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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114208
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】クレンメと輸液セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20230809BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61M5/168 502
A61M5/14 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016449
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】592222525
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】古屋 明彦
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066QQ26
4C066QQ44
4C066QQ72
4C066QQ79
(57)【要約】
【課題】チューブを「く」の字状に折り曲げて、「く」の字を鋭角化することで流路を狭窄する仕組みを生かしつつ、手動仕様にすることで、手動でありながら流量の微調整を可能にしたクレンメの提供。
【解決手段】主部3は長さ方向中間部5を曲げ中心Xとして一対の対向部9、15が形成されるように曲げられる板バネ状の主部3と、中間部5に曲げ中心Xを跨いで形成された逃げ窓7を備え、主部3の曲げ内面に沿ってチューブTをセットして主部3を曲げる。止水状態では、チューブTの折り中心は逃げ窓7を通り抜けて外方に逃げる。また、回動自在に取付けられたサイドアーム21、21のナット19に螺合させてネジ部25を回すことで、主部3の曲げを調整できる。同じ流量変更量であっても、従来のコロ状の部品の動かす距離に対して頭部25bの回す周方向の距離は格段に長くなっており、操作性が良く、精密に流量制御できる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向中間部を曲げ中心として一対の対向部が形成されるように曲げられる板バネ状主部と、前記中間部に前記曲げ中心を跨いで形成された逃げ窓と、前記逃げ窓を挟んで前記主部の曲げ内面に沿ってチューブをセットするセット部で構成され、前記チューブが前記主部の曲げにより「く」の字状に折られる際にその折り中心が前記逃げ窓から外方に逃げて突出できるチューブセット構造と、
一方の対向部と連結された押え部の間で、他方の対向部を挟んで曲げる曲げ手段と、
前記一方の対向部と前記押え部の間隔を調整する調整手段と、
前記一方の対向部と前記押え部の間隔を最小状態で解除可能に固定する固定手段を備え、
前記曲げ手段と前記調整手段と前記固定手段を手動操作により実現することを特徴とするクレンメ。
【請求項2】
請求項1に記載したクレンメにおいて、
一方の対向部の幅方向両側からそれぞれ回動自在に連結された一対のサイドアームと、前記一対のサイドアームに支持されて押え部を構成するナット部および前記ナット部に螺進退可能に螺合するネジ部を備え、前記ナット部と前記一方の対向部の間に他方の対向部を挟み込み、前記ネジ部の先端面が前記他方の対向部を押すことで、前記曲げ手段と調整手段が実現されることを特徴とするクレンメ。
【請求項3】
請求項2に記載したクレンメにおいて、
他方の対向部の端部には長さ方向両側と逃げ窓側にネジ軸の姿勢ガイド壁が立ち上がっており、前記逃げ窓側の姿勢ガイド壁が主部のバネ反発力に抗して姿勢が規制されていることを特徴とするクレンメ。
【請求項4】
請求項2または3に記載したクレンメにおいて、
一方の対向部の幅方向両側に一対のサイドアームの支持箇所が複数設けられており、任意の選択によりチューブの折り範囲角度の広狭を調整可能になっていることを特徴とするクレンメ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載したクレンメにおいて、
サイドアームに流量に相当する指標が表示されており、前記他方の対向部と前記指標との位置関係で流量が目測可能になっていることを特徴とするクレンメ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載したクレンメにおいて、
固定手段が、主部の長さ方向両端側にそれぞれ形成された係止構造で構成されていることを特徴とするクレンメ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載したクレンメにおいて、
