両上下方向に延びているインナリンフォースメントが配置され、
前記インナリンフォースメントの前部及び後部は、車両上方に向かうに従い車両前後方向に互いに離れるように傾斜して延び、
前記インナリンフォースメントの前部における上部は、前記バックドア開口部の上側角部に接合され、前記インナリンフォースメントの後部における上部は、前記ピラー部の車両前後方向の中間部に接合されていることを特徴とする、車両側部構造。
【請求項2】
前記ホイールハウスインナパネルの車幅方向外側には、前記サイドボディアウタパネルに接合されるホイールハウスアウタパネルが配置され該ホイールハウスアウタパネルの上部及び前記ホイールハウスインナパネルの上部は、互いに接合されており、
前記ホイールハウスインナパネルにおける前記アブソーバ取付部の車幅方向内側には、車幅方向内側を臨む内側縦壁部が設けられ、該内側縦壁部の下部は、車体側部に配置され車両前後方向に延びているサイドメンバに接合されており、
前記クォータインナパネルは、前記ホイールハウスインナパネルの上部に設けられた接合部から車両上方に延び、車幅方向内側を臨む上側縦壁部を有し、該上側縦壁部の上部は、前記サイドボディアウタパネルに接合され、
前記インナリンフォースメントは、車両上下方向の中間部が車幅方向外側に膨出するように湾曲している膨出部を有し、該膨出部の車幅方向外側部は、前記クォータインナパネルに対して車幅方向に間隔を空けて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記インナリンフォースメントの前部及び後部のそれぞれには、車両前方及び車両後方に突出するフランジ部が設けられ、
前記クォータインナパネルの車幅方向外側には、ハット形状の断面を有するリアピラーアウタリンフォースメントが設けられ、該リアピラーアウタリンフォースメントと、前記クォータインナパネルと、前記フランジとは、重なった状態で接合され、
前記リアピラーアウタリンフォースの下部は、前記ホイールハウスアウタパネルに接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記クォータインナパネルの車幅方向内側面には、リアシートのシートバックを固定するストライカリンフォースメントが設けられ、該ストライカリンフォースメントは、前記インナリンフォースメントよりも車両前方側に配置されており、
前記インナリンフォースメントの前部の前記フランジ部と、前記ホイールハウスインナパネルの上部及び前記サイドボディアウタパネルとを繋いでいることを特徴とする、請求項3に記載の車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、バックドア開口部が設けられている車両が知られている。車両ドア開口部の車幅方向外側部には、リアピラー部が設けられており、この例のリアピラー部は、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜して延びている。また、リアピラー部の車両前方側には、サイドボディアウタパネルが配置され、該サイドボディアウタパネルの内側には、クォータインナパネルが配置されている。
【0003】
一方で、車両側部の下部には、車両前後方向に延びるサイドメンバが配置されている。サイドメンバには、後輪を上方から覆うホイールハウスパネルが接合されている。また、ホイールハウスパネルの上部には、クォータインナパネルが接合されている。また、ホイールハウスパネルには、リアショックアブソーバが取り付けられている。
【0004】
このような構造では、リアサスペンションからの上下方向荷重が、ホイールハウスパネルに伝達され、当該荷重は、サイドメンバ等に伝達される。ここで、リアピラー部は、リヤホイールハウスの周辺に比べて、通常、ねじれ変形が大きくなる。例えば、特許文献1に開示されている構造では、リアピラー部の一部を、剛性部材によって構成することでリアピラー部の周辺のねじれ変形を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記例のような構造では、左右のサイドメンバの後端は、車幅方向に延びるパネルによって接続されている。すなわち、左右のサイドメンバの後端を繋ぐ部材は、サイドメンバに比べて剛性が低い。そのため、サイドメンバにおける後端が、車両前後方向を回転軸とする回転の動きを、抑えることが困難な場合がある。これにより、サイドメンバの上方側に位置するクォータパネルの全体が、車幅方向に動くようなモードを誘発する可能性がある。
【0007】
