(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115459
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】液晶ポリエステルペレット及び発泡成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230814BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20230814BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230814BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20230814BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230814BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230814BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/06 CFD
C08J3/22
B29B9/06
B29C44/00 E
C08L67/00
C08K5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017681
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】愛敬 雄介
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4F201
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA48
4F070AB09
4F070AB15
4F070AB23
4F070AC45
4F070AC66
4F070AE12
4F070FA03
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4F074CA26
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4F201AA24
4F201AB02
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4J002CF181
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4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】化学発泡成形用のマスターバッチとして有用な液晶ポリエステルペレット、及び、該液晶ポリエステルペレットを用いて作製された発泡成形品の提供。
【解決手段】液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有し、記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む、液晶ポリエステルペレット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有し、
前記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む、液晶ポリエステルペレット。
【請求項2】
前記液晶ポリエステル(A)は、ナフタレン骨格を有する繰返し単位を含む、請求項1に記載の液晶ポリエステルペレット。
【請求項3】
前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度が280℃以下である、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステルペレット。
【請求項4】
前記ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、前記液晶ポリエステル(A)100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルペレット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルペレットを用いて作製された発泡成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルペレット及び発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、流動性、耐熱性及び寸法精度が高いことが知られている。
液晶ポリエステルは通常、単体で用いられることは少なく、各種用途における要求特性(例えば、曲げ特性、耐衝撃性)を満たすために、充填材等を含有させた液晶ポリエステル組成物として用いられている。このような液晶ポリエステル組成物から作製される成形品は、軽量でありながら強度が高いことが知られている。
かかる液晶ポリエステル組成物は、成形材料として各種用途にその使用が拡大しつつある。なかでも、自動車や航空機を含む輸送機器の分野において、燃費向上を目的として成形品の軽量化が進められている。
【0003】
これに対して、液晶ポリエステルが有する特性を活かしつつ、成形品を軽量化する事を目的として、液晶ポリエステル組成物の発泡成形が検討されている。
【0004】
発泡成形方法は、ADCA(アゾジカルボンアミド)や炭酸水素ナトリウムなどの化学発泡剤を樹脂材料に混ぜて使用する化学発泡成形と、窒素や二酸化炭素などの不活性ガス(物理発泡剤)をシリンダーやノズルから注入する物理発泡成形とに大別される。
【0005】
例えば、特許文献1には、発泡成形品を連続的に成形する発泡成形品の製造方法であって、液晶ポリエステルを含む樹脂組成物を溶融する工程1と、前記液晶ポリエステル100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下の超臨界状態において前記液晶ポリエステルと非反応であり、常温常圧下で気体である超臨界流体からなる発泡材を、導入装置を用いて導入して溶融混錬する工程2と、溶融混錬後の樹脂組成物を金型内に射出する工程3と、前記発泡材の圧力及び温度の少なくとも一方を前記発泡材の臨界点を下回るまで下げて発泡させる工程4とを備える、物理発泡成形の発泡成形品の製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、特定構造を有する液晶ポリエステル樹脂と超臨界流体とを射出成形機に導入し、射出成形して得られる液晶ポリエステル樹脂発泡成形品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-172943号公報
【特許文献2】特開2003-138054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているような物理発泡成形や特許文献2に記載されているような超臨界流体を用いる場合、特殊な設備の導入が必要となり、コストが高くなりやすい傾向がある。
【0009】
一方、液晶ポリエステル組成物について、化学発泡成形を行おうとすると、以下の問題がある。
例えば、特許文献2の比較例に記載されている液晶ポリエステルを含有するペレットと、発泡剤とをドライブレンドした材料を用いて化学発泡成形を行おうとすると、良好に該化学発泡剤が液晶ポリエステル中で分散せず、該液晶ポリエステルを微細かつ均一に発泡させることは困難である。また、液晶ポリエステルは他の熱可塑性樹脂に比べて流動開始温度が高いことから、他の熱可塑性樹脂に用いられる一般的な化学発泡剤を液晶ポリエステルに適応させて化学発泡成形を行おうとしても、該化学発泡剤が熱分解してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、化学発泡成形用のマスターバッチとして有用な液晶ポリエステルペレット、及び、該液晶ポリエステルペレットを用いて作製された発泡成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、化学発泡成形用のマスターバッチとして用いることのできる液晶ポリエステルペレットについて検討を行った。その結果、特定の構造を有する化学発泡剤を含む液晶ポリエステルペレットであれば、マスターバッチとして使用でき、該マスターバッチをナチュラルペレットと混合して発泡成形品を作成した際、良好に該化学発泡剤が液晶ポリエステル中で分散して成形品を発泡させられることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を包含する。
