(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115330
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】走査装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G01S17/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107642
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2021200076の分割
【原出願日】2017-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出田 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(57)【要約】
【課題】
状況に応じて対象領域の一部について、より詳細な測距を実現可能な走査装置を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】
投射した光が対象物で反射した反射光を受光する走査装置であって、所定領域を走査する走査光を出射する光出射部と、前記走査光が前記所定領域内の前記対象物によって反射された反射光を受光する受光部と、前記光出射部の走査態様を、第1の走査態様と、前記第1の走査態様と異なる走査が可能な第2の走査態様との間で切り替える制御部と、を含み、前記制御部は、前記受光部によって受光される前記反射光の受光状況に基づいて、前記走査態様を切り替えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射した光が対象物で反射した反射光を受光する走査装置であって、
所定領域を走査する走査光を出射する光出射部と、
前記走査光が前記所定領域内の前記対象物によって反射された反射光を受光する受光部と、
前記光出射部の走査態様を、第1の走査態様と、前記第1の走査態様と異なる走査が可能な第2の走査態様との間で切り替える制御部と、を含み、
前記制御部は、前記受光部によって受光される前記反射光の受光状況に基づいて、前記走査態様を切り替えることを特徴とする走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査装置、特に、光学的な測距に使用可能な走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を対象領域内で走査して、物体までの距離を計測する測距装置が知られている。このような測距装置は、例えば、レーザパルスを出射する光源と、当該レーザパルスを反射させて走査する走査機構と、物体によって反射されたレーザパルスを受光する受光部と、を有している。そして、当該測距装置は、出射したレーザパルスと、受光部によって受光したレーザパルスに基づいて対象物までの距離を計測する。
【0003】
例えば、特許文献1には、光反射面を有し、当該光反射面に入射される光を対象領域内でリサージュ走査できる光走査部と、光源部から出射されたパルス光が物体によって反射された反射光を受光する受光部と、前記光源部によるパルス光の出射タイミングと前記受光部による反射光の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する測距部と、を備える光測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような測距装置において、対象領域の一部について、より詳細な計測が要求される場合があること等が、課題の一例として挙げられる。本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、状況に応じて対象領域の一部について、より詳細な測距を実現可能な走査装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、投射した光が対象物で反射した反射光を受光する走査装置であって、所定領域を走査する走査光を出射する光出射部と、前記走査光が前記所定領域内の前記対象物によって反射された反射光を受光する受光部と、前記光出射部の走査態様を、第1の走査態様と、前記第1の走査態様と異なる走査が可能な第2の走査態様との間で切り替える制御部と、を含み、前記制御部は、前記受光部によって受光される前記反射光の受光状況に基づいて、前記走査態様を切り替えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例に係る光走査部に印加される駆動信号の波形及び当該光走査部によるパルス光の走査軌跡の例を示す図である。
【
図4A】実施例に係る光走査部に印加される駆動信号の波形及び当該光走査部によるパルス光の走査軌跡の例を示す図である。
【
図4B】実施例に係る光走査部に印加される駆動信号の波形及び当該光走査部によるパルス光の走査軌跡の例を示す図である。
【
図5A】実施例に係る測距装置における受光状況の一例を示す図である。
【
図5B】実施例に係る測距装置における受光状況の一例を示す図である。
【
図6】実施例に係る測距装置が実行するルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施例に係る測距装置が実行するルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
図1を参照しつつ、実施例に係る測距装置10の構成について説明する。測距装置10は、光学的に対象物までの距離を計測する光測距装置である。
