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特開2023-111495機能性判定システム、機能性判定方法、機能性判定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111495
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】機能性判定システム、機能性判定方法、機能性判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230803BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013371
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】松原 亮平
(72)【発明者】
【氏名】松永 宜之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 準
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043AA06
2G043BA16
2G043BA17
2G043EA01
2G043EA02
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA03
2G043NA05
2G043NA06
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC16
2G059CC20
2G059EE06
2G059EE07
2G059EE13
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】本開示は、抗菌、抗ウイルス剤等の機能性材料の特定の機能が付与されているかを容易に確認することが可能な機能性判定システム、機能性判定方法、機能性判定プログラムを提供する。
【解決手段】所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得する画像取得部と、発光画像に含まれる発光の発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する処理部と、処理部における判定結果を出力する判定結果出力部と、を有する機能性判定装置を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に前記波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得する画像取得部と、
前記発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、前記機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する処理部と、
前記処理部における判定結果を出力する判定結果出力部と、
を有する機能性判定装置を備える
機能性判定システム。
【請求項2】
前記機能性材料と、前記機能性材料からの前記光を撮像した参照用発光画像に含まれる発光領域の色空間の値とを、前記機能性材料ごとに関連付けた照合用データベースを記憶する記憶部を備え、
前記処理部は、前記発光画像の発光領域の色空間の値と、前記照合用データベースとを比較して、前記機能性材料の前記機能が有効であるか否かを判定する
請求項1に記載の機能性判定システム。
【請求項3】
前記照合用データベースは、前記機能性材料の種類と、前記機能性材料の前記機能が有効となる前記機能性材料の最小の被覆量における前記発光画像の発光領域の色空間の値である色空間の最小値と、前記機能性材料の最大の被覆量における前記発光画像の発光領域の色空間の値である色空間の最大値と、を関連付けたデータである
請求項2に記載の機能性判定システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記発光画像の判定領域の各画素の色空間の値を検出し、
全ての前記画素の前記色空間の値の平均値を算出し、
前記色空間の値の平均値と前記照合用データベースとを比較して、前記色空間の値の平均値が前記色空間の最小値以上前記色空間の最大値以下である場合に、前記機能性材料の前記機能が有効であると判定する
請求項3に記載の機能性判定システム。
【請求項5】
前記処理部は、
前記発光画像の判定領域の各画素の色空間の値を検出し、
前記画素の前記色空間の値と前記照合用データベースとを比較して、前記色空間の値が、前記色空間の最小値以上最大値以下である前記画素の数が、全ての前記画素の数に対して所定の閾値以上となっている場合に、前記機能性材料の前記機能が有効であると判定する
請求項3に記載の機能性判定システム。
【請求項6】
前記処理部は、
前記機能性材料の前記機能が有効となる程度に被覆された前記機能性材料から発光された前記光の参照用発光画像を教師データとする機械学習により生成された学習済みモデルを有し、
前記学習済みモデルに取得した前記発光画像を入力した際に出力される推論結果に基づいて、前記機能性材料の前記機能が有効であるか否かを判定する
請求項3に記載の機能性判定システム。
【請求項7】
前記照射光の波長と前記機能性材料からの前記光の波長とが重複する範囲の波長の透過率を低減させるフィルタをさらに備え、
前記画像取得部は、前記フィルタを介して入射した前記光を検出する
請求項1から6のいずれか1項に記載の機能性判定システム。
【請求項8】
前記照射光の波長域と前記機能性材料からの前記光の波長域との重複範囲の波長の透過率を低減させるフィルタと、前記照射光を発する照射装置と、を有する照射装置をさらに備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の機能性判定システム。
【請求項9】
前記照射装置は、波長250nm以上580nm以下の前記照射光を発する
請求項8に記載の機能性判定システム。
【請求項10】
前記フィルタは、前記照射光のうち、前記照射光のピーク波長+10nm以上前記照射光のピーク波長+40nm以下の波長の光の透過率を前記ピーク波長の光の透過率に対して5%以下に制御し、かつ前記ピーク波長±10nm以内の波長の光の透過率を前記ピーク波長の光の透過率に対して80%以上に制御する
請求項7から9のいずれか1項に記載の機能性判定システム。
【請求項11】
所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に前記波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得し、