【0012】
[1]液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有し、前記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む、液晶ポリエステルペレット。
[2]前記液晶ポリエステル(A)は、ナフタレン骨格を有する繰返し単位を含む、[1]に記載の液晶ポリエステルペレット
[3]前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度が、280℃以下である、[1]又は[2]に記載の液晶ポリエステルペレット。
[4]前記ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、前記液晶ポリエステル(A)100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルペレット。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルペレットを用いて作製された発泡成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化学発泡成形用のマスターバッチとして有用な液晶ポリエステルペレットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(液晶ポリエステルペレット)
本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットは、液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有する。
本明細書において、液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有する液晶ポリエステルペレットとは、液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有する液晶ポリエステル樹脂組成物が溶融混練されたペレット(溶融混練物)である。典型的には、液晶ポリエステル(A)と発泡剤(B)とを含有する液晶ポリエステル樹脂組成物を、2軸押出機で溶融混練し、吐出されたストランドをカットすることで得られるペレットである。
したがって、本明細書において、液晶ポリエステルペレットには、液晶ポリエステル(A)を含有するペレットに、発泡剤(B)を外添したドライブレンドや、液晶ポリエステル(A)及び発泡剤(B)を含有するマイクロカプセルは含まれない。
【0015】
液晶ポリエステルペレットの一実施形態は、化学発泡成形用のマスターバッチである。
【0016】
<液晶ポリエステル(A)>
本実施形態の液晶ポリエステルペレットが含有する液晶ポリエステル(A)は、溶融状態で液晶性を示すポリエステル樹脂であれば、特に限定されない。なお、本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルエーテル、液晶ポリエステルカーボネート、液晶ポリエステルイミド等であってもよい。
【0017】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、400℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、275℃以下であることがさらに好ましい。
【0018】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)の流動開始温度が上記の好ましい下限値以上であれば、該液晶ポリエステル(A)を含有する液晶ポリエステルペレットから作製される発泡成形品の耐熱性をより向上させることができる。
また、本実施形態の液晶ポリエステル(A)の流動開始温度が上記の好ましい上限値以下であれば、後述する発泡剤(B)の分散性をより向上させることができる。
【0019】
例えば、本実施形態の液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、220℃以上400℃以下であることが好ましく、230℃以上280℃以下であることがより好ましく、240℃以上275℃以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本明細書において、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステル(A)の分子量の目安となる温度である(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0021】
流動開始温度の測定方法として、具体的には、毛細管レオメーターを用いて、液晶ポリエステル(A)を9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
【0022】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0023】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)の典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの;複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの;芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、重合可能なそれらの誘導体が用いられてもよい。
【0024】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル);カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物);カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)等が挙げられる。
【0025】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)等が挙げられる。
【0026】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、上記の中でも、ナフタレン骨格を有する繰返し単位を含む液晶ポリエステルであることが好ましく、2,6-ナフチレン基を有する繰返し単位を含む液晶ポリエステルであることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、ナフタレン骨格を有する繰返し単位を含む液晶ポリエステルである場合、ナフタレン骨格を有する繰返し単位の数は、液晶ポリエステル(A)の全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。
また、ナフタレン骨格を有する繰返し単位の数は、液晶ポリエステルの全繰返し単位の合計数に対して、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0028】
液晶ポリエステル(A)におけるナフタレン骨格を有する繰返し単位の数が、上記の好ましい範囲内であれば、液晶ポリエステル(A)を含有する液晶ポリエステルペレットから作製される発泡成形品の機械的強度をより向上させることができる。
