(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113391
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/22 20060101AFI20230808BHJP
B60L 7/22 20060101ALI20230808BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02P3/22 Z
B60L7/22 Z
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015732
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 隆志
(72)【発明者】
【氏名】武田 亮
【テーマコード(参考)】
5H125
5H530
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB02
5H125BB07
5H125CB03
5H530AA02
5H530BB24
5H530CD32
5H530CD34
5H530CE15
5H530DD03
5H530DD13
5H530EE01
5H530EE07
(57)【要約】
【課題】ハードウェア設計の制約を低減する。
【解決手段】実施形態の電力変換装置は、互いに並列に接続された複数の半導体素子と、複数の半導体素子にそれぞれ対応し、駆動電圧を対応する半導体素子にそれぞれ供給する複数のゲートドライバと、搬送波に基づいて、駆動電圧に対応するゲート指令を複数のゲートドライバのそれぞれに供給する制御部と、を含み、複数の半導体素子は、動作期間Tzにおいて、互いに異なるタイミングで導通状態に設定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された複数の半導体素子と、
複数の半導体素子にそれぞれ対応し、駆動電圧を対応する半導体素子にそれぞれ供給する複数のゲートドライバと、
搬送波に基づいて、前記駆動電圧に対応するゲート指令を、前記複数のゲートドライバのそれぞれに供給する制御部と、
を具備し、
前記複数の半導体素子は、前記複数の半導体素子の動作期間において、互いに異なるタイミングで導通状態に設定される、
電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の半導体素子の個数が、N(ここで、Nは2以上の自然数)で示され、前記動作期間が、Tで示される場合、
前記動作期間は、N個の部分に分割され、
前記動作期間の分割された前記N個の部分のそれぞれの長さは、T/Nで示される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数の半導体素子に直列に接続されたブレーキ抵抗部を、さらに具備する、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数の半導体素子は、第1の半導体素子、第2の半導体素子、及び第3の半導体素子を含み、
前記搬送波は、前記動作期間において、第1の周期、第2の周期、及び第3の周期を含み、
前記第1の周期において、前記第1の半導体素子は、導通状態に設定され、前記第2及び第3の半導体素子は、非導通状態に設定され、
前記第2の周期において、前記第2の半導体素子は、導通状態に設定され、前記第1及び第3の半導体素子は、非導通状態に設定され、
前記第3の周期において、前記第3の半導体素子は、導通状態に設定され、前記第1及び第2の半導体素子は、非導通状態に設定される、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
互いに並列に接続された複数の電力変換ユニット
を具備し、
前記複数の電力変換ユニットのそれぞれは、
半導体素子と、
前記半導体素子に対して駆動電圧を供給するゲートドライバと、
搬送波に基づいて、前記駆動電圧に対応するゲート指令を、前記ゲートドライバに供給する制御部と、
を含み、
前記半導体素子のそれぞれは、前記半導体素子の動作期間において、互いに異なるタイミングで導通状態に設定される、
電力変換装置。
【請求項6】
前記複数の電力変換ユニットの個数が、N(ここで、Nは2以上の自然数)で示され、前記動作期間が、Tで示される場合、
前記動作期間は、N個の部分に分割され、
前記動作期間の分割された複数の部分のそれぞれの長さは、T/Nで示される、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の電力変換ユニットのうち1つの電力変換ユニットの前記制御部が、同期信号を生成し、
前記同期信号は、前記複数の電力変換ユニットの残りの電力変換ユニットの前記制御部のそれぞれに供給され、
前記残りの電力変換ユニットの前記制御部のそれぞれは、前記同期信号に基づいて、前記残りの電力変換ユニットの前記制御部のそれぞれの搬送波の位相を、前記1つの電力変換ユニットの前記制御部の搬送波の位相と揃える、
請求項5又は6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記同期信号は、立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを有するパルス波であり、