前記発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、前記機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する
機能性判定方法。
【請求項12】
所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に前記波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得することと、
前記発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、前記機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定することと、
をコンピュータに実行させる機能性判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能性判定システム、機能性判定方法、機能性判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抵抗力の弱い高齢者の人口増加、不特定多数のユーザが利用するいわゆる民泊サービスやカーシェアリングサービスの増加による、公共空間、住空間の抗菌や抗ウイルスへのニーズが高まっている。
このようなニーズに対応するために、従来、抗菌、抗ウイルス剤等を用いて建築物や輸送車両等の内装部材等の表面に抗菌、抗ウイルス機能を付与することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/198890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築物や輸送車両の内装部材等の表面に付与された抗菌剤等は、ユーザの手指や衣服、靴等とこすれることにより剥がれ落ちたりして、抗菌等の機能が低減してしまう。このため、抗菌剤等の付与が十分でない領域には再度抗菌剤等を塗布や噴霧等により付与することが望まれるが、抗菌剤等の付与が十分でない領域を確認することは困難であった。
【0005】
そこで、本開示は、抗菌、抗ウイルス機能等の特定の機能が付与されているかを容易に確認することが可能な機能性判定システム、機能性判定方法、機能性判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る機能性判定装置は、所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得する画像取得部と、発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する処理部と、処理部における判定結果を出力する判定結果出力部と、を有する機能性判定装置を備えている。
【0007】
また、本開示の一態様に係る機能性判方法は、所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得し、発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する。
【0008】
また、本開示の一態様に係る機能性判定プログラムは、所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得することと、発光画像に含まれる発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定することと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、抗菌、抗ウイルス機能等が付与されているかを容易に確認することが可能となり、機能を継続させるための効果的なメンテナンスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムの全体像を示す模式図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムで取得する発光画像の一例を示す模式図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムで取得する発光画像の一例を示す模式図である。
図5A】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムで用いられる照合用データベースの一例を示す模式図である。
図5B】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムで用いられる照合用データベースの一例を示す模式図である。
図6A】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムにおける処理を示す模式図である。
図6B】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムにおける処理を示す模式図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムにおける処理を示す模式図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムにおける処理を示す模式図である。
図9】本開示の第1実施形態に係る機能性判定方法の一例を説明するフローチャートである。
図10】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムの変形例を示す機能ブロック図である。
図11】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムの変形例を示す機能ブロック図である。
図12】本開示の第1実施形態に係る機能性判定システムの変形例を示す機能ブロック図である。
図13】本開示の第2実施形態に係る機能性判定システムの全体像を示す模式図である。
図14】本開示の第2実施形態に係る機能性判定システムで用いられるフィルタについて説明する模式図である。
図15】本開示の第2実施形態に係る機能性判定システムで用いられるフィルタについて説明する模式図である。
図16】本開示の第3実施形態に係る機能性判定システムの全体像を示す模式図である。
図17】本開示の機能性判定システムの機能性判定部を実現するハードウェア構成を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実
施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。
【0012】
1.第1実施形態
