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特開2023-114130バッグインボックスの内容器用フィルム、バッグインボックス用内容器、及びバッグインボックス
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  • 特開-バッグインボックスの内容器用フィルム、バッグインボックス用内容器、及びバッグインボックス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114130
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】バッグインボックスの内容器用フィルム、バッグインボックス用内容器、及びバッグインボックス
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230809BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230809BHJP
   B65D 77/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 103
B32B27/00 D
B32B27/00 H
B65D77/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016288
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐二
(72)【発明者】
【氏名】東 郁乃
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA05C
3E067BA12B
3E067BB25B
3E067CA04
3E067GA30
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AL01B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA25A
4F100BA25C
4F100CB00B
4F100GB16
4F100JD02B
4F100JD03B
4F100JK04A
4F100JK04C
4F100JK07A
4F100JK07C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性を有し、かつリサイクル適性及びピンホール耐性に優れるバッグインボックスの内容器用フィルムを提供すること。
【解決手段】バッグインボックスの内容器用フィルムであって、エチレン系ポリマーを含む第一の層、ガスバリア性接着剤層及びエチレン系ポリマーを含む第二の層を備え、第一の層及び第二の層の23℃における引張弾性率が、MD方向及びTD方向共に400MPa以下である、フィルム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグインボックスの内容器用フィルムであって、
エチレン系ポリマーを含む第一の層、ガスバリア性接着剤層及びエチレン系ポリマーを含む第二の層を備え、前記第一の層及び前記第二の層の23℃における引張弾性率が、MD方向及びTD方向共に400MPa以下である、フィルム。
【請求項2】
30℃/70RH%における酸素透過度が、200cc/m・day・atm以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第一の層及び前記第二の層の厚さが30~120μmである、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第一の層の厚さ:前記第二の層の厚さが、1:1~1:3である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ガスバリア性接着剤層の厚さが0.5~6.0μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第一の層及び前記第二の層が、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記第一の層及び前記第二の層が、未延伸フィルムである、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルムを製袋してなる、バッグインボックス用内容器。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルムを製袋してなる内袋と、他のフィルムを製袋してなる外袋と、を備える、バッグインボックス用内容器。
【請求項10】
