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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011170
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】動物用サスペンダー
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
A01K13/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114841
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】500098633
【氏名又は名称】有限会社犬と生活
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】坂口まや
(57)【要約】
【課題】動物の体型にフィットし、おむつやパンツ等がズレ落ちることのない動物用サスペンダーを提供する。
【解決手段】動物用サスペンダー1は、第1帯状部10と、第2帯状部20と、第3帯状部30と、背環40と、胸当て部50とを、備える。第1帯状部10、第2帯状部20および第3帯状部30の一端にはクリップ60が取り付けられている。また、当該一端と反対側の他端には、胸当て部50が取り付けられている。胸当て部50を動物の胸にあて、背環40を動物の背中に配置させることで、背環40と胸当て部50が位置づけられ移動が抑制され、第1帯状部10および第2帯状部20は動物の背中から動物の臀部側で装着品100を挟持し、第3帯状部30は、動物の前脚の間を通って臀部側で装着品100を挟持することで、動物の体型にフィットし、装着品100のズレや脱落を防止する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1帯状部と、
第2帯状部と、
第3帯状部と、
背環と、
胸当て部と、を備える動物用サスペンダーであって、
前記第1帯状部と前記第2帯状部は前記背環内で上下に交差すると共に前記背環を貫通し、
前記第1帯状部、前記第2帯状部および前記第3帯状部のそれぞれの一端には、動物に装着する装着品と接続する接続部が設けられ、
前記第1帯状部、前記第2帯状部および前記第3帯状部の前記一端と反対側の他端には、前記胸当て部にそれぞれ取り付けられ、
前記第1帯状部および前記第2帯状部は、前記胸当て部の両端部近傍にそれぞれ取り付けられ、
前記第3帯状部は、前記胸当て部の中央部近傍に取り付けられていることを特徴とする、
動物用サスペンダー。
【請求項2】
前記胸当て部の幅は、前記第1帯状部、前記第2帯状部および前記第3帯状部の幅よりも広いことを特徴とする、
請求項1に記載の動物用サスペンダー。
【請求項3】
前記胸当て部の材質は、柔らかい素材から形成されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の動物用サスペンダー。
【請求項4】
前記胸当て部は、前記胸当て部の他の分よりも肉厚のソフト部と、
メッシュ構造からなるメッシュ部と、を有し、
前記ソフト部は、前記胸当て部の側部に配置され、
前記メッシュ部は、前記ソフト部に取り囲まれていることを特徴とする、
請求項1~3の何れか1項に記載の動物用サスペンダー。
【請求項5】
前記背環は、複数の孔を有し、前記孔の一つが前記第1帯状部および前記第2帯状部の共通の貫通孔となる三叉タイプであることを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載の動物用サスペンダー。
【請求項6】
正面視において前記胸当て部がU字状を呈することを特徴とする、
請求項1~5の何れか1項に記載の動物用サスペンダー。
【請求項7】
前記動物用サスペンダーを動物に装着した時、
前記胸当て部が、肩関節が位置する胸を包み込むように覆い、
前記背環が、側面視において、前記動物の肩関節の上部と、前記肩関節に連結される肩甲骨の上部とを結ぶ直線の延長線上に位置する前記動物の背中に配置され、
前記第1帯状部および前記第2帯状部は前記背中から腰に亘って配置され、
前記第3帯状部は、前記胸当て部から前脚の間を通って後脚方向に配置され、
前記第1帯状部、前記第2帯状部および前記第3帯状部のそれぞれの前記接続部が、臀部近傍に装着された前記装着品に接続されることを特徴とする、
請求項1~6の何れか1項に記載の動物用サスペンダー。
【請求項8】
