(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115166
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20230810BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D75/62 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105265
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019074753の分割
【原出願日】2019-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
(57)【要約】
【課題】自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジ加熱調理が可能な包装袋において、開封に際しての切り裂き線が包装袋の胴部の表裏で方向が完全に一致せず、ずれが生じる場合にも、容易な開封、切り裂き線による分離が可能な包装袋を提供することを課題とする。
【解決手段】周縁部のいずれか一辺のシール部の一部は、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部となっており、この張り出しシール部は、加熱調理時においての自動蒸気抜き機構であって、この一辺のシール部に対向する、他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあることを特徴とする包装袋である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジによる加熱調理が可能な包装袋であって、
プラスチックフィルムを基材として、少なくともシーラント層を有する積層体を、シーラント層同士を対向させて重ね、包装袋の周縁部をシールして製袋された包装袋であり、
周縁部のいずれか一辺のシール部の一部は、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部となっており、
前記張り出しシール部は、加熱調理時においての自動蒸気抜き機構であって、
前記いずれか一辺のシール部に対向する他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあり、
前記積層体には、直進カット性を有する、プラスチックフィルム層がさらに含まれていることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記積層体には、プラスチックフィルムの表面に、無機化合物を蒸着で膜形成した、ガスバリアフィルム層がさらに含まれることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
張り出しシール部の縦幅(a)と切り裂き線のずれ(b)が以下のような関係にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装袋。
張り出しシール部の縦幅(a)>切り裂き線のずれ(b)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関するものである。特にプラスチックフィルムを基材とする積層体からなる包装袋である。この包装袋は、開封のための引き裂きにおいて、表裏の積層体の引き裂き線が、表側胴部と後ろ側胴部でずれている場合においても、引き裂き線が対辺のシール部で止まることなく、引き裂きによる包装袋の開封、分離を容易に行なうことのできる包装袋に関するものである。
【0002】
また本発明による包装袋は、電子レンジによる加熱調理に使用することのできるものであり、加熱によって発生した水蒸気を自動的に外部に排出する、自動蒸気抜き機構をそなえ、かつ加熱調理後の手指を用いた引き裂きによる開封が、容易に可能な包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0003】
包装材料の一種である包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする単体または積層体から構成されるものが広く普及しており、さまざまな形態のものが、幅広い用途に用いられており、現代生活にとっては不可欠なものとなっている。
【0004】
例えば液体容器としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられているほか、日用品やトイレタリーの分野でも、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。液体容器のほかにも、様々な用途展開がなされている。
【0005】
包装袋の利点は、缶や瓶などの容器に比べて、価格が安いことや、要求品質によってきめ細かい材料設計で対応できる点、あるいは内容物充填前および流通や保管においても軽量で省スペースであることが挙げられる。また包装袋は、廃棄物を減らすという観点からは環境適応型であるといえる。
【0006】
また表面から見える層への高精細の印刷によって、商品のイメージアップを図ることができ、内容物に関する必要な情報を表示することが可能であり、バーコードの印刷などは、商品の流通やマーケティング情報の源泉ともなっている。
【0007】
包装袋の中には、自立性を持たせたのや、電子レンジによる加熱調理を可能にしたもの、内容物の保存性を高めたものなど、機能面でも進化が続いている。
【0008】
たとえば、電子レンジによる加熱調理において、消費者の使い勝手のよさという視点からは、加熱調理によって包装袋内部で発生した水蒸気が、内圧の急激な上昇を招くために、何らかの蒸気抜き機構を有していることが好適とされる。
【0009】
