IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2023-109508ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器
<>
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図1
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図2
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図3
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図4
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図5
  • 特開-ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109508
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011058
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA02
3E086AC31
3E086AD09
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB71
3E086CA11
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有するガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器を提供すること。
【解決手段】本開示の一側面に係るガスバリア積層体の製造方法は、罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体の製造方法であって、紙基材に罫線部を設ける工程と、罫線部が設けられた紙基材と、ガスバリア層との間に接着性樹脂層を形成する樹脂組成物を押出し、紙基材及びガスバリア層をニップロール並びに冷却ロールにより挟むことで、紙基材及びガスバリア層を貼り合わせる工程と、を備え、ニップロールのショアD硬度が、60度以上80度以下である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体の製造方法であって、
前記紙基材に罫線部を設ける工程と、
前記罫線部が設けられた前記紙基材と、前記ガスバリア層との間に前記接着性樹脂層を形成する樹脂組成物を押出し、前記紙基材及び前記ガスバリア層をニップロール並びに冷却ロールにより挟むことで、前記紙基材及び前記ガスバリア層を貼り合わせる工程と、
を備え、
前記ニップロールのショアD硬度が、60度以上80度以下である、ガスバリア積層体の製造方法。
【請求項2】
罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有し、
前記接着性樹脂層は、前記罫線部に由来する稜線部を含む第一の面と、前記罫線部に由来する溝部を含む第二の面とを有し、
前記接着性樹脂層と前記ガスバリア層との間に、前記稜線部に沿って空隙部が形成されており、
前記稜線部の延在方向に直交する断面において、前記稜線部の終端から前記空隙部の終端までの長さが、2.0mm以下である、ガスバリア積層体。
【請求項3】
罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有し、
前記紙基材は、前記罫線部に由来する稜線部を含む第一の面と、前記罫線部に由来する溝部を含む第二の面とを有し、
前記紙基材と前記接着性樹脂層との間に、前記稜線部に沿って空隙部が形成されており、
前記稜線部の延在方向に直交する断面において、前記稜線部の終端から前記空隙部の終端までの長さが、2.0mm以下である、ガスバリア積層体。
【請求項4】
当該ガスバリア積層体における、面積50cmの円形エリアをそれぞれ測定対象とする酸素透過率の値A1,A2が以下の条件を満たす、請求項2又は3に記載のガスバリア積層体。
A1/A2≦2.0
[式中、A1は、前記円形エリアが前記円形エリアの中心を通る前記罫線部を有し、A2は、前記円形エリアが前記罫線部を有しない。]
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のガスバリア積層体によって構成されている、液体用容器。
【請求項6】
請求項5に記載の液体用容器と、前記容器内に収容される液体と、を備える、液体入り容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材の分野においては、紙を主材とする液体用紙容器が使用されている。特許文献1には、紙基材と、無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムからなるバリア性層と、特定の厚さの接着性樹脂層と、ヒートシール性樹脂層とからなる包装材を製函してなる液体紙容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-171649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙容器に収容される内容物(飲料等)は、酸素等により変質しうる。そのため、このような液体紙容器には、内容物の長期間の保存が可能となるように優れたガスバリア性が求められる。