以下、第1実施形態に係る機能性判定システム、機能性判定方法及び機能性判定プログラムについて、図1から図12を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る機能性判定システム1は、機能性判定装置10において評価対象の機能性材料50からの発光Lを検知して、当該機能性材料50が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する。機能性材料50は、例えば照射装置20から発光された所定の波長の照射光Lを照射されることにより、発光Lとして蛍光又は燐光を発するように構成されている。図1は、機能性材料50が物体60の表面を被覆するように設けられている場合の構成を示しているが、当該使用方法は一例であり、必ずしも物体60表面を被覆していなくても良い。
まず、本実施形態に係る機能性判定システム1によって機能の有効性が評価される機能性材料50について説明する。
【0013】
[機能性材料]
本実施形態に係る機能性判定装置10で評価される機能性材料は、例えば、抗菌、抗ウイルス、防カビや、衣料等の見た目の白さを増す等の特定の機能を有している。機能性材料は、蛍光・燐光を発する機能を有する無機物、分子、ポリマー又は有機無機複合材料であってもよく、当該無機物、分子、ポリマー又は有機無機複合材料を無機粒子又は有機粒子に担持させた形態であってもよい。また、機能性材料は、上述した材料に樹脂や塗料等の他の材料を混合した形態であっても良い。
上述した機能性材料は、所望の機能を有する組成物に蛍光材料、燐光材料等の発光性材料が混合されたり、組成物の官能基の一部が発光性官能基で置換されたりしており、所定の波長の光を照射することで発光する機能を有する。
【0014】
発光性材料としては、例えば、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム等の塩又は金属元素を添加したセラミックス、フルオレセイン系、ポルフィリン系、スチルベン系、アントラセン系、フェナントレン系、ベンゾオキサゾール系、フラボノイド系、カルバゾール系、クマリン系及びピレン系等の有機物、銅、亜鉛、白金、イリジウム及びルテニウム等の錯体、金属量子ドット又はカーボン量子ドット等を用いることができる。具体的な材料としては、銀含有ゼオライト、4,4’-スチルベンカルボン酸、フルオレセイン、亜鉛テトラフェニルポルフィリン、CdSe/ZnS量子ドット、グラフェン量子ドット等を用いることができる。
【0015】
発光性官能基としては、ピレン系、アントラセン系、フェナントレン系、ベンゾオキサゾール系、フラボン系、カルバゾール系、ポルフィリン系、フルオレセイン系及びクマリン系からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。発光性官能基の具体的な材料としては、4,4‘-スチルベンジカルボン酸骨格、フルオレセイン骨格、ジフェニルアントラセン骨格、テトラフェニルポルフィリン骨格、からなる群から選ばれる少なくとも一種の骨格を有する発光性官能基が挙げられる。
【0016】
このような機能性材料は、具体的に、抗菌剤、抗ウイルス剤、防カビ剤(以下、抗菌剤等と記載する)が挙げられる。機能性材料は、抗菌剤、抗ウイルス剤、防カビ剤に蛍光材料が混合されたり、蛍光官能基が修飾されて構成されている。
【0017】
上述した抗菌剤等は、例えば家具、家電、建材、日用品等の身の回りの物品に噴霧したり、塗工されたりすることで、物品に抗菌、抗ウイルス、防カビ等の特定の機能を付与することができる。一方、抗菌剤等は、物品の使用や経年により、物品から剥がれ落ちたり物品と擦れた他の物品に付着したりして、抗菌等の機能が低減してしまう。
本実施形態で説明する抗菌剤等の機能性材料は、所望の機能を有する組成物に蛍光材料が混合されたり、組成物の官能基の一部が蛍光官能基で置換されたりしており、所定の波長の光を照射することで発光する機能を有する。
【0018】
続いて、本実施形態に係る機能性判定装置10を含む機能性判定システム1について説明する。
【0019】
(1.1)構成
図2は、本実施形態に係る機能性判定システム1の構成を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る機能性判定システム1は、機能性判定装置10と照射装置20とを備えている。
【0020】
[照射装置]
照射装置20は、少なくとも、評価対象の機能性材料に対して照射することで当該機能性材料から蛍光又は燐光を発させる事が可能な光を発光する発光部21を有している。照射装置20から発光される光(照射光)は、機能性材料から蛍光又は燐光を発光させるための所定の波長を有している。照射装置20から発光される照射光は、機能性材料に含まれる発光性材料や発光性官能基に応じた中心波長であればよく、例えば中心波長が250nm以上580nm以下であることが好ましい。照射光の中心波長が250nm以上である場合、機能性材料が損傷することを抑制し、また、機能性材料を十分に励起して蛍光又は燐光を十分に発光させることができる。また、照射光の中心波長が580nm以下である場合、可視域において照射光の波長と機能性材料からの発光の波長との差(ストークスシフト)を十分に確保して、照射光が機能性材料に反射した反射光と機能性材料からの発光との分離を容易とし、機能の有効性の判定を行いやすくすることができる。
【0021】
また、照射装置20から発光される照射光Lは、機能性材料からの発光Lの波長と重複する波長域が狭いほど好ましい。照射光の波長と機能性材料からの発光の波長とが重複する場合、機能性判定装置10は、検知した光が照射光であるか機能性材料からの発光であるかの判定を行うことが困難となる。このため、機能性材料からの発光の波長と重複する波長域が狭いほど、機能性材料からの発光を検知しやすくなるため好ましい。
【0022】
[機能性判定装置]
機能性判定装置10は、画像取得部11と、記憶部12と、処理部13と、表示データ生成部14と、表示部15とを備えている。本実施形態では、機能性判定装置10がスマートフォンであり、機能性判定装置10内に表示部15を含む形態を一例として説明する。なお、機能性判定装置10は、タブレット端末、カメラ付きノート型パーソナルコンピュータ等や、機能性判定専用の端末であっても良い。
【0023】
<表示部>
表示部15は、例えば、画像取得部11で検出した光、すなわち発光画像や、機能性材料の機能の有効性の判定結果を示す画像を表示する。表示部15としては、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)等の携帯端末に適用される表示装置が挙げられる。
【0024】