さらに加熱調理後の包装袋の、手指を用いての引き裂きによる開封に際しては、残留した水蒸気によるやけど防止や、開封口の開封性の容易さに加えて、開封口の形状の保持などが重要視されている。
【0010】
特許文献1には、蒸気抜き機構を備えた包装袋の、引き裂き開封においての、容易性を改善しようとする包装袋が提案されているが、引裂性ポリエステル系樹脂フィルムによって、引き裂き線の方向の精度を高めようとする提案である。
【0011】
しかしながら、材料面での選択の自由度が制限されるおそれがあることに加えて、胴部表裏の引き裂き線の方向の一致を必ずしも担保するものではない。また、引き裂きが対辺に達した際には、シール部に突き当たるため、この部分の引き裂き、包装袋の分離は必ずしも容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジ加熱調理が可能な包装袋において、開封に際しての切り裂き線が包装袋の胴部の表裏で方向が完全に一致せず、ずれが生じる場合にも、容易な開封、切り裂き線による分離が可能な包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジによる加熱調理が可能な包装袋であって、
プラスチックフィルムを基材として、少なくともシーラント層を有する積層体を、シーラント層同士を対向させて重ね、包装袋の周縁部をシールして製袋された包装袋であり、
周縁部のいずれか一辺のシール部の一部は、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部となっており、
前記張り出しシール部は、加熱調理時においての自動蒸気抜き機構であって、
前記いずれか一辺のシール部に対向する他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあり、
前記積層体には、直進カット性を有する、プラスチックフィルム層がさらに含まれていることを特徴とする包装袋である。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、
前記積層体には、プラスチックフィルムの表面に、無機化合物を蒸着で膜形成した、ガスバリアフィルム層がさらに含まれることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋である。
また、請求項3に記載の発明は、
張り出しシール部の縦幅(a)と切り裂き線のずれ(b)が以下のような関係にあるこ とを特徴とする、請求項1または2に記載の包装袋である。
張り出しシール部の縦幅(a)>切り裂き線のずれ(b)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジ加熱調理が可能な包装袋において、開封に際しての切り裂き線が包装袋の胴部の表裏で方向が完全に一致せず、ずれが生じる場合にも、容易な開封、切り裂き線による分離が可能な包装袋を提供することが可能である。
【0017】
これは本発明において、自動蒸気抜きが機構が、包装袋の周縁部のいずれか一辺のシール部の一部が、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部になっており、包装袋の電子レンジによる加熱調理時に、水蒸気の発生によって内圧が上昇し、張り出しシール部のシールが剥離して、内部の水蒸気を外部に排出する機構である。
【0018】
また、加熱調理が終了してのち、包装袋を開封して、切り裂き分離して開封口を確保しようとする際には、切り裂き線はシール部の剥離部分に到達して、その引き裂き、分離はより容易なものとなる効果を有するものである。すなわちシール部の剥離部分は、表裏胴部の積層体が二重に重なっておらず、引き裂きにおいて容易に引き裂きが可能であることによる。
【0019】
また、包装袋の引き裂きは、前述のように、一辺のシール部に対向する、他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあることによって、切込みを起点として引き裂きを開始することによって、正対する張り出しシール部に切り裂き線が、表裏胴部において、多少のずれが生じる場合においても、シール部の剥離部分への到達を可能にする効果を有する。
【0020】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、積層体には、切込みから張り出しシール部にいたる方向に直進カット性を有する、プラスチックフィルム層がさらに含まれていることによって、より直進カット性が担保され、開封に支障の出ない包装袋とすることができる。
【0021】
すなわち、周縁部のいずれか一辺のシール部には、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状のシ張り出しシール部が、加熱調理の際の自動蒸気抜き機構として設けてあるために、この部分に正対する切込みからの、表裏のカット線は一定の範囲であれば、切り残すことなくカットすることが可能で、包装袋の開封、分離は容易かつ確実なものとすることができる。
【0022】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、積層体には、プラスチックフィルムの表面に、無機化合物を蒸着で膜形成した、ガスバリアフィルム層がさらに含まれることによって、内容物の保存性を高め、環境による内容物の変質などの変化を避けることが可能になる。
【0023】
また、このようなガスバリアフィルム層を用いる場合には、金属箔などを用いたガスバリア層と異なり、スパークの発生など、電子レンジによる加熱調理に支障をきたすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は本発明に関わる包装袋の一実施態様において、全体の形状と、切込みと張り出しシール部の位置関係を説明するための、平面摸式図である。
【
図2】
図2は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理の際に、自動蒸気抜き機構がはたらく様子を説明するための、平面摸式図である。