【0029】
例えば、液晶ポリエステル(A)におけるナフタレン骨格を有する繰返し単位の数は、液晶ポリエステル(A)の全繰返し単位の合計数に対して、10%以上50%以下が好ましく、15%以上45%以下がより好ましく、20%以上40%以下がさらに好ましく、25%以上35%以下が特に好ましい。
【0030】
本明細書において、繰返し単位の数は、特開2000-19168号公報に記載の分析方法によって求められる値を意味する。
具体的には、液晶ポリエステル樹脂を超臨界状態の低級アルコール(炭素数1~3のアルコール)と反応させて、前記液晶ポリエステル樹脂をその繰返し単位を誘導するモノマーまで解重合し、解重合生成物として得られる各繰返し単位を誘導するモノマーを液体クロマトグラフィーによって定量することで、各繰返し単位の数を算出することができる。
【0031】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ともいう)を有する液晶ポリエステルであることが好ましい。
また、本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ともいう)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ともいう)とを有する液晶ポリエステルであってもよい。
【0032】
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-X-Ar3-Y-
[式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。]
【0033】
(4)-Ar4-Z-Ar5-
[式中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。]
【0034】
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0035】
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられ、その炭素数は、1~10が好ましい。
【0036】
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、その炭素数は、6~20が好ましい。
【0037】
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の水素原子が上述した基で置換されている場合、その置換数は、好ましくは1個又は2個であり、より好ましくは1個である。
【0038】
式(4)中のZにおけるアルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基、2-エチルヘキシリデン基等が挙げられ、その炭素数は1~10が好ましい。
【0039】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1が1,4-フェニレン基であるもの(p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及び、Ar1が2,6-ナフチレン基であるもの(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましく、Ar1が2,6-ナフチレン基であるものがより好ましい。
【0040】
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
【0041】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2が1,4-フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が1,3-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ-テル-4,4’-ジイル基であるもの(ジフェニルエ-テル-4,4’-ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましく、Ar2が1,4-フェニレン基であるもの、Ar2が1,3-フェニレン基であるものがより好ましい。
【0042】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3が1,4-フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p-アミノフェノール又はp-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル又は4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましく、Ar3が4,4’-ビフェニリレン基であるものがより好ましい。
【0043】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)として、具体的には、繰返し単位(1)のみからなる液晶ポリエステル(以下、「LCPA」ともいう)、及び、繰返し単位(1)と、繰返し単位(2)と、繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステル(以下、「LCPB」ともいう)が挙げられる。
【0044】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPAである場合、Ar1が1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)と、Ar1が2,6-ナフチレン基である繰返し単位(1)とを有する液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0045】
LCPAにおいて、Ar1が2,6-ナフチレン基である繰返し単位(1)の数は、LCPAの全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。
また、Ar1が2,6-ナフチレン基である繰返し単位(1)の数は、LCPAの全繰返し単位の合計数に対して、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0046】
例えば、LCPAにおいて、Ar1が2,6-ナフチレン基を含む繰返し単位(1)の数は、液晶ポリエステル(A)の全繰返し単位の合計数に対して、10%以上50%以下が好ましく、15%以上45%以下がより好ましく、20%以上40%以下がさらに好ましく、25%以上35%以下が特に好ましい。
【0047】
LCPAにおいて、Ar1が1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)の数は、LCPAの全繰返し単位の合計数(100%)に対して、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が特に好ましい。
また、Ar1が2,6-ナフチレン基である繰返し単位(1)の数は、LCPAの全繰返し単位の合計数に対して、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、75%以下が特に好ましい。
【0048】
例えば、LCPAにおいて、Ar1が1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)の数は、液晶ポリエステル(A)の全繰返し単位の合計数に対して、10%以上50%以下が好ましく、15%以上45%以下がより好ましく、20%以上40%以下がさらに好ましく、25%以上35%以下が特に好ましい。
【0049】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPBである場合、繰返し単位(1)の数は、全繰返し単位の合計数(100%)に対して、30%以上80%以下が好ましく、40%以上70%以下がより好ましく、45%以上70%以下がさらに好ましい。
