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特開2023-108486転写シート製作用のキャリーシート、転写シート用パウダー付着器、転写シート製作器具セット及これらを用いた転写シート製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108486
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】転写シート製作用のキャリーシート、転写シート用パウダー付着器、転写シート製作器具セット及これらを用いた転写シート製作方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20230728BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20230728BHJP
   B65H 3/46 20060101ALI20230728BHJP
   B41J 13/10 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B65H5/00 P
B44C1/17 B
B65H3/46 B
B41J13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009636
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】515291166
【氏名又は名称】株式会社クイックアート
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】飛山 達哉
【テーマコード(参考)】
2C059
3B005
3F101
3F343
【Fターム(参考)】
2C059DD30
3B005EB03
3F101LA07
3F101LA15
3F101LB03
3F101LB08
3F343FA02
3F343FB04
3F343FC03
3F343MA03
3F343MA15
3F343MA33
(57)【要約】
【課題】 一般家庭で普及している市販のインクジェットプリンタなどのプリンタを用いて転写シートを製作する手段を提供する。
【解決手段】 枚葉印刷形のプリンタによってカット紙に画像を印刷して形成される転写シート製作用のキャリーシートであって、前記カット紙(P)を載置して前記プリンタに挿入され、ピックアップ手段によって前記プリンタに引き込まれる可撓姓を有するキャリーシート本体(11)と、このキャリーシート本体の送り方向前方側に設けられ、前記カット紙の前端の位置決めを行って係止する第一の係止手段(12)と、前記キャリーシート本体の前端に形成され、前記プリンタの用紙センサが検知できるセンサ検知部(13)とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉印刷形のプリンタによってカット紙に画像を印刷して形成される転写シート製作用のキャリーシートであって、
前記カット紙(P)を載置して前記プリンタに挿入され、ピックアップ手段によって前記プリンタに引き込まれる可撓姓を有するキャリーシート本体(11)と、
このキャリーシート本体の送り方向前方側に設けられ、前記カット紙の前端の位置決めを行って係止する第一の係止手段(12)と、
前記キャリーシート本体の前端に形成され、前記プリンタの用紙センサが検知できるセンサ検知部(13)と、
を有することを特徴とする転写シート製作用のキャリーシート。
【請求項2】
前記キャリーシート本体(11)の送り方向後方に形成され、前記プリンタの印刷部での印刷が終了するまで前記プリンタの用紙送り部との係合状態を保持するための後部余白とを有することを特徴とする請求項1に記載の転写シート製作用のキャリーシート。
【請求項3】
前記キャリーシート本体の両側に形成され、前記カット紙の左右端縁と係合して、印刷中における前記カット紙の左右方向への位置ずれを抑制する第二の係止手段(14)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の転写シート製作用のキャリーシート。
【請求項4】
前記第一の係止手段(12)が、前記キャリーシート本体の前端に取り付けられシート状の挟持部材(121)で、