前記複数の電力変換ユニットのそれぞれの前記搬送波の前記位相は、前記立ち上りエッジ及び前記立ち下りエッジのうちいずれか一方に、同期される、
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記複数の電力変換ユニットに接続されたブレーキ抵抗部を、さらに具備する、
請求項5乃至8のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記複数の電力変換ユニットは、第1の電力変換ユニット、第2の電力変換ユニット及び第3の電力変換ユニットを含み、
前記動作期間の第1の部分において、前記第1の電力変換ユニットの前記半導体素子は導通状態に設定され、前記第2の電力変換ユニットの前記半導体素子及び前記第3の電力変換ユニットの前記半導体素子は非導通状態に設定され、
前記動作期間の第2の部分において、前記第2の電力変換ユニットの前記半導体素子は導通状態に設定され、前記第1の電力変換ユニットの前記半導体素子及び前記第3の電力変換ユニットの前記半導体素子は非導通状態に設定され、
前記動作期間の第3の部分において、前記第3の電力変換ユニットの前記半導体素子は導通状態に設定され、前記第1の電力変換ユニットの前記半導体素子及び前記第2の電力変換ユニットの前記半導体素子は非導通状態に設定される、
請求項5乃至9のうちいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、様々な用途の実現のために、様々な装置及びシステムに供されている。電力変換装置の変換容量は、市場の要求に応じて増加傾向にある。変換容量を増加させるには、電力変換の要となる半導体素子の電流容量を増大させることが望まれている。単に電流定格の高い半導体素子に、電力変換装置内の半導体素子を置換するだけで対応できる場合もある。ただし、半導体素子の置換だけでは不十分な場合、複数の半導体素子の並列接続又は複数の電力変換ユニットの並列接続などによって、電力変換装置の総合的な電流定格を増加させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137263号公報
【特許文献2】国際公開第2020/161945号
【特許文献3】特開2017-208916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置のハードウェア設計の制約を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電力変換装置は、互いに並列に接続された複数の半導体素子と、複数の半導体素子にそれぞれ対応し、駆動電圧を対応する半導体素子にそれぞれ供給する複数のゲートドライバと、搬送波に基づいて、前記駆動電圧に対応するゲート指令を、前記複数のゲートドライバのそれぞれに供給する制御部と、を含み、前記複数の半導体素子は、前記複数の半導体素子の動作期間において、互いに異なるタイミングで導通状態に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の電力変換装置の構成例を示す回路図。
【
図2】第1の実施形態の電力変換装置の動作例を示す波形図。
【
図3】第2の実施形態の電力変換装置の構成例を示す回路図。
【
図4】第2の実施形態の電力変換装置の動作例を示す波形図。
【
図5】実施形態の電力変換装置の変形例を示す回路図。
【
図6】実施形態の電力変換装置の変形例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至
図6を参照して、実施形態の電力変換装置について、説明する。
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。
また、以下の各実施形態において、末尾に区別化のための数字/英字を伴った参照符号を付された構成要素(例えば、回路、配線、各種の電圧及び信号など)が、相互に区別されなくとも良い場合、末尾の数字/英字が省略された記載(参照符号)が用いられる。
【0009】
[実施形態]
図1乃至
図6を参照して、実施形態の電力変換装置について、説明する。
【0010】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態の電力変換装置について、
図1及び
図2を参照して、構成及び動作を説明する。
【0011】
(a)構成例
図1は、本実施形態の電力変換装置100の構成例を示す回路図である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態の電力変換装置100は、複数の半導体素子1(1a,1b,1c)、複数のゲートドライバ2(2a,2b,2c)、ブレーキ抵抗部3、制御部4、電圧検出部5、電流検出部6、及び直流電源9を含む。
【0013】
複数の半導体素子1及びブレーキ抵抗部3は、直流電源9の高電位側の配線(直流リンクともよばれる)と直流電源の低電位側の配線との間に接続されている。高電位側の配線は、接続ノード(接続点、接続端子或いは単にノードともよばれる)ND1を介して、直流電源9の正極端子90と電気的に接続されている。低電位側の配線は、接続ノードND3を介して、直流電源9の負極端子(アース)91と電気的に接続されている。