【0050】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPBである場合、繰返し単位(2)の数は、全繰返し単位の合計数(100%)に対して、35%以下が好ましく、10%以上35%以下がより好ましく、15%以上30%以下がさらに好ましい。
【0051】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPBである場合、繰返し単位(3)の数は、全繰返し単位の合計数(100%)に対して、35%以下が好ましく、10%以上35%以下がより好ましく、15%以上30%以下がさらに好ましい。
【0052】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPBである場合、繰返し単位(2)の数と繰返し単位(3)の数との割合は、[繰返し単位(2)の数]/[繰返し単位(3)の数]で表して、0.9/1~1/0.9が好ましく、0.95/1~1/0.95がより好ましく、0.98/1~1/0.98がさらに好ましい。
【0053】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)が、LCPBである場合、繰返し単位(1)~(3)を、それぞれ2種以上有してもよい。また、LCPBは、繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その数は、全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0054】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、上記の中でも、繰返し単位(1)のみからなる液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0055】
本実施形態の液晶ポリエステル(A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
液晶ポリエステル(A)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
また、液晶ポリエステル(A)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
例えば、液晶ポリエステル(A)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、40質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上98質量%以下がより好ましく、90質量%以上97質量%以下がさらに好ましく、95質量%以下97質量%以下が特に好ましい。
【0058】
<発泡剤(B)>
本実施形態の液晶ポリエステルペレットは、発泡剤(B)を含有する。
発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む。
【0059】
発泡剤(B)中のビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、発泡剤(B)全量100質量%に対して、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%、すなわち、発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)のみからなることが特に好ましい。
【0060】
≪ビステトラゾール化合物(B1)≫
ビステトラゾール化合物(B1)は、1つの化合物中に、2つのテトラゾール骨格を有する化合物である。
ビステトラゾール化合物(B1)として、具体的には、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)、5,5’-メチレンビス(2H-テトラゾール)、5,5’-アゾビス(1H-テトラゾール)、5,5’-ジアゾアミノビス(1H-テトラゾール)、5,5’-(2-ブテン-1,4-ジイル)ビス(1H-テトラゾール)、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(2H-テトラゾール)、5,5’-(1,3-フェニレン)ビス(2H-テトラゾール)、5,5’-テトラメチレンビス(2H-テトラゾール)、1,2-ビス(1H-テトラゾール5-イル)ヒドラジン、5,5’-(オキシビスエチレン)ビス(1H-テトラゾール)、4,5-ビス(1H-テトラゾール5-イル)-2H-イミダゾ-ル、ビス(1H-テトラゾール5-イル)アミン(以下、これらをまとめて「ビステトラゾール化合物(B10)」という)等が挙げられる。
また、ビステトラゾール化合物(B1)は、ビステトラゾール化合物(B10)の誘導体(ビステトラゾール化合物(B10)のアルカリ金属塩、ビステトラゾール化合物(B10)のアミン塩)等であってもよい。
【0061】
ビステトラゾール化合物(B1)は、上記の中でも、ビステトラゾール化合物(B10)のアミン塩であることが好ましく、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)骨格を有する化合物のアミン塩であることがより好ましい。
ビステトラゾール化合物(B1)が、ビステトラゾール化合物(B10)のアミン塩であることにより、併用する液晶ポリエステル(A)の安定性がより向上する。
【0062】
ビステトラゾール化合物(B10)のアミン塩とは、ビステトラゾール化合物(B10)と、アンモニア、脂肪族アミン、複素環アミン、及び、芳香族アミン等の公知の塩基性アミン化合物との反応により得られる塩である。
【0063】
脂肪族アミンとしては、脂肪族第1級アミン、脂肪族第2級アミン、脂肪族第3級アミンが挙げられる。
脂肪族第1級アミンとして、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、tert-アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0064】
脂肪族第2級アミンとして、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0065】
脂肪族第3級アミンとして、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0066】
芳香族アミン及び複素環アミンとして、具体的には、アニリン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ピラゾール及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、ピペラジン及びその誘導体等が挙げられる。
【0067】
塩基性アミン化合物としては、上記の中でも、アンモニア、複素環アミン、又は、芳香族アミンであることが好ましく、アンモニア、又は、複素環アミンであることがより好ましい。
【0068】
本実施形態の液晶ポリエステルペレットにおけるビステトラゾール化合物(B1)は、上記の中でも、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ジアンモニウム、又は、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ピペラジンであることが好ましく、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ピペラジンであることがより好ましい。
【0069】
本実施形態のビステトラゾール化合物(B1)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。
また、ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0071】
ビステトラゾール化合物(B1)の含有量が、上記の好ましい値以上であれば、本実施形態の液晶ポリエステルペレットをマスターバッチとして用いる際に、該マスターバッチの量を減らすことができ、該マスターバッチの貯蔵量をより少なくすることできる。