この挟持部材は、後端縁(121a)側から前記カット紙の前端(Pa)を前記キャリーシート本体と前記挟持部材との間に挿入できるように、かつ、前端縁(121b)が前記キャリーシート本体(11)の前端縁(11b)に沿うように前記キャリーシート本体に取り付けられ、前記挟持部材と前記キャリーシート本体との境界部分は、前記カット紙の前端が当接することで前記キャリーシート本体における前記カット紙の前後方向の位置決めを行う位置決め部(16a)として形成されていること、
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の転写シート製作用のキャリーシート。
【請求項5】
前記第二の係止手段は、前記キャリーシート本体の左右端に取り付けられシート状の挟持部材(14)で、この挟持部材は、前記カット紙の左右の端縁を前記キャリーシート本体と前記挟持部材との間に挿入できるものであることを特徴とする請求項4に記載の転写シート製作用のキャリーシート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の転写シート製作用のキャリーシートを用い、プリンタによって画像が形成されたカット紙に熱溶融性のパウダーを付着させて転写シートを形成するためのパウダー付着器であって、
内周面に沿って画像が形成された前記カット紙をセットする筒体と、
この筒体の底部に設けられ、余剰の前記パウダーを回収するためのパウダー回収部と、
を有するパウダー付着器。
【請求項7】
前記筒体が透明又は半透明な部材から形成されていることを特徴とする請求項6に記載のパウダー付着器。
【請求項8】
前記パウダー回収部が前記筒体の底部に対して着脱自在であることを特徴とする請求項6又は7に記載のパウダー付着器。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の転写シート製作用のキャリーシートと請求項6~8のいずれかに記載のパウダー付着器とを有することを特徴とする転写シート製作器具セット。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の転写シート製作用のキャリーシートと、枚葉印刷形のプリンタと、カット紙とを準備し、
前記転写シート用キャリーシートの所定位置に位置決めして前記カット紙を載置・仮固定し、
前記転写シート用キャリーシートの前端を前記プリンタの用紙挿入部に挿入し、
前記プリンタによる印刷を開始して前記転写用キャリーシートを送りつつ前記カット紙に画像を形成し、
印刷終了後に前記プリンタから搬出された前記転写シート用キャリーシートから前記カット紙を取り出すこと、
を特徴とする転写シートの製作方法。
【請求項11】
請求項9に記載の転写シート製作器具セットと、枚葉印刷形のプリンタと、カット紙とを準備し、熱溶融性のパウダーとを準備し、
前記転写シート用キャリーシートの所定位置に位置決めして前記カット紙を載置・仮固定し、
前記転写シート用キャリーシートの前端を前記プリンタの用紙挿入部に挿入し、
前記プリンタによる印刷を開始して前記転写用キャリーシートを送りつつ前記カット紙に画像を形成し、
印刷終了後に前記プリンタから搬出された前記転写シート用キャリーシートから前記カット紙を取り出し、
画像が形成された前記カット紙をパウダー付着器のドラムの内周面にセットし、
前記パウダー付着器内に熱溶融性のパウダーを投入し、前記パウダー付着器を回転させて前記画像に前記パウダーを付着させること、
を特徴とする転写シートの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地などの被転写体に画像を転写する転写印刷に用いられる転写シートの製作に関し、枚葉印刷形のプリンタを用いてカット紙に画像を印刷する際に使用する転写シート用のキャリーシート、前記カット紙の画像部分にパウダーを付着させるためのパウダー付着器、前記転写シート用のキャリーシートと前記パウダー付着器とを有する転写シート製作器具セット及びこれらを用いた転写シート製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を形成した転写シートを布地等の被転写体に重ね合わせ、加熱加圧することで前記画像を前記被転写体に転写する転写印刷方法(昇華転写印刷方法を含む)が知られている。
