(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109139
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット材、ターゲットアセンブリおよびターゲットアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230731BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20230731BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C23C14/34 B
B23K20/12 360
B23K15/00 505
C23C14/34 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140622
(22)【出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】2022100917443
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520269525
【氏名又は名称】浙江最成半導体科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】大岩一彦
(72)【発明者】
【氏名】山田浩
(72)【発明者】
【氏名】姚科科
【テーマコード(参考)】
4E066
4E167
4K029
【Fターム(参考)】
4E066CA11
4E066CB09
4E066CB10
4E167AA06
4E167AA08
4E167BG12
4E167BG25
4E167BG35
4E167CC04
4K029CA05
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC12
4K029DC21
4K029DC22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バックプレートリング、フロントリングおよびスパッタリングターゲットの結合強度が高いスパッタリングターゲット、ターゲットアセンブリおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ターゲット本体1の側面は横方向に凸の環状凸部2を形成しており;ターゲット本体1の正面側は環状凸部2の正面側に対して凸であり、ターゲット本体1の背側は環状凸部2の背面に対して凸状である、スパッタリングターゲット材と、環状凸部2の背面に設けられたバックプレートリング3とからなることを特徴とするターゲットアセンブリである。ターゲットアセンブリの製作方法は、環状凸部2をバックプレートリング3に溶接する工程と、溶接ヘッド5をバックプレートリング3の背面から外側に近い側から、環状凸部2に接触または入るまで挿入し、溶接工程中に溶接ヘッド5をバックプレートリング3の内周面に向かって徐々に移動させる工程を含むことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット材本体(1)からなることを特徴とするスパッタリングターゲット材。
ターゲット本体(1)の側面は横方向に凸の環状凸部(2)を形成しており;
ターゲット本体(1)の正面側は環状凸部2の正面側に対して凸であり、ターゲット本体(1)の背側は環状凸部(2)の背面に対して凸状である。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタリングターゲット材と、環状凸部(2)の背面に設けられたバックプレートリング(3)とからなることを特徴とするターゲットアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載のターゲットアセンブリであり、前記バックプレートリング(3)の外周面は、前記環状凸部(2)の外周面と同一円筒面上にあって、
バックプレートリング(3)の背面は、ターゲット本体(1)の背面と面一であって、
バックプレートリング(3)の内周面は、環状凸部(2)の背面側にあるターゲット本体(1)の外周面に適合していることを特徴とする。
【請求項4】
請求項2または3に記載のターゲットアセンブリであって、前記ターゲットアセンブリは、前記環状凸部(2)の正面側に設けられたフロントリング(4)をさらに備えることを特徴とする。
【請求項5】
フロントリング(4)の外側が環状凸部(2)の外側と同一平面上にあることを特徴とする請求項4に記載のターゲットアセンブリ、
ターゲット本体(1)の正面がフロントリング(4)の正面と面一であるか、またはターゲット本体(1)の正面がフロントリング(4)の正面に対して突出していること。
フロントリング(4)の内周面は、環状突起(2)の前方でターゲット本体(1)の外周面に適合している。
【請求項6】
請求項4に記載のターゲットアセンブリであって、フロントリング(4)の材料は、バックプレートリング(3)の材料と同じであることを特徴とする。
【請求項7】
請求項2または3記載のターゲットアセンブリの製作方法であって、環状凸部(2)をバックプレートリング(3)に溶接する工程と、溶接ヘッドをバックプレートリング(3)の背面から外側に近い側から、環状凸部(2)に接触または入るまで挿入し、溶接工程中に溶接ヘッドをバックプレートリング(3)の内周面に向かって徐々に移動させる工程を含むことを特徴とする。
【請求項8】
請求項4に記載のターゲット組立品の製作方法であって、環状凸部(2)をバックプレートリング(3)およびフロントリング(4)に接する工程と、溶接ヘッドをバックプレートリング(3)の外面付近からフロントリング(4)に接触または入るまで挿入し、溶接工程中に溶接ヘッドをバックプレートリング(3)の内周面側に徐々に移動させることを含むことを特徴とする。
