(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110892
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】洗掘防止構造および洗掘防止構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20230802BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
E02B3/08 301
E02D27/52 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009396
(22)【出願日】2023-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022012006
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000230711
【氏名又は名称】日本海上工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 聡
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 栄治
(72)【発明者】
【氏名】梅津 一星
(72)【発明者】
【氏名】新原 雄二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一輝
(72)【発明者】
【氏名】荒川 研佑
(72)【発明者】
【氏名】岸田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大明
(72)【発明者】
【氏名】星野 太
【テーマコード(参考)】
2D046
2D118
【Fターム(参考)】
2D046DA61
2D118AA05
2D118BA01
2D118DA06
2D118GA36
(57)【要約】
【課題】短時間で施工可能であり、効率よく洗掘を抑えられる洗掘防止構造および洗掘防止構造の施工方法を提供すること。
【解決手段】洗掘防止構造1hは、モノパイル4と、モノパイル4が貫通する孔73を有し、モノパイル4に対して隙間14をあけて、モノパイル4の外周に配置される不透水性の被覆体7bと、隙間14の水底3の地盤2を塞ぐように、モノパイル4の表面に接触し、モノパイル4の揺動に追従可能な変形可能なフィルターユニット6dと、を具備し、被覆体7bの外周近傍には複数の貫通孔10bが設けられる。洗掘防止構造1hは、被覆体7bを水底3に設置する工程と、被覆体7bの孔73の水底3の地盤2を貫通するようにモノパイル4を打設する工程と、フィルターユニット6dを隙間14を塞ぎつつモノパイル4の側面41に接触させるようモノパイル4の周りに配置する工程とによって施工される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中構造体と、
前記水中構造体が貫通する開口部を有し、前記水中構造体に対して隙間をあけて、前記水中構造体の外周に配置される不透水性の被覆マットと、
前記水中構造体と前記被覆マットとの隙間の水底地盤を塞ぐように、前記水中構造体の表面に接触し、前記水中構造体の揺動に追従して変形可能な洗掘防止材と、
を具備し、
前記被覆マットの少なくとも外周近傍には複数の貫通孔が設けられることを特徴とする洗掘防止構造。
【請求項2】
前記洗掘防止材は、繊維製の網体の中に石又は砕石が充填されたフィルターユニットであり、前記水中構造体と前記被覆マットの隙間の前記水底地盤上に、石又は砕石からなるフィルター材が配置され、前記フィルター材の上部に前記フィルターユニットが配置されることを特徴とする請求項1に記載の洗掘防止構造。
【請求項3】
前記洗掘防止材は、繊維製の網体の中に石又は砕石が充填されたフィルターユニットであり、前記網体の少なくとも下方には、フィルター材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の洗掘防止構造。
【請求項4】
前記フィルターユニットは、平面視にて略円形状で、隣り合う前記フィルターユニットの端部が重なり合うように前記水中構造体の周りに複数配置されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の洗掘防止構造。
【請求項5】
前記フィルターユニットは、互いに線材によって前記水中構造体の周りに環状に連結して固定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の洗掘防止構造。
【請求項6】
前記フィルターユニットは、前記水中構造体の周囲に配置した鋼製の枠体に繊維製の網体を張って、内部に石又は砕石が充填されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の洗掘防止構造。
【請求項7】
前記フィルターユニットは、繊維製の網体がドーナツ状に形成されており、前記水中構造体の周りに単体で一括して配置されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の洗掘防止構造。
【請求項8】
前記フィルターユニットの前記水中構造体との接触面側に摩耗防止シートが配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の洗掘防止構造。
【請求項9】
前記洗掘防止材は、複数のコンクリートブロックと、前記コンクリートブロックによって固定されたリング状の弾性部材からなるシール部材とを有し、
前記コンクリートブロックが、前記被覆マットの開口部の縁部を跨ぐように配置され、前記シール部材が前記水中構造体の表面に密着することを特徴とする請求項1記載の洗掘防止構造。