【0014】
3つの半導体素子1(1a,1b,1c)が、電力変換装置100内に設けられている。各半導体素子1は、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)のようなスイッチング素子10及びダイオードのような整流素子11などを含む。半導体素子1は、MOS(Metal-oxide-semiconductor)トランジスタのような電界効果トランジスタ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0015】
各半導体素子1の2つの端子のうち一方の端子は、接続ノードND2に接続されている。各半導体素子1の2つの端子のうち他方の端子は、接続ノードND3に接続されている。接続ノードND3は、アース91に接続されている。
【0016】
3つの半導体素子1a,1b,1cは、接続ノードND2と接続ノードND3との間において、互いに並列に接続されている。これによって、3並列の通電経路が、電力変換装置100内に形成される。並列接続された複数の半導体素子1は、2つの接続ノードND2,ND3間において、端子間電位を共有している。
【0017】
各半導体素子1は、導通状態時に、半導体素子1の特性に応じた或る大きさの電流を流す。
【0018】
複数のゲートドライバ2(2a,2b,2c)は、複数の半導体素子1に1対1で接続されている。すなわち、1つのゲートドライバ2は、複数の半導体素子1のうち対応する1つに接続されている。本実施形態において、3つのゲートドライバ2が、電力変換装置100内に設けられている。各ゲートドライバ2は、後述のゲート指令GCに応じて、対応する半導体素子1にゲート駆動電圧(ゲート信号)を供給する。
【0019】
ブレーキ抵抗部3は、接続ノードND1と接続ノードND3との間において、複数の半導体素子1に接続ノードND2を介して直列に接続されている。ブレーキ抵抗部3の2つの端子のうち一方の端子は、接続ノードND1を介して直流電源9の正極端子90に接続されている。ブレーキ抵抗部3の2つの端子のうち他方の端子は、接続ノードND2を介して複数の半導体素子1の一方の端子にそれぞれ接続されている。ブレーキ抵抗部3は、複数の抵抗素子(図示せず)を含む。ブレーキ抵抗部3は、抵抗素子に加えて、容量素子(図示せず)及び誘導素子(図示せず)などをさらに含んでいてもよい。ブレーキ抵抗部3及び複数の半導体素子1からなる構成部は、電力変換回路ともよばれる。
【0020】
ブレーキ抵抗部3は、電力変換装置100の負荷として機能する。ブレーキ抵抗部3は、電流I1を出力する。電流I1の大きさ(通流量)は、半導体素子1の導通状態に応じて、制御され得る。ブレーキ抵抗部3を流れる電流I1によって、ブレーキ抵抗部3は、ジュール熱を発する。例えば、ブレーキ抵抗部3の発熱によって、電力変換装置100は、供給された電力を消費できる。このように、電力変換装置100は、熱電変換できる。尚、電流I1の大きさは、電力変換装置100の定格値(例えば、電流定格)などに応じて制限され得る。
【0021】
制御部4は、ゲートドライバ2を介して複数の半導体素子1の動作を制御する。
例えば、制御部4は、複数の半導体素子1の通電期間(導通期間ともよばれる)を制御するために、PWM(Pulse Width Modulation)搬送波を生成する。PWM搬送波は、例えば、周期的に出力される複数の三角波(三角パルス)を含む信号である。半導体素子1の通電期間は、半導体素子1のオンしている期間に相当する。
【0022】
制御部4は、各半導体素子1の導通状態(オン状態)及び非導通状態(オフ状態)を制御するために、ゲート指令GC(GCa,GCb,GCc)を生成する。制御部4は、生成されたゲート指令GCを、各ゲートドライバ2に出力する。例えば、対応する半導体素子1を導通状態(オン状態、通電状態)に設定する場合、制御部4は、ゲート指令GCの信号レベルを第1のレベル(例えば、“H”レベル)に設定する。対応する半導体素子1を非導通状態(オフ状態、非通電状態)に設定する場合、制御部4は、ゲート指令GCの信号レベルを第1のレベルと異なる第2のレベル(例えば、“L”レベル)に設定する。
【0023】
制御部4は、供給された指令電力CPに応じて、PWM搬送波と半導体素子1の通流率との比較結果に基づいて、生成され得るゲート指令GCのパルス形状(例えば、パルス幅)を制御する。通流率は、電力変換装置100内の電圧及び電流に対するPI制御等の各種の制御によって、決定される。通流率は、PWM搬送波の或る周期に対する半導体素子1の通電期間の割合を示す値である。
【0024】
例えば、制御部4は、制御プロセッサ(図示せず)、メモリ(図示せず)及びカウンタ(図示せず)等を有している。制御部4は、ソフトウェア、又は、ソフトウェアとハードウェアとの組合せによって、種々の機能を実現するように構成された演算回路を含み得る。
制御部4は、ソフトウェアによって設定されたシーケンスに基づいて、半導体素子1の動作タイミングを制御できる。
【0025】