スパウトを有する内容器及び前記内容器を収納する外容器を備え、前記内容器が請求項8又は9に記載のバッグインボックス用内容器である、バッグインボックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッグインボックスの内容器用フィルム、バッグインボックス用内容器、及びバッグインボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化、海洋プラスチックごみ問題等に関する環境意識の高まりから、プラスチック材料の分別回収と再資源化のさらなる効率化が求められている。異種材料を組合せることで高性能化を図ってきた従来の包装用の積層体においても、リサイクル適性を向上させる観点からモノマテリアル化が求められるようになってきた。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系のフィルムを主構成とした、リサイクル適性に優れるモノマテリアルのガスバリア積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/176948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラスチック材料の用途の一つに、バッグインボックスにおける内容器が挙げられる。バッグインボックスは、プラスチックフィルムで形成された可撓性の内容器と、内容器を収容する外容器(外装容器)とを備える。外容器は、例えば、段ボールで形成された箱体である。このバッグインボックスを輸送及び使用する際、内部のプラスチックフィルムの屈曲部分には強い応力が加わる。これによりプラスチックフィルムにピンホールが発生し、内容物の漏出が発生する虞がある。内容器におけるピンホールの問題は、特許文献1のようにプラスチックフィルムをモノマテリアル化した場合に顕著になる。
また、バッグインボックスにおける内容器には、内容物を長期間保持するためのガスバリア性も併せて求められる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性を有し、かつリサイクル適性及びピンホールが発生しにくい性質(ピンホール耐性)に優れるバッグインボックスの内容器用フィルムを提供することを目的とする。本発明はまた、ガスバリア性を有し、かつリサイクル適性及びピンホール耐性に優れるバッグインボックス用内容器、及び当該内容器を備えるバッグインボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、バッグインボックスの内容器用フィルムであって、エチレン系ポリマーを含む第一の層、ガスバリア性接着剤層及びエチレン系ポリマーを含む第二の層を備え、第一の層及び第二の層の23℃における引張弾性率が、MD方向及びTD方向共に400MPa以下である、フィルムを提供する。
【0007】
このようなフィルムを用いることで、ピンホール耐性に優れるバッグインボックス用内容器を製袋することができる。また、このようなフィルムは加工適性にも優れる。さらに、延伸ナイロンフィルム等を用いて耐屈曲・耐衝撃性をフィルムに付与している訳ではなく、実質的にモノマテリアルの素材からフィルムを形成しているため、使用後の内容器(フィルム)のリサイクル適性にも優れる。
【0008】
一態様において、30℃/70RH%における酸素透過度が、200cc/m・day・atm以下であってよい。
【0009】
一態様において、第一の層及び第二の層の厚さが30~120μmであってよい。
【0010】
一態様において、第一の層の厚さ:第二の層の厚さが、1:1~1:3であってよい。
【0011】
一態様において、ガスバリア性接着剤層の厚さが0.5~6.0μmであってよい。
【0012】
一態様において、第一の層及び第二の層が、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含んでよい。
【0013】
一態様において、第一の層及び第二の層が、未延伸フィルムであってよい。
【0014】
本発明の一側面は、上記のフィルムを製袋してなる、バッグインボックス用内容器を提供する。このようなバッグインボックス用内容器はリサイクル適性及びピンホール耐性に優れる。
【0015】
本発明の一側面は、上記のフィルムを製袋してなる内袋と、他のフィルムを製袋してなる外袋と、を備える、バッグインボックス用内容器を提供する。このようなバッグインボックス用内容器はピンホール耐性により優れる。
【0016】
本発明の一側面は、スパウトを有する内容器及び内容器を収納する外容器を備え、内容器が上記のバッグインボックス用内容器である、バッグインボックスを提供する。このようなバッグインボックスは、上記の内容器を備えていることから、リサイクル適性に優れると共に、ピンホール耐性に優れることにより、輸送時及び使用時の外部からの衝撃による内容物の漏出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスバリア性を有し、かつリサイクル適性及びピンホール耐性に優れるバッグインボックスの内容器用フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、ガスバリア性を有し、かつリサイクル適性及びピンホール耐性に優れるバッグインボックス用内容器、及び当該内容器を備えるバッグインボックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、バッグインボックスの内容器用フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2図2は、バッグインボックスの一実施形態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<バッグインボックスの内容器用フィルム>