【0005】
ところで、液体紙容器を構成する包装材には、折り曲げやすくするために罫線部が設けられる。罫線部は、一般的には、包装材をプレス等して設けられる。しかし、包装材をプレスする際に蒸着層にも力が加わるために蒸着層にクラックが生じ、ガスバリア性が低下する傾向があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0006】
また、包装材には、運搬時などに振動が加わった場合にも、ガスバリア性の低下が少ないことが求められる。
【0007】
本開示は、ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有するガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体の製造方法は、罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体の製造方法であって、紙基材に罫線部を設ける工程と、罫線部が設けられた紙基材と、ガスバリア層との間に接着性樹脂層を形成する樹脂組成物を押出し、紙基材及びガスバリア層をニップロール並びに冷却ロールにより挟むことで、紙基材及びガスバリア層を貼り合わせる工程と、を備え、ニップロールのショアD硬度が、60度以上80度以下である。
【0009】
上記製造方法により得られるガスバリア積層体は、ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有する。このような効果が奏される理由を本発明者らは以下のよう推察している。すなわち、上記ガスバリア積層体の製造方法は、蒸着層が無い状態で紙基材に罫線部を設ける。そのため、罫線部を設けることに由来する蒸着層のクラックが生じない。更に、ニップロールのショアD硬度が、60度以上80度以下であることで、ガスバリア層は、罫線部に沿って貼り合わせられる。そのため、罫線部の両端において、紙基材とガスバリア層との間に空隙部が生じにくくなる。空隙部が生じにくくなることで、外部からの力が加わった場合でも、空隙部に起因して生じる剥離が抑制される。その結果、得られるガスバリア積層体は、ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有する。
【0010】
本開示の他の一側面に係るガスバリア積層体は、罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有し、接着性樹脂層は、罫線部に由来する稜線部を含む第一の面と、罫線部に由来する溝部を含む第二の面とを有し、接着性樹脂層とガスバリア層との間に、稜線部に沿って空隙部が形成されており、稜線部の延在方向に直交する断面において、稜線部の終端から空隙部の終端までの長さが、2.0mm以下である。
【0011】
本開示の更に他の一側面に係るガスバリア積層体は、罫線部が設けられた紙基材と、接着性樹脂層と、蒸着層を含むガスバリア層と、をこの順序で備える積層構造を有し、紙基材は、罫線部に由来する稜線部を含む第一の面と、罫線部に由来する溝部を含む第二の面とを有し、紙基材と接着性樹脂層との間に、稜線部に沿って空隙部が形成されており、稜線部の延在方向に直交する断面において、稜線部の終端から空隙部の終端までの長さが、2.0mm以下である。
【0012】
一態様において、ガスバリア積層体における、面積50cmの円形エリアをそれぞれ測定対象とする酸素透過率の値A1,A2が以下の条件を満たす。
A1/A2≦2.0
[式中、A1は、円形エリアが円形エリアの中心を通る罫線部を有し、A2は、円形エリアが罫線部を有しない。]
【0013】
本開示の更に他の一側面に係る液体用容器は、上記ガスバリア積層体によって構成されている。この容器は、ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有する。
【0014】
本開示の更に他の一側面に係る液体入り容器は、上記容器と、上記容器内に収容される液体とを備える。この液体入り容器は、内容物の変質を十分に長期にわたって抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ガスバリア性に優れ、運搬時に振動が加わった場合であっても十分なガスバリア性を有するガスバリア積層体及びその製造方法、液体用容器並びに液体入り容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るガスバリア積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本開示の他の一実施形態に係るガスバリア積層体を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法の一例を示す工程図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法に使用できるラミネート装置の一部を示す模式図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る容器を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る容器を構成するブランクシートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[ガスバリア積層体]