ビステトラゾール化合物(B1)の含有量が、上記の好ましい値以下であれば、本実施形態の液晶ポリエステルペレットを用いて作製される発泡成形品の成形性がより向上する。
【0072】
例えば、ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましく、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
【0073】
ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステル(A)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。
また、ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステル(A)100質量部に対して、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、6質量部以下が特に好ましい。
【0074】
例えば、ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、液晶ポリエステル(A)100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下が好ましく、2質量部以上100質量部以下がより好ましく、3質量部以上10質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上6質量部以下が特に好ましい。
【0075】
ビステトラゾール化合物(B1)は、分解温度が、260℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、320℃以上であることが特に好ましい。
【0076】
ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度が、上記の好ましい下限値以上であれば、ビステトラゾール化合物(B1)と上述した液晶ポリエステル(A)とを溶融混練しても、ビステトラゾール化合物(B1)がより分解しにくくなり、本実施形態の液晶ポリエステルペレットをより作製しやすくなる。
【0077】
ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度の上限値は、特に限定されず、例えば、500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることがさらに好ましい。
【0078】
例えば、ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度は、260℃以上500℃以下であることが好ましく、280℃以上400℃以下であることがより好ましく、300℃以上350℃以下であることがさらに好ましく、320℃以上350℃以下であることが特に好ましい。
【0079】
本実施形態の液晶ポリエステルペレットにおけるビステトラゾール化合物(B1)の分解温度と、液晶ポリエステル(A)の流動開始温度との差(ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度-液晶ポリエステル(A)の流動開始温度)は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。
【0080】
ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度と、液晶ポリエステル(A)の流動開始温度との差が、上記の好ましい下限値以上であれば、ビステトラゾール化合物(B1)と上述した液晶ポリエステル(A)とを溶融混練しても、ビステトラゾール化合物(B1)がより分解しにくくなり、本実施形態の液晶ポリエステルペレットをより作製しやすくなる。
【0081】
ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度と、液晶ポリエステル(A)の流動開始温度との差の上限値は、特に限定されず、例えば、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0082】
例えば、ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度と、液晶ポリエステル(A)の流動開始温度との差は、5℃以上150℃以下であることが好ましく、10℃以上100℃以下であることがより好ましく、50℃以上100℃以下であることがさらに好ましく、70℃以上100℃以下であることが特に好ましい。
【0083】
本明細書における、ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度は、DSC(示差走査熱量測定)やDTA(示差熱分析)を用いて、測定することができる。
【0084】
ビステトラゾール化合物(B1)の理論発生ガス量は、340mL/g以上であることが好ましく、360mL/g以上であることがより好ましく、380mL/g以上であることがさらに好ましい。
また、ビステトラゾール化合物(B1)の理論発生ガス量は、600mL/g以下であることが好ましく、550mL/g以下であることがより好ましく、520mL/g以下であることがさらに好ましい。
【0085】
例えば、ビステトラゾール化合物(B1)の理論発生ガス量は、340mL/g以上600mL/g以下であることが好ましく、360mL/g以上550mL/g以下であることがより好ましく、380mL/g以上520mL/g以下であることがさらに好ましい。
【0086】
本明細書において、ビステトラゾール化合物(B1)の理論発生ガス量は、ビステトラゾール化合物(B1)が分解してテトラゾール環1個につき1分子の窒素分子が発生したと仮定した際に発生する窒素ガス量を、該化合物の分子量で割ることで算出することができる。
【0087】
本実施形態の液晶ポリエステルペレットにおける発泡剤(B)は、上述したビステトラゾール化合物(B1)以外の発泡剤(以下、「発泡剤(B2)」という)を含有してもよい。
発泡剤(B2)としては、ジニトロペンタメリレンテトラミン、アゾジカルボンアミド
4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機系化学発泡剤、炭酸水素ナトリウム等の無機系化学発泡剤が挙げられる。
【0088】
本実施形態の発泡剤(B)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
発泡剤(B)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。
また、発泡剤(B)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0090】
発泡剤(B)の含有量が、上記の好ましい値以上であれば、本実施形態の液晶ポリエステルペレットをマスターバッチとして用いる際に、該マスターバッチの量を減らすことができ、該マスターバッチの貯蔵量をより少なくすることできる。
発泡剤(B)の含有量が、上記の好ましい値以下であれば、本実施形態の液晶ポリエステルペレットを用いて作製される発泡成形品の成形性がより向上する。
【0091】
例えば、発泡剤(B)の含有量は、液晶ポリエステルペレット全量100質量%に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましく、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
【0092】
<任意成分>
本実施形態の液晶ポリエステルペレットは、上述した液晶ポリエステル(A)、及び、発泡剤(B)以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、フィラー、液晶ポリエステル以外の樹脂、当技術分野で周知の添加剤が挙げられる。