図1は、バッグインボックスの内容器用フィルムの一実施形態を示す断面図である。バッグインボックスの内容器用フィルム(以下、「内容器用フィルム」という場合がある)10は、エチレン系ポリマーを含む第一の層1、ガスバリア性接着剤層2及びエチレン系ポリマーを含む第二の層3を、この順に備える。第一の層1及び第二の層3のいずれかを内側にして、内容器を製袋することができる。第一の層1及び第二の層3を、基材フィルムと言うことができる。
【0021】
内容器用フィルムは、内容物の保存安定性の観点からガスバリア性を有していてよい。具体的には、内容器用フィルムの、30℃/70RH%における酸素透過度は、200cc/m・day・atm以下であることが好ましく、100cc/m・day・atm以下であることがより好ましい。酸素透過度は、JIS K-7126-2に準拠して測定することができる。
【0022】
(第一の層及び第二の層)
第一の層及び第二の層に含まれるエチレン系ポリマー(ポリエチレン系ポリマー)は、エチレンモノマー由来の単位を70質量%超含むポリマーを意味する。エチレン系ポリマーが含み得る他のモノマー由来の単位としては、プロピレン、メタクリル酸メチル、スチレン、環状オレフィン等のモノマー由来の単位が挙げられる。リサイクル適性及びピンホール耐性の観点からは、エチレン系ポリマーは、30質量%未満のプロピレン等のオレフィン系モノマー由来の単位を含むことができる。
【0023】
エチレン系ポリマーとしては、具体的には、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、超低密度ポリエチレン(「ULDPE」)、超低密度ポリエチレン(「VLDPE」)、直鎖状及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(「m-LLDPE」)、中密度ポリエチレン(「MDPE」)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)等が挙げられる。低温でのシール性及びピンホール耐性の観点からは、エチレン系ポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、他のポリエチレンと比べて柔軟なため、フィルムとしての柔軟性が優れたものになる(耐屈曲性に優れるのでピンホール耐性の向上に寄与する)。すなわち、第一の層及び第二の層が、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましい。ここでいう「主成分」とは、層の全量を基準として50~100質量%、好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%含まれる成分を意味する。
【0024】
第一の層及び第二の層は、微量成分として帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。第一の層及び第二の層は、エチレン系ポリマーを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含んでいてよく、すなわち、実質的にエチレン系ポリマーからなる層であってよい。また、第一の層及び第二の層は、エチレン系ポリマーからなる層であってよい。第一の層及び第二の層に含まれるエチレン系ポリマーは、同一であっても異なっていてもよい。
第一の層及び第二の層の各層は、それぞれ独立に単層であってもよく、エチレン系ポリマーを含む層が積層されてなる積層体であってもよい。積層体である場合、個々の層の構成材料は同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
第一の層及び第二の層には、隣接して積層される層との密着性を向上するため、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0026】
第一の層及び第二の層は、延伸フィルムでもよいし、未延伸フィルムでもよいが、ピンホール耐性の観点からは、未延伸フィルムであることが好ましい。また、ガスバリア性及び耐熱性の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムが挙げられるが、耐熱性及び耐寒性の観点からは二軸延伸フィルムが好ましい。
【0027】
第一の層及び第二の層の厚さは、30~120μmとすることができる。厚さが30μm以上であることで、層の強度を向上させ易くなる。厚さが120μm以下であることで、層の柔軟性がより向上し、ピンホール耐性をより得易くなる。これらの観点から、第一の層及び第二の層の厚さは、40~100μmであることがより好ましく、50~80μmであることがさらに好ましい。
【0028】
第一の層及び第二の層の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。第一の層の厚さ:第二の層の厚さは、1:1~1:3とすることができ、1:1~1:2であってもよい。ただし、両者の厚み比が大きい場合、厚みの薄い層から亀裂が発生しピンホールが発生し易くなる。そのため、厚み比が大きい場合は、所望のピンホール耐性を得るべく、総厚を増やす必要があり、経済性や環境適性が悪化し易い。
【0029】
第一の層及び第二の層の23℃における引張弾性率は、MD方向及びTD方向共に400MPa以下である。バッグインボックスの輸送時等に生じるピンホールは、フィルムの方向によらない屈曲により生じるため、引張弾性率はMD方向及びTD方向共に上記範囲としている。引張弾性率が400MPa以下であることにより、引張弾性率が400MPa超である場合に比して、屈曲時のピンホール発生を抑えることができる。また、引張弾性率が400MPa以下であることにより、加工適性に優れた内容器用フィルムを得易い。この観点から、引張弾性率は250MPa以下であることがより好ましい。
