(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011225
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】組立キット、機器保持治具、および機器保持治具を用いる施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/18 20060101AFI20230117BHJP
B25C 7/00 20060101ALI20230117BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
E04F21/18 G
B25C7/00 Z
E04F13/08 101L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114958
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】光増 勇人
【テーマコード(参考)】
2E110
3C068
【Fターム(参考)】
2E110AA41
2E110AB04
2E110AB23
2E110CA03
2E110CA30
2E110CC04
2E110DA16
2E110DC15
2E110DC32
2E110DC36
2E110GA32Y
2E110GA34W
2E110GB02Y
3C068AA01
3C068BB01
(57)【要約】
【課題】対象面に鋲部材を斜めに打ち込むための機器保持治具をユーザーが容易に用意できる技術を提供すること。
【解決手段】施工対象面に対して機器を斜めに保持する機器保持治具を組み立てる組立キット1であって、平面部構成部3と傾斜規定部構成部4とを有するものである。平面部構成部3は、施工時に施工対象面に押し当てられる平面部を構成する部分である。傾斜規定部構成部4は、施工時に平面部に対する機器の傾斜角を規定する傾斜規定部を構成する部分である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象面に対して機器を斜めに保持する機器保持治具の組立キットであって、
施工時に施工対象面に押し当てられる平面部を構成する平面部構成部と、
施工時に前記平面部に対する機器の傾斜角を規定する傾斜規定部を構成する傾斜規定部構成部とを有する組立キット。
【請求項2】
請求項1に記載の組立キットであって、
前記傾斜規定部構成部は、組み立て時に前記平面部に挿し込まれる固定タブを有し、
前記平面部構成部には、前記固定タブを挿し込むためのスリットが形成されている組立キット。
【請求項3】
請求項1および請求項2のいずれか1つに記載の組立キットであって、
前記傾斜規定部構成部は、施工時に機器を保持する保持タブを有する組立キット。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の組立キットであって、
前記傾斜規定部構成部は、
施工時に機器が押し当てられる機器押し当て面を構成する機器押し当て面構成部と、 組み立て時に前記平面部に対する前記機器押し当て面の角度を規定する角度規定部を構成する角度規定部構成部とを有し、
前記機器押し当て面構成部と前記角度規定部構成部との境目に折り目線が形成されている組立キット。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の組立キットであって、
前記平面部構成部と前記傾斜規定部構成部とが繋がっており、
前記平面部構成部と前記傾斜規定部構成部との境目に折り目線が形成されている組立キット。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の組立キットであって、
平板部材で形成される組立キット。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の組立キットにおける前記傾斜規定部を前記平面部に固定してなる機器保持治具。
【請求項8】
施工対象面に対して機器を斜めに保持する機器保持治具であって、
施工時に施工対象面に押し当てられる平面部と、
施工時に前記平面部に対する機器の傾斜角を規定する傾斜規定部とを有する機器保持治具。
【請求項9】
壁面にシート部材を固定する施工方法であって、
前記壁面にシート部材を押し当て、
前記シート部材に請求項7および請求項8のいずれか1つに記載の機器保持治具の平面部を押し当て、
鋲部材を打ち込む鋲打ち込み機を前記機器保持治具の傾斜規定部に押し当て、
その状態で前記鋲打ち込み機を用いて前記シート部材を貫通して前記壁面に鋲部材を斜めに打ち込むことで前記壁面に前記シート部材を固定する施工方法。
【請求項10】
壁面に建材を設置する施工方法であって、