<第一実施形態>
以下、第一実施形態に係るガスバリア積層体(以下、単に「積層体」ともいう)について説明する。図1は、本実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る積層体30は、保護層1と、紙基材2と、接着性樹脂層3と、ガスバリア層4と、シーラント層5と、をこの順序で備える積層構造を有する。ガスバリア層4は、蒸着層4a及びフィルム基材4bからなる。紙基材2は、罫線部11が設けられている。接着性樹脂層3は、罫線部11に由来する稜線部a1を含む第一の面と、罫線部に由来する溝部a2を含む第二の面とを有する。接着性樹脂層3と蒸着層4aとの間に、稜線部a1に沿って空隙部12が形成されている。空隙部12においては、接着性樹脂層3と蒸着層4aとが接していない。積層体30の各構成について説明する。
【0019】
(保護層)
保護層1の材料は、例えばポリエチレン樹脂であってもよい。保護層1がポリエチレン樹脂であることで、得られる容器はリサイクル適性に優れる。ポリエチレン樹脂は、物理的な強度が高く、得られる容器がガスバリア性に一層優れたものとなることから、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンであることが好ましい。このようなポリエチレン樹脂の密度は、0.920g/cm~0.950g/cmであることが好ましく、0.925g/cm~0.945g/cmであることがより好ましい。
【0020】
保護層1の厚さは、得られる容器がガスバリア性に一層優れることから、10~30μmであることが好ましく、15~20μmであることがより好ましい。
【0021】
(紙基材)
紙基材2としては、例えば、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰及び強度等を有する紙を用いることができる。このような紙としては、例えば、強サイズ性の晒又は未晒の紙、純白ロール紙、クラフト紙、板紙及び加工紙を用いることができる。
【0022】
紙基材2の坪量は、得られる容器がガスバリア性に一層優れることから、80~600g/mであることが好ましく、200~450g/mであることがより好ましい。
【0023】
罫線部11とは、紙基材2を凹ます等して折り曲げやすくした線(領域)として紙基材2に凹凸が生じている箇所である。
【0024】
罫線部11の幅L1は、1mm以上、2mm以上、又は3mm以上であってもよく、4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってもよい。罫線部11の幅L1は、ガラススケールにより測定できる。
【0025】
紙基材2には、文字、図形、絵柄及び記号等の所望の印刷絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0026】
(接着性樹脂層)
接着性樹脂層3の材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、アイオノマー及びエチレン・メタクリル酸共重合樹脂が挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンとポリ酢酸ビニルの共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリエチレン及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、紙基材2とガスバリア層4の接着性の観点から、低密度ポリエチレンであることが好ましい。低密度ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン及び分岐状低密度ポリエチレンが挙げられ、分岐状低密度ポリエチレンであることが好ましい。分岐状低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法で得られるものが好ましく、高圧ラジカル重合法でエチレンを単独重合して得られるものがより好ましい。ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm~0.935g/cmであることが好ましく、0.915g/cm~0.930g/cmであることがより好ましい。密度が上記の範囲内であれば、低密度ポリエチレンが適度な剛性を有するため、接着性樹脂層3の成膜性及び押出適性が向上する。
【0030】
ポリエチレン系樹脂の融点は、80~130℃であることが好ましく、100~120℃であることがより好ましい。融点がこの範囲であれば、共押出加工性及び相溶性が向上する。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体及びプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリプロピレン及びプロピレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリプロピレンが挙げられる。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて合成されたものであってもよい。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましく、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、120~165℃であることが好ましく、125~160℃であることがより好ましい。融点がこの範囲であれば、共押出加工性及び相溶性が向上する。
