(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116669
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】加工システム、加工方法、ロボットシステム、接続装置及びエンドエフェクタ装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20230815BHJP
B25J 13/08 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B25J13/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096872
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2021513135の分割
【原出願日】2019-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真路
(57)【要約】
【課題】物体に対して加工光を照射する照射装置と物体との相対的な位置関係を適切にすることが可能な加工システムを提供する。
【手段】加工システムは、物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、物体に向けて加工光を照射する照射装置と、可動部材と照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、可動部材と照射装置とを接続する接続装置とを備え、接続装置は、可動部材および照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、可動部材と照射装置とを結合する弾性部材とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工光で物体を加工する加工システムにおいて、
前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、
前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と
を備え、
前記接続装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える
加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工光で物体を加工可能な加工システム及び加工方法の技術分野、ロボットシステム、エンドエフェクタ装置及びロボットとエンドエフェクタとを接続する接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を加工可能な加工システムとして、特許文献1には、物体の表面に加工光を照射して構造を形成する加工システムが記載されている。この種の加工システムでは、物体に対して加工光を照射する照射装置と物体との相対的な位置関係を適切にすることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置とを備え、前記接続装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える加工システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と、前記可動部材から前記照射装置へ向かう振動を低減する振動低減装置とを備える加工システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と、前記物体又は基準位置に対する前記照射装置の位置を計測する位置計測装置とを備え、前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記照射装置の位置を変更する位置変更部材を備える加工システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、加工光で物体を加工する加工方法において、可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することと、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える接続部によって、前記可動部材と前記照射装置とを接続することとを含む加工方法が提供される。
【0008】
第5の態様によれば、加工光で物体を加工する加工方法において、可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することと、前記可動部材から前記照射装置へ向かう振動を低減することとを含む加工方法が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、加工光で物体を加工する加工方法において、可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、前記物体又は基準位置に対する前記照射装置の位置を計測することと、計測された前記照射装置の前記位置に基づいて、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することとを含む加工方法が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置とを備え、前記接続装置は、前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備えるロボットシステムが提供される。
【0011】
第8の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置とを備えるロボットシステムが提供される。
【0012】
第9の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、前記物体又は基準位置に対する前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置とを備え、前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備えるロボットシステムが提供される。
【0013】
第10の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置であって、前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備え、前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置が提供される。
【0014】
第11の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置であって、前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置を備え、前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置が提供される。
【0015】
第12の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置であって、前記物体又は基準位置に対する前記接続装置及び/又は前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備える接続装置が提供される。
【0016】
第13の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置とを備え、前記接続装置は、前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備えるエンドエフェクタ装置が提供される。
【0017】
第14の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置とを備えるエンドエフェクタ装置が提供される。
【0018】
第15の態様によれば、物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、前記物体又は基準位置に対する前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置とを備え、前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備えるエンドエフェクタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)のそれぞれは、加工対象物の表面に形成された塗装膜の加工の様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1実施形態の加工システムが備える光照射装置を模式的に示す断面図であり、
図3(b)及び
図3(c)のそれぞれは、光照射装置が備える光源系の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、光源系を備えていない光照射装置の構図を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1駆動系の構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2駆動系の構造を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、第1実施形態の加工装置が形成するリブレット構造の断面を示す断面図であり、
図7(b)は、第1実施形態の加工装置が形成するリブレット構造を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)のそれぞれは、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す正面図であり、
図8(c)は、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す側面図である。
【
図9】
図9は、塗装膜の表面に設定される複数の加工ショット領域を示す平面図である。
【
図10】
図10は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図12】
図12は、スキャン動作とステップ動作とが繰り返される期間中の加工光の走査軌跡(つまり、目標照射領域の移動軌跡)を示す平面図である。
【
図13】
図13は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図14】
図14(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図15】
図15は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図16】
図16は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図17】
図17は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図18】
図18は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図19】
図19は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図20】
図20は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図23】
図23(a)及び
図23(b)のそれぞれは、位置計測装置の計測結果に基づいて駆動系が制御された場合に形成されるテスト構造を示す平面図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)のそれぞれは、位置計測装置の計測結果に基づいて、テスト構造を形成する場合と同様に駆動系を制御しながら加工光を照射した場合に感応性部材に形成される特性変化パターンを示す平面図である。
【
図25】
図25は、第4実施形態の加工システムの構造を模式的に示す断面図である。
【
図26】
図26は、第5実施形態の加工システムの構造を模式的に示す斜視図である。
【
図27】
図27は、第5実施形態の加工システムの構造を模式的に示す正面図である。
【
図28】
図28は、第5実施形態の加工システムの構造を模式的に示す側面図である。
【
図29】
図29は、第5実施形態の加工システムの構造の一部を拡大して示す正面図である。
【
図30】
図30は、第6実施形態の駆動系の構造を示す断面図である。
【