磁性体を有するシート部材を請求項9に記載の施工方法により壁面上に固定し、
固定された前記シート部材上に磁性体を有する建材を貼り付けることで前記壁面に前記建材を設置し、
前記シート部材の磁性体と前記建材の磁性体とのうち少なくとも一方が永久磁石である施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、組立キット、機器保持治具、および機器保持治具を用いる施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住居等の壁面上に何らかの部材を取り付けたいという需要がある。この場合に、一旦取り付けた部材を撤去した後の壁面にあまり痕跡を残さないことが求められる。このため、微小な鋲部材を当該部材および壁面に打ち込むことで当該部材を壁面に取り付ける手法がある。鋲部材を引き抜いてしまえば当該部材を撤去でき、壁面に残る痕跡はごく些少なものに留まるからである。このような用途に使用できる機器として、特許文献1に開示されているガイド装置を挙げることができる。同装置を用いれば、対象面に対してステープル針を斜めに打ち込むこともできる。上記の取り付けの対象物の一例として、タイルが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には次のような問題点があった。前述のように壁面上に何らかの部材を取り付けることは、専門の施工業者が行うとは限らず、一般ユーザーが自ら施工することもよくあるものである。特許文献1の装置は、構造が複雑であるため専門の施工業者でない者が操作することは必ずしも容易ではない。加えて、装置のサイズが大掛かりなものとなるため、壁面上に取り付けようとする対象物の販売セットの中に含めてしまうことは現実的でない。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、対象面に鋲部材を斜めに打ち込むための機器保持治具をユーザーが容易に用意できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における組立キットは、施工対象面に対して機器を斜めに保持する機器保持治具を組み立てる平板部材であって、施工時に施工対象面に押し当てられる平面部を構成する平面部構成部と、施工時に平面部に対する機器の傾斜角を規定する傾斜規定部を構成する傾斜規定部構成部とを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る組立キットの平面図である。
【
図2】実施の形態に係る機器保持治具を示す斜視図である。
【
図3】機器保持治具の組立の途中の状況を示す斜視図である。
【
図4】
図2の機器保持治具を裏面から見て示す斜視図である。
【
図5】
図2の機器保持治具により機器を斜めに保持している状況の側面図である。
【
図6】
図2の機器保持治具に機器を固定した状況を示す斜視図である。
【
図8】施工によりステープル針を斜めに打ち込んだ状況を示す断面図である。
【
図9】1枚のスチールシートにおけるステープル針の打ち込み位置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すのは、実施の形態に係る機器保持治具をユーザーが組み立てる組立キット1である。組立キット1は、平板部材で構成される。組立キット1には、
図2に示す機器保持治具20を組み立てるための展開
図2が2組描かれている。
図2の機器保持治具20は、平面部23と傾斜規定部24とを有している。
図1中の展開
図2は、実線と破線との2種類の線により描かれている。実線は、組立キット1を切断する箇所を示す。破線は、組立キット1を切断せずに折り曲げる箇所を示す。
【0009】
実際にユーザーに提供する組立キット1では、実線に沿ってミシン目加工等の脆弱化を施しておくことが好ましい。これによりユーザーは、特段の切断具を用いなくても展開
図2の部分を組立キット1から容易に分離することができる。破線の箇所には、プレス等のミシン目加工ほど強力ではない加工を施しておくことが好ましい。これによりユーザーは、機器保持治具20を組み立てる際に、折り曲げが必要な箇所を容易に正しく折り曲げることができる。あるいは、破線の箇所には、目視により識別可能な色の線を描いて折り曲げ位置を示すだけとしてもよい。破線は、組立キット1をあらかじめ折り曲げやすくする加工を施した折り目線、もしくは、組立キット1に折り曲げ位置を表示した折り目線である。
【0010】
展開
図2の内容について説明する。1組の展開
図2の中には、四角形状の平面部構成部3と、扇形に近い形状の傾斜規定部構成部4とが含まれている。平面部構成部3は
図2の機器保持治具20において平面部23を構成する部分であり、傾斜規定部構成部4は傾斜規定部24を構成する部分である。平面部構成部3と傾斜規定部構成部4とは繋がっている。平面部構成部3と傾斜規定部構成部4との境目には、折り目線5がある。