この場合、クォータインナパネルの車両上下方向の中間部が、車幅方向内側に膨出するように変形する。当該変形により、車両室内の空気が圧縮されると、乗員に対して不快感を与える可能性のあるロードノイズが発生する場合がある。そのため、上記例のような構造では、車両側部にける後部において、回転の動きを抑え、車両側部の変形を抑制する上で、改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両側部における後部の回転モードを抑制し、リアピラー部及びクォータパネルが変形することを抑制可能な車両側部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車両側部構造は、車両側部に配置されるサイドボディアウタパネルと、該サイドボディアウタパネルの車幅方向内側に配置されるクォータインナパネルと、前記クォータインナパネルの下部から車両内側に膨出し、後輪を車両上方から覆うホイールハウスインナパネルと、該ホイールハウスインナパネルに設けられ、リアショックアブソーバが取り付けられるアブソーバ取付部と、前記サイドボディアウタパネルの車両後方側でバックドア開口部の車幅方向外側部に配置され、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜して延びるピラー部と、を有している。当該車両側部構造において、前記クォータインナパネルの車幅方向内側には、前記アブソーバ取付部を跨ぐように車両前後方向に延び、且つ車両上下方向に延びているインナリンフォースメントが接合され、前記インナリンフォースメントの前部及び後部は、車両上方に向かうに従い車両前後方向に互いに離れるように傾斜して延び、前記インナリンフォースメントの前部における上部は、前記バックドア開口部の上側角部に接合され、前記インナリンフォースメントの後部における上部は、前記ピラー部の車両前後方向の中間部に接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両側部における後部の回転モードを抑制し、リアピラー部及びクォータパネルが変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両側部構造の一実施形態であり、車両側部構造を、車両室内側から見た側面図である。
【
図2】
図1の車両側部構造を、車両室外側から見た側面図である。
【
図6】
図1のリアピラーインナリンフォースメント及びその周辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両の車両側部構造の一実施形態について、図面(
図1~
図7)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示し、矢印Rrは後方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの左側を示している。また、矢印Uは、車両上方を示している。
【0013】
本実施形態の車両側部構造は、
図1及び
図2に示すように、車両後部にバックドア開口部5を有する車両の構造であり、当該車両の側部のうちの後部にける構造である。車両側部構造は、サイドメンバ8と、サイドボディアウタパネル1と、クォータインナパネル3と、リアピラーインナリンフォースメント20(インナリンフォースメント)と、を有している。また、当該車両側部構造は、図示しない後輪用のホイールハウス部10を有している。さらに、本実施形態の車両側部構造では、バックドア開口部5の車幅方向外側部に、リアピラー部6(ピラー部)が設けられている。以下、各部材について説明する。
【0014】
サイドメンバ8は、車体骨格を構成する剛性の高い部材であり、
図2及び
図3に示すように、車幅方向外側部に配置され、車両前後方向に延びている。サイドメンバ8は、フロアパネルの車幅方向外側部にスポット溶接により接合されている。また、サイドメンバ8には、後述するホイールハウスインナパネル12が接合されている。
【0015】
サイドボディアウタパネル1は、車両の両側部に配置され、車体の最外を構成する剛性の高いパネルである。サイドボディアウタパネル1には、
図1に示すように、リアサイドドア開口部2を有している。リアサイドドア開口部2は、図示しないリアサイドドアによって開閉される開口部で、リアサイドドア開口部2の後部には、シートバックストライカリンフォースメント38が取り付けられている。シートバックストライカリンフォースメント38については後で説明する。
【0016】
次に、クォータインナパネル3について説明する。クォータインナパネル3は、
図4~
