(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112891
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230807BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H05K7/20 G
G09F9/00 304B
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014898
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 響平
(72)【発明者】
【氏名】武田 忠
(72)【発明者】
【氏名】舩木 速人
【テーマコード(参考)】
5E322
5G435
【Fターム(参考)】
5E322BA01
5E322EA11
5G435AA12
5G435AA14
5G435BB02
5G435BB05
5G435BB06
5G435BB12
5G435EE03
5G435GG43
5G435HH02
5G435LL18
(57)【要約】
【課題】効率よく排熱を行うことの可能な構造体を提供する。
【解決手段】施工壁120に取り付けられた表示媒体110を覆う表示パネル100であって、表示パネル100は、表示媒体110を挟んで施工壁120に面して設けられる前面壁130aと、前面壁130aの左右両端のそれぞれから施工壁120方向に延びる一対の側壁130bと、を備える筐体130を有し、筐体130は、正面視で表示媒体110よりも上方に、施工壁120と共に、施工壁120と筐体130とで囲まれてなる排熱孔133を形成するようになっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けられた熱源を覆う構造体であって、
前記熱源を挟んで前記壁面に面して設けられる前面壁と、
前記前面壁の左右両端のそれぞれから前記壁面方向に延びる一対の側壁と、
を備える筐体を有し、
前記筐体は、正面視で前記熱源よりも上方に、前記壁面と共に、当該壁面と前記筐体とで囲まれてなる排熱孔を形成するようになっていることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記筐体は、正面視で前記熱源よりも上方に、前記前面壁と前記一対の側壁とに連接し前記壁面方向に延びる補強プレートを備え、
当該補強プレートの一部を切り欠いて前記排熱孔を形成していることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記排熱孔の開口面積は、前記筐体と前記壁面とからなる開口部の開口面積の30%以上100%未満であることを特徴とする請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記補強プレートは、前記前面壁と前記一対の側壁それぞれとに接し、前記前面壁と接する部分を一の長辺とし、前記一対の側壁と接する部分を短辺とする長方形から前記壁面と対向する側の長辺の一部を底辺とする二等辺三角形を切り取った形状を有し前記排熱孔は、平面視で二等辺三角形であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
前記補強プレートは、前記前面壁と前記一対の側壁それぞれの一部とに接し、前記前面壁と接する部分を一の長辺とし、前記一対の側壁と接する部分を短辺とする長方形から前記壁面と対向する側の長辺の一部を一の長辺とする長方形を切り欠いた形状を有し前記排熱孔は、平面視で長方形であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の構造体。
【請求項6】
前記補強プレートには、抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
前記熱源は、表示装置であって、前記前面壁の、正面視で前記表示装置の表示面と重なる部分に、前記前面壁が開口されて透明板で塞いでなる表示用窓部を備えることを特徴する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源を覆う構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転写トナーを定着させるための定着装置を備えた画像形成装置等、熱源を備えた装置においては、排熱や冷却等を行う設備が設けられ、熱源の周辺や、熱源が収容された筐体内が高温となることを抑制している。例えば、特許文献1には、冷却ファンにより外気を画像形成装置内に導入し、排熱ファンによって画像形成装置外に排出するようにした排熱構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-249156号公報