<入力部>
入力部16は、ユーザから機能性判定装置10に対する指示等を受け付け、指示等を制御部(不図示)に出力する。入力部16は、例えば、機能性判定装置10を構成する端末に設けられたボタンや表示部15に表示されたタッチパネルの入力領域である。また、入力部16は、例えば機能性判定装置10と有線接続又はBluetooth(登録商標)、IEEE802.11(例えばWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標))、NFC(Near Field Communication)、IrDA(InfraRed Data Association、登録商標)等の無線通信で接続されたリモートコントローラに設けられていても良い。機能性判定装置10は、入力部16においてユーザからの指示入力を受け付けることにより、機能の有効性の判定処理を開始したり、機能の有効性を確認する領域を指定したりすることができる。
【0025】
<画像取得部>
画像取得部11は、上述した機能性材料からの発光を検出する機能を有し、機能性材料からの発光を撮像することで生成された発光画像を取得する。
画像取得部11は、光検出機能を有し、検出した発光Lを撮像して発光画像70を生成するカメラ等の撮像装置であってもよく、外部の撮像装置で生成された発光画像70を取得するインタフェースであってもよい。本実施形態では、画像取得部11は、機能性判定装置10であるスマートフォンに設けられたカメラにより実現される。
【0026】
図3に、画像取得部11が取得した、発光の撮像領域である発光領域71を含む発光画像70の一例を示す。また、図4は、発光領域71を含む発光画像70を模式的に示す模式図である。なお、図3は、発光画像70に、特定の機能の判定を行う際の判定領域を示すマークが重ねて表示された場合の発光画像の例を示している(詳細は後述する)。図3に示すように、発光画像70は、例えば機能性材料からの発光Lが強いほど白くなるように生成されている。照射装置20及び画像取得部11で形成される光学系は、機能性材料を所定位置に配置した場合に発光Lの発光の中心である発光画像70の発光領域71の中心Oが発光画像70の中心座標となるように設計されることが好ましい。
【0027】
<記憶部>
記憶部12は、発光画像70に含まれる発光Lの発光領域71の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定するための情報を記憶する。より具体的に、本実施形態の記憶部12は、機能性材料と、発光領域71の色を数値化した値とを関連付けたデータベースを記憶している。
【0028】
照合用データベース121は、機能性材料と、機能性材料からの発光を撮像した参照用発光画像に含まれる発光Lrefの発光領域の色空間の値とを、機能性材料ごとに関連付けている。「色空間」は、例えばRGB、CMY、HSV、HLS等の一般的に用いられるモデルのいずれであっても良い。「色空間」がRGBモデルである場合、「色空間の値」は、R値、G値、B値である。
【0029】
このような照合用データベース121に含まれる色空間の値は、予め機能性材料の被覆量を変えた複数のサンプルを作成し、機能性判定システム1により当該サンプルの発光画像(参照用発光画像)を生成し、参照用発光画像の中心座標O(図4参照)の色空間の値を測定することにより得られる。
【0030】
図5Aは、照合用データベース121の一例である照合用データベース121Aを模式的に示す模式図である。なお、照合用データベース121は、機能性材料が抗菌剤である場合について説明する。
図5Aに示すように、照合用データベース121では、機能性材料である抗菌剤の種類(例えば「抗菌剤A」や「抗菌剤B」)と、各抗菌剤の被覆量(例えば「X」や「X」)と、発光領域71の色空間の値(例えば「Rx1,Gx1,Bx1」や「Rxn,Gxn,Bxn」)とが関連付けられている。
【0031】
ここで、被覆量「X」が照合用データベース121における抗菌剤Aの最小被覆量であり、「X」が照合用データベース121における機能性材料Aの最大被覆量であり、機能性材料Aの被覆量が「X以上Xn-1以下」の場合に機能性材料Aの機能が有効であるものとする。このとき、発光画像70中の発光領域71における色空間の値が「RX2以上RXn-1以下」かつ「GX2以上GXn-1以下」かつ「BX2以上BXn-1以下」である場合に、抗菌性が有効であると判定される。
【0032】
また、記憶部12が記憶するデータベースは、図5Bに示す照合用データベース121Bであってもよい。照合用データベース121Bは、例えば抗菌剤Aの抗菌性が有効である場合の発光画像70中の発光領域71における色空間の値のみを含むデータベースである。図5Bに示す抗菌剤Aの抗菌性が有効である場合の色空間の各色の最小値(「Rmin」「min」「Bmin」)は、照合用データベース121における「RX2」「GX2」「BX2」に相当する。また、図5Bに示す抗菌剤Aの抗菌性が有効である場合の色空間の各色の最大値(「Rmax」「max」「Bmax」)は、照合用データベース121における「RXn-1」「GXn-1」「BXn-1」に相当する。このとき、発光画像70中の発光領域71における色空間の値が「Rmin以上Rmax以下」かつ「Gmin以上Gmax以下」かつ「Bmin以上Bmax以下」である場合に、抗菌性が有効であると判定される。
【0033】
<処理部>
処理部13は、発光画像70に含まれる発光Lの発光領域71の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する処理を行う。処理部13は、画像取得部11で取得した発光画像70の発光領域71の色空間の値を検出し、色空間の値と記憶部12に記憶されたデータベースとを比較して、機能性材料の機能が有効であるか否かを判定する。
【0034】
処理部13は、発光画像70において、機能性材料の機能を判定する判定領域を指定する。処理部13は、判定領域として指定した領域を示す枠部72を重ねて表示した発光画像70Aを生成し表示部15に表示させる(図6A又は図6B)。処理部13は、枠部72で示される判定領域を色空間の値等に基づいて自動的に設定してもよく、入力部16から入力された領域設定指示に従って設定しても良い。判定領域、すなわち枠部72は、図6Aに示すように円形状であってもよく、図6Bに示すように四角形状であってもよい。
以下の説明では、判定領域の形状が円形状である場合を一例に説明する。
【0035】
処理部13は、枠部72で示される判定領域の各画素Pの色空間の値を検出する。例えば、図7に示すように、処理部13は、枠部72で示す判定領域内の画素P1~画素P14それぞれのR値、G値及びB値を配列データとして生成する。配列データは、例えば画素P1=(R0,G0,B0)、画素P2=(R2,G2,B2)、・・・画素P14=(R13,G13,B13)である。