図1には、説明のため、測距装置10が距離を測定する対象である対象物OBが測距装置10とともに模式的に示されている。また、測距装置10による計測に係る光の経路をL1、L2及びL3として模式的に示している。
【0009】
光源11は、例えばレーザダイオード等の発光素子である。光源制御部13は、光源11を駆動する駆動回路である。光源11は、光源制御部13からの駆動信号によってパルス光L1を出射する。光学系14は、パルス光L1の光路上に設けられている。光学系14は、例えばコリメータレンズ等の光学部材を含む光学系であり、光源11から出射されたパルス光L1を平行光に変換する。
【0010】
光源11から出射されて光学系14によって平行光に変換されたパルス光L1の光路上には、ビームスプリッタBSが設けられている。ビームスプリッタBSは、ビームスプリッタBSに入射される入射光を所定の方向に透過又は反射するように配置されている。
【0011】
光走査部15は、光源11から出射されて光学系14を通りビームスプリッタBSを透過するパルス光L1の光路上に設けられている。光走査部15は、光反射膜16を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。光走査部15は、電磁気的に光反射膜16を揺動させるように構成されている。
【0012】
光反射膜16は、光反射面16Aを有する反射部材である。光源11から出射されて光学系14によって平行光に変換されたパルス光L1は、ビームスプリッタBSを透過し、光反射面16Aに反射される。光反射面16Aは、パルス光L1を反射させて走査光(測距光)L2を生成する。すなわち、光源11及び光反射膜16を有する光走査部15は、走査光を出射する光出射部として機能する。
【0013】
走査制御部17は、光走査部15が光反射膜16を揺動させるための駆動信号を生成して光走査部15に供給する。当該駆動信号によって光反射膜16が揺動し、パルス光L1が光反射面16Aに反射される方向が変化する。光走査部15は、走査制御部17からの信号によって、パルス光L1の反射方向を変化させることで、走査光L2によって所定の領域内を走査する。
【0014】
例えば、当該所定の領域は光反射膜16が揺動可能な角度範囲に応じて定まる領域である。
図1において、当該所定の領域内を走査対象領域R0として示している。また、
図1において、走査対象領域R0内における光走査部15から所定の距離だけ離れた仮想の面を走査対象面R1として示している。換言すれば、走査対象面R1は、光走査部15が走査光L2を投射する投射方向にある仮想面である。
【0015】
走査光L2は、走査対象となる領域である走査対象領域R0に向けて出射される。走査対象領域R0の走査光L2の光路上に対象物OB(パルス光L1を反射する性質を持った物体又は流体)が存在する場合、走査光L2が対象物OBに照射(投射)されて反射される。
【0016】
走査光L2が対象物OBに反射された反射光L3は、光反射膜16に戻る。そして、反射光L3は、光反射面16Aに反射され、ビームスプリッタBSによって反射される。
【0017】
受光部18は、ビームスプリッタBSによって反射される反射光L3の光路上に配置されている光検出器である。例えば、受光部18は、フォトダイオード等の受光素子であり、受光部18に入射された光の強度に基づいた受光信号として電気信号を生成する。生成した受光信号は、測距部19に供給される。ビームスプリッタBSによって反射された反射光L3は、受光部18に受光されて検出される。
【0018】
距離測定部としての測距部19は、光源11が出射したパルス光L1と、受光部18が受光した反射光L3に基づいて、受光部18と対象物OBとの間の距離を計測する。例えば、測距部19は、タイムオブフライト法を用いて対象物OBの測距を行う。例えば、測距部19は、信号処理回路を含み、演算によって距離データを算出する。
【0019】
例えば、測距部19は、光源11がパルス光L1を出射した時刻(タイミング)と、受光部18が反射光L3を受光したタイミングと、の差に基づいて、測距装置10から対象物OBまでの距離を計測する。光源制御部13は、光源11がパルス光L1を出射したタイミングを示す信号を測距部19に供給する。また、受光部18が反射光L3を受光したタイミングは、受光部18から供給された受光信号に基づいて特定される。
【0020】
また、測距部19は、光源制御部13及び走査制御部17の動作制御が可能である。例えば、測距部19は、受光部18から供給された受光信号に基づいて、走査制御部17が光走査部15に走査させる際の動作態様を変更させる制御が可能である。このように、測距部19は、走査制御部17を制御する制御部としても機能する。
【0021】
なお、測距装置10の光源11、光源制御部13、光走査部15、走査制御部17及び受光部18を含む部分は、本発明の走査装置の一例である。
【0022】
図2A及び
図2Bを参照しつつ、光走査部15の構成例について説明する。
図2Aは、光走査部15の模式的な上面図である。
図2Bは、
図2AのV-V線に沿った断面図である。
【0023】
図2A及び
図2Bに示すように、固定部21は、固定基板B1及び固定基板B1上に形成された環状の枠体である固定枠B2を含む。
図2Bに示すように、固定基板B1は、固定基板B1の上面B1Sに、固定枠B2と対向する領域に枠状の平面形状を有する突出部B1Pを有しており、突出部B1P上に固定枠B2が載置されている構成になっている。
【0024】
可動部22は、固定枠B2の内側に配されており、揺動板SYと、揺動板SYを囲む揺動枠SXとを含んでいる。揺動板SY上には、円形の光反射膜16が設けられている。以下、光反射膜16の上面、すなわち光反射面16Aの中心をACとして説明する。
【0025】