前記胸当て部の最も高い場所に位置する部分から前記胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さに対する、前記胸当て部の上側端部の最も低い部分から前記胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さの比率が、0.40~0.60の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の動物用サスペンダー。
【請求項9】
前記胸当て部の最も長い横幅に対する、前記胸当て部の上下方向の中央部の横幅の比率が、0.45~0.65の範囲にあることを特徴とする請求項7または8に記載の動物用サスペンダー。
【請求項10】
前記動物が、大型動物であることを特徴とする、
請求項7~9の何れか1項に記載の動物用サスペンダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の体型にフィットし、おむつやパンツ等がズレ落ちることのない動物用サスペンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
動物用の装着品を支持する動物用サスペンダーが知られている(例えば特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1は、ペットの後胴体に装着されるパンツ本体と、該パンツ本体に取り付けられるサスペンダーとを備え、サスペンダーは、首掛け部と、背中側部と、腹側部とを備え、首掛け部は、縫製することにより首挿通口が形成され、腹側部の一端部は、首掛け部側に縫製により連結されているペット用おむつパンツであり、ペットに不快感を与えずに安全に装着できることが開示されている。
【0004】
特許文献2は、ペットの前脚を挿通する左右一対の脚掛け部と、脚掛け部に連結されペットの胸に係止する胸掛け部と、各脚掛け部からペットの背中側に配される背中部と、該背中部に着脱自在に連結される長さ調整自在な複数本のベルト体を備えるペット用サスペンダーであり、ペットに穿かせたおむつの脱落やズレを確実に防止すると共に、ペットに与えるストレスを軽減することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-159420号公報
【特許文献2】実用新案登録第3224920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるサスペンダーは、首掛け部を動物の首に掛けることにより、パンツのズレ落ち等を防止しているが、動物は色々な格好で動き回るため首が締め付けられるなどの危険性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されるペット用サスペンダーは、前脚を利用してサスペンダーの移動を防止しているが、特に大型犬などの力の強い動物では脇の下が締め付けられるなどして傷や皮膚炎などを引き起こす可能性がある。
【0008】
さらに、大型犬等の体が大きな大型動物の場合には、排せつ物の量も多く、それらを従来の動物用サスペンダーに接続されたおむつ等で受け止める場合には、排せつ物の重量に比例してサスペンダーに大きな荷重がかかり、傷や皮膚炎などを引き起こすことがあった。
【0009】
そして、従来のペット用サスペンダーは帯状部分(平紐等)が長いので、それらの帯状部分がペットの首や足に絡まってしまうことが多いという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した事情に鑑み、動物の体型にフィットし、おむつやパンツ等がズレ落ちることのない動物用サスペンダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究・開発を続けた結果、以下のような画期的な動物用サスペンダーを見出した。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、第1帯状部と、第2帯状部と、第3帯状部と、背環と、胸当て部と、を備える動物用サスペンダーであって、第1帯状部と第2帯状部は背環内で上下に交差すると共に背環を貫通し、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部のそれぞれの一端には、動物に装着する装着品と接続する接続部が設けられ、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部の一端と反対側の他端には、胸当て部にそれぞれ取り付けられ、第1帯状部および第2帯状部は、胸当て部の両端部近傍にそれぞれ取り付けられ、第3帯状部は、胸当て部の中央部近傍に取り付けられていることを特徴とする、動物用サスペンダーにある。