【請求項10】
前記被覆マットの中央近傍に複数の貫通孔が設けられ、前記貫通孔を塞ぐように透水性部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の洗掘防止構造。
【請求項11】
前記被覆マットの外周近傍および開口部の縁近傍に、前記被覆マットを吊り上げ可能な複数の吊り部を具備することを特徴とする請求項1に記載の洗掘防止構造。
【請求項12】
前記被覆マットの下方に有孔のパイプが配置されることを特徴とする請求項1記載の洗掘防止構造。
【請求項13】
請求項1記載の洗掘防止構造の施工方法であって、
前記被覆マットを水底に設置する工程と、
前記被覆マットの中央の前記開口部の前記水底地盤を貫通するように杭状の水中構造体を打設する工程と、
前記洗掘防止材を前記被覆マットの前記開口部の縁部と前記水中構造体との隙間を塞ぎつつ、前記水中構造体の側面に接触させるよう前記水中構造体の周りに配置する工程と、を具備することを特徴とする洗掘防止構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘防止構造および洗掘防止構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、砂地盤におけるモノパイル基礎等の杭基礎周囲の洗掘防止工として、砕石や割栗石の敷設、石材を網袋に詰めて1個当たりの重量を増加させた多数のフィルターユニットの設置が実施されてきたが、これらの洗掘防止工は施工にあたって海象条件の影響を受けやすく工期が長くなる傾向にある。そこで、杭周辺にマット等の大きな被覆体を敷くことにより施工時間を短縮する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不透水性の被覆体と杭との間に僅かな隙間がある場合、隙間から被覆体下部の砂の吸出しが起こり、杭周辺が洗掘される。これは、暴風波浪時に被覆体の上側での流速が大きくなることで被覆体の上側と下側とで水圧差が発生し、水圧差を解消するために強い流れが杭と被覆体との僅かな隙間に集中し、この強い流れが砂を連行して移動させるためと考えられる。また、被覆体の上側と下側とで大きな水圧差が発生した場合、被覆体の重量が不足していると被覆体が捲れ上がって被覆体の下側の砂が洗掘される。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、短時間で施工可能であり、効率よく洗掘を抑えられる洗掘防止構造および洗掘防止構造の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、水中構造体と、前記水中構造体が貫通する開口部を有し、前記水中構造体に対して隙間をあけて、前記水中構造体の外周に配置される不透水性の被覆マットと、前記水中構造体と前記被覆マットとの隙間の水底地盤を塞ぐように、前記水中構造体の表面に接触し、前記水中構造体の揺動に追従して変形可能な洗掘防止材と、を具備し、前記被覆マットの少なくとも外周近傍には複数の貫通孔が設けられることを特徴とする洗掘防止構造である。
【0007】
第1の発明では、水中構造体と被覆マットとの間に所定以上の幅の隙間を敢えて設けることにより、暴風波浪時に被覆マットの上下に水圧差が発生しても、従来のように僅かな隙間に水流が集中することがなく、隙間を通る水流を分散させることができる。また、水中構造体の揺動に追従して変形可能な洗掘防止材を隙間の水底地盤を塞ぐように配置することにより、隙間を水流が通っても砂が吸い出されることがなく洗掘を防止できる。さらに、被覆マットの外周近傍に貫通孔が設けられることにより、貫通孔から水が通るのと同時に砂が吸い出されるので、被覆マットの外周部が水底地盤に差し込まれて埋まり、被覆マットの捲れ上がりが防止される。
【0008】
前記洗掘防止材は、繊維製の網体の中に石又は砕石が充填されたフィルターユニットであり、前記水中構造体と前記被覆マットの隙間の前記水底地盤上に、石又は砕石からなるフィルター材が配置され、前記フィルター材の上部に前記フィルターユニットが配置されることが望ましい。
被覆マットと水中構造体との隙間にフィルター材が配置されることにより、フィルターユニットのみで隙間を塞ぐ場合と比較して、隙間からの吸出し防止効果を高めることができる。
【0009】
前記洗掘防止材は、繊維製の網体の中に石又は砕石が充填されたフィルターユニットであり、前記網体の少なくとも下方には、フィルター材が充填されていてもよい。
被覆マットと水中構造体との隙間を網体の少なくとも下方にフィルター材が充填されたフィルターユニットで塞ぐことにより、フィルター材が充填されないフィルターユニットで塞ぐ場合と比較して、隙間からの吸出し防止効果を高めることができる。
【0010】
前記フィルターユニットは、例えば、平面視にて略円形状で、隣り合う前記フィルターユニットの端部が重なり合うように前記水中構造体の周りに複数配置される。
これにより、複数のフィルターユニットを水中構造体の周りに平面視で隙間なく配置して被覆マットと水中構造体との隙間を塞ぐことができる。
【0011】
また、前記フィルターユニットは、互いに線材によって前記水中構造体の周りに環状に連結して固定されていてもよい。
これにより、暴風波浪時にフィルターユニットの移動を防止でき、水中構造体に生じる水平変位にフィルターユニットを追随させることができる。
【0012】
前記フィルターユニットは、前記水中構造体の周囲に配置した鋼製の枠体に繊維製の網体を張って、内部に石又は砕石が充填されてもよい。また、前記フィルターユニットは、繊維製の網体がドーナツ状に形成されており、前記水中構造体の周りに単体で一括して配置されてもよい。