また、この種の転写印刷方法としては、基材の表面に剥離層が形成されたシートに画像を印刷するとともに、熱溶融性のパウダーを前記画像に付着させて転写シートを形成し、この転写シートを被転写体に加熱加圧して転写する方法も知られている。
【0003】
最近では、DTF(Direct to Film)プリンタと称されるプリンタの普及が進んでいる。DTFプリンタは、転写フィルムに画像を印刷してTシャツなどに転写印刷するための転写シートを製作するもので、ロール状に巻回した転写フィルムを送りながら画像を連続して印刷し、前記画像に熱溶融性のパウダーを付着させて転写シートを製作できるものである(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】DTFプリンタを紹介するIMAGE MAGIC社のHP https://imagemagic.jp/ceoblog/dtf%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%EF%BC%88dtts%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%EF%BC%89trans-jet-%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E9%96%8B/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般にDTFプリンタは、ロール状のフィルムを連続的に送りながら転写シートを形成するものであり、枚葉のシート、つまりA4サイズやA3サイズといったカット紙(フィルム)を用いた転写シートの形成には適さないという問題がある。また、DTFプリンタは転写シート形成用の専門機器であり、高価かつ大型であるため、一般家庭での導入は極めて困難であるという問題がある。
【0006】
一般家庭で普及している市販のインクジェットプリンタなどのプリンタを用いて転写シートを形成したいという要望がある。
ここで図7は、市販のインクジェットプリンタにおけるカット紙を送る用紙送り機構の概略図である。プリンタPの背後の給紙トレイP4に載置されたカット紙Cは、プリンタPの後部に設けられたピックアップローラP3によってその前端からプリンタP内へ引き込まれ、用紙送りローラP2によって印刷部P1に送られる。そして、用紙送りローラP2によるカット紙Cの前後方向(図7の紙面の左右方向)の送りと印刷部P1の左右方向(同紙面に直交する方向)の移動とによって、カット紙Cの表面に画像が印刷される。符号P5はプリンタPの左右方向に配列された複数の小歯車である。
以上の手順で画像印刷が終了したカット紙Cは、用紙排出口Paから搬出トレイPtに排出される。このような従来のプリンタPが有する問題点は以下のとおりである。
1.転写シート用のカット紙(フィルム)の表面には、インクによる画像形成を可能にするための樹脂層が形成されている。そのため、カット紙への画像形成(印刷)を繰り返すと、プリンタの給紙部に設けられたピックアップローラの表面に樹脂が付着し、滑ってカット紙を引き込めなくなるという問題がある。
2.インクジェットプリンタなどのプリンタPにおいては、印刷時にカット紙Cを真っすぐに送る必要があるため、カット紙Cの印刷面に当接する複数の小歯車P5を、カット紙Cの幅方向に一定間隔で配置し、この小歯車P5でカット紙Cの真っすぐな送りを補助するようにしているものが多い。しかし、印刷されたカット紙Cの画像形成部分がこの小歯車P5の下を通るため、乾きにくいインクを使用した場合やインクが乾きにくいカット紙Cを用いた場合、小歯車P5の跡がカット紙Cに付着してしまうという問題がある。
このような問題を解決するためには、印刷部P1よりも前方に配置された小歯車P5を除去すればよいが、小歯車P5を除去すると、カット紙Cを真っすぐに送ることができなくなるという問題がある。
3.市販のプリンタを用いた転写シートの形成では、画像を形成した後にカット紙をプリンタから取り出し、カット紙の画像部分に熱溶融性のパウダーを付着させるが、画像部分以外から余分のパウダーをはたき落とす際に前記パウダーが周辺に飛び散るという問題がある。
本発明は、これらの問題を解決することのできる転写シート用キャリーシート、転写シート用パウダー付着器、転写シート製作セット及これらを用いた転写シート製作方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1及び第2の問題を解決するために本発明の発明者は、カット紙であってもキャリーシートを介在させることで、市販の枚葉印刷形のプリンタを使って転写シートを形成できることを見出した。
