(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110477
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】リンパセルフマッサージ用衣類
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20230802BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61H7/00 300A
A41D13/12 136
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011953
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】503061197
【氏名又は名称】大杉 千里
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】大杉 千里
【テーマコード(参考)】
3B011
4C100
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB09
3B011AC12
4C100AA02
4C100BA09
4C100BA10
4C100BB01
4C100CA20
4C100DA05
4C100DA08
4C100DA10
4C100EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リンパマッサージに不慣れな素人にも熟練者が行うリンパマッサージの効果が得られるようにしたリンパマッサージ用衣類を提供する。
【解決手段】使用者の四肢及び胴部の皮膚に密着し得る衣類であり、衣類の表面には頸部リンパ節21から鎖骨リンパ節21、鎖骨リンパ節21から腋窩リンパ節21、肘リンパ節21から腋窩リンパ節21、腹部リンパ節21から腋窩リンパ節21、鼠蹊リンパ節21、膝窩リンパ節21から鼠蹊リンパ節21に向うリンパ液の流れる方向20及び位置、頸部リンパ節21、鎖骨リンパ節21、腋窩リンパ節21、肘リンパ節21、腹部リンパ節21、鼠蹊リンパ節21及び膝窩リンパ節21の位置が表示されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の四肢及び胴部の皮膚に密着し得る衣類であり、
衣類の表面には頸部リンパ節(21)から鎖骨リンパ節(21)、鎖骨リンパ節(21)から腋窩リンパ節(21)、肘リンパ節(21)から腋窩リンパ節(21)、腹部リンパ節(21)から鼠蹊リンパ節(21)、膝窩リンパ節(21)から鼠蹊リンパ節(21)に向うリンパ液の流れる方向(20)及び位置、頸部リンパ節(21)、鎖骨リンパ節(21)、腋窩リンパ節(21)、肘リンパ節(21)、腹部リンパ節(21)、鼠蹊リンパ節(21)及び膝窩リンパ節(21)の位置が表示されていることを特徴とするリンパマッサージ用衣類。
【請求項2】
使用者の上半身の皮膚に密着し得る衣類であり、
衣類の表面には頸部リンパ節(21)から鎖骨リンパ節(21)、鎖骨リンパ節(21)から腋窩リンパ節(21)、肘リンパ節(21)から腋窩リンパ節(21)に向うリンパ液の流れる方向(20)及び位置、頸部リンパ節(21)、鎖骨リンパ節(21)、腋窩リンパ節(21)及び肘リンパ節(21)の位置が表示されていることを特徴とするリンパセルフマッサージ用衣類。
【請求項3】
使用者の下半身の皮膚に密着し得る衣類であり、衣類の表面には腹部リンパ節(21)から鼠蹊リンパ節(21)、膝窩リンパ節(21)から鼠蹊リンパ節(21)に向うリンパ液の流れる方向(20)及び位置、腹部リンパ節(21)、鼠蹊リンパ節(21)及び膝窩リンパ節(21)の位置が表示されていることを特徴とするリンパセルフマッサージ用衣類。
【請求項4】
襟首がフード形式であり、耳下腺リンパ節から頸部リンパ節に向うリンパ液の流れる方向(20)及び位置が表示されている請求項1記載のリンパセルフマッサージ用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリンパセルフマッサージ用衣類に関し、特にリンパマッサージに不慣れな素人にも熟練者が行うリンパマッサージの効果が得られるようにしたリンパセルフマッサージ用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の組織液は毛細血管を経て血液中に戻るが、一部は毛細リンパ管に入り、静脈に送られる。毛細リンパ管が合流し太くなったものがリンパ管であり、リンパ管にはところどころリンパ節がある。
【0003】
リンパ節は細菌やウイルスが身体に侵入した際に殺菌や無効化する免疫反応機構として働いている。リンパ管は静脈にからみつくように全身に分布し、太い主リンパ管となって、首のつけ根の頸部リンパ節を通り鎖骨下の静脈節から静脈に繋がっている。血液は心臓のポンプ機能によって流れるが、リンパ液はリンパ管自体の微弱な運動や周囲の筋肉の働きによってゆっくり循環するように流れる。
【0004】
リンパ液の循環不全によって浮腫が生じる。リンパ液の循環不全を放置すると四肢や体幹がむくみ、重圧感、緊満痛、だるさ、疲れやすさなどを感じる等の症状を呈すことがあり好ましくない。リンパ液の循環不全を改善する方法として、滞ってしまったリンパ液を、体の各所のリンパ節に流し込んで排泄し、リンパの流れをスムーズにするリンパマッサージが知られている。
【0005】
