(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115300
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20230810BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20230810BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106934
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2022111198の分割
【原出願日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019213556
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(72)【発明者】
【氏名】川路 聡
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐東 将行
(57)【要約】
【課題】機器のコストを低減しつつターゲットの検出精度を向上得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、送信波を送信する送信アンテナと、送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、受信信号の利得を調整する利得調整部と、を備える。制御部は、送信波を、その数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御する。利得調整部は、そのモードに応じて受信信号の受信利得を異ならせる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器であって、
前記制御部は、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御し、
前記利得調整部は、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせる、電子機器。
【請求項2】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器の制御方法であって、
前記制御部が、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御するステップと、
前記利得調整部が、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項3】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器に適用されるプロクラムであって、
前記制御部に、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御させるステップと、
前記利得調整部に、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作させるステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項4】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器であって、
前記制御部は、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御し、
前記利得調整部は、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせる、電子機器。
【請求項5】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器の制御方法であって、
前記制御部が、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御するステップと、
前記利得調整部が、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項6】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器に適用されるプロクラムであって、
前記制御部に、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御させるステップと、
前記利得調整部に、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作させるステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年11月26日に日本国に特許出願された特願2019-213556の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0004】
また、送信された電波が所定の物体に反射した反射波を受信することで、当該物体の存在などを検出する技術について、種々の提案がされている。例えば特許文献1は、送信波の送信及び反射波の受信を行う1アンテナ方式の送受信共用レーダを開示している。また、例えば特許文献2は、反射波の振幅が大きい対象物と小さい対象物とを検出する車載用のレーダ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-294092号公報
【特許文献2】特開2014-2053号公報
【発明の概要】
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える。
前記制御部は、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御する。
前記利得調整部は、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせる。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器の制御方法であって、
前記制御部が、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御するステップと、
前記利得調整部が、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作するステップと、
を含む。
【0008】
一実施形態に係るプログラムは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、物体検出範囲を示す検出距離をL、前記距離FFT処理におけるフーリエ変換のポイント数をNとして、L/Nに基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器に適用されるプロクラムであって、
前記制御部に、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御させるステップと、
前記利得調整部に、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作させるステップと、
を実行させる。
【0009】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える。
前記制御部は、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御する。
前記利得調整部は、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせる。
【0010】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器の制御方法であって、
前記制御部が、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御するステップと、
前記利得調整部が、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作するステップと、
を含む。
【0011】
一実施形態に係るプログラムは、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて距離FFT処理を行うことにより、前記送信波を反射する物体を検出し、分解能に基づいて決定される数を算出する制御部と、
前記受信信号の利得を調整する利得調整部と、
を備える電子機器に適用されるプロクラムであって、
前記制御部に、前記送信波を、前記数が異なる少なくとも2つのモードで送信するように制御させるステップと、
前記利得調整部に、前記モードに応じて前記受信信号の受信利得を異ならせるように動作させるステップと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
【
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る電子機器の物体検出範囲を説明する図である。
【
図5】一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示すである。
【
図6】一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の他の例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る電子機器による物体検出の距離について説明する図である。
【
図8】一実施形態に係る電子機器の各モードにおける物体検出範囲の例を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る電子機器の物体検出距離と受信信号の相対受信電力との関係の一例を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る電子機器の送信波の1フレームにおいて異なるモードの送信信号を設定する例を説明する図である。
【
図11】一実施形態に係る電子機器の各モードにおける仕様の一例を示す図である。