樹脂成形品で構成されていることを特徴とするクレンメ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載したクレンメがチューブに装着されてなる輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンメと、それをチューブに装着してなる輸液セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、自然落下方式で輸液を制御する場合には、クレンメが利用されてきた。このクレンメは、コロ状の部品を手で動かしながらチューブの圧迫度合いを調整し、チューブ流路を狭窄させることによって流量を調整するようになっている。
而して、コロ状の部品の移動範囲は短く、熟練者であっても微小移動が難しいので、流量を精度高く調整することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-191958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに対して、我々は、先に、特許文献1で、チューブの開閉を担う部位を電動式で構成しながら手動式のクレンメと同様に扱えるようなサイズおよび重量で構成できる電動クレンメを提案した。
この電動クレンメでは、一対のチューブクランプでチューブを「く」の字状に折り曲げた状態でクランプし、その部分をモータ駆動により更に鋭角的に折り曲げることで流路を狭窄する仕組みになっており、流量制御の精度は概して高くなっている。
【0005】
しかしながら、現場ではあくまでも手動、しかも使い捨て可能なものに対するニーズは依然として高い。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、チューブを「く」の字状に折り曲げ、「く」の字を鋭角化することでチューブ流路を狭窄する仕組みを利用しつつ、手動仕様にすることで、手動でありながら流量の微調整を可能にした、新規且つ有用なクレンメを提供することを、その目的とする。
また、本発明は、上記クレンメをチューブに装着した輸液セットを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、長さ方向中間部を曲げ中心として一対の対向部が形成されるように曲げられる板バネ状主部と、前記中間部に前記曲げ中心を跨いで形成された逃げ窓と、前記逃げ窓を挟んで前記主部の曲げ内面に沿ってチューブをセットするセット部で構成され、前記チューブが前記主部の曲げにより「く」の字状に折られる際にその折り中心が前記逃げ窓から外方に逃げて突出できるチューブセット構造と、一方の対向部と連結された押え部の間で、他方の対向部を挟んで曲げる曲げ手段と、前記一方の対向部と前記押え部の間隔を調整する調整手段と、前記一方の対向部と前記押え部の間隔を最小状態で解除可能に固定する固定手段を備え、前記曲げ手段と前記調整手段と前記固定手段を手動操作により実現することを特徴とするクレンメである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したクレンメにおいて、一方の対向部の幅方向両側からそれぞれ回動自在に連結された一対のサイドアームと、前記一対のサイドアームに支持されて押え部を構成するナット部および前記ナット部に螺進退可能に螺合するネジ部を備え、前記ナット部と前記一方の対向部の間に他方の対向部を挟み込み、前記ネジ部の先端面が前記他方の対向部を押すことで、前記曲げ手段と調整手段が実現されることを特徴とするクレンメである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載したクレンメにおいて、他方の対向部の端部には長さ方向両側と逃げ窓側にネジ軸の姿勢ガイド壁が立ち上がっており、前記逃げ窓側の姿勢ガイド壁が主部のバネ反発力に抗して姿勢が規制されていることを特徴とするクレンメである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載したクレンメにおいて、一方の対向部の幅方向両側に一対のサイドアームの支持箇所が複数設けられており、任意の選択によりチューブの折り範囲角度の広狭を調整可能になっていることを特徴とするクレンメである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれかに記載したクレンメにおいて、サイドアームに流量に相当する指標が表示されており、前記他方の対向部と前記指標との位置関係で流量が目測可能になっていることを特徴とするクレンメである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したクレンメにおいて、固定手段が、主部の長さ方向両端側にそれぞれ形成された係止構造で構成されていることを特徴とするクレンメである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載したクレンメにおいて、樹脂成形品で構成されていることを特徴とするクレンメである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載したクレンメがチューブに装着されてなる輸液セットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクレンメは、手を動かして流量を調整するものでありながら、微調整が可能になっている。また、既存のクレンメと同様にチューブに負荷を掛けずに流量を調整でき、且つ止水も完全に実現できる。
