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特開2023-109641ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109641
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230801BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230801BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20230801BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230801BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20230801BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/08 038
C08G18/09 020
C08L75/04
C08K3/016
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011288
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002BC112
4J002BD112
4J002CK031
4J002CK041
4J002DE126
4J002DE186
4J002DK006
4J002EB046
4J002EB136
4J002EB166
4J002EW046
4J002EW056
4J002FD132
4J002FD136
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J034AA04
4J034BA03
4J034BA06
4J034CE01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DC50
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
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4J034DG04
4J034DG14
4J034DG16
4J034DP19
4J034DQ02
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA12
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4J034HA07
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4J034HC12
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KC02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
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4J034MA11
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4J034NA08
4J034QA01
4J034QB13
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034QD03
4J034QD06
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】良好な難燃性を維持しつつ、赤色になることが抑制されたポリウレタン発泡体を形成可能なポリオール組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、前記難燃剤が、臭素系難燃剤及び半金属元素を有する難燃剤を含む、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、
前記難燃剤が、臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤を含む、ポリオール組成物。
【請求項2】
前記半金属元素含有難燃剤がホウ素含有難燃剤を含む、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記半金属元素含有難燃剤がアンチモン含有難燃剤を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記臭素系難燃剤が、分子内に芳香環を有する臭素系難燃剤である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記難燃剤が、リン酸エステル系難燃剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記ポリオール組成物が、実質的に赤燐を含有しない、請求項1~5のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項7】
前記触媒が三量化触媒を含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項8】
前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含み、かつ、前記触媒が樹脂化触媒として窒素含有複素環化合物を含む、請求項7に記載のポリオール組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下である、請求項9に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
吹き付け用途に用いられる、請求項9又は10に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの建築部材の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。これを改善するため、難燃性の高いポリウレタン発泡体が必要とされている。ポリウレタン発泡体の難燃性を高める為の手段として、例えば、特許文献1のように、発泡性ウレタン樹脂組成物に赤燐を使用することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-94469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、赤燐を使用した発泡性ウレタン樹脂組成物から形成されたポリウレタン発泡体は、赤燐によって赤く変色し、意匠性が損なわれる問題がある。
そこで、本発明は、良好な難燃性を維持しつつ、赤色になることが抑制されたポリウレタン発泡体を形成可能なポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、前記難燃剤が、臭素系難燃剤及び半金属元素を有する難燃剤を含む、ポリオール組成物により、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[12]を提供するものである。
【0007】
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、前記難燃剤が、臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤を含む、ポリオール組成物。
[2]前記半金属元素含有難燃剤がホウ素含有難燃剤を含む、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記半金属元素含有難燃剤がアンチモン含有難燃剤を含む、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記臭素系難燃剤が、分子内に芳香環を有する臭素系難燃剤である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]前記難燃剤が、リン酸エステル系難燃剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6]前記ポリオール組成物が、実質的に赤燐を含有しない、[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[7]前記触媒が三量化触媒を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[8]前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含み、かつ、樹脂化触媒が窒素含有複素環化合物を含む、[7]に記載のポリオール組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む難燃性ウレタン樹脂組成物。