【0030】
引張弾性率の下限は特に限定されないが、引張弾性率が低過ぎる場合、フィルム加工時及び内容器製袋時に、伸び、バタつき等の加工不具合が発生し易い。また、引張弾性率が低過ぎる場合は、フィルム同士が密着して内容物の排出性が損なわれたり、内容物が多く残ってしまう等の使用上の問題が生じ易い。このため、第一の層及び第二の層の23℃における引張弾性率は、MD方向及びTD方向共に、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。第一の層及び第二の層の少なくともいずれかが、これらの弾性率の下限を満たしていてもよい。
【0031】
第一の層の各方向の引張弾性率と、第二の層の各方向の引張弾性率とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
エチレン系ポリマーの引張弾性率は、エチレン系ポリマーの結晶化度を大きくする、エチレン系ポリマー中のメタクリル酸メチルモノマー由来の単位を増加させる、第一の層及び第二の層の延伸率を大きくする等により高くすることができる。一方、当該引張弾性率は、エチレン系ポリマーの結晶化度を小さくする、エチレン系ポリマー中のエチレンモノマー由来の単位を増加させる、第一の層及び第二の層の延伸率を小さくする等により低くすることができる。
【0033】
引張弾性率(MPa)は、以下のとおり測定することができる。
第一の層及び第二の層として用いるフィルムを、全長200mm、幅15mmの短冊状に切り出して試験片として、引張試験機(JIS K7127:1999に準ずる試験装置)の固定つかみ具と可動つかみ具とに、つかみ具間距離150mmで取り付ける。
試験温度を23℃として、可動つかみ具を引張り速度50mm/分で移動させ、引張比例限度内における引張応力とこれに対応するひずみの比の値を求める。
試験片三本における平均値を引張弾性率とする。
フィルムの流れ方向を短冊の全長方向として切り出した試験片での測定結果をMD方向の引張弾性率とし、フィルムの幅方向を短冊の全長方向として切り出した試験片での測定結果をTD方向の引張弾性率とする。
【0034】
(ガスバリア性接着剤層)
ガスバリア性接着剤層としては、ガスバリア性(酸素透過抑制性)を有し、かつ上記第一の層及び第二の層を接着できる成分を含むものであれば特に限定されない。ガスバリア性は、ガスバリア性接着剤が硬化することによって発現する。ガスバリア性接着剤層を形成するためのガスバリア性接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。ガスバリア性接着剤が硬化することでガスバリア性接着剤層が形成され、ガスバリア性が発現される。ガスバリア性接着剤としては、三菱ガス化学株式会社製のマクシーブ、DIC株式会社製のPASLIM等が挙げられる。
【0035】
ガスバリア性接着剤を用いることにより、接着剤層の厚さを抑えつつ(リサイクル適性を維持しつつ)、優れたガスバリア性を発現することができる。ガスバリア性接着剤層の厚さは、0.5~6.0μmとすることができる。厚さが0.5μm以上であることで、ガスバリア性を十分なものにし易くなる。厚さが6.0μm以下であることで、フィルムが屈曲した場合でもガスバリア性が低下し難くなる。特に、ガスバリア性接着剤層の厚さが6.0μmよりも大きいと、第一の層及び第二の層と比べて硬く屈曲し難い傾向のガスバリア性接着剤層がきっかけとなって、ピンホールを発生させ易くなる虞がある。これらの観点から、ガスバリア性接着剤層の厚さは、0.8~5.0μmであることがより好ましく、1.0~4.5μmであることがさらに好ましい。
【0036】
ガスバリア性接着剤としては、具体的には、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び炭素数14~24の不飽和脂肪酸アミドを含有するエポキシ樹脂組成物が挙げられる。このようなガスバリア性接着剤としては、三菱ガス化学株式会社製のマクシーブが挙げられる。
【0037】
エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香環又は脂環式構造を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
当該エポキシ樹脂としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は一種単独で用いてもよいが、柔軟性、耐衝撃性、耐湿熱性等を向上させる観点から、二種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
上記の中でも、ガスバリア性の観点から、エポキシ樹脂としてはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及びビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものがより好ましい。主成分の意味は前述のとおりである。
【0040】