【特許文献2】特開2020-34886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置と、加飾シートとの間に、パネル部材を位置させ、パネル部材に開口部を設けることにより、表示装置の表示情報を、開口部及び加飾シートを介して視認可能にした表示装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような表示装置においては、熱源から発生する熱の排熱状態が悪いと、パネル部材等の筐体部材がアクリル板等で形成されている場合には、アクリル板の角浮きや、筐体の変形促進等を引き起し、視認性の不良につながる。また、熱源から発生する熱がモニター前面のアクリル板を逆反りさせて加飾シートを押し出し、モニターの下部分に段差形状が生じるという外観不具合が生じることもある。また、高温により熱源であるモニターが正常に動作しなくなることがあり、モニターの設置環境として好ましいものではない。
【0006】
表示装置の筐体内に排熱ファン等を設けることも考えられるが、特に壁用の表示装置等の場合には、排熱ファンによる排気の吹き出しや排熱ファンの動作音、さらには筐体内という限られた空間内における排熱ファンの占有面積等の観点から、よりよい排熱方法が望まれていた。
【0007】
そこで、この発明は、上記未解決の課題を解決するためになされたものであり、効率よく排熱を行うことの可能な構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、壁面に取り付けられた熱源を覆う構造体であって、熱源を挟んで壁面に面して設けられる前面壁と、前面壁の左右両端のそれぞれから壁面方向に延びる一対の側壁と、を備える筐体を有し、筐体は、正面視で熱源よりも上方に、壁面と共に、壁面と筐体とで囲まれてなる排熱孔を形成するようになっている、構造体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、簡易な構造で排熱効果の高い構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明に係る表示パネルの取り付け状態の一例を示す一部分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る表示パネルの一例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る筐体の一例を示す一部分解斜視図である。
【
図6】施工壁に取り付けた状態の補強プレートの一例を示す端面図である。
【
図7】施工壁に取り付けた状態の補強プレートのその他の例を示す端面図である。
【
図8】検証に用いた検証用筐体の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(加飾シート10)
【0014】
図1は加飾シート10を示す図である。この加飾シート10は、
図2に示すように、表示パネル(構造体)100に用いられ、表示媒体110の前方に位置し、非表示時は壁面の一部のように違和感がなく、かつ表示媒体110を隠蔽するようになっている。
(加飾シート10の各層)
【0015】
加飾シート10は、
図1に示すように、次の3層が順次積層されている。
【0016】
なお、次の各層については、後述する。
【0017】
(1)透明シート基材20
【0018】
(2)絵柄層30
【0019】
(3)隠蔽層40
【0020】
なお、加飾シート10の各層は、上記した(1)~(3)に限定されず、例えば加飾シート10の最表層に保護層を設けても良い。
(加飾シート10の各層の積層の順番)
【0021】
加飾シート10を構成する上記3層は、例えば、
図1に示すように、透明シート基材20/隠蔽層40/絵柄層30の順に積層される。このとき、隠蔽層40は、絵柄層30に対し、表示媒体110側(矢印Aの方向)に位置させる。
(表示パネル100)
【0022】
表示パネル100は、
図2及び
図3に示すように、次のパーツを備える。
【0023】
なお、次のパーツについては、後述する。
【0024】
(1)表示媒体110
【0025】
(2)施工壁120
【0026】
(3)筐体130
(透明シート基材20)
【0027】
透明シート基材20は、加飾シート10の支持体となるものであって、透明性を有する樹脂であれば広く適用できるが、表示媒体110からの熱が影響するためPET(POLY ETHYLENE TEREPHTHALATE)などある程度耐熱性があるものが望ましい。具体的には、透明シート基材20として、例えば厚みが200μmのPETを使用している。
【0028】
加飾シート10に、透明シート基材20を使用することで、加飾シート10の透過性を上げ、視認性を向上できる。このため、表示媒体110を低輝度で使用でき、表示媒体110による温度上昇を抑え、且つ視認性を向上できる。すなわち、表示媒体110を、通常の液晶モニターとし、低輝度表示をすることで、表面温度の上昇を抑制できる。表示媒体110を低輝度表示とすることで、低温やけどを生じる45℃以下の表面温度にできた。
