IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本ファインケムの特許一覧

特開2023-111473脱水縮合をともなう環化反応による環化生成物の製造方法、および1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111473
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】脱水縮合をともなう環化反応による環化生成物の製造方法、および1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/14 20060101AFI20230803BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C07D231/14
A61K31/415
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013347
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229656
【氏名又は名称】株式会社日本ファインケム
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】飯島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】和須津 絢瀬
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086BC36
4C086NA20
4C086ZC80
(57)【要約】
【課題】脱水縮合をともなう環化反応において、共沸脱水操作や反応後に濾過工程が必要となる無機系固体脱水剤の添加など、副生水の除去工程を必要としない環化生成物の製造方法を提供すること、およびその実施態様となる発明として、医農薬分野等における重要中間体として有用な1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造において、簡便且つ有利な工業的規模での製造方法を提供することである。
【解決手段】脱水縮合をともなう環化反応において、脱水剤として炭酸エステル類を用いる反応方法の発明であり、具体的には、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体を環化させる反応において炭酸エステル類を脱水剤として用いる、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の工業的規模での製造方法の発明である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水縮合をともなう環化反応において、脱水剤として炭酸エステル類を用いることを特徴とする環化生成物の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)
【化1】

(式中、RからRは水素原子または炭素数1から4までのアルキル基を表し、Rは炭素数1から4までのアルキル基を表す。)で表されるヒドラジノ酢酸エステル誘導体の環化反応において、脱水剤として炭酸エステル類を用いることを特徴とする
一般式(2)
【化2】

(式中、RからRは上記と同じ意味を表す。)で表される1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水縮合をともなう環化反応において、副生する水を除去する必要がない、新規な反応方法による、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類のような環化生成物を製造する製造方法に関するものであり、具体的には当該製造方法を用いた、医農薬分野等における重要中間体として有用な、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の工業的な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類は特許文献1から2に見られるように1,3-ジメチルピラゾール-5-カルボン酸エステルの4位をクロロメチル化した後、還元条件で脱塩素化によりメチル基を導入して製造する方法が知られている。しかしこの方法は1,3-ジメチルピラゾール-5-カルボン酸エステルの4位クロロメチル化反応時に有毒物質のビス(クロロメチル)エーテルが生成するなどの問題がある。また、特許文献3にはブロモ酢酸エチル、ジメチルスルフィド、ジアセチルを用いて合成した中間体とモノメチルヒドラジンとを反応させ1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸エチルを合成している。しかしながら、4段階で10%と低収率で、悪臭のジメチルスルフィドを用いている。
【0003】
一方、特許文献4にはヒドラジノ酢酸エステル誘導体を塩基存在下に環化反応させ1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸エステル類を得る方法が記載されている。この反応では、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体を共沸脱水させてから反応している。また、共沸脱水以外の脱水方法として、塩化カルシウムやモレキュラーシーブなどの無機系固体の脱水剤の添加も記載されているが、これらの脱水剤は反応終了後に目的物から濾過等の分離操作が必要となる。
【0004】
特許文献5および6ではピラゾール合成において炭酸エステル類を使用している。しかし、特許文献5では炭酸ジメチルを溶媒として、モレキュラーシーブを脱水剤として用いることで収率が40%から85%まで向上しており(実施例1と実施例2の比較)、炭酸エステル類が脱水剤として有効であるとの記載はされていない。特許文献6では炭酸エステル類を用いることで反応温度を上げても収率低下が起こらない1,3-ジアルキルピラゾール-4-カルボン酸の製造方法であり、炭酸エステル類の脱水効果により収率が向上するとの記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-342178号公報
【特許文献2】特開2008-007503号公報
【特許文献3】国際公開第2010/045764号
【特許文献4】特開2008-208047号公報
【特許文献5】特開2001-58982号公報
【特許文献6】特開2000-212166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、現在知られている1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造方法は、共沸脱水による液相からの脱水工程や無機系固体脱水剤の使用による濾過工程が必要となること、また目的物の収率の点より工業的には必ずしも満足できる方法であるとは言えなかった。そこで煩雑な後処理が不要となる、脱水剤を用いた当該化合物の製造方法が求められていた。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、まず共沸脱水や無機系固体脱水剤の濾過工程を必要とせず、高収率である新たな反応に基づく環化生成物の製造方法を提供することを目的とするものである。そして、この製造方法の実施形態の一つとして、ヒドラジノカルボン酸エステル誘導体の環化反応により、医農薬中間体として有用な1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体の環化により、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルを得るような、脱水縮合をともなう環化反応において、炭酸エステル類を用いることにより、当該炭酸エステル類が脱水剤として機能し、脱水縮合反応において生成する副生水を除去し収率を上げるための共沸脱水や、使用した無機系の固体脱水剤の濾過工程などが不要になる反応方法となることを見出し、実際に、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体の脱水環化により、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルを得る際に、炭酸エステル類をあたかも溶剤のようにして用いることにより、反応系中に副生水が混在している状態であっても高収率で1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルが得られることが判明した。
【0009】
要するに、本発明は、脱水縮合をともなう環化反応において、炭酸エステル類を用いると、脱水剤として働くことを見出し、煩雑な後処理の必要無く、例えば、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体から得られる環化生成物である1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類を工業的規模で、簡便に製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、脱水縮合をともなう環化反応において、脱水剤として炭酸エステル類を用いて行う環化生成物の製造方法である。
また、具体的には、本発明は、
一般式(1)
【化1】