具体的に請求項1に記載の発明は、枚葉印刷形のプリンタによってカット紙に画像を印刷して形成される転写シート製作用のキャリーシートであって、前記カット紙(P)を載置して前記プリンタに挿入され、ピックアップ手段によって前記プリンタに引き込まれる可撓姓を有するキャリーシート本体(11)と、このキャリーシート本体の送り方向前方側に設けられ、前記カット紙の前端の位置決めを行って係止する第一の係止手段(12)と、前記キャリーシート本体の前端に形成され、前記プリンタの用紙センサが検知できるセンサ検知部(13)とを有する構成としてある。
【0008】
このように、市販のインクジェットプリンタなどのプリンタであっても、ピックアップローラなど前記プリンタに設けられたピックアップ手段でプリンタ内に引き込むことができるキャリーシートを用いれば、カット紙に転写シート用の画像を印刷することが可能になる。また、前記キャリーシートを用いることで、小歯車を用いなくてもカット紙を真っすぐに送ることが可能になる。
請求項2に記載するように、前記キャリーシート本体(11)の送り方向後方に、所定長さの後部余白を形成するとよい。
この後部余白は、前記プリンタの印刷部で印刷が終了するまで、前記プリンタの用紙送りローラなど用紙送り部とキャリーシートとの係合状態を維持して、印刷終了までカット紙を真っすぐに送ることができるようにするためのものである。
請求項3に記載するように、前記キャリーシート本体の両側に形成され、前記カット紙の左右端縁と係合して、印刷中における前記カット紙の左右方向への位置ずれを抑制する第二の係止手段(14)を有する構成としてもよい。このような第二の係止手段を設けることで、第一の係止手段との協働により、より安定的にカット紙をキャリーシートに保持させることが可能になり、印刷時などに外力が付与されてもカット紙がキャリーシートに対して位置ずれするという不具合を効果的に防止できる。
【0009】
請求項4に記載するように、前記第一の係止手段は、前記キャリーシート本体の前端に設けられ、前記カット紙の前端を挟み込むシート状の挟持部材とするとよい。そして、前記挟持部材は、後端縁(121a)側から前記カット紙の前端(Pa)を前記キャリーシート本体と前記挟持部材との間に挿入できるように、前端縁(121b)が前記キャリーシート本体(11)の前端縁(11b)に沿うように前記キャリーシート本体に取り付けられ、かつ、前記挟持部材と前記キャリーシート本体との境界部分が、前記カット紙の前端が当接することで前記キャリーシート本体における前記カット紙の前後方向の位置決めを行う位置決め部(16a)として形成されているように構成するとよい。
このように構成することで、前記カット紙を挟持部材とキャリーシート本体との間に差し込むだけで、前記カット紙を前記キャリーシート本体へ簡単に仮固定することが可能になる。
第二の係止手段についても、請求項5に記載するように、前記キャリーシート本体の左右端に取り付けられシート状の挟持部材(14)で、この挟持部材は、前記カット紙の左右の端縁を前記キャリーシート本体と前記挟持部材との間に挿入できるように構成するとよい。
このように構成することで、前記カット紙を挟持部材とキャリーシート本体との間に差し込むだけで、前記カット紙の左右の位置ずれを抑制することができる。
【0010】
上記第3の問題を解決するために、請求項6に記載のパウダー付着器は、上記構成の転写シート用のキャリーシートを用いてプリンタによって画像が形成されたカット紙に熱溶融性のパウダーを付着させるためのパウダー付着器であって、内周面に沿って画像が形成された前記カット紙をセットする筒体と、この筒体の底部に設けられ、余剰の前記パウダーを回収するためのパウダー回収部とを有する構成としてある。請求項7に記載するように、前記筒体は透明又は半透明な部材から形成するとよい。
このパウダー付着器を用いれば、筒状のドラムの内周面に画像が印刷された前記カット紙をセットし、パウダーを前記ドラム内に投入し、前記筒体の回転軸を横にした状態で回転させることで、画像部分に前記パウダーが付着する。次いで前記筒体を立てにして筒体周囲から軽くカット紙を叩くことで、余分なパウダーをドラム底部のパウダー回収部に回収することができる。前記筒体本体を透明又は半透明とすることで、画像部分をドラムの外側から視認しながら、パウダーの付着作業及び除去作業を行うことが容易になる。