【0036】
続いて、処理部13は、取得した配列データに基づいて、全ての画素Pの色空間の値の平均値(「Rave」「Gave」「Bave」)を算出する。処理部13は、色空間の値の平均値と照合用データベース121とを比較し、色空間の値の平均値が、機能性材料の機能が有効な場合の色空間の最小値以上であるかを判定する。ここで、「色空間の最小値」は、図5Aに示す照合用データベース121Aにおける「RX2」「GX2」「BX2」又は図5Bに示す照合用データベース121Bにおける「Rmin」「Gmin」「Bmin」である。また、処理部13は、色空間の値の平均値と照合用データベース121とを比較し、色空間の値の平均値が、機能性材料の機能が有効な場合の色空間の最大値(照合用データベース121Aにおける「RXn-2」「GXn-2」「BXn-2」又は照合用データベース121Bにおける「Rmax」「Gmax」「Bmax」)以下であるかを判定する。
【0037】
処理部13は、色空間の値の平均値のそれぞれが、機能性材料の機能が有効な場合の色空間の最小値以上最大値以下である場合に、機能性材料の機能が有効であると判定する。例えば、処理部13は、Rmin≦Rave≦RmaxかつGmin≦Gave≦GmaxかつBmin≦Bave≦Bmaxが成立する場合に、機能性材料の機能が有効であると判定する。
【0038】
また、処理部13は、すべての画素Pの色空間の値の平均値を用いる代わりに、各画素Pの色空間の値のそれぞれを、機能性材料の機能が有効な場合の色空間の範囲と比較してもよい。
例えば、処理部13は、画素Pの色空間の値と照合用データベース121とを比較して、色空間の値が照合用データベース121中の色空間の最小値以上最大値以下である画素の数N’が、全ての画素Pの数Nに対して所定の閾値以上となっている場合に、機能性材料の機能が有効であると判定してもよい。
例えば、処理部13は、Rmin≦R≦RmaxかつGmin≦G≦GmaxかつBmin≦B≦Bmaxが成立する画素Pの数N’が、全ての画素Pの数Nに対して所定の閾値(例えば80%)以上となっている場合に、機能性材料の機能が有効であると判定してもよい。
【0039】
以上のようにして機能性材料の機能の有効性を判定した処理部13は、判定結果を表示データ生成部14に出力する。
【0040】
<表示データ生成部>
表示データ生成部14は、判定結果出力部の一例であり、処理部13における判定結果を表示部15に出力する。本実施形態において、表示データ生成部14は、例えば図8に示すように記憶部22から取得した発光画像70に処理部13から取得した判定結果を示す判定結果画像73を重ね合わせた発光画像70Bを生成する。また、表示データ生成部14は、判定結果を示す判定結果画像73のみを生成して表示部15に出力しても良い。表示データ生成部14から出力された発光画像70B又は判定結果画像73が表示部15に表示されることにより、機能性判定システム1は、ユーザに対して例えば抗菌剤の抗菌性等の機能性材料の機能の有効性の有無を示すことができる。
【0041】
また、判定結果出力部として、機能性判定装置10の外部に判定結果を示す情報を出力する外部インタフェースや、インターネット等を介して判定結果を送信する通信部(いずれも不図示)が備えられていても良い。
【0042】
(1.2)機能性判定方法
以下、本実施形態に係る機能性判定方法の一例について、図1から図8を参照しつつ、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る機能性判定方法の一例を説明するフローチャートである。
まず、機能性判定装置10の処理部13は、発光画像70の発光領域の色空間の値を評価するための照合用データベース121(図5参照)を記憶する(ステップS11)。また、処理部13は、照合用データベース121に変えて、機能性材料の機能の有効性の有無を推論可能な学習済みモデル131(図12参照、詳細は後述する)を記憶しても良い。
【0043】
次に、機能性判定装置10は、機能性材料に所定の波長の照射光Lが照射されることにより発された発光Lの発光画像70(図3参照)を、例えば発光Lを撮像することにより取得する(ステップS12)。
続いて、機能性判定装置10は、発光画像70に含まれる発光Lの発光領域71の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定する(ステップS13)。このとき、機能性判定装置10は、発光画像70において、機能性材料の機能を判定する判定領域を指定し、判定領域として指定した領域を示す枠部72を重ねて表示した発光画像70Aを生成する(図6A又は図6B参照)。そして、機能性判定装置10は、枠部72で示される判定領域の各画素P(画素P1~画素P14、図7参照)の色空間の値(R値、G値及びB値)を検出し、配列データとして生成する。機能性判定装置10は、各画素Pの色空間の値又は色空間の値を用いて算出された値と、照合用データベース121とを比較して、機能性材料の機能が有効であるか否かを判定する。
【0044】
最後に、機能性判定装置10は、判定結果を示す判定結果画像73、又は発光画像70に判定結果を示す判定結果画像73を重ね合わせて生成した発光画像70Bを表示部15に出力して表示する(ステップS14)。
以上により、機能性判定システム1による機能性材料の機能の有効性の判定が終了する。
このような機能性判定方法を用いることにより、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に判定することができる。
【0045】
(1.3)機能性判定プログラム
本実施形態に係る機能性判定システム1の機能性判定装置10により実行される機能性判定プログラムについて説明する。機能性判定装置10は、少なくとも以下の(a)~(b)の各動作をコンピュータに実行させるプログラムに従って、画像処理を行う。以下のプログラムは、例えばハードディスクドライブ、メモリ等の記録媒体やDVDディスク又はBlu-ray(登録商標)等の光ディスクに非一時的に記録される。以下のプログラムは、インターネットを介して配布されても良い。さらに、以下のプログラムは、クラウドサーバに記録され、インターネットを介して実行されても良い
【0046】
(a)所定の波長を有する照射光が照射されることにより蛍光又は燐光を発光する機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像することで生成された発光画像を取得すること