電圧検出部5は、接続ノードND1と接続ノード(アース)ND3との間の電位差に相当する電圧を検出する。電圧検出部5は、検出された電圧の電圧値を測定及び取得できる。電圧検出部5は、検出された電圧の電圧値を示す信号S1を、制御部4に送信する。電圧検出部5は、接続ノードND1と接続ノードND3との間において、複数の半導体素子1及びブレーキ抵抗部3に対して並列に接続されている。
【0026】
電流検出部6は、ブレーキ抵抗部3から出力される電流I1を検出する。例えば、電流I1は、半導体素子1を経由して電流検出部6に供給される。電流検出部6は、検出された電流I1の電流値を測定及び取得できる。電流検出部6は、検出された電流I1の電流値を示す信号S2を、制御部4に送信する。
【0027】
例えば、電力変換装置100は、プロセッサのような外部装置200に電気的に接続される。本実施形態の電力変換装置100は、外部装置200と通信できる。電力変換装置100は、指令電力CPに関する信号を、外部装置200から受信する。指令電力CPは、ブレーキ抵抗部3により変換されるべき電力(例えば、消費電力)を示す信号である。
【0028】
例えば、電力変換装置100は、電動機300に接続されている。電動機300は、車輪(図示せず)に接続されている。電動機300は、三相インバータ回路のような電力変換装置(図示せず)によって直流-交流変換された電源電圧(電力)を受ける。電動機300は、供給された電源電圧に応じてトルクを発生させる。電動機300は、トルクに応じたエネルギーを、車輪に印加する。電動機300は、電動機300に対する電源電圧の供給が遮断された時(例えば、車輪の減速時又は停止時)において、電動機300の回転に応じて、回生電力を生成する。
【0029】
電力変換装置100は、直流電源9の直流電圧を調整して、ブレーキ抵抗部3に供給する。
電力変換装置100は、電動機300からの回生電力を受けることができる。電力変換装置100は、ブレーキ抵抗部3による熱電変換によって、電動機300によって生成された回生電力を消費できる。
【0030】
すなわち、
図1の電力変換装置100は、ブレーキ抵抗部3による消費電力を制御する発電ブレーキ回路(ブレーキチョッパ回路)に相当する。発電ブレーキ回路としての電力変換装置100において、例えば、半導体素子1は、ブレーキチョッパ素子ともよばれる。
【0031】
尚、電力変換装置100の内部構成は、上述の構成要素に限定されず、他の構成要素が装置100内にさらに設けられてもよいし、上述の構成要素の一部が装置100から除外されてもよい。例えば、電圧検出部5、電流検出部6及び直流電源9のうち1つ以上は、電力変換装置100の外部の構成要素であってもよい。また、ゲート指令GC、ゲート信号及び指令電力CPなどの各種の信号は、配線を介して供給される電気信号でもよいし、フォトカプラを介して供給される光信号でもよい。
【0032】
本実施形態の電力変換装置100において、2つの接続ノードND2,ND3間に並列接続された複数の半導体素子1は、或る動作期間において、互いに異なるタイミングで導通状態となる。換言すると、本実施形態の電力変換装置100において、複数の半導体素子1の通電期間は、互いに重ならない。
【0033】
(b)動作例
図2は、第1の実施形態の電力変換装置100の動作例を示す波形図である。
【0034】
図2の波形図は、電力変換装置100の複数の半導体素子1のスイッチングのタイミングチャートを示している。
【0035】
図2の半導体素子1のスイッチングのタイミングチャートにおいて、
図1における制御部4によって生成されたPWM搬送波、及び、制御部4から3並列の半導体素子1a,1b,1cに対して出力されるゲート指令GC(GCa,GCb,GCc)の時間推移が、示されている。
【0036】
図2を用いて、本実施形態の電力変換装置の動作について、説明する。
【0037】
図1の電力変換装置100において、接続ノードND1,ND3間の電圧が電圧検出部5によって検出され、ブレーキ抵抗部3から出力された電流(通電電流)I1が電流検出部6によって検出される。検出された電圧の電圧値に関する信号S1及び電流I1の電流値に関する信号S2が、制御部4に供給される。
【0038】
制御部4は、電圧の電圧値(信号S1によって示される値)と通電電流I1の電流値(信号S2によって示される値)とを乗算し、電力変換装置(発電ブレーキ回路)100において生じる消費電力を演算する。
【0039】
制御部4は、外部装置200から指令電力CPを受信する。例えば、受信した指令電力CPは、電動機300に要求される駆動状態(例えば、減速又は停止)に応じた値を示している。
【0040】
図2に示されるように、制御部4は、半導体素子1のゲート指令GCを生成及び制御するために、PWM搬送波CWを生成する。例えば、時刻taから時刻tbまでの期間Tzが、並列接続された複数の半導体素子1の導通/非導通が順次制御される1サイクル(1シーケンス)の動作期間Tzとなる。電力変換装置100は、複数の動作期間Tzを繰り返し実行する。
【0041】
本実施形態において、複数の半導体素子1の個数に応じて、動作期間Tzは複数の部分(区間)に分割される。接続ノードND2と接続ノードND3との間に並列接続された半導体素子1の個数が、N個である場合、期間Tzは、N個の部分に分割される。Nは、2以上の自然数である。例えば、動作期間Tzの分割されたN個の部分の長さ(Tz/N)は、互いに等しい。各動作期間Tzは、並列接続された電流経路の個数(例えば、並列接続された半導体素子1の個数)に応じて、PWM搬送波CWの複数の三角波に応じた複数の周期CYを含む。