図6に示すように、サイドボディアウタパネル1の車幅方向内側に間隔を空けて配置されるパネルであり、リアドア開口部の後部から車両後方に延びている。また、クォータインナパネル3は、後述するホイールハウスインナパネル12の上部に設けられた接合部から、車両上方に延び、車幅方向内側を臨む上側縦壁部3aを有している。この例の上側縦壁部3aは、ほぼ鉛直方向に延びる壁面を有している。当該上側縦壁部3aの上部は、前記サイドボディアウタパネル1に接合されている。
【0017】
続いて、ホイールハウス部10について説明する。ホイールハウス部10は、
図1及び
図2に示すように、ホイールハウスアウタパネル11と、ホイールハウスインナパネル12と、を有している。ホイールハウスアウタパネル11は、後輪を車両上方から覆うパネルであって、ホイールハウスインナパンの車幅方向外側(車両外側)に配置され、後輪の上部の形状に沿って湾曲している。また、ホイールハウスアウタパネル11の車幅方向外側部は、サイドボディアウタパネル1に接合されている。また、ホイールハウスアウタパネル11の車幅方向内側における上部は、
図2に示すように、クォータインナパネル3に接合され、ホイールハウスアウタパネル11の前部は、サイドボディアウタパネル1に接合されている。なお、ホールハウスアウタパネルの前部は、リアサイドドア開口部2の後部に配置されている。また、ホイールハウスアウタパネル11は、
図4に示すように、車幅方向において、サイドボディアウタパネル1とクォータインナパネル3との間に配置されている。
【0018】
ホイールハウスインナパネル12は、ホイールハウスアウタパネル11の車幅方向内側に配置されているパネルで、ホイールハウスアウタパネル11と同様に、後輪を車両上方から覆うように、後輪の上部の形状に沿って湾曲している。また、ホイールハウスインナパネル12は、クォータインナパネル3の下部から車両内側に膨出ている。さらに、ホイールハウスインナパネル12は、車両前後方向に延び、上部の輪郭は、側方視で、円弧状に形成されている。
【0019】
本実施形態におけるホイールハウスインナパネル12は、内側膨出部13と、アブソーバ取付部14と、内側縦壁部15と、を有している。内側膨出部13は、
図3~
図6に示すように、クォータインナパネル3の下部から車幅方向内側に膨出し、車幅方向内側に向かうに従い車両下方に湾曲している。また、内側膨出部13の車両上下方向における上端は、上記した円弧状の部分に対応しており、内側膨出部13の前端から、車両上方に向かうに従い車両後方に湾曲し、頂部から車両後方に向かうに従い車両下方に湾曲している。
【0020】
また、ホイールハウスアウタパネル11の上部及びホイールハウスインナパネル12の上部は、互いに接合されている。ここで、ホイールハウスインナパネル12の上部に設けられている接合部は、内側膨出部13の車両上下方向における上端であり、側方視で円弧状である。
【0021】
アブソーバ取付部14は、図示しないリアショックアブソーバが取り付けられている部分であり、内側膨出部13の車両前後方向の中間部に設けられている。アブソーバ取付部14は、
図1、
図6及び
図7に示すように、内側膨出部13の上部が下方に凹むことによって形成される凹部14aを有しており、凹部14aの底には、
図1及び
図4に示すように、車両上方を臨む平坦な取付面14bが設けられている。取付面14bには、貫通孔が設けられ、車両上下方向に延びるリアショックアブソーバの上部が取り付けられている。
【0022】
内側縦壁部15は、内側膨出部13の車両下方側に位置し、車幅方向内側を臨む壁面を有しており、車両上下方向に延びている。この例では、内側縦壁部15は、アブソーバ取付部14の車幅方向内側に設けられており、ほぼ鉛直方向に延びる壁面を有している。また、アブソーバ取付部14の取付面14bの車幅方向内側端は、内側縦壁部15の上部に接続されている。内側縦壁部15の下部は、
図5に示すように、サイドメンバ8にスポット溶接により接合されている。
【0023】
また、バックドア開口部5は、サイドボディアウタパネル1の車両後方側に配置され、図示しないバックドアによって開閉可能に構成されている。バックドア開口部5の例えば上部には、バックドアを支持するドアヒンジ等が設けられている。また、本実施形態のリアピラー部6は、
図1に示すように、バックドア開口部5の車幅方向外側部に配置されており、上側傾斜部6aと、縦部6bと、屈曲部6cと、を有している。上側傾斜部6aは、バックドア開口部5の車幅方向外側部における上部から、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜して延びている。縦部6bは、上側傾斜部6aの後端から車両下方に延びている。屈曲部6cは、上側傾斜部6aと縦部6bによって形成されており、側方視で、鈍角をなしている。
【0024】
続いて、リアピラーインナリンフォースメント20について説明する。リアピラーインナリンフォースメント20は、