【
図12】一実施形態に係る電子機器における受信利得の調整を説明する図である。
【
図13】一実施形態に係る電子機器の各モードにおける受信信号の相対受信電力の一例を示す図である。
【
図14】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図15】一実施形態に係る電子機器の他の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述したレーダのように、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、機器のコストを増大させずに、ターゲットを検出する精度を向上することができれば、有益である。本開示の目的は、機器のコストを低減しつつターゲットの検出精度を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。一実施形態によれば、機器のコストを低減しつつターゲットの検出精度を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0015】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、消防車、ヘリコプター、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。
【0016】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0018】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0019】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0020】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば
図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲットとして検出することができる。
【0021】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0022】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0023】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、家、ビル、橋などの建造物、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。また、物体200は、車道にあるものだけではなく、歩道、農場、農地、駐車場、空き地、道路上の空間、店舗内、横断歩道、水上、空中、側溝、川、他の移動体の中、建物、その他の構造物の内部若しくは外部など、適宜な場所にあるものとしてよい。本開示において、センサ5が検出する物体は、無生物の他に、人、犬、猫、及び馬、その他の動物などの生物も含むとしてもよい。本開示のセンサ5が検出する物体は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含むとしてもよい。
【0024】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれでもよい。移動体100の内部とは、例えば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、車内の空間内、又は、これらの任意の組み合わせとしてもよい。
【0025】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0026】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0027】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部40に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM-CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0028】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A~30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0029】
制御部10は、距離FFT処理部11、距離検出判定部12、速度FFT処理部13、速度検出判定部14、到来角推定部15、及び物体検出部16を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0030】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0031】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、利得調整部35、及びAD変換部36を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0032】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0033】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0034】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0035】
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0037】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、例えば制御部10によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10又は記憶部40から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0038】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0039】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0040】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0041】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0042】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2などは、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0043】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0044】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0045】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号生成部21は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号生成部21は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0046】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0047】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0048】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0049】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。すなわち、送信アンテナ25は、送信波Tを送信してよい。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0050】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25を備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、
図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0052】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものとしてよい。すなわち、受信アンテナ31は、送信波Tが反射された反射波Rを受信してよい。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0053】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0054】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0055】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0056】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0057】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、利得調整部35に供給される。
【0058】
利得調整部35は、IF部34によって周波数変換されたビート信号の利得(ゲイン)を調整する。利得調整部35は、例えば記憶部40に記憶された利得の情報に基づいて、信号の利得を調整してよい。利得調整部35は、送信信号の各フレームにおける複数の時間的な区分ごとに、受信信号の利得を調整してよい。