【0042】
本実施形態のように、並列接続された半導体素子1の個数が3つである場合、1つの動作期間Tzは、3周期分の三角波を含む。すなわち、動作期間Tzは、3つの半導体素子1の制御の対象となる期間に対応する3つの部分を含む。尚、並列接続された半導体素子1の個数は、2個でもよいし、4個以上でもよい。
【0043】
演算された消費電力が制御部4に与えられた指令電力CPと一致するよう、制御部4は、各種の制御(例えば、PI制御)によって、対応する1つ以上の半導体素子1の通流率DF(DF1,DF2)を決定する。通流率DFに応じて、PWM搬送波CWの或る周期CYに対する半導体素子1の通電期間(導通状態の期間)の割合が、設定される。各半導体素子1に割り当てられた周期CYに相当する時間は、制御対象期間ともよばれる。
【0044】
制御部4は、或る動作期間Tzにおいて、PWM搬送波CWと通流率DF1とを比較する。これによって、制御部4は、所望のパルス幅(“H”レベルの期間)を有するゲート指令GCを生成できる。制御部4は、生成されたゲート指令GCを、対応するゲートドライバ2に供給する。ゲートドライバ2は、供給されたゲート指令GCの“H”レベルの信号に応じて、対応する半導体素子1に、ゲート駆動電圧を供給する。通流率DF1に対する各ゲート指令GCa,GCb,GCcにおいて、“H”レベルの信号のそれぞれは、或るパルス幅Wa1,Wb1,Wc1を有する。
これによって、対応する半導体素子1の導通が、許可される。
【0045】
図2に示されるように、制御部4は、生成された三角波のPWM搬送波CWの周期CY毎に通流率の比較対象となる1つの半導体素子1を切り替える。
例えば、PWM搬送波CWの3つの周期CYa,CYb,CYcを含む動作期間Tzにおいて、1番目の周期CYaは半導体素子1aを導通状態の制御の対象とし、2番目の周期CYbは半導体素子1bを導通状態の制御の対象とし、3番目の周期CYcは半導体素子1cを導通状態の制御の対象とする。
【0046】
周期CYaにおいて、電流I1は、導通状態の半導体素子1aのみに依存し、非導通状態の半導体素子1b,1cに実質的に影響されない。周期CYaの後の周期CYbにおいて、電流I1は、導通状態の半導体素子1bのみに依存し、非導通状態の半導体素子1a,1cに実質的に影響されない。周期CYbの後の周期CYcにおいて、電流I1は、導通状態の半導体素子1cのみに依存し、非導通状態の半導体素子1a,1bに実質的に影響されない。
【0047】
このように、本実施形態において、制御部4は、PWM搬送波CWの3周期分を1つの動作期間Tzとして、3つの半導体素子1の導通状態及び非導通状態の切り替えを繰り返す。
【0048】
これによって、本実施形態の電力変換装置100において、複数の半導体素子1のうち1つの半導体素子1が導通している周期CYに、残りの半導体素子1に関して導通する素子は存在しない。すなわち、本実施形態の電力変換装置100において、或る1つの周期CYにおいて1つの半導体素子1が単独で導通することになる。
【0049】
例えば、各半導体素子1の通流率が一致している場合、並列接続された複数の半導体素子1の通電期間(ゲート指令GCのパルス幅)Wa1,Wb1,Wc1は、実質的に同じ長さに共通化できる。これによって、本実施形態において、並列接続された全ての半導体素子1は、発生損失が共通化され、要求される負荷を均等に分担できる。
【0050】
尚、指令電力CPの大きさに応じて、半導体素子1の通流率は、変化する。通流率の変化に応じて、ゲート指令GCのパルス幅は、制御される。例えば、指令電力CPに応じて通流率がより低い値になる場合、ゲート指令GCのパルス幅は狭くなる。
この一方で、
図2の通流率DF2のように、指令電力CPに応じて通流率がより高い値になる場合、ゲート指令GCa,GCb,GCcのパルス幅Wa2,Wb2,Wc2は広くなる。この場合において、或るゲート指令(例えば、ゲート指令GCa)の立ち下りエッジが、時間的に隣り合う他のゲート指令(例えば、ゲート指令GCb)の立ち上りエッジと実質的に同じタイミングで揃う場合がある。
【0051】
半導体素子1は、ゲート指令GCの立ち上りエッジ及び立ち下りエッジに対して、或る大きさの遅延量を含んだ応答速度で、動作する。すなわち、半導体素子1は、ゲート指令GCの立ち上りエッジを受けてから或る遅延時間を経過して、実効的に動作する。また、半導体素子1は、ゲート指令GCの立ち下りエッジを受けてから或る遅延時間を経過して、その動作を停止する。
【0052】
それゆえ、設定された通流率DF2に応じて、或るゲート指令GCの立ち上りエッジが他のゲート指令GCの立ち下りエッジと揃ったタイミングであったとしても、2つの半導体素子1の実効的な通電期間は、実質的に重ならない。このように、各動作期間Tzにおいて、半導体素子1のそれぞれは、互いに異なる周期CYにおいて互いに独立に動作する。
【0053】
上述のように、本実施形態において、各半導体素子1が負荷を負う区間は、動作期間Tzの3分の1の時間となる。それゆえ、電流I1が各周期CYのそれぞれにおいて1つの半導体素子1内を流れたとしても、半導体素子1に印加される負荷は、電力変換装置100の定格値に基づく半導体素子1の耐圧の範囲内に許容され得る。