揺動枠SXは、第1のトーションバーTXによって固定枠B2に接続されている。第1のトーションバーTXは、光反射面16Aの中心ACを通りかつ光反射面16Aの面内方向に伸長する第1の揺動軸AXに沿って伸長する一対の長板状の構造部分である。揺動枠SXに揺動軸AX周りの力がかかると、第1のトーションバーTXがねじれ、揺動枠SXは第1の揺動軸AXを中心に、すなわち第1の揺動軸AXを揺動中心軸として揺動する。揺動枠SXは、第1の揺動軸AXを中心に線対称な形状を有している。
【0026】
揺動板SYは、第2のトーションバーTYによって、揺動枠SXに接続されている。第2のトーションバーTYは、光反射膜の中心ACを通り、光反射面16Aの面内方向に伸長しかつ第1の揺動軸AXと直交している第2の揺動軸AYに沿って伸長する一対の長板状の構造部分である。揺動枠SYに揺動軸AY周りの力がかかると、第2のトーションバーTYがねじれ、揺動枠SYは第2の揺動軸AYを中心に、すなわち第2の揺動軸AYを揺動中心軸として揺動する。揺動板SYは、揺動軸AYを中心に線対称な形状を有している。
【0027】
従って、揺動板SYは、互いに直交する揺動軸AX及びAYを中心に揺動するようになっている。この揺動板SYの揺動によって、光反射面16Aの向く方向が変化するようになっている。
【0028】
上述したように、可動部22は固定枠B2に接続されており、固定枠B2は固定基板B1の突出部B1P上に載置されている構成になっている。従って、可動部22は、固定基板B1の上面B1Sから離間している。そして、揺動枠SXが揺動軸AX周りに揺動し、揺動板SYが揺動軸AY周りに揺動すると、可動部22が固定枠B2に対して傾斜するように揺動する。突出部B1Pは、可動部22が当該揺動によって上面B1Sに接触しない十分な高さで形成されている。なお、例えば、固定枠B2及び可動部22は、1の半導体基板から加工して形成された一体構造であり得る。
【0029】
駆動力生成部23は、固定基板B1上の突出部B1Pの外側に配置された永久磁石MG1及び永久磁石MG2と、揺動枠SX上において揺動枠SXの外周に沿って引き回された金属配線(第1のコイル)CXと、揺動板SY上において揺動板SYの外周に沿って引き回された金属配線(第2のコイル)CYとを含む。
【0030】
永久磁石MG1は、揺動軸AX上に配されかつ、可動部22を挟んで対向するように設けられた一対の磁石片である。また、永久磁石MG2は、揺動軸AY上に配されかつ、可動部22を挟んで対向するように設けられた一対の磁石片である。従って、本実施例においては、4つの磁石片が、可動部22を囲むように夫々配置されている。
【0031】
また、永久磁石MG1を構成する2つの磁石片は、互いに反対の極性を示す部分が対向するように配置されている。同様に、永久磁石M2を構成する2つの磁石片は、互いに反対の極性を示す部分が対向するように配置されている。
【0032】
走査制御部17は、金属配線CX及びCYに接続されている。走査制御部17は、金属配線CX及びCYに電流(駆動信号)を供給する。駆動力生成部23は、当該駆動信号の印加によって、可動部22の揺動枠SX及び揺動板SYを揺動させる電磁気力を生成する。
【0033】
具体的には、金属配線CXに電流が流れると、当該電流と、揺動軸AYに沿った方向に配置された永久磁石MG1の2つの磁石片によって生じた磁界との相互作用によって、揺動枠SXに揺動軸AX周りの力がかかる。それによって、第1のトーションバーTXが揺動軸AX周りにねじれ、揺動枠SXが揺動軸AXを中心に揺動する。
【0034】
また、金属配線CYに電流が流れると、当該電流と、揺動軸AXに沿った方向に配置された永久磁石MG2の2つの磁石片による磁界との相互作用によって、揺動板SYに揺動軸AY周りの力がかかる。それによって、第2のトーションバーTYが揺動軸AY周りにねじれ、揺動板SYが揺動軸AYを中心に揺動する。
【0035】
図3は、光走査部15が第1の走査態様であるリサージュ走査で走査する際に走査制御部17が生成する駆動信号DX及びDYと、これに基づいて光走査部15が走査する走査光L2の走査軌跡との関係を模式的に示している。
【0036】
以下の説明において、駆動信号DXは、走査制御部17によって生成されて金属配線CXに供給される駆動信号として説明する。これによって、揺動枠SXが揺動軸AX周りに揺動する。また、以下の説明において、駆動信号DYは、走査制御部17によって生成されて金属配線CYに供給される駆動信号として説明する。これによって、揺動板SYが揺動軸AY周りに揺動する。
【0037】
また、以下の説明において、駆動信号DX及び駆動信号DYの振幅はすべて同等(図中、AMP=1)であるものとしている。
【0038】
図3において(a)は、
図1に示した走査対象面R1へのリサージュ走査による走査軌跡TRを示している。図中のAX1及びAY1は、光走査部15の揺動軸AX及び揺動軸AYにそれぞれ対応している。すなわち、光走査部15の揺動軸AX周りの揺動は、走査対象面R1におけるAY1に沿った方向の走査位置の変化に対応する。また、光走査部15の揺動軸AY周りの揺動は、走査対象面R1におけるAX1方向の走査位置の変化に対応する。
【0039】
図3の(b)は、
図3(a)に示したリサージュ走査の際の駆動信号DXの波形を模式的に示している。
図3の(b)の駆動信号DXは、A
1及びB
1を定数とし、θ
1を変数としたとき、DX(θ
1)=A
1sin(θ
1+B
1)の式で示される正弦波の信号である。変数θ
1は、駆動信号DXが、光走査部15の第1のトーションバーTXによって固定枠B2に支持されている揺動枠SX及び揺動板SYの固有振動数に対応し、これらを共振させる周波数の正弦波となるように設定される。
【0040】
図3の(c)は、
図3(a)に示したリサージュ走査の際の駆動信号DYの波形を模式的に示している。駆動信号DYは、A
2及びB
2を定数とし、θ