これにより、複数のフィルターユニットを水中構造体の周りに配置する場合と比較して、隙間の水底地盤を容易且つ確実に塞ぐことができる。また、暴風波浪時にフィルターユニットの移動を防止でき、水中構造体に生じる水平変位にフィルターユニットを追随させることができる。
【0013】
前記フィルターユニットの前記水中構造体との接触面側に摩耗防止シートが配置されてもよい。
これにより、暴風や波浪によって水中構造物とフィルターユニットとの相対位置が繰り返し変化した場合に、摩耗によるフィルターユニットの破損を防止できる。
【0014】
前記洗掘防止材は、複数のコンクリートブロックと、前記コンクリートブロックによって固定されたリング状の弾性部材からなるシール部材とを有し、前記コンクリートブロックが、前記被覆マットの開口部の縁部を跨ぐように配置され、前記シール部材が前記水中構造体の表面に密着してもよい。
これにより、被覆マットと水中構造体との隙間をシール部材で確実に閉じ、暴風や波浪によって水中構造体に水平変位が発生した場合にシール部材を水平変位に追随させて、隙間からの洗掘を防止できる。また、コンクリートブロックで、シール部材を固定すると同時に被覆マットの開口部の縁部の捲れ上がりを防止することができる。
【0015】
前記被覆マットの中央近傍に複数の貫通孔が設けられ、前記貫通孔を塞ぐように透水性部材が配置されてもよい。
これにより、暴風波浪時に被覆マットの上下に水圧差が発生した場合に複数の貫通孔に水が分散されて通ることで水圧差を解消できる。また、貫通孔を塞ぐように透水性部材が配置されることで、水が貫通孔を通るときに砂が吸い出されることがなく、洗掘防止部材の下側の洗掘を防止することができる。
【0016】
前記被覆マットの外周近傍および開口部の縁近傍に、前記被覆マットを吊り上げ可能な複数の吊り部を具備してもよい。
これにより、被覆マットの全体に多数の吊り金具を設けた場合と比較して、被覆マットの損傷を防止しつつ安定した姿勢で吊り下げることができる。
【0017】
前記被覆マットの下方に有孔のパイプが配置されてもよい。
これにより、被覆マットの下側において、水中構造体近傍と被覆マット外周部近傍との水圧差を解消して水圧を均一化できる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明の洗掘防止構造の施工方法であって、前記被覆マットを水底に設置する工程と、前記被覆マットの中央の前記開口部の前記水底地盤を貫通するように杭状の水中構造体を打設する工程と、前記洗掘防止材を前記被覆マットの前記開口部の縁部と前記水中構造体との隙間を塞ぎつつ、前記水中構造体の側面に接触させるよう前記水中構造体の周りに配置する工程と、を具備することを特徴とする洗掘防止構造の施工方法である。
【0019】
第2の発明では、被覆マットを水底に設置した後、被覆マットの開口部を目印として杭状の水中構造体を打設できる。また、杭状の水中構造体を打設するより先に被覆マットを敷設するので、敷設時に水中構造体やその他の付帯設置物等を傷つけることがない。さらに、洗掘防止材を被覆マットの開口部の縁部と水中構造体との隙間を塞ぎつつ、水中構造体の側面に接触させるよう水中構造体の周りに配置することにより、隙間を水流が通っても砂が吸い出されることがなく洗掘を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、短時間で施工可能であり、効率よく洗掘を抑えられる洗掘防止構造および洗掘防止構造の施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1、
図2は本発明の第1の実施形態に係る洗掘防止構造1を示す図である。
図1(a)は洗掘防止構造1の鉛直方向の断面図、
図1(b)は
図1(a)に示す線A-Aによる断面を示す図である。
図2(a)、
図2(b)は
図1(a)に示す範囲Bに対応する部分の拡大図であり、
図2(a)は洗掘が発生していない状態を、
図2(b)は洗掘が発生した状態を示す。
【0024】
図1、
図2に示すように、洗掘防止構造1は、洗掘防止部材5、フィルターユニット6、摩耗防止シート9等からなる。洗掘防止構造1は、例えば洋上風力発電設備の杭基礎として用いられる水中構造体であるモノパイル4の周囲に配置される。モノパイル4の径は例えば8000mmであり、洗掘防止構造1は例えば平面視でモノパイル4の径の3倍程度の範囲に施工される。
【0025】
洗掘防止部材5は、モノパイル4の周囲の水底3に配置される。洗掘防止部材5は、不透水性の被覆マットである被覆体7、貫通孔10、透水性シート8を具備する。被覆体7は不透水性のアスファルトマットであり、モノパイル4の周囲に配置される。被覆体7とモノパイル4との隙間14は、敢えて従来よりも広いものとし、500mm程度以上であることが望ましく、より望ましくは1m以上である。隙間14は、例えば、モノパイル4の外径の1/20以上が望ましく、さらに望ましくは1/10以上である。貫通孔10は例えば直径200mm程度の円形の孔であり、被覆体7の全面に形成される。透水性シート8は水を通して砂を通さないメッシュ状のシートであり、被覆体7の下部に配置される。被覆体7および透水性シート8は例えば平面視で八角形状であり、モノパイル4を配置するための開口部である孔73、83(
図3(a))を中央部に有する。
【0026】
図1(b)、
図2(a)に示すように、透水性シート8は、中央部側の縁部82が被覆体7の中央部側の縁部72と重なっており、外周部側の縁部81が被覆体7の外周部側の縁部71よりもモノパイル4側に位置する。すなわち透水性シート8は被覆体7よりも一回り小さく、貫通孔10のうち被覆体7の外周部近傍以外に形成された貫通孔10aは透水性シート8で塞がれるが、外周部近傍に形成された貫通孔10bは塞がれない。
【0027】