【0013】
かかる第1の態様によれば、動物の胸専用の胸当て部を設けることにより、帯状部で作られたサスペンダーと比較して、ズレ等が解消され装着品の脱落を防止することができる。第1帯状部と第2帯状部が背環で交差するため摩擦が働くので、背環の移動がなくなる。その結果、胸当て部による動物の皮膚等への擦れを防止することができ、ズレによる装着品の脱落を防止することができる。
【0014】
また、第1の態様では、2つの帯状部で胸当て部の両端を支持するので、胸当ての部の移動を、より抑制することができる。その結果、動物に与えるストレスを防止することができる。
【0015】
さらに、第1の態様では、装着品を接続部で接続しているので、動物用サスペンダーが後方に引っ張られて、動物の胸と首に負担が掛かりやすくなるが、胸当て部により、動物への負担を大幅に減少させることができる。そして、本実施形態の動物用サスペンダーは、動物の動きによく追従できるので、装着品の位置が安定し、装着品の脱落等を防止することができる。
【0016】
加えて、第1の態様では、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部が胸当て部に取り付けられているので、各帯状部は従来の動物用サスペンダーの帯状部と比較して短い。その結果、これらの帯状部が、装着する動物の首や足に絡まってしまうのを防止することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、胸当て部の幅は、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部の幅よりも広いことを特徴とする、第1の態様に記載の動物用サスペンダーにある。
【0018】
かかる第2の態様によれば、動物への負担を、より大幅に減少させることができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、胸当て部の材質は、柔らかい素材から形成されていることを特徴とする、第1または第2の態様に記載の動物用サスペンダーにある。
【0020】
ここで、「柔らかい素材」とは、動物の皮膚等にキズなどを与えることがない素材をいい、例えば、ポリエステルやナイロン、綿、絹等の素材をいう。
【0021】
かかる第3の態様によれば、動物への負担を、さらに大幅に減少させることができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、胸当て部は、胸当て部の他の分よりも肉厚のソフト部と、メッシュ構造からなるメッシュ部と、を有し、ソフト部は、胸当て部の側部に配置され、メッシュ部は、ソフト部に取り囲まれていることを特徴とする、第1~第3の態様の何れか1つに記載の動物用サスペンダーにある。
【0023】
かかる第4の態様によれば、動物への負担を、より大幅に減少させることができる。
【0024】
本発明の第5の態様は、背環は、複数の孔を有し、孔の一つが第1帯状部および第2帯状部の共通の貫通孔となる三叉タイプであることを特徴とする、第1~第4の態様の何れか1つに記載の動物用サスペンダーにある。
【0025】
かかる第5の態様によれば、孔の一つが第1帯状部および第2帯状部の共通の貫通孔となっているので、第1帯状部と第2帯状部との接触部分の摩擦が大きくなる。その結果、背環がズレることを防止することができる。
【0026】
本発明の第6の態様は、正面視において胸当て部がU字状を呈することを特徴とする、第1~第5の態様の何れか1つに記載の動物用サスペンダーにある。
【0027】
かかる第6の態様によれば、動物の胸から背中に至る形状と類似することになるので、胸当て部の装着が容易となり、動物の体型にフィットするために、動物の姿勢や動きによるズレがおき難くなる。
【0028】
本発明の第7の態様は、動物用サスペンダーを動物に装着した時、胸当て部が、肩関節が位置する胸を包み込むように覆い、背環が、側面視において、動物の肩関節の上部と、肩関節に連結される肩甲骨の上部とを結ぶ直線の延長線上に位置する動物の背中に配置され、第1帯状部および第2帯状部は背中から腰に亘って配置され、第3帯状部は、胸当て部から前脚の間を通って後脚方向に配置され、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部のそれぞれの接続部が、臀部近傍に装着された装着品に接続されることを特徴とする、第1~第6の態様の何れか1つに記載の動物用サスペンダーにある。