【0054】
(c)まとめ
電力変換装置の変換容量の増加にあたって、複数の半導体素子の並列接続によって電流定格を増やす場合、各半導体素子の動特性、ゲートドライバの特性、及び、回路間の回路インピーダンスを一致させることが望まれている。これらの一致が不成立である場合、同時に動作する複数の半導体素子間で通電電流が均等に分担されず、特定の半導体素子に発熱が集中するなどの不具合が生じる可能性がある。この結果として、電力変換装置の故障リスクが、高まる。
【0055】
電力変換装置の製品設計において、このような半導体素子毎の負担の不均一が考慮され、ディレーティングの観点から半導体素子の電流容量及び(又は)並列数に余裕を持たせる必要が生じる。又は、回路インピーダンスの整合のために、半導体素子の構造配置及び(又は)接続導体の設計最適化が求められる。これらの要求は、装置の小型化、省スペース設計とは相反する場合がある。このため、全体として、電力変換装置の製品の競争力が低下する状況が、生じる可能性がある。
【0056】
本実施形態によれば、複数の半導体素子1が並列接続される回路構成において、各半導体素子1の動特性、ゲートドライバ2の特性、及び回路インピーダンスの整合などに関するハードウェア設計の制約が、解消される。
【0057】
本実施形態の電力変換装置100は、互いに独立に導通状態に設定される複数の半導体素子1によって電流I1を分担する並列接続回路を含んでいる。これによって、本実施形態の電力変換装置100は、各々の半導体素子1を近接して配置するなどのハードウェア設計が困難な状況においても、半導体素子1毎の負担を均一化できる。
【0058】
上述のように、本実施形態の電力変換装置100は、1つの通電経路内に並列接続される複数の半導体素子1a,1b,1cに対して、制御部4の制御によって制御の対象となる期間(例えば、通電期間)を等分する。そして、本実施形態の電力変換装置100は、各半導体素子1a,1b,1cに単独に導通指令を与える。
【0059】
本実施形態において、或る期間Tzの各周期CYにおいて、1個の半導体素子1しか導通しないため、通電電流I1は並列接続された複数の半導体素子1間の特性の不均一を考慮せずに、一意に決まる。したがって、本実施形態の電力変換装置100において、並列接続された全ての半導体素子1は、通電期間と通電電流I1とが一致して発生損失が共通化される。それゆえ、本実施形態の電力変換装置100は、複数の半導体素子1に動作期間Tz中に発生する負荷を均等に分担できる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、上述のハードウェア設計上の制約を解消し、ソフトウェアによる並列接続された半導体素子1の簡潔な制御が、可能となる。
【0061】
この結果として、本実施形態の電力変換装置は、電力変換装置のハードウェア設計の制約を低減できる。
【0062】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態の電力変換装置について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0063】
(a)構成例
図3は、本実施形態の電力変換装置100の構成例を示す回路図である。
【0064】
図3に示される電力変換装置100は、複数の電力変換ユニット7(7a,7b,7c)を含む。
【0065】
例えば、3つの電力変換ユニット7a,7b,7cが、電力変換装置100内に設けられている。
【0066】
電力変換ユニット7aは、半導体素子1a、ゲートドライバ2a、制御部4a、電圧検出部5a、及び電流検出部6aを含む。電力変換ユニット7bは、半導体素子1b、ゲートドライバ2b、制御部4b、電圧検出部5b、及び電流検出部6bを含む。電力変換ユニット7cは、半導体素子1c、ゲートドライバ2c、制御部4c、電圧検出部5c、及び電流検出部6cを含む。
【0067】
例えば、各電力変換ユニット7内において、電流検出部6は、接続ノードND2と半導体素子1との間に設けられている。
図3の例において、電圧検出部5は、電流検出部6を介さずに、接続ノードND3に接続されている。
【0068】
3つの電力変換ユニット7a,7b,7cは、1つのブレーキ抵抗部3に共通に接続されている。
【0069】
本実施形態の電力変換装置100は、上述の実施形態と同様に、ブレーキ抵抗部3における消費電力を制御する発電ブレーキ回路に相当する。
【0070】
本実施形態の電力変換装置100において、複数の半導体素子1のそれぞれが電力変換ユニット7毎に独立に設けられ、複数の半導体素子1のそれぞれに対して個別の制御部4が設けられている。尚、各電力変換ユニット7は、並列に接続された複数の半導体素子1を含んでもよい。
【0071】
各電力変換ユニット7内において、各制御部4(4a,4b,4c)は、電圧検出部5(5a,5b,5c)の検出結果、電流検出部6(6a,6b,6c)の検出結果、及び指令電力CPなどの各種の情報に基づいて、対応する半導体素子1(1a,1b,1c)の動作を、制御する。