[10]難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下である、[9]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[11]吹き付け用途に用いられる、[9]又は[10]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[12][9]~[11]のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な難燃性を維持しつつ、赤色になることが抑制されたポリウレタン発泡体を形成可能なポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有するポリオール組成物である。以下、各成分について詳細に説明する。
【0010】
<難燃剤>
(臭素系難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、後述する半金属元素含有難燃剤と共に、臭素系難燃剤を含有する。臭素系難燃剤を、半金属元素含有難燃剤と組み合わせて含有することにより、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。
臭素系難燃剤としては、分子内に芳香環を有する臭素系難燃剤であることが好ましい。分子内に芳香環を有する臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエンなどの芳香環を1つ有する化合物、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)等の芳香環を2つ有する化合物が挙げられる。芳香環を2つ有する化合物としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル))、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物も挙げられる。臭素系難燃剤としては、その他にも臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、又は臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等が挙げられる。臭素系難燃剤は、一般的に固体難燃剤である。なお、固体難燃剤とは、室温(25℃)、常圧(1気圧)で固体となるものである。
これら臭素系難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)などの芳香環を2つ有する化合物が好ましく、中でもエチレンビス(ペンタブロモフェニル)がより好ましい。
【0011】
本発明で使用する臭素系難燃剤中の臭素の含有量(以下、「臭素含有率」と記載する場合がある。)は、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、臭素系難燃剤全量基準で50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。他方、臭素含有率の上限は、特に限定されるものではないが、例えば100質量%未満、好ましくは90質量%以下である。
臭素系難燃剤については以上の観点から、本発明で使用する臭素系難燃剤は、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)であることが特に好ましい。
【0012】
ポリオール組成物中の臭素系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~45質量部がより好ましく、15~40質量部がさらに好ましい。臭素系難燃剤が上記下限値以上であると、赤燐を使用せず、また使用してもその含有量を相対的に少なくすることができるため、赤燐による赤色化を抑制しつつ、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。また、臭素系難燃剤が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の粘度が高くなることを防止し、また、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止して、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0013】
(半金属元素含有難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、上記臭素系難燃剤に加え、半金属元素含有難燃剤を含有する。半金属元素含有難燃剤を、上記臭素系難燃剤と組み合わせて含有することにより、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。
半金属元素としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル、セレン、ポロニウム、及びアスタチンが挙げられる。
本発明で使用する半金属元素含有難燃剤としては、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤が好ましく、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤がより好ましい。半金属元素含有難燃剤は、一般的に固体難燃剤である。
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましく、三酸化アンチモンがより好ましい。
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
なお、これらの半金属元素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、ホウ素含有難燃剤単独で使用してもよいし、アンチモン含有難燃剤を単独で使用してもよいし、ホウ素含有難燃剤とアンチモン含有難燃剤を併用してもよい。
【0014】
ポリオール組成物中の半金属元素含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、5~60質量部が好ましく、10~55質量部がより好ましく、15~50質量部がさらに好ましい。半金属元素含有難燃剤が上記下限値以上であると、赤燐を使用せず、また赤燐の含有量を相対的に少なくしても難燃性を高めることができるため、赤燐による赤色化を抑制しつつ、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。また、半金属元素含有難燃剤が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の粘度を適切な範囲に調整しやすくなったり、発泡剤に対する含有量が多くなりすぎることを防止しやすくなったりして、取り扱い性及び発泡性に優れる。
【0015】
ポリオール組成物における、半金属元素含有難燃剤に対する臭素系難燃剤の含有量比は、1/0.25~1/4が好ましく、1/0.5~1/2がより好ましく、1/0.8~1/1.7がさらに好ましい。
中でも、本発明のポリオール組成物における、アンチモン含有難燃剤に対する臭素系難燃剤の含有量比は、1/1~1/4が好ましく、1/1.1~1/2がより好ましく、1/1.2~1/1.7がさらに好ましい。
また、本発明のポリオール組成物における、ホウ素含有難燃剤に対する臭素系難燃剤の含有量比は、1/0.25~1/4が好ましく、1/0.5~1/1.5がより好ましく、1/0.8~1/1.5がさらに好ましい。
半金属元素含有難燃剤に対する臭素系難燃剤の含有量比が上記範囲内であることにより、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。
【0016】
(リン酸エステル系難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、難燃剤として臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤以外の難燃剤を含有してもよい。本発明のポリオール組成物は、リン酸エステル系難燃剤を含有することが好ましい。リン酸エステル系難燃剤を含有することで、ポリオール組成物の流動性を低下させることなく、ポリウレタン発泡体の難燃性を高めやすくなる。リン酸エステル系難燃剤は、通常、液状難燃剤である。液状難燃剤とは、室温(25℃)、常圧(1気圧)で液体となるものである。
【0017】
リン酸エステル系難燃剤としては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0018】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0019】
リン酸エステル系難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0020】