(b)発光画像に含まれる発光の発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定すること
【0047】
(1.4)変形例
以下、本実施形態の機能性判定システム1の変形例について説明する。
【0048】
(1.4.1)変形例1
本実施形態の機能性判定システム1では、機能性判定装置10内で機能性の判定処理が行われていたが、このような構成に限られない。
例えば図10に示すように、変形例1の機能性判定システム1Aは、機能性判定装置10Aがインターネット等を介して外部のサーバ30Aと接続されており、サーバ30A内に照合用データベースを記憶する記憶部32が設けられていても良い。記憶部32は、上述した記憶部12と同様の構成である。また、機能性判定装置10Aは、照合用データベースを記憶していない以外は機能性判定システム1の機能性判定装置10と同様の構成となっている。
【0049】
(1.4.2)変形例2
本実施形態の機能性判定システム1では、機能性判定装置10において機能の有効性の判定結果を表示する機能を有していたが、このような構成に限られない。
例えば図11に示すように、変形例2の機能性判定システム1Bは、機能性判定装置10Bが有線接続もしくは無線接続、又はインターネット等を介して外部の表示装置40と接続されていてもよい。表示装置40は、機能性判定装置10Bから送信された発光画像70B又は判定結果画像73(図8参照)を表示する。機能性判定装置10Bは、表示部15を有していない以外は機能性判定システム1の機能性判定装置10と同様の構成となっている。
【0050】
(1.4.3)変形例3
本実施形態の機能性判定システム1では、機能性材料の機能が有効である場合の発光画像70の発光領域71の色空間の値を含む照合用データベース121を用いて、機能性材料の機能の有効性を判定していたが、このような構成に限られない。
例えば図12に示すように、変形例3の機能性判定システム1Cは、機能性判定装置10Cの処理部13Cが機能性材料の機能の有効性の有無を推論可能な学習済みモデル131を有していてもよい。学習済みモデル131は、機能性材料の機能が有効となる程度に被覆された機能性材料からの発光の発光画像(参照用発光画像)を教師データとする機械学習により生成される。これにより、処理部13Cは、学習済みモデル131に画像取得部11で生成した発光画像70を入力した際に出力される推論結果に基づいて、機能性材料の機能が有効であるか否かを判定することができる。
【0051】
(1.5)効果
(1)本実施形態に係る機能性判定システムでは、機能性材料に所定の波長の照射光が照射されることにより発光された光を撮像して発光画像を生成し、当該発光画像の発光領域の色に基づいて、機能性材料が有する特定の機能が有効であるか否かを判定している。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0052】
(2)本実施形態に係る機能性判定システムでは、機能性材料と、機能性材料からの発光を撮像した参照用発光画像に含まれる発光の発光領域の色空間の値とを、機能性材料ごとに関連付けた照合用データベースを記憶する記憶部を備えており、処理部は、発光画像の発光領域の色空間の値と照合用データベースとを比較して、機能性材料の機能が有効であるか否かを判定する。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料を撮像して生成した発光画像に基づいて、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0053】
(3)本実施形態に係る機能性判定システムでは、機能性材料の種類と、機能性材料の機能が有効となる機能性材料の最小の被覆量における発光画像の発光領域の色空間の値である色空間の最小値と、機能性材料の最大の被覆量における発光画像の発光領域の色空間の値である色空間の最大値と、を関連付けた照合用データベースが用いられている。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料を撮像して生成した発光画像の所定領域を画像処理することで、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0054】
(4)本実施形態に係る機能性判定システムでは、発光画像の判定領域の各画素の色空間の値を検出し、全ての画素の色空間の値の平均値を算出し、色空間の値の平均値と照合用データベースとを比較して、色空間の値の平均値が色空間の最小値以上色空間の最大値以下である場合に、機能性材料の機能が有効であると判定することができる。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料を撮像して生成した発光画像の所定領域を画像処理することで、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0055】
(5)本実施形態に係る機能性判定システムでは、発光画像の判定領域の各画素の色空間の値を検出し、画素の色空間の値と照合用データベースとを比較して、色空間の値が、色空間の最小値以上最大値以下である画素の数が、全ての画素の数に対して所定の閾値以上となっている場合に、機能性材料の機能が有効であると判定することができる。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料を撮像して生成した発光画像の所定領域を画像処理することで、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0056】
(6)本実施形態に係る機能性判定システムでは、機能性材料の機能が有効となる程度に被覆された機能性材料からの発光の参照用発光画像を教師データとする機械学習により生成された学習済みモデルを有し、学習済みモデルに取得した発光画像を入力した際に出力される推論結果に基づいて、機能性材料の機能が有効であるか否かを判定することができる。
これにより、機能性判定システムでは、機能性材料を撮像して生成した発光画像の所定領域を学習済みモデルで処理することで、機能性材料の機能が十分に付与されているかを容易に確認することができる。
【0057】
(7)本実施形態に係る機能性判定システムでは、波長250nm以上580nm以下の照射光を発光する照射装置を用いることが好ましい。
これにより、機能性材料が損傷することを抑制し、機能性材料を十分に励起して光を十分に発光させることができるとともに、可視域において照射光の波長と機能性材料からの発光の波長との差(ストークスシフト)を十分に確保して、照射光が機能性材料に反射した反射光と機能性材料からの発光との分離を容易とし、機能の有効性の判定を行いやすくすることができる。