【0059】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35f、受信信号の利得を調整してよい。利得調整部35による受信信号の利得の調整については、さらに後述する。利得調整部35によって利得が調整されたビート信号は、AD変換部36に供給される。
【0060】
AD変換部36は、利得調整部35から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部36は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部36によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部36によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0061】
距離FFT処理部11は、AD変換部36から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0062】
距離FFT処理部11は、AD変換部36によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部36から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部36によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、一定誤警報確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))による検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0063】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200をターゲットとして検出することができる。一実施形態において、上述のような動作は、電子機器1の制御部10が行うものとしてよい。
【0064】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部13に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、距離FFT処理部13及び/又は物体検出部16などにも供給されてよい。
【0065】
距離検出判定部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果に基づいて、距離についての判定処理を行う。例えば、具体的には、距離検出判定部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理された結果におけるピークが所定の閾以上である場合に、当該距離に物体が存在すると判定してよい。このように、距離検出判定部12は、所定の距離において、ターゲットを検出したか否かを判定する。
【0066】
速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部13は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部13は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。速度FFT処理部13は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0067】
速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部13は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、速度検出判定部14に供給されてよい。また、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果は、到来角推定部15及び/又は物体検出部16などにも供給されてよい。
【0068】
速度検出判定部14は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、速度についての判定処理を行う。例えば、具体的には、速度検出判定部14は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理された結果におけるピークが所定の閾以上である場合に、当該速度に物体が存在すると判定してよい。このように、速度検出判定部14は、所定の速度において、ターゲットを検出したか否かを判定する。
【0069】
到来角推定部15は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部15は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0070】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部15によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部16に供給されてよい。
【0071】
物体検出部16は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部13、及び到来角推定部15の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部16は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部16において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、例えばECU50などに供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0072】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0073】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0074】
次に、一実施形態に係る電子機器1によるターゲット検出処理について説明する。
【0075】
近年、自動車のような車両などの周辺に存在する障害物などを検出可能なセンサには、例えば、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging, Laser Imaging Detection and Ranging)、又は超音波センサなど、各種のものが存在する。これらのセンサの中で、障害物を検出する精度及び信頼度、並びにコストなどの観点から、ミリ波方式のレーダが採用されることが多い。
【0076】
ミリ波レーダを使用して車両周辺の障害物等を検出する技術として、例えば、死角検知(Blind Spot Detection:BSD)、後退中又は出庫時の横方向検知(Cross traffic alert:CTA)、フリースペース検知(Free space detection:FSD)などがある。これらの検知においては、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状に依存する電波放射範囲を予め設定して、物体検出範囲を決定するのが一般的である。すなわち、各レーダのそれぞれにおいて、それぞれの用途又は機能などに応じて、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状は予め決まっており、物体検出範囲も予め規定されている仕様が一般的である。このため、複数の異なるレーダの機能を実現するためには、複数の異なるレーダセンサが必要になる。
【0077】
しかしながら、用途又は機能に応じて複数のレーダセンサをそれぞれ用意するのでは、コストの観点から不利である。また、例えば、アンテナの物理的形状が予め決まっていて放射範囲も決まっていると、そのアンテナの用途及び機能を変更することは困難である。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、放射範囲内の対象物全てを検出する場合、処理する情報量が増大する。この場合、不必要な物体も対象物として誤検出してしまう可能性があるため、検出の信頼度が低下し得る。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、センサの取り付け数を増やすと、車両(主にハーネス)の重量が増大するため燃費が低下したり、消費電力が増大するため燃費が低下したりし得る。さらに、複数のレーダセンサを用いて検出を行うと、センサ同士の間で遅延が発生し得るため、このような検出に基づいて自動運転又は運転アシストなどを行うと、処理に時間がかかり得る。これは、レーダの更新レートよりCANの処理速度が遅く、さらにフィードバックにも時間を要するためである。また、物体検出範囲の異なる複数のセンサを用いて検出を行うと、制御が煩雑になり得る。
【0078】
したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサを複数の機能又は用途で使用可能にする。また、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのような動作を可能にする。
【0079】
図4は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。
【0080】
図4に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載しているものとする。また、
図4に示すように、移動体100には、後部左側に少なくとも1つのセンサ5が設置されているものとする。また、
図4に示すように、センサ5は、移動体100に搭載されたECU50に接続されている。
図4に示す移動体100には、後部左側以外にも、後部左側に設置されたセンサ5と同様に動作するセンサ5が設置されていてもよい。以下の説明においては、後部左側に設置された1つのセンサ5のみ説明し、他のセンサについては説明を省略する。また、以下の説明において、電子機器1を構成する各機能部の制御は、制御部10、位相制御部23、及びECU50の少なくともいずれかによって制御することができるものとする。