図31】
図31は、第6実施形態の駆動系の構造を示す断面図である。
【
図32】
図32は、加工対象物である航空機の斜め下方から斜め上方に向けて加工光を照射するように姿勢が変わった光照射装置を示す正面図である。
【
図33】
図33は、
図32に示す光照射装置と第1駆動系とを接続する複数の第2駆動系を示す断面図である。
【
図34】
図34は、第7実施形態の加工システムの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、加工システム、加工方法、ロボットシステム、接続装置及びエンドエフェクタ装置の実施形態について説明する。以下では、加工光ELを用いて加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工する加工システムSYSを用いて、加工システム、加工方法、ロボットシステム、接続装置及びエンドエフェクタ装置の実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0021】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0022】
(1)第1実施形態の加工システムSYSa
初めに、第1実施形態の加工システムSYS(以降、第1実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSa”と称する)について説明する。
【0023】
(1-1)加工システムSYSaの構造
初めに、
図1を参照しながら、第1実施形態の加工システムSYSaの構造について説明する。
図1は、第1実施形態の加工システムSYSaの構造を模式的に示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された(例えば、塗布された)塗装膜SFを加工する。加工対象物Sは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。塗装膜SFは、加工対象物Sの表面を覆う塗料の膜である。このため、塗装膜SFは、塗料層と称してもよい。加工対象物Sは、塗装膜SFに対する基材となる。塗装膜SFの厚みは、例えば数十マイクロメートルから数百マイクロメートルであるが、その他の任意のサイズであってもよい。塗装膜SFを構成する塗料は、例えば、樹脂性の塗料を含んでいてもよいし、それ以外の種類の塗料を含んでいてもよい。樹脂製の塗料は、例えば、アクリル系の塗料(例えば、アクリルポリオールを含む塗料)、ポリウレタン系の塗料(例えば、ポリウレタンポリオールを含む塗料)、ポリエステル系の塗料(例えば、ポリエステルポリオールを含む塗料)、ビニル系の塗料、フッ素系の塗料(例えば、フッ素系ポリオールを含む塗料)、シリコン系の塗料及びエポキシ系の塗料のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0025】
図1は、水平面(つまり、XY平面)に沿った表面を有する加工対象物S上に加工システムSYSa(特に、加工システムSYSaが備える後述の加工装置1)が配置されている例を示している。しかしながら、加工システムSYSaは、水平面に沿った表面を有する加工対象物S上に配置されるとは限らない。例えば、
図8等を参照しながら後に詳述するように、加工システムSYSaは、水平面に交差する表面を有する加工対象物S上に配置されてもよい。加工システムSYSaは、加工対象物Sから吊り下がるように配置されてもよい。この場合には、X軸方向及びY軸方向は、便宜上、加工対象物Sの表面に沿った方向(典型的には、平行な方向)として定義されてもよく、Z軸方向は、便宜上、加工対象物Sの表面に交差する方向(典型的には、直交する方向)として定義されてもよい。
【0026】
加工システムSYSaは、塗装膜SFを加工するために、塗装膜SFに対して加工光ELを照射する。加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。一例として、加工光ELは、レーザ光であってもよい。更に、加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような波長の光であってもよい。第1実施形態では、加工光ELが不可視光(例えば、赤外光及び紫外光の少なくとも一方等)である例を用いて説明を進める。つまり、第1実施形態では、加工光ELが、可視光の波長帯域よりも短い波長帯域に含まれる波長の光、及び、可視光の波長帯域よりも長い波長帯域に含まれる波長の光の少なくとも一方である例を用いて説明を進める。但し、加工光ELは、可視光であってもよい。
【0027】
ここで、
図2(a)及び
図2(b)を参照しながら、加工光ELを用いた塗装膜SFの加工の様子について説明する。
図2(a)及び
図2(b)のそれぞれは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFの加工の様子を模式的に示す断面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面に設定される目標照射領域EAに対して加工光ELを照射する。尚、目標照射領域EAは、加工システムSYSaが加工光ELを照射することが予定されている領域である。
図2(a)に示すように、目標照射領域EAに加工光ELが照射されると、目標照射領域EAと重なる塗装膜SF(つまり、目標照射領域EAの-Z側に位置する塗装膜)の一部が加工光ELによって蒸発する。このとき、塗装膜SFの厚み方向において、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの全てが蒸発しない。つまり、塗装膜SFの厚み方向において、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの一部(具体的には、塗装膜SFのうち目標照射領域EAに相対的に近い部分)が蒸発する一方で、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの他の一部(具体的には、塗装膜SFのうち目標照射領域EAから相対的に遠い部分)が蒸発しない。言い換えれば、塗装膜SFは、塗装膜SFから加工対象物Sが露出しない程度にしか蒸発しない。このため、加工光ELの特性は、塗装膜SFから加工対象物Sが露出しない程度にしか塗装膜SFを蒸発させることがない所望の特性に設定されていてもよい。加工光ELの特性は、加工光ELの照射によって加工対象物Sに影響を与えない所望の特性に設定されていてもよい。加工光ELの特性は、加工光ELの照射によって塗装膜SFのみに影響を与える所望の特性に設定されていてもよい。尚、加工光ELの特性は、加工光ELの波長、塗装膜SFの表面に対して加工光ELから伝達される単位時間当たりの及び/又は単位面積当たりのエネルギー量、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度分布、塗装膜SFの表面に対する加工光ELの照射時間、及び、塗装膜SFの表面における加工光ELのサイズ(一例として、スポット径や面積)の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0029】
このとき、塗装膜SFに照射される加工光ELのエネルギー(つまり、強度)は、加工光ELの照射によって加工対象物Sに影響を与えないように定められる。加工光ELのエネルギーは、加工光ELが塗装膜SFを貫通して加工対象物Sに到達しないように定められる。言い換えると、加工光ELのエネルギーは、加工光ELの照射によって塗装膜SFのみに影響を与えるように定められる。
【0030】
その結果、塗装膜SFが蒸発した部分では、塗装膜SFが除去される。一方で、塗装膜SFが蒸発しなかった部分では、塗装膜SFがそのまま残留する。つまり、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、塗装膜SFが部分的に除去される。その結果、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、加工光ELが照射されていない部分と比較して、塗装膜SFの厚みが薄くなる。言い換えれば、
図2(b)に示すように、加工対象物Sの表面上には、加工光ELが照射されていないがゆえに相対的に厚いままの塗装膜SFと、加工光ELが照射されたがゆえに相対的に薄くなった塗装膜SFとが存在することになる。つまり、加工光ELの照射により、塗装膜SFの厚みが少なくとも部分的に調整される。加工光ELの照射により、厚さ方向(
図2(b)に示す例では、Z軸方向)において塗装膜SFの一部が除去される。その結果、塗装膜SFの表面に、塗装膜SFが相対的に薄い部分に相当する凹部(言い換えれば、溝部)Cが形成される。従って、第1実施形態における「塗装膜SFを加工する動作」は、塗装膜SFの厚みを調整する動作、塗装膜SFの一部を除去する動作、及び、塗装膜SFに凹部Cを形成する動作の少なくとも一つを含む。
【0031】
塗装膜SFは、加工光ELを吸収することで蒸発する。つまり、塗装膜SFは、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで、例えば光化学的に分解されて除去される。尚、加工光ELがレーザ光である場合には、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで塗装膜SF等が光化学的に分解されて除去される現象を、レーザーアブレーションと称することもある。このため、塗装膜SFは、加工光ELを吸収可能な材料を含んでいる。具体的には、例えば、塗装膜SFは、加工光ELに関する吸収率(例えば、加工光ELが不可視光である場合には、可視光の波長帯域とは異なる波長を含む波長帯域の光に関する吸収率)が所定の第1吸収閾値以上となる材料を含んでいてもよい。逆に言えば、塗装膜SFによる吸収率が所定の第1吸収閾値以上となる波長帯域の光が、加工光ELとして用いられてもよい。
【0032】
塗装膜SFを構成する材料は、色素(具体的には、例えば、顔料及び染料の少なくとも一方)を含んでいてもよい。塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光の照射時に所望色を呈する色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、所望色を呈することとなる。この場合、当該色素は、塗装膜SFが所望色を呈するように、可視光の波長帯域のうち塗装膜SFによって反射されることで所望色の光として人間に認識される波長を含む第1波長帯域の光の吸収率と、可視光のうち第1波長帯域とは異なる第2波長帯域の光の吸収率とが異なるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1波長帯域の光の吸収率が第2波長帯域の光の吸収率よりも小さくなるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1波長帯域の光の吸収率が所定の第2吸収閾値(但し、第2吸収閾値は、第1吸収閾値よりも小さい)以下になり、且つ、第2波長帯域の光の吸収率が所定の第3吸収閾値(但し、第3吸収閾値は、第2吸収閾値よりも大きい)以上になるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で所望色を呈する色素の一例として、例えば、ウクライナ国キエフに所在するスペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化4-((E)-2-{(3E)-2-クロロ-3-[2-(2,6-ジフェニル-4H-チオピラン-4-イリデン)エチリデン]シクロヘキサ-1-エン-1-イル}ビニル)-2,6-ジフェニルチオピリリウム)があげられる。尚、塗装膜SFが透明である場合、塗装膜SFは色素を含んでいなくてもよい。
【0033】
塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光に対して透明な色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、透明な膜(いわゆる、クリアコート)となる。尚、ここでいう「透明な膜」は、可視光の波長帯域のうちの少なくとも一部の波長帯域の光が通過することが可能な膜を意味していてもよい。この場合、当該色素は、塗装膜SFが透明になるように、可視光をあまり吸収しない(つまり、相応に反射する)という特性を有していてもよい。例えば、色素は、可視光の吸収率が所定の第4吸収閾値よりも小さくなるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で可視光に対して透明になる色素の一例として、例えば、スペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化6-クロロ-2-[(E)-2-(3-{(E)-2-[6-クロロ-1-エチルベンゾ[cd]インドール-2(1H)-イリデン]エチリデン}-2-フェニル-1-シクロペンテン-1-イル)エテニル]-1-エチルベンゾ[cd]インドリウム)があげられる。