図1に示すように、クォータインナパネル3の車幅方向内側に配置されており、アブソーバ取付部14を跨ぐように車両前後方向に延び、且つ車両上下方向に延びている。リアピラーインナリンフォースメント20の前部及び後部は、車両上方に向かうに従い車両前後方向に互いに離れるように傾斜して延びている。また、リアピラーインナリンフォースメント20の前部における上部は、バックドア開口部5の上側角部に接合され、リアピラーインナリンフォースメント20の後部における上部は、リアピラー部6の車両前後方向の中間部に接合されている。
【0025】
以下、リアピラーインナリンフォースメント20の構成について詳細に説明する。リアピラーインナリンフォースメント20は、全体として車両上下方向に延びている部材であり、
図1及び
図6に示すように、上側開口部21と、下側開口部22と、これらの間に設けられ車両前後方向に延びる連結部23と、を有している。また、リアピラーインナリンフォースメント20の前部は、上前側傾斜部25と、下前側縦部26と、を有し、リアピラーインナリンフォースメント20の後部は、上後側傾斜部27と、下後側縦部28と、を有している。
【0026】
さらに、リアピラーインナリンフォースメンには、車体に接合される複数のフランジを有している。例えば、本実施形態では、リアピラーインナリンフォースメント20の前部及び後部のそれぞれには、車両前方及び車両後方に突出するフランジ部が設けられている。各フランジ部の接合等については、後で説明する。
【0027】
上前側傾斜部25は、
図1及び
図6に示すように、上側開口部21の前部に配置される部分であり、車両上方に向かうに従い車両前方に傾斜して延びている。上前側傾斜部25の車両前後方向長さは、車両上方に向かうに従い長くなるように設定されている。また、上前側傾斜部25の上端には、上前端フランジ部25aが設けられている。上前端フランジ部25aは、リアピラー部6の上側傾斜部6aにスポット溶接により接合されている。上前端フランジ部25aは、リアピラー部6の上側傾斜部6aの傾斜方向に沿って延びている。上前端フランジの前端における上端は、バックドア開口部5の上側角部にスポット溶接により接合されている。
【0028】
また、上前側傾斜部25は、車両内側を臨む内側面25bと、該内側面25bの前端に設けられ車両前方を臨む前面25cと、を有しており、前面25cの車幅方向外側端には、上前側フランジ部25dが設けられている。上前側フランジ部25dは、上記したリアピラーインナリンフォースメント20の前部のフランジ部の一部である。上前側フランジ部25dにおける下部は、クォータインナパネル3の上側縦壁部3aに、スポット溶接により接合され、上前側フランジ部25dにおける上部は、バックドア開口部5の上側角部を構成するリアピラー部6の上部にスポット溶接により接合されている。また、上部と下部との間に位置する上前側フランジ部25dは、サイドボディアウタパネル1の内面に対して間隔を空けて配置されてもよい。また、
図6に示すように、前面25cの上部は、バックドア開口部5の上部に接合される前端フランジ25eが設けられている。
【0029】
下前側縦部26は、
図1及び
図6に示すように、連結部23の前部及び下側開口部22の前部に配置される部分であり、車両上下方向に延びている。また、下前側縦部26は、車両内側を臨む内側面26bと、該内側面26bの前端に設けられ車両前方を臨む前面26cと、を有しており、前面の車幅方向外側端には、下前側フランジ部26dが設けられている。下前側フランジ部26dは、上記したリアピラーインナリンフォースメント20の前部のフランジ部の一部である。下前側フランジ部26dにおける上部は、クォータインナパネル3の上側縦壁部3aにスポット溶接により接合され、上前側フランジ部25dにおける下部は、ホイールハウスインナパネル12のアブソーバ取付部14にスポット溶接により接合されている。なお、当該下部は、アブソーバ取付部14よりも前方に位置する内側膨出部13に接合されてもよい。
【0030】
上後側傾斜部27は、
図1及び
図6に示すように、連結部23の後部及び上側開口部21の後部に配置される部分であり、車両上方に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている。上後側傾斜部27の車両前後方向長さは、傾斜方向に対してほぼ一定である。また、上後側傾斜部27の上端には、上後端フランジ部27aが設けられている。上後端フランジ部27aは、リアピラー部6の上側傾斜部6aの車両前後方向の中間部にスポット溶接により接合されている。上後端フランジ部27aは、上側傾斜部6aの傾斜方向に対応して延びている。
【0031】