2を変数としたとき、DY(θ
2)=A
2sin(θ
2+B
2)の式で示される正弦波の信号である。変数θ
2は、駆動信号DYが、光走査部15の揺動板SYの固有振動数に対応し、これを共振させる周波数の正弦波となるように設定される。
【0041】
従って、揺動枠SX及び揺動板SYは、駆動信号DXによって揺動軸AX周りに共振しつつ揺動させられる。すなわち、揺動軸AX周りに共振モードの動作モードで駆動される。また、揺動板SYは、駆動信号DYによって揺動軸AY周りに共振しつつ揺動させられる。すなわち、揺動軸AY周りに共振モードの動作モードで駆動される。従って、揺動板SYは、揺動軸AX周りに揺動し、かつ揺動軸AY周りに揺動する。揺動板SYの揺動に応じて、光反射膜16の向く方向が変化する。従って、光源から出射されて光反射膜16に反射された走査光L2(
図1参照)は、揺動板SYの揺動に応じて出射方向を変化させつつ走査対象領域R0に出射される。
【0042】
図3に示すように、走査光L2が走査対象面R1に到達する点(スポット位置)の軌跡TRは、上述のように揺動板SYが揺動軸AX及び揺動軸AYの周りに共振しつつ揺動しているので、リサージュ曲線を描くリサージュ軌跡となる。当該リサージュ曲線は、走査対象面R1の全体に亘っており、走査対象面R1のAX1に沿った方向の端部に軌跡が密集し、走査対象面R1のAX1に沿った方向の中央付近に近づくにつれて当該端部よりも軌跡同士の間隔が広い傾向を有している。
【0043】
図4A及び
図4Bは、
図3における走査態様と異なる第2の走査態様であるラスタ走査で光走査部15が走査光L2を走査する際に、走査制御部17が生成する駆動信号DX及びDYと、これに基づいて光走査部15が走査する走査光L2の走査軌跡との関係を模式的に示している。
【0044】
上述したように、駆動信号DXは、走査制御部17によって生成されて金属配線CXに供給される駆動信号である。これによって、揺動枠SXが揺動軸AX周りに揺動する。また、駆動信号DYは、走査制御部17によって生成されて金属配線CYに供給される駆動信号である。これによって、揺動板SYが揺動軸AY周りに揺動する。
【0045】
図4Aにおいて、(a)は、
図1に示した走査対象面R1へのラスタ走査によって描かれるラスタ軌跡である走査軌跡TRを示している。
図3と同様に、図中のAX1及びAY1は、光走査部15の揺動軸AX及び揺動軸AYにそれぞれ対応している。光走査部15の揺動軸AX周りの揺動は、走査対象面R1におけるAY1に沿った方向の走査位置の変化に対応する。また、光走査部15の揺動軸AY周りの揺動は、走査対象面R1におけるAX1方向の走査位置の変化に対応する。
【0046】
図4Aの(b)は、
図4A(a)に示したラスタ走査の際の駆動信号DXの波形を模式的に示している。
図4Aの(b)の駆動信号DXは、A
1及びB
1を定数とし、θ
1を変数としたとき、DX(θ
1)=A
1sin(θ
1+B
1)の式で示される正弦波の信号である。変数θ
1は、駆動信号DXが、光走査部15の第1のトーションバーTXによって固定枠B2に支持されている揺動枠SX及び揺動板SYの固有振動数に対応し、これらを共振させる周波数の正弦波となるように設定される。
【0047】
図4Aの(c)は、
図4A(a)に示したラスタ走査の際の駆動信号(第2の駆動信号)DYの波形を模式的に示している。駆動信号DYは、鋸歯状波(のこぎり波)の信号である。駆動信号DYは、光走査部15の揺動板SYの固有振動数に対応せず、これを共振させない周波数(非共振)ののこぎり波となるように生成される。例えば、駆動信号DYは、A
2を定数とし、B
2を任意の整数とし、θ
2を変数としたとき、DY(θ
2)=2/π[sinA
2θ
2+1/2sin2A
2θ
2+1/3sin3A
2θ
2+・・・1/B
2sinB
2A
2θ
2]の式で表わされる。
【0048】
なお、駆動信号DYとしては、上述ののこぎり波に限定されず、光走査部15の揺動板SYの固有振動数に対応せず、これを共振させない周波数(非共振)の三角波、Sin波であってもよい。
【0049】
図4Aのラスタ走査の際に、揺動板SYは、駆動信号DXによって揺動軸AX周りに共振しつつ揺動させられる。また、揺動板SYは、駆動信号DYによって揺動軸AY周りに共振せずに揺動させられる。すなわち、
図4Aにおけるラスタ走査は、揺動板SYの揺動軸AY周りの駆動を非共振モードとし、揺動板SYの揺動軸AX周りの駆動を共振モードとするラスタ走査である。
【0050】
従って、揺動板SYは、揺動軸AX周りに揺動し、かつ揺動軸AY周りに揺動する。揺動板SYの揺動に応じて、光反射膜16の向く方向が変化する。従って、光源から出射されて光反射膜16に反射された走査光L2(
図1参照)は、揺動板SYの揺動に応じて出射方向を変化させつつ走査対象領域R0に出射される。
【0051】
上述のように、揺動板SYは、揺動軸AX周りに共振しつつ揺動する。また、駆動信号DXの振幅は、
図3の(b)に示す駆動信号Xの振幅と同等である。この場合、揺動板SYが揺動軸AX周りに揺動する大きさ、すなわち角度は、
図3の(a)に示した場合と同等である。従って、走査対象面R1における走査光L2の走査軌跡TRは、AY1に沿った方向に広い範囲に描かれる。
【0052】
また、上述のように、揺動板SYは、揺動軸AY周りに共振せずに揺動する。また、駆動信号DYの振幅は、
図3の(c)に示す駆動信号Yの振幅と同等である。この場合、揺動板SYが揺動軸AY周りに揺動する大きさ、すなわち角度は、揺動板SYが揺動軸AY周りに共振して揺動する場合(
図3)と比較して小さくなる。従って、走査対象面R1における走査光L2の走査軌跡TRはAX1方向に沿った狭い範囲に描かれる。
【0053】
従って、