リンパマッサージは人の手のひらを用い皮膚に圧力や刺激が伝わるくらいのやさしい力をかけてリンパ節の方向になでるマッサージであり、この点で手の指により圧し、たたきあるいはもみ、硬くなった筋肉を柔らかくほぐす筋肉マッサージとは全く異なる。
【0006】
従来から、リンパマッサージを行うようにした装置が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0007】
しかし、前述の特許文献1ないし特許文献3記載のマッサージ装置ではその効果が筋肉マッサージに近いものであり、手で行うリンパマッサージの効果にはるかに及ばないのが実情である。
【0008】
これに対し、無端状ベルトに所定の大きさの1又は複数のマッサージ片を設け、マッサージ片は被施術者の皮膚に接すると撓りながら反発力を有する弾性材料で形成し、無端状ベルトの移動にともない被施術者の皮膚を一方向に撫でるようにしたリンパマッサージ装置が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-140054号公報
【特許文献2】特開2013-248217号公報
【特許文献3】特開2006-263033号公報
【特許文献4】特開2017-119058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献4記載のリンパマッサージ装置は熟練者が行うリンパマッサージと比べても遜色なくリンパ液の循環不全を改善する効果を奏するものの、装置の構成が複雑であり、コスト高になるとともに、リンパマッサージを行う部位に応じて専用の構成を必要とするという問題があった。
【0011】
他方、熟練者が行うリンパマッサージは最も循環不全の改善効果が期待できるものの、リンパマッサージに不慣れな素人には自分でリンパマッサージ(リンパセルフマッサージ)をするのは難しく、リンパマッサージの効果、つまり循環不全の改善効果を得ることができないという問題があった。
【0012】
本件発明者は熟練者が行うリンパマッサージについて鋭意研究したところ、リンパマッサージの方向や位置、リンパ節の位置がほぼ一定であることを知見し、例えば肌着にリンパマッサージの方向や位置、リンパ節の位置を表示することによってリンパマッサージに不慣れな素人も自分でリンパマッサージできるとともに熟練者が行うリンパマッサージの効果が得られることに着目するに至った。
【0013】
本発明はかかる着目点に鑑み、リンパマッサージに不慣れな素人にも熟練者が行うリンパマッサージの効果が得られるようにしたリンパセルフマッサージ用衣類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明に係るリンパセルフマッサージ用衣類は、使用者の四肢及び胴部の皮膚に密着し得る衣類であり、衣類の表面には頸部リンパ節から鎖骨リンパ節、鎖骨リンパ節から腋窩リンパ節、肘リンパ節から腋窩リンパ節、腹部リンパ節から鼠蹊リンパ節、膝窩リンパ節から鼠蹊リンパ節に向うリンパ液の流れる方向及び位置、頸部リンパ節、鎖骨リンパ節、腋窩リンパ節、肘リンパ節、腹部リンパ節、鼠蹊リンパ節及び膝窩リンパ節の位置が表示されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の特徴の1つは肌に密着する衣類にリンパマッサージの方向や位置、リンパ節の位置を例えば印刷によって表示するようにした点にある。
これにより、リンパセルフマッサージに不慣れな素人にも熟練者が行うリンパマッサージと同様のリンパマッサージを行うことができ、熟練者と同じリンパマッサージの効果をえることができる。
【0016】
ここで衣類を肌に密着しえるものとしたのは衣類が肌に対してずれると、リンパマッサージの方向や位置、リンパ節の位置が安定せず、リンパマッサージが安定に行えないからである。衣類は身体の全体を覆うものであってもよく、半袖及び半ズボンのものであってもよい。襟首はハイネックや丸首,V首であってもよく、耳に引っ掛けるタイプやフードタイプであってもよい。また、足首は踵に引っ掛けるタイプであってもよい。
【0017】
衣類の材質は肌に密着し得る伸縮弾性を有するものであればよく、例えばポリエステル・アクリル・レーヨン・ポリウレタンなどの混合生地、綿・ポリエステル・ポリウレタンなどの混合生地、ナイロン・スパンデックスなどの混合生地、綿・シルクの混合生地、綿からなる弾性生地を採用することができる。
【0018】
また、襟首をフードタイプとする場合、耳下腺リンパ節から頸部リンパ節に向うリンパの流れる方向及び位置を表示することができる。
【0019】
また、上記では四肢及び同部を覆う衣類としたが、上半身又は下半身の一方を覆う衣類とすることもできる。
【0020】
即ち、本発明に係るリンパセルフマッサージ用衣類は、使用者の上半身の皮膚に密着し得る衣類であり、衣類の表面には頸部リンパ節から鎖骨リンパ節、鎖骨リンパ節から腋窩リンパ節、腹部リンパ節から腋窩リンパ節、腹部リンパ節から鼠蹊リンパ節、肘リンパ節から腋窩リンパ節に向うリンパ液の流れる方向及び位置、頸部リンパ節、鎖骨リンパ節、鼠蹊リンパ節、腋窩リンパ節及び肘リンパ節の位置が表示されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るリンパセルフマッサージ用衣類は、使用者の下半身の皮膚に密着し得る衣類であり、衣類の表面には腹部リンパ節から鼠蹊リンパ節、膝窩リンパ節から鼠蹊リンパ節に向うリンパ液の流れる方向及び位置、腹部リンパ節、鼠蹊リンパ節及び膝窩リンパ節の位置が表示されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るリンパセルフマッサージ用衣類の好ましい実施形態を示す図である。