【0033】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、環状共役ジエン重合体が挙げられる。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3g/10分以上、8g/10分以上、又は20g/10分以上であってもよく、30g/10分以下、25g/10分以下、又は20g/10分以下であってもよい。メルトフローレートは、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0035】
接着性樹脂層3には、上記以外のその他成分として、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、結晶核剤、可塑剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、染料、顔料、離型剤及び難燃剤等を本開示の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0036】
接着性樹脂層3の厚さは、例えば、5~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。
【0037】
接着性樹脂層3の稜線部a1の高さH1は、0.2mm以上、0.3mm以上、又は0.4mm以上であってもよく、2.0mm以下、1.5mm以下、又は1.0mm以下であってもよい。稜線部a1の高さH1は、レーザー罫線高さ測定機により測定される。
【0038】
(蒸着層)
積層体30は、蒸着層4aを備えることで、蒸着層に代えてアルミ箔を備える積層体と比較して、十分にガスバリア性を有しつつもリサイクル性に優れる。蒸着層4aは、酸化ケイ素(SiO)を蒸着した層である。これにより、積層体30は耐水性に優れたものとなる。蒸着層4aの厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、好ましくは10~300nmであり、より好ましくは30~100nmである。蒸着層4aの厚さを10nm以上とすることで蒸着層4aの連続性を十分なものとしやすく、300nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。
【0039】
蒸着層4aは、酸化ケイ素(SiO)以外の無機酸化物又は金属を蒸着した層であってもよい。蒸着層4aとしては、例えば、アルミニウムを蒸着して得られたものであってもよく、酸化アルミニウム(AlO)を含むものであってもよい。
【0040】
(フィルム基材)
フィルム基材4bの材料としては、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びナイロンフィルムが挙げられる。フィルム基材4bは、ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。ポリオレフィンフィルムを用いることで、接着性樹脂層3及びシーラント層5と併せてオレフィン系プラスチック材料としてのリサイクルが可能となる。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルムが挙げられる。
【0041】
フィルム基材4bの厚さは、ラミネート加工等の加工のし易さの観点から、3~50μmであることが好ましく、9~20μmであることがより好ましい。
【0042】
(シーラント層)
シーラント層5の材料は、接着性樹脂層3と同様である。
【0043】
シーラント層5の厚さは、特に限定されないが、包装材料としての適性、他のフィルムを積層又は蒸着層4aを形成する場合の加工性を考慮すると、20~100μmであることが好ましい。
【0044】
稜線部a1の延在方向(図1の紙面手前側から奥側の方向)に直交する断面において、稜線部a1の終端e1から空隙部12の終端e2までの長さL2は、0.1mm以上、0.2mm以上、又は0.5mm以上であってもよく、2.0mm以下、1.0mm以下、1.0mm未満、又は0.8mm以下であってもよい。長さL2は、以下のように測定される値を意味する。すなわち、積層体30の罫線部11の任意の10点を選択する。選択した10点それぞれにおいて稜線部a1の終端e1から空隙部12の終端e2までの長さ(紙基材2に凹凸が生じている箇所)をガラススケールにより測定する。得られた測定値の平均値を長さL2とする。
【0045】
積層体30における、面積50cmの円形エリアをそれぞれ測定対象とする酸素透過率の値A1,A2が以下の条件を満たすことが好ましい。
A1/A2≦2.0
[式中、A1は、円形エリアが円形エリアの中心を通る罫線部を有し、A2は、円形エリアが罫線部を有しない。]
【0046】