(式中、RからRは水素原子または炭素数1から4までのアルキル基を表し、Rは炭素数1から4までのアルキル基を表す。)で表されるヒドラジノ酢酸エステル誘導体を塩基の存在下で炭酸エステル類を脱水剤として反応させることを特徴とする、
一般式(2)
【化2】

(式中、RからRは上記と同じ意味を表す。)で表される1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、脱水縮合をともなう環化反応において炭酸エステル類を用いることにより、平衡をずらし、収率を上げるための共沸脱水や無機系の固体脱水剤の使用とその濾過工程などが不要となり、高収率で環化生成物を得ることができる環化生成物の工業的な製造方法が提供されるとともに、本発明のヒドラジノ酢酸エステル誘導体から、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類を、脱水縮合をともなう環化反応により製造する製造方法にあっては、炭酸エステル類を脱水剤として用いることで、反応に伴って副生する水の効果的な脱水剤として働き、共沸脱水工程や無機系固体脱水剤の濾過工程が不要となり工業的に、より有利に当該環化した化合物を製造することが可能となる簡便な製造方法が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の製造方法について更に詳細に説明する。
本発明は、脱水縮合をともなう環化反応において、脱水剤として炭酸エステル類を用いる、環化生成物の製造方法の発明である。
本発明で対象とする、環化反応は、脱水縮合をともなうもので、例えば、後述する反応式(A)で示されるような、出発原料として、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体(1)を用い、塩基の存在下で、酢酸エステルのα位の水素が引き抜かれて生成したエノラートが、カルボニル基の炭素を攻撃し、分子内で環化するとともに水が副生するというような反応であり、このような分子内の環化反応には、例えば、分子内アルドール反応などの反応例もある。
また、本発明でいう、「環化生成物」とは、脱水縮合をともなう環化反応によって得られる化合物であって、分子内で環化が起こり、環が形成された化合物であり、通常は製造目的の化合物である。
【0013】
ここで脱水剤として利用できる炭酸エステル類としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸ジ-t-ブチル等があげられ、これらの炭酸エステル類をそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
反応方法としては、炭酸エステル類をあたかも溶剤のようにして用いることができ、溶剤を用いる場合は、溶剤とともに、溶剤を用いない場合は、単独に炭酸エステル類を、出発原料とともに反応系に添加して、そのまま反応させればよく、反応に際して、共沸脱水などによる脱水操作などの脱水縮合により生じた副生水を除去するための操作を必要としない、簡便な反応方法により環化生成物を製造することができる。
【0015】
また、反応に際しては、必要に応じて溶媒や触媒を用いることができるが、これらの溶媒や触媒を含め、出発原料および炭酸エステル類の仕込み量、ならびに反応温度、反応圧力、反応時間などの反応条件は、製造する当該反応で得ることになる環化生成物の種類に応じて適宜選択された条件により反応が行われる。通常は、出発原料1当量に対して、炭酸エステル類を1.0~10.0当量の範囲で用い、反応温度として10~70℃、反応時間としては15時間程度の条件で、反応を行うことができる。
【0016】
また、炭酸エステル類によって、副生した生成水の脱水を行わなくても、収率よく環化生成物が得られる理由は、反応系内における副生水、出発原料、環化生成物と炭酸エステル類の相互作用に基づき、副生した水と炭酸エステル類とが反応して水を除去し、エステルの加水分解を防いでいる、と考えられる。そして、以下に述べるヒドラジノ酢酸エステル誘導体を脱水縮合により分子内環化をおこさせ1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルを得る反応と同様な反応機構となる、脱水縮合をともない、副生水を生成するような他の分子内環化反応による環化生成物の生成反応においても、同様な効果が認められている。
このような別の出発原料を用いた分子内環化反応を用いた環化生成物の製造方法には、例えば、次のようなものがあげられる。
【化3】

ただし、Rは炭素数1~4のアルキル基である。
【0017】
次に、本発明における具体的な、1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルの製造方法について説明する。当該製造方法は、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体(1)の環化反応において炭酸エステル類を脱水剤として用いることにより、一般式(2)で示される1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類を製造するものである。この反応工程は下記反応式(A)で示される。
【化4】