図4Aの(a)の走査軌跡は、AX1に沿った方向に沿った狭い範囲であるラスタ走査領域RAYに描かれる。当該走査軌跡は、ラスタ走査領域RAYにおいて、AX1に沿った方向に沿った狭い範囲に密集したものとなっている。このように、揺動板SYの揺動軸AY周りの駆動を非共振モードとするラスタ走査によって、ラスタ走査領域RAY内を高い密度で走査することが可能である。
【0054】
図4Bにおいて、(a)は、
図1に示した走査対象面R1へのラスタ走査による走査軌跡TRを示している。図中のAX1及びAY1は、光走査部15の揺動軸AX及び揺動軸AYにそれぞれ対応している。光走査部15の揺動軸AX周りの揺動は、走査対象面R1におけるAY1に沿った方向の走査位置の変化に対応する。また、光走査部15の揺動軸AY周りの揺動は、走査対象面R1におけるAX1方向の走査位置の変化に対応する。
【0055】
図4Bの(b)は、
図4B(a)に示したラスタ走査の際の駆動信号DXの波形を模式的に示している。
図4Bの(b)の駆動信号(第1の駆動信号)DXは、のこぎり波の信号である。当該駆動信号DXは、光走査部15の第1のトーションバーTXによって固定枠B2に支持されている揺動枠SX及び揺動板SYの固有振動数に対応せず、これらを共振周させない周波数ののこぎり波となるように生成される。
【0056】
駆動信号DXは、A1及びB1を任意の整数とし、θ1を変数としたとき、DY(θ1=2/π[sinA1θ1+1/2sin2A1θ1+1/3sin3A1θ1+・・・1/B1sinB1A1θ1]の式で表わされる。
【0057】
なお、駆動信号DXとしては、のこぎり波に限定されず、光走査部15の揺動枠SX及び揺動板SYの固有振動数に対応せず、これらを共振周させない周波数(非共振)の三角波、Sin波であってもよい。
【0058】
図4Bの(c)は、
図4B(a)に示したラスタ走査の際の駆動信号(第2の駆動信号)DYの波形を模式的に示している。駆動信号DYは、駆動信号DYは、A
2及びB
2を定数とし、θ
2を変数としたとき、DY(θ
2)=A
2sin(θ
2+B
2)の式で示される正弦波の信号である。変数θ
2は、駆動信号DYが、光走査部15の揺動板SYの固有振動数に対応し、これを共振させる周波数の正弦波となるように設定される。
【0059】
図4Bのラスタ走査の際に、揺動板SYは、駆動信号DXによって揺動軸AX周りに共振せずに揺動させられる。また、揺動板SYは、駆動信号DYによって揺動軸AY周りに共振しつつ揺動させられる。すなわち、
図4におけるラスタ走査は、揺動板SYの揺動軸AX周りの駆動を非共振モードとし、揺動板SYの揺動軸AY周りの駆動を共振モードとするラスタ走査である。
【0060】
従って、揺動板SYは、揺動軸AX周りに揺動し、かつ揺動軸AY周りに揺動する。揺動板SYの揺動に応じて、光反射膜16の向く方向が変化する。従って、光源から出射されて光反射膜16に反射された走査光L2(
図1参照)は、揺動板SYの揺動に応じて出射方向を変化させつつ走査対象領域R0に出射される。
【0061】
上述のように、揺動板SYは、揺動軸AX周りに共振せずに揺動する。また、駆動信号DXの振幅は、
図3の(b)に示す駆動信号DXの振幅と同等である。この場合、揺動板SYが揺動軸AX周りに揺動する大きさ、すなわち角度は、揺動板SYが揺動軸AX周りに共振して揺動する場合(
図3(b)及び
図4A(b))と比較して小さくなる。従って、走査対象面R1における走査光L2の走査軌跡TRはAY1に沿った方向に狭い範囲に描かれる。
【0062】
また、上述のように、揺動板SYは、揺動軸AY周りに共振しつつ揺動する。また、駆動信号DYの振幅は、
図3の(c)に示す駆動信号DYの振幅と同等である。この場合、揺動板SYが揺動軸AY周りに揺動する大きさ、すなわち角度は、
図3の(a)に示した場合と同等である。従って、走査対象面R1における走査光L2の走査軌跡TRは、AX1方向に沿った広い範囲に描かれる。
【0063】
従って、
図4Bの(a)の走査軌跡は、AY1に沿った方向に狭い範囲であるラスタ走査領域RAXに描かれる。当該走査軌跡は、ラスタ走査領域RAXにおいて、AY1に沿った方向に狭い範囲に密集したものとなっている。このように、揺動板SYの揺動軸AX周りの駆動を非共振モードとするラスタ走査によって、ラスタ走査領域RAX内を高い密度で走査することが可能である。図中に示すように、走査領域RAXは、走査領域RAYとは異なる範囲を有する領域である。
【0064】
図4A及び
図4Bに示したように、第2の走査態様は、揺動板SYが揺動軸AX及び揺動軸AYのいずれか一方の軸を中心に共振しつつ揺動するように駆動され(共振モード)、かつ、他方の軸を中心に共振せずに揺動するように駆動される(非共振モード)態様である。
【0065】
光走査部15が同じ出力で駆動された場合に、第2の走査態様による走査対象面R1上の走査軌跡は、第1の走査態様による走査軌跡と比較して、走査対象面R1内のより狭い範囲により密集した走査軌跡となる。従って、第2の走査態様によれば、第1の走査態様よりも密な走査が可能である。
【0066】
走査制御部17は、第1の走査態様又は第2の走査態様に対応する駆動信号DX及び駆動信号DYを光走査部15に切替可能に供給することができる。従って、光走査部15による走査光L2の走査態様を、第1の走査態様と、第1の走査態様よりも密な走査が可能である第2の走査態様との間で切り替えることができる。
【0067】
なお、光走査部15は、揺動軸AX及び揺動軸AYのいずれの軸中心の揺動板SYの揺動も非共振モードとすることで、さらに狭い範囲の高密度の走査軌跡を伴う走査態様をとっても良い。例えば、走査制御部17は、
図4Aの(c)の駆動信号DYと、
図4Bの(b)の駆動信号DXとを光走査部15に供給することで、