【0034】
再び
図1において、塗装膜SFを加工するために、加工システムSYSaは、加工装置1と、制御装置2とを備えている。更に、加工装置1は、光照射装置11と、駆動系12と、収容装置13と、支持装置14と、駆動系15と、排気装置16と、気体供給装置17と、位置計測装置18とを備える。
【0035】
光照射装置11は、制御装置2の制御下で、塗装膜SFに対して加工光ELを照射可能である。塗装膜SFに対して加工光ELを照射するために、光照射装置11は、光照射装置11の構造を模式的に示す断面図である
図3(a)に示すように、加工光ELを射出可能な光源系111と、光源系111から射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系112とを備える。
【0036】
光源系111は、例えば複数の加工光ELを同時に射出する。但し、光源系111は、単一の加工光ELを射出してもよい。このとき、光照射装置11は、単一の加工光ELを射出してもよい。複数の加工光ELを射出するために、光源系111は、光源系111の構造の一例を模式的に示す断面図である
図3(b)に示すように、複数の光源1111を備えている。複数の光源1111は、等間隔で一列に配列される。各光源1111は、パルス光を加工光ELとして射出する。パルス光の発光時間幅(以下、“パルス幅”と称する)が短くなると、加工精度(例えば、後述するリブレット構造の形成精度)が向上する。従って、各光源1111は、パルス幅が相対的に短いパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。例えば、各光源1111は、パルス幅が1000ナノ秒以下となるパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。例えば、各光源1111は、パルス幅がピコ秒のオーダーとなるパルス光を、加工光ELとして射出してもよく、パルス幅がフェムト秒のオーダーとなるパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。或いは、光源系111の構造の他の例を模式的に示す断面図である
図3(c)に示すように、光源系111は、単一の光源1111と、当該単一の光源1111からの光を複数の加工光ELに分岐する分岐器1112とを備えていてもよい。分岐器1112が分岐した複数の加工光ELがそれぞれ射出される複数の射出口は、等間隔で一列に配列される。分岐器1112の一例として、光ファイバカプラ、導波路型スプリッタ、レンズアレイ、回折光学素子及び空間光変調器等の少なくとも一つがあげられる。
【0037】
光学系112は、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを備える。複数の加工光ELは、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを介して、塗装膜SFに照射される。
【0038】
フォーカスレンズ1121は、1以上のレンズで構成され、その少なくとも一部のレンズの光軸方向に沿った位置を調整することで、複数の加工光ELの収斂位置BF(言い換えれば、集光位置、或いは光軸方向における照射位置であり、つまりは光学系112の焦点位置)を調整するための光学素子である。ガルバノミラー1122は、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査する(つまり、複数の加工光ELがそれぞれ照射される複数の目標照射領域EAが塗装膜SFの表面を移動する)ように、複数の加工光ELを偏向する。つまり、ガルバノミラー1122は、塗装膜SF上での複数の加工光ELの照射位置を、光照射装置11に対して変更する照射位置変更装置として機能可能である。尚、ガルバノミラー1122によって、光学系112が射出する複数の加工光ELkが塗装膜SFの表面を掃引してもよい。ガルバノミラー112は、X走査ミラー1122Xと、Y走査ミラー1122Yとを備える。X走査ミラー1122Xは、複数の加工光ELをY走査ミラー1122Yに向けて反射する。X走査ミラー1122Xは、θY方向(つまり、Y軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をX軸方向に沿って走査する。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の目標照射領域EAは、塗装膜SF上をX軸方向に沿って移動する。X走査ミラー1122Xは、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間のX軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。Y走査ミラー1122Yは、複数の加工光ELをfθレンズ1123に向けて反射する。Y走査ミラー1122Yは、θX方向(つまり、X軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をY軸方向に沿って走査する。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の目標照射領域EAは、塗装膜SF上をY軸方向に沿って移動する。Y走査ミラー1122Yは、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間のY軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。fθレンズ1123は、ガルバノミラー1122からの複数の加工光ELを塗装膜SF上に集光するための光学素子である。
【0039】
fθレンズ1123は、光学系112が備える光学素子のうち光学系112の最も光射出側に位置する(言い換えれば、塗装膜SFに最も近い、又は、複数の加工光ELの光路の終端に位置する)終端光学素子である。但し、光学系112は、fθレンズ1123よりも光射出側に設けられた光学素子(例えば、カバーレンズ等)を備えていてもよい。fθレンズ1123は、光学系112に対して脱着可能なように構成されていてもよい。その結果、光学系112から古いfθレンズ1123を取り外した後に、光学系112に別のfθレンズ1123を取り付けることが可能となる。但し、fθレンズ1123よりも射出側に設けられた光学素子(例えば、カバーレンズ等)を光学系112が備えている場合には、当該光学素子が終端光学素子となり、当該光学素子が光学系112に対して脱着可能なように構成されていてもよい。
【0040】
光学系112からの複数の加工光ELの進行方向は、例えば互いに平行になる。その結果、第1実施形態では、塗装膜SFに、進行方向が互いに平行な複数の加工光ELが同時に照射される。つまり、塗装膜SF上には、複数の目標照射領域EAが同時に設定される。このため、塗装膜SFに単一の加工光ELが照射される場合と比較して、塗装膜SFの加工に関するスループットが向上する。尚、光学系112からの複数の加工光ELの進行方向は、互いに平行でなくてもよい。
【0041】
尚、光照射装置11は、光源系111を備えていなくてもよい。この場合、光照射装置11は、光照射装置11の外部に配置される光源系111から射出される複数の加工光ELを、光学系112を用いて塗装膜SFに照射してもよい。具体的には、例えば、光源系111を備えていない光照射装置11の構造を模式的に示す断面図である
図4に示すように、光照射装置11には、光照射装置11の外部に配置される光源系111から、光ファイバ等の光伝送部材113を介して、複数の加工光ELが入射してもよい。光照射装置11は、伝送部材113を介して光照射装置11に入射した複数の加工光ELを、光学系112を用いて塗装膜SFに照射してもよい。尚、
図4は、光学系112が筐体114に収容される例を示しているが、光学系112が筐体114に収容されていなくてもよい。つまり、光照射装置11は、筐体114を備えていてもよいし、筐体114を備えていなくてもよい。また、光照射装置11が光源系111を備えている場合であっても、光学系112が筐体114に収容されていてもよいし、光学系112が筐体114に収容されていなくてもよい。光源系111が筐体114に収容されていてもよいし、光源系111が筐体111に収容されていなくてもよい。ここで、光伝送部材113として、ライトパイプや、一以上のレンズやミラーを含むリレー光学系等を用いてもよい。
【0042】
再び
図1において、駆動系12は、制御装置2の制御下で、光照射装置11を、塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系12は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させる。光照射装置11と塗装膜SFとの間の相対的な位置関係が変更されると、複数の加工光ELがそれぞれ照射される複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間の相対的な位置関係もまた変更される。このため、駆動系12は、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させるとも言える。
【0043】
駆動系12は、塗装膜SFの表面に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの表面は、X軸及びY軸のうち少なくとも一方に平行な平面であるため、駆動系12は、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。その結果、塗装膜SF上で目標照射領域EAがX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。つまり、光照射装置11が加工光ELを照射可能な範囲が変更される。駆動系12は、塗装膜SFの厚み方向(つまり、塗装膜SFの表面に交差する方向)に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの厚み方向は、Z軸に沿った方向であるため、駆動系12は、Z軸方向に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。駆動系12は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つの回転方向に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
【0044】
駆動系12は、光照射装置11を支持すると共に、当該支持している光照射装置11を移動させる。この場合、駆動系12は、例えば、光照射装置11を支持する第1支持部材と、当該第1支持部材を移動させる第1移動機構とを備えていてもよい。
【0045】
第1実施形態では、駆動系12は、第1駆動系121と、第2駆動系122とを備える。第1駆動系121には、第2駆動系121が取り付けられている。第1駆動系121は、第2駆動系122を支持する。第2駆動系122には、取付部材19を介して光照射装置11が取り付けられている。第2駆動系122は、取付部材19を介して光照射装置11を支持する。このため、第2駆動系122は、実質的には、第1駆動系121と光照射装置11とを接続する接続装置として機能してもよい。尚、第2駆動系122は、取付部材19を介することなく光照射装置11を支持してもよい。例えば、第2駆動系122は、
図4に示す筐体114を支持することで、光照射装置11を支持してもよい。
【0046】
第1駆動系121は、制御装置2の制御下で、第2駆動系122を塗装膜SFに対して移動させる。つまり、第1駆動系121は、第2駆動系122を塗装膜SFに対して移動させる移動装置として機能する。第2駆動系122に光照射装置11が取り付けられているため、第1駆動系121は、第2駆動系122を移動させることで、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させていると言える。つまり、第1駆動系121は、第2駆動系122と共に光照射装置11を移動させる。第2駆動系122は、制御装置2の制御下で、第2駆動系122を塗装膜SFに対して移動させる。つまり、第2駆動系122は、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させる移動装置として機能する。
【0047】