【0029】
また、透明シート基材20を用いることで、低輝度表示においても、視認性が向上できる。
【0030】
さらに、表示媒体110においても、低輝度表示で足りるので、高輝度モニターの使用が不要となり、部材コストの削減が可能である。
(隠蔽層40)
【0031】
隠蔽層40は、透明シート基材20のいずれか一方の面、本実施形態1では、
図1に示すように、表示媒体110とは逆側の表面に、印刷方法を用いて形成され、表示媒体110の色を隠蔽しつつ、明瞭な映像を透過表示させる目的で設けられるものである。
【0032】
隠蔽層40は、ある程度の光透過性と、顔料が塗布されていない開口部41とを有することが望ましい。
【0033】
隠蔽層40の可視光線透過率は、10%以上70%以下であることが望ましい。
【0034】
10%未満の場合には、表示視認性に劣り、70%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
(隠蔽層40の配置)
【0035】
隠蔽層40は、絵柄層30に対し、表示媒体110側(矢印Aの方向)に必ず位置させる。
【0036】
これに対し、隠蔽層40を、絵柄層30よりも観察側(矢印Bの方向)に位置させると、絵柄層30が見えなくなる、或いは見えにくくなるおそれがある。
(隠蔽層40の印刷方法)
【0037】
隠蔽層40は、インクジェット装置を用いて印刷し、例えば酸化チタンを有する白色インキで印刷した。具体的には、隠蔽層40は、絵柄層30の背面に、例えば白ベタ印刷を施している。
【0038】
印刷方法としては、インクジェット装置を例示したが、これに限定されない。
【0039】
印刷方法としては、インクジェット印刷法のほか、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。
【0040】
なお、印刷方法は、上記例示した印刷方法に限定されず、例えば手描き法、墨流し法や、転写法、写真法、電子写真法、感光性樹脂法、真空蒸着法、化学腐蝕法、感熱発色法、放電破壊法等、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
(開口部41)
【0041】
開口部41は、顔料が塗布されていない部分である。
【0042】
すなわち、隠蔽層40は、次の部分を合わせた層となっている。
【0043】
(1)有色層
【0044】
有色層は、顔料と樹脂とを塗布した部分である。
【0045】
有色層は、様々な色が適用できるが、明るい色が良く、白色が最も望ましい。
【0046】
(2)開口部41
【0047】
開口部41は、有色層の間に複数点在し、顔料も樹脂も無く、未塗装の部分である。つまり、開口部41は、印刷されていない、何もない空間、或いは隙間である。
【0048】
すなわち、透明シート基材20と隠蔽層40との2層で面を観察したとき、開口部41を通して、向こう側を直接、見渡せる部分といったイメージである。
【0049】
開口部41の開口率は、2%以上40%以下であることが望ましい。
【0050】
2%未満の場合には、表示視認性に劣り、40%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
【0051】
隠蔽層40に、開口部41を設けることで、表示媒体110を隠蔽しつつ、非表示時の色変化を抑えることができる。
【0052】
また、隠蔽層40に、開口部41を設けることで、加飾シート10の透過性を上げ、視認性を向上できる。このため、表示媒体110において、低輝度で使用でき、表示媒体110による温度上昇を抑え、且つ視認性を向上できる。
【0053】
隠蔽層40は、有色層と開口部41とを含む全体の可視光線透過率が10%以上70%以下である。
【0054】
10%未満の場合には、表示視認性に劣り、70%を超える場合には、隠蔽性に劣る。
(絵柄層30)
【0055】
絵柄層30は、隠蔽層40の表面に印刷方法を用いて形成され、目的の加飾シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
【0056】
絵柄層30は、ある程度の光透過性を有していれば、全面に塗布されていても良い。
【0057】
絵柄層30は、隠蔽層40のように「開口部41」を設けなくて良いことから、高精細な意匠を設けることができる。
【0058】
具体的には、絵柄層30は、インクジェット装置を用いて印刷し、印刷インキとしては、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色で「木目柄」を印刷した。
【0059】
なお、絵柄層30の印刷方法として、インクジェット装置を例示したが、これに限定されず、隠蔽層40と同様に、各種の印刷方法の適用できる。