【0029】
かかる第7の態様によれば、動物の胸専用の胸当て部を設けることにより、帯状部で作られたサスペンダーに比較して、ズレ等が解消され装着品の脱落を防止することができる。第1帯状部と第2帯状部が背環で交差するため摩擦が働くので、背環の移動がなくなる。その結果、胸当て部による動物の皮膚への擦れを防止することができる。
【0030】
また、第7の態様では、2つの帯状部で胸当て部の両端を支持するので、胸当ての部の移動を、より抑制することができる。その結果、動物に与えるストレスを防止することができる。
【0031】
さらに、装着品を接続部で接続しているので、動物用サスペンダーが後方に引っ張られて、動物の胸と首に負担が掛かりやすくなるが、胸当て部により、動物への負担を大幅に減少させることができる。そして、本実施形態の動物用サスペンダーは、動物の動きによく追従できるので、装着品の位置が安定し、装着品の脱落等を防止することができる。
【0032】
本発明の第8の態様は、胸当て部の最も高い場所に位置する部分から胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さに対する、胸当て部の上側端部の最も低い部分から胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さの比率が、0.40~0.60の範囲にあることを特徴とする第7の態様に記載の動物用サスペンダーにある。
【0033】
かかる第8の態様によれば、動物が、立つ、座る、寝る、丸まる、伸びる等の動きをしても胸当て部による動物の皮膚への擦れを防止することができる。
【0034】
本発明の第9の態様は、胸当て部の最も長い横幅に対する、胸当て部の上下方向の中央部の横幅の比率が、0.45~0.65の範囲にあることを特徴とする第7または第8の態様に記載の動物用サスペンダーにある。
【0035】
かかる第9の態様によれば、動物の肩関節上の皮膚に胸当て部の端部が当たらず、擦れることを防止することができる。
【0036】
本発明の第10の態様は、動物が、大型動物であることを特徴とする、第7~第9の態様の何れか1つに記載の動物用サスペンダーにある。
【0037】
ここで、「大型動物」とは体重が20kg以上の動物をいい、特に「大型犬」は体重が20kg以上のレトリバー犬種やハスキー犬等をいう。
【0038】
かかる第10の態様では、従来の動物用サスペンダーとは異なり、大型動物にかかる荷重を分散させることができるので、大型動物への傷や皮膚炎などの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る動物用サスペンダーの一例を示す概略平面図である。
図2図1の動物用サスペンダーの背環の一例を示す概略平面図であり、(a)は四つ又タイプ、(b)は三叉タイプである。
図3図1の動物用サスペンダーの胸当て部の一例を示す概略正面図である。
図4図1の動物用サスペンダーを犬に装着した場合の側面模式図である。
図5図4に続く正面模式図である。
図6図4に続く上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る動物用サスペンダー実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0041】
図1図3に基づいて、本実施形態の動物用サスペンダーを説明する。図1は、本実施形態に係る動物用サスペンダーの一例を示す概略平面図である。図2は、図1の動物用サスペンダーの背環の一例を示す概略平面図であり、(a)は四つ又タイプ、(b)は三叉タイプである。図3は、図1の動物用サスペンダーの胸当て部の一例を示す概略正面図である。
【0042】
本発明の動物用サスペンダー1は、四足動物の下腹部や臀部に装着されるパンツ、おむつ(紙おむつを含む)、サニタリーパンツ、去勢パンツ、多用途パンツ、ボトム、マナーベルト、マナーウエア等の装着品100が脱落したり、ズレたりしないように保持する補助具である。本実施形態における四足動物とは、人が飼育する(ペットを含む)動物を指し、犬、猫、フェレット等である。なお、本実施形態では、犬に装着する動物用サスペンダー1を一例として説明する。
【0043】
図1に示すように、動物用サスペンダー1は、中央に位置する胸当て部50と、胸当て部50の上部に取り付けられた第1帯状部10と、第1帯状部と交差するように胸当て部50の上部に取り付けられた第2帯状部20と、胸当て部50を挟んで第1帯状部10および第2帯状部20とは反対側に位置し、胸当て部50の下部に取り付けられた第3帯状部30と、第1帯状部10と第2帯状部20の交差部に配置された背環40と、を備える。