図4B(a)のラスタ走査領域RAXとRAYとが重なりあっている領域を局所的にさらに高い密度で走査することができる。
【0068】
図5A及び
図5Bを参照しつつ、測距装置10による測距における受光状況の例について説明する。上述したように、受光部18は、受光した光の強度に対応する受光信号を生成して測距部19に供給する。測距部19は、光強度のデータを受光部18から取得して対象物OBまでの距離を算出する。
【0069】
対象物OBまでの距離は、走査対象面R1へ向けて照射するパルス光の照射方向(すなわち測距方向)毎に算出される。
【0070】
図5Aは、1の測距方向に照射されたパルス光が、走査対象領域R0に存在する対象物によって反射された反射光によって生成された受光信号の尤度が高い場合の信号強度の時間変化の一例を示している。
図5Aにおいて、当該信号強度は、横軸を時間とし縦軸を信号強度すなわち光強度とした光強度のスペクトルとして示されている。
【0071】
図5Aにおいて、光強度のスペクトルの平坦な部分は、受光部18が、対象物OBに反射された反射光L3(
図1)を受光していない場合の光強度、すなわち背景光による光強度を示している。なお、光源11がパルス光L1を出射してから受光部18が反射光を受光するまでの時間が、対象物までの距離を反映する。
図5A中の時間t1の部分に反射光L3によるものと思われるピークP1が現れている。
【0072】
図5A中に示されている光強度の閾値Thは、受光信号の信頼性、すなわち尤度が高いか否かの判断基準となる閾値を示している。具体的には、光強度が閾値Thを越えている場合に、尤度が高いと判断することができる。
図5Aの例においては、ピークP1が閾値Thを越えているので、時間t1において、反射光L3が検出されたという確度が高い、すなわち、尤度が高いと判断できる。
【0073】
測距部19は、光強度が閾値Thを越えているか否かによって、受光状況の判定をすることができる。測距部19は、光強度の所定の閾値に基づいて、受光信号の信頼性、すなわち尤度を評価することができる。
【0074】
また、
図5Aにおいては、背景光の光強度に対して、ピークP1の光強度は十分に高い。このような場合、時間t1における光強度のS/N比(signal noise ratio)は十分に高いといえる。このように、S/N比が高い場合にも、尤度が高いと判断できる。
【0075】
図5Bは他の1の測距方向に照射されたパルス光が反射された反射光によって生成された受光信号の尤度が低い場合の信号強度の時間変化の一例を示している。
図5Bにおいて、当該信号強度は、横軸を時間とし、縦軸を信号強度すなわち光強度とした光強度のスペクトルとして示されている。
【0076】
図5Bにおいて、光強度のスペクトルの平坦な部分は、背景光による光強度を示している。
図5B中の時間t2の部分に反射光L3によるものと思われるピークP2が現れている。
【0077】
図5B中に示されている光強度の閾値Thは、受光信号の信頼性、すなわち尤度が高いか否かの判断基準となる閾値を示している。具体的には、光強度が閾値Thを越えている場合に、尤度が高いと判断することができる。
図5Bの例においては、ピークP2が閾値Thを越えていないので、時間t2において、反射光L3が検出されたという確度が低い、すなわち、尤度が低いと判断できる。
【0078】
また、
図5Bにおいては、背景光の光強度に対して、ピークP2の光強度はわずかに高いに過ぎない。このような場合、時間t2における光強度のS/N比は低いといえる。このように、S/N比が低い場合にも、尤度が低いと判断できる。
【0079】
このようなS/N比の低いピークは、背景光の強度が高い場合等に発生する。また、当該S/N比の低いピークは、対象物OBの光反射率が低いこと等によって発生する。
【0080】
測距装置10において、受光信号のS/N比又は信号強度に基づいて、受光状況が良好であるか否かが判定される。受光状況は、走査対象面R1へ向けて照射するパルス光の照射方向の全てについて判断されても良い。例えば、光走査部15が走査対象面R1の全体を1回走査する周期を1周期とすると、1又は複数の周期毎のS/N比の平均値又は光強度の平均値が、所定の閾値を超えていない場合に、受光状況が悪いと判定されても良い。
【0081】
また、受光状況は、走査対象面R1の所定の領域毎に判断されても良い。例えば、
図4Aの(a)に示すラスタ走査領域RAY内、又は
図4Bの(a)に示すラスタ走査領域RAX内に向けて照射されたパルス光L1の反射光のS/N比の平均値又は光強度の平均値が所定の閾値を越えているか否かによって、受光状況が判断されても良い。
【0082】
また、受光状況は、所定の時間毎のS/N比の平均値又は光強度の平均値に基づいて判断されても良い。
【0083】
測距部19は、受光部18から受光データを取得し、例えば当該受光データにおける光強度の平均値又はS/N比の平均値が所定の値に満たない場合に、光走査部15による走査態様をより詳細な走査が可能な態様とする制御を行う。また、測距部19からの指示に応じて、走査制御部17は、第2の走査態様とする駆動信号を生成して光走査部15に供給する。
【0084】
すなわち、制御部としての測距部19は、受光部18によって受光される走査光L2(すなわち、反射光L3)の受光状況に基づいて、光走査部15による走査態様を走査制御部17に切り替えさせることができる。
【0085】
[測距ルーチンRT1]
図6を参照しつつ、上記したような測距装置10における受光状況に基づく走査態様の切り替えのために測距部19が実行する測距ルーチンRT1の一例について説明する。測距装置10は、図示しないスイッチ操作等により測距開始操作が受け付けられると、光走査を含む測距動作を開始する。当該光走査は、測距ルーチンRT1の開始時において、リサージュ走査であるとする。光走査が開始されると、測距部19は、測距ルーチンRT1を開始する。測距部19は、測距ルーチンRT1を開始すると、受光部18から受光データを取得して、対象物OBまでの距離の算出を開始する。