(絵柄層30の模様)
【0060】
絵柄層30の模様の種類として、「木目柄」を例示したが、これに限定されず、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、木目柄のほか、例えば石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
(表示媒体110)
【0061】
表示媒体110は、
図2及び
図3に示すように、加飾シート10の裏面側に配置される。表示媒体110として、例えば300cd/m
2以上1200cd/m
2以下の汎用の液晶ディスプレイ(700cd)を使用することができる。
【0062】
表示媒体110は、例えば取り付け金具120aにて、施工壁120に固定する。
【0063】
なお、表示媒体110として、液晶ディスプレイ(LCD)を例示したが、これに限定されず、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)を用いても良い。
(施工壁120)
【0064】
施工壁120は、表示媒体110に加え、筐体130を支持するためのものである。
【0065】
施工壁120には、例えば取り付け金具120aにて、表示媒体110を固定する。表示媒体110は、利用者の目線の高さ程度の位置に設けられ、筐体130は、表示媒体110全体を覆うことの可能な大きさに形成される。なお、施工壁120は、既存の壁であってもよい。すなわち、既存の壁に表示媒体110と筐体130とを固定することで表示パネル100を構成するようにしてもよく、施工壁120を含めて表示パネル100を構成することで表示パネル100単体として任意の場所に設置可能に構成してもよい。
(筐体130)
【0066】
筐体130は、強度が確保できる材質、例えば板金製であり、施工壁120に設けた治具120bにより固定される。
【0067】
筐体130は、
図2~
図4に示すように、表示媒体110の前方と、左右の側方と、上方と、を囲むものであり、筐体130は施工壁120の高さよりも多少長さが短い。なお、筐体130の上下方向の長さは、これに限るものではなく、少なくとも表示媒体110を覆うことの可能な長さであればよい。
【0068】
筐体130は、前面壁130aと、左右の側壁130bと、上端に補強プレート130cと、を有し、さらに、正面視で後述の窓部131のやや上方及びやや下方にそれぞれ位置する支持壁130d及び130eを有する。
【0069】
筐体130の前面壁130aは、上下方向に長い長方形の板状であって、表示媒体110の前方に位置し、その前面は、凹凸が無く、平坦性が高いものとする。
【0070】
また、前面壁130aの裏面も、表示媒体110の表面と対向するため平坦に形成されている。
【0071】
前面壁130aの上端は、表示媒体110の上端よりも上に位置し、又、横幅も表示媒体110の横幅よりも多少大きな値に設定されている。
【0072】
左右の側壁130bは、前面壁130aの左右の端部から、平面がチャンネル(コの字)形に折れ曲がり、表示媒体110の側に向かって延びている。
【0073】
補強プレート130c、支持壁130d及び130eは、
図4及び
図5に示すように同一形状を有する。補強プレート130cは、筐体130の上端に、前面壁130aと左右の側壁130bに接して設けられる。支持壁130dは、窓部131の上端よりも多少上となる位置に前面壁130aと左右の側壁130bとに接して設けられ、支持壁130eは、窓部131の下端よりも多少下となる位置に前面壁130aと左右の側壁130bとに接して設けられる。なお、
図5において、(a)は補強プレート130cの平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は斜視図である。
【0074】
また、筐体130の下端近傍には
図4に示すように、アジャスタ134を取り付けるための取り付け部材134aが設けられている。取り付け部材134aは、平面視で略片仮名の「コ」の字状に形成され、前面壁130aと左右の側壁130bとに接して固定されている。取り付け部材134aの左右の側壁130bと接する部分は幅広に形成され、幅広部分にアジャスタ134を取り付けるようになっている。アジャスタ134を設けることによって、筐体130の下端と設置面との間に隙間が空くようになっている。
【0075】
補強プレート130c及び支持壁130d、130eは、同一形状であるので、ここでは補強プレート130cについて説明する。
【0076】
補強プレート130cは、
図4~