反応式(A)
【0018】
ここで、式(1)および(2)の化合物において置換基RからRは水素原子または炭素数1から4までのアルキル基を表し、Rは炭素数1から4までのアルキル基を表す。炭素数1から4までのアルキル基としては通常、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法においては、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体を塩基と脱水剤である炭酸エステル類の存在下、所定の時間、所定の温度、所定の圧力で反応させることにより行うことができる。
【0020】
脱水剤として用いることができる炭酸エステル類としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸ジ-t-ブチル等を用いることができる。これらはそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも炭酸エステル類が好ましく、特に炭酸ジメチル、炭酸ジエチルが好ましい。脱水剤の使用量は基質のヒドラジノ酢酸エステル誘導体(1)に対して、0.5~10.0当量が好ましく、特に1~3当量が好ましい。
【0021】
反応に用いることができ、いわゆる触媒となる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド等の金属アルコキシド類、あるいはピリジン、モルホリン、トリエチルアミン等の有機塩基類を使用することができる。これらの塩基はそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも金属アルコキシド類が好ましく、特にナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドが好ましい。これら金属アルコキシド類はアルコール溶液またはそれらの単体の粉体を用いても良い。塩基の使用量は基質のヒドラジノ酢酸エステル誘導体(1)に対して0.5~5当量が好ましく、1.0~1.5当量が特に好ましい。
【0022】
反応温度としては、10~70℃が好ましく、30~50℃であることがさらに好ましい。
また、反応時間は、1~5時間であることが好ましく、2~3時間であることがさらに好ましい。この条件の範囲内であると、収率80%以上という高収率で1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステルを得ることができる。
さらに、反応圧力については、常圧で行うことが、操作性の点で好ましいが、反応系の蒸気圧と反応温度の点から、減圧下ないし加圧下で行っても差し支えない。
【0023】
さらに、出発原料や環化生成物の溶解性や、反応性などの観点から、必要に応じて溶媒を用いることができるが、用いる溶媒としては、出発原料や環化生成物の種類にもよるが、一般に、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶剤、エステル系溶剤などが好ましく用いられ、これらの溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、塩基を溶解させる点から、メタノール、エタノールなどが好ましく用いられる。また、溶媒の配合量としては、ヒドラジノ酢酸エステル誘導体(1)100質量部に対して、50~100質量部が好ましく、80質量部程度であることがより好ましい。
【0024】
反応終了後は、中和や洗浄分離などの通常知られている方法で反応液を処理した後、蒸留等の方法で1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類を単離することができる。
ここで、中和や洗浄分離などに際して、反応上がり液に対して、溶媒を追加して行うことができ、使用できる溶媒としては、反応に用いることができるような上述した溶媒があげられる。なお、洗浄分離などの効率を考慮し、水と分離するような溶媒が好ましく、溶媒量としては、得られた1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類100質量部に対して、150質量部程度の量とすることが、好ましい。
なお、上記の反応終了後の処理において、中和後に濃縮し、次いで洗浄するという、洗浄に先立ち濃縮工程を設けることにより、製品収率を3~5%向上することができ、貴重な環化生成物を得るには、濃縮工程を組み込むことも好ましい製造方法のひとつとなる。
【0025】
なお、一般式(1)のヒドラジノ酢酸エステル誘導体は特開2008-208047号公報に記載されている方法に準じて、ヒドラジン類とブロモ酢酸エステル、クロロ酢酸エステルあるいはヨード酢酸エステル等のハロゲノ酢酸エステルとの反応後にジアセチルを反応させて合成することができる。
【実施例0026】
以下に、実施例を挙げて本発明とその実施態様となる発明について、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲が限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例において、収率の算出には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した。
【0027】
参考例1
2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチルの合成
2L四つ口フラスコにモノメチルヒドラジン149.7g(3.25mol)、メタノール520.7g(16.25mol)、トリエチルアミン296.0g(2.93mol)を仕込み、撹拌下5℃まで冷却した。ここにブロモ酢酸メチル497.2g(3.25mol)を2時間かけて滴下した。続けて1時間反応を行い、ジアセチル265.8g(3.09mol)を1.5時間かけて滴下し、10℃にて19時間反応をおこなった。得られた反応液を減圧濃縮し、トルエン900.0gと水404.8gを加え撹拌した。分液により水層を除去しトルエン層に水147.2gを加え、洗浄した。分液により水層を除去後、トルエン層を減圧濃縮し、2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチル541.2gを得た。使用したブロモ酢酸メチルに基づいた収率は74.7%であった。
【0028】
参考例2
2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸エチルの合成
3L四つ口フラスコにモノメチルヒドラジン149.7g(3.25mol)、エタノール748.6g(16.25mol)、トリエチルアミン296.0g(2.93mol)を仕込み、撹拌下5℃まで冷却した。ここにブロモ酢酸エチル542.8g(3.25mol)を2時間かけて滴下した。続けて1時間反応を行い、ジアセチル265.8g(3.09mol)を1.5時間かけて滴下し、10℃にて19時間反応をおこなった。得られた反応液を減圧濃縮し、トルエン900.0gと水404.8gを加え撹拌した。分液により水層を除去しトルエン層に水147.2gを加え、洗浄した。分液により水層を除去後、トルエン層を減圧濃縮し、2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸エチル551.2gを得た。使用したブロモ酢酸エチルに基づいた収率は72.0%であった。