【0011】
傾斜規定部構成部4の範囲内には折り目線6、7が引かれている。折り目線6、7は、傾斜規定部構成部4の平面部構成部3への付け根の位置、すなわち折り目線5の位置の両端から、傾斜規定部構成部4の形状を扇形と見なしたときに弧に相当する縁辺18に至って形成されている。折り目線6、7により傾斜規定部構成部4は3つの領域に区画されている。折り目線6、7の間の略長方形状の領域を、機器押し当て面構成部8という。折り目線6、7の外側の領域を、角度規定部構成部9、10という。
【0012】
傾斜規定部構成部4には、固定タブ11が設けられている。固定タブ11は、傾斜規定部構成部4の形状を扇形と見なしたときに半径に相当する両縁辺16、17の中程に位置している。固定タブ11は、角度規定部構成部9、10における機器押し当て面構成部8とは反対側の縁辺16、17からさらに外側に突出している部位である。縁辺16、17は、固定タブ11の範囲内を除き直線状となっている。縁辺16、17から折り目線6、7までの距離は、折り目線5から遠いほど大きい。このため角度規定部構成部9、10は三角形に近い形状である。
【0013】
傾斜規定部構成部4にはさらに、保持タブ12が設けられている。保持タブ12は、折り目線6、7の中程の位置から外側に、つまり角度規定部構成部9、10に食い込むように突出している部位である。名付け上、角度規定部構成部9、10には保持タブ12を含まない。保持タブ12は、機器押し当て面構成部8の両側辺から外向きに突出している部位である。
【0014】
図1において、角度規定部構成部9、10と保持タブ12との間の線13は実線である。角度規定部構成部9、10と保持タブ12との間は切断されることが想定されている。線13については、組立キット1をユーザーに提供する時点にて、ミシン目加工に留まらず完全に切断した状態としておいてもよい。あるいは、線13についても他の実線と同様にミシン目加工に留めておき、組立時にユーザーがミシン目を破って切断することとしてもよい。
図1では保持タブ12の範囲内の区間にも折り目線6、7が引かれている。この範囲内の折り目線6、7はなくてもよい。
【0015】
平面部構成部3には、2箇所にスリット14が形成されている。スリット14は、
図2の機器保持治具20を組み立てる際に固定タブ11が挿入される貫通穴が形成される箇所である。
図2ではスリット14を四角い実線により表示している。組立キット1をユーザーに提供する時点にてこの四角の範囲内の平板部材を除去してスリット14を貫通穴にしておいてもよい。あるいは、スリット14の四角についても他の実線と同様にミシン目加工に留めておき、組立時にユーザーがその中の平板部材を除去して貫通穴にすることとしてもよい。組立キット1の平板部材の材質として好適なのは、段ボール、厚紙、合成樹脂の薄板等である。なかでも段ボールが最も適している。
【0016】
組立キット1から機器保持治具20への組立手順を説明する。この組立は、専門の作業要員でない一般ユーザーでも容易にできる。まず、ユーザーは、
図1の組立キット1から展開
図2の範囲内の部分を分離する。この展開
図2の部分により機器保持治具20が組み立てられる。展開
図2では平面部構成部3と傾斜規定部構成部4とが繋がっているので、組立キット1から分離した後でも平面部構成部3と傾斜規定部構成部4とが離散してしまうことはない。
【0017】
ユーザーは、分離された展開
図2に対して、折り目線5、6、7の折り曲げを行う。ユーザーは、折り目線6、7を、機器押し当て面構成部8に対してその両側の角度規定部構成部9、10を起こすように折り曲げる。このときユーザーは、保持タブ12を起こさずに、機器押し当て面構成部8に対して平面状のまま残す。ユーザーは、折り目線5も折り曲げる。ユーザーは、折り目線5の折り曲げにより、平面部構成部3に対して傾斜規定部構成部4を起こすようにする。
【0018】
この状況を
図3に示す。
図3では、傾斜規定部構成部4の全体が平面部構成部3に対して起きた状態にある。傾斜規定部構成部4の中でも角度規定部構成部9、10が、機器押し当て面構成部8に対して、平面部構成部3の方へ向かって折り曲げられている。この状態ではさらに、2つの固定タブ11がそれぞれ、スリット14と対面している。固定タブ11がいずれもスリット14に挿入されると、
図2に示した機器保持治具20が出来上がる。この状態では固定タブ11が平面部23の裏面側へ突き出している。このためユーザーが、
図4に示すようにその部分を折り曲げて粘着テープ15により平面部23の裏面に固定しておくのがよい。
【0019】