また、上後側傾斜部27は、車両内側を臨む内側面27bと、該内側面27bの後端に設けられ車両後方を臨む後面27cと、を有しており、後面27cの車幅方向外側端には、上後側フランジ部27dが設けられている。上後側フランジ部27dは、上記したリアピラーインナリンフォースメント20の後部のフランジ部の一部である。上後側フランジ部27dにおける上部は、リアピラー部6の上側傾斜部6aの車両前後方向の中間部にスポット溶接により接合されている。なお、上側傾斜部6a及び上後側フランジ部27dの車両上下方向の中間部は、例えば、クォータインナパネル3に対して間隔を空けて配置されている。
【0032】
下後側縦部28は、
図1及び
図6に示すように、下側開口部22の後部に配置される部分であり、車両上下方向に延びている。また、下後側縦部28は、車両内側を臨む内側面28bと、該内側面28bの後端に設けられ車両後方を臨む後面28cと、を有しており、後面28cの車幅方向外側端には、下後側フランジ部28dが設けられている。下後側フランジ部28dは、上記したリアピラーインナリンフォースメント20の後部のフランジ部の一部である。下後側フランジ部28dにおける下部は、ホイールハウスインナパネル12のアブソーバ取付部14にスポット溶接により接合されている。なお、当該下部は、アブソーバ取付部14よりも後方に位置する内側膨出部13に接合されてもよい。
【0033】
また、リアピラーインナリンフォースメント20下部には、下前側縦部26の下部と下後側縦壁部の下部とを繋ぐように車両前後方向に延びる下側フランジ部24が設けられている。下側フランジ部24は、下側開口部22の下部に配置されており、アブソーバ取付部14の下方に位置する内側縦壁部15にスポット溶接により接合されている。この例では、アブソーバ取付部14の取付面14bよりもやや下方に位置する内側縦壁部15に接合されている。
【0034】
アブソーバ取付部14は、例えばリアサスペンションからの入力荷重を受ける部分であり、剛性の高い部分である。上記したようにリアピラーインナリンフォースメント20を、車体骨格構造に繋がるバックドア開口部5の上側角部に接続することにより、車体側部における後部の車体剛性を、より高くすることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の車両のように、デザイン上、ルーフ部の後端から、車両後方に無核に従い車両下方に傾斜するピラー部を有するバックドア開口部5を有する場合、車両上下方向(ほぼ鉛直方向)に延びるピラー部を有する構造に比べて、車両上下方向の荷重が入力されるとき、車体の側部における後部で、当該荷重を効果的に受けることが難しい。
【0036】
これに対して、本実施形態では、バックドア開口部5の傾斜するリアピラー部6の車両前後方向の中間部に、リアピラーインナリンフォースメント20の後部が接合されているため、リアサスペンションからの入力荷重を、車体骨格に効果的に伝達することができ、車体の側部における後部において、入力荷重を効率よく受け止めることができる。さらに、リアピラーインナリンフォースメント20の前部が、クォータインナパネル3に接合されているため、車幅方向に変形するクォータパネルの動き(車幅方向の変形)を、効果的に抑制することができる。その結果、当該車両側部構造では、ロードノイズを低減することが可能となる。
【0037】
また、バックドアを有する車両では、多くの車種で、いわゆる「跳ね上げ式」のバックドアである。これは、バックドア開口部5の上部にヒンジが取り付けられ、バックドアがヒンジにより回動するため、バックドアが開閉されるとき、強い負荷が車両上下方向に作用する。本実施形態では、リアピラーインナリンフォースメント20の後部が、バックドア開口部5の上側角部に接合されるため、当該負荷に対しても、効果的に支持することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、リアピラーインナリンフォースメント20の前部と、リアピラー部6とにより鋭角が形成され、リアピラーインナリンフォースメント20の後部と、リアピラー部6の中央部は、垂直に接続されている。さらに、上前端フランジ部25aが、リアピラー部6の上側傾斜部6aの傾斜方向に沿って延びているため、傾斜方向に延びる接合部を設けることが可能となる。これにより、リアピラーインナリンフォースメント20の前部が車両前方へ倒れること、及び後部が車両後方へ倒れることを抑制し、より強度の高い構造を得ることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、上記したように、ホイールハウスインナパネル12の内側縦壁部15の下部は、サイドメンバ8に接合されている(
図4及び