図6に示すように、平面視で左右の側壁130bそれぞれと前面壁130aとに接し、前面壁130aと接する部分を一方の長辺とし、左右の側壁130bと接する部分を短辺とする長方形から、長手方向の中央部であり且つ前面壁130a側の長辺から他方の長辺側に多少入った位置を頂点とし、他方の長辺の一部を底辺とする二等辺三角形を切り取った形状を有する。また、補強プレート130cの前面壁130aと接する部分及び側壁130bと接する部分はアルファベットの「L」字形に折り曲げられている。筐体130が施工壁120に取り付けられた状態では、補強プレート130cと施工壁120とで囲まれた排熱孔133が形成され、排熱孔133は、平面視で二等辺三角形を有する。
【0077】
ここで、補強プレート130cは、排熱孔133の平面視における面積が、筐体130と施工壁120とで囲まれた開口部の平面視における面積に対して、その30%以上100%未満の大きさとなるように形成される。
【0078】
また、補強プレート130cには、抜き孔130ccが形成されている。このように抜き孔130ccを設けることによって、筐体130を設置した後、設置場所の環境に応じて、排熱孔形状を変更することができる。これにより、表示パネル100の設置環境に応じて排熱孔133の面積や形状を変更することができるようになっている。
【0079】
補強プレート130cは、例えば、筐体130と同様の厚みを持つ板金で形成され、銅板プレスによって筐体130と同時に製造する。
【0080】
補強プレート130cは、例えば、平面視で、側壁130bと接する左右の端部間の長さを665mm、側壁130bと接する幅方向の長さを130mmとする長方形から、左右の側壁130bそれぞれから2mm内側に入った2箇所と、長方形の長手方向中央部の前面壁130a側の長辺から2mm内側に入った箇所とを頂点とする、底辺が661mm、深さ(すなわち高さ)128mmの二等辺三角形を切り取った形状を有する。
【0081】
この場合、排熱孔133の開口面積は、42.304mm2である。そして、筐体130と施工壁120とで囲まれた開口部の面積は、86.450mm2((635+15+15)×(115+15))であるため、筐体130と施工壁120とで囲まれた開口部の面積に対する排熱孔133の開口面積の割合は、約50%(48.9%)となる。
【0082】
補強プレート130cは、ビス、或いは、接着剤や両面テープ等、公知の方法で筐体130に取り付けられる。
【0083】
なお、補強プレート130cの切欠き構造は、排熱孔133の開口面積の条件を満足する二等辺三角形状を有していれば任意に設定することができる。また、後述の筐体130を補強する観点から、補強プレート130cは、前面壁130a及び左右の側壁130bそれぞれと接し且つ、前面壁130a及び左右の側壁130bそれぞれの幅方向全体と接していることが好ましい。
【0084】
また、補強プレート130cを形成する板金の厚みは、必要な強度に応じて任意に設定することができる。
(前面壁130aの各部)
【0085】
前面壁130aには、
図2及び
図3に示すように、次の各部を備える。
【0086】
(1)窓部131
【0087】
(2)透明板132
(窓部131)
【0088】
窓部(表示用窓部)131は、
図2及び
図3に示すように、施工壁120に固定された表示媒体110の表示面が臨み、貫通して形成されている。
【0089】
窓部131は、表示媒体110の表示面の周囲を隠蔽するために、表示領域よりも小さい開口とする。
【0090】
なお、窓部131を、筐体130の前面壁の比較的、上方に形成したが、これに限らず、図示しないが中央に形成しても良い。
(透明板132)
【0091】
透明板132は、筐体130の窓部131にはめ込まれて固定され、透明性の高い材質、例えばアクリル、ガラス、PETなどで形成される。また、透明板132は、強度と透過性とを維持できるように、厚さを2mm以上5mm以下程度としている。
【0092】
透明板132のサイズは、前面壁130aの表面と面を合わせるため、前面壁130aの窓部131よりも小さくし、窓部131にはめ込まれ、前面壁130aの前面と同一面とする。
【0093】
また、透明板132の厚さは、前面壁130aよりも厚く、その後面が表示媒体110の表示面と対向する。
【0094】
前面壁130aには、窓部131を設けているので、表示媒体110の表示面部分を除く部分は前面壁130aによって覆われ、その結果、表示媒体110、筐体130といった部分的な材料の違いによる凹凸、色味の差異を隠蔽できる。
(作用・効果)
【0095】
表示パネル100は、筐体130によって表示媒体110の前面及び側面を覆っており、筐体130及び施工壁120に囲まれた空間は比較的狭い。表示媒体110は熱源となるが、筐体130の上端及び下端は開口しているため、筐体130及び施工壁120に囲まれた空間に、筐体130の下端から上端に抜ける排熱路が形成される。そのため、筐体130及び施工壁120に囲まれた空間内で、温度上昇等が生じることを抑制することができ、温度環境の変化を抑制することができる。その結果、排熱により表示媒体110周辺等、筐体130内が高温となることを抑制することができ、筐体130の変形や表示媒体110の動作不良等を引き起こすことを抑制することができる。その結果、動作不良や、熱源としての表示媒体110の温度上昇がもたらす低温やけどのリスクを低減することができる。