エポキシ樹脂硬化剤は、高いガスバリア性を発現する観点から、アミン系硬化剤を含む。アミン系硬化剤としては、従来エポキシ樹脂硬化剤として用いられているポリアミン又はその変性物を用いることができる。高いガスバリア性を得る観点から、アミン系硬化剤はポリアミンの変性物であることが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤は、アミン系硬化剤以外の硬化剤成分を含有していてもよいが、高いガスバリア性を得る観点からは、アミン系硬化剤の含有量が高いことが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤中のアミン系硬化剤の含有量は、高いガスバリア性を得る観点から、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。また、上限は100質量%である。
【0041】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)は、0.2~12.0、0.4~10.0、0.6~8.0、1.0超5.0以下、又は1.1~3.5の範囲であってよい。
【0042】
炭素数14~24の不飽和脂肪酸アミド(不飽和脂肪酸アミド)を用いることで、透明性が良好な接着剤層を形成できる。不飽和脂肪酸アミドの炭素数は14~24であり、ブロッキングが少なく、基材層への追従性、及び透明性をより良好にする観点から、好ましくは16~24、より好ましくは18~22である。
【0043】
不飽和脂肪酸アミドを構成する不飽和脂肪酸は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数14~24の脂肪酸であればよい。該不飽和脂肪酸中の不飽和結合の数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2である。
【0044】
不飽和脂肪酸アミドを構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、サピエン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸;リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸等のテトラ脂肪酸;が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性の観点から、炭素数14~24の、モノ不飽和脂肪酸及びジ不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素数14~24のモノ不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数16~24のモノ不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数18~22のモノ不飽和脂肪酸がより好ましい。
【0045】
不飽和脂肪酸アミドは、ブロッキングが少なく、基材層への追従性、及び透明性をより良好にする観点から、好ましくはパルミトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エイコセン酸アミド、及びエルカ酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはオレイン酸アミド及びエルカ酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0046】
エポキシ樹脂組成物中の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤中の不揮発分との合計量100質量部に対し、0.1~20質量部、0.2~15質量部、0.5~15質量部、1~15質量部、3~15質量部、又は5~12質量部である。不飽和脂肪酸アミドの含有量がエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤中の不揮発分との合計量100質量部に対し0.1質量部以上であれば、基材層への追従性、ブロッキング抑制効果を得易い。また20質量部以下であれば高いガスバリア性、及び透明性を維持し易く、該不飽和脂肪酸アミドの溶出等も抑制し易い。
【0047】
エポキシ樹脂組成物には、さらに非球状無機粒子を含有することができる。エポキシ樹脂組成物に非球状無機粒子を含有させることで、後述するガスバリア性積層体の樹脂硬化層の形成に用いた際にはブロッキング抑制効果が得られ、且つ、ガスバリア性及び耐屈曲性をより向上させることができる。
【0048】
非球状無機粒子の形状は、球状(略真円球状)以外の三次元形状であればよく、例えば、板状、鱗片状、柱状、鎖状、繊維状等が挙げられる。板状、鱗片状の無機粒子は複数積層されて層状になっていてもよい。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点からは、板状、鱗片状、柱状、又は鎖状の無機粒子が好ましく、板状、鱗片状、又は柱状の無機粒子がより好ましく、板状又は鱗片状の無機粒子がさらに好ましい。
【0049】
非球状無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、雲母(マイカ)、タルク、アルミニウム、ベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させる観点からはシリカ、アルミナ、及び雲母からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、シリカがさらに好ましい。