フィルターユニット6は、モノパイル4の周囲を囲むように複数配置される。フィルターユニット6は、例えば、繊維製の袋状の網体に石又は砕石を充填したものであり、吊下げた時よりも水底3に設置した時に径が広がるように変形可能であり、モノパイル4の揺動に追従可能である。複数のフィルターユニット6は、平面視において略円形状であり、隣り合うフィルターユニット6の端部が重なり合い、各フィルターユニット6の一部が被覆体7上に載るように配置されて、被覆体7の縁部72とモノパイル4の側面41との間との隙間14の水底3の地盤2を塞ぐ。フィルターユニット6は、通常の波浪や潮流などによって生じる外力に対して移動せず、洗掘防止部材5を押さえて安定性を維持する。
【0028】
摩耗防止シート9は、モノパイル4のフィルターユニット6との接触面側に張り付けて配置される。すなわち摩耗防止シート9はフィルターユニット6とモノパイル4の側面41との間に挟まれ、フィルターユニット6は摩耗防止シート9を挟んでモノパイル4の側面41に接触する。摩耗防止シート9は、ゴム製またはウレタン製のシートであることが望ましい。
【0029】
洗掘防止構造1では、暴風波浪時に洗掘防止部材5の上側と下側とで水圧差が生じると、水が複数の貫通孔10を通って移動することで水圧差が解消される。このとき、被覆体7の外周部近傍以外では貫通孔10aが透水性シート8によって塞がれているので、貫通孔10aを通る水流が砂を連行することがなく被覆体7の下側の砂の洗掘が防止される。一方、被覆体7の外周部近傍では貫通孔10bが透水性シート8によって塞がれていないので、貫通孔10bを通る水流が砂を連行して貫通孔10bから砂が吸い出されて被覆体7の上面側に堆積する。すなわち、
図2(b)に示すように被覆体7の外周部側の縁部71が地盤2内に埋まり、縁部71の捲れ上がりが防止される。
【0030】
洗掘防止構造1では、フィルターユニット6を配置することによって、隙間14からの砂の吸出しや被覆体7の中央部側の縁部72の捲れ上がりが防止される。なお、暴風時にはモノパイル4に水底3付近で片振幅100mm程度の水平変位が発生することがあるが、仮にモノパイル4の変位にフィルターユニット6が追随できず隙間14から多少の砂が吸い出されたとしても、
図2(b)に示すようにフィルターユニット6が変形して洗掘部分に落ち込むことにより、隙間14からの更なる砂の吸出しが防止される。
【0031】
次に、洗掘防止構造1の施工方法について説明する。
図3は、洗掘防止構造1の施工方法を示す図である。
図3(a)は洗掘防止部材5を設置した状態を示す図、
図3(b)はモノパイル4を打設した状態を示す図である。
【0032】
洗掘防止構造1を施工するには、まず、
図3(a)に示すように被覆体7と透水性シート8とが一体化された洗掘防止部材5をモノパイル4の設置予定位置の水底3に設置する。洗掘防止部材5の被覆体7の孔73および透水性シート8の孔83は、モノパイル外径42より大きい。なお、被覆体7と透水性シート8とが一体化された洗掘防止部材5は、例えば、陸上の製作ヤードにおいて、透水性シート8上に貫通孔10を形成するための型枠を配置してアスファルトを打設することにより製作される。被覆体7であるアスファルトマットや透水性シート8は可撓性を有するので、洗掘防止部材5は水底3の不陸に追随するように設置できる。
【0033】
洗掘防止部材5を設置したら、
図3(b)に示すように孔73および孔83を通るようにモノパイル4を打設し、洗掘防止部材5を貫通するようにモノパイル4を設置する。その後、
図2(a)に示すようにモノパイル4の側面41と被覆体7の縁部72との間に形成された隙間14を塞ぎつつ、モノパイル4の側面41に配置された摩耗防止シート9に接触させるようにフィルターユニット6をモノパイル4の周りに設置して、洗掘防止構造1を完成する。
【0034】
このように、第1の実施形態の洗掘防止構造1によれば、被覆体7に複数の貫通孔10が形成された洗掘防止部材5を水底3に配置するので、洗掘防止部材5の上下に発生する水圧差が解消される。このとき、貫通孔10aは透水性シート8で塞がれるので、貫通孔10aから砂が吸い出されることがなくモノパイル4周辺の地盤2の洗掘を防止できる。また、貫通孔10bは透水性シート8で塞がれないので、貫通孔10bから砂が吸い出されて被覆体7の縁部71付近が地盤2に差し込まれて埋まり、被覆体7の縁部71の捲れ上がりを防止できる。
【0035】
洗掘防止構造1では、モノパイル4と被覆体7との間に敢えて500mm程度以上の隙間14を設けることにより、暴風波浪時に被覆体7の上下に水圧差が発生しても、従来のように僅かな隙間に水流が集中することがない。そのため、隙間14を通る水流を分散させて洗掘の発生を低減できる。また、洗掘防止部材5の上下の水圧差を解消する際に複数の貫通孔10aに分散されて水が通るので、被覆体7とモノパイル4との隙間14に水流が集中せず、隙間14での洗掘の発生を低減できる。さらに、モノパイル4の揺動に追従するように変形可能なフィルターユニット6を配置してモノパイル4近傍の隙間14の水底3の地盤2を塞ぐことにより、隙間14からの砂の吸出しをより確実に抑えることができる。
【0036】
洗掘防止構造1では、被覆体7に貫通孔10を形成することで水圧による洗掘防止部材5の浮き上がりを防止できる。また、摩耗防止シート9を配置することで、暴風や波浪によってモノパイル4とフィルターユニット6との相対位置が繰り返し変化した場合に、摩耗によるフィルターユニット6の破損を防止できる。
【0037】
第1の実施形態では、アスファルトマットである被覆体7と被覆体7の下部に配置した透水性シート8とを洗掘防止部材5として一体化するので、洗掘防止部材5を水底3に容易に設置できる。また、被覆体7および透水性シート8は孔73、83を有するので、孔73、83を打設の目印としてモノパイル4を所定の位置に確実に且つ容易に設置することができる。さらに、モノパイル4を打設するより先に洗掘防止部材5を敷設するので、敷設時にモノパイル4やその他の付帯設置物等を傷つけることがない。
