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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111338
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電子レンジ調理用パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
B65D81/34 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013147
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 和美
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA05
3E013AB01
3E013AE12
3E013BA02
3E013BA30
3E013BB12
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF03
3E013BG04
3E013BG20
3E013CC12
(57)【要約】
【課題】サイドシール部に充填開口部を有するスタンディングパウチにおいて、充填シール部の突出幅を適切に管理することにより、電子レンジ加熱時に、パウチが傾いてしまうという問題を解決しようとするもの。
【解決手段】基材層21およびシーラント層28を有する2枚の積層体20のシーラント層同士を対向させて、この間に、基材層およびシーラント層を有する底テープ8を、シーラント層が外側になるように2つ折りにして挿入し、周縁を熱シールしてなるスタンディングパウチにおいて、トップシール部2とサイドシール部3の一方は熱シールされており、他方のサイドシール部3はその一部がサイドシール部から突出した充填用開口部9であって、内容物の充填後に熱シールされて充填シール部5を形成しており、充填シール部5がサイドシール部3から突出した距離Aが、0mm≦A≦9mmであることを特徴とする電子レンジ調理用パウチ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層およびシーラント層を有する2枚の積層体のシーラント層同士を対向させて、この間に、基材層およびシーラント層を有する底テープを、シーラント層が外側になるように2つ折りにして挿入し、周縁を熱シールしてなるスタンディングパウチにおいて、
トップシール部とサイドシール部の一方は熱シールされており、他方のサイドシール部はその一部がサイドシール部から突出した充填用開口部であって、内容物の充填後に熱シールされて充填シール部を形成しており、
充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aが、0mm≦A≦9mmであることを特徴とする電子レンジ調理用パウチ。
【請求項2】
充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aが、0mm≦A≦7mmであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用パウチ。
【請求項3】
トップシール部の内側にファスナーを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ調理用パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ(包装袋)に関し、特に内容物を取り出すことなく、そのまま袋ごと電子レンジで加熱調理することが可能な電子レンジ調理用パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
食品を充填する包装袋において、常温で長期保存が可能なものとして、アルミニウム箔を層構成に含む積層体を用いた包装袋が知られている。アルミニウム箔は高いガスバリア性を有し、酸素や水蒸気を遮断するため、食品を充填した後に高温で滅菌処理を施すことにより内部が無菌状態となり、常温における長期保存が可能となる。
【0003】
近年電子レンジの普及により、包装袋をそのままあるいは開封した状態で電子レンジで加熱調理したいというニーズが生まれてきた。しかしアルミニウム箔を用いた包装袋を電子レンジで加熱すると、火花が発生するため電子レンジで加熱することができなかった。
【0004】
この問題は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム等の耐熱性の高いフィルム基材に酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着した透明ガスバリア性フィルムが実用化されたことにより、解消されることとなった。
【0005】
透明ガスバリア性フィルムは、アルミニウム箔並みのガスバリア性を有するばかりでなく、電子レンジで加熱することができ、しかも透明であるため包装袋内部の様子が観察できる。このような用途には正に適したものである。
【0006】
一方、包装袋の使い方として、単に加熱するだけでなく、例えば調味料を添加した上で加熱するなど、何らかの調理を伴う使用方法が提案されるようになり、包装袋の形状として、従来の扁平な四方袋に替わり、自立性を有するいわゆるスタンディングパウチが注目されるようになった。
【0007】
一般的なスタンディングパウチは、2枚の積層体の間に底面となる底テープを挟んで周縁を熱シールしたもので、内容物を充填すると膨らんで底面を形成するため自立性を発揮する。上部を開封することにより、調味料等を添加する操作がし易いという特徴を持っている。
【0008】
通常、スタンディングパウチは、最上部を充填用開口部とするのが一般的であり、使用する際の開口部も最上部とするのが一般的である。しかしさらなるニーズとして、スタンディングパウチの上部開口部に、包装袋を再封止するためのファスナーを備えたいという要望が生じたのである。
【0009】
しかし最上部にファスナーを配置すると、ここを充填用開口部とすることが実際上できなくなる。特許文献1に記載されたパウチおよび内容物封入パウチは、この問題を解消するためになされたものであり、サイド方向に充填用開口部を設けたファスナー付きスタンディングパウチである。
【0010】
さらに特許文献2に記載されたパウチは、特許文献1に記載されたパウチの改良型であり、電子レンジで加熱した際に発生する水蒸気の圧力によって、ファスナーが開く時の音を小さくしたものである。