【0044】
第1帯状部10、第2帯状部20および第3帯状部30の一端には装着品100を挟持(接続)し、装着品100の位置ズレを防止する接続部であるクリップ60が取り付けられている。また、その一端と反対側の他端には、胸当て部50が取り付けられ(接続され)ている。
【0045】
第1帯状部10、第2帯状部20および第3帯状部30は、細長で所定の幅を有する帯状の形状を成している。これらの帯状部10、20、30は、伸縮性があるゴムや紐等から形成されている。各帯状部10、20、30の長さの調整は、各帯状部の中央部に配置された調整部70で行うことができる。ここで、動物用サスペンダー1を動物に装着した時は、第1帯状部10および第2帯状部20は動物の背中近傍に配置され、第3帯状部30は動物の前脚の間を通って腹部近傍に配置される。
【0046】
また、各帯状部10、20、30の一端に取り付けられたクリップ60により装着品100を挟持するが、クリップ60の材質は、動物がアレルギーを起こしにくい樹脂などを使用し、角がなく当たりを柔らかくすることで、動物への傷や皮膚炎等を防止している。
【0047】
背環40は、本実施形態では、第1帯状部10と第2帯状部20との位置関係を決めると共に、動物の背中上における位置変動を防止している。そして、第1帯状部10と第2帯状部20は、背環40内で上下に交差している。この交差によって、第1帯状部10と第2帯状部20との間で摩擦力が生じるため、第1帯状部10と第2帯状部20の移動が防止でき、背環40の位置ズレを抑制することができる。
【0048】
背環40は正面視において円形状を呈し、背環40の表面と裏面とを貫通する複数の孔41が設けられている。図2(a)に示す背環40は、四つ又タイプであり、孔41は4つある。そこで、これらの孔を、孔41a、41b、41c、41dとして説明する。第1帯状部10は、孔41aおよび孔41aと対角線上で対応する(対角線上にある)孔41bとを貫通し、第2帯状部20は孔41cおよび孔41cと対角線上で対応する(対角線上にある孔41dを貫通し、背環40の中央近傍において第1帯状部10と第2帯状部20は上下に交差している。
【0049】
また、図2(b)に示す背環40は、三叉タイプであり、孔41は3つある。そこで、これらの孔を、孔41e、41f、41gとして説明する。三叉タイプは、四つ又タイプと異なり、孔41eが第1帯状部10および第2帯状部20の共通の貫通孔になる。第1帯状部10は、孔41eおよび孔41fを貫通し、第2帯状部20は、孔41eおよび41gを貫通し、背環40の中央近傍において第1帯状部10と第2帯状部20は上下に交差している。同時に、孔41eにおいて上下に重なっている。このように、孔41eが第1帯状部10および第2帯状部20の共通の貫通孔となっていることで、四つ又タイプよりも第1帯状部10と第2帯状部20との間の摩擦力がより大きくなる。
【0050】
背環40において、第1帯状部10と第2帯状部20が上下に交差するが、図1では第1帯状部10の上に第2帯状部20が配置され、第1帯状部10の上面と第2帯状部20の裏面が接合し、図2では逆になり、第1帯状部10の裏面と第2帯状部20の上面が接合している。上下の関係は限定しない。
【0051】
動物の体の動きなどにより背環40の位置ズレが生じると、動物用サスペンダー1が脱げたり首が絞まったりする危険があるが、本実施形態の背環40は第1帯状部10と第2帯状部20との接合による摩擦力で移動が防止されるので安定する。また、四つ又タイプに比較して三叉タイプはより摩擦力が強いため、大型犬等が使用しても安定していて、背環の位置がズレることがなく、使用状態が良好となる。
【0052】
また、背環40は、合皮等から形成されているため、金属等の硬い材質に比べて、フィット感がよく、動物の被毛、皮膚や背骨を痛めることがない。
【0053】
次に、図3に基づいて、胸当て部を説明する。図3は、第1帯状部10および第2帯状部20に背環40が取り付けられていない胸当て部50を示している。
【0054】
胸当て部50は、動物に動物用サスペンダー1を装着したとき、動物の胸に当てるものである。胸当て部50は、胸に食い込みが少ないよう、帯状部10、20、30に比較して幅が広くなっている。特許文献2のように帯状部10、20、30の幅と同様であると、小さい面積の胸当て部50に荷重が集中し、擦れた際に動物の皮膚を痛める危険がある。また、胸当て部50は、中央が窪んだ正面視U字形状を呈し、装着する動物の胸の形状に合わせており、装着中のズレを防止している。