【0038】
以下、本発明の別の例について、第2~第6の実施形態として説明する。各実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図4は本発明の第2の実施形態に係る洗掘防止構造1a、1bを示す図である。
図4(a)は洗掘防止構造1aを示す図、
図4(b)は洗掘防止構造1bを示す図である。なお、
図4(a)、
図4(b)では被覆体7に形成された貫通孔10の図示を省略している。
【0040】
第2の実施形態の洗掘防止構造1a、1bは、フィルターユニット6の代わりにフィルターユニット6a、6bが用いられる点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。
【0041】
図4(a)に示すように、洗掘防止構造1aでは、モノパイル4の周囲を覆うように環状のフィルターユニット6aが配置される。フィルターユニット6aは、鋼製の枠体に繊維製の網体を張って石又は砕石を充填したものである。
【0042】
図4(b)に示すように、洗掘防止構造1bでは、モノパイル4の周囲を覆うように環状のフィルターユニット6bが配置される。フィルターユニット6bは、繊維製のドーナツ状の網体に石又は砕石を充填したものである。
【0043】
洗掘防止構造1a、1bは、洗掘防止構造1と同様に
図3(a)、
図3(b)に示すように洗掘防止部材5を設置してモノパイル4を打設した後、モノパイル4と被覆体7との隙間14を塞ぐようにフィルターユニット6a、6bを設置して施工される。フィルターユニット6a、6bは、吊下げた時よりも水底3に設置した時に扁平に広がるように変形可能である。また、モノパイル4の揺動に追従可能である。
【0044】
第2の実施形態においても、洗掘防止部材5を用い、モノパイル4と被覆体7との間に500mm程度以上の隙間14を敢えて設けることにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、洗掘防止構造1a、1bでは、被覆体7とモノパイル4との隙間14に環状のフィルターユニット6a、6bを配置することにより、複数のフィルターユニット6を配置する場合と比較して、隙間14の水底3の地盤2を容易且つ確実に塞ぐことができる。フィルターユニット6a、6bは環状であり中央にモノパイル4が配置されるので、暴風波浪時に流れて消失することがなく、モノパイル4の水平変位に追随させることができる。
【0045】
[第3の実施形態]
図5、
図6は、第3の実施形態にかかる洗掘防止構造1cを示す図である。
図5(a)は洗掘防止構造1cの鉛直方向の断面図、
図5(b)は
図5(a)に示す線C-Cによる断面図である。
図6は
図5に示す範囲Dの拡大図である。
【0046】
第3の実施形態の洗掘防止構造1cは、洗掘防止部材5の代わりに洗掘防止部材5aが用いられる点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。
【0047】
洗掘防止部材5aは、モノパイル4の周囲の水底3に配置される。洗掘防止部材5aは、被覆体7、貫通孔10、透水性部材8aを具備する。透水性部材8aは水を通して砂を通さない部材であり、貫通孔10aの内部に配置され、アスファルトマットである被覆体7と一体化される。洗掘防止部材5aでは、貫通孔10のうち被覆体7の外周部近傍以外に形成された貫通孔10aは透水性部材8aで塞がれるが、外周部近傍に形成された貫通孔10bは塞がれない。
【0048】
洗掘防止構造1cは、洗掘防止構造1と同様に、モノパイル4の設置予定位置の水底3に洗掘防止部材5aを設置し、洗掘防止部材5aを貫通するようにモノパイル4を設置し、モノパイル4の側面41と被覆体7との間に形成された隙間14の水底3の地盤2を塞ぐようにフィルターユニット6を設置する手順で施工される。
【0049】
なお、被覆体7と透水性部材8aとが一体化された洗掘防止部材5aは、例えば、陸上の製作ヤードにおいて、貫通孔10aに対応する位置に型枠として透水性部材8aとその保持部材を配置し、貫通孔10bに対応する位置に型枠を配置し、アスファルトを打設することにより製作される。被覆体7であるアスファルトマットや透水性部材8aは可撓性を有するので、洗掘防止部材5aは水底3の不陸に追随するように設置できる。
【0050】
第3の実施形態においても、モノパイル4と被覆体7との間に500mm程度以上の隙間14を敢えて設けることにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。第3の実施形態では、被覆体7に複数の貫通孔10が形成された洗掘防止部材5aを水底3に配置するので、洗掘防止部材5aの上下に発生する水圧差が解消される。このとき、貫通孔10aは透水性部材8aで塞がれるので、貫通孔10aから砂が吸い出されることがなくモノパイル4周辺の地盤2の洗掘を防止できる。また、貫通孔10bは透水性部材8aで塞がれないので、貫通孔10bから砂が吸い出されて被覆体7の縁部71付近が地盤2に差し込まれて埋まり、被覆体7の縁部71の捲れ上がりを防止できる。
【0051】
洗掘防止構造1cでは、被覆体7に貫通孔10を形成することで水圧による洗掘防止部材5aの浮き上がりを防止できる。また、アスファルトマットである被覆体7と被覆体7の下部に配置した透水性部材8aとを洗掘防止部材5aとして一体化するので、洗掘防止部材5aを水底3に容易に設置できる。
【0052】
[第4の実施形態]
図7は本発明の第4の実施形態に係る洗掘防止構造1dを示す図である。なお、