【0058】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態に係る機能性判定システムについて、図13から図15を参照して説明する。
図13に示すように、本実施形態に係る機能性判定システム2の照射装置120は、照射光Lの波長λと発光Lの波長λとの重複範囲の波長の透過率を低減させるフィルタ122と、照射光Lを発光する発光部21とを有している。すなわち、照射装置120は、フィルタ122を有している点で第1実施形態の照射装置20と相違する。
以下、照射装置120について説明する。なお、機能性判定システム2の照射装置120以外の各部は、機能性判定システム1の対応する各部の構成と同様であるため説明を省略する。
【0059】
(2.1)機能性判定システムの構成
[照射装置]
照射装置120は、発光部21と、フィルタ122とを有している。発光部21は、第一実施形態の照射装置20が有する発光部21と同様の構成である。
【0060】
<フィルタ>
フィルタ122は、照射光の波長と機能性材料からの発光の波長とが重複する範囲の波長の透過率を低減させるフィルタである。図13に示すように、フィルタ122は、発光部21と機能性判定装置10の画像取得部11との間に設けられている。このため、機能性判定装置10の画像取得部11は、フィルタ122を介して入射した発光Lを検出する。
【0061】
図14に示すように、照射装置120から発光される照射光Lの波長域と、機能性材料からの発光Lの波長域は、一部重複する場合が多い。このため、画像取得部11は、重複する波長域Roの波長の光を、照射光Lが機能性材料に反射した反射光と機能性材料からの発光Lとに分離することが困難であり、画像取得部11が生成した発光画像70に照射光Lの反射光が含まれる。このため、発光画像70に基づいて機能性材料の機能の有効性を判定することが困難となる。
【0062】
このため、フィルタ122は、照射光Lの波長域と発光Lの波長域との重複範囲Roの波長の透過率を低減させる機能を有している。例えば図15に示すように、フィルタ122としては、照射光LIのうちメインピークのピーク波長前後の波長の照射光LIは透過させ、発光Lの波長域の波長の照射光LIは透過しにくくした波長選択透過フィルタを用いれば良い。ここで、照射光L及び発光Lの波長域以外の波長域の光(例えば図15中の波長650nm以上の波長域の光)は透過させてもよく、透過させないようにしても良い。より具体的に、フィルタ122は、照射光Lのうち、ピーク波長よりも10nm以上長波長の光の透過率をピーク波長の光の透過率に対して5%以下に制御し、かつピーク波長±10nm以内の波長の光の透過率をピーク波長の光の透過率に対して80%以上に制御することが好ましい。
【0063】
このようなフィルタ122を有する照射装置20では、照射光Lの波長域と発光Lの波長域との重複範囲の波長の照射光Lがほとんど照射されない。このため、機能性判定装置10の画像取得部11で検出した上述した重複範囲の波長の光のほとんどが機能性材料からの発光Lとなり、機能性材料の機能の有効性の判定を高い精度で行うことができる。
【0064】
(2.2)効果
第二実施形態に係る機能性判定システムは、第一実施形態及び変形例に係る機能性判定システムにおける効果(1)~(7)に加えて、以下の効果を有する。
(8)本実施形態の機能性判定システムでは、照射光の波長域と機能性材料からの発光の波長域との重複範囲の波長の透過率を低減させるフィルタと、照射光を発光する発光部と、を有する照射装置をさらに備えている。
これにより、機能性判定システムで検出した照射光Lの波長域と発光Lの波長域とが重複する範囲において、照射光Lの反射光の検出を抑制し、機能性材料の機能の有効性の判定を高い精度で行うことができる。
【0065】
(9)本実施形態の機能性判定システムでは、照射光のうち、ピーク波長よりも10nm以上長波長の光の透過率をピーク波長の光の透過率に対して5%以下に制御し、かつピーク波長±10nm以内の波長の光の透過率をピーク波長の光の透過率に対して80%以上に制御するフィルタを用いることが好ましい。
これにより、機能性判定システムで検出した照射光Lの波長域と発光Lの波長域とが重複する範囲において、照射光Lの反射光の検出を抑制しつつ発光Lを十分に検出できるため、機能性材料の機能の有効性の判定を高い精度で行うことができる。
【0066】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態に係る機能性判定システムについて、図16を参照して説明する。
図16に示すように、本実施形態に係る機能性判定システム3の機能性判定装置210は、照射光Lの波長λと発光Lの波長λとの重複範囲の波長の透過率を低減させるフィルタ217を有している。すなわち、機能性判定装置210は、フィルタ217を有している点で第1実施形態の機能性判定装置10と相違する。
以下、機能性判定装置210について説明する。なお、機能性判定システム2の機能性判定装置210が有するフィルタ217以外の各部は、機能性判定システム1の対応する各部の構成と同様であるため説明を省略する。
【0067】
(3.1)機能性判定システムの構成
[機能性判定装置]
機能性判定装置210は、画像取得部11よりも照射装置20側にフィルタ217を有している。フィルタ217は、第2実施形態で説明したフィルタ122と同様の構成である。
【0068】
画像取得部11よりも照射装置20側にフィルタ217を有している機能性判定装置210では、画像取得部11が、照射光Lの波長域と機能性材料からの発光Lの波長域とが重複する波長域の光を検出することがほとんどない。すなわち、画像取得部11は、当該重複する波長域において、照射光Lを検出することがほとんどなくなる。このため、機能性判定装置210は、当該重複する波長域において照射光Lと発光Lとを分離する必要がなく、発光画像70に基づいて機能性材料の機能の有効性を判定することができる。
なお、機能性判定装置210では、画像取得部11は、上述した重複する波長域における発光Lの検出も困難となる。このため、機能性材料の機能の有効性を判定に用いられる発光Lの波長域が狭くなり、機能性材料の機能の有効性の判定性能が低下する場合がある。
【0069】
(3.2)効果
第二実施形態に係る機能性判定システムは、第一実施形態及び変形例に係る機能性判定システムにおける効果(1)~(7)に加えて、以下の効果を有する。
【0070】
(10)本実施形態の機能性判定システムでは、機能性判定装置が、照射光の波長と機能性材料からの発光の波長とが重複する範囲の波長の透過率を低減させるフィルタをさらに備え、画像取得部は、フィルタを介して入射した機能性材料からの発光を検出する。