【0086】
測距部19は、測距ルーチンRT1を開始すると、受光状況が良好であるか否かを判定する(ステップS11)。測距部19は、ステップS11において、受光部18から供給される受光信号の強度、すなわち光強度又は尤度に基づいて、受光状況が良好であるか否かを判定する。
【0087】
例えば、測距部19は、ステップS11において、当該受光信号のS/N比又は信号強度に基づいて、受光状況が良好であるか否かを判定する。当該S/N比又は信号強度に関する判定は、走査対象面R1の全体に向けて照射されたパルス光L1の反射光について判定されても良く、走査対象面R1の所定の領域毎に向けて照射されたパルス光L1の反射光について判定されても良い。また、当該S/N比又は信号強度に関する判定は、所定の時間毎に判定されても良い。
【0088】
測距部19は、ステップS11において、受光状況が良好である(ステップS11:YES)と判定すると、当該測距ルーチンRT1を終了し、新たに測距ルーチンRT1を開始する。
【0089】
測距部19は、ステップS11において、受光状況が良好ではないと判定する(ステップS11:NO)と、走査対象面R1内の第1領域としてのラスタ走査領域RAXに向けての走査の結果よりも第2領域としてのラスタ走査領域RAYに向けての走査の結果である反射光の受光状況が悪いか否かを判定する(ステップS12)。
【0090】
測距部19は、ステップS12において、走査対象領域R1内のラスタ走査領域RAXよりもラスタ走査領域RAYからの反射光の受光状況が悪くないと判定する(ステップS12:NO)と、ラスタ走査領域RAXへ向けての1周期のラスタ走査を走査制御部17に実行させる(ステップS13)。
【0091】
ステップS13において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AXを中心に非共振モードで揺動させる駆動信号DX、すなわち、のこぎり波の駆動信号DXを供給する。また、ステップS13において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AYを中心に共振モードで揺動させる駆動信号DY、すなわち、正弦波の駆動信号DYを供給する。このようにして、走査制御部17は、光走査部15の走査態様をリサージュ走査からラスタ走査領域RAXのラスタ走査に移行し、1周期のラスタ走査を実行する。例えば、光走査部15がラスタ走査領域RAXの全体を1回走査する周期を1周期としても良い。
【0092】
測距部19は、ステップS12において、走査対象領域R1内のラスタ走査領域RAXに向けての走査の結果よりもラスタ走査領域RAYに向けての走査の結果である反射光の受光状況が悪いと判定する(ステップS12:YES)と、ラスタ走査領域RAYへ向けてのラスタ走査の1周期を走査制御部17に実行させる(ステップS14)。
【0093】
ステップS14において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AYを中心に非共振モードで揺動させる駆動信号DY、すなわち、のこぎり波の駆動信号DYを供給する。また、ステップS14において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SXを揺動軸AXを中心に共振モードで揺動させる駆動信号DX、すなわち、正弦波の駆動信号DXを供給する。このようにして、走査制御部17は、光走査部15の走査態様をリサージュ走査からラスタ走査領域RAYへ向けてのラスタ走査に移行する。例えば、光走査部15がラスタ走査領域RAYの全体を1回走査する周期を1周期としても良い。
【0094】
測距部19は、ステップS13又はステップS14の実行後、制御部17による走査態様をリサージュ走査に復帰させ、走査対象面R1へ向けてリサージュ走査を走査制御部17に再開させる(ステップS15)。
【0095】
測距部19は、ステップS15の実行後、当該測距ルーチンRT1を終了し、新たに測距ルーチンRT1を開始する。
【0096】
なお、測距ルーチンRT1において、ステップS13及びステップS14において行われる走査が1周期である場合について説明したが、この限りではない。ステップS13又はステップS14において、走査測距部19は、複数の周期の走査を走査制御部17に実行させてもよい。
【0097】
また、測距部19は、受光状況が良好である場合には、リサージュ走査のみが繰り返され、受光状況が良好でない場合には、ラスタ走査領域RAY又はラスタ走査領域RAXへの1周期のラスタ走査と、走査対象面R1への1周期のリサージュ走査と、が交互に繰り返し実行される走査態様で走査を実行させても良い。
【0098】
[測距ルーチンRT2]
図7を参照しつつ、上記したような測距装置10における受光状況に基づく走査態様の切り替えのために測距部19が実行する測距ルーチンRT1とは異なる測距ルーチンRT2の一例について説明する。測距ルーチンRT2では、ラスタ走査に移行した後にラスタ走査中に受光状況に基づいてリサージュ走査を再開するかラスタ走査を継続するかの判定がなされる点において測距ルーチンRT1と異なる。
【0099】
測距装置10は、図示しないスイッチ操作等により測距開始操作が受け付けられると、光走査を含む測距動作を開始する。当該光走査は、測距ルーチンRT1の開始時において、リサージュ走査であるとする。光走査が開始されると、測距部19は、測距ルーチンRT1を開始する。測距部19は、測距ルーチンRT1を開始すると、受光部18から受光データを取得して、対象物OBまでの距離の算出を開始する。