ユーザーが組立の途中で誤って平面部構成部3と傾斜規定部構成部4とを切り離してしまったとしても、特に大きな問題はない。固定タブ11とスリット14とが、平面部23に対して傾斜規定部24を位置決めする機能を奏するからである。このためユーザーは、粘着テープ15による固定箇所を少し増やすことにより、
図2に示した機器保持治具20と大きくは違わないものを容易に組み立てることができる。
【0020】
図2の機器保持治具20における平面部23は平面部構成部3に由来し、傾斜規定部24は傾斜規定部構成部4に由来する。傾斜規定部24は平面部23に対して、固定タブ11のスリット14への挿入により固定されている。傾斜規定部24はさらに、機器押し当て面28と角度規定部29、30とを有している。
【0021】
機器押し当て面28は機器押し当て面構成部8に由来し、角度規定部29、30は角度規定部構成部9、10に由来する。展開
図2中における機器押し当て面構成部8は機器押し当て面28を構成する部位であり、角度規定部構成部9、10は角度規定部29、30を構成する部位である。機器押し当て面28は、平面部23に対して傾斜している面である。その傾斜角は、角度規定部29、30の形状により規定されており、一定に維持されている。角度規定部29、30は、角度規定部構成部9、10について先に述べたように、折り目線5から遠い位置ほど幅広の略三角形状だからである。機器保持治具20では、角度規定部29、30の縁辺16、17の全体が平面部23に接している。このため、傾斜規定部24の耐久性が高い。
【0022】
機器保持治具20は
図5に示すように、何らかの機器を施工対象面40に対して斜めに保持するための治具である。ここでは機器として、ステープル針を施工対象面40に打ち込むタッカー41を挙げている。ステープル針に限らず何らかの鋲部材を施工対象面40に打ち込む鋲打ち込み機であってもよい。タッカー41は市販されている一般的なものであり、一般ユーザーでも特に困難なく使用できるものである。
図5から分かるように、機器保持治具20の平面部23は、施工時に施工対象面40に押し当てられる部位である。
【0023】
機器押し当て面28は、施工時に機器が押し当てられる面である。機器押し当て面28に押し当てられた機器は、施工対象面40に対して傾斜規定部24により規定される傾斜姿勢に保持される。より詳細には、機器の傾斜角は、機器押し当て面28の傾斜角に従う。機器押し当て面28の傾斜角は角度規定部29により規定されている。
図5の状況ではタッカー41が施工対象面40に対して傾斜して保持されているので、ユーザーがタッカー41を作動させることにより、ステープル針を矢印Aに示すように傾斜した方向に施工対象面40に打ち込むことができる。
【0024】
ユーザーは実際には
図6に示すように、機器を粘着テープ15により機器押し当て面28に固定することが望ましい。
図6の状態では、保持タブ12が上向きに折り曲げられることによって機器を保持している。図中に3本見える粘着テープ15のうち1本は、保持タブ12の上と機器の表面とにわたって貼り付けられている。ユーザーは、このように機器を機器保持治具20にしっかりと固定した状態にて、機器と機器保持治具20とを一体的に取り扱うことが好ましい。この状態で平面部23を施工対象面40に押し当てることにより
図5に示した状態を実現できる。
図6においても機器としてタッカー41を示している。
【0025】
本形態の機器保持治具20による施工の具体例として、建材としての装飾タイルの住居壁面への取り付け手順を説明する。ここで例示する装飾タイルは、住居における室内側の壁面に、ベースとなるシート部材を取り付けておいてそのシート部材上に貼り付けるものである。ユーザーは、シート部材としてスチールシートを使用し、装飾タイルとして裏面に永久磁石を有するものを使用する。これによりユーザーは、一旦壁面にシート部材を取り付けておけば装飾タイルの貼り替えを自在に行うことができるものである。装飾タイルの貼り替えのみならずシート部材の施工も、ユーザーが自ら行うことができる。本形態の機器保持治具20による施工の対象は、壁面へのスチールシートの取り付けである。
【0026】
施工時にはユーザーは
図7に示すように、スチールシート42を壁面43に押し当て、さらにスチールシート42に機器保持治具20を押し当てる。押し当てるのは、
図6に示したタッカー41と一体化された機器保持治具20である。実際にスチールシート42上に押し当てられるのは平面部23である。この状態で機器保持治具20は、傾斜規定部24により、スチールシート42および壁面43に対して斜めに保持されている。タッカー41の打ち込みヘッド部が平面部23のすぐ上の位置にてスチールシート42に対面している。
【0027】
ユーザーはこの状態でタッカー41を作動させることにより、
図8に示すようにステープル針44を打ち込むことができる。