ポリオール組成物中のリン酸エステル系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは30~90質量部であり、より好ましくは35~80質量部であり、さらに好ましくは40~70質量部である。リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら下限値以上であると、ポリオール組成物の粘度を高くしすぎることなくポリウレタン発泡体の難燃性を付与しやすくなり、該組成物の流動性を担保することが可能となる。また、リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら上限値以下であると、発泡が阻害されないなどにより、ポリウレタン発泡体が製造しやすくなる。
【0021】
(赤燐)
ポリオール組成物は、実質的に赤燐を含有しないことが好ましい。ポリオール組成物が実質的に赤燐を含有しないことにより、該組成物からポリウレタン発泡体を形成する際、ポリウレタン発泡体が赤燐により赤色に着色されることを抑制することができ、意匠性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。また、ポリオール組成物は、実質的に赤燐を含有しなくても、臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤の両方を含有することで、難燃性を優れたものにできる。
ここで、実質的に赤燐を含有しないとは、ポリオール組成物全量基準において、赤燐の含有量が、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であることを意味する。ポリオール組成物は、赤燐を含有しないことが最も好ましい。
【0022】
ポリオール組成物中の難燃剤の合計含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対し、50~150質量部が好ましく、60~140質量部がより好ましく、70~130質量部がさらに好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、難燃性に優れたポリウレタン発泡体を形成することができる。また、上記上限値以下であると、難燃剤の含有量に見合った難燃性をポリウレタン発泡体に付与したりすることができる。
【0023】
<ポリオール>
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0024】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、o-フタル酸(フタル酸)、ナフタレンジカルボン酸及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0026】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールなどの活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも一種が挙げられる。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0028】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。その場合、ポリオールの加重平均芳香族濃度が10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。ポリオールの加重平均芳香族濃度の上限は、特に限定されないが、例えば30質量%、好ましくは25質量%である。
ここで、芳香族濃度とは、ポリオール中の芳香環を構成する炭素原子及び水素原子の合計の質量%により得られたものであり、加重平均芳香族濃度は、前記芳香環の炭素原子及び水素原子の各含有量から加重平均により求めた芳香族濃度である。
芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性、特に燃え拡がらない性能を高める観点から、芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオール、及び、о-フタル酸とグリコールの縮合物である、о-フタル酸系ポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0029】
ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、難燃性ウレタン樹脂組成物中のポリオール100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
ポリオールの加重平均水酸基価は、20~350mgKOH/gが好ましく、50~300mgKOH/gがより好ましく、100~250mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなり、かつ吹き付けの際の施工性が良好になる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0031】
ここで、ポリオールの加重平均水酸基価は、ポリオールを構成する個々のポリオールの水酸基価と、該個々のポリオールのポリオール中の重量分率との積の総和により求められる。例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合量をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合量をmとすると、加重平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合量m及びmは、ポリオール100質量部中の質量部数である。
加重平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
【0032】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒は、樹脂化触媒及び三量化触媒の少なくとも一方を含有することが好ましく、両方を含有することがより好ましい。
以下、各触媒について、それぞれ詳細に説明する。
【0033】
(金属触媒(樹脂化金属触媒))
樹脂化触媒は、金属触媒を含有することが好ましい。この金属触媒は、一般的に樹脂化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記樹脂化金属触媒を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が促進され、特に初期反応速度を高めることができる。また、上記する難燃剤を一定量以上含有させるとポリオール組成物の反応性が阻害され発泡性が低下しやすいが、樹脂化金属触媒を含有させることで、ポリオール組成物の発泡性を良好に維持しやすくなる。上記金属触媒は、発泡性などの観点から、ビスマス又は錫を含むことが好ましく、ビスマスを含むことがより好ましい。
【0034】
上記の樹脂化金属触媒は、ビスマス及び錫から選択される金属塩が好ましく、ビスマス塩であることがより好ましい。金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸の錫塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0035】
ポリオール組成物中の上記樹脂化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.05~8質量部が好ましく、0.1~4質量部がより好ましく、0.3~2質量部が更に好ましい。
【0036】
(樹脂化アミン触媒)
本発明のポリオール組成物に使用される触媒は、樹脂化触媒として、窒素含有複素環化合物を含有することが好ましく、樹脂化アミン触媒を含有することも好ましい。窒素含有複素環化合物は、樹脂化アミン触媒であるイミダゾール誘導体であることがさらに好ましい。
イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール組成物は、上記した金属触媒に加えて、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(1)で表される。
【0037】
【化1】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0038】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
1及びR2のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0039】
一般式(1)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0040】