【0096】
また、排熱を図るための排熱孔133を、熱源である表示媒体110の近傍に設けることも考えられるが、表示パネル100では、正面視で表示媒体110よりも上方の位置である、筐体130の上端に設けている。ここで温かい空気は、上方に移動しやすいため、熱源である表示媒体110の周辺における空気の流れを考慮して、表示媒体110よりも上となる位置に排熱孔133を設けることによって、排熱を効率よく行うことができ、熱源である表示媒体110の近傍温度が上昇することを抑制することができる。
【0097】
また、補強プレート130cは、
図6に示すように、筐体130の上端の、一対の側壁130bそれぞれと前面壁130aとに接する長方形から二等辺三角形を切り欠いた形状を有し、排熱孔133の一部を形成すると共に、筐体130の前面壁130a及び側壁130bそれぞれと接している。
【0098】
ここで、筐体130は、平面視で片仮名の「コ」の字状を有しており、このような「コ」の字状の筐体130は、前面壁130aに対して力が加わると前面壁130aが変形し凹む可能性がある。特に、
図2に示す表示パネル100の場合、壁の一部となるように設けられるため、その壁が通路に面していれば、筐体130の前面壁130aに人や物等が衝突する可能性がある。
【0099】
本実施形態に係る表示パネル100では、上述のように補強プレート130cを、前面壁130a及び左右の側壁130bそれぞれに接する形状としている。そのため、補強プレート130cは、前面壁130aを含む筐体130の変形を抑制するように作用することになり、筐体130の補強を行うことができる。
【0100】
特に、補強プレート130cの、左右の側壁130bそれぞれと接する部分が、前面壁130aに人等が衝突したときの力に対して耐える部分となり、前面壁130aの変形を防止するか又は小さくすることができる。
【0101】
このとき、筐体130の補強を行うためには、補強プレート130cを作成するために切り取られる二等辺三角形の面積を小さくし、補強プレート130cの面積を大きくすれば、筐体130の変形をより一層抑制することができるが、補強プレート130cの面積を大きくすると、逆に排熱孔133の開口部が小さくなり、十分な排熱を行うことができない可能性がある。
【0102】
しかしながら、上記実施形態においては、筐体130と施工壁120とからなる開口部の開口面積に対し、排熱孔133の開口面積がその30%以上100%未満となるようにしているため、補強プレート130cを設けた場合であっても、十分に排熱を行うことができる。すなわち、排熱の観点からすれば、補強プレート130cを設けずに、筐体130と施工壁120とからなる開口部をそのまま排熱孔として利用することが好ましいが、排熱孔133の開口部の面積として、排熱効果を得ることの可能な面積を確保するようにしているため、筐体130の強度を確保することができると共に十分な排熱効果を得ることができ、品質保証及び面積の面で有利に対応することができる。
【0103】
さらに、このとき、補強プレート130cには、抜き孔130ccを設けている。この抜き孔130ccを利用することで、表示パネル100を設置した後でも設置場所の環境に応じて十分な排熱を行うことができる形状に調整することができるため、設置場所毎に柔軟に対応することができる。
<変形例>
(1)補強プレート130cは、
図5及び
図6に示すように、長方形の板材から二等辺三角形を切り欠いた形状に限るものではない。例えば、
図7に示すように、前面壁130a及び左右の側壁130bそれぞれと接する長方形から、施工壁120と対向する側の一方の長辺の一部を、一方の長辺とする長方形を切り欠いた形状となるようにし、平面視で長方形状の開口部を形成するようにしてもよい。補強プレート130cの形状は、排熱孔133の平面視における面積が、筐体130と施工壁120とで囲まれた開口部の平面視における面積に対して、その30%以上100%未満となる長方形であれば、任意に設定することができ、筐体130の設置条件や、加工のし易さ等を考慮して設定することができる。この範囲となるように補強プレート130cを設定することによって、十分な排熱能力を発揮することができる。例えば、前面壁130aの幅が800mm、左右の側壁130bの幅が72.5mmであり、筐体130と施工壁120とで囲まれた開口部の面積が58.000mm
2である場合には、補強プレート130cと施工壁120とで囲まれた排熱孔133の開口部の形状が、幅725mm、奥行40mmであり、排熱孔133の開口面積が29,000mm
2である長方形状であれば、排熱孔133の面積(29、000mm