図7では被覆体7に形成された貫通孔10の図示を省略している。
【0053】
第4の実施形態の洗掘防止構造1dは、洗掘防止材としてフィルターユニット6の代わりにシール部材が用いられる点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。シール部材は、複数のコンクリートブロック11と、コンクリートブロック11によって固定されたリング状の弾性部材であるシール材12とを有する。
【0054】
シール材12は、
図3に示す被覆体7とモノパイル4との隙間14に配置される。シール材12は、ゴム製シート等の不透水性の弾性部材である。シール材12は環状であり、内周部がモノパイル4の側面41に密着し、外周部がモノパイル4の周囲に配置されたコンクリートブロック11で押さえられる。コンクリートブロック11は、シール材12の外周部と被覆体7との間に隙間が生じないように被覆体7上に環状に配置される。すなわち、コンクリートブロック11は、
図3に示す被覆体7の孔73の縁部72を跨ぐように配置される。
【0055】
第4の実施形態においても、洗掘防止部材5を用い、モノパイル4と被覆体7との間に500mm程度以上の隙間14を敢えて設けることにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。洗掘防止構造1dは、被覆体7とモノパイル4との隙間14に環状の不透水性のシール材12を配置することによって隙間14の水底3の地盤2を確実に閉じるので、隙間14からの砂の吸出しが多く発生すると想定される場合に特に適している。洗掘防止構造1dでは、シール材12によって被覆体7とモノパイル4との隙間14を水が通らないように塞ぐので、被覆体7の中央部付近に形成する貫通孔10aの数を減らしてもモノパイル4近傍での洗掘発生を防止することができる。また、シール材12は弾性部材でありモノパイル4の水平変位に追随可能なので、暴風波浪時にも被覆体7とモノパイル4との隙間14からの洗掘を防止できる。
【0056】
なお、シール材は
図7に示したものに限らず、モノパイル4と被覆体7の隙間14を塞ぐように配置されればよい。
図8は洗掘防止構造1eを示す図である。洗掘防止構造1eで用いられるシール材12aは、モノパイル4の側面41に密着するようにモノパイル4と被覆体7の隙間14に配置される。シール材12aは、アスファルトマスチックなどの不透水性の粘弾性部材または他の弾性部材である。洗掘防止構造1eではシール材12aを用いることにより洗掘防止構造1dと同様の効果が得られる。
【0057】
[第5の実施形態]
図9は本発明の第5の実施形態に係る洗掘防止構造1fを示す図である。
図9(a)は洗掘防止構造1fの一部の鉛直断面図であり洗掘防止構造1の
図2(a)に対応する部分を示す図、
図9(b)は有孔管13の位置での水平断面を示す図である。
【0058】
第5の実施形態の洗掘防止構造1fは、有孔管13をさらに具備する点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。
【0059】
有孔管13は、洗掘防止部材5の透水性シート8の下面に沿って地盤2に配置された、側面に多数の孔が形成されたパイプ材である。有孔管13は、例えば透水性シート8の中央部側の縁部82に沿って配置された内側管13aと、外周部側の縁部81に沿って配置された外側管13bと、内側管13aと外側管13bとを繋ぐようにモノパイル4から見て放射状に配置された連結管13cとからなる。洗掘防止構造1fでは、洗掘防止部材5の下側においてモノパイル4近傍と被覆体7の外周部近傍との間で水圧差が生じた場合に、有孔管13を通して水を移動させることで水圧を均一化できる。
【0060】
第5の実施形態においても、洗掘防止部材5やフィルターユニット6を用いることにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、有孔管13を配置して洗掘防止部材5の下方の地盤2における水圧を均一化することで、特にモノパイル4近傍において洗掘防止部材5の上側と下側とで大きな水圧差が発生するのを抑制できる。
【0061】
なお、有孔管13の平面視での形状は
図9に示すものに限らない。内側管13aと外側管13bとの間に同心円状の管を追加してもよいし、連結管13cから縁部81の方向に向けて延びる魚の骨状の枝管を追加してもよい。また、例えば、モノパイル4の近傍や、洗掘防止部材5の外周部近傍において、有孔管13の開口端を洗掘防止部材5の上方に突出させてもよい。
【0062】
[第6の実施形態]
図10は本発明の第6の実施形態に係る洗掘防止構造の施工方法を示す図である。
図10(a)は洗掘防止部材5を設置した状態を示す図、
図10(b)はモノパイル4を打設した状態を示す図である。
【0063】
第6の実施形態は、被覆体7の孔73および透水性シート8の孔83の径がモノパイル外径42より小さい点で第1の実施形態と主に異なる。
【0064】
洗掘防止構造を施工するには、まず、
図10(a)に示すように洗掘防止部材5をモノパイル4の設置予定位置の水底3に設置する。洗掘防止部材5を設置したら、
図10(b)に示すように孔73および孔83を通るようにモノパイル4を打設し、洗掘防止部材5を貫通するようにモノパイル4を設置する。上記したように孔73、83の径はモノパイル外径42より小さいので、被覆体7の縁部72および透水性シート8の縁部82はモノパイル4の打設に伴って地盤2に差し込まれる。
【0065】
第6の実施形態においても、洗掘防止部材5を用いることにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。第6の実施形態では、洗掘防止部材5とモノパイル4との間に隙間が形成されないので、モノパイル4近傍からの砂の吸出しを防止でき、フィルターユニットやシール材の設置を省略できる。