【0100】
測距部19は、測距ルーチンRT2を開始すると、受光状況が良好であるか否かを判定する(ステップS21)。測距部19は、ステップS21において、受光部18から供給される受光信号の強度、すなわち光強度又は尤度に基づいて、受光状況が良好であるか否かを判定する。
【0101】
例えば、測距部19は、ステップS21において、当該受光信号のS/N比又は信号強度に基づいて、受光状況が良好であるか否かを判定する。当該S/N比又は信号強度に関する判定は、走査対象面R1の全体に向けて照射されたパルス光L1の反射光について判定されても良く、走査対象面R1の所定の領域毎に向けて照射されたパルス光L1の反射光について判定されても良い。また、当該S/N比又は信号強度に関する判定は、所定の時間毎に判定されても良い。
【0102】
測距部19は、ステップS21において、受光状況が良好である(ステップS21:YES)と判定すると、当該測距ルーチンRT2を終了し、新たに測距ルーチンRT2を開始する。
【0103】
測距部19は、ステップS21において、受光状況が良好ではないと判定する(ステップS21:NO)と、走査対象領面R1内のラスタ走査領域RAXに向けての走査の結果よりもラスタ走査領域RAYに向けての走査の結果である反射光の受光状況が悪いか否かを判定する(ステップS22)。
【0104】
測距部19は、ステップS22において、走査対象領域R1内のラスタ走査領域RAXよりもラスタ走査領域RAYからの反射光の受光状況が悪くないと判定する(ステップS22:NO)と、ラスタ走査領域RAXへ向けてのラスタ走査を走査制御部17に実行させる(ステップS23)。
【0105】
ステップS13において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AX周りに非共振モードで揺動させる駆動信号DX、すなわち、のこぎり波の駆動信号DXを供給する。また、ステップS23において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AY周りに共振モードで揺動させる駆動信号DY、すなわち、正弦波の駆動信号DYを供給する。このようにして、走査制御部17は、光走査部15の走査態様をリサージュ走査からラスタ走査領域RAXのラスタ走査に移行する。
【0106】
測距部19は、ステップS22において、走査対象領域R1内のラスタ走査領域RAXに向けての走査の結果よりもラスタ走査領域RAYに向けての走査の結果である反射光の受光状況が悪いと判定する(ステップS22:YES)と、ラスタ走査領域RAYへ向けてのラスタ走査を走査制御部17に実行させる(ステップS24)。
【0107】
ステップS24において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SYを揺動軸AY周りに非共振モードで揺動させる駆動信号DY、すなわち、のこぎり波の駆動信号DYを供給する。また、ステップS24において、走査制御部17は、光走査部15の揺動板SXを揺動軸AX周りに共振モードで揺動させる駆動信号DX、すなわち、正弦波の駆動信号DXを供給する。このようにして、走査制御部17は、光走査部15の走査態様をリサージュ走査からラスタ走査領域RAYへ向けてのラスタ走査に移行する。
【0108】
測距部19は、ステップS23又はステップS24の実行後、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS25)。測距部19は、ステップS25において、所定の時間が経過していないと判定する(ステップS25:NO)と、ステップS25を繰り返す。測距部19は、ステップS25において、所定の時間が経過したと判定する(ステップS25:YES)と、受光状況が良好であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0109】
測距部19は、ステップS23又はステップS24において開始されたラスタ走査によって受光部18によって検出される受光信号の光強度又は尤度に基づいて、受光状況が良好であるか否かを判定する。
【0110】
測距部19は、ステップS26において、受光状況が良好ではないと判定する(ステップS26:NO)と、ステップS25に戻り、所定の時間が経過したか否かを再度判定する。測距部19は、ステップS26において、受光状況が良好であると判定する(ステップS26:YES)と、走査制御部17による走査態様をリサージュ走査に復帰させる(ステップS27)。
【0111】
測距部19は、ステップS27の実行後、当該測距ルーチンRT2を終了し、新たに測距ルーチンRT2を開始する。
【0112】
以上、詳細に説明したように、本実施例の測距装置10によれば、MEMSミラーである光走査部15の揺動軸AX及び揺動軸AYの各々の揺動について、状況に応じて、共振モードから非共振モードに変更することができる。従って、光走査部15による走査光L2の走査態様を切替えることができる。
【0113】
具体的には、揺動軸AX及び揺動軸AYのいずれの揺動についても共振モードで光走査部15を駆動する場合には、走査対象面R1の全体に亘る走査軌跡を描く態様(リサージュスキャン)で走査がなされる。そして、揺動軸AX及び揺動軸AYのいずれか又は両方の揺動について非共振モードで光走査部15を駆動する場合には、走査対象面R1の一部についてより密度の高い走査軌跡を描く態様で走査がなされる。その後、走査対象面R1の全体に亘る広い範囲を走査する元の態様に戻すことが可能である。このように、状況に応じて、走査態様を自在に変更することができる。
【0114】
従って、本発明の測距装置によれば、状況に応じて走査対象領域の一部について、より詳細な測距を実現可能な走査装置を提供することができる。