【0081】
図4に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかを選択して物体を検出することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかに切り替えて物体を検出することができる。
図4においては、一実施形態に係る電子機器1(特にセンサ5)が送信する送信信号及び電子機器1(特にセンサ5)が受信する受信信号によって物体を検出する範囲を表している。
【0082】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば駐車支援(Parking assist)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(1)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(1)は、例えば駐車支援(Parking assist)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えばフリースペース検知(FSD)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(2)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(2)は、例えばフリースペース検知(FSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
【0083】
また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば出庫時衝突検知(CTA)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(3)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(3)は、例えば出庫時衝突検知(CTA)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば死角検知(BSD)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(4)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(4)は、例えば死角検知(BSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
【0084】
さらに、一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図4に示す物体検出範囲(1)から(4)までのうち複数の範囲を、任意に切り替えて物体を検出することができる。この場合に切り替えられる複数の範囲は、上述したように、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて決定されてもよいし、制御部10又はECU50などの指示に基づいて決定されてもよい。
【0085】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、物体検出範囲(1)から(4)までうちいずれか複数の範囲によって物体検出を行う場合、制御部10は、任意の情報に基づいて、いずれか複数の物体検出範囲を決定してよい。また、複数の物体検出範囲が決定されると、制御部10は、決定された複数の物体検出範囲において送信信号の送信及び受信信号の受信を行うための各種のパラメータを設定してよい。制御部10が設定する各種のパラメータは、例えば、記憶部40に記憶しておいてよい。
【0086】
このようなパラメータは、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、制御部10が適宜推定するパラメータとしてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、制御部10は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当なパラメータを取得してもよい。
【0087】
このように、一実施形態において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出する。また、一実施形態において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲(例えば
図4の物体検出範囲(1)から(4)まで)を可変にする。
【0088】
さらに、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲を切り替え可能にしてよい。例えば、制御部10は、物体検出範囲(3)において物体検出を行っていたところ、物体検出を行う範囲を物体検出範囲(3)から物体検出範囲(2)に切り替えてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、物体を検出する用途及び機能(例えば駐車支援(PA)及び死角検知(BSD)などのような)の少なくとも一方に応じて、複数の物体検出範囲を可変にしてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、後述のように、複数の物体検出範囲を微小時間の経過に伴って可変にしてよい。
【0089】
また、一実施形態において、制御部10は、物体の検出結果に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、物体検出によってすでに所定の物体が検出されている場合、制御部10は、その検出された物体の位置に応じて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかにおける送信信号及び受信信号のみを処理してもよい。
【0090】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばミリ波レーダなどによる物体検出において、検出範囲の切り出し(設定及び/又は切り替え)を行うことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の物体検出範囲において物体を検出したい状況に柔軟に対応することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、物体の検出範囲を予め広く設定しておいて、電子機器1によって検出される距離及び/又は角度などの情報に基づいて、検出の必要な範囲のみの情報を切り出すことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、必要な検出範囲の情報を、処理負荷を増加させずに処理することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出の利便性を向上させることができる。
【0091】
一実施形態に係る電子機器1は、
図4に示したように、送信信号及び受信信号による物体検出範囲を可変にするが、さらに当該物体検出範囲に送信波Tのビームを向けるようにしてもよい。これにより、所望の切り出し範囲における物体の検出を高精度で行うことができる。
【0092】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、死角検知(BSD)の用途又は機能として、
図4に示す複数の検出範囲のうち物体検出範囲(4)を選択して物体検出を行うことができる。一実施形態に係る電子機器1は、さらに、物体検出範囲(4)の方向に向けて、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームを形成(ビームフォーミング)してよい。例えば遠方の物体検出を行う場合、その方向に複数の送信アンテナ25から送信する送信波のビームによってビームフォーミングを行うことで、物体検出範囲を高精度にカバーすることができる。
【0093】
図5及び
図6は、一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示す図である。
【0094】
一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図5に示すように、例えば2つの送信アンテナ25A及び25A’を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図5に示すように、4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dを備えてよい。
【0095】
4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dは、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の受信アンテナ31を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の受信アンテナ31によって受信することで、電子機器1は、反射波Rが到来する方向を推定することができる。ここで、送信波Tの波長λは、送信波Tの周波数帯域を例えば77GHzから81GHzまでとする場合、その中心周波数79GHzの送信波Tの波長としてもよい。
【0096】
また、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0097】
また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図6に示すように、例えば4つの送信アンテナ25A、25A’、25B、及び25B’を備えてもよい。
【0098】
ここで、2つの送信アンテナ25A及び25Bは、
図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、2つの送信アンテナ25A’及び25B’も、