尚、第1駆動系121及び第2駆動系122の具体的な構造については後に詳述するため(
図5及び
図6参照)、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
収容装置13は、天井部材131と、隔壁部材132とを備えている。天井部材131は、光照射装置11の+Z側に配置される。天井部材131は、XY平面に沿った板状の部材である。天井部材131は、駆動系12を支持する。具体的には、天井部材131には、第1駆動系121が取り付けられている。つまり、天井部材131は、第1駆動系121を支持する。また、上述したように第1駆動系121に第2駆動系122が取り付けられているため、天井部材131には、第1駆動系121を介して第2駆動系122が取り付けられる。つまり、天井部材131は、第1駆動系121を介して第2駆動系122を支持する。また、上述したように第2駆動系122に光照射装置11が取り付けられているため、天井部材131には、第1駆動系121及び第2駆動系122を介して光照射装置11が取り付けられる。天井部材131は、第1駆動系121及び第2駆動系122を介して光照射装置11を支持する。天井部材131の-Z側の面の外縁(或いは、その近傍)には、隔壁部材132が配置されている。隔壁部材132は、天井部材131から-Z側に向かって延伸する筒状(例えば、円筒状の又は矩形筒状の)の部材である。天井部材131と隔壁部材132とによって囲まれた空間は、光照射装置11及び駆動系12を収容するための収容空間SPとなる。従って、上述した駆動系12は、収容空間SP内で光照射装置11を移動させる。更に、収容空間SPは、光照射装置11と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。より具体的には、収容空間SPは、光照射装置11が備える終端光学素子(例えば、fθレンズ1123)と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。
【0049】
天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELを遮光可能な部材である。つまり、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの波長に対して不透明である。その結果、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。尚、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELを減光可能な部材であってもよい。つまり、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの波長に対して半透明であってもよい。更に、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの照射によって発生した不要物質を透過させない(つまり、遮蔽可能な)部材である。不要物質の一例として、塗装膜SFの蒸気があげられる。その結果、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0050】
隔壁部材132の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)134は、塗装膜SFの表面に接触可能である。端部134が塗装膜SFに接触する場合には、収容装置13(つまり、天井部材131及び隔壁部材132)は、塗装膜SFと協働して収容空間SPの密閉性を維持する。端部134は、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部134のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能である。例えば、表面が平面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に平面形状になる。例えば、表面が曲面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に曲面形状になる。その結果、端部134が塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状を変化させることができない場合と比較して、収容空間SPの密閉性が向上する。形状を変化させることが可能な端部134の一例として、ゴム等の弾性を有する部材(言い換えれば、柔軟な部材)から形成されている端部134があげられる。尚、形状を変化させることが可能な端部134として、例えば弾性を有する構造である蛇腹状の端部が用いられてもよい。
【0051】
端部134は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、端部134は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部134が塗装膜SFに付着すると、端部134が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、収容空間SPの密閉性がより一層向上する。但し、端部134が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。この場合であっても、端部134が塗装膜SFに接触する限りは、収容空間SPの密閉性が相応に維持されることに変わりはない。
【0052】
隔壁部材132は、制御装置2の制御下で動作する不図示の駆動系(例えば、アクチュエータ)によって、Z軸方向に沿って伸縮可能な部材である。例えば、隔壁部材132は、蛇腹状の部材(いわゆる、ベローズ)であってもよい。この場合、隔壁部材132は、蛇腹部分の伸縮によって伸縮可能である。或いは、例えば、隔壁部材132は、異なる径を有する複数の中空状の円筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、隔壁部材132は、複数の円筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。隔壁部材132の状態は、少なくとも、隔壁部材132がZ軸方向に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第1伸長状態と、隔壁部材132がZ軸方向に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第1縮小状態とに設定可能である。
【0053】
隔壁部材132が第1伸長状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触可能な第1接触状態にある。一方で、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触しない第1非接触状態にある。つまり、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFから+Z側に離れている第1非接触状態にある。尚、端部134の状態を第1接触状態と第1非接触状態との間で切り換えるための構成は、隔壁部材132を伸縮する構成には限定されない。例えば、収容装置13自体を±Z方向に沿って移動可能な構成とすることで、端部134の状態を第1接触状態と第1非接触状態との間で切り換えてもよい。
【0054】
収容装置13は更に、検出装置135を備えている。検出装置135は、収容空間SP内の不要物質(つまり、加工光ELの照射によって発生した物質)を検出する。検出装置135の検出結果は、後に詳述するように、隔壁部材132の状態を第1伸長状態から第1縮小状態へと変える際に制御装置2によって参照される。
【0055】
支持装置14は、収容装置13を支持する。収容装置13が駆動系12及び光照射装置11を支持しているため、支持装置14は、実質的には、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持している。収容装置13を支持するために、支持装置14は、梁部材141と、複数の脚部材142とを備えている。梁部材141は、収容装置13の+Z側に配置される。梁部材141は、XY平面に沿って延伸する梁状の部材である。梁部材141は、支持部材143を介して収容装置13を支持する。梁部材141には、複数の脚部材142が配置されている。脚部材142は、梁部材141から-Z側に向かって延伸する棒状の部材である。
【0056】
脚部材142の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)144は、塗装膜SFの表面に接触可能である。その結果、支持装置14は、塗装膜SFによって(つまり、加工対象物Sによって)支持される。つまり、支持装置14は、端部144が塗装膜SFに接触した状態で(言い換えれば、支持装置14が塗装膜Sによって支持された状態で)収容装置13を支持する。端部144は、収容装置13の端部134と同様に、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部144のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能であってもよい。端部144は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、端部144は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部144が塗装膜SFに付着すると、端部144が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、支持装置14の安定性が向上する。但し、端部144が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。
【0057】
梁部材141は、制御装置2の制御下で動作する駆動系15によって、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って(或いは、XY平面に沿った任意の方向に沿って)伸縮可能な部材である。例えば、梁部材141は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、梁部材141は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。
【0058】
脚部材142は、制御装置2の制御下で動作する駆動系15によって、Z軸方向に沿って伸縮可能な部材である。例えば、脚部材142は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、脚部材142は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。脚部材142の状態は、少なくとも、脚部材142がZ軸方向に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第2伸長状態と、脚部材142がZ軸方向に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第2縮小状態とに設定可能である。脚部材142が第2伸長状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触可能な第2接触状態にある。一方で、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触しない第2非接触状態にある。つまり、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFから+Z側に離れている第2非接触状態にある。
【0059】
駆動系15は、制御装置2の制御下で、支持装置14を塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系15は、支持装置14と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。支持装置14が収容装置13を支持しているため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、収容装置13を塗装膜SFに対して移動させる。つまり、駆動系15は、実質的には、収容装置13と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。更に、収容装置13は、駆動系12を介して光照射装置11を支持している。このため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させることができる。つまり、駆動系15は、実質的には、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。言い換えれば、駆動系15は、実質的には、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。