【0055】
胸当て部50は、第1帯状部10と第2帯状部20が取り付けられる両端部51と、第3帯状部30が取り付けられる中央部52とを有している。動物用サスペンダー1を動物に装着したとき、中央部52は動物の胸と接触し、両端部51は、動物の両脇に接触する。両端部51と中央部52で説明したが、両端部51とは、胸当て部50の両端側の領域を指し、中央部52は、胸当て部50の中央側の領域を指す。すなわち、両端部51と中央部52で胸当て部50が構成されているという意味である。
【0056】
両端部51には、第1帯状部10と第2帯状部20を取り付ける第1接合部53と第2接合部54がそれぞれ設けられ、中央部52の一側面(下部)には第3帯状部30を取り付ける第3接合部55が設けられている。これらの接合部53、54、55における取り付けは、強固であり容易に外れることがない。
【0057】
第3帯状部30の第3接合部55頂点として、第1接合部53と第2接合部54で結ぶ線で二等辺三角形が形成される。すなわち、第1接合部53と第3接合部55の距離と、第2接合部54と第3接合部55の距離はほぼ等しい関係にある。換言すれば、胸当て部50を中心から折り曲げた場合、線対称に重なり合う形状をしている。これにより、胸当て部50を動物の胸に均等に当てることが可能である。さらに、胸当て部50がU字形状を呈していることで、動物の胸に負担なく当てることができる。特に、動物の両肩関節の中央部分が、胸当て部50の中央部52が当たることが望ましい。背環40と合わせて動物用サスペンダー1は、使用者が適切な位置に調整可能であり、立つ、座る、寝る、丸まる、伸びる等、動物の動きにも追従することができ、装着品100を所定の位置に安定させることができる。
【0058】
胸当て部50は、クッション性のある柔らかい素材から形成されている。胸当て部50は、2層、3層のメッシュ構造であることが好ましい。このようなメッシュ構造とすることにより、通気性が向上し、蒸れによる皮膚のトラブルを防止することができる。加えて、メッシュ構造で凹凸があるため、動物の被毛の絡みや切れを防止できる。さらに、胸当て部50を構成する素材は、抗菌防臭加工やノンホルマリン加工(対応)をしていることが望ましい。
【0059】
さらに、図4から図6に基づいて、犬を動物の一例として、本実施形態の動物用サスペンダー1の装着状態を説明する。
【0060】
これらの図に示すように、胸当て部50、第1帯状部10、第2帯状部20および背環40で形成される輪を、犬200の鼻201から通して、胸当て部50を胸202に当て、背環40を背中203の上に配置する。背環40の位置は、背環40内の第1帯状部10および第2帯状部20の接合を緩めて調整することが可能である。また、胸当て部50は中心に対して線対称であり、U字形状を呈していることで、肩関節の上部と肩甲骨の上部とを結ぶ直線の延長線上に背環40を位置づけることができる。この位置に背環40を配置することによって、犬が、立つ、座る、寝る、丸まる、伸びる等の動きをしても、動物用サスペンダー1がその動きにスムーズに追従することができ、かつ胸当て部50が胸202を広く覆うため、犬200の動きに対してもうまくフィットすることができるので、背環40の位置が安定することになる。その結果、背環40は、犬200のいろいろな姿勢に対応してズレ難くなる。さらに、第1帯状部10と第2帯状部20とが背環40で接合しているため、胸当て部50の両端部51が接近し、犬200の胸202から背中203に至る形状と類似することになるので、胸当て部50の装着が容易となる。
【0061】
ここで、図5に示すように、犬に装着した際の胸当て部50の形状は、正面視においてU字状となるが、この場合において、胸当て部50の最も高い場所に位置する部分(この図においては、胸当て部50の第2帯状部20側の上端部523)から胸当て部50の最も低い場所に位置する部分(この図においては、胸当て部50の中央部の下端部522)の長さL1に対し、胸当て部50の上側端部の最も低い部分(この図においては、胸当て部50の中央部の上端部521)から胸当て部50の最も低い場所に位置する部分(この図においては、中央部の下端部522)の長さL2の比率(L2/L1)は特に限定されないが、0.40~0.60の範囲にあるものが、犬が、立つ、座る、寝る、丸まる、伸びる等の動きをしても胸当て部50による動物の皮膚への擦れが生じ難いので好ましく、0.45~0.50の範囲にあるものが胸当て部50による動物の皮膚への擦れがより生じ難いので特に好ましい。
【0062】