図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、水平方向にも変化させることができる。
【0099】
一方、
図6に示すように、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、
図6に示すように、2つの送信アンテナ25B及び25B’も、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、
図6に示す配置においても、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0100】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行う場合、複数の送信波Tが送信される際の経路差に基づいて、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにしてよい。一実施形態に係る電子機器1において、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために、例えば位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0101】
複数の送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために制御する位相の量は、当該所定の方向に対応させて、記憶部40に記憶しておいてよい。すなわち、ビームフォーミングを行う際のビームの向きと、位相の量との関係は、記憶部40に記憶しておいてよい。
【0102】
このような関係は、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、位相制御部23が適宜推定する関係としてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、位相制御部23は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当な関係を取得してもよい。
【0103】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行うための制御は、制御部10及び位相制御部23の少なくとも一方が行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、少なくとも位相制御部23を含む機能部を、送信制御部とも記す。
【0104】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ25は、複数の送信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナ31も、複数の受信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成(ビームフォーミング)するように制御してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の方向にビームを形成してもよい。
【0105】
また、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は垂直方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、垂直方向成分を含んで変化させてもよい。
【0106】
さらに、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は水平方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでもよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、水平方向成分を含んで変化させてもよい。
【0107】
また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の少なくとも一部をカバーする方向にビームを形成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うように、複数の送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0108】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナ25から出力される広周波数の帯域信号(例えばFMCW信号)の周波数情報に基づいて位相の補償値を算出し、複数の送信アンテナのそれぞれに周波数依存の位相補償を実施することができる。これにより、送信信号の取り得る全周波数帯域において、特定の方向に対してビームフォーミングを高精度に行うことができる。
【0109】
このようなビームフォーミングによれば、物体の検出が必要な特定の方向において、物体を検出可能な距離を拡大することができる。また、上述のようなビームフォーミングによれば、不要な方向からの反射信号を低減することができる。このため、距離・角度を検出する精度を向上させることができる。
【0110】
図7は、一実施形態に係る電子機器1によって実現されるレーダの検出距離の種別を説明する図である。
【0111】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、物体検出範囲の切り出し及び/又は送信波のビームフォーミングを行うことができる。このような、物体検出範囲の切り出し及び送信波のビームフォーミングの少なくとも一方を採用することで、送信信号及び受信信号によって物体を検出可能な距離の範囲を規定することができる。
【0112】
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr1の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r1は、例えば超短距離レーダ(Ultra short range radar:USRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。また、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr2の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r2は、例えば短距離レーダ(Short range radar:SRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。さらに、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr3の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r3は、例えば中距離レーダ(Mid range radar:MRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば範囲r1、範囲r2、及び範囲r3のいずれかの範囲を適宜切り替えて物体検出を行うことができる。このように検出距離の異なるレーダは、検出距離が長くなればなるほど、距離の測定精度が低くなる傾向にある。
【0113】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する距離の範囲を、複数の物体検出範囲のいずれかに応じて設定してもよい。
【0114】
次に、一実施形態に係る電子機器1において送信される送信波Tの異なるモードについて説明する。
【0115】
一般的に、送信波Tが物体に反射した反射波Rとして受信される受信信号の信号強度は、検出する物体までの距離に応じて異なる。一般に、検出する物体までの距離が遠くなるにつれて、反射波Rとして受信される受信信号の信号強度は弱くなる傾向にある。逆に、検出する物体までの距離が近くなるにつれて、反射波Rとして受信される受信信号の信号強度は強くなる傾向にある。このため、比較的近距離の物体と比較的遠距離の物体とを同時に検出しようとすると、受信信号のダイナミックレンジが比較的広くなる。すると、このような受信信号を受信して処理する回路(例えば
図2に示したAD変換部36など)において要求されるダイナミックレンジも比較的広くなる。一般に、回路において処理可能なダイナミックレンジを広くすると、コストの増大を招く傾向にある。
【0116】
そこで、一実施形態に係る電子機器1は、送信信号の各フレームにおいて少なくとも2つの時間的な区分が含まれるようにしてよい。そして、一実施形態に係る電子機器1において、このような時間的な区分において、送信波を異なるモードで送信してよい。以下説明するように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波を異なるモードで送信し、当該モードごとに受信信号の利得を調整することにより、受信信号のダイナミックレンジが所定以上に大きくならないようにする。つまり、制御部10は、送信波Tを反射波Rとして反射する物体を検出する送信信号及び受信信号を規定する各種のパラメータを設定してモードを制御するとしてよい。すなわち、制御部10は、送信アンテナ25から送信波Tを送信するための各種のパラメータ、及び受信アンテナ31から反射波Rを受信するための各種のパラメータを設定してよい。制御部10は、チャープ信号の時間に対する周波数の変化(スロープ)の値、及び/又は、サンプリングレートを設定するとしてよい。すなわち、制御部10が設定するスロープにより、レーダの距離範囲が変わる。また、制御部10が設定するサンプリングレートにより、距離精度(距離分解能)が変わる。また、制御部10の設定により、近距離3次元センシングモードと2次元ビームフォーミングモードを切り替えることもできる。近距離3次元センシングモードは垂直方向に半波長離れたアンテナを切り替えることで、3次元のセンシングを可能にする。2次元ビームフォーミングモードは、高速度検出が可能である。2次元ビームフォーミングモードは、ビームフォーミングを行うことで長距距離に飛ばすことができる。2次元ビームフォーミングモードは、ビームを絞ることで、周辺の余分な干渉を減らすことが可能である。また、制御部10は、チャープ信号の出力、位相、振幅、周波数、周波数範囲などを制御してモードを設定するとしてもよい。