2)が、筐体130及び施工壁120で囲まれた開口部の開口面積58.000mm
2の50%であるため、十分な排熱効果を得ることができる。
(2)上記実施形態においては、補強プレート130cを設けているが、表示パネル100が通路から離れた場所に設置されている場合等、人や物等が衝突する可能性が低い場合等には、補強プレート130cを必ずしも設けなくてもよい。この場合には、筐体130と施工壁120とで囲まれてなる開口部がそのまま排熱孔となるため、補強プレート130cを設ける場合に比較してより一層排熱効果を得ることができる。
(3)補強プレート130cは、
図2、
図3に示すように、筐体130の上端に限らず、正面視で表示媒体110よりも上方となる位置であれば、任意の位置に設置することができる。
(4)上記実施形態では、構造体として表示パネル100に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば照明、映像機器、空調機器、暖房器具等、壁面に取り付けられた熱源を、その前面及び側面の3方から覆うようにした構造体であっても適用することができる。
(5)上記実施形態では、補強プレートとして、前面壁130aと一対の側壁130bとに連接する長方形から二等辺三角形又は長方形を切り取った形状とした場合について説明したが、これに限るものではなく、筐体130と施工壁120とからなる開口部の開口面積に対し、排熱孔133の開口面積がその30%以上100%未満となる条件を満足すれば、前面壁130aと一対の側壁130bとに連接する長方形から切り取る形状は、二等辺三角形や長方形に限らない。
【実施例0104】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0105】
図6に示す排熱孔133が二等辺三角形状になる場合(実施例1)と、
図7に示す排熱孔133が長方形状となる場合(実施例2)と、排熱孔133がない場合(比較例)と、について、排熱状態を測定した。排熱状態は、
図8に示す検証用筐体130′と検証用の補強プレート130c′とを用いて行った。
図8において、(a)は検証用筐体130′の正面図、(b)は検証用筐体130′の平面図である。
検証用筐体130′は、前面パネル101′と前面パネル101′を支持する支持部材102′とを備える。前面パネル101′の一部には、前面壁130a′が嵌め込まれ、前面壁130a′と前面パネル101′とはガムテープ103′で目張りされている。また、前面パネル101′の支持部材102′と逆側の面には、前面壁130a′の左右両端それぞれに沿って側壁130b′の一端が固定され、側壁130b′の他端には、左右の側壁130b′間を塞ぐように後面パネル104′が固定されている。
検証用の補強プレート130c′は、前面パネル101′の上方に前面パネル101′を貫通して設けられ、検証用の補強プレート130c′の排熱孔133′を形成するための切欠きが形成された側が後面パネル104′と面一となるように配置される。検証用の補強プレート130c′の下面は、左右の側壁130b′の上端及び後面パネル104′の上端と密着し、これにより、前面壁130a′を含む前面パネル101′と、後面パネル104′と、左右の側壁130b′とに囲まれた中空の角柱部が形成され、この角柱部の上端を検証用の補強プレート130c′で塞ぐことで排熱孔133′が形成される。検証用筐体130′は、このような構成を有することにより筐体130を模擬している。この検証用筐体130′において、正面視で、前面パネル101′の左右方向中央部であり、上下方向中央部よりもやや上方となる後面パネル104′に、熱源として、図示しない検証用熱源(モニター)を取り付けた。なお、検証用筐体130′において、前面壁130a′、側壁130b′及び補強プレート130c′は、それぞれ筐体130の、前面壁130a、側壁130b、及び補強プレート130cを模擬し、後面パネル104′は、施工壁120を模擬している。
【0106】
実施例1における検証用の補強プレート130c′は、上述のように、左右の側壁130b間の長さに相当する長さ665mmを長辺とし、側壁130b′の幅方向の長さに相当する130mmを短辺とする長方形から、長方形の一方の長辺上の位置であり長手方向左右両端それぞれから2mm内側に入った2箇所と、長手方向中央部となる位置であり、長方形の他方の長辺上の位置から2mm内側に入った箇所とを頂点とする、底辺が661mm、深さ(すなわち高さ)128mmの二等辺三角形を切り欠いた形状を模擬した板状部材からなり、底辺が661mm、深さ128mmの二等辺三角形のスリットを有する。補強プレート130c′は、二等辺三角形のスリットの底辺となる側とは逆側の端部が前面壁130a′側となるように前面パネル101′に貫通して取り付けられる。
【0107】