【0011】
本発明の転写シート製作器具セットは、請求項9に記載するように上記の転写シート用のキャリーシートとパウダー付着器とを備えるもので、上記の転写シート用キャリーシートを用いて画像印刷を行ったカット紙の画像印刷部分に、上記のパウダー付着器を用いて簡単かつ迅速に必要量のパウダーを付着さることができる。
【0012】
本発明の転写シートの製作方法は、請求項10に記載するように、上記の転写シート製作用のキャリーシートと、枚葉印刷形のプリンタと、カット紙とを準備し、前記転写シート用キャリーシートの所定位置に位置決めして前記カット紙を載置・仮固定し、前記転写シート用キャリーシートの前端を前記プリンタの用紙挿入部に挿入し、前記プリンタによる印刷を開始して前記転写用キャリーシートを送りつつ前記カット紙に画像を形成し、印刷終了後に前記プリンタから搬出された前記転写シート用キャリーシートから前記カット紙を取り出す方法としてある。
また、請求項11に記載の発明は、転写シート製作器具セットと、枚葉印刷形のプリンタと、カット紙とを準備し、熱溶融性のパウダーとを準備し、前記転写シート用キャリーシートの所定位置に位置決めして前記カット紙を載置・仮固定し、前記転写シート用キャリーシートの前端を前記プリンタの用紙挿入部に挿入し、前記プリンタによる印刷を開始して前記転写用キャリーシートを送りつつ前記カット紙に画像を形成し、印刷終了後に前記プリンタから搬出された前記転写シート用キャリーシートから前記カット紙を取り出し、画像が形成された前記カット紙をパウダー付着器のドラムの内周面にセットし、前記パウダー付着器内に熱溶融性のパウダーを投入し、前記パウダー付着器を回転させて前記画像に前記パウダーを付着させる方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般家庭でも広く普及している市販のプリンタを用いて転写シートを製作することが容易になる。
また、用紙を真っすぐ送るための小歯車を取り外しても用紙を真っすぐに送ることが可能なり、印刷の際のカット紙への汚れも付着も大幅に抑制できる。
このように本発明によれば、簡単かつ低コストで、一般の人でも簡単に転写シートを製作することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は本発明の転写シートの製作に用いられるキャリーシートの構成を説明する斜視図、(b)は、挟持部材と印刷部との関係を示す部分断面拡大図、図2は、キャリーシートへのカット紙のセットの手順を説明する斜視図、図3は、キャリーシート1に載置されたカット紙をプリンタで印刷する様子を示す斜視図、図4は、印刷終了後のキャリーシート及びカット紙を示す斜視図である。
なお、以下の説明において「前」と記載するときには、プリンタPによって印刷が行われる際のカット紙Cの送り方向前方を指し、「後」と記載するときには、同後方を指すものとする。
【0015】
キャリーシート1は、A4やA3などのサイズの枚葉の用紙であるカット紙Cを載置するもので、カット紙Cと同様の矩形状に形成され、かつ、カット紙Cより大きく形成されたキャリーシート本体11を主な構成要素とする。
【0016】
[キャリーシート本体11]
キャリーシート本体11の材質や肉厚、色は特に限定されないが、カット紙Cを載置した状態で、ピックアップローラP3(図7参照)などによってキャリーシート本体11をプリンタPの内部に引き込み、画像の印刷を行う印刷部P1へ送り、印刷終了後に用紙排出口Paから排出するという一連の用紙送り動作を、滑りや引っ掛かりなく行うことができるものであること、印刷部P1において載置したカット紙Cの表面に支障なく画像(文字、写真、図形、模様及びこれらの組み合わせを含む)を印刷することができるもの、印刷を繰り返してもピックアップローラP5に樹脂や削れ屑などが容易に付着・積層せず、滑りが生じにくいものであること、などの条件を満たすものを選択する。
【0017】
キャリーシート本体11は、プリンタPの背後に立設された給紙トレイP4からプリンタPに供給できるように、しなやかに撓む性質(可撓性)を有する材料で形成するのが好ましい。例えば、肉厚110μm程度のPETシートを好適に用いることができる。PETシートは安価で汚れが付着しにくく、汚れの除去もしやすいという利点がある。キャリーシート本体11は、このような樹脂シートに限らず、例えば離型紙などの紙シートも用いることができる。