複数の制御部4のそれぞれは、PWM搬送波CW(CWa,CWb,CWc)を生成する。各PWM搬送波CWa,CWb,CWcは、或る周期の複数の三角波を含む。
【0072】
複数の制御部4のうちいずれか1つは、同期信号SS1を生成し、生成した同期信号SS1を、他の制御部4に送信する。例えば、本実施形態において、制御部4aが、同期信号SS1を生成する。制御部4aは、生成した同期信号SS1を制御部4b,4cに送信する。制御部4b,4cは、同期信号SS1を受信する。
【0073】
同期信号SS1は、複数の電力変換ユニット7間の動作タイミングを制御するための信号である。例えば、同期信号SS1は、四角形状のパルス信号であって、立ち上りエッジ及び立ち下りエッジを有する。各電力変換ユニット7の搬送波は、同期信号SS1の立ち上りエッジ又は立ち下りエッジのタイミングに同期して、各搬送波の位相が揃えられる。
【0074】
(b)動作
図4は、本実施形態の電力変換装置100の動作例を示す波形図である。
図4の波形図は、電力変換装置100の複数の電力変換ユニット7における、複数の半導体素子1のスイッチングのタイミングチャートを示している。
【0075】
図4の半導体素子1のスイッチングのタイミングチャートにおいて、
図3における制御部4a,4b,4cのそれぞれによって生成されたPWM搬送波CWa,CWb,CWc、各制御部4a,4b,4cから半導体素子1a,1b,1cに対して出力されるゲート指令GCa,GCb,GCc、及び同期信号SS1の時間推移が、示されている。
【0076】
図3の電力変換装置100において、電力変換ユニット7aは、ノードND1,ND3間の電圧の電圧値を電圧検出部5aによって取得し、ブレーキ抵抗部3の通電電流I1の電流値を電流検出部6aによって取得する。
【0077】
制御部4aは、取得された電圧値(信号S1によって示される値)と電流値(信号S2によって示される値)とを乗算し、電力変換装置100の消費電力を演算する。この消費電力が外部装置200から制御部4aに与えられた指令電力CPに一致するように、制御部4aは、PI制御等を用いて、半導体素子1aに対する通流率DFaを決定する。制御部4aでは、半導体素子1aのゲート指令GCaを生成するために、PWM搬送波CWaと通流率DFaとを比較する。
【0078】
これと同様に、電力変換ユニット7bにおいて、制御部4bは、電圧検出部5bによって取得された電圧値及び電流検出部6bによって取得された電流値に基づいて、消費電力を演算する。制御部4bは、演算結果の消費電力と指令電力CPとに基づいて、半導体素子1bに対する通流率DFbを決定する。制御部4bは、半導体素子1bのゲート指令GCbを生成するために、PWM搬送波CWbと通流率DFbとを比較する。
【0079】
又、電力変換ユニット7cにおいて、制御部4cは、電圧検出部5cによって取得された電圧値及び電流検出部6cによって取得された電流値に基づいて、消費電力を演算する。制御部4cは、演算結果の消費電力と指令電力CPとに基づいて、半導体素子1cに対する通流率DFcを決定する。制御部4cは、半導体素子1cのゲート指令GCcを生成するために、PWM搬送波CWcと通流率DFcとを比較する。
【0080】
図4において、制御部4aによって生成されたPWM搬送波CWaに対して、制御部4aは、動作期間Tz内の周期CYaのみにおいて半導体素子1aの導通制御の対象の周期(制御対象期間)であるとあらかじめ設定する。制御部4aは、期間T1内の他の周期CYb,CYcにおいて、半導体素子1aを制御対象から無視して、半導体素子1aを導通させない。
【0081】
これと同様に、制御部4bは、PWM搬送波CWbの周期CYbのみを、半導体素子1bの導通制御の対象の周期として半導体素子1bの導通状態を制御する。制御部4cは、PWM搬送波CWcの周期CYcのみを半導体素子1cの導通制御の対象周期として、半導体素子1cの導通状態を制御する。
【0082】
本実施形態において、各制御部4a,4b,4cは属する電力変換ユニット7a,7b,7cがそれぞれ異なるため、各制御部4a,4b,4cは、それぞれ異なる制御プロセッサを有していることが想定される。この場合において、各制御部4a,4b,4cによって互いに独立に生成されたPWM搬送波CWa,CWb,CWcの位相は、一致するとは限らない。
【0083】
そこで、本実施形態において、制御部4aがマスターデバイスに設定され、制御部4b,4cがサブデバイスに設定される。電力変換ユニット7aの制御部4aは、例えばPWM搬送波CWの周期CYaの開始タイミングで、パルス状の同期信号SS1を生成する。制御部4aは、生成した同期信号SS1を、別の電力変換ユニット7b,7c内の制御部4b,4cに送信する。制御部4b,4cは、受信した同期信号SS1に応じて、同期信号SS1のタイミングに基づいて1番目の周期CYaが開始されるように、対応するPWM搬送波CWb,CWcの位相を補正する。例えば、複数のPWM搬送波CWa,CWb,CWcは、同期信号SS1の立ち上りエッジのタイミングで位相が揃うように、各制御部4a,4b,4cによって制御される。
【0084】
これによって、本実施形態の電力変換装置100は、同期信号SS1に同期したタイミングで、複数のPWM搬送波CWa,CWb,CWcの位相を揃えることができる。
【0085】