【0050】
非球状無機粒子の平均粒径は、1~2000nm、1~1500nm、1~1000nm、1~800nm、1~500nm、5~300nm、5~200nm、5~100nm、又は8~70nmの範囲であることが好ましい。当該平均粒径が1nm以上であれば無機粒子の調製が容易であり、2000nm以下であれば、エポキシ樹脂組成物をガスバリア性積層体の樹脂硬化層の形成に用いた際にガスバリア性、耐屈曲性、及び透明性がいずれも良好になる。なお、当該平均粒径は一次粒子の平均粒径である。
【0051】
非球状無機粒子を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し、0.5~10.0質量部、1.0~8.0質量部、1.5~7.5質量部、又は3.0~7.0質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量がエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し0.5質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物をガスバリア性積層体の樹脂硬化層の形成に用いた際にガスバリア性及び耐屈曲性向上効果が良好になる。また、当該含有量が10.0質量部以下であると透明性も良好になる。
【0052】
エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて熱硬化性樹脂、湿潤剤、粘着付与剤、消泡剤、硬化促進剤、防錆添加剤、顔料、酸素捕捉剤等の添加剤を配合してもよい。エポキシ樹脂組成物の固形分中のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び炭素数14~24の不飽和脂肪酸アミドの合計含有量は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は85質量%以上であることが好ましく、上限は100質量%である。「エポキシ樹脂組成物の固形分」とは、エポキシ樹脂組成物中の水及び有機溶剤を除いた成分を意味する。
【0053】
また、ガスバリア性接着剤としては、具体的には、1分子内に水酸基を2個以上有するポリオールと、1分子内にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物と、リン酸変性化合物とを含有し、ポリオールは、主骨格がポリエステル構造、ポリエステルポリウレタン構造、ポリエーテル構造、及びポリエーテルポリウレタン構造なる群から選ばれる1種又は2種以上を有する接着剤用樹脂組成物が挙げられる。当該接着剤用樹脂組成物は、更に板状無機化合物を含有していてもよい。
【0054】
このような、ポリオール、イソシアネート化合物、及びリン酸変性化合物を含有する接着剤用樹脂組成物の具体例としては、DIC株式会社製のPASLIM(パスリム)が挙げられる。
【0055】
接着剤用樹脂組成物の硬化塗膜のガラス転移温度は、-30℃~80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃~70℃である。更に好ましくは25℃~70℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材フィルムへの密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方-30℃よりも低い場合、常温付近での硬化塗膜の分子運動が激しいことにより十分なガスバリア性が出ないおそれや、凝集力不足による接着力低下のおそれがある。
【0056】
ポリオールにおける、ポリエステル構造は、多価カルボン酸類と多価アルコールとを公知慣用の方法で重縮合反応させて得られたものである。多価カルボン酸類としては、脂肪族多価カルボン酸類と芳香族多価カルボン酸類が挙げられる。具体的な脂肪族多価カルボン酸類としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0057】
具体的な芳香族多価カルボン酸類としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸等が挙げられる。
【0058】
具体的なオルト配向芳香族ジカルボン酸類としては、オルトフタル酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体等が挙げられる。多価カルボン酸類としては、これらを単独で或いは2種以上を併用することができる。多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコールと芳香族多価フェノールが挙げられる。
【0059】
脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等を例示することができる。
【0060】
芳香族多価フェノールとしては、具体的には、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等を例示することができる。
【0061】
イソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有し、芳香族または脂肪族のどちらでもよく、低分子化合物または高分子化合物のどちらでもよく、イソシアネート基が2個のジイソシアネート化合物や、3個以上のポリイソシアネート化合物等の公知の化合物が使用できる。イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネートブロック化剤を用いて公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られたブロック化イソシアネート化合物であってもよい。
【0062】
中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物が好まれ、ガスバリア性付与という点では、芳香族環を有するものが好ましく、特に、メタキシレン骨格を含むイソシアネート化合物が、ウレタン基の水素結合だけでなく芳香環同士のπ-πスタッキングによってガスバリア性を向上させることが出来るという理由から好ましい。
【0063】
イソシアネート化合物の具体的な化合物としては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体、ビュレット体、アロファネート体等が挙げられる。
【0064】
リン酸変性化合物は、接着強度を向上させる効果を有するものであり、公知慣用のものを用いることができる。具体的には、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0065】
溶剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物とを溶解し、リン酸変性化合物や板状無機化合物を均一に分散可能で、製造工程上の適切な沸点や揮発性を有するものならば、特に制限は無い。
【0066】
板状無機化合物は、接着剤用樹脂組成物を硬化させてなるガスバリア性接着剤層のラミネート強度とガスバリア性を向上させる効果を有する。板状無機化合物としては、具体的には、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0067】
<バッグインボックスの内容器用フィルムの製造方法>
バッグインボックスの内容器用フィルムは、第一の層及び第二の層を、ガスバリア性接着剤で貼り合わせることで作製される。
【0068】
ガスバリア性接着剤は、例えば、バーコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット法等により、例えば第一の層に塗布される。このガスバリア性接着剤を塗布してなる塗膜を乾燥させた後、第二の層を貼り合わせる。乾燥させる際の温度は、例えば、30~200℃とすることができ、50~180℃とすることが好ましい。また、第二の層を貼り合わせた後に上記塗膜を硬化させる。硬化させる際の温度は、例えば、室温~70℃とすることができ、30~60℃とすることが好ましい。乾燥及び硬化時の温度を上記範囲内とすることで、ガスバリア性接着剤層にクラックが発生することを抑制できる。
【0069】
<バッグインボックス用内容器>
バッグインボックス用内容器は、上記の内容器用フィルムを製袋してなるものである。製袋方法としては、具体的には、フィルムをブロー成形する方法や、二枚のフィルムを真空成形又は圧空成形して周囲を熱、もしくは超音波により融着又はシールする方法が挙げられる。
【0070】
バッグインボックス用内容器は、バッグインボックスの輸送時及び使用時の外部からの衝撃や擦傷による内容物の漏出をより抑制し易くする観点から、上記の内容器用フィルムを製袋してなる内袋と、他のフィルムを製袋してなる外袋と、を備えるものであってもよい。すなわち、バッグインボックス用内容器は、2重袋であってよい。外袋に用いられる他のフィルムとしては内袋と同じフィルムであってもよいし、異なるフィルムであってもよい。異なるフィルムとしてはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。外袋を構成するフィルムとしてオレフィン系樹脂フィルムを用いることにより、リサイクル適性が向上する。内袋及び外袋を備える内容器は、内袋の周囲に外袋を構成するフィルムをシールすることにより得ることができる。
【0071】
<バッグインボックス>
図2は、バッグインボックスの一実施形態を示す外観図である。図2に示すように、バッグインボックス100は、スパウト11aを有する内容器11及び内容器11を収納する外容器12を備える。当該内容器11が、上記のバッグインボックスの内容器用フィルムから製袋された、バッグインボックス用内容器である。スパウト11aは内容器11に連続してかつ外容器12の外部へ飛び出すようにして設けられており、このスパウト11aを通して内容物の注ぎ出しが行われる。スパウト11aは、例えば内容器11に融着された注出口と、当該注出口に嵌合して開閉可能とするキャップとを備えることができる。
【0072】
内容器に収容される内容物としては、食品や非食品の液体が挙げられる。内容物としては、例えば果汁飲料、ジュース、炭酸飲料、お茶、コーヒー、乳飲料、スープ等の飲料、日本酒、焼酎等の酒類などの食品の液体;現像液、インキ、塗料、オイル、消毒液、液体肥料、殺菌剤、殺虫剤等の非食品の液体が挙げられる。外容器12(外箱)としては、これらの内容物の荷重に耐えうるよう、紙の段ボールを主体にした箱(段ボール箱)やボール紙を主体にした箱が挙げられる。