本発明のクレンメは樹脂成型品として製造できるので、チューブに装着して使い捨ての輸液セットとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るクレンメ(ネジ部省略)の二方向から見た斜視図である。
図2図1のクレンメの主部の二方向から見た斜視図である。
図3図1のクレンメの一対のサイドアームとナット部の二方向から見た斜視図である。
図4図1のクレンメにネジ部を加えた完成品の六面図と、主部の側面図である。
図5図4のクレンメの主部を曲げた状態の2種類の側面図である。
図6図4のクレンメの主部を曲げた状態の側面部と、正面図である。
図7図4のクレンメにチューブをセットした状態を示す側面図と平面図である。
図8図7のクレンメにおいて、止水用に主部を曲げた状態の側面図である。
図9図7のクレンメにおいて、流量制御用に主部を曲げた状態の側面図である。
図10図9のサイドアームに目盛りを表示したものの側面図である。
図11図4のクレンメに対して主部に対するサイドアームの取付け位置を変更したときの、図5に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係るクレンメ1を、図面にしたがって説明する。
クレンメ1は、既存のクレンメと同様に可撓性のチューブTに装着されて、チューブTを開閉するようになっている。
クレンメ1は樹脂成型品になっており、図1図6に示すように、クレンメ1は板バネ状の主部3を備えている。この主部3の中間部5は長方形の薄板状になっており。四隅には丸みが付けられてR曲面になっている。中間部5の長辺縁に沿う方向を長さ方向、短辺縁に沿う方向を幅方向として扱う。中間部5の中央部分に逃げ窓7として長円形の貫通穴が形成されている。この逃げ穴7は、中間部5の長さ方向に沿って長く延びている。
【0017】
中間部5の長さ方向両端側にはそれぞれ対向部9、15が連設されている。この対向部9、15は中間部5に面一に連なる対向面部9a、15aを有して、中間部5の長さ方向外方にそれぞれ延びており、主部3は長さ方向に対向面部9a~中間部5~対向面部15aと連なっている。但し、対向面部9a、15aの幅方向の寸法は短くなっており、中間部5と共通の中心線にしたがって幅方向の両縁は中間部5の幅方向の両縁に対して均等に内方に向かって後退している。
【0018】
対向部9側では、対向面部9aの幅方向両側から同じ側に一対のセット壁9b、9bが立ち上がっており、セット壁9b、9bの互いに対向する内面には係止凸条9cが突設されている。この係止凸条9cはセット壁9bの基端から上端まで延びている。セット壁9b、9bの内面側では一対の係止凸条9c、9cが対向しており、セット壁9b、9bの間に間隔をあけて、三対の係止凸条9c、9cが対向している。
【0019】
また、対向面部9aの長さ方向先端側では、セット壁9b、9bの外側に一対の挟み片11a、11aの片面が被さるようにそれぞれ連設されている。この挟み片11aはセット壁9bの上端を超えて上方に延びており、且つ、片面が斜めになっており、挟み片11a、11aはセット壁9b、9bの上方で互いに近づく方向で傾斜している。挟み片11aの先端に係止爪11bが突設されており、挟み片11a、11aの内面側では一対の係止爪11b、11bが対向している。係止爪11bは、断面視三角形で上端側が鋭角な矢じり状になっている。
【0020】
対向面部9aの一方の面上には上記したようにセット壁9bや挟み片11aが立ち上がっているが、他方の面上には、軸受け13が突設されている。この軸受け13には挿通口13aが設けられている。対向面部9aの幅方向に並んで一対設けられており、それぞれの挿通口13a、13aは揃って対向面部9aの先端方向を向いている。対向面部9aの長さ方向に間隔をあけて二対の軸受け13、13が設けられている。
【0021】
対向部15側でも、対向部9と同様に、対向面部15aにセット壁15b、係止凸条15cが連設されている。セット壁15bはセット壁9bと同じ側に立ち上がっており、これらでセット部が構成されている。セット壁9b等が立ち上がった側では、対向部9側のセット壁9b、係止凸条9c、対向部15側のセット壁15b、係止凸条15cが中間部5と一体になってチューブセット構造が構成されている。