【0011】
特許文献1および2に記載されたパウチは、いずれも上部に開口部およびファスナーを
備え、充填用開口部をサイド方向に設けたものであるが、充填用開口部は、充填時の充填適性や、充填後のシール作業適性を考慮すると、どうしてもサイドシール部よりも突出した形状にならざるを得ない。
【0012】
ところが、この充填シール部の突出幅によっては、パウチを立てた状態で電子レンジで加熱した場合に、サイドシール部が腰砕け状態になり、パウチが傾いてしまうという問題が生じることが判明したのである。パウチが傾くと、場合によっては内容物がこぼれ、安全上および衛生上大きな問題となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5946780号公報
【特許文献2】特許第6409719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は、サイドシール部に充填開口部を有するスタンディングパウチにおいて、充填シール部の突出幅を適切に管理することにより、電子レンジ加熱時に、パウチが傾いてしまうという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材層およびシーラント層を有する2枚の積層体のシーラント層同士を対向させて、この間に、基材層およびシーラント層を有する底テープを、シーラント層が外側になるように2つ折りにして挿入し、周縁を熱シールしてなるスタンディングパウチにおいて、トップシール部とサイドシール部の一方は熱シールされており、他方のサイドシール部はその一部がサイドシール部から突出した充填用開口部であって、内容物の充填後に熱シールされて充填シール部を形成しており、充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aが、0mm≦A≦9mmであることを特徴とする電子レンジ調理用パウチである。
【0016】
本発明に係る電子レンジ調理用パウチは、充填シール部の突出幅を適切に設定したことにより、電子レンジで加熱した際にパウチが傾くことなく、安全に加熱することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aが、0mm≦A≦7mmであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用パウチである。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、トップシール部の内側にファスナーを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ調理用パウチである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電子レンジ調理用パウチは、サイドシール部を充填用開口部としたので、トップシール部を予めシールした使用時の開口部とすることができる。この事は、開口部に開口し易いさまざまな処理、例えば開封を誘導するハーフカット線、それも表裏異なる形状にするといった自由度が高くなる。
【0020】
またさらに、本発明に係る電子レンジ調理用パウチにおいては、同様の理由によりトップシール部にファスナーを設けることができる。これにより、内容物を一度に使い切らない場合に、再封止して保存することが可能となる。
【0021】
本発明に係る電子レンジ調理用パウチは、充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aを、0mm≦A≦9mmと適切に設定したことにより、電子レンジで加熱した際にパウチが軟化して腰砕け状態となりパウチがサイドシール部に向かって傾く現象を防止することができる。
【0022】
またさらに、請求項2に記載のように、充填シール部がサイドシール部から突出した距離Aを、0mm≦A≦7mmとした場合には、電子レンジで加熱した際にパウチが軟化して腰砕け状態となりパウチがサイドシール部に向かって傾く現象をより完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチの一実施態様を示した平面模式図である。
図2図2は、図1に示した電子レンジ調理用パウチの未シール状態を示した平面模式図である。
図3図3は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチの他の実施態様を示した平面模式図である。
図4図4は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチを構成する積層体の層構成の一例を示した断面模式図である。
図5図5は、実施例および比較例において、充填シール部がサイドシール部から突出した距離(A)を0mm~10mmまで変化させた状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電子レンジ調理用パウチについて説明する。図1は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1の一実施態様を示した平面模式図である。図2は、図1に示した電子レンジ調理用パウチの未シール状態を示した平面模式図である。また、図4は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1を構成する積層体20の層構成の一例を示した断面模式図である。
【0025】
本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1は、少なくとも基材層21およびシーラント層28を有する2枚の積層体20、すなわち表面積層体6と裏面積層体7のシーラント層同士を対向させて、この間に、すくなくとも基材層21およびシーラント層28を有する底テープ8を、シーラント層28が外側になるように2つ折りにして挿入し、周縁を熱シールしてなるスタンディングパウチである。
【0026】
トップシール部2とサイドシール部3の一方は熱シールされており、他方のサイドシール部3はその一部がサイドシール部から突出した充填用開口部9であって、内容物の充填後に熱シールされて充填シール部5を形成している。
【0027】
本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1においては、充填シール部5がサイドシール部3から突出した距離Aが、0mm≦A≦9mmであることを特徴とする。Aがこの範囲にあることにより、内容物を充填したパウチを電子レンジで加熱した際に、充填シール部5付近においてパウチが腰折れを生じて、全体が傾いたり、場合によっては内容物がこぼれたりすることがない。