尚、複数のPWM搬送波CWa,CWb,CWcの位相は、同期信号SS1の立ち下りエッジのタイミングで揃えられてもよい。
【0086】
第1の実施形態と同様に、本実施形態において、各電力変換ユニット7の半導体素子1は、互いに異なるタイミング(周期CY)で、導通状態に設定される。すなわち、動作期間Tzの周期CYaにおいて、半導体素子1aのみが、制御部4aからの“H”レベルのゲート指令GCaに応じた期間において、導通状態に設定される。周期CYaの後の周期CYbにおいて、半導体素子1bのみが、制御部4bからの“H”レベルのゲート指令GCbに応じた期間において、導通状態に設定される。さらに、周期CYbの後の周期CYcにおいて、半導体素子1cのみが、制御部4cからの“H”レベルのゲート指令GCcに応じた期間において、導通状態に設定される。
【0087】
以上のように、本実施形態の電力変換装置100は、1つの通電経路(接続ノードND1とアース91との間の経路)に並列接続される複数の半導体素子1a,1b,1cに対して、対応する制御部4a,4b、4cのそれぞれが独立したプロセッサであった場合において、共通の同期信号SS1が、PWM搬送波CWの位相を揃えるために、制御部4a,4b、4cに供給される。これによって、本実施形態の電力変換装置100は、異なるPWM搬送波CWによって制御される複数の半導体素子1のスイッチングタイミングを、連動させることができる。
【0088】
この結果として、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、並列接続される全ての半導体素子1は、通電期間と通電電流I1が一致して発生損失が共通化される。それゆえ、複数の半導体素子1は、電力変換装置100内で発生する負荷を均等に分担できる。
【0089】
したがって、本実施形態の電力変換装置100は、並列接続される半導体素子1の動特性、ゲートドライバ2の特性、及び回路インピーダンスの整合などのハードウェア設計上の制約を解消し、ソフトウェアによる並列接続された半導体素子1の簡潔な制御が、可能となる。
【0090】
以上のように、本実施形態の電力変換装置100は、電力変換装置のハードウェア設計の制約を低減できる。
【0091】
(3) 変形例
図5及び
図6を参照して、実施形態の電力変換装置の変形例について、説明する。
【0092】
図5は、第2の実施形態の電力変換装置の変形例を示す回路図である。
【0093】
図5に示されるように、同期信号SS1xは、外部装置200から電力変換装置100に供給される。電力変換装置100において、複数の制御部4が、外部装置200からの同期信号SS1xを受信する。
【0094】
複数の制御部4は、
図3及び
図4の例と同様に、同期信号SS1xに基づいて、複数のPWM搬送波の位相を補正する。
【0095】
この場合においても、
図5の変形例の電力変換装置100は、第2の実施形態で説明された動作と実質的に同じ動作を実現できる。
【0096】
図6は、電力変換装置100の動作の変形例を示す波形図である。
【0097】
図6に示されるように、或る動作期間Tzにおいて、通流率DF3の値が変化する場合がある。この場合において、複数の半導体素子1毎に、比較対象となる通流率DF3の値が、異なる。この結果として、複数のゲート指令GCa,GCb,GCcのパルス幅Wa3,Wb3,Wc3は、対応する半導体素子1a,1b,1c毎に異なる。
【0098】
例えば、周期CYaにおける通流率DF3の値は、周期CYb,CYcにおける通流率DF3の値より高い。また、周期CYbにおける通流率DF3の値は、周期CYaにおける通流率DF3の値より低く、周期CYcにおける通流率DF3の値より高い。この場合において、周期CYaにおけるパルス幅Wa3は、周期CYb,CYcにおけるパルス幅Wb3,Wc3より広い。周期CYbにおけるパルス幅Wa2は、周期CYaにおけるパルス幅Wa3より狭く、周期CYcにおけるパルス幅Wc3より広い。
【0099】
図6において、動作期間Tz内における複数のゲート指令GCa,GCb,GCcのパルス幅Wa3,Wb3,Wc3が異なっていても、半導体素子1がそれぞれ異なるタイミングで導通状態となるように、複数の半導体素子1のオン及びオフのスイッチングが、制御される。このように、本変形例においても、複数の半導体素子1の通電期間は、動作期間Tzにおいて、重ならない。
【0100】
それゆえ、
図6の変形例の電力変換装置100は、上述の実施形態の電力変換装置100と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0101】
(4) その他
実施形態の電力変換装置100は、例えば、鉄道車両、自動車、船舶、航空機、及び発電装置などに適用され得る。実施形態の電力変換装置100は、交流インバータ回路のような他の電力変換装置と同じシステム内に設けられてもよい。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1a,1b,1c…半導体素子、2a,2b,2c…ゲートドライバ、3…ブレーキ抵抗部、4,4a,4b,4c…制御部、5,5a,5b,5c…電圧検出部、6,6a,6b,6c…電流検出部、7a,7b,7c…電力変換ユニット、9…直流電源、100…電力変換装置、200…外部装置。