【0093】
≪フィラー≫
フィラーとしては、無機充填材でもよいし有機充填材でもよく、用途等に応じて適宜決定され、機械強度付与の点から、無機充填材が好適に用いられる。
【0094】
[無機充填材]
無機充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、粒状充填材であってもよい。
【0095】
繊維状充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。なかでも、ガラス繊維が好ましい。
【0096】
板状充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0097】
粒状充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0098】
以下、繊維状充填材としてガラス繊維について説明する。
【0099】
ガラス繊維の例としては、長繊維タイプのチョップドガラス繊維、短繊維タイプのミルドガラス繊維など、種々の方法で製造されたものが挙げられる。本実施形態においては、これらのうち2種以上を併用して使用することもできる。
【0100】
上記ガラス繊維の種類としては、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、Sガラス又はこれらの混合物などが挙げられる。中でもE-ガラスは強度に優れ、かつ入手がしやすい点から好ましい。
【0101】
上記ガラス繊維としては、弱アルカリ性の繊維が機械的強度(引張強度及びIzod衝撃強度)の点で優れており、好ましく使用できる。特に酸化ケイ素含有量が上記ガラス繊維の総質量に対して50質量%以上80質量%以下のガラス繊維が好ましく用いられ、65質量%以上77質量%以下のガラス繊維がより好ましく用いられる。
【0102】
上記ガラス繊維は、必要に応じてシラン系カップリング剤又はチタン系カップリング剤などのカップリング剤で処理された繊維でもよい。
【0103】
上記ガラス繊維は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆されていてもよい。また、上記ガラス繊維は、収束剤で処理されていてもよい。
【0104】
[有機充填材]
有機充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、粒状充填材であってもよい。
繊維状充填材としては、例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース繊維などが挙げられる。粒状充填材としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸のホモポリマーなどの不溶不融の高分子が挙げられる。
【0105】
≪液晶ポリエステル以外の樹脂≫
液晶ポリエステル以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0106】
≪当技術分野で周知の添加剤≫
当技術分野で周知の添加剤としては、例えば、フルオロカーボン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級アルコール、金属石鹸類等の離型剤;着色剤;酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤が挙げられる。
【0107】
以上説明した本実施形態の液晶ポリエステルペレットは、上述した液晶ポリエステル(A)、及び、発泡剤(B)を含有し、発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む。
ビステトラゾール化合物(B1)は、ビステトラゾール骨格という特定の構造を有するため、従来汎用の化学発泡剤よりも分解温度が高く、液晶ポリエステル(A)と一緒に溶融混練した場合であっても、熱分解しにくい。加えて、ビステトラゾール化合物(B1)は、該特定の構造を有するため、溶融混練の際に、液晶ポリエステル(A)中で良好に分散することができる。また、テトラゾール骨格は比較的塩基性が低い骨格であるため、液晶ポリエステル(A)とビステトラゾール化合物(B1)とを併用しても、ビステトラゾール化合物(B1)が、液晶ポリエステル(A)を分解してしまうことを抑制することができる。
したがって、本実施形態の液晶ポリエステルペレットは、液晶ポリエステル(A)と発泡剤(B)とを併用していても、良好な造粒性を有する。
よって、本実施形態の液晶ポリエステルペレットは、特に化学発泡成形用のマスターバッチとして有用である。
【0108】
本発明は以下の側面を有する。
【0109】
「1」液晶ポリエステル(A)と、発泡剤(B)とを含有し、前記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む、化学発泡成形用マスターバッチ。
「2」前記液晶ポリエステル(A)は、ナフタレン骨格を有する繰返し単位を含む、「1」に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
「3」前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度が、280℃以下である、「1」又は「2」に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
「4」前記ビステトラゾール化合物(B1)の分解温度が、300℃以上である、「1」~「3」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0110】
「5」前記液晶ポリエステル(A)の含有量は、前記化学発泡成形用マスターバッチ全量100質量%に対して、好ましくは40質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上97質量%以下であり、特に好ましくは95質量%以下97質量%以下である、「1」~「4」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0111】
「6」前記ビステトラゾール化合物(B1)の含有量は、前記化学発泡成形用マスターバッチ全量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上5質量%以下である、「1」~「5」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0112】
「7」前記液晶ポリエステル(A)は、下記式(1’)で表される繰返し単位を有する液晶ポリエステルである、「1」~「6」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
(1’)-O-Ar1’-CO-
[式中、Ar1’は、ナフチレン基を表す。]
【0113】
「8」前記式(1’)で表される繰返し単位の数は、前記液晶ポリエステル(A)の全繰返し単位の合計数に対して、好ましくは10%以上50%以下であり、より好ましくは15%以上45%以下であり、さらに好ましくは20%以上40%以下であり、特に好ましくは25%以上35%以下である、「7」に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0114】
「9」前記化学発泡成形用マスターバッチは、ビステトラゾール化合物(B1)のみを含有し、他の発泡剤は含有しない、「1」~「8」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0115】
「10」前記ビステトラゾール化合物(B1)は、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ジアンモニウム、及び、5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ピペラジンからなる群から選択される一種以上のビステトラゾール化合物である、「1」~「9」のいずれか一項に記載の化学発泡成形用マスターバッチ。