【0022】
また、セット壁15bの先端側の外面は矩形状に凹んで、その周囲との間に係止段差11cが形成されている。この係止段差11cは「コ」の字状になっており、セット壁15bの上端側が「コ」の字の中間部分になっている。セット壁15b、15bの外面側に一対の係止段差11c、11cが対向している。
挟み片11a、係止爪11b、係止段差11cで、固定手段11が構成されている。
上記したように、主部3が曲げられると、挟み片11aと係止段差11cは近づき、最接近すると、一対の挟み片11a、11aが弾性的に広げられて、係止爪11b、11bが係止段差11c、11cに係止されると共に、セット壁9b、9bとセット壁15b、15bの上端面どうしが当接する。この当接状態は係止構造により固定化される。
【0023】
対向面部15aの一方の面上には上記したようにセット壁15bが立ち上がっているが、他方の面側にもセット壁15bがそのまま連なっており、他方の面上では長さ方向姿勢ガイド壁17aとして立ち上がっている。但し、中間部5側の角部は欠落して傾斜している。長さ方向姿勢ガイド壁17a、17aは平行に延びており、その中間は長さ方向を仕切るように幅方向姿勢ガイド壁17bで閉塞されている。幅方向姿勢ガイド壁17b、17bが間隔をあけて設けられており、その一つは傾斜側に位置している。姿勢ガイド壁17は、この長さ方向姿勢ガイド壁17aと幅方向姿勢ガイド壁17bで構成された四角枠で構成されている。
【0024】
符号19は円筒形のナット部を示す。このナット部19は一対のサイドアーム21、21の一端側でその間に挟まった状態で連設されている。このサイドアーム21のアーム本体21aは細長の帯板状に構成しており、アーム本体21a、21aの板面どうしが対向している。アーム本体21aは長さ方向一端側がやや鋭角のL形状になっており、そのL形の突出片21eの先端側にナット部19が連設されている。従って、ナット部19の軸方向とアーム本体21aの長さ方向は交差している。
アーム本体21aは中間部分で垂直に屈曲して段差21bが形成されており、アーム本体21a、21aの幅方向の間隔はナット部19側より遠い側が広くなっている。この段差21bによりアーム本体21aの外面はL形に凹んだ面になっており、この凹んだ面には矩形板状の補強部21cがリブ状に嵌め込まれている。
【0025】
段差21bはアーム本体21aの長さ方向のナット部19側から凡そ1/3の位置に形成されており、幅方向の間隔が広くなった部分には、幅方向で対向して一対の係止片21d、21dが設けられている。この係止片21dはL形状で、アーム本体21aの板厚面から凸状に突出し、その先端側が屈曲してアーム本体21aの幅方向内側に突出している。係止片21dはナット部19の取付け側とは反対側に設けられている。
【0026】
アーム本体21a、21aの長さ方向他端側の端部の間には円柱状の軸23が架設されている。この軸23はアーム本体21a、21aの長さ方向と直交しており、中間軸23aはその両側軸23bよりも小径になっている。
この中間軸23aが挿通口13a、13aを介して軸受け13、13の孔内に入り込んで、主部3側と連結されており、サイドアーム21、21は対向部9に対して回動可能になっている。従って、サイドアーム21、21とナット部19は一体となってブランコ状にスイングする。但し、使用前の状態では、主部3の中間部5が平面状になっており、アーム本体21a、21a側の係止片21d、21dで中間部5が挟み込まれ、ナット部19の取付け側のL形の基端側で長さ方向姿勢ガイド壁17a、17aが外側から挟み込まれており、サイドアーム21、21は主部3に対して回動不能に倒伏された状態で姿勢保持されている。
【0027】
符号25はネジ部を示す。このネジ部25はネジ軸25aがナット部19に螺合している。操作部となる拡径された頭部25bはサイドアーム21の回動中心となる軸23から離れた側に位置している。
【0028】
クレンメ1は上記したように構成されており、主部3は中間部5が最も曲げ易い箇所になっており、セット壁9b側が曲げ内面となるように手で曲げられると、図5に示すように、中間部5に曲げ中心Xがくる。逃げ窓7はこの曲げ中心Xを跨いでいる。ネジ軸25aと対向面部9aは直交またはそれに近い交差関係にできるので、ネジ軸25aの押す方向が対向部9、15の当接面と直交するので、ネジ25を使用して押すと最もきつい二つ折り状の曲げも容易に再現できる。
また、サイドアーム21、21の姿勢保持が解除され、回動可能になる。
曲げられた主部3は手を離せば板バネの反発力により平面状に戻ろうとするが、サイドアーム21,21により構成されたブランコの中に対向部15を挟み込ませ、更に、ネジ軸25aの先端部を姿勢ガイド壁17の中に入り込ませれば、戻りが阻止されて、曲げ姿勢が維持される。