キャリーシート本体11は透明又は半透明でもよいが、プリンタPに設けられた用紙センサで検知できるように着色されたものを用いるのが好ましく、透明又は半透明の樹脂シートを用いる場合は、キャリーシート本体11の前端部分を着色するか、前記用紙センサで検知可能なテープを貼付するなどしたセンサ検知部18を設けるとよい。
【0018】
[カット紙載置部17]
キャリーシート本体11の表面には、カット紙Cが載置されるカット紙載置部17が形成される。このカット紙載置部17は、載置されるカット紙Cと同じ大きさに規定されたキャリーシート本体11の表面の領域であり、例えばJIS規格で定められたA4サイズ用紙やA3サイズ用紙に合わせた大きさである。カット紙載置部17を例えばA3サイズの大きさで規定しておけば、A3サイズの大きさのカット紙Cだけでなく、横向きにすることでA4サイズのカット紙Cの載置も可能である。
カット紙載置部17の前方には第一の係止手段12が設けられ、後方には後部余白15が設けられている。カット紙載置部17の左右両側は、台紙本体11の左右端縁と一致させてもよいし、多少の余白を設けてもよいが、この実施形態では左右両側に第二の係止手段14が設けられている。
【0019】
[第一の係止手段12]
第一の係止手段12は、カット紙Cの前端部分と係合することで画像印刷の際にカット紙Cの位置がずれないようにカット紙Cをキャリーシート本体11に固定するものである。第一の係止手段12は、カット紙Cをキャリーシート本体11のカット紙載置部17に容易に位置合わせして載置することができるとともに、印刷終了後に速やか、かつ、簡単にカット紙Cをキャリーシート本体11から取り出すことができるように構成されている。
この実施形態の第一の係止手段12は、弾性を有する薄肉のシート状の部材から形成され、カット紙Cの前端をキャリーシート本体11の表面に押し付けて挟持する挟持部材121から構成されている。挟持部材121は、キャリーシート本体11と同一又は異なる材質で形成してもよいが、上記したPETシートで形成してもよい。
挟持部材121は、前端縁121bから後方に所定幅の部分を、接着部分121dとしてキャリーシート本体11の表面に接着されているが、後端縁121aまでの残りの部分は非接着部分121cとして形成されている。そして、非接着部分121cを捲り上げることで、キャリーシート本体11の表面と挟持部材121との間に隙間ができ、この隙間にカット紙Cの前端を差し込むことが可能になる。非接着部分121cは、印刷時におけるプリンタP内の他の部材との干渉(引っ掛かり)を避けるために、キャリーシート本体11の表面に沿わせ、かつ、前後方向の幅はカット紙Cを仮固定できる範囲内で可能な限り小さくするのが好ましい。例えば、挟持部材121として110μm程度の肉厚のPETを用いた場合は、5mm前後程度が目安である。
また、カット紙Cの前端縁が接着部分121dと非接着部分121cとの境界部分に当接することでカット紙Cの前端縁が位置決めされるため、前記境界部分の位置は、カット紙載置部17の前端縁となる基準線16aと一致するようにする。
【0020】
[第二の係止手段]
第二の係止手段14は、カット紙載置部17の左右両側を挟持してカット紙Cが左右方向に位置ずれしないように規制するものである。
第二の係止手段14の形成は、例えば、台紙本体11の両側に張り出す張り出し部分を形成し、この張り出し部分を台紙本体11の表面側に折り返すようにしてもよいが、図示の例では、帯状の挟持部材141を台紙本体11の表面に貼り付けている。第一の係止手段12の挟持部材121と同様に、台紙本体11の左右端縁から所定幅を接着部とし、残りを非接着部として、前記非接着部でカット紙Cを挟み込めるようにする。前記接着部と前記非接着部との境界部分は、カット紙載置部17の左右両端と同じ位置とするとよいが、カット紙Cの浮き上がり防止するために、カット紙載置部17の左右両端よりも若干外側に位置させるとよい。