【0116】
(液晶ポリエステルペレットの製造方法)
上述した本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットは、公知の方法で製造することができる。
例えば、液晶ポリエステル(A)と発泡剤(B)とを、2軸押出機(例えば、池貝社製、「PCM-30HS」)と水封式真空ポンプ(例えば、神港精機社製、「SW-25」)を用いて、フィーダーから液晶ポリエステル(A)と発泡剤(B)とをフィードし、ニーディングブロックを挿入したスクリューにて、真空ベントで脱気しながら溶融混練し、吐出されたストランドをカットすることで、上述した本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットを製造することができる。
【0117】
2軸押出機のシリンダー温度は、液晶ポリエステル(A)の流動開始温度以上、発泡剤(B)の分解温度未満となるように適宜設定される。
2軸押出機のシリンダー温度は、例えば、200~300℃が好ましく、240~280℃がより好ましい。
【0118】
(液晶ポリエステルペレット混合物)
本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレット混合物は、上述した実施形態の液晶ポリエステルペレットと、該液晶ポリエステルペレット以外のペレットとを含有するものである。
典型的には、上述した実施形態の液晶ポリエステルペレットがマスターバッチであり、該液晶ポリエステルペレット以外のペレットがナチュラルペレットである。
【0119】
液晶ポリエステルペレット混合物の一実施形態は、液晶ポリエステル(A)、及び、発泡剤(B)を含有し、前記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含む化学発泡成形用のマスターバッチと、液晶ポリエステル、及び、フィラーを含有し、発泡剤(B)は含有しないナチュラルペレットとを含有するものである。
【0120】
液晶ポリエステルペレット混合物におけるマスターバッチと、ナチュラルペレットとの質量比(マスターバッチ:ナチュラルペレット)は、1:100~30:100が好ましく、5:100~20:100がより好ましい。
【0121】
液晶ポリエステルペレット混合物における発泡剤(B)の含有量は、液晶ポリエステルペレット混合物全量100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上6質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上0.7質量%以下が特に好ましい。
【0122】
液晶ポリエステルペレット混合物における発泡剤(B)の含有量が上記の好ましい範囲内であれば、本実施形態の液晶ポリエステルペレット混合物を用いて作製される発泡成形品の成形性がより向上する。
【0123】
ナチュラルペレットにおける液晶ポリエステルとして、具体的には、上述した実施形態の液晶ポリエステルペレットで説明した液晶ポリエステルと同様のものが挙げられる。
マスターバッチにおける液晶ポリエステル(A)と、ナチュラルペレットにおける液晶ポリエステルは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0124】
ナチュラルペレットにおけるフィラーとしては、上述した実施形態の液晶ポリエステルペレットで説明したフィラーと同様のものが挙げられる。その中でも、繊維状充填材であることが好ましく、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0125】
ナチュラルペレット中のフィラーの含有量は、ナチュラルペレット全量100質量%に対して、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
【0126】
ナチュラルペレットは、液晶ポリエステル、及び、フィラー以外の任意成分を含有してもよい。該任意成分として、具体的には、上述した実施形態の液晶ポリエステルペレットで説明した任意成分と同様のものが挙げられる。
【0127】
液晶ポリエステルペレット混合物として、より具体的には、液晶ポリエステル(A)、及び、発泡剤(B)を含有し、前記発泡剤(B)は、ビステトラゾール化合物(B1)を含み、フィラーを含有しない化学発泡成形用のマスターバッチと、液晶ポリエステル、及び、フィラーを含有し、発泡剤(B)は含有しないナチュラルペレットとを含有するものが挙げられる。
【0128】
以上説明した本実施形態の液晶ポリエステルペレット混合物は、上述した本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットをマスターバッチとして用いているため、良好な成形性を有する発泡成形品を簡易に製造することができる。
【0129】
(発泡成形品)
本発明の一態様に係る発泡成形品は、上述した本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットを用いて作製されたものである。
【0130】
発泡成形品の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。
【0131】
射出成形機のシリンダー温度は、用いる液晶ポリエステルの流動開始温度より40~10℃高い温度に設定することが好ましい。
射出成形機のシリンダー温度は、例えば、320~400℃が好ましく、320~360℃がより好ましい。
【0132】
以上説明した本実施形態の発泡成形品は、上述した本発明の一態様に係る液晶ポリエステルペレットを用いて作製されているため、特殊な設備を必要とせず、簡易に製造することができる。
【0133】
本発明の一態様に係る発泡成形品は、液晶ポリエステルが適用し得るあらゆる用途に利用可能である。例えば、各種の電気・電子機器における筐体内装部品、自動車部品、家電製品部品、産業用機械部品、日用雑貨品、建材等が挙げられる。
中でも、本発明の一態様に係る発泡成形品は、自動車部品、及び、建材として有用である。
【実施例0134】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0135】
[液晶ポリエステルの流動開始温度]
本実施例では、液晶ポリエステルの流動開始温度を以下のようにして測定した。
フローテスター(株式会社島津製作所の「CFT-500EX型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPaの荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・sの粘度を示す温度を測定し、これを流動開始温度とした。
【0136】
<使用原料>
本実施例で使用した液晶ポリエステル、及び、発泡剤を以下に示した。
【0137】
・液晶ポリエステル
下記の製造例1及び2で得られた液晶ポリエステル(1)及び(2)を使用した。
【0138】
[製造例1(液晶ポリエステル(1)の製造]
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸1078.7g(7.81モル)、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸600.3g(3.29モル)、無水酢酸1235.3g(12.1モル)、及び、0.17gの1-メチルイミダゾールを仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて140℃まで昇温し、温度を140℃に保持して1時間還流させた。その後、留出する副生酢酸を留去しながら3時間40分かけて280℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分の流動開始温度は235℃であった。