【請求項9】
請求項7に記載のターゲット組立品の製造方法であって、前記溶接接合は、攪拌摩擦接合または電子ビーム接合により行うことを特徴とする。
【請求項10】
請求項7に記載のターゲットアセンブリの製造方法であって、溶接ヘッドは、ターゲット本体(1)に接触するまでバックプレートリング(3)の内側に向かって徐々に移動し、その後、溶接ヘッドの挿入深さを徐々に小さくしながらターゲット本体(1)に向かって移動を続けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲット材の技術分野に関し、具体的には、スパッタリングターゲット材、ターゲットアセンブリおよびターゲットアセンブリの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バックプレートとスパッタリングターゲット材が一体成形されたターゲットアッセンブリでは、バックプレートが高純度材料で構成されているため、バックプレートが設計上や使用上の必要な強度にならない。 バックプレートにほかの合金材料を設けることで、バックプレートの強度を高めることができる。
【0003】
先行技術では、ターゲット材とバックプレートとの接合は、攪拌摩擦溶接(FSW)、電子ビーム溶接(EBW)などにより行われている。例えば、特許CN 111660003 AおよびCN 111496366 Aには、上記のような接合方法が開示されている。
【0004】
特許CN 113529030 Aは、ターゲットアセンブリおよびその製造方法を開示し、ターゲットアセンブリは、ターゲット材およびバックプレートを含み、バックプレートはターゲット材の外周部に設けられ、ターゲット材のスパッタリング面はバックプレートの前端に対して突出する。
【0005】
その製造方法は下記のステップを含む:バックプレートがターゲット材の外周に位置するようにターゲット材の外周をバックプレートに接合する、ターゲット材の外周とバックプレートとの接合の中心線からバックプレート側に向けて溶接用のドリルビットを所定距離オフセットし、ターゲット材の外周をバックプレートに溶接する。
【0006】
この溶接技術は、溶接面積は狭く、溶接場所は主にターゲット材本体に集中し、ターゲット材本体の結晶相構造や結晶粒径に影響を与え、溶接面積が小さいため、溶接結合強度はまださらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠点に対応し、スパッタリングに使用するターゲット材本体へのダメージが少なく、ターゲット材本体のスパッタリング部の結晶相構造、結晶粒径等の物理的・化学的状態や特性に影響を与えず、溶接部は主にアバットメントフランジとの固定接続に使用する接続部で、溶接面が大きく、バックプレートリング、フロントリングおよびスパッタリングターゲットの結合強度が高いスパッタリングターゲット、ターゲットアセンブリおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的な技術的解決策は以下の通りである。
ターゲット材本体からなるスパッタリングターゲット材であって
ターゲット材本体は、側面に凸の環状凸部を形成しており
ターゲット材本体の正面側は環状凸部の正面側に対して凸であり、ターゲット材の背面側は環状凸部の背面側に対して凸であることを特徴とする。
【0009】
本発明のスパッタリングターゲット材の環状凸部は、バックプレートリング、あるいはバックプレートリングとフロントリングを溶接して全体を高強度接続部としてアバットメントフランジと固定的に接続することが可能である。
【0010】
本発明では、ターゲット材本体の正面側がスパッタリング用の面であり、ターゲット材本体の背面側がスパッタリング用の面とは反対側の面である。 環状凸部は、ターゲット材本体の正面と背面側の間に位置し、正面側はターゲット材本体のスパッタリング面に比較的近い側であり、背面側は環状凸部の正面側と反対側でターゲット材本体の背面側に比較的近い側である。
【0011】
また、本発明は、前記スパッタリングターゲットの上記形状構造に基づき、前記スパッタリングターゲット材と、前記環状凸部の背面側に設けられたバックプレートリングとを備えるターゲットアセンブリを提供し、アバットメントフランジとの接合強度を向上させることができる。
【0012】
バックプレートリングは、より確実にアバットメントフランジに装着できるよう、強度を向上させるためにスパッタリングターゲット材料とは異なる合金で作られることが好ましい。
【0013】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、前記バックプレートリングの外周面が前記環状凸部の外周面と面一である。
【0014】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、前記バックプレートリングの背面が前記ターゲット材本体の背面と面一である。
【0015】
本発明において、バックプレートリングの正面とは、環状凸部の背面に接する面を指し、バックプレートリングの正面と反対側の面は、バックプレートリングの背面である。
【0016】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリのバックプレートリングの内側面が、前記環状凸部の背後に位置する前記ターゲット材本体の外側面と対向している。
【0017】
前記ターゲットアセンブリは、前記環状凸部の正面側に設けられたフロントリングを含んでもよい。
【0018】
本発明において、環状凸部が位置する位置は、アバットメントフランジに固定接続するための位置であり、その接続は、パンチングボルトによる固定接続であってもよい。