【0117】
図8は、各モードにおける物体検出範囲の例を示す図である。
図8に示す物体検出範囲r1、r2、及びr3は、それぞれ、
図7に示した範囲r1、r2、及びr3と同じものとしてもよいし、異なるものとしてもよい。
【0118】
図8に示すように、物体検出範囲r1は、電子機器1の第1モードにおいて物体を検出する範囲としてよい。ここで、物体検出範囲r1は、例えば、最小検出範囲を0.2mとして、最大検出範囲を12.5mとしてよい。また、
図8に示すように、物体検出範囲r2は、電子機器1の第2モードにおいて物体を検出する範囲としてよい。ここで、物体検出範囲r2は、例えば、最小検出範囲を1mとして、最大検出範囲を50mとしてよい。また、
図8に示すように、物体検出範囲r3は、電子機器1の第3モードにおいて物体を検出する範囲としてよい。ここで、物体検出範囲r3は、例えば、最小検出範囲を5mとして、最大検出範囲を200mとしてよい。
【0119】
一実施形態に係る電子機器1は、送信信号の各フレームにおいて、上述の第1モード乃至第3モードのように、異なる送信態様で送信波を送信してよい。
図8においては、第1モード乃至第3モードのように、3つの異なる送信態様のモードの例を示してある。しかしながら、異なる送信態様のモードは、2つの異なる送信態様のモードとしてもよいし、又は3つよりも多い異なる送信態様のモードとしてもよい。また、
図8においては、第1モードから第3モードまでの順に物体検出範囲が大きくなるようにしてある。しかしながら、第1モードから第3モードまでの順に物体検出範囲が小さくなるようにしてもよい。また、必ずしも第1モードから第3モードまでの順にしたがって物体検出範囲の大きさが変化しなくてもよい。
【0120】
ここで、一実施形態に係る電子機器1において、物体が検出される距離と、当該物体に反射した反射波Rとして受信される受信信号の強度との関係について説明する。
【0121】
図9は、一実施形態に係る電子機器1の物体検出距離と受信信号の相対受信電力との関係の一例を示す図である。
図9は、物体検出距離が12.5mのときに、受信信号の強度(電力)が60dBになる状況を基準として、両者の関係の一例を示している。本開示の電子機器1において、以下に示す数値ではなく、実験等で求められた数値を使ってもよい。
【0122】
上述のように、一般に、検出する物体までの距離が遠くなるにつれて、反射波Rとして受信される受信信号の信号強度は弱くなる傾向にある。逆に、検出する物体までの距離が近くなるにつれて、反射波Rとして受信される受信信号の信号強度は強くなる傾向にある。
図9に示す例において、例えば物体検出距離が0.2mのとき、相対受信電力は131.6dBになる。また、
図9に示す例において、例えば物体検出距離が200mのとき、相対受信電力は12dBになる。このため、0.2mの距離にある物体と200mの距離にある物体とを同時に検出しようとすると、受信信号のダイナミックレンジは120dB程度になる。すなわち、このような信号を処理しようとすると、受信回路(例えば
図2に示したAD変換部36など)は120dB程度のダイナミックレンジに対応することが求められる。
【0123】
図10は、一実施形態に係る電子機器1の送信波Tの1フレームにおいて異なるモードの送信信号を設定する例を説明する図である。
【0124】
一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、送信信号の各フレームにおいて、送信波が異なるモードで送信される少なくとも2つの時間的な区分を含むように制御してよい。例えば
図10に示すように、制御部10は、送信信号のフレーム1において、第1モード乃至第3モードのように、送信波が異なるモードで送信される3つの時間的な区分を含むように制御してよい。
【0125】
図10に示すように、送信信号のフレーム1は、第1モード、第2モード、及び第3モードの3つのモードの時間的な区分を含んでいる。
図10に示すように、第1モードにおいては、チャープ信号cαがn1個含まれている。また、第2モードにおいては、チャープ信号cβがn2個含まれている。また、第3モードにおいては、チャープ信号cγがn3個含まれている。このように、第1モード乃至第3モードは、それぞれにおいて異なる(波形が異なる)チャープ信号を含んでもよい。また、第1モード乃至第3モードは、それぞれにおいて異なる個数のチャープ信号を含んでもよい。第1モード乃至第3モードのように、送信信号として送信されるチャープ信号の周波数の時間変化が異なるようにすることにより、物体検出の距離及び物体検出の分解能(検出精度)を変化させ得る。本開示において、送信信号のフレームは、3つのモードに限定されず、2つ、又は4つ以上の任意の数の時間的な区分を含んでいるとしてもよい。また、それぞれのモードにおけるチャープ信号の個数も任意の個数であるとしてもよい。
【0126】
このように、制御部10は、送信信号として送信されるチャープ信号の周波数の時間変化が異なるモードで送信波が送信されるように制御してもよい。また、制御部10は、送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出する範囲における分解能が異なるモードで送信波が送信されるように制御してもよい。また、制御部10は、送信信号として送信されるチャープ信号の単位数(すなわちチャープ信号の個数)が異なるモードで送信波が送信されるように制御してもよい。
【0127】
図10においては、フレーム2以降もフレーム1と同じ送信信号の配置とする例を示してある。しかしながら、フレーム2以降は、フレーム1と異なる送信信号の配置としてもよいし、フレーム3以降も、例えばフレーム1及びフレーム2と異なる送信信号の配置としてもよい。
図10においては、第1モード乃至第3モードの間にインターバルを設けてあるが、このようなインターバルを設けなくてもよい。また、上述のように、
図10に示す各フレームに含まれるモードの数は3つに限定されず、例えば2つとしてもよいし、3つより多くしてもよい。
【0128】
このように、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、送信信号の各フレームにおいて、送信波が異なるモードで送信される少なくとも2つの時間的な区分を含むように制御してよい。この場合、制御部10は、送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出する範囲が異なるモードで送信波が送信されるように制御してもよい。
【0129】
図11は、一実施形態に係る電子機器1の各モードにおける仕様の一例を示す図である。
図11は、第1モード乃至第3モードの各モードごとに、物体の最小検出範囲、物体の最大検出範囲、物体の検出精度(分解能)、所要ダイミックレンジ、及び受信利得の各値の設定の例を示している。
【0130】
図11に示すように、第1モード乃至第3モードの各モードにおいて、物体の最小検出範囲、物体の最大検出範囲は、
図8において説明したのと同様としてよい。すなわち、
図11に示すように、第1モードにおいて、最小検出範囲を0.2mとして、最大検出範囲を12.5mとしてよい。また、第2モードにおいて、最小検出範囲を1mとして、最大検出範囲を50mとしてよい。また、第3モードにおいて、最小検出範囲を5mとして、最大検出範囲を200mとしてよい。
【0131】
図11に示す第1モード乃至第3モードの各モードにおいて、物体の検出精度(分解能)は、例えば、上述の最大検出範囲及び最小検出範囲、並びに距離FFT処理部11におけるFFT処理のポイント数に基づいて求めることができる。例えば、距離FFT処理部11におけるFFT処理のポイント数は256ポイントであるとする。この場合、第1モードにおいて、12.5m-0.2m=12.3mの距離を、256ポイントでFFT処理するため、その検出精度(分解能)は、12.3m/256=約5cmとなる。同様に、第2モードにおいて、その検出精度(分解能)は、20cmと求めることができる。また、第3モードにおいて、その検出精度(分解能)は、80cmと求めることができる。
【0132】
次に、
図11に示す第1モード乃至第3モードの各モードにおいて求められるダイナミックレンジについて検討する。
図11においては、求められるダイナミックレンジを、単に「所要DR」と記してある。所要DRは、上述の最大検出範囲及び最小検出範囲にそれぞれ対応する相対受信電力(
図9参照)から求めることができる。
【0133】
例えば、第1モードにおいて、最小検出範囲の0.2mに対応する相対受信電力は、
図9から131.6dBであり、最大検出範囲の12.5mに対応する相対受信電力は、
図9から60dBである。このような信号のダイナミックレンジは、131.6dB-60dB=71.6dBとなる。また、第2モードにおいて、最小検出範囲の1mに対応する相対受信電力は、
図9から103.7dBであり、最大検出範囲の50mに対応する相対受信電力は、
図9から36dBである。このような信号のダイナミックレンジは、103.7dB-36dB=67.7dBとなる。また、第3モードにおいて、最小検出範囲の5mに対応する相対受信電力は、
図9から75.8dBであり、最大検出範囲の200mに対応する相対受信電力は、
図9から12dBである。このような信号のダイナミックレンジは、75.8dB-12dB=63.8dBとなる。
【0134】
図11に示すように、
図11に示す第1モード乃至第3モードの各モードにおいて求められるダイナミックレンジは、それぞれ72dBを超えない程度であることがわかる。しかしながら、これらの信号に同じ処理を施そうとすると、求められるダイナミックレンジは、12dBから131.6dBまで、すなわち依然として120dB程度になる。そこで、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35は、上述の各モードごとに、受信信号の利得を調整してよい。
【0135】