【
図3】
図3は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理後に、包装袋を切り裂いて開封する様子を説明するための、平面摸式図である。
【
図4】
図4は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理後に、包装袋を切り裂いて開封したのち包装袋を分離した様子を説明するための、平面摸式図である。
【
図5】
図5は本発明に関わる包装袋を構成する積層体の一実施態様について説明するための、部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を
図1~
図5を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0026】
図1は本発明に関わる包装袋の一実施態様において、全体の形状と、切込みと張り出しシール部の位置関係を説明するための、平面摸式図である。
【0027】
本発明は、自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジによる加熱調理が可能な包装袋(100)に関わるものである。
図1に示す例は、表側胴部(17)側から見た平面図である。
【0028】
包装袋(100)は、プラスチックフィルムを基材として、少なくともシーラント層を有する積層体を、シーラント層同士を対向させて重ね、包装袋(100)の周縁部をシールして製袋された包装袋(100)であって、
図1に示す例においては、4方の周縁部をシールして略矩形の包装袋(100)に製袋した例である。
【0029】
自動蒸気抜き機構は、周縁部のいずれか一辺のシール部の一部において、包装袋(100)内側方向に湾曲して張り出した形状の、張り出しシール部(3)によるものであり、
図1に示す略矩形の包装袋の例においては、向かって右側部のシール部(2)の中央部分に張り出しシール部(3)が設けてある。
【0030】
この張り出しシール部(3)は、電子レンジによる加熱調理においての自動蒸気抜き機構であって、加熱によって内部に水蒸気が発生し、その体積膨張によって包装袋が膨らんで、同時に内圧が上昇することによって、この部分から水蒸気を包装袋外部に放出する機構となっている。
【0031】
したがってこの張り出しシール部(3)は、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱、もしくはシール幅が細くシールすることができ、内圧が上昇することによって、この部分のシールが、破壊され胴部を構成する表裏の積層体のシールがはがれて、包装袋(100)内部と外部とが、剥離部分でつながり、この部分から蒸気抜きが行われる。
【0032】
シール強度の脆弱化は、その手段方法について特段の制約を設けるものでではない。たとえば、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱にシールされた状態は、シール条件の調整、またシール時にこの部分に、脆弱化に有効な層を挿入するなどの方法によって実現することが可能である。
【0033】
また他のシール部分に比べて、シール幅が細くシールされた状態は、シールバーの形状や幅の調整によって実現することが可能である。
【0034】
すなわち、この張り出しシール部(3)は、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱に、もしくはシール幅が細く、あるいはその両方でシールされていることによって、電子レンジによる加熱調理において、自動蒸気抜き機構として有効であることをその特徴とする。
【0035】
また、本発明においては、張り出しシール部を設けた、一辺のシール部に対向する、他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあるのであって、
図1に示す例においては、右側部のシール部(2)に設けてある張り出しシール部(3)に正対する、左側部のシール部(1)の中央部分に、切込み(4)を設けてある。
【0036】
この位置関係は、包装袋(100)を手指によって切り裂いて開封しようとする際に、切込み(4)を起点として切り裂きを行い、切り裂きが張り出しシール部(3)に到達して、さらに包装袋(100)の胴部右側端部(9)までを切り裂くことによって、包装袋(100)の分離を意図しており、完全に分離することによって、開口部からの内容物の取り出しなどに、支障が出ないようにすることを意図している。
【0037】
また、切込み(4)は左側部のシール部(1)の中央部分に、設けてあるが、シール部は表裏の積層体がシールされ二重になって、切り裂きに対しては、堅牢になっている部分であるが、切込み(4)が設けてあることによって、容易な切り裂きのきっかけとして有効に作用する。
【0038】
図2は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理の際に、自動蒸気抜き機構がはたらく様子を説明するための、平面摸式図である。
【0039】
したがって、この包装袋(100)は、例えば食品などの加熱調理を目的とすることが可能であって、内容物の食品に含まれる水分を、電子レンジの高周波によって加熱調理して食用に供することを意図するものであって、加熱調理に際して発生する水蒸気は一定量の発生のあと、それ自身が作り出す内圧の上昇によって、自動蒸気抜き機構によって包装袋(100)外部に排出される。
【0040】
すなわち、
図1および
図2に示す例において、電子レンジによる加熱調理時に、加熱によって包装袋(100)内部に内容物からの水蒸気が発生し、その体積膨張によって包装袋(100)が膨らんで、同時に内圧が上昇する。
【0041】
このとき体積膨張は、包装袋(100)の内部空間の体積中心(8)から、3次元の放射状に起こるのであって、