図5)。また、クォータインナパネル3の上側縦壁部3aは、ホイールハウスインナパネル12の上端に設けられた接合部から車両上方に延び、サイドボディアウタパネル1に接合されている。また、リアピラーインナリンフォースメント20は、
図5に示すように、車両上下方向の中間部が車幅方向外側に膨出するように湾曲している外側膨出部29(膨出部)を有し、外側膨出部29の車幅方向外側部は、クォータインナパネル3に対して車幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0040】
本実施形態の外側膨出部29は、上前側傾斜部25の内側面25bと、連結部23の前部と、下前側縦部26の内側面26bとにより構成される部分と、上後側傾斜部27の内側面27bと、連結部23の後部と、下後側縦部28の内側面28bとにより構成される部分と、を含んでいる。
【0041】
上記のように構成することにより、サイドメンバ8の閉断面構造を構成する車幅方向を臨む壁面から、直線的にリアショックアブソーバの取付面14bまで、内側縦壁部15が延びているため、サイドメンバ8の変形(回転する動き)を抑制することができる。これにより、サイドメンバ8が、車両前後方向を軸として回転することを抑制することが可能となり、クォータインナパネル3が当該回転に連動することも抑制することが可能となる。その結果、上記したロードノイズをより低減できる。
【0042】
さらに、クォータインナパネル3の上側縦壁部3aが、ほぼ鉛直方向に沿って延びるため、車両上下方向の荷重に対して、より強い構造を得ることが可能となる。また、リアピラーインナリンフォースメント20が車両外側に湾曲することにより、バックドア開口部5の開口幅を、広く設定することが可能となり、幅広の荷物等を容易に入れることもできる。また、当該外側膨出部29をサイドボディアウタパネル1と間隔を空けて配置されるため、すなわち、車両上下方向に延びる空間を有する断面構造を得られる。これにより、車両上下方向の荷重に対して、より強い構造を得ることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のリアピラーインナリンフォースメント20の前部及び後部のそれぞれには、上記したように、下前側フランジ部26d(フランジ部)及び下後側フランジ部28d(フランジ部)が設けられている。さらに、クォータインナパネル3の車幅方向外側には、
図2及び
図7に示すように、ハット形状の断面を有するリアピラーアウタリンフォースメント30が設けられている。リアピラーアウタリンフォースメント30と、クォータインナパネル3と、リアピラーインナリンフォースメント20のフランジ部とは、重なった状態で接合されている。
【0044】
詳細には、
図7に示すように、リアピラーアウタリンフォースメント30は、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置される前壁31と後壁33とを有し、さらに、前壁31及び後壁33の車幅方向外側端を繋ぐ外壁35と、を有する。また、前壁31の車幅方向内側端には、車両前方に突出する前フランジ32が設けられ、後壁33の車幅方向内側端には、車両後方に突出する後フランジ34が設けられている。前フランジ32と、クォータインナパネル3と、下前側フランジ部26dとは、3枚重ねで、スポット溶接により接合されている。また、後フランジ34と、クォータインナパネル3と、下後側フランジ部28dとは、3枚重ねで、スポット溶接により接合されている。
【0045】
上記のようにリアピラーアウタリンフォースメント30を設けることにより、クォータインナパネル3の車幅方向外側に変形する(動く)モードを抑制することが可能となる。その結果、ロードノイズをさらに低減することができる。さらに、リアショックアブソーバは、平面視において、リアピラーインナリンフォースメント20及びリアピラーアウタリンフォースメント30により、取り囲まれるように構成される。その結果、車両上下方向の荷重に対して、より強い構造を得ることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、上前側傾斜部25と下前側縦部26とは、上方から下方に向かって連続するように形成されている。また、上前側傾斜部25には、内側面25b及び前面25cにより稜線が形成され、下前側縦部26には、内側面26b及び前面26cにより稜線が形成されており、これらの稜線は、連続するように形成されている。同様に、上後側傾斜部27と下後側縦部28とは、上方から下方に向かって連続するように形成されている。また、上後側傾斜部27には、内側面27b及び前面27cにより稜線が形成され、下後側縦部28には、内側面28b及び前面28cにより稜線が形成されており、これらの稜線は、連続するように形成されている。このように、連続する稜線を、リアピラーインナリンフォースメント20の前部及び後部に設けることにより、車両上下方向の荷重を効果的に伝達することが可能である。