実施例2における補強プレート130c′は、左右の側壁130b′間の長さに相当する長さの長辺とし、側壁130b′の幅方向の長さに相当する長さの短辺とを有する長方形から、長手方向の長さが725mm、短手方向の長さが40mmである長方形を切り欠いた形状を模擬した板状部材からなり、長辺が725mm、短辺が40mmの長方形のスリットを有する。実施例2における補強プレート130c′は、長方形のスリットが形成された側とは逆側が前面壁130a′側となるように、前面パネル101′に貫通して取り付けられる。
【0108】
比較例は、補強プレート130c′の代わりにスリットの無い板状部材を用いた。
【0109】
なお、前面パネル101′と側壁130b′と後面パネル104′とで囲まれてなる開口部の面積に対して、補強プレート130c′のスリットの開口面積が、30%以上100%未満となるようにした。
測定に際し、試験室の温度を20~25℃、湿度を70%前後に保った。
また、筐体130内の空気が底面から排熱孔へと循環する状況を再現するため、検証用筐体130′において、前面パネル101′及び後面パネル104′のそれぞれと、側壁130b′との間に発生し得る隙間をガムテープ(図示せず)で目張りして密閉した。
温度測定は検証用熱源としてのモニターを起動した時間を0時間とし、1時間ごとに行った。測定の際は、前面壁130a′の支持部材102′側の面から10cm離れた位置に赤外線熱画像装置を配置し、前面壁130a′の温度分布画像を取得した。また、検証用熱源としてのモニターそのものの温度を別途測定し、測定した温度をモニターの最高温度として経過時間ごとにプロットして経時変化を追跡した。
【0110】
実施例1において、検証用の補強プレート130c′の二等辺三角形のスリットの開口面積は、42.304mm2であり、前面パネル101′、後面パネル104′及び側壁130b′とからなる開口部の面積は86.450mm2である。この場合の開口面積の比は、42.304mm2/86.450mm2=48.9%である。
また、実施例2において、長方形のスリットの開口面積は、29.000mm2であり、前面パネル101′、後面パネル104′及び側壁130b′とからなる開口部の面積は86.450mm2である。この場合の開口面積の比は、29.000mm2/86.450mm2=33.5%である
【0111】
図9(a)は、実施例1における測定時間の経過に伴うモニター最高温度の変化を表したグラフであり、
図9(b)は、赤外線熱画像装置により得た、検証用筐体130′を、支持部材102′側から見た場合の温度分布画像を示したものである。実施例1の温度分布画像は、24.4℃から37.5℃の範囲で温度分布が生じており、取得した温度分布画像の中心部分の温度は33.3℃程度であった。
【0112】
図10(a)は、実施例2における測定時間の経過に伴うモニター最高温度の変化を表したグラフであり、
図10(b)は、赤外線熱画像装置により得た、検証用筐体130′を、支持部材102′側から見た場合の温度分布画像を示したものである。実施例2の温度分布画像は、23.3℃から37.5℃の範囲で温度分布が生じており、取得した温度分布画像の中心部分の温度は36.6℃程度であった。
【0113】
図11(a)は、比較例における測定時間の経過に伴うモニター最高温度の変化を表したグラフであり、
図11(b)は、赤外線熱画像装置により得た、検証用筐体130′を、支持部材102′側から見た場合の温度分布画像を示したものである。比較例の温度分布画像は、22.9℃から38.1℃の範囲で温度分布が生じており、取得した温度分布画像の中心位置、すなわち検証用熱源の設置位置付近における温度は37.3℃程度であった。
なお、取得した温度分布画像の中心部分とは、温度が高いと予測される部分であって例えば検証用熱源に相当する部分である。
【0114】
比較例である密閉状態の場合、モニター最高温度は、
図11に示すように、5時間の試験中、42℃前後の高温域を常に示し続けた。取得した温度分布画像の中心部分の温度が37.3℃程度を示していることからあまり熱が移動していないことを確認した。
【0115】
比較例における測定を行った後、実施例1である排熱孔133′が二等辺三角形となる補強プレート130c′、また、実施例2である排熱孔133′が長方形となる補強プレート130c′のそれぞれを用いて、検証を行った。その結果、
図9及び
図10に示すように、5時間の試験中、モニター最高温度は42℃前後の高温域を常に示し続けた。また、取得した温度分布画像の中心部分の温度は、実施例1が33.3℃、実施例2が36.6℃程度を示していることから、熱が移動したことを確認した。この結果から、温度到達点が低く抑えられる、もしくは上昇が緩やかになると考えられる。
【0116】
以上の検証結果から、排熱孔133′すなわち排熱孔133の開口面積の割合は、30%以上必要であることが確認された。
また、長期間の使用では、実施例1、2と比較例との温度差は微妙であるが、微妙な差であっても、低温やけどや表示装置の不具合の懸念がある。