ポリオール組成物中の樹脂化アミン触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部が更に好ましい。樹脂化アミン触媒の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、樹脂化アミン触媒の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0041】
(三量化触媒)
本発明のポリオール組成物は、三量化触媒をさらに含有することが好ましい。三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を含有することで未反応のイソシアネート基の反応を完了させることで良好なポリウレタン発泡体が得られるという優位点がある。三量化触媒としては、金属触媒、アンモニウム塩等が挙げられる。
三量化触媒として使用される金属触媒(三量化金属触媒)としては、有機酸カリウムが挙げられ、好ましくは2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウム等の炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。
【0042】
アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができるが、これらのなかでは、4級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、例えばカルボン酸のアンモニウム塩である。アンモニウム塩におけるカルボン酸としては、例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数2~8の飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸は、炭化水素基が直鎖であってもよいし、分岐を有してもよいが、分岐を有することが好ましい。カルボン酸の具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸などが挙げられるが、これらの中では2,2-ジメチルプロパン酸が好ましい。三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
三量化触媒は、上記の中では、4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。また、2種以上併用する場合には、4級アンモニウム塩と金属触媒とを併用することも好ましい。
【0043】
ポリオール組成物中の三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~8質量部が更に好ましい。三量化触媒の含有量が前記下限値以上であると、樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡性が良好となる。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると、樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ発泡性が良好となり、良好なポリウレタン発泡体を形成することができる。
【0044】
本発明のポリオール組成物は、樹脂化触媒と三量化触媒とを併用して含有することが好ましく、窒素含有複素環化合物と4級アンモニウム塩とを併用して含有することがより好ましく、イミダゾール誘導体と、樹脂化金属触媒と、4級アンモニウム塩と、三量化金属触媒とを併用して含有することがさらに好ましい。
【0045】
<発泡剤>
発泡剤の具体例としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどの有機系物理発泡剤が挙げられる。さらに、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等も挙げられる。発泡剤としては、これらの化合物が1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、CHF3、CH22、CH3F等が挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、例えば、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン)等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、HFO-1224yd(Z)等が挙げられる。
【0046】
上記した中でも、発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン及び水を併用することがより好ましい。
発泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、35~60質量部が更に好ましい。
【0047】
発泡剤として使用するハイドロフルオロオレフィンの含有量は、発泡性を良好として、例えばポリウレタン発泡体の密度を所望の範囲とする観点から、ポリオール100質量部に対して、19~75質量部が好ましく、29~67質量部がより好ましく、34~58質量部が更に好ましい。
【0048】
発泡剤として使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。この中では、イオン交換水を用いることが好ましい。水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.3~3質量部がより好ましく、0.5~2質量部が更に好ましい。水の含有量を上記範囲内とすることで、難燃性と発泡性のバランスが良好となる。
【0049】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤としては、分子内に極性部分と非極性部分を有し界面活性効果を備える化合物を好適に使用することができる。
整泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。また、シリコーン整泡剤としては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの重合体であるポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体でもよい。また、市販品も使用でき、具体的にはSH-193(東レダウコーニング社製)、S-824-02(日本ユニカー社)、SZ-1704(日本ユニカー社)、F501(信越化学工業社)、SF-2937F(ダウ東レ社製)等の整泡剤を使用することができる。
整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0050】
<その他成分>
本発明のポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料等から選択される1種以上を含むことができる。
【0051】
[難燃性ウレタン樹脂組成物]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含む。難燃性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートを混合することにより得られる。
【0052】
(ポリイソシアネート)
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネートを用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業))などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」(日本ポリウレタン工業製))などでもよい。また、ポリイソシアネート内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネートを併用してもよく、併用するポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネートは限定なく使用可能である。
【0053】
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体を適切に形成させたり、良好な難燃性を付与したりする観点から、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上がさらに好ましく、300以上がよりさら好ましい。
また、難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは700以下、より好ましくは600以下であり、さらに好ましくは550以下であり、よりさらに好ましくは500以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。

イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0054】