具体的には、
図11に示すように、第1モードにおいて、利得調整部35は、受信信号の利得を例えば0dBぶん調整してよい。すなわち、第1モードにおいて、利得調整部35は、例えば受信信号の利得を増減させなくてよい。また、
図11に示すように、第2モードにおいて、利得調整部35は、受信信号の利得を例えば30dBぶん調整してよい。すなわち、第2モードにおいて、利得調整部35は、受信信号の利得を例えば30dB増大させてよい。また、
図11に示すように、第3モードにおいて、利得調整部35は、受信信号の利得を例えば55dBぶん調整してよい。すなわち、第3モードにおいて、利得調整部35は、受信信号の利得を例えば55dB増大させてよい。
【0136】
図12は、一実施形態に係る電子機器1における受信利得の調整を説明する図である。
図12に示す各フレームにおける各モードは、
図10に示す各フレームにおける各モードに対応するものとしてよい。すなわち、
図10に示す第1モードにおいて送信される送信信号に対応して、利得調整部35は、
図12における第1モードに示すように、0dBの受信利得の調整を行ってよい。また、
図10に示す第2モードにおいて送信される送信信号に対応して、利得調整部35は、
図12における第2モードに示すように、30dBの受信利得の調整を行ってよい。また、
図10に示す第3モードにおいて送信される送信信号に対応して、利得調整部35は、
図12における第3モードに示すように、55dBの受信利得の調整を行ってよい。
【0137】
図13は、一実施形態に係る電子機器1の各モードにおける受信信号の相対受信電力の一例を示す図である。
図13は、第1モード乃至第3モードの各モードごとに、物体検出の距離に対応する受信信号の相対的な強度(電力)を示す図である。
図13においては、第1モード乃至第3モードの各モードごとの相対受信電力として、受信利得を調整した後の数値を示している。すなわち、
図13に示す相対受信電力は、上述のように利得調整部35による受信利得の制御を行った数値を示している。また、
図13において、数値が記載されていない欄(**と記載された欄)は、当該モードにおいてサポートされないため物体が検出されないことを意味する。
【0138】
図13に示すように、第1モードにおいて、受信信号の利得は0dBぶん調整されている。したがって、第1モードにおいて、距離0.2mにおける相対受信電力は131.6dBとなり、距離12.5mにおける相対受信電力は60dBとなる。この場合、第1モードにおいて求められるダイナミックレンジは、60dBから131.6dBまでの71.6dBとなる。
【0139】
図13に示すように、第2モードにおいて、受信信号の利得は30dBぶん調整されている。したがって、第2モードにおいて、距離1mにおける相対受信電力は133.7dBとなり、距離50mにおける相対受信電力は66dBとなる。この場合、第2モードにおいて求められるダイナミックレンジは、66dBから133.7dBまでの67.7dBとなる。
【0140】
図13に示すように、第3モードにおいて、受信信号の利得は55dBぶん調整されている。したがって、第3モードにおいて、距離5mにおける相対受信電力は130.8dBとなり、距離200mにおける相対受信電力は67dBとなる。この場合、第3モードにおいて求められるダイナミックレンジは、67dBから130.8dBまでの63.8dBとなる。
【0141】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35は、上述の各モードごとに受信信号の利得を調整してよい。また、利得調整部35は、受信信号のダイナミックレンジが所定以内になるように、各モードごとに受信信号の利得を調整してもよい。例えば、
図13に示す例のように、利得調整部35は、受信信号のダイナミックレンジが各モードにおいて75dBを超えないように、受信信号の利得を調整してもよい。
【0142】
上述のように利得を調整することで、
図13に示すように、物体検出の範囲(距離)は0.2mから200mまでとしつつ、必要なダイナミックレンジは72dB程度にとどめることができる。
図9に示した例において説明したように、0.2mから200mまでの範囲(距離)において物体を同時に検出しようとすると、必要なダイナミックレンジは120dB程度であった。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように利得を調整することにより、必要なダイナミックレンジは72dB程度になる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、機器のコストを増大させずに低減し得る。
【0143】
図13に示す例において、第1モードから第3モードまでの順に、物体検出範囲(距離)が大きくなるようにしてある。また、
図13に示す例において、第1モードから第3モードまでの順に、受信信号のダイナミックレンジが小さくなるようにしてある。このように、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35は、送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出する範囲(距離)が大きくなるにつれて受信信号のダイナミックレンジが小さくなるように、各モードごとに受信信号の利得を調整してもよい。
【0144】
また、
図13に示すように、第1モードにおける物体検出範囲(距離)は、0.2mから12.5mまでである。第2モードにおける物体検出範囲(距離)は、1mから50mまでである。第3モードにおける物体検出範囲(距離)は、5mから200mまでである。したがって、
図13に示す第1モードから第3モードまでの各モードにおいて、物体検出範囲(距離)は、重複する範囲を有している。このように、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35は、モードのそれぞれにおいて送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出する範囲が冗長されるように、各モードごとに受信信号の利得を調整してもよい。このように物体検出範囲を冗長させることにより、物体の誤検出又は未検出を低減させ得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出の精度を向上させ得る。
【0145】
図14は、一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。以下、一実施形態に係る電子機器の動作の流れを説明する。
【0146】
図14に示す動作は、例えば移動体100に搭載された電子機器1によって、移動体100の周囲に存在する物体を検出する際に開始してよい。
【0147】
図14に示す動作が開始すると、制御部10は、各モードの物体検出範囲を決定する(ステップS1)。例えば、ステップS1において、制御部10は、
図11に示すように、第1モードの物体検出範囲を0.2mから12.5mまでとしてもよい。また、例えば、ステップS1において、制御部10は、
図11に示すように、第2モードにおける物体検出範囲を1mから50mまでとしてもよい。また、例えば、ステップS1において、制御部10は、
図11に示すように、第3モードにおける物体検出範囲を5mから200mまでとしてもよい。このような物体検出範囲は、予め記憶部40に記憶しておいてもよい。ステップS1において、制御部10は、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて各モードの物体検出範囲を決定してもよいし、例えば制御部10又はECU50などの指示に基づいて各モードの物体検出範囲を決定してもよい。
【0148】
また、ステップS1に示す動作は、
図14に示す動作の開始後に初めて行う動作ではなく、
図14に示す動作が既に以前に行われた後で再び開始されたものとしてよい。再び行われたステップS1の時点で制御部10によって既に各モードの物体検出範囲が決定されている場合、制御部10は、当該決定された物体検出範囲を再び用いてもよい。
【0149】
ステップS1において各モードの物体検出範囲が決定されたら、制御部10は、各モードにおける受信信号のダイナミックレンジを算出してよい(ステップS2)。例えば、ステップS2において、制御部10は、
図11に示すように、第1モードのダイナミックレンジを60dBから131.6dBまでと算出してもよい。また、例えば、ステップS2において、制御部10は、
図11に示すように、第2モードのダイナミックレンジを36dBから103.7dBまでと算出してもよい。また、例えば、ステップS2において、制御部10は、
図11に示すように、第3モードのダイナミックレンジを12dBから75.8dBまでと算出してもよい。
【0150】
ステップS2において、制御部10は、例えば
図9に示したような対応関係に基づいて、各モードにおける受信信号のダイナミックレンジを算出してよい。また、
図9に示したような対応関係は、例えばステップS2又はステップS2の前後などにおいて制御部10が算出してもよいし、予め記憶部40に記憶させておいてもよい。
【0151】
ステップS2においてダイナミックレンジが算出されたら、制御部10は、各モードの受信信号の利得を設定する(ステップS3)。ステップS3において、制御部10は、各モードのダイナミックレンジの上限及び下限が所定の幅の数値に収まるように、当該モードの受信信号の利得を設定してよい。
【0152】
例えば、ステップS3において、制御部10は、
図13に示すように、第1モードのダイナミックレンジが60dBから131.6dBまでの71.6dBになるように、第1モードの受信信号の利得を0dBに設定してもよい。また、例えば、ステップS3において、制御部10は、
図13に示すように、第2モードのダイナミックレンジが66dBから133.7dBまでの67.7dBになるように、第2モードの受信信号の利得を30dBに設定してもよい。また、例えば、ステップS3において、制御部10は、
図13に示すように、第3モードのダイナミックレンジが67dBから130.8dBまでの63.8dBになるように、第3モードの受信信号の利得を55dBに設定してもよい。