【0060】
駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置2の制御下で、梁部材141を伸縮させる。更に、駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置2の制御下で、複数の脚部材142を伸縮させる。尚、駆動系15による支持装置14の移動態様については、
図9から
図20を参照しながら後に詳述する。
【0061】
排気装置16は、排気管161を介して収容空間SPに連結されている。排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気可能である。特に、排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気することで、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPから収容空間SPの外部に吸引可能である。特に、この不要物質が加工光ELの光路上に存在する場合、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与える可能性がある。このため、排気装置16は特に、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間から、当該空間内の気体と共に不要物質を吸引する。排気装置16が収容空間SPから吸引した不要物質は、フィルタ162を介して加工装置1の外部へと排出される。フィルタ162は、不要物質を吸着する。尚、フィルタ162は、着脱可能であってもよいし、交換可能であってもよい。
【0062】
気体供給装置17は、吸気管171を介して収容空間SPに連結されている。気体供給装置17は、収容空間SPに気体を供給可能である。収容空間SPに供給する気体としては、大気、CDA(クリーン・ドライ・エア)及び不活性ガスの少なくとも一つがあげられる。不活性ガスの一例として、窒素ガスがあげられる。第1実施形態では、気体供給装置17はCDAを供給するものとする。このため、収容空間SPは、CDAによってパージされた空間となる。収容空間SPに供給されたCDAの少なくとも一部は、排気装置16によって吸引される。排気装置16が収容空間SPから吸引したCDAは、フィルタ162を通過して加工システムSYSaの外部へと排出される。
【0063】
気体供給装置17は特に、
図3に示すfθレンズ1123の収容空間SP側の光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)にCDA等の気体を供給する。光学面1124は、収容空間SPに面しているがゆえに、加工光ELの照射によって発生した不要物質にさらされる可能性がある。その結果、光学面1124に不要物質が付着してしまう可能性がある。更に、加工光ELが光学面1124を通過するがゆえに、光学面1124を通過する加工光ELによって光学面1124に付着した不要物質が焼き付けられる(つまり、固着してしまう)可能性がある。光学面1124に付着した(更には、固着した)不要物質は、光学面1124の汚れとなって加工光ELの特性に影響を与えかねない。しかるに、光学面1124にCDA等の気体が供給されると、光学面1124と不要物質との接触が防止される。このため、光学面1124への汚れの付着が防止される。従って、気体供給装置17は、光学面1124への汚れの付着を防止する付着防止装置としても機能する。更には、光学面1124に汚れが付着(更には、固着)してしまった場合であっても、光学面1124に供給されたCDAによって汚れが除去される(例えば、吹き飛ばされる)可能性がある。従って、気体供給装置17は、光学面1124に付着した汚れを除去する付着防止装置としても機能し得る。
【0064】
位置計測装置18は、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する。つまり、位置計測装置18は、加工対象物Sと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する。第1実施形態では、位置計測装置18は、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置を計測する。つまり、位置計測装置18は、光照射装置11に対する加工対象物Sの位置を計測する。
【0065】
光照射装置11に対する塗装膜SFの位置(つまり、加工対象物Sの位置、以下同じ)を計測するために、位置計測装置18は、塗装膜SFを計測してもよい。つまり、位置計測装置18は、加工対象物SFを計測してもよい。この場合、位置計測装置18は、塗装膜SF及び加工対象物Sの少なくとも一方を含む物体を計測するがゆえに、物体計測装置と称されてもよい。
【0066】
位置計測装置18は、光照射装置11(特に、光学系112)に対して固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置18は、光照射装置11に対する相対位置が固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置18は、駆動系12が光照射装置11を移動させたとしても光照射装置11と位置計測装置18との相対位置が変わらない位置に配置されてもよい。例えば、
図1は、位置計測装置18が、光照射装置11が取り付けられる取付部材19に取り付けられている例を示している。但し、位置計測装置18は、取付部材19とは異なる部材に取り付けられてもよい。例えば、位置計測装置18は、光照射装置11に取り付けられてもよい。例えば、位置計測装置18は、上述した筐体114(
図4参照)に取り付けられてもよい。
【0067】
光照射装置11に対して固定された位置に位置計測装置18が配置される場合には、位置計測装置18からの出力(つまり、位置計測装置18の計測結果)は、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置に関する情報を含むことになる。具体的には、位置計測装置18の計測結果は、位置計測装置18に対する塗装膜SFの位置に関する情報を含む。つまり、位置計測装置18の計測結果は、位置計測装置18の計測座標系における塗装膜SFの位置に関する情報を含む。ここで、光照射装置11に対して固定された位置に位置計測装置18が配置されている場合には、位置計測装置18に対する塗装膜SFの位置に関する情報は、実質的には、位置計測装置18に対して固定された位置に配置されている光照射装置11に対する塗装膜SFの位置に関する情報を含むことになる。従って、制御装置2は、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置を適切に特定することができる。
【0068】
位置計測装置18は、塗装膜SFを計測可能である限りは、どのような種類の計測装置であってもよい。例えば、位置計測装置18は、塗装膜SF等の物体を撮像可能な撮像装置(つまり、カメラ)を含んでいてもよい。位置計測装置18は、塗装膜SF上で所定のパターンを描く計測光を塗装膜SFに照射する照射装置と、計測光によって塗装膜SFに描かれたパターンを撮像する撮像装置とを含んでいてもよい。このように、位置計測装置18は、非接触方式(一例として、光検出方式、音波検出方式及び電波検出方式等の少なくとも一つ)で塗装膜SFを計測する計測装置であってもよい。尚、複数の位置計測装置18が設けられていてもよい。この場合、各々の位置計測装置18の計測軸(撮像方式等の光計測方式では、典型的には光軸)は、互いに交差する(或いはねじれ)関係であってもよく、互いに平行(又は同軸)であってもよい。
【0069】
制御装置2は、加工システムSYSaの全体の動作を制御する。特に、制御装置2は、後に詳述するように、所望の形状の凹部Cが所望の位置に形成されるように、光照射装置11、駆動系12、収容装置13及び駆動系15を制御する。
【0070】
制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(或いは、CPUに加えて又は代えてGPU(Graphics Processing Unit))と、メモリとを含んでいてもよい。制御装置2は、CPUがコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSaの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置2が行うべき後述する動作を制御装置2(例えば、CPU)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSaに後述する動作を行わせるように制御装置2を機能させるためのコンピュータプログラムである。CPUが実行するコンピュータプログラムは、制御装置2が備えるメモリ(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置2に内蔵された又は制御装置2に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、CPUは、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置2の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0071】
制御装置2は、加工システムSYSaの内部に設けられていなくてもよく、例えば、加工システムSYSa外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置2と加工システムSYSaとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置2と加工システムSYSaとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置2は、ネットワークを介して加工システムSYSaにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSaは、制御装置2からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。或いは、制御装置2が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSaの内部に設けられている一方で、制御装置2が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSaの外部に設けられていてもよい。
【0072】
尚、CPUが実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置2(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置2内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置2が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0073】
(1-2)駆動系12の構造
続いて、駆動系12の構造について説明する。上述したように、駆動系12が第1駆動系121と第2駆動系122とを備えているがゆえに、以下では、第1駆動系121の構造と第2駆動系122の構造とを順に説明する。
【0074】
(1-2-1)駆動系121の構造
はじめに、
図5を参照しながら、第1駆動系121の構造について説明する。
図5は、第1駆動系121の構造を示す断面図である。
【0075】
図5に示すように、第1駆動系121は、基台1211と、アーム駆動系1212とを備えている。
【0076】
基台1211は、収容装置13の天井部材131に取り付けられている。基台1211には、アーム駆動系1212が取り付けられている。基台1211は、アーム駆動系1211を支持する。基台1211は、アーム駆動系1211を支持するためのベース部材として用いられる。
【0077】
アーム駆動系1212は、複数のアーム部材12121を備えている。複数のアーム部材12121は、少なくとも一つのジョイント部材12122を介して揺動自在に連結されている。従って、アーム駆動系1212は、いわゆる垂直多関節構造を有するロボットである。アーム駆動系1212は、単一の関節(つまり、ジョイント部材12122によって規定される駆動軸)を備えていてもよい。或いは、アーム駆動系1212は、複数の関節を備えていてもよい。