【0047】
また、本実施形態では、上記したように、シートバックストライカリンフォースメント38が、クォータインナパネル3の車幅方向内側面に設けられている。シートバックストライカリンフォースメント38は、車両前後方向に延びており、この例では、車両下方に向かうに従いやや車両下方に傾斜している。また、シートバックストライカリンフォースメント38は、リアピラーインナリンフォースメント20よりも車両前方側に配置され、クォータインナパネル3にスポット溶接により接合されている。
【0048】
また、シートバックストライカリンフォースメント38は、リアピラーインナリンフォースメント20の前部の下前側フランジ部26d(フランジ部)と、ホイールハウス部10の上部と、サイドボディアウタパネル1とを繋いでいる。
【0049】
詳細には、シートバックストライカリンフォースメント38の前部は、リアサイドドア開口部2の後部に位置するクォータインナパネル3に接合されている。また、シートバックストライカリンフォースメント38の前部は、クォータインナパネル3を介して、サイドボディアウタパネル1に重なって配置されている。なお、シートバックストライカリンフォースメント38の前部、クォータインナパネル3及びサイドボディアウタパネル1を、3枚重ねでスポット溶接により接合してもよい。
【0050】
また、シートバックストライカリンフォースメント38の後部における上部は、下前側フランジ部26dに接合されている。この例では、シートバックストライカリンフォースメント38の後部における上部は、クォータインナパネル3を介して、下前側フランジ部26dに3枚重ねで、スポット溶接により接合されている。また、ストライカリンフォースメントの後部における下部は、ホイールハウス部10の上部に位置する接合部に接合されている。例えば、シートバックストライカリンフォースメント38の後部における下部は、ホイールハウスインナパネル12の上部における内側面に、スポット溶接により接合されている。
【0051】
上記のようにシートバックストライカリンフォースメント38を設けることにより、リアピラーインナリンフォースメント20よりも車両前方側において、クォータインナパネル3の変形をさらに抑制することが可能となる。その結果、クォータインナパネル3の動くモードは、さらに抑えられ、ロードノイズも、低減される。さらに、シートバックストライカリンフォースメント38が剛性の高い構造体であるリアピラーインナリンフォースメント20及びホイールハウス部10に接続されるため、シートバックをより強固に支持することができる。
【0052】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0053】
本実施形態では、リアピラーインナリンフォースメント20に上側開口部21及び下側開口部22を設けているがこれに限らない。上側開口部21及び下側開口部22を設けずに、連結部23の上下方向長さを、
図1の構造よりも長く設定してもよい。また、上前端フランジ部25a及び上後端フランジ部27aを、上側傾斜部6aの傾斜方向に沿って延長して1つの上端フランジを構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 サイドボディアウタパネル
2 リアサイドドア開口部
3 クォータインナパネル
3a 上側縦壁部
5 バックドア開口部
6 リアピラー部(ピラー部)
6a 上側傾斜部
6b 縦部
6c 屈曲部
8 サイドメンバ
10 ホイールハウス部
11 ホイールハウスアウタパネル
12 ホイールハウスインナパネル
13 内側膨出部
14 アブソーバ取付部
14a 凹部
14b 取付面
15 内側縦壁部
20 リアピラーインナリンフォースメント(インナリンフォースメント)
21 上側開口部
22 下側開口部
23 連結部
24 下側フランジ部
25 上前側傾斜部
25a 上前端フランジ部
25b 内側面
25c 前面
25d 上前側フランジ部
25e 前端フランジ
26 下前側縦部
26b 内側面
26c 前面
26d 下前側フランジ部
27 上後側傾斜部
27a 上後端フランジ部
27b 内側面
27c 後面
27d 上後側フランジ部
28 下後側縦部
28b 内側面
28c 後面
28d 下後側フランジ部
29 外側膨出部(膨出部)
30 リアピラーアウタリンフォースメント
31 前壁
32 前フランジ
33 後壁
34 後フランジ
35 外壁
38 シートバックストライカリンフォースメント