図2に示す例においては、体積中心(8)からの、8本の矢印で示される。この体積膨張によって、張り出しシール部(3)においては、そのシール部、特に
図2中、縦方向のシール部に圧力が加わり、表裏の積層体に対しては剥離の力として作用する。
【0042】
たとえば、
図2に示す例において包装袋は周縁部をシールされており、水蒸気による体積膨張が発生したとしても、内部の圧力が低い間は、
図2に示す略矩形の形状を、3次元に膨らませた形状に変形することは可能である。
【0043】
しかしながらこの放射状の3次元の体積膨張は、さらに球形の膨張をしようとするために、包装袋の拡張の余地とは齟齬を生じる結果となる。
【0044】
このとき、張り出しーシール部(3)は包装袋(100)の内側に向けて湾曲した形状であるために、体積中心(8)により近い位置になるために、3次元の放射状の体積膨張によって、
図2に示す例においては、
図2に向かって前後方向に、剥離させようとする圧力をより強く受けるために、この部分に応力集中がより激しくなり、張り出しーシール部(3)のシール部分が剥離を起こすことになる。
【0045】
また、
図2においては、この部分は、剥離部分(5)として示されており、剥離によって包装袋(100)の内部と外部とが、この剥離部分(5)でつながることによって、自動蒸気抜き機構となる。
図2の8本の矢印のうち、着色した一本の矢印の方向に蒸気抜きが行われ、水蒸気(40)が、張り出しシール部(3)の剥離部分(5)から外部に噴出する。
【0046】
すなわち、この部分が自動蒸気抜き機構となることによって、包装袋(100)の内圧は急激に減少して、包装袋(100)のその他の、周縁部のシール部においては、このような剥離が発生することはない。
【0047】
さらに本発明においては、この張り出しシール部(3)は、他の周縁部のシール部分に比べて、シール強度が脆弱、もしくはシール幅が細く、またはその両方でシールされている。そのため、体積膨張によるシール部の破壊、剥離は、より安定して、この張り出しシール部(3)に発生することになるため、安定かつ確実な自動蒸気抜き機構とすることができる。
【0048】
図3は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理後に、包装袋を切り裂いて開封する様子を説明するための、平面摸式図である。
本発明においては、張り出しシール部のある一辺のシール部に対向する、他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあることを特徴の一つとする。
【0049】
すなわち、
図3に示す例においては、向かって右側部のシール部(2)の中央部分に張り出しシール部(3)が設けてあり、左側部のシール部(1)に切込み(4)があることによって、開封作業はこの切込み(4)をきっかけにして、より容易に開始することが可能である。
【0050】
切込み(4)は、
図3に示すようにV字に設けたものでもよく、開封時の切り裂きのきっかけになる限りにおいて、単にシール部に切り込みを入れただけのものとすることもできる。この切込みについては、必要に応じてその位置を、包装袋外側から容易に視認できるように包装袋胴部の外側表面に、表示を設けてもよい。
【0051】
つづいて、手指による包装袋(100)胴部の切り裂きを、切込み(4)に正対する位置の、張り出しシール部(3)に向かって行うことができる。切り裂きは、表側胴部(17)、後ろ側胴部(18)の両方に対して行われる。
【0052】
このとき、表裏の積層体において、その表側胴部の切り裂き線(6)、および後ろ側胴部の切り裂き線(7)が完全に一致するとは限らず、若干のずれが生じる場合がある。
図3に示す例においては、これを切り裂き線のずれ(b)で示してある。
【0053】
また、すでに
図2に示す例の説明において前述したとおり、張り出しシール部(3)は、シール部分が自動蒸気抜き機構として、シール部が剥離して剥離部分(5)となっており、この部分の縦方向の幅は、
図3において張り出し部の縦幅(a)である。
【0054】
すなわち、
図3に示す例のとおり、
張り出しシール部の縦幅(a)>切り裂き線のずれ(b)
の範囲であれば、2本の切り裂き線はいずれも張り出しシール部(3)の剥離部分(5)に達して、切り裂きは容易に進めることができる。
【0055】
実際、切り裂きは、切込み(4)が張り出しシール部(3)に正対する位置に設けてあり、張り出しシール部(3)の剥離部分(5)に向かって切り裂きを開始する作業であるから、張り出しシール部(3)の剥離部分(5)に到達することは、通常の引き裂き作業において容易である。
【0056】
すなわち、表側胴部(17)、後ろ側胴部(18)のいずれの切り裂き線も、張り出しシール部(3)の剥離部分(5)に到達して、さらに胴部右側端部(9)にまで到達することによって、包装袋(100)を手指による引き裂きによって、分離することが容易に可能となる。
【0057】
この張り出しシール部(3)の剥離部分(5)から、胴部右側端部(9)に至る部分では、張り出しシール部(3)から見て、包装袋(100)の外側になり、この部分はシールされておらず、表裏の積層体は別々であって、二重になってシールされている部分ではないため切り裂きは容易である。
【0058】
たとえば、切込み(4)と張り出しシール部(3)の位置関係が、本発明が規定する正対する位置関係に該当しない場合など、切り裂き線の先端が右側部のシール部(2)に直接到達する場合には、この部分は積層体のシーラントが対抗してシールされ、積層体が二重になっているために、手指による切り裂きよる、この部分の切断には困難が伴うことになる。
【0059】
図4は本発明に関わる包装袋の、一実施態様において、電子レンジ加熱調理後に、包装袋を切り裂いて開封したのち包装袋を分離した様子を説明するための、平面摸式図である。
【0060】
図1~