図5は、アーム駆動系1212が三つの関節を備えている例を示している。各関節を介して連結されている二つのアーム部材12121は、各関節に対応するアクチュエータ12123によって揺動する。
図5は、三つの関節に対応してアーム駆動系1212が三つのアクチュエータ12123を備えている例を示している。その結果、少なくとも一つのアーム部材12121が移動する。このため、少なくとも一つのアーム部材12121は、塗装膜SFに対して移動可能である。つまり、少なくとも一つのアーム部材12121は、少なくとも一つのアーム部材12121と塗装膜SFとの相対的な位置関係が変更されるように移動可能である。
【0078】
アーム駆動系1212には、第2駆動系122が取り付けられている。具体的には、複数のアーム部材12121のうちの基台1211から最も遠い位置に位置する一のアーム部材12121に、第2駆動系122が取り付けられている。以下、説明の便宜上、第2駆動系122が取り付けられる一のアーム部材12121を、先端アーム部材12124と称する。第2駆動系122は、先端アーム部材12124に直接取り付けられていてもよいし、他の部材(例えば、後述する第6実施形態において
図30を参照しながら説明する取付部材1213等)を介して先端アーム部材12124に間接的に取り付けられていてもよい。
【0079】
上述したアクチュエータ12123によって先端アーム部材12124が移動すると、先端アーム部材12124に取り付けられている第2駆動系122もまた移動する。このため、アーム駆動系1212(つまり、第1駆動系121)は、第2駆動系122を移動させることができる。具体的には、アーム駆動系1212は、塗装膜SFに対して第2駆動系122を移動させることができる。アーム駆動系1212は、第2駆動系122と塗装膜SFとの相対的な位置関係が変更されるように、第2駆動系122を移動させることができる。また、第2駆動系122が移動すると、第2駆動系122に取り付けられている光照射装置11もまた移動する。このため、アーム駆動系1212(つまり、第1駆動系121)は、光照射装置11を移動させることができる。
【0080】
制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて、アーム駆動系1212を制御してもよい。具体的には、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報を取得し、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報に基づいて、アーム駆動系1212を制御してもよい。尚、位置計測装置18が撮像装置を備えている場合には、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果(つまり、撮像装置が撮像した画像)に基づく視覚サーボ(ビジュアルサーボ)を利用して、アーム駆動系1212を制御してもよい。尚、視覚サーボをビジョンサーボと称してもよい。また、光照射装置11は、その振動を計測するための運動計測センサとしての加速度センサを備えていてもよい。この場合、制御装置2は、加速度センサの計測結果に基づいて、アーム駆動系1212を制御してもよい。
【0081】
一例として、例えば、制御装置2は、塗装膜SFに対して光照射装置11が移動するように、アーム駆動系1212を制御してもよい。つまり、制御装置2は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置を変更するように、アーム駆動系1212を制御してもよい。この際、制御装置2は、塗装膜SFと光照射装置11との位置合わせを行うように、アーム駆動系1212を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SFと光照射装置11から加工光ELが照射される目標照射領域EAとの位置合わせを行うように、アーム駆動系1212を制御してもよい。一例として、制御装置2は、塗装膜SF上の所望位置に目標照射領域EAが設定される(つまり、加工光ELが照射される)ように、アーム駆動系1212を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SF上の所望経路を目標照射領域EAが移動するように、アーム駆動系1212を制御してもよい。尚、制御装置2は、アーム駆動系1212の関節部分に設けられ複数のアーム部材12121間の角度を検出するエンコーダからの出力を用いて、アーム駆動系1212を制御してもよい。
【0082】
尚、第1実施形態における「光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置」は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸の回転周り(つまり、θX方向に相当する回転方向)、Y軸の回転周り(つまり、θY方向に相当する回転方向)及びZ軸の回転周り(つまり、θZ方向に相当する回転方向)の少なくとも一つにおける光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置を意味する。つまり、第1実施形態における「光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置」は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対姿勢をも含んでいてもよい。
【0083】
光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置が変更されると目標照射領域EAと塗装膜SFとの相対位置が変更されるがゆえに、位置計測装置18は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を計測することに加えて又は代えて、塗装膜SFと加工光ELの照射位置との相対的な位置関係(例えば、塗装膜SF上での加工光ELの照射位置)を計測してもよい。例えば、位置計測装置18は、光照射装置11が塗装膜SFに加工光ELを照射している期間の少なくとも一部において、塗装膜SFに対する加工光ELの照射位置を計測してもよい。例えば、位置計測装置18は、光照射装置11が塗装膜SFに加工光ELを照射し終わった後に、塗装膜SFにおける加工光ELの照射位置(つまり、加工光ELが実際に照射された位置であって、例えば、加工光ELによって加工された部分の位置)を計測してもよい。例えば、位置計測装置18は、塗装膜SF上に形成された感応性部材(具体的には、加工光ELの照射によって特性が変化する部材であり、例えば、後述の第3実施形態で説明する感応性部材PE)に対して光照射装置11が加工光ELを照射し終わった後に、感応性部材における加工光ELの照射位置(つまり、感応性部材のうち加工光ELの照射によって特性が変化した部分の位置)を計測してもよい。この場合であっても、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて、塗装膜SFと光照射装置11との位置合わせ(つまり、塗装膜SFと目標照射領域EAとの位置合わせ)を行うように、アーム駆動系1212を制御してもよい。尚、位置計測装置18は加工光ELの照射位置そのものを計測してもよい。この場合、位置計測装置18が加工光ELの波長の光を計測してもよい。
【0084】
尚、第1駆動系121は、多関節ロボットには限定されず、第2駆動系122を塗装膜SFに対して移動させることが可能である限りは、どのような構造を有していてもよい。例えば、第1駆動系121は、複数のリニアガイドを組み合わせた直交多軸移動体であってもよい。例えば、所定の平面内の第1方向に沿って第1のリニアガイドを設け、当該第1のリニアガイドの移動体(第1移動ブロック)上に、第1方向と交差する(典型的には直交する)第2方向に沿って第2のリニアガイドを設けた直交2軸移動体であってもよい。このとき、第2のリニアガイドの移動体(第2移動ブロック)に第2駆動系が取り付けられてもよい。また、上述の直交2軸移動体における第2のリニアガイドの移動体(第2移動ブロック)に、上記所定の平面と交差する第3方向に沿って第3のリニアガイドを設けてもよい。このような直交3軸移動体においては、第3のリニアガイドの移動体(第3移動ブロック)に第2駆動系122が取り付けられてもよい。
【0085】
(1-2-2)第2駆動系122の構造
続いて、
図6を参照しながら、第2駆動系122の構造について説明する。
図6は、第2駆動系122の構造を示す断面図である。
【0086】
図6に示すように、第2駆動系122は、支持部材1221と、支持部材1222と、エアスプリング1223と、ダンパ部材1224と、駆動部材1225とを備える。
【0087】
支持部材1221は、第1駆動系121に取り付けられている。具体的には、支持部材1221は、第1駆動系121の先端アーム部材12124に取り付けられている。支持部材1221の被取付面1221aと先端アーム部材12124の最先端に形成された取付面12124aとが互いに接触するように、支持部材1221が先端アーム部材12124に固定されている。ここで、取付面12124aは、物体としての塗装膜SFに対して移動する部位とみなすことができる。支持部材1222は、取付部材19を介して光照射装置11に取り付けられている。支持部材1222の被取付面1222aと取付部材19の第1取付面19aとが互いに接触するように、支持部材1222が取付部材19に固定されている。そして、取付部材19の第2取付面19bと光照射装置11の外面の一部に形成された被取付面11aとが互いに接触するように、光照射装置11が取付部材19に固定されている。
【0088】
支持部材1221と支持部材1222とは、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225を介して結合されている(言い換えれば、連結されている、或いは、接続されている)。具体的には、支持部材1221のうちの第1駆動系121が取り付けられている第1面(
図6に示す例では、+Z側の面)と反対側の第2面(
図6に示す例では、-Z側の面)と、支持部材1222のうちの取付部材19が取り付けられている第3面(
図6に示す例では、-Z側の面)と反対側の第4面(
図6に示す例では、+Z側の面)との間に、支持部材1221と支持部材1222とを結合するように、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225が配置されている。つまり、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225のそれぞれは、支持部材1221と支持部材1222とを結合するように、支持部材1221及び1222に取り付けられている。支持部材1221に第1駆動系121が取り付けられ且つ支持部材1222に光照射装置11が取り付けられているため、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225のそれぞれは、実質的には、第1駆動系121と光照射装置11とを結合するように、支持部材1221及び1222に取り付けられているとも言える。
【0089】
エアスプリング1223は、制御装置2の制御下で、気体(一例として空気)の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与する。エアスプリング1223は、制御装置2の制御下で、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方に付与する。特に、エアスプリング1223は、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向(
図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。つまり、エアスプリング1223は、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と光照射装置11とが並ぶ方向(
図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方に付与してもよい。尚、エアスプリング1223は、弾性部材と称されてもよい。
【0090】
気体の圧力に起因した弾性力を付与するために、エアスプリング1223には、気体供給装置12261から配管12262及びバルブ12263を介して気体が供給される。制御装置2は、エアスプリング1223内の機体の圧力を計測する圧力計1226の計測結果に基づいて、気体供給装置12261及びバルブ12263の少なくとも一方を制御する。尚、気体供給装置12261、配管12262及びバルブ12263は無くてもかまわない。この場合、エアスプリング1223は、制御装置2の制御とは無関係に、内部の気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。