【0066】
なお、第6の実施形態では被覆体7の孔73と透水性シート8の孔83の両方の径をモノパイル外径42より小さくしたが、いずれか一方の孔の径をモノパイル外径42より小さくしてもよい。被覆体7と透水性シート8はどちらも砂を通さないので、モノパイル4の打設に伴って被覆体7の縁部72と透水性シート8の縁部82のうちいずれか一方が地盤2に差し込まれることでモノパイル4近傍からの砂の吸出しが防止される。
【0067】
[第7の実施形態]
図11は、本発明の第7の実施形態に係る洗掘防止構造1gを示す図である。
図11(a)は洗掘防止構造1gの一部の鉛直断面図であり洗掘防止構造1の
図2(a)に対応する図、
図11(b)は洗掘防止構造1gの水平断面図であり洗掘防止構造1の
図1(b)に対応する図である。
【0068】
第7の実施形態の洗掘防止構造1gは、洗掘防止材としてフィルターユニット6cが用いられる点、不透水性の被覆マットとして被覆体7aが用いられる点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。
【0069】
図11に示すように、洗掘防止構造1gは、アスファルト合材等からなる被覆体7a、フィルターユニット6c、フィルター材15、摩耗防止シート9等からなる。被覆体7aは、外周近傍に複数の貫通孔10bが設けられる。すなわち、被覆体7aの中央近傍(モノパイルが貫通する開口部の周囲)には貫通孔は形成されない。
【0070】
フィルター材15は、従来のフィルター層に相当する10~100mm程度の粒径の石又は砕石からなる。フィルター材15は、モノパイル4と被覆体7aの縁部72との隙間14の水底3の地盤2上に配置される。フィルター材15の厚さは、被覆体7aの厚さよりやや大きく、フィルター材15の一部は被覆体7aの縁部72付近の上面まで這い出すように配置される。
【0071】
フィルターユニット6cは、フィルター材15の上部に、モノパイル4の周囲を囲むように複数配置される。フィルターユニット6cは、繊維製の網体に石又は砕石を充填したものであり、吊下げた時よりも水底3に設置した時に径が広がるように変形可能であり、モノパイル4の揺動に追従可能である。複数のフィルターユニット6cは、隣り合うフィルターユニット6cの端部が重なり合い、各フィルターユニット6cの一部が被覆体7a上に載るように配置されて、被覆体7aとモノパイル4の側面41との間との隙間14の水底3の地盤2を塞ぐ。フィルターユニット6cは、上部に環状体61を有する。複数のフィルターユニット6cは、環状体61に線材62を挿通して軽く締め上げることによって、互いに連結されてモノパイル4の周りに固定される。環状体61は金属製リング等であり、線材62はアラミド繊維製のロープ等である。
【0072】
洗掘防止構造1gを施工するには、まずモノパイル4の設置予定位置の水底3に被覆体7aを設置し、被覆体7aの中央の孔の水底3の地盤2を貫通するようにモノパイル4を打設する。次に、モノパイル4の側面41と被覆体7aの縁部72との間に形成された隙間14の地盤2上に、フィルター材15を配置する。その後、フィルターユニット6cを、フィルター材15の上部に、隙間14を塞ぎつつモノパイル4の側面41に接触させるようモノパイル4の周りに配置する。
【0073】
第7の実施形態の洗掘防止構造1gにおいても、モノパイル4と被覆体7aとの間に500mm程度以上の隙間14を敢えて設けることにより、暴風波浪時に被覆体7aの上下に水圧差が発生しても、従来のように僅かな隙間に水流が集中することがない。そのため、隙間14を通る水流を分散させて洗掘の発生を低減できる。
【0074】
洗掘防止構造1gでは、隙間14の水底3の地盤2上にフィルター材15を配置し、フィルター材15の上部にフィルターユニット6cを配置してモノパイル4近傍の隙間14の水底3の地盤を塞ぐことにより、フィルターユニット6のみで隙間14を塞ぐ場合と比較して、隙間14からの砂の吸出しをより確実に抑えることができる。また、フィルターユニット6cが線材62によって環状に連結して固定されるので、暴風波浪時にフィルターユニット6cの移動を防止でき、モノパイル4に生じる水平変位にフィルターユニット6cを追随させることができる。
【0075】
洗掘防止構造1gにおいても、被覆体7aの孔を打設の目印としてモノパイル4を所定の位置に確実に且つ容易に設置することができる。さらに、モノパイル4を打設するより先に被覆体7aを敷設するので、敷設時にモノパイル4やその他の付帯設置物等を傷つけることがない。
【0076】
[第8の実施形態]
図12は、本発明の第8の実施形態に係る洗掘防止構造1hを示す図である。
図12(a)は洗掘防止構造1hの一部の鉛直断面図であり洗掘防止構造1の
図2(a)に対応する図、
図12(b)は地盤2に配置した被覆体7bの平面図である。
図13(a)(b)はフィルターユニット6dの例を示す図であり、網体63の一部を省略して図示している。
【0077】
第8の実施形態の洗掘防止構造1hは、洗掘防止材としてフィルターユニット6dが用いられる点、不透水性の被覆マットとして被覆体7bが用いられる点で第1の実施形態の洗掘防止構造1と主に異なる。
【0078】
図12に示すように、洗掘防止構造1hは、アスファルト合材等からなる被覆体7b、フィルターユニット6d、摩耗防止シート9a等からなる。被覆体7bは、外周近傍に複数の貫通孔10bが設けられる。被覆体7bは、外周側の縁部71の近傍および内周側の縁部72の近傍に、被覆体7bを吊り上げ可能な吊り部74を有する。被覆体7bの外周側と内周側の吊り部74は、被覆体7bの内部においてつながっている。なお、外周側の縁部71の近傍および内周側の縁部72の近傍には、吊り部74を吊り上げた際に、被覆体7bに局所的に力が加わることを抑制する補強部材を周方向に内在させてもよい。