【0153】
ステップS3において各モードの利得が設定されたら、制御部10は、各モードの物体検出範囲において物体を検出するために、送信波Tの各フレーム等ごとに、電子機器1における各種パラメータを設定する(ステップS4)。
【0154】
例えば、ステップS4において、制御部10は、
図8に示した各モードにおける物体検出範囲r1からr3までの範囲を物体検出範囲として切り出して物体検出を行うように、各種のパラメータを送信波Tの各フレーム等ごとに設定してよい。ステップS4において、
図10に示したように、各種のパラメータを送信波Tのフレームごとに設定してもよいし、フレームを構成する部分(例えば各モード又はサブフレーム等)ごとに設定してもよいし、チャープ信号ごとに設定してもよい。各モードにおける物体検出範囲のような検出範囲を切り出して物体検出を行うために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておいてもよい。この場合、ステップS4において、制御部10は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。
【0155】
また、ステップS4において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、決定されたそれぞれの物体検出範囲の向きに送信波のビームを形成するように、各種のパラメータを設定してもよい。例えば、ステップS4において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、ステップS1で決定された物体検出範囲に送信波のビームが向くように、各種のパラメータを設定してよい。各物体検出範囲のような検出範囲に送信波のビームを向けるために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておくことができる。この場合、ステップS4において、制御部10は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。ステップS4において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、例えば位相制御部23又は送信部20に対して各種のパラメータを設定してよい。
【0156】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを規定するパラメータを、送信波Tのフレーム等ごとに設定してもよい。また、制御部10は、検出範囲の異なるモードのうち、フレームごと又はフレーム内の処理単位ごとに、レーダのモードを切り替えて信号生成部21に通知してよい。
【0157】
ステップS4においてパラメータが設定されたら、制御部10は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信アンテナ25から送信波Tを送信するように制御する(ステップS5)。例えば、ステップS5において、信号生成部21は、制御部10によって設定されたパラメータに基づいて、送信波Tのフレーム等の順序に従って、各モードのレーダとして機能する送信信号を生成してよい。また、送信波Tのビームフォーミングを行う場合、ステップS5において、位相制御部23は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tが所定の方向にビームを形成するように制御してよい。この場合、位相制御部23は、各送信波Tの位相を制御してもよい。さらに、位相制御部23は、ステップS1において決定された物体検出範囲の方向に、例えば物体検出範囲の少なくとも一部をカバーするように、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信波Tのビームを向けるように制御してもよい。
【0158】
ステップS5において送信波Tが送信されたら、制御部10は、受信アンテナ31から反射波Rを受信するように制御する(ステップS6)。
【0159】
ステップS6において反射波Rが受信されたら、利得調整部35は、受信信号の利得を調整する(ステップS7)。ステップS7において、利得調整部35は、ステップS3において設定された受信利得に従って、受信信号の利得を調整してよい。また、ステップS7において、制御部10は、利得調整部35が各モードごとに受信信号の利得を調整するように制御してよい。
【0160】
例えば、ステップS7において、送信部20から第1モードで送信された送信波の反射波を受信部30が受信するタイミングで、利得調整部35は、受信信号の利得を0dBだけ調整してよい。また、例えば、ステップS7において、送信部20から第2モードで送信された送信波の反射波を受信部30が受信するタイミングで、利得調整部35は、受信信号の利得を30dBだけ調整してよい。また、例えば、ステップS7において、送信部20から第3モードで送信された送信波の反射波を受信部30が受信するタイミングで、利得調整部35は、受信信号の利得を55dBだけ調整してよい。本開示において、利得調整部35は、受信信号の利得を調整するタイミングとして、送信部20から信号が送信される所定時間前のタイミング、送信部20から信号が送信されるタイミング、送信部20から信号が送信された後かつ反射波を受信部30が受信する前のタイミング、送信波の反射波を受信部30が受信した所定時間後のタイミングなど、適宜なタイミングを任意に組み合わせて利用してもよい。
【0161】
ステップS7において受信信号の利得が調整されたら、制御部10は、移動体100の周囲に存在する物体を検出する(ステップS8)。ステップS8において、制御部10は、ステップS1で決定された物体検出範囲において物体の検出を行ってよい(物体検出範囲の切り出し)。ステップS8において、制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかによる推定結果に基づいて、物体の存在を検出してもよい。
【0162】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、例えば、複数の異なるモードのレーダごとに得られた角度、速度、距離の情報から物体検出(例えばクラスタリング)処理を行い、その物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の異なるモードのレーダごとに得られた物体検出情報又はポイントクラウド情報を、例えばECU50のような上位の制御CPUに通知してもよい。
【0163】
ステップS8における物体の検出は、公知のミリ波レーダによる技術を用いて種々のアルゴリズムなどに基づいて行うことができるため、より詳細な説明は省略する。また、
図14に示すステップS8の後、制御部10は、再びステップS1の処理を開始してもよい。この場合、ステップS8において物体を検出した結果に基づいて、ステップS1において物体検出範囲を決定してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出してよい。
【0164】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、受信信号の処理に際して広いダイナミックレンジを要しないため、コストの増大を招く恐れは低減し得る。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出範囲を冗長させることにより、物体の誤検出又は未検出を低減させ得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、機器のコストを増大させずに低減しつつ、ターゲットを検出する精度を向上し得る。
【0165】
なお、本開示に係る電子機器は、送信信号の各チャープ信号ごとに、又は、任意の個数のチャープ信号の組み合わせごとに、上述の第1モード乃至第3モードのように設定されたモードで、異なる送信態様で送信波を送信するとしてもよい。この場合、利得調整部35は、各モードの反射波の受信信号の利得をそれぞれ調整してよい。この電子機器は送信信号の各チャープ信号ごとに、又は、任意の個数のチャープ信号の組み合わせごとに、受信信号の処理に際して広いダイナミックレンジを要しない。このため、本開示に係る電子機器は、コストの増大を招く恐れは低減し得る。また、本開示に係る電子機器は、物体検出範囲を冗長させることにより、物体の誤検出又は未検出を低減させ得る。したがって、この電子機器によれば、機器のコストを増大させずに低減しつつ、ターゲットを検出する精度を向上し得る。
【0166】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0167】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
【0168】
また、上述した実施形態において、利得調整部35が受信信号の利得の調整を行うものとして説明した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、利得調整部35以外の他の機能部が受信信号の利得の調整を行うものとしてもよい。例えば、
図15に示す電子機器1のように、LNA32’が受信信号の利得の調整を行ってもよい。この場合、
図15に示すように、利得調整部35を用いる必要はなくなる。また、
図15に示す受信部30における他の機能部が受信信号の利得の調整を行うものとしてもよい。
【0169】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部36の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0170】
1 電子機器
5 センサ
10 制御部
11 距離FFT処理部
12 距離検出判定部
13 速度FFT処理部
14 速度検出判定部
15 到来角推定部
16 物体検出部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 利得調整部
36 AD変換部
40 記憶部
50 ECU
100 移動体
200 物体