図8中のステープル針44は、スチールシート42を貫通して壁面43に斜め下向きに打ち込まれている。これによりスチールシート42は壁面43に固定される。ユーザーは
図9に示すように、1枚のスチールシート42に対して複数箇所にステープル針44を打ち込むことが望ましい。このようにして壁面43に固定されたスチールシート42上に、
図10に示すような裏面に永久磁石45を有する装飾タイル46を磁力で貼り付けることができる。スチールシート42と装飾タイル46との縦横サイズはだいたい同じくらいである。一旦貼り付けられた装飾タイル46はユーザーが容易に貼り替えることができる。
【0028】
上記のように施工したスチールシート42は、装飾タイル46の重量程度では壁面43から剥がされることはない。ステープル針44が斜め下向きに打ち込まれているため、重力による荷重が掛かるとむしろ壁面43に余計に食い込むからである。実際には壁面43に対して3行3列、あるいは2行4列程度の複数のスチールシート42を配列することが多い。その場合ステープル針44の打ち込み総数は数十本程度である。機器保持治具20の耐久性はこれに対して十分である。この耐久性には、前述した、縁辺16、17の全体が平面部23に接していることが貢献していると考えられる。
【0029】
本形態の機器保持治具20は前述のように、組立キット1の状態にてユーザーに提供することができる。組立キット1のサイズは通常、300mm四方程度である。組立キット1とスチールシート42と装飾タイル46とがいずれも平板状のものであるため、スチールシート42および装飾タイル46を含む商品パッケージにさらに組立キット1を加えても、パッケージサイズにはほとんど影響しない。このため本形態の機器保持治具20はユーザーへの提供が容易である。また段ボール製であることから、用済みとなった機器保持治具20の廃棄処分にも特段の困難はない。組立キット1中の展開
図2以外の余白部分も同様である。
【0030】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、傾斜規定部24を平面部23に固定してなる機器保持治具20を、組立キット1の状態にてユーザーに提供することができる。これにより、タッカー41その他の機器を施工対象面40に対して傾斜して保持する機器保持治具20を一般人でも容易に組み立てられるようにしている。そして、ステープル針44の斜め打ち込みのような施工対象面40への施工作業を、一般ユーザーでも容易に傾斜状態で行うことができるようにしている。これにより、装飾タイル46の取り付け等の作業を一般ユーザーでも容易に行うことができるものである。
【0031】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、平面部23および平面部構成部3は、図示した四角形状に限らず、円形、楕円形など他の形状でもよい。傾斜規定部24および傾斜規定部構成部4に関しては、折り目線6と折り目線7とは必ずしも平行でなくてもよい。言い替えると、機器押し当て面28および機器押し当て面構成部8の幅は一定でなくてもよい。角度規定部29、30および角度規定部構成部9、10は、その縁辺16、17の全体が平面部23に接するものでなくてもよい。ただし機器保持治具20の耐久性の観点からは、縁辺16、17の全体が平面部23に接する形の方が有利である。
【0032】
組立キット1に関しては、その中の展開
図2の組数が2組であることは必須ではない。1組だけでもよいし、3組以上でもよい。1組だけの場合、余白部分を除いた展開
図2の部分のみをユーザーに提供するものであってもよい。組立済みの機器保持治具20をユーザーに提供することも妨げられない。装飾タイル46とそのベース部材に関しては、ベース部材に永久磁石を備え、装飾タイル46には永久磁石に吸引される磁性体を備えるものであってもよい。ベース部材を壁面43に固定する鋲部材は、ステープル針44に限らず釘状のものであってもよい。
【0033】
組立キット1を用いずに機器保持治具20が作製されてもよい。例えば、ユーザーが、3Dプリンターを用いて機器保持治具20を作製してもよい。ベース部材上に貼り付けられる建材は、タイル以外のものでもよい。例えば、木製品、金属製品等の建材でもよい。壁面上に施工されるシート部材は、建材を貼り付けるためのベース部材に限られない。
【符号の説明】
【0034】
1……組立キット、3……平面部構成部、4……傾斜規定部構成部、5-7……折り目線、8……機器押し当て面構成部、9、10……角度規定部構成部、11……固定タブ、
12……保持タブ、14……スリット、16、17……縁辺、20……機器保持治具、
23……平面部、24……傾斜規定部、28……機器押し当て面、29、30……角度規定部、40……施工対象面、41……タッカー、42……スチールシート、43……壁面、44……ステープル針、45……永久磁石、46……装飾タイル