【0079】
図13に示すように、フィルターユニット6dは、繊維製の網体63の中に充填材64として石又は砕石を充填したものであり、少なくとも網体63の下方にはフィルター材64aが充填される。フィルター材64aは、従来のフィルター層に相当する10~100mm程度の粒径の石又は砕石からなる。フィルターユニット6dは、
図13(a)に示すように網体63の下方にフィルター材64aが充填されて上方にフィルター材64aより粒径の大きい充填材64が充填されてもよいし、
図13(b)に示すように網体63の全体にフィルター材64aが充填されてもよい。
【0080】
フィルターユニット6dは、モノパイル4の周囲を囲むように複数配置される。フィルターユニット6dは、吊下げた時よりも水底3に設置した時に径が広がるように変形可能であり、モノパイル4の揺動に追従可能である。複数のフィルターユニット6dは、隣り合うフィルターユニット6dの端部が重なり合い、各フィルターユニット6dの一部が被覆体7b上に載るように配置されて、被覆体7bとモノパイル4の側面41との間との隙間14の水底3の地盤2を塞ぐ。
【0081】
摩耗防止シート9aは、フィルターユニット6dのモノパイル4との接触面側に張り付けて配置される。なお、摩耗防止シート9aは、フィルターユニット6dの外面に配置してもよく、又は、内面側に配置してもよい。すなわちフィルターユニット6dは摩耗防止シート9aを挟んでモノパイル4の側面41に接触する。摩耗防止シート9aは、ゴム製またはウレタン製のシートであることが望ましい。
【0082】
洗掘防止構造1hを施工するには、まずモノパイル4の設置予定位置の水底3に被覆体7bを吊り部74で吊って設置し、被覆体7bの中央の孔73の水底3の地盤2を貫通するようにモノパイル4を打設する。次に、モノパイル4の側面41と被覆体7bの縁部72との間に形成された隙間14の地盤2上に、フィルターユニット6dを、隙間14を塞ぎつつモノパイル4の側面41に接触させるようモノパイル4の周りに配置する。
【0083】
第8の実施形態の洗掘防止構造1hにおいても、モノパイル4と被覆体7bとの間に500mm程度以上の隙間14を敢えて設けることにより、暴風波浪時に被覆体7bの上下に水圧差が発生しても、従来のように僅かな隙間に水流が集中することがない。そのため、隙間14を通る水流を分散させて洗掘の発生を低減できる。
【0084】
洗掘防止構造1hでは、隙間14を網体63の少なくとも下方にフィルター材64aが充填されたフィルターユニット6dで塞ぐことにより、フィルター材64aが充填されないフィルターユニット6で塞ぐ場合と比較して、隙間14からの砂の吸出しをより確実に抑えることができる。また、被覆体7bの外周側の縁部71および内周側の縁部72の近傍に複数の吊り部74が設けられるので、被覆体の全体に多数の吊り金具を設けた場合と比較して、被覆体7bの損傷を防止しつつ安定した姿勢で吊り下げて水底3に設置することができる。
【0085】
洗掘防止構造1hにおいても、被覆体7bの孔73を打設の目印としてモノパイル4を所定の位置に確実に且つ容易に設置することができる。さらに、モノパイル4を打設するより先に被覆体7bを敷設するので、敷設時にモノパイル4やその他の付帯設置物等を傷つけることがない。
【0086】
なお、第1から第3、第7、第8の実施形態では、洗掘防止構造の施工方法として、被覆マットを水底地盤に敷設してモノパイル4を打設した後、フィルター材15を設置し、その後フィルターユニット6cをフィルター材15の上部に設置する手順を記載したが、被覆マットを水底地盤に敷設してフィルター材15を設置した後、モノパイル4を打設し、その後フィルターユニット6cをフィルター材15の上部に設置してもよい。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、洗掘防止部材5、5aでは被覆体7の全面に略均等に貫通孔10を形成したが、貫通孔10の形成位置はこれに限らない。被覆体7の外周近傍以外に貫通孔10aを設けるか否かは、洗掘防止構造の周辺水域の流体力条件や被覆体7の条件によって決定される。外周近傍以外に貫通孔10aを設ける場合、透水性部材で塞がれる貫通孔10aは、少なくともモノパイル4の近傍であって被覆体7の中央部近傍に高密度に形成されれば、例えば、被覆体7の径方向の中央部近傍又は外周部側では貫通孔10aの配置密度を小さくしたり、貫通孔10a自体が形成されなくてもよい。モノパイル4近傍では流速が大きくなり被覆体7の上側と下側での水圧差が発生しやすいが、被覆体7の中央部近傍に貫通孔10aを形成することにより、モノパイル4近傍において水圧差を確実に解消して洗掘の発生を抑制できる。また、水中構造体はモノパイルに限らず、被覆体7、7a、7bはアスファルトマット以外の他の可撓性を有する材質の不透水性のマットでもよい。
【符号の説明】
【0089】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h………洗掘防止構造
2………地盤
3………水底
4………モノパイル
5、5a………洗掘防止部材
6、6a、6b、6c、6d………フィルターユニット
7、7a、7b………被覆体
8………透水性シート
8a………透水性部材
9、9a………摩耗防止シート
10、10a、10b………貫通孔
11………コンクリートブロック
12、12a………シール材
13………有孔管
13a………内側管
13b………外側管
13c………連結管
14………隙間
15、64a………フィルター材
41………側面
42………モノパイル外径
61………環状体
62………線材
63………網体
64………充填材
71、81、72、82………縁部
73、83………孔