対向部9、15が重なり、係止爪11b、11bが係止段差11c、11cに係止されて固定化されたときには、図6に示すように、最もきつい曲げ姿勢で維持される。
【0029】
チューブTを真っ直ぐにした状態で、対向部9側の係止凸条9c、9cの間と、対向部15側の係止凸条15c、15cとの間に挟持させることで、図7に示すように、チューブTを主部3に沿わせて状態でセットさせることができる。
チューブTは、対向する係止凸条15c、15cの間で僅かに圧迫されるが、必要な流路は確保されている。その一方で、チューブTが摺動方向に引っ張られても、摺動方向に沿って複数の係止部位があるので、摺動抵抗が大きくなっており、摺動し難くなっている。セット時には、チューブTは中間部5の逃げ窓7ではチューブTの周面全体が露出している。
【0030】
チューブTがセットされた状態で、図6に示すように主部3が曲げられると、チューブTが最も鋭角的に折り曲げられている。チューブTの折り中心Yは逃げ窓7を通り抜けて突出できるので、図8に示すようなきつい折り曲げが可能になっており、そのときの折り曲げにより止水状態が実現されている。サイドアーム21のアーム本体21aとナット部19はやや鋭角のL形状になっており、
また、図9に示すように主部3が曲げられ、ネジ軸25aの先端部が姿勢ガイド壁17の中に入り込ませた状態にさせると、ナット部19からのネジ部25のネジ軸25aの先端部が押すので、主部3に沿ってチューブTは「く」の字状に折り曲がる。ネジ軸25aの伸長度合いを調整することにより、主部3の曲げ角度を変化させて、「く」の字状を維持しながら、「く」の字の挟角の開き度合い、すなわちチューブTの折り曲げ角度を調整できる。チューブTの折り曲げ角度とチューブTの流量は相関しており、クレンメ1はチューブTを折り曲げることで、チューブTの流路の狭窄度合いを調整することができる。
【0031】
そして、ネジ部25の頭部25bを手で回してネジ軸25aを螺進させると、ネジ軸25aの先端が当接した対向面部15aを押すことになり、主部3の曲がりがきつくなり、それに追従してチューブTの「く」の字の挟角は小さく鋭角化していく。ネジ軸25aを螺退させると、主部3の曲がりが緩くなり、それに追従してチューブTの「く」の字の挟角は大きくなっていく。
【0032】
クレンメ1は、ネジ部25の頭部25bを手で回すことで、チューブTの流量を調整するようになっており、同じ流量変更量であっても、従来のコロ状の部品の動かす距離に対して頭部25bの回す周方向の距離は格段に長くなっており、操作性が良く、精密に流量制御できる。また、軸受け13、13は二対設けられており、図11に示すように、対向部9の外方に近いものにするほど、チューブTの折り曲げによりできる「く」の字を広げた範囲から狭めることができる。すなわち、チューブTの折り角度範囲の広狭を選択できる。所望の流量が多ければ、対向部9の外方に近いものを選択することになる。
【0033】
圧迫するよりも格段に小さな力で曲げることができるので、このクレンメ1は、単純な構造ながら、完全に閉じて止水を実現することができる。また、このクレンメ1は、従来のクレンメと同様のサイズおよび重量で構成でき、チューブTに負荷を掛けない。
従って、既存のクレンメと同様に取り扱うことを可能としている。
クレンメ1は使い捨て可能な樹脂成型品であり、チューブTを予め装着しておいて、輸液セットとして提供することができる。
【0034】
図10は、サイドアーム21に複数の流量の大まかな目安となる目盛りとその目盛りに対応する流量(数値)が示されている。対向部15の上端面15dが所定の目盛りに重なるようにネジ部25を回せば、凡その流量合わせを大まかな操作でできる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、チューブに所定の動きを実現できれば、具体的な構造は変更可能である。
ネジのピッチや頭部25bの径を調整することにより、精密な流量制御を確保しながら所望の流量に対する操作性を最適化できる。
【符号の説明】
【0036】
1…クレンメ 3…主部 5…中間部
7…逃げ窓 9…対向部 9a…対向面部
9b…セット壁 9c…係止凸条 11…固定手段
11a…挟み片 11b…係止爪 11c…係止段差
13…軸受け 13a…挿通口 15…対向部
15a…対向面部 15b…セット壁 15c…係止凸条
15d…上端面 17…姿勢ガイド壁 17a…長さ方向姿勢ガイド壁
17b…幅方向姿勢ガイド壁 19…ナット部 21…サイドアーム
21a…アーム本体 21b…段差 21c…補強部
21d…係止片 21e…突出片 23…軸
23a…中間軸 23b…両側軸 25…ネジ部
25a…ネジ軸 25b…頭部
T…チューブ X…曲げ中心 Y…折り中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11