図3の説明で述べたようにして、電子レンジによる、包装袋(100)の内容物に対する加熱調理によって、包装袋(100)の張り出しシール部(3)において、自動蒸気抜きが行われ、切込み(4)を起点として、手指による切り裂きが行われる。
【0061】
その結果、本発明による包装袋(100)は、
図4に示すように上下に分離することが、容易に可能になる。
図4に示す例において、上下の分離は
図4中の上下方向の矢印で表している。
【0062】
図4に示す例において、表側同部の切り裂き線(6)、および後ろ側胴部の切り裂き線(7)は、切り裂き線のずれはあるものの、それぞれに、切込み(4)から張り出しシール部(3)の剥離部分(5)を経て、胴部右側端部(9)に到達している。
【0063】
このようにして包装袋(100)の分離が容易に行われることによって、加熱調理済みの包装袋(100)およびその内容物の取り扱い、また内容物の取り出しが容易になる効果が得られる。
【0064】
たとえば、一部が連続して残り、包装袋(100)が二つに分離されない状態においては、開口部の確保に支障をきたし、また内容物の取り出しや、包装袋(100)そのものの取り扱いに困難をきたす恐れがあるためである。
【0065】
図5は本発明に関わる包装袋を構成する積層体の一実施態様について説明するための、部分断面模式図である。
【0066】
前述のように、本発明は自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジによる加熱調理が可能な包装袋であって、この包装袋(100)は、プラスチックフィルムを基材として、少なくともシーラント層を有する積層体を、シーラント層同士を対向させて重ね、包装袋の周縁部をシールして製袋された包装袋(100)である。
【0067】
図5に示す例においては、積層体(30)はプラスチックフィルム基材層(11)にシーラント層(15)を有している。そのほか、積層体(30)は必要に応じて、他の層を含むことができる。
【0068】
たとえば、本発明において包装袋(100)を構成する積層体には、切込み(4)から張り出しシール部(3)にいたる方向に直進カット性を有するプラスチックフィルム層(10)を、さらに含ませることができる。
【0069】
この直線カット性を有するプラスチックフィルム層(10)は、例えばプラスチックフィルムを構成する、分子の配向性を利用したものなどを用いることができる。分子の配向性は、例えばフィルムの一方向の延伸などによって実現することができる。
【0070】
このような場合には、切り裂き線の直進カット性がより改善されるために、表裏の切り裂き線のずれ(b)はより小さいものとなって、張り出しの部縦幅(a)から外れる恐れはさらに小さなものとなる。
【0071】
また、本発明において包装袋(100)を構成する積層体には、プラスチックフィルム(14)の表面に、無機化合物層(13)を蒸着で膜形成した、ガスバリアフィルム(20)をさらに含ませることができる。
【0072】
これはアルミニウム箔などの金属箔をガスバリア層とする場合には、電子レンジでの加熱調理においてスパークを発生するなどの不具合が生じるのに比べて、ガスバリアフィルム(20)であれば、ガスバリア性を損なうことなく、スパークの危険を回避することが可能になる。
【0073】
積層体(30)の各層に用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
【0074】
特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルムとする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。そのほか延伸ポリアミドフィルムを用いる場合には、積層体に突き刺しに対する強靭性や、衝撃に対する強靭性を付与することができる。
【0075】
またプラスチックフィルムは、接着剤層(12)を介して他の層と積層して積層体(30)とすることができる。積層体(30)の層構成やその材料構成、厚さなどは、包装袋(100)に対する要求品質に応じて適宜設計することができる。
【0076】
また、たとえば内容物の保存性を向上させることなどを目的として、包装袋(100)を構成する積層体(30)中に、着色フィルムなど紫外線を遮蔽する不透明層を設けることができる。
【0077】
あるいは、前述のように積層体(30)中にガスバリア層を設けることができる。たとえば、プラスチックフィルムの表面にガスバリア層を設けてなるガスバリアフィルム(20)を用いることができる。
【0078】
またアルミニウムなどの金属箔、あるいはプラスチックフィルム表面に金属の蒸着膜を設けたものも、ガスバリア層として有効ではあるが、前述のように電子レンジでの調理には、高周波によるスパークなどが発生するために不適当である。
【0079】
ガスバリアフィルム(20)の場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0080】
ガスバリアフィルム(20)の場合、ガスバリア層は無機化合物蒸着層(13)、コーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0081】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0082】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物蒸着層(13)を形成することができる。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0083】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0084】
無機化合物層蒸着(13)は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0085】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0086】