【0019】
フロントリングとバックプレートリングを同時にセットすることで、相乗的な強度補充の役割を果たすことができるため、ターゲットアセンブリとアバットメントフランジの接続部分が高強度の一体部品を形成し、ターゲットアセンブリとアバットメントフランジの接続強度をさらに向上させることができる。
【0020】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、前記フロントリングの外周側が前記環状凸部の外周側と面一である。
【0021】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、前記ターゲット本体の正面が前記フロントリングの正面と面一であるか、または前記ターゲット材本体の正面が前記フロントリングの正面に対して突出していることを特徴とする。
【0022】
本発明において、フロントリングの背面とは、環状凸部の正面に接する面を指し、フロントリングの背面に対向する面をフロントリングの正側とする。
【0023】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、フロントリングの内側面が、環状突起の前にあるターゲット材本体の外側面に対向する。
【0024】
好ましくは、前記ターゲットアセンブリは、前記フロントリングの材料が前記バックプレートリングの材料と同じであり、ターゲットアセンブリの連結部の強度をさらに向上させることができる。
【0025】
また、本発明は、前記ターゲットアセンブリの製造方法を提供し、溶接部は環状凸部(アバットメントフランジとの固定接続に用いる接続部)に集中し、スパッタリングに用いるターゲット材本体の損傷が小さく、ターゲット本体の結晶相構造、結晶粒径等のスパッタリング部の物理的・化学的状態・性質に影響を与えず、溶接面が大きく、バックプレートリング、フロントリング及びスパッタリングターゲットの結合強度が高くなる。
【0026】
本発明で説明するターゲットアセンブリの製造方法は、攪拌摩擦溶接や電子ビーム溶接などの手段で溶接することができる。
本発明に記載のターゲット材の製造方法においては、溶接工程中に溶接ヘッドがターゲット材本体に接触するまでバックプレートリングの内側に向かって徐々に移動し、その後、溶接ヘッドの挿入深さを徐々に小さくしながらターゲット本体に向かって移動を続けるので、ターゲット材本体との接合強度をさらに向上させ、ターゲット材本体の結晶相構造や粒径などの物理化学状態や特性への影響を最小限に抑えることができる。
【0027】
また、本発明のターゲットアセンブリは、使用前に切断等により所望の形状、構造にすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明が先行技術に対して有する主な利点は以下の通りである。
本発明は、スパッタリングに使用するターゲット材本体へのダメージが少なく、ターゲット材本体のスパッタリング部の結晶相構造、結晶粒径等の物理的・化学的状態や特性に影響を与えず、溶接部は主にアバットメントフランジとの固定接続に使用する接続部で、溶接面が大きく、バックプレートリング、フロントリングおよびスパッタリングターゲットの結合強度が高いスパッタリングターゲット、ターゲットアセンブリおよびその製造方法を提供する。
【0029】
既存の技術は、通常、スパッタリングターゲットとバックプレート接合溶接で、この溶接方法は、スパッタリングターゲットとバックプレートの接合強度はまだ改善する必要があり、また、溶接面積は狭いので、実際の真空スパッタリングプロセスでは、ガス漏れ、水漏れやその他の問題を起こりやすくなる。
本発明は、スパッタリングターゲット材の環状凸部とバックプレートリング、またはバックプレートリングとフロントリングを一体として溶接成形することで、より強固であり、密閉性がよく、空気漏れ、水漏れなどの問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例1のスパッタリングターゲットの構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例2のターゲットアセンブリの構造、製作工程および製品を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施例3のターゲットアセンブリの構造、製造工程および製品を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を添付図面および具体的な実施例と合わせてさらに説明する。
これらの実施例は、本発明を説明することのみを目的としており、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。 以下の実施例において、特定の条件が示されていない操作方法は、一般的に従来の条件、またはメーカーが推奨される条件に従って行われる。
【実施例0032】
本実施形態は、本発明のスパッタリングターゲット材であり、その構造は
図1に模式的に示すとおりである。
スパッタリングターゲット材は、ターゲット本体1を含む。
ターゲット本体1の側面は横方向に凸の環状凸部2を形成している。
ターゲット本体1の正面側は環状凸部2の正面側に対して凸であり、ターゲット本体1の背面側は環状凸部2の背面側に対して凸である。
ターゲット本体1の厚さをD、環状凸部2の厚さをd1、環状凸部2の背面とターゲット本体1の背面との距離をd2、環状凸部2の幅をSとする。
スパッタリングターゲットの材質は、純アルミニウム、アルミニウム-銅合金、アルミニウム-シリコン合金、銅-シリコン-アルミニウム合金のいずれかを使用することができる。
バックプレートリング3の材質は、A5000系アルミニウム、A6000系アルミニウム、A2000系アルミニウムのいずれかを用いることができる。