【実施例0073】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0074】
(基材フィルム)
基材1:LLDPE(タマポリ株式会社製)、厚さ60μm、引張弾性率 MD/TDが180/230MPa、未延伸フィルム
基材2:LLDPE(タマポリ株式会社製)、厚さ60μm、引張弾性率 MD/TDが290/390MPa、未延伸フィルム
基材3:LLDPE(タマポリ株式会社製)、厚さ60μm、引張弾性率 MD/TDが540/670MPa、未延伸フィルム
基材4:LLDPE(出光ユニテック株式会社製)、厚さ60μm、引張弾性率 MD/TDが400/440MPa、未延伸フィルム
基材5:LLDPE(タマポリ株式会社製)、厚さ60μm、引張弾性率 MD/TDが90/95MPa、未延伸フィルム
【0075】
引張弾性率(MPa)は、以下のとおり測定した。
各基材フィルムを、全長200mm、幅15mmの短冊状に切り出して試験片として、引張試験機(JIS K7127:1999に準ずる試験装置)の固定つかみ具と可動つかみ具とに、つかみ具間距離150mmで取り付けた。
試験温度を23℃として、可動つかみ具を引張り速度50mm/分で移動させ、引張比例限度内における引張応力とこれに対応するひずみの比の値を求めた。
試験片三本における平均値を引張弾性率とした。
基材フィルムの流れ方向を短冊の全長方向として切り出した試験片での測定結果をMD方向の引張弾性率とし、基材フィルムの幅方向を短冊の全長方向として切り出した試験片での測定結果をTD方向の引張弾性率とした。
【0076】
(接着剤)
接着剤a:マクシーブ(三菱ガス化学株式会社製、ガスバリア性接着剤)
酢酸エチルとメタノールとを質量比1:1で混合した溶媒23質量部に、マクシーブC93Tを16質量部と、マクシーブM-100を5質量部とを混合して、エポキシ系接着剤である接着剤aを調製した。
接着剤b:A525(三井化学株式会社製)
タケラックA525を100質量部に対し、タケネートA52を11質量部、酢酸エチルを84質量部混合して、ウレタン系接着剤である接着剤bを調製した。
接着剤c:PASLIM(DIC株式会社製、ガスバリア性接着剤)
PASLIM VM001を100質量部に対し、PASLIM VM108CPを25質量部、酢酸エチル25質量部を混合して、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤である接着剤cを調製した。
【0077】
(バッグインボックスの内容器用フィルムの作製)
一方の基材フィルム上に、接着剤をワイヤーバーにて塗工して60℃で乾燥させ、厚さ3μmの接着剤層を形成した後、他方の基材フィルムを貼り合わせた。その後、50℃で4日間のエージングを行った。これにより、基材フィルム/接着剤層/基材フィルムなる構成を有する積層フィルムを得た。各例における層の詳細は表1に示すとおりである。
【0078】
(屈曲ピンホール試験)
各例で得られた積層フィルムに対し屈曲ピンホール試験を行った。手順詳細は以下のとおりとした。結果を表1に示す。
[手順]
各例で得られた積層フィルムをA4サイズにカットした(フィルムMD方向に297mm、TD方向に210mm)。
接液面側フィルム(第一の層)を内側にし、ゲルボブレックステスター(BE-1006 恒温槽付ゲルボフレックステスター、テスター産業株式会社製)の3.5インチ直径の固定ヘッド及び3.5インチ直径の可動ヘッドに円筒状に固定した。
ストロークの開始状態では面と面との間が7インチに離されていた。
雰囲気温度を5℃に設定し、温度計が5℃に到達後、1分後に屈曲試験を開始した。
テスターの可動ヘッドを、固定ヘッドの方向に89.0mm接近移動させる間に440°回転させ、続いて回転させずに更に63.5mm接近移動させた後、これらの動作を逆向きにして元の位置に戻す一連の動きを1サイクルとして、40サイクル/分の速度で繰り返して1000サイクル屈曲試験を行った。
屈曲試験後のサンプルを目視で確認し、ピンホールの発生数をカウントした(ASTM-F392準拠)。ピンホールのカウント時には、水洗性浸透液(R-3B(NT)W-1プラス、栄進化学株式会社製)を用いた。
【0079】
(酸素透過度測定)
各例で得られた積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(製品名「OX-TRAN2/20」、MOCON社製)を用い、温度30℃、相対湿度70%の条件で酸素透過度(単位:cc/m・day・atm)を測定した。このとき、測定は、JIS K-7126-2に準拠して行った。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、実施例の積層フィルムは、比較例の積層フィルムに比して、屈曲試験後のピンホール発生が抑制されていた。ピンホール耐性に優れる実施例の積層フィルムは、バッグインボックスの内容器用フィルムとして好適であると言える。また、実施例の積層フィルムは、実質的にモノマテリアルの素材から形成されているため、使用後の内容器(フィルム)のリサイクル適性にも優れていると言える。
【符号の説明】
【0082】
1…第一の層、2…ガスバリア性接着剤層、3…第二の層、10…バッグインボックスの内容器用フィルム、11…内容器、11a…スパウト、12…外容器、100…バッグインボックス。
図1
図2