そのため、ガスバリアフィルム(20)としてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0087】
またガスバリア層として、たとえばSiOを用いる場合にはその被膜は透明であるために、内容物を包装袋の外側から目で見ることが可能である。これらは、用途、要求品質によって適宜使い分けをすればよい。
【0088】
シーラント層(15)は、2枚の積層体をシーラント層(15)同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、包装袋(100)に製袋することを可能にする。
【0089】
シーラント層(15)の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0090】
シーラント層(15)の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体(30)上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体(30)の表面にシーラント層(15)を形成することも可能である。
【0091】
必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、プラスチックフィルムを基材とする積層体中の、包装袋外側から見える層に印刷インキ層(16)を設けることができる。印刷インキ層(16)は包装袋(100)、すなわち積層体(30)の最外層に設けるのでも構わない。
【0092】
また印刷インキ層(16)は、包装袋(100)の一部に設けるのでもよく、また包装袋(100)の全面に渡って設けるのでもよい。あるいは、印刷インキ層(16)を用いずに表示部を設ける方法としては、たとえば包装袋(100)の表面に印刷されたシールを貼着することも可能である。
【0093】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、特段の制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、あるいは食品容器としての安全性などを考慮すれば適宜選択してよい。
【0094】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0095】
このように本発明によれば、包装袋の周縁部のいずれか一辺のシール部の一部は、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部となっており、この張り出しシール部は、加熱調理時においての自動蒸気抜き機構であってこの張り出しシール部は、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱に、もしくはシール幅が細く、あるいはその両方でシールされており、この一辺のシール部に対向する、他の一辺のシール部において、張り出しシール部に正対する位置に、切込みが設けてあることによって、自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジ加熱調理が可能な包装袋において、開封に際しての切り裂き線が包装袋の胴部の表裏で方向が完全に一致せず、ずれが生じる場合にも、容易な開封、切り裂き線による分離が可能な包装袋を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1・・・左側部のシール部
2・・・右側部のシール部
3・・・張り出しシール部
4・・・切込み
5・・・剥離部分
6・・・表側同部の切り裂き線
7・・・後ろ側胴部の切り裂き線
8・・・体積中心
9・・・胴部右側端部
10・・・直進カット性を有するプラスチックフィルム層
11・・・プラスチックフィルム基材層
12・・・接着剤層
13・・・無機化合物蒸着層
14・・・プラスチックフィルム
15・・・シーラント層
16・・・印刷インキ層
17・・・表側胴部
18・・・後ろ側胴部
20・・・ガスバリアフィルム
30・・・積層体
40・・・水蒸気
100・・・包装袋
a・・・張り出しシール部の縦幅
b・・・切り裂き線のずれ
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動蒸気抜き機構を有して、電子レンジによる加熱調理が可能な包装袋であって、
第1プラスチックフィルム層と、第2プラスチックフィルム層と、第3プラスチックフィルム層と、シーラント層とがこの順に積層された積層体を、シーラント層同士を対向させて重ね、包装袋の周縁部をシールして製袋された包装袋であり、
周縁部のいずれか一辺のシール部の一部は、包装袋内側方向に湾曲して張り出した形状の張り出しシール部となっており、
前記張り出しシール部は、加熱調理時においての自動蒸気抜き機構であって、
前記いずれか一辺のシール部に対向する他の一辺のシール部において、切込みが設けてあり、
前記第1プラスチックフィルム層、前記第2プラスチックフィルム層及び前記第3プラスチックフィルム層のうちの一つのプラスチックフィルム層は、直進カット性を有することを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記第3プラスチックフィルム層の前記第2プラスチックフィルム層側の面には、無機化合物蒸着層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記第2プラスチックフィルム層が、前記直進カット性を有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の包装袋。
【請求項4】
張り出しシール部の縦幅(a)と切り裂き線のずれ(b)が以下のような関係にあることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の包装袋。
張り出しシール部の縦幅(a)>切り裂き線のずれ(b)