また、同様に、胸当て部50の最も長い横幅M1に対し、胸当て部50の上下方向の中央部の横幅M2の比率(M2/M1)は特に限定されないが、0.45~0.65の範囲にあるものが犬の肩関節上の皮膚に胸当て部50の端部が当たらず、擦れることが少ないので好ましく、0.50~0.60の範囲にあるものが、犬の肩関節上の皮膚に胸当て部50の端部が当たらず、擦れることがより少ないので特に好ましい。
【0063】
なお、胸当て部50および背環40の位置が安定しているため、各帯状部10、20、30のそれぞれのクリップ60で装着品100を挟持することが容易である。そして、各帯状部10、20、30は調整部70で適切な長さに調整できる。第1帯状部10および第2帯状部20で装着品100の上側を挟持し、第3帯状部30で装着品100の下側を挟持する。これらの挟持により、装着品100の脱落等を防止することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の動物用サスペンダー1は、動物に装着後、背環40および胸当て部50の位置が安定しており、動物の動きに対して適切に追従し、動物の被毛や肌に擦れる心配もない。胸当て部50は、各帯状部10、20、30に比較して幅も大きく、柔らかい素材からできているので、動物の胸を優しく包み込むことができる。その結果、長期間使用しても、動物にストレスを与えることを極力防止している。また、肩関節は他の関節に比較してよく動く部分であり、また骨に当たりやすいが、胸当て部50により、擦れを防止し、長く着用することによる擦り剥けも防止することができる。
【0065】
さらに、装着品100をクリップ60で挟持していることで、後方に引っ張られ、動物の胸と首に負担が掛かりやすいが、幅広くソフトな胸当て部50により、負担を大幅に減少させることができる。特に、大型犬の場合には、従来の動物用サスペンダーとは異なり、胸当て部50により大型犬にかかる荷重を分散させることができるので、大型犬が傷ついたり、皮膚炎等の発生を防止することができる。
【0066】
加えて、第1帯状部10、第2帯状部20および第3帯状部30が胸当て部50に取り付けられているので、各帯状部10、20、30は従来の動物用サスペンダーの帯状部と比較して短い。その結果、これらの帯状部10、20、30が、装着する動物の首や足に絡まってしまうのを防止することができる。
【0067】
なお、本発明を説明を分かり易くするために、第1帯状、第2帯状部等の「第1、第2、・・」を使用したが、位置等は限定されない。例えば、動物の下側に配置される帯状部を第1帯状部、上側に配置される帯状部を第2帯状部、第3帯状部としてもよい。
【0068】
本発明の動物用サスペンダー1は、第1帯状部10と、第2帯状部20と、第3帯状部30と、背環40と、胸当て部50と、を備え、第1帯状部10と第2帯状部20は背環40内で上下に交差すると共に背環40を貫通し、第1帯状部10、第2帯状部20および第3帯状部30のそれぞれの一端には、動物に装着する装着品100を挟持するクリップ60が設けられ、一端と反対側の他端は、胸当て部50にそれぞれ取り付けられ、第1帯状部10および第2帯状部20は、胸当て部50の両端近傍に取り付けられ、第3帯状部30は胸当て部50の中央近傍に取り付けられている。
【0069】
これにより、動物の胸専用の胸当て部50を設けることにより、帯状部で作られたサスペンダーに比較して、ズレ等が解消され装着品の脱落を防止できる。第1帯状部10と第2帯状部20が背環40で交差するため摩擦が働き、背環40の移動がなくなり胸当て部50による擦れを防止している。また、2つの帯状部10、20で胸当て部50の両端を支持するため、胸当ての部50の移動がより抑制され、動物にストレスを与えることが少なくなる。さらに、装着品100をクリップ60で挟持していることで、後方に引っ張られ、動物の胸と首に負担が掛かりやすいが、胸当て部50により、負担を大幅に減少させることができる。そして、動物の動きによく追従できるので、装着品100の位置が安定し、脱落等を防止している。
(他の実施形態)
【0070】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、胸当て部の幅は、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部の幅よりも広い。これにより、胸当て部の幅が広いので、動物の胸を優しく包み込むことができる。その結果、長期間使用しても、動物にストレスを与えることを極力防止することができる。