【
図2】上記実施形態における襟首の変形例(a)(b)を示す図である。
【
図3】上記実施形態における足首の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
図1は本発明に係るリンパ
セルフマッサージ用衣類の好ましい実施形態を示す。図において、リンパセルフマッサージ用衣類は腕部及び胴部を覆うハイネック長袖シャツ10と脚全体を覆う長ズボン11から構成され、使用者の肌に密着しえる材料、例えばポリエステル・アクリル・レーヨン・ポリウレタンなどの混合生地、綿・ポリエステル・ポリウレタンなどの混合生地、ナイロン・スパンデックスなどの混合生地、綿・シルクの混合生地、綿からなる伸縮生地を用いて製作されている。
【0024】
この衣類の襟首10Aの正面側には喉元から頸部リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、背面側には首筋から下方に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされている。
【0025】
また、胸部正面側には頸部リンパ節21から鎖骨リンパ節21・鎖骨リンパ節21から腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、胸部背面側には腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、腹部正面側には下腹部から腋窩リンパ節21及び鼠蹊リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、腹部背面側には腹部リンパ節21から腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20、及び腋腹に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされている。
【0026】
さらに、腕正面側には手首から肘リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20、及び肘リンパ節21から腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、腕背面側には手首から腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされている。
【0027】
また、下腹部正面側には腰及び臍から鼠経リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされている。
【0028】
また、胸部正面側には頸部リンパ節21から鎖骨リンパ節21、鎖骨リンパ節から腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、胸部背面側には腰回りから腋窩リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、腹部正面側には下腹部から腋窩リンパ節21及び鼠蹊リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされ、腹部背面側には腋窩リンパ節21・鼠蹊リンパ節21に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20、及び腋腹に向かうリンパ管の位置及びリンパの流れを示す矢印20がプリントされている。なお、矢印20はデザイン的なものであってもよく、効果に応じて異なる色彩としてもよく、またマッサージを行う順番を示す番号を表示としてもよく、さらにリンパ管の名称を示す文字を入れるようにしてもよい。
【0029】
素人がリンパセルフマッサージを行う場合、脚、腕、腹部、胸部及び首のプリントされた矢印20をリンパ節20に向けて軟らかく軽くさすると、リンパがリンパ節21に向けて流れる。
【0030】
背中側をリンパマッサージする場合にはマッサージ棒を用いて脚、腕、腹部、胸部及び首のプリントされた矢印20をリンパ節21に向けて軟らかく軽くさすると、リンパがリンパ節21に向けて流れ、熟練者が行うリンパマッサージと同様にリンパの滞留が確実に改善される。なお、背中については他の人にリンパマッサージを行ってもらってもよい。
【0031】
図4は本発明に係るリンパマッサージ用衣類の第2の実施形態を示す。図において
図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では衣類の襟首10Bが丸首、シャツ10が半そで、ズボンが半ズボンになっている以外、第1の実施形態と同一である。
【0032】
なお、上記の例では襟首はハイネック又は丸首としたが、V首であってもよく、
図2に示されるように耳に引っ掛けるタイプやフードタイプであってもよい。また、
図3に示されるように足首は踵に引っ掛けるタイプで会ってもよい。
【0033】
襟首をフードタイプとする場合、
図2の(b)に示されるように、耳下腺リンパ節から頸部リンパ節に向うリンパの流れる方向及び位置を表示することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 シャツ
11 ズボン
20 リンパの矢印
21 リンパ節