図1(b)に示すように、挟持部材141の非接着部分は、挟持部材121と同様に、印刷時におけるプリンタP内の他の部材(特に左右に移動する印刷部P1)との干渉(引っ掛かり)を避けるために、キャリーシート本体11の表面に沿わせ、かつ、左右方向の幅はカット紙Cを仮固定できる範囲内で可能な限り小さくするのが好ましい。例えば、挟持部材121として110μm程度の肉厚のPETを用いた場合は、5mm前後程度が目安である。
【0021】
[後部余白15]
カット紙Cの後端と一致するカット紙載置部17の後端15aより後方は、後部余白部分15として形成されている。この後部余白15は、図7に示す印刷部P1でカット紙載置部17上のカット紙Cの印刷が行われている間は、常に用紙送りローラP2と台紙本体11との係合状態を維持して、画像印刷の最後までカット紙Cを前後方向に送ることができるようにするためのものである。
【0022】
後部余白15の前後方向の幅L2は、用紙送りローラP2と印刷部P1との距離に依り、プリンタPの機種によって異なるが、3cm~8cm程度、概ね5cm程度前後が目安である。
なお、印刷の際の送り方向の先端になるカット紙Cの前端縁は、プリンタPの印刷部P1による画像印刷の開始位置の基準となるため、基準線16aの位置(寸法L1)は、印刷の開始位置を考慮して、キャリーシート本体11の前端縁11bから予め決定された位置になるように位置決めされる。
【0023】
[キャリーシート1の作用の説明]
上記構成のキャリーシート1を用いて、プリンタPでカット紙Cに画像Caを印刷する手順について説明する。
図2(a)に示すように、転写シート用のカット紙Cを準備する。カット紙Cは例えばJIS規格で定められたA4サイズ用紙やA3サイズ用紙に合わせたものであり、これら規格の用紙の印刷が可能なインクジェットプリンタなど市販のプリンタPで印刷できるものである。プリンタPからは、図7の小歯車P5を予め取り外しておく。
カット紙Cを、台紙1の後方から図2(a)の矢印方向に左右の挟持部材141と台紙本体11との間に差し込み、そのまま前方へ移動させて、カット紙Cの前端縁が接着部分121dと非接着部分121cとの境界部分に当接するまで、カット紙Cの前端を挟持部材121と台紙本体11との間に差し込む。カット紙Cが、挟持部材141や挟持部材121に挟まれて、前進させにくいような場合は、挟持部材141や挟持部材121の非接着部分を僅かに持ち上げるとよい。これにより、カット紙Cの前端縁と左右端縁が位置決めされ、同時にカット紙Cのキャリーシート本体11に対する前後方向及び左右方向の位置が位置決めされる。また、挟持部材121,141により、カット紙Cはキャリーシート本体11に仮固定される。
以上の手順により、図2(b)に示すように、カット紙Cがキャリーシート1のカット紙載置部17に位置決めして載置・仮固定される。
【0024】
次いで、インクジェットプリンタなどの市販のプリンタPを準備し、図2(b)に示すカット紙Cを載置したキャリーシート1をプリンタPの給紙トレイP4(図7参照)にセットする。なお、キャリーシート1上のカット紙Cの所定位置に画像が印刷されるように、印刷に先立ち、カット紙Cの前端縁の位置(すなわち基準線16aの位置(寸法L1))を考慮して、プリンタPの印刷設定を行う。
この状態で印刷を開始させると、キャリーシート1がピックアップローラP3でプリンタP内に引き込まれ、用紙送りローラP2でキャリーシート1が送られながら、印刷部P1でカット紙Cの印刷が行われる。印刷が完了した後は、用紙排出口Paから搬出トレイPtにキャリーシート1が搬出される。そして、キャリーシート本体11から画像Caが印刷されたカット紙Cを取り出す。上記手順で画像Caが形成され、キャリーシート1から取り出されたカット紙Cを図4に示す。
【0025】
[パウダー付着器]
図5はパウダー付着器の一実施形態にかかり、(a)はその構成を説明する斜視図、(b)はパウダー付着器の接合部にカット紙Cの端部を係合させた状態を示す部分拡大断面図、図6は、パウダー付着器の他の実施形態を示す分解斜視図である。
パウダー付着器2は、筒状の筒体21と、この筒体21の一端に設けられた底部22と、筒体21の他端に開口し、画像Caが形成されたカット紙Cを挿入するための開口部23とを有する。開口部23には、パウダーの付着作業中にパウダーが飛散しないように、蓋をするようにするとよい。
また、筒体21や底部22,開口部23に取り付ける前記蓋は、画像Caに対するパウダーの流れを視認できるように、透明な材料で形成するのが好ましい。