これにより、機能性判定システムで検出した照射光Lの波長域と発光Lの波長域とが重複する範囲において、照射光Lの反射光の検出を抑制し、機能性材料の機能の有効性の判定を高い精度で行うことができる。
【0071】
4.機能性判定装置のハードウェア構成
以下、図2に示す機能性判定装置10の機能部におけるハードウェア構成について説明する。図17は、機能性判定装置10の機能部におけるハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図17に示すように、機能性判定装置10は、演算装置1000により実現される。演算装置1000は、プロセッサ1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random access memory)1003及び補助記憶装置(メモリ)1004を備える情報処理装置(コンピュータ)である。
演算装置1000には、例えば外部インタフェース(I/F)1005を介して撮像装置51、入力装置46及び表示装置45、並びに外部記憶媒体48が接続されている。外部インタフェース(I/F)1005は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ポート等である。
【0072】
演算装置1000には、例えば通信インタフェース(I/F)1006及びネットワーク1008を介して他のコンピュータ49が接続されていてもよい。通信インタフェース(I/F)1006は、例えばLAN(Local Area Network)ポート、無線LANインタフェース等である。
ここで、撮像装置47、入力装置46及び表示装置45は、図2に示す機能性判定装置10の外部に接続された撮像装置47、入力装置46及び表示装置45を一例として示している。また、撮像装置47、入力装置46、表示装置45及びコンピュータ49は、演算装置1000と接続するためのユーザインタフェース(不図示)を備えている。ここで、演算装置1000の各部のハードウェア資源が所定のプログラムと協働することにより、機能性判定装置10の各部の各機能が構築される。
【0073】
プロセッサ1001は、機能性判定装置10を全体的に制御するプロセッサである。プロセッサ1001は、バス1007を介してROM1002に格納されたプログラムを読み出し、プログラムに従って機能性判定装置10を制御する。プロセッサ1001は、機能性判定装置10があらかじめ定められた処理を行うように機能性判定装置10を制御する。
ROM1002は、機能性評価プログラムと、ユーザによる入力を受け付け、機能性判定装置10の各動作を実行するプログラムとを格納している。
RAM1003は、計算データ、入力装置46を介し入力された各種データ等が一時的に格納されている。
【0074】
補助記憶装置1004は、例えば図示しないバッテリでバックアップされており、機能性判定装置10の電源がオフされても記憶状態が保持される。補助記憶装置1004には、外部インタフェース1005を介して撮像装置47から入力された発光画像70の画像データが記憶される。また、補助記憶装置1004には、入力装置46から入力された入力データの他、外部インタフェース1005、通信インタフェース1006を介して入力された各種データが記憶される。
【0075】
撮像装置47は、機能性材料からの発光の画像を電子データ(画像データ)化し、外部インタフェース1005を介して画像データを演算装置1000に入力する。撮像装置47による読み取りの制御は、機能性判定装置10の演算装置1000がプログラムを実行することにより行うようにしてもよいし、他の装置からの制御により行うようにしても良い。
【0076】
入力装置46は、キーボード、カードリーダ、ポインティングデバイス又はマイク等の音声入力装置等であり、外部インタフェース1005を介してユーザの操作に基づく指令や入力データを演算装置1000に入力する。
表示装置45は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)であり、外部インタフェース1005を介して演算装置1000から各種データを受信して表示する。表示装置45は、例えば演算装置1000のメモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ、撮像装置47から得られた画像データ、処理部13での処理の過程で出力されたデータ等を表示する。
【0077】
外部記憶媒体48は、例えばCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)又はBlu-ray Disc(登録商標)等の光ディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ポータブルハードディスクドライブである。外部記憶媒体48は、機能性判定装置10から出力された評価結果を記憶してもよい。
【0078】
コンピュータ49は、ネットワーク1008を介して機能性判定装置10と接続されている。コンピュータ49は、図示しない表示装置および入力装置を備え、ネットワーク1008経由で入力装置を介してユーザの操作に基づく指令や入力データを演算装置1000に入力したり、演算装置1000から各種データを受信して表示装置に表示させることができる。ネットワーク1008は、有線ネットワーク又は無線ネットワークのいずれであってもよい。ネットワーク1008が無線LAN、Bluetooth(登録商標)、モバイル通信ネットワーク等の無線ネットワークである場合、機能性判定装置10は、遠隔地にいるユーザからリアルタイムで指令を受け付けたり、遠隔地にいるユーザに対してプログラム等の実行状態や取得データの表示を行うことができる。
【0079】
以上、各実施形態により本発明の具体的な構成を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B,1C,2,3 機能性判定システム
10,10A,10B,10C,210 機能性判定装置
11 画像取得部
12,32 記憶部
13,13C 処理部
14 表示データ生成部
15 表示部
16 入力部
20,120 照射装置
21 発光部
22 記憶部
30A サーバ
40 表示装置
50 機能性材料
60 物体
70,70A,70B 発光画像
71 発光領域
72 枠部
73 判定結果画像
121,121A,121B 照合用データベース
122,217 フィルタ
131 学習済みモデル
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17