A1/A2は、1.8以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。また、A1/A2は、1.0以上である。酸素透過率は、酸素透過度測定装置を使用し、温度30℃、相対湿度70%の条件で測定される値を意味する。
【0047】
<第二実施形態>
以下、第二実施形態に係るガスバリア積層体(以下、単に「積層体」ともいう)について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一実施形態に係るガスバリア積層体と同様である。図2は、第二実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る積層体40は、保護層1と、紙基材2と、接着性樹脂層3と、ガスバリア層4と、シーラント層5と、をこの順序で備える積層構造を有する。ガスバリア層4は、蒸着層4a及びフィルム基材4bからなる。紙基材2は、罫線部11が設けられている。紙基材2は、罫線部11に由来する稜線部a1を含む第一の面と、罫線部に由来する溝部a2を含む第二の面とを有する。紙基材2と接着性樹脂層3との間に、稜線部a1に沿って空隙部12が形成されている。空隙部12においては、紙基材2と接着性樹脂層3とが接していない。
【0048】
紙基材2の稜線部a1の高さH1の数値範囲及び測定方法は、積層体30における高さH1と同様であってよい。
【0049】
稜線部a1の延在方向に直交する断面において、稜線部a1の終端e1から空隙部12の終端e2までの長さL2の数値範囲及び測定方法は、積層体30における長さL2と同様であってよい。
【0050】
以上、第一実施形態及び第二実施形態に係るガスバリア積層体について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層体30又は積層体40において、フィルム基材4bと蒸着層4aとの積層順は入れ替えてもよい。
【0051】
[ガスバリア積層体の製造方法]
<第一実施形態>
以下、一実施形態に係る積層体30の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法の一例を示す工程図である。図3の(a)~(d)に示すように本実施形態に係る製造方法は、下記の工程を備える。
(a)紙基材2の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層1を形成して第1積層体10を得る工程(図3(a))。
(b)第1積層体10に罫線部11を設けて第2積層体15を得る工程(図3(b))。
(c)ガスバリア層4と、シーラント層5とを備える第3積層体20を準備する工程(図3(c))。
(d)第2積層体15の紙基材2と第3積層体20のガスバリア層4とが対向し、且つ、第2積層体15が第3積層体20に対して鉛直方向下部となるように第2積層体15及び第3積層体20を送り出し、紙基材2と、ガスバリア層4との間に接着性樹脂層3を形成する樹脂組成物を押出し、第2積層体15及び第3積層体20をニップロール並びに冷却ロールにより挟むことで、紙基材2及びガスバリア層4を貼り合わせて積層体30を得る工程(図3(d))。
【0052】
[(a)工程]
本工程では、紙基材2の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層1を形成して第1積層体10を得る。保護層1を形成する方法は、押出しラミネートに限られない。その他の方法としては、例えば、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法及び共押し出しインフレーション法が挙げられる。
【0053】
[(b)工程]
本工程では、第1積層体に罫線部11を設けて第2積層体15を得る。第1積層体には、保護層1側から見て凹となるよう罫線部11を設ける。
【0054】
第1積層体に罫線部11を設ける方法は、例えば、打抜機による罫線付け加工が挙げられる。
【0055】
[(c)工程]
本工程では、ガスバリア層4と、シーラント層5とを備える第3積層体20を準備する。第3積層体20を得る方法は、例えば、蒸着層4aとフィルム基材4bとを備えるガスバリアフィルムのフィルム基材4bの表面上に押出しラミネートによりシーラント層5を形成する方法が挙げられる。
【0056】
蒸着層4aは、真空成膜手段によってフィルム基材4bの表面上に成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0057】
シーラント層5を形成する方法は、押出しラミネートに限られない。その他の方法としては、例えば、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、ドライラミネーション法、及び共押し出しインフレーション法が挙げられる。
【0058】
[(d)工程]
本工程では、紙基材2と、ガスバリア層4とを接着性樹脂層3を形成する樹脂組成物により貼り合わせて積層体30を得る。図4は、本実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法に使用できるラミネート装置100の一部を示す模式図である。図4に示すように、第2積層体15と、第3積層体20とが送り出される。第2積層体15の紙基材2側と、第3積層体20の蒸着層4a側との間に押出し機103から溶融した状態の樹脂組成物が押し出される。第2積層体15と第3積層体20とは、ニップロール105と冷却ロール107とにより挟み込まれる。ニップロール105は第2積層体15側に、冷却ロール107は第3積層体20側にそれぞれ配置されている。第2積層体15及び第3積層体20が貼り合わせられることで積層体30が得られる。第2積層体15が第3積層体20に対して鉛直方向下部にあることで、空隙部は、接着性樹脂層3と蒸着層4aとの間に形成される。