【0071】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、胸当て部の材質は、柔らかい素材から形成されている。これにより、柔らかい素材から形成されているので、動物の胸を優しく包み込むことができる。その結果、長期間使用しても、動物にストレスを与えることを極力防止することができる。
【0072】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、胸当て部は、胸当て部の他の部分よりも肉厚のソフト部と、メッシュ構造からなるメッシュ部と、を有し、ソフト部は、胸当て部の側部に配置され、メッシュ部は、ソフト部に取り囲まれている。これにより、クッション性の高いソフト部により、毛の絡みや傷の発生を防止することができる。また、メッシュ部は、通気性があるため、蒸れによる皮膚のトラブルを防止し、メッシュ構造の凹凸で、動物の被毛の絡みや切れを防止することができる。
【0073】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、背環は、複数の孔を有し、孔の一つが第1帯状部および第2帯状部の共通の貫通孔となる三叉タイプである。これにより、第1帯状部と第2帯状部の背環における接合面積が増大し、摩擦力が向上し、背環の移動を抑制することができる。
【0074】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、正面視において、胸当て部がU字状を呈する。これにより、動物の体型に合わせた形状で動物用サスペンダーの装着が容易となり、装着具合も良好で、適切な位置に装着できる。その結果、動物の種々の動きに対しても動物用サスペンダーがズレることを防止することができる。
【0075】
本発明の動物用サスペンダーの一態様として例えば、動物用サスペンダーを動物に装着した時、胸当て部が、肩関節が位置する胸を包み込むように覆い、背環が、動物の背中に配置され、第1帯状部と第2帯状部は背中から腰に亘って配置され、第3帯状部は、胸当て部から前脚の間を通って後脚方向に配置され、第1帯状部、第2帯状部および第3帯状部のそれぞれのクリップが、臀部近傍に装着された装着品を挟持する。
【0076】
これにより、動物用サスペンダーが、動物の体型に合わせて装着できるので、背環の移動抑制と胸当て部の包み込むような装着により動物のストレスを軽減し、装着品のズレや脱落を防止することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0078】
また、上述した実施形態では、第1帯状部、第2帯状部、第3帯状部の3つの帯状部で本発明の動物用サスペンダーを構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0079】
例えば、第3帯状部と同様に、胸当て部から前脚の間を通って後脚方向に配置するように第4帯状部を設けてもよいし、第1帯状部、第2帯状部と同様に、背中から腰に亘って4帯状部を設けてもよい。このように動物用サスペンダーを構成しても同様の効果が得られる。
【0080】
また、上述した実施形態では、接続部としてクリップを用いたが、本発明はこれに限定されない。
【0081】
接続部としては、装着品と接続することができるものであれば特に限定されず、例えば面ファスナー、釦、ホック等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の動物用サスペンダーは、動物の臀部等に装着する装着品のズレ防止を望む分野に最適である。
【符号の説明】
【0083】
1 動物用サスペンダー
10 第1帯状部
20 第2帯状部
30 第3帯状部
40 背環
41、41a、41b、41c、41d、41e、41f 孔
50 胸当て部
51 胸当て部の両端部
52 胸当て部の中央部
521 胸当て部の中央部の上端部
522 胸当て部の中央部の下端部
523 胸当て部の第2帯状部側の上端部
53 第1接合部
54 第2接合部
55 第3接合部
60 クリップ
70 調整部
100 装着品
200 犬
201 鼻
202 胸
203 背中
M1 胸当て部の最も長い横幅
M2 胸当て部の上下方向の中央部の横幅
L1 、胸当て部の最も高い場所に位置する部分から胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さ
L2 胸当て部の上側端部の最も低い部分から胸当て部の最も低い場所に位置する部分の長さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6