INDEX=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0055】
<総発熱量>
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。総発熱量が8MJ/m以下であることにより、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体は、所定の難燃性を有する。
該発泡体の難燃性をより向上させる観点から、上記総発熱量は、7.8MJ/m以下であることがより好ましく、7MJ/m以下であることがさらに好ましい。
総発熱量の上限に関しては、特に限定されず、0MJ/m以上であればよいが、通常は1MJ/m以上である。
【0056】
<最高発熱速度>
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体を、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの最高発熱速度は150kW/m以下であることが好ましい。最高発熱速度が150kW/m以下であることにより、該組成物からなるポリウレタン発泡体は、所定の難燃性を有する。また、最高発熱速度及び総発熱量を共に上記のとおり調整することにより、より難燃性が向上する。
ポリウレタン発泡体の難燃性をより向上させる観点から、上記最高発熱速度は、130kW/m以下であることがより好ましく、110kW/m以下であることがさらに好ましい。
【0057】
上記総発熱量及び最高発熱速度は、コーンカロリーメーター試験により測定され、詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。また、コーンカロリーメーター試験を行うポリウレタン発泡体は、発泡性ウレタン樹脂組成物から実施例に記載する方法により形成される。
【0058】
[ポリウレタン発泡体]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、上記した難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなるものであり、具体的には、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡及び硬化させて得られるものである。
本発明のポリウレタン発泡体は、該発泡体を得る為の難燃性ウレタン樹脂組成物中に赤燐を実質的に含まないようにすることで、赤色に変色することがなく、意匠性に優れたものとなる。また本発明のポリウレタン発泡体は白色やクリーム色系統のものであり、着色剤の添加により容易に色調を変化させることが可能となる。
【0059】
[用途]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、壁、天井、屋根、床等などに対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なウレタンフォームの吹き付け条件が適応できる。
【実施例0060】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
[使用材料]
各実施例及び比較例においては、以下の材料を使用した。
【0062】
<ポリオール>
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名「マキシモールRLK-087」、芳香族濃度8%、水酸基価=200mgKOH/g)
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名「マキシモールRFK-505」、芳香族濃度22%、水酸基価=250mgKOH/g)
【0063】
<整泡剤>
・シリコーン系整泡剤(ダウ・東レ社製、製品名「SH-193」)
【0064】
<触媒>
(1)三量化触媒
・アルカリ金属塩:2-エチルヘキサン酸カリウム(エボニック社製、製品名「DABCO K-15」)濃度70~80質量%
・4級アンモニウム塩:2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エボニック社製、製品名「DABCO TMR7」)濃度45~55質量%
(2)ウレタン化触媒
・1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名「TOYOCAT(登録商標)-DM70」)濃度65~75質量%
・2-エチルヘキサン酸ビスマス(ウレタン化金属触媒:日東化成社製、製品名「Bi28」、濃度81~90質量%)
【0065】
<液状難燃剤>
・リン酸エステル系難燃剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名「TMCPP」)
【0066】
<固体難燃剤>
(1)臭素系難燃剤
・エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名「SAYTEX 8010」、臭素含有率82質量%)
・テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモ2-メチルプロピル)エーテル(第一製薬工業社製、製品名「ピロガードSR-130」、臭素含有率65質量%)
(2)半金属元素含有難燃剤
・三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名「PATOX-M」)
・ホウ素系難燃剤:ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名「FirebrakeZB」)
(3)赤燐(燐化学工業社製、製品名「ノーバエクセル140」)
【0067】
<発泡剤>
・イオン交換水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル社製、製品名「ソルスティスLBA」)
【0068】
<ポリイソシアネート>
・MDI(住化コベストロウレタン社製、製品名「44V-20」)
【0069】
ポリウレタン発泡体の各物性の測定、及びポリオール組成物の各性状の評価の方法は、以下のとおりである。
[総発熱量、最高発熱速度]
各実施例及び比較例で作製したポリウレタン発泡体の総発熱量、最高発熱速度は、以下の方法により評価した。
各実施例、比較例で得た石膏ボードを下地としたポリウレタン発泡体を、縦10cm、横10cmおよび厚み3.25cm(内石膏ボード12.5mm)に切断して、コーンカロリーメーター試験用サンプルを準備した。コーンカロリーメーター試験用サンプルを、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量、最高発熱速度を測定し、それぞれの測定値について評価を行った。
【0070】
[色調]
各実施例及び比較例で作製したポリウレタン発泡体の外観を目視にて確認し、色調を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:発泡体が赤色に変色しなかった。
×:発泡体が赤色に変色していた。
【0071】
[実施例1~6、比較例1~4]
表1に示す配合で、ポリオール、整泡剤、触媒、液状難燃剤、固体難燃剤、及び発泡剤を混合して得たポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を、合計200gとなるように、液温10℃で8000rpmで3秒間攪拌して得た液状混合物を、180mm×180mmで深さ100mmのサイズのボックス内に散布した。
ただし、コーンカロリーメーター試験用サンプルは、下地として厚み12.5mmの石膏ボードをボックスの底部にセットしその上に散布した。
【0072】
得られたポリウレタン発泡体を用いて、上記した各評価を実施した。各項目の評価結果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
各触媒の質量部は製品としての質量部である。
【0075】
以上の通り、各実施例で作製した難燃性ウレタン樹脂組成物から得られたポリウレタン発泡体は、難燃剤として臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤を使用することで、赤色化が抑制されていたことに加え、コーンカロリーメーター試験において総発熱量、及び最高発熱速度が低くなり、良好な難燃性を発揮することができた。
これに対し、比較例1、2、4で作製した難燃性ウレタン樹脂組成物から得られたポリウレタン発泡体は、コーンカロリーメーター試験において少なくとも総発熱量が高くなり、良好な難燃性を発揮することができなかった。また、比較例3で作製した難燃性ウレタン樹脂組成物から得られたポリウレタン発泡体は、難燃剤として臭素系難燃剤及び半金属元素含有難燃剤の代わりに赤燐を使用したため、各実施例のポリウレタン発泡体と遜色ない程度の良好な難燃性を発揮することができたが、赤色化を抑制することができなかった。