得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温(25℃)から235℃まで1時間かけて昇温し、235℃から240℃まで4時間10分かけて昇温し、240℃で5時間保持し、固相重合を行った。
得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(1)(以下、LCP1という)を得た。得られたLCP1の流動開始温度は270℃であった。LCP1を偏光顕微鏡で観察した結果、溶融時に光学異方性を示した。
【0139】
LCP1は、全繰返し単位の合計数100%に対して、Ar1が1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)(すなわち、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)を70%、Ar1が2,6-ナフチレン基である繰返し単位(1)(すなわち、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位)を30%有していた。
なお、液晶ポリエステル(1)が有するナフタレン骨格(2,6-ナフチレン基)を有する構成単位の割合は、全繰返し単位の合計数に対して、30%である。
【0140】
[製造例2(液晶ポリエステル(2)の製造]
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、
p-ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。次いで、1-メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。
【0141】
得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(2)(以下、LCP2という)を得た。LCP2の流動開始温度は、286℃であった。
【0142】
LCP2は、全繰返し単位の合計数100%に対して、Ar1が1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)(すなわち、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)を60%、Ar2が1,4-フェニレン基である繰返し単位(2)(すなわち、テレフタル酸に由来する繰返し単位)を12%、Ar2が1,3-フェニレン基である繰返し単位(2)(すなわち、イソフタル酸に由来する繰返し単位)を8%、及びAr3が4,4’-ビフェニリレン基である繰返し単位(3)(すなわち、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位)を20%有していた。
【0143】
・発泡剤
B1-1:5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ジアンモニウム(分子量172.15、分解温度263℃、理論ガス発生量520mL/g)。
B1-2:5,5’-ビ(1H-テトラゾール)ピペラジン(分子量224.23、分解温度330℃、理論ガス発生量400mL/g)。
B2-1:下記化学式(b2-1)で表される化合物(分子量127.11、分解温度308℃、理論ガス発生量352mL/g)。
【0144】
【0145】
<液晶ポリエステルペレットの製造例>
(実施例1~10、比較例1)
実施例1~10、比較例1の液晶ポリエステルペレットは、LCP1と発泡剤とを、表1に示す割合で混合することにより製造した。
具体的には、LCP1と発泡剤とを、表1に示す割合で、2軸押出機(池貝社製、「PCM-30HS」)と水封式真空ポンプ(神港精機社製、「SW-25」)を用いて、シリンダー温度を250℃とし、フィーダーから液晶ポリエステルと発泡剤とをフィードし、ニーディングブロックを挿入したスクリューにて、真空ベントで脱気しながら溶融混練した。吐出されたストランドをカットし、実施例1~10、比較例1の液晶ポリエステルペレットを得た。
【0146】
(実施例11、12、比較例2)
実施例11、12、比較例2の液晶ポリエステルペレットは、LCP2と発泡剤とを、表1に示す割合で混合することにより製造した。
具体的には、シリンダー温度を250℃から265℃に変更したこと以外は、上記実施例1~10、比較例1の製造方法と同様の方法で、実施例11、12、比較例2の液晶ポリエステルペレットを得た。
【0147】
[造粒性の評価]
上記<液晶ポリエステルペレットの製造例>に記載の方法で製造した各例の液晶ポリエステルペレットについて、以下の基準で造粒性を評価した。
A:ストランドが途中で切れることなく造粒することが可能であった。
B:まれにストランドが切れることがあったが、造粒は可能であった。
C:ストランドが脆く、ストランドが途中で切れることなく造粒することが困難であった。
【0148】
【0149】
【0150】
表1及び2中の数値は、配合量(質量%)である。
表1に示す通り、実施例の液晶ポリエステルペレットは、比較例の液晶ポリエステルペレットに比べて、造粒性が良好であった。
【0151】
<発泡成形品の製造例>
上記各例の液晶ポリエステルペレットをマスターバッチとし、該マスターバッチと、LCP1を含有するナチュラルペレット(以下、「ナチュラルペレット1という」)、又は、LCP2を含有するナチュラルペレット(以下、「ナチュラルペレット2という」)とを用いて、各例の発泡成形品を製造した。
【0152】
ナチュラルペレット1は、LCP1と、チョップドガラス繊維(日東紡績製社製、商品名「CS3J-260S」)とを原料として使用し、それらを溶融混錬して得たペレットである。
ナチュラルペレット1の原料として、100質量部のLCP1に対して、30質量部の前記チョップドガラス繊維を用いた。
【0153】
ナチュラルペレット2は、LCP2と、前記チョップドガラス繊維とを原料として使用し、それらを溶融混錬して得たペレットである。
ナチュラルペレット2の原料として、100質量部のLCP2に対して、30質量部の前記チョップドガラス繊維を用いた。
【0154】
(実施例1~4、6~8)
実施例1~4、6~8の液晶ポリエステルペレットのいずれかのペレット、及び、ナチュラルペレット1を、日本製鋼社製の全電動成形機「J450AD」を用いて、シリンダー設定温度が330℃のシリンダー内で、該ペレット、及び、ナチュラルペレット1を加熱し、該ペレット、及び、ナチュラルペレット1の質量比(実施例1~4、6~8の液晶ポリエステルペレットのいずれかのペレット:ナチュラルペレット1)が、15:100となるように計量し、溶融樹脂を設定温度100℃で、キャビティー形状が200mm×250mm×1.5mm厚である金型に射出し、コアバック法により、平板形状の発泡成形品(200mm×250mm×3.0mm厚)を作製した。
【0155】
(実施例9)
実施例1~4、6~8の液晶ポリエステルペレットのいずれかのペレットを、実施例9の液晶ポリエステルペレットに変更し、液晶ポリエステルペレットとナチュラルペレット1との質量比を、15:100から7.5:100に変更したこと以外は、上記と同様の製造方法で、平板形状の発泡成形品(200mm×250mm×3.0mm厚)を作製した。
【0156】
(実施例11及び12)
実施例1~4、6~8の液晶ポリエステルペレットのいずれかのペレットを、実施例11又は12の液晶ポリエステルペレットに変更し、ナチュラルペレット1をナチュラルペレット2に変更し、シリンダー設定温度を330℃から350℃に変更したこと以外は、上記と同様の製造方法で、平板形状の発泡成形品(200mm×250mm×3.0mm厚)を作製した。
【0157】
[発泡成形品の成形性の評価]
上記<発泡成形品の製造例>に記載の方法で製造した各例の発泡成形品ついて、以下の基準で成形性を評価した。
A:発泡成形品全体が3.0mm厚に発泡した。
B:発泡成形品の一部が3.0mm厚より薄くなった。
【0158】
【0159】
【0160】
表3及び4に示す通り、上述した実施例のポリエステルペレットをマスターバッチとして用いて作製した発泡成形品は、良好な成形性であった。