カット紙Cは、筒体21の内周面に沿うように筒体21内にセットされる。セットの手段は特に限定せず、磁石や接着テープを用いてもよい。この実施形態では、図5に示すように、平板を丸めて筒体21を形成し、平板の両端に形成されたフック26a,26bを、図5(b)に示すように係合させて接合部26とし、この接合部26のフック26a,26bの間にカット紙Cの一端縁を差し込むようにしてもよい。この場合、カット紙Cの他端は磁石や接着テープなどで筒体21の内周面に仮固定する。
この後、開口部23から熱溶融性のパウダー(図示せず)を投入し、筒体21を横(図5(a)に示す状態)にして、パウダーをカット紙Cの幅方向に拡げた後、パウダーがカット紙Cの画像Caの全体にまんべんなく拡がるように、筒体21を回転させる。
以上の手順で画像Caにパウダーを均等かつ十分に付着させた後は、筒体21を立てにして、筒体21の外側から軽くカット紙Cを叩いて余剰なパウダーを底部22に落下させる。筒体21から取り出されたカット紙Cは、画像Caにパウダーが薄く付着したものである。以上の手順で製作された転写シートを次の転写工程へ送ることで、布地などの被転写体に画像を転写することができる。
【0026】
図6にパウダー付着器の別の実施形態を示す。
この実施形態のパウダー付着器2′は、筒体21′の両端の一方に開口部23′に底部部材22′が着脱自在に取り付けられ、他方の開口部23′に蓋体24′が着脱自在に取り付けられるようになっている。
このように構成すれば、カット紙Cから余分なパウダーを底部部材22′又は蓋体24′に集めた後、底部部材22′又は蓋体24′を筒体21′から外すことで、簡単に余分なパウダーを回収することができる。
【0027】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明により限定されるものではない。
例えば、上記の説明で第一の係止手段12及び第二の係止手段14は各々挟持部材121,141によって形成されているものとして説明したが、印刷部P1などと干渉(引っ掛かり)なく、かつ、カット紙Cをキャリアシート1に対して位置決めして仮固定でき、簡単に着脱できるのであれば、第一の係止手段12及び第二の係止手段14はこれらの構成に限られない。
また、寸法L1,L2や接着部・非接着部の幅として具体的な数値を挙げたが、これらは一例であり、カット紙Cの大きさやプリンタPの機種・大きさなどの条件によって、適宜に設定されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のキャリーシート及びパウダー付着器は、転写シート製作器具セットとして、被服やタオル、幟、旗などの布地への転写のほか、陶器やガラス、金属などあらゆる被転写体への転写に使用される転写シートの製作に適用が可能である。また本発明のキャリーシートは、昇華転写印刷用の転写シートの製作にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は本発明の転写シートの製作に用いられるキャリーシートの構成を説明する斜視図、(b)は、挟持部材と印刷部との関係を示す部分断面拡大図である。
図2】キャリーシートへのカット紙のセットの手順を説明する斜視図である。
図3】キャリーシートに載置されたカット紙をプリンタで印刷する様子を示す斜視図である。
図4】印刷終了後のキャリーシート及びカット紙を示す斜視図である。
図5】パウダー付着器の一実施形態にかかり、(a)はその構成を説明する斜視図、(b)はパウダー付着器の接合部にカット紙Cの端部を係合させた状態を示す部分拡大断面図である。
図6】パウダー付着器の他の実施形態を示す分解斜視図である。
図7】市販のインクジェットプリンタにおけるカット紙を送る用紙送り機構の概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 キャリーシート
11 キャリーシート本体
12 第一の係止手段
121 挟持部材
121a 後端縁
121b 前端縁
121c 非接着部分
121d 接着部分
14 第二の係止手段
141 挟持部材」
15 後部余白
15a カット紙の後端
16a 基準線
17 カット紙載置部
2,2′ パウダー付着器
21,21′ 筒体
22 底部
22′ 底部部材
23,23′ 開口部
24′ 蓋部材
26 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7