【0059】
ニップロールのショアD硬度は、運搬時に振動が加わった場合のガスバリア性の低下が一層抑制されることから、80度以下であることが好ましく、70度以下であることがより好ましく、65度以下であることが更に好ましい。ニップロールのショアD硬度は、50度以上、55度以上、又は60度以上であってもよい。ニップロールのショアD硬度は、ショア硬度計により測定される。
【0060】
<第二実施形態>
以下、本実施形態に係る積層体40の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、第一実施形態と同様に(a)~(c)工程を備えるが、(d)工程に代えて下記の(e)工程を備える点が異なる。
【0061】
(e)第2積層体15の紙基材2と第3積層体20のガスバリア層4とが対向し、且つ、第2積層体15が第3積層体20に対して鉛直方向上部となるように第2積層体15及び第3積層体20を送り出し、第2積層体15の紙基材2と、第3積層体20のガスバリア層4とを接着性樹脂層3を形成する樹脂組成物により貼り合わせて積層体40を得る工程。
【0062】
第2積層体15が第3積層体20に対して鉛直方向上部にあることで、空隙部は、紙基材2と接着性樹脂層3との間に形成される。第2積層体15及び第3積層体20を貼り合わせる圧力及びニップロールのショアD硬度は、(d)工程と同様であってよい。
【0063】
以上、一実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法について詳細に説明したが、ガスバリア積層体の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、紙基材2は、保護層1を形成する前に、罫線部11を形成してもよい。
【0064】
また、シーラント層5は、ガスバリアフィルムの蒸着層4aが設けられている表面上に形成されてもよい。第3積層体20は、シーラント層5を有していなくてもよい。その場合には、ガスバリア積層体の製造方法は、(d)工程又は(e)工程後にフィルム基材4bの蒸着層4aが設けられていない面にシーラント層5を形成する工程を更に備えていてもよい。積層体30又は40を構成する各層には、積層前に、コロナ処理及びプラズマ処理等の前処理をおこなってもよい。
【0065】
[容器]
以下、本実施形態に係る容器(紙容器)について説明する。図5に示す容器50は、ゲーブルトップタイプの容器である。容器50は、開口部51が設けられた上部52aと、側面52bと、底部52cとを有する角筒状の容器本体部52と、開口部51を閉じるキャップ55とを備える。容器本体部52は、積層体30の保護層1が最外層をなし、シーラント層5が最内層をなしている。容器本体部52は、積層体30が折り曲げられている箇所(折り曲げ部B1,B2)を有する。折り曲げ部B1は、最内層側から見て積層体30が谷折りされている箇所であり、他方、折り曲げ部B2は、最内層側から見て積層体30が山折りされている箇所である。折り曲げ部B1,B2は、積層体30の罫線部11に沿って折り曲げられている。
【0066】
容器50は、例えば、各種の飲食品、接着剤及び粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、並びにその他の種々の物品を充填包装することができる。容器50は、ガスバリア性に優れることから、酒、牛乳、果汁飲料等のジュース、ミネラルウオーター、醤油及びソース等の液体調味料、並びに、カレー、シチュー及びスープ等の液体飲食物を充填包装する包装用容器として特に好適に用いられる。
【0067】
容器50は、図6に示すブランクシート70の各部を折り立てて作製されたものである。図6に示すブランクシート70は、積層体30を打ち抜いて得られたものである。
【0068】
ブランクシート70は、容器の上部を形成するトップパネルT1~T4及び屋根パネルG1~G4と、側面を形成する側面パネルS1~S4と、底部を形成する底部パネルB1~B4と、糊しろパネルB5、S5、G5及びT5とを備える。屋根パネルG3は、開口部51を備える。屋根パネルG2及びG3は、切妻型の屋根を形成し、屋根パネル1G及び4Gは、折込型の屋根を形成する。屋根パネル1G及び4Gには、斜めの罫線部11が設けられている。
【0069】
ブランクシート70から容器50を形成するには、まず、糊しろパネルB5、S5、G5及びT5と、底部パネルB4、側面パネルS4、屋根パネルG4、トップパネルT4とをそれぞれヒートシールして筒貼りし、平らな折り畳みカートンとする。次いで、底部パネルB1~B4を折り畳み底部を形成し、内容物を充填する。内容物が充填されたカートンの頭部を折り畳み、最後にトップパネルをヒートシールして密封する。
【0070】
容器50は、ガスバリア性に優れる積層体30により構成されている。このため、内容物の変質を十分に長期にわたって抑制することができる。また、容器50は、内容物の変質を抑制できるため、フードロスの削減にも寄与する。容器50の容器内に液体を収容することで、液体入り容器が得られる。