【0029】
実施例1
脱水剤に炭酸ジメチルを用いた、1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルの合成
2L四つ口フラスコに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液247.7g(1.28mol)、炭酸ジメチル192.8g(2.15mol)を仕込み、撹拌下、40℃まで昇温した。ここに2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチル229.4g(1.07mol)を2.0時間かけて滴下した。続けて40℃にて2時間反応を行った。反応後20℃まで冷却し、塩酸129.3g(1.24mol)で中和した。中和液を10kPaの減圧下で濃縮し、トルエン345.1gと水264.8gを加え撹拌した。水層を除去しトルエン層を水で洗浄した。洗浄水を除去した後のトルエン層には29.9重量%の1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルを含んでいた。ここまでで使用した2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチルに基づいた収率は88.2%であった。また加水分解した1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸の収率は5.3%であった。なお、塩酸で中和後、濃縮せずに、洗浄した場合の収率は84.9%であり、濃縮工程の追加により、収率が向上していることがわかった。
【0030】
実施例2
脱水剤に炭酸ジエチルを用いた、1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸エチルエステルの合成
3L四つ口フラスコに20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液816.6g(2.40mol)、炭酸ジエチル472.5g(4.00mol)を仕込み、撹拌下、40℃まで昇温した。ここに2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸エチル479.3g(2.00mol)を2.5時間かけて滴下した。続けて40℃にて2時間反応を行った。反応後20℃まで冷却し、塩酸233.7g(2.24mol)で中和した。ここに、トルエン654.0gと水504.3gを加え撹拌した。水層を除去しトルエン層を水で洗浄した。洗浄水を除去した後のトルエン層には17.4重量%の1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸エチルエステルを含んでいた。ここまでで使用した2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸エチルに基づいた収率は85.3%であった。また加水分解した1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸の収率は6.9%であった。
【0031】
比較例1
脱水剤を用いない、1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルの合成
2L四つ口フラスコに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液247.7g(1.28mol)仕込み、撹拌下、40℃まで昇温した。ここに2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチル229.4g(1.07mol)を2.0時間かけて滴下した。続けて40℃にて2時間反応を行った。反応後20℃まで冷却し、塩酸129.3g(1.24mol)で中和した。ここに、トルエン345.1gと水264.8gを加え撹拌した。水層を除去しトルエン層を水で洗浄した。洗浄水を除去した後のトルエン層には11.5重量%の1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルを含んでいた。ここまでで使用した2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチルに基づいた収率は25.8%であった。また加水分解した1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸の収率は42.8%であった。
【0032】
比較例2
予め脱水した後に反応を行う、1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルの合成
500ml四つ口フラスコに2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチル32.2g(0.15mol)、トルエン10.0g(0.11mol)、メタノール300.0g(9.36mol)を仕込み常圧加熱した。31.3gの留分を採取し系内の水分を除去した。氷冷後、炭酸カリウム20.7g(0.15mol)を投入し4時間加熱還流した。氷冷後減圧下メタノールを回収し、水100g、ノルマルヘキサン100gを加え有機物を抽出した。水層はさらにノルマルヘキサン30gで抽出し有機層を混合した。有機層には1.4重量%の1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸メチルエステルを含んでいた。ここまでで使用した2-[(1-アザ-2-メチル-3-オキソブト-1-エニル)メチルアミノ]酢酸メチルに基づいた収率は7.1%であった。また加水分解した1,3,4-トリメチルピラゾール-5-カルボン酸の収率は70.1%であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、医農薬中間体として用いられる1,3,4-置換-ピラゾール-5-カルボン酸エステル類の製造においては、反応中に副生する水を除去することが、反応を完結させて高収率で目的物を得る上で重要である。炭酸エステル類を脱水剤として用いることは簡便な脱水操作を可能とし、高収率で目的物を得ることができる。また、反応中に副生する水の除去に、無機系固体脱水剤を用いた場合、反応終了後に濾過等によって脱水剤を分離する工程が必要となり、大量生産を行う際に多大な労力と時間を必要とする。一方、本発明の方法によれば、問題となる煩雑な操作が不要なので簡便且つ経済性に優れた工業的な製造方法を提供することが可能であり、医薬及び農薬分野において本発明の意義は大きい。