【0028】
なお、距離Aについては、実験の結果、0mm≦A≦7mmであることが、より望ましいことが判明している。
【0029】
図1、2に示した例では、パウチ上部に開封開始部10と、開封開始部10から出発する開封誘導線11が施されている。開封誘導線11は、ハーフカット線であり、円滑な開封をもたらす効果がある。ハーフカット線の形成には、レーザービームや刃物が用いられる。
【0030】
図3は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1の他の実施態様を示した平面模式図である。この例では、パウチの上部に開封開始部10から出発する表裏異なる形状の開封誘導線11が施されており、さらに開封誘導線の下にファスナー12が設けられている。このようにすることにより、ファスナーの開封に当たって、表裏の積層体の端部がずれるため手で掴み易く、開封が容易になる。
【0031】
この他、特に図示しないが、ファスナーに加えて、蒸気抜き機構を設けても良い。そうすることにより、開封後に具材等を添加し、ファスナーを閉じて電子レンジで加熱した際に、発生する水蒸気を安全に逃がすことができる。
【0032】
パウチを構成する積層体について説明する。図4は、本発明に係る電子レンジ調理用パウチ1を構成する積層体20の層構成の一例を示した断面模式図である。この例では、基材層21の裏面に印刷層22が形成されており、この印刷済みの基材層21とガスバリア層24と中間層26とシーラント層28が、それぞれ接着剤層23、25、27によって接着されている。
【0033】
基材層21とシーラント層28は必須であり、他の層は省略されたり、2以上の役割を兼ねたりすることができる。例えば中間層としてガスバリア性の合成樹脂フィルムを用いれば、ガスバリア層を省略することができる。また基材層として無機酸化物蒸着フィルムを用いれば、ガスバリア層を兼ねることができる。
【0034】
基材層21としては、印刷基材を兼ねることが多いので、印刷適性を有する合成樹脂フィルムが使用される。例を挙げれば、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムや、延伸ナイロンフィルム(ONy)、延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム等である。
【0035】
中間層26としては、積層体20の強度やコシの強さの向上を目的として付加されることが多く、ナイロンフィルム、PETフィルム、PPフィルム等を用いることができる。
【0036】
シーラント層28としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。本発明に係る電子レンジ調理用パウチの場合、電子レンジによる加熱が前提となるため、耐熱性を考慮してポリプロピレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0037】
各層の貼り合わせに使用する接着剤としては、一般的なドライラミネート用接着剤を用いることができる。以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る電子レンジ調理用
パウチについてさらに具体的に説明する。
【0038】
<実施例1>
基材層として裏面に二酸化ケイ素を蒸着した厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(凸版印刷株式会社製GLフィルム)の蒸着面に印刷層を形成した。中間層として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを用い、シーラント層として厚さ60μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを用い、これらをドライラミネート接着剤を用いて貼り合わせたものを積層体とした。
【0039】
この積層体を用いて図2に示したようなスタンディングパウチを作成し、これに麻婆豆腐用タレ130gを充填して充填開口部をシールした。この時図5(1)に示したように、充填シール部とサイドシール部が同一位置になるように、すなわちAの値が0mmとなるようにした。
【0040】
この包装体に120℃30分のレトルト殺菌処理を施した後、上部を開封し、絹ごし豆腐350g(1~2cm角の賽の目状)を追加して600Wの電子レンジで4分加熱し、状態を観察した。
【0041】
評価基準は、以下の通りとした。
〇 :サイドシール部が折れない、または段差部より上を基点に折れて内容物は漏れない△ :パウチは傾くが内容物の漏れは生じない
× :パウチが傾いて内容物が漏れる
【0042】
<実施例2>
図5(2)に示したように、Aの値を3mmとした以外は、実施例1と同様にパウチを作成し、同様に評価した。
【0043】
<実施例3>
図5(3)に示したように、Aの値を5mmとした以外は、実施例1と同様にパウチを作成し、同様に評価した。
【0044】
<実施例4>
図5(4)に示したように、Aの値を7mmとした以外は、実施例1と同様にパウチを作成し、同様に評価した。
【0045】
<実施例5>
図5(5)に示したように、Aの値を9mmとした以外は、実施例1と同様にパウチを作成し、同様に評価した。
【0046】
<比較例1>
図5(6)に示したように、Aの値を10mmとした以外は、実施例1と同様にパウチを作成し、同様に評価した。
以上の結果を表1にまとめた。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果から、本発明に係る電子レンジ調理用パウチの優位性が確認できた。
【符号の説明】
【0049】
1・・・電子レンジ調理用パウチ
2・・・トップシール部
3・・・サイドシール部
4・・・ボトムシール部
5・・・充填シール部
A・・・充填シール部がサイドシール部から突出した距離
6・・・表面積層体
7・・・裏面積層体
8・・・底テープ
9・・・充填用開口部
10・・・開封開始部
11・・・開封誘導線
12・・・ファスナー
13・・・シールバー
20・・・積層体
21・・・基材層
22・・・印刷層
23・・・接着剤層
24・・・ガスバリア層
25・・・接着剤層
26・・・中間層
27・・・接着剤層
28・・・シーラント層
図1
図2
図3
図4
図5