【0071】
以上、本実施形態に係る容器について詳細に説明したが、本発明に係る容器は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、容器の形状は、容器50の形状に限られず、ブリックタイプ、略八角柱状又は三角錐状であってもよい。容器は、積層体40により構成されていてよい。
【実施例0072】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[ガスバリア積層体の製造]
(実施例1)
以下の工程を経て本例に係る積層体を得た。すなわち、紙基材(坪量:200g/m)の一方の表面上に保護層(材料:ポリエチレン系樹脂、厚さ:20μm)を形成して第1積層体を得た。第1積層体に対して打抜機を用いて罫線付けすることで罫線部(罫線幅:1.5mm)を設けて第2積層体を得た。第1積層体は、紙基材の保護層が設けられている面側から見て凹となるように罫線部を設けた。
【0074】
他方、フィルム基材(材料:ポリエチレンテレフタレート樹脂、厚さ:12μm)の一方の表面上に蒸着層(AlO蒸着層、厚さ:50nm)が形成されたガスバリアフィルムを準備した。フィルム基材の蒸着層が形成された面とは反対の面にポリエチレン系樹脂を押出すことでシーラント層(厚さ:60μm)を形成して第3積層体を得た。
【0075】
次いで、第2積層体と第3積層体とを押出しラミネートによって貼り合わせてガスバリア積層体(包装材)を得た。具体的には、第3積層体の蒸着層と、第2積層体の紙基材との間に、接着性樹脂層を形成するポリエチレン系樹脂(メルトフローレート:8.4g/10分)を溶融した状態で押出した。次いで、第2及び第3積層体をニップロール(ショアD硬度:60度)と、冷却ロールとにより挟み込んだ。このとき、第2及び第3積層体は、第2積層体が第3積層体に対して鉛直方向下部となるように配置した。それにより、第2積層体と第3積層体とが接着性樹脂層により貼り合わせられたガスバリア積層体(包装材)を得た。接着性樹脂層の厚さは30μmであった。ガスバリア積層体の罫線部の両端には、接着性樹脂層とガスバリア層とが接していない空隙部が形成されていた。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210:1999に準拠して測定した。ニップロールのショアD硬度は、JIS Z2246:2000に準拠して測定した。
【0076】
(比較例1)
紙基材(坪量:200g/m)の一方の表面上に保護層(材料:ポリエチレン系樹脂、厚さ:20μm)を形成し、紙基材を含む第2積層体を得た。実施例1と同様にして第3積層体を得た。
【0077】
次いで、実施例1と同様にして第2積層体と第3積層体とを押出しラミネートによって貼り合わせて積層体を得た。積層体に対して打抜機を用いて罫線付けすることで罫線部(罫線幅:1.5mm)を設けてガスバリア積層体を得た。積層体には、紙基材の保護層が設けられている面側から見て凹となるように罫線部を設けた。ガスバリア積層体の罫線部の両端には空隙部は確認されなかった。
【0078】
(比較例2)
ニップロール(ショアD硬度:60度)に代えてニップロール(ショアD硬度:90度)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を得た。
【0079】
[容器の製造]
各実施例及び比較例で得られたガスバリア積層体をゲーブルトップ型の容器(容量:250ml)に製函した。ヒートシールは、ガスバリア積層体に450℃の熱風を吹き当てることで行った。
【0080】
[運搬試験]
各実施例及び比較例で得られた容器について、JIS Z0200:1999に準じ、「8.4 振動試験」内の「レベル1(非常に長い運搬距離(2500km以上)又は輸送基盤が劣悪な条件であることが予想される。)」の条件にて運搬試験を行った。
【0081】
[酸素透過率の測定]
酸素透過度測定装置(Mocon社製、商品名:「OX-TRAN 2/22」)を使用し、温度30℃、相対湿度70%の条件で測定した。測定は、ガスバリア積層体と、製函直後の容器と、輸送試験後の容器とについて、大気中で1気圧下(酸素分圧:約0.2気圧)で行った。ガスバリア積層体については、面積50cmの円形エリアをそれぞれ測定対象とする酸素透過率の値A1,A2を測定した。A1は、円形エリアが円形エリアの中心を通る罫線部を有し、A2は、円形エリアが罫線部を有しない。また、A1/A2を算出した。結果を表1に示した。
【0082】
[空隙部の長さの測定]
実施例で得られたガスバリア積層体の稜線部の延在方向に直交する断面において、稜線部の終端から空隙部の終端までの長さを測定した。具体的には、ガスバリア積層体の罫線部の任意の10点を選択した。選択した10点それぞれにおいて稜線部の終端から空隙部の終端までの長さをガラススケールにより測定した。得られた測定値の平均値を稜線部の終端から空隙部の終端までの長さとした。結果を表1に示した。
【0083】
【表1】
【符号の説明】
【0084】
2…紙基材、3…接着性樹脂層、4…ガスバリア層、4a…蒸着層、11…罫線部、12…空隙部、30,40…積層体、50…容器、a1…稜線部、a2…溝部、e1,e2…終端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6