【0091】
エアスプリング1223は、制御装置2の制御下で、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向に沿って支持部材1222の重量を支持してもよい。支持部材1222に光照射装置11が取り付けられているため、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、支持部材1222に取り付けられた光照射装置11の重量を支持してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と光照射装置11とが並ぶ方向に沿って光照射装置11の重量を支持してもよい。この場合、エアスプリング1223は、光照射装置11の自重をキャンセルする自重キャンセラとして機能してもよい。尚、エアスプリング1223は、制御装置2の制御とは無関係に、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。
【0092】
エアスプリング1223は、制御装置2の制御下で、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して光照射装置11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。つまり、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121のうち第2駆動系122が取り付けられている部分(つまり、先端アーム部分12124)から、光照射装置11のうち第2駆動系122が取り付けられている部分へと向かう振動を低減(減衰)してもよい。この場合、制御装置2は、圧力計1226の計測結果に基づいて、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動が低減される(つまり、減衰される)ように、気体供給装置12261及びバルブ12263の少なくとも一方を制御してもよい。尚、エアスプリング1223(或いは、エアスプリング1223を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。尚、エアスプリング1223は、制御装置2の制御とは無関係に、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。
【0093】
第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することは、第1駆動系121の振動量(つまり、振動の振幅)よりも、光照射装置11の振動量を低減する(つまり、小さくする)ことを含んでいてもよい。第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することは、第1駆動系121のうち第2駆動系122が取り付けられている部分(つまり、先端アーム部分12124)の振動量よりも、光照射装置11のうち第2駆動系122が取り付けられている部分の振動量を低減することを含んでいてもよい。第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することは、第1駆動系121が取り付けられる支持部材1221の振動量よりも、光照射装置11が取り付けられる支持部材1222の振動量を低減することを含んでいてもよい。尚、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動をエアスプリング1223が低減しない場合には、第1駆動系121の振動量と光照射装置11の振動量とが実質的に同じになる。つまり、支持部材1121の振動量と支持部材1122の振動量とが実質的に同じになる。このため、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することは、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動が低減されない場合と比較して光照射装置11の振動量を低減することを含んでいてもよい。第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することは、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動が低減されない場合と比較して支持部材1122の振動量を低減することを含んでいてもよい。また、ここで言う振動量は、何らかの物体に対する振動量を意味していてもよい。例えば、第1駆動系121の振動量、光照射装置11の振動量、支持部材1221の振動量及び支持部材1222の振動量は、それぞれ、塗装膜SF(或いは、加工対象物SF、以下同じ)に対する第1駆動系121の振動量、塗装膜SFに対する光照射装置11の振動量、塗装膜SFに対する支持部材1221の振動量及び塗装膜SFに対する支持部材1222の振動量を意味していてもよい。
【0094】
ダンパ部材1224は、空気の圧力とは異なる要因に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与する。ダンパ部材1224は、空気の圧力とは異なる要因に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方に付与する。特に、ダンパ部材1224は、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向(
図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と光照射装置11とが並ぶ方向(
図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方に付与してもよい。尚、ダンパ部材1224は、弾性部材と称されてもよい。
【0095】
ダンパ部材1224は、弾性力を付与可能である限りはどのような部材であってもよい。例えば、ダンパ部材1224は、圧縮バネコイルを含んでいてもよい。例えば、ダンパ部材1224は、板バネを含んでいてもよい。
【0096】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向に沿って支持部材1222の重量を支持してもよい。支持部材1222に光照射装置11が取り付けられているため、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1222に取り付けられた光照射装置11の重量を支持してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と光照射装置11とが並ぶ方向に沿って光照射装置11の重量を支持してもよい。この場合、ダンパ部材1224は、光照射装置11の自重をキャンセルする自重キャンセラとして機能してもよい。
【0097】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して光照射装置11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。このため、ダンパ部材1224(或いは、ダンパ部材1224を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。
【0098】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰振動に変換してもよい。
【0099】
駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、駆動力を発生可能である。駆動部材1225は、発生させた駆動力を支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与可能である。駆動部材1225は、発生させた駆動力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して、第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方に付与可能である。駆動部材1225は、駆動力を発生可能である限りは、どのような構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225は、電気的に駆動力を発生可能な構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225は、磁気的に駆動力を発生可能な構造を有していてもよい。一例として、
図6は、駆動部材1225が、電気的に駆動力を発生可能なボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)である例を示している。尚、ボイスコイルモータがリニアモータの一種であるところ、駆動部材1225はボイスコイルモータと異なるリニアモータであってもよい。駆動部材1225は、直線状の軸に沿った駆動力を発生させるものであってもよい。
【0100】
尚、駆動部材1225は、駆動部材1225のうちの支持部材1221に取り付けられる部材と、駆動部材1225のうちの支持部材1222に取り付けられる部材とが物理的に接触しない構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225がボイスコイルモータである場合には、駆動部材1225のうちの支持部材1221に取り付けられる部材(例えば、コイル及び磁極のいずれか一方を含む部材)と、駆動部材1225のうちの支持部材1222に取り付けられる部材(例えば、コイル及び磁極のいずれか他方を含む部材)とが物理的に接触することはない。
【0101】
駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、駆動力を利用して、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を移動させてもよい。駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、駆動力を利用して支持部材1221及び1222の少なくとも一方を移動させることで、第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方を移動させてもよい。この場合、駆動部材1225は、駆動力を利用して第1駆動系121及び光照射装置11の少なくとも一方を移動させることで、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を変更してもよい。尚、第1実施形態における「第1駆動系121と光照射装置11との相対位置」は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸の回転周り、Y軸の回転周り及びZ軸の回転周りの少なくとも一つにおける第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を意味する。つまり、第1実施形態における「第1駆動系121と光照射装置11との相対位置」は、第1駆動系121と光照射装置11との相対姿勢をも含んでいてもよい。この場合、駆動部材1225を含む第2駆動系122は、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置が変更可能になるように第1駆動系121と光照射装置11とを結合していると言える。つまり、上述したエアスプリング1223及びダンパ部材1224(更には、駆動部材1225)は、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置が駆動部材1225によって変更可能となるように、第1駆動系121と光照射装置11とを結合していると言える。尚、駆動部材1225は、位置変更装置と称されてもよい。
【0102】
駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、第2駆動系122が備える位置計測装置1227の計測結果に基づいて、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を変更してもよい。位置計測装置1226は、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を計測する。例えば、位置計測装置1226は、支持部材1221に取り付けられた検出部12261と、支持部材1222に取り付けられたスケール部12262とを含むエンコーダであってもよい。位置計測装置1226の計測結果は、支持部材1221と支持部材1222との相対位置に関する情報を含む。支持部材1221に第1駆動系121が取り付けられ且つ支持部材1222に光照射装置11が取り付けられているため、支持部材1221と支持部材1222との相対位置に関する情報は、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置に関する情報を含む。従って、制御装置2は、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を適切に特定することができる。その結果、制御装置2は、位置計測装置1227の計測結果に基づいて、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を適切に変更することができる。
【0103】
駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を変更する(典型的には、第1駆動系121に対して光照射装置11を移動させる)ことで、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。駆動部材1225は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係が変更されるように、光照射装置11を移動させてもよい。この場合、制御装置2は、位置計測装置1227の計測結果に加えて位置計測装置18の計測結果に基づいて、駆動部材1225を制御してもよい。具体的には、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報を取得し、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報に基づいて、駆動部材1225を制御してもよい。例えば、制御装置2は、塗装膜SFに対して光照射装置11が移動するように、駆動部材1225を制御してもよい。つまり、制御装置2は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対位置を変更するように、駆動部材1225を制御してもよい。この際、制御装置2は、塗装膜SFと光照射装置11との位置合わせを行うように、駆動部材1225を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SFと光照射装置11から加工光ELが照射される目標照射領域EAとの位置合わせを行うように、駆動部材1225を制御してもよい。一例として、制御装置2は、塗装膜SF上の所望位置に目標照射領域EAが設定される(つまり、加工光ELが照射される)ように、駆動部材1225を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SF上の所望経路を目標照射領域EAが移動するように、駆動部材1225を制御してもよい。
【0104】
ここで、上述したように、第1駆動系121もまた、第2駆動系122と同様に、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させることができる。つまり、加工装置1は、第1駆動系121及び第2駆動系122の双方又はいずれか一方を用いて光照射装置11を移動させることができる。この場合、第1駆動系121による光照射装置11の移動態様は、第2駆動系122による光照射装置11の移動態様と異なっていてもよい。例えば、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度は、第2駆動系122による光照射装置11の位置決め精度よりも低くてもよい。つまり、第2駆動系122による光照射装置11の位置決め精度は、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度よりも高くてもよい。例えば、第1駆動系121による光照射装置11の移動精度(つまり、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置の変更精度)は、第2駆動系122による光照射装置11の移動精度よりも低くてもよい。つまり、第2駆動系122による光照射装置11の移動精度は、第1駆動系121による光照射装置11の移動精度よりも高くてもよい。例えば、第1駆動系121による光照射装置11の移動範囲は、第2駆動系122による光照射装置11の移動範囲よりも大きくてもよい。つまり、第2駆動系122による光照射装置11の移動範囲は、第1駆動系121による光照射装置11の第1駆動系121による光照射装置11の移動範囲よりも小さくてもよい。例えば、第1駆動系121による光照射装置11の移動量(つまり、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置の変更量)は、第2駆動系122による光照射装置11の移動量よりも多くてもよい。つまり、第2駆動系122による光照射装置11の移動量は、第1駆動系121による光照射装置11の移動量よりも少なくてもよい。この場合、制御装置2は、第1駆動系121を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を第1の精度で位置合わせし、第2駆動系122を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を第1の精度よりも高い第2の精度で位置合わせしてもよい。つまり、制御装置2は、第1駆動系121を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を相対的に大まかに位置合わせし、第2駆動系122を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を高い精度で位置合わせしてもよい。尚、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度は、第1駆動系121による先端アーム部材12124の位置決め精度と実質的に等価とみなせる。第1駆動系121による光照射装置11の移動精度は、第1駆動系121による先端アーム部材12124の移動精度と実質的に等価とみなせる。第1駆動系121による光照射装置11の移動範囲は、第1駆動系121による先端アーム部材12124の移動範囲と実質的に等価とみなせる。第1駆動系121による光照射装置11の移動量は、第1駆動系121による先端アーム部材12124の移動量と実質的に等価とみなせる。
【0105】
駆動部材1225は、制御装置2の制御下で、駆動力を利用して第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を変更することで、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して光照射装置11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。このため、駆動部材1225(或いは、駆動部材部材1225を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。
【0106】
駆動部材1225は、駆動力を利用して第1駆動系121と光照射装置11との相対位置を変更することで、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換してもよい。つまり、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121と光照射装置11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰振動に変換してもよい。この場合、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から光照射装置11に向かう振動に起因した第1駆動系121と光照射装置11との相対的な変位量を低減していると言える。具体的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から光照射装置11に向かう振動に起因した、第1駆動系121のうち第2駆動系122が接続されている部分(つまり、先端アーム部分12124)と光照射装置11のうち第2駆動系122が接続されている部分との相対的な変位量を低減していると言える。尚、駆動部材1225がエアスプリング1223の振動を減衰振動に変換可能である場合には、第2駆動系122は、ダンパ部材1224を備えていなくてもよい。但し、駆動部材1225がエアスプリング1223の振動を減衰振動に変換可能でない場合であっても、第2駆動系122は、ダンパ部材1224を備えていなくてもよい。また、エアスプリング1223の数と、ダンパ部材1224の数と、駆動部材1225の数とは、互いに等しくなくてもよい。
【0107】
ここで、上述したように加工装置1が第1駆動系121及び第2駆動系122の双方又はいずれか一方を用いて光照射装置11を移動させることができることを考慮すれば、加工装置1は、第1駆動系121及び第2駆動系122の双方又はいずれか一方を用いて、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動を低減することができるとも言える。この場合、上述したように第1駆動系121による光照射装置11の移動態様が第2駆動系122による光照射装置11の移動態様と異なる場合には、制御装置2は、低減するべき振動の特性に基づいて、第1駆動系121を用いて振動を低減するべきか否か及び/又は第2駆動系122を用いて振動を低減するべきか否かを判定してもよい。例えば、制御装置2は、低減するべき振動の周波数に基づいて、第1駆動系121を用いて振動を低減するべきか否か及び/又は第2駆動系122を用いて振動を低減するべきか否かを判定してもよい。具体的には、制御装置2は、低減するべき振動に第1周波数範囲の振動が含まれる場合には、第1駆動系121を用いて振動を低減するべきと判定してもよい。第1周波数範囲は、典型的には、第1駆動系121によって低減可能な振動が含まれる周波数範囲に設定される。この場合、制御装置2は、第1駆動系121から光照射装置11へと向かう振動の少なくとも一部を低減するように、第1駆動系121を制御してもよい。また、制御装置2は、低減するべき振動に第1周波数範囲とは異なる第2周波数範囲の振動が含まれる場合には、第2駆動系122を用いて振動を低減するべきと判定してもよい。第2周波数範囲は、典型的には、第2駆動系122によって低減可能な振動が含まれる周波数範囲に設定される。この場合、制御装置2は、第駆動系121から光照射装置11へと向かう振動の少なくとも一部を低減するように、第2駆動系122を制御してもよい。尚、上述したように第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度が第2駆動系122による光照射装置11の位置決め精度よりも低い場合には、典型的には、第2周波数範囲は、第1周波数範囲よりも高い周波数を含む。
【0108】
駆動部材1225は、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を付与してもよい。
図6に示す例で言えば、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224がZ軸方向に沿った弾性力を付与しているため、駆動部材1225は、Z軸方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を付与してもよい。エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を駆動部材1225が発生する場合には、駆動部材1225は、この駆動力を利用して、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換することができる。エアスプリング1223の振動を減衰振動にする際には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、エアスプリング1223の共振周波数を変更してもよい。典型的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、エアスプリング1223の共振周波数を高くしてもよい。
【0109】
駆動部材1225は、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向に交差する方向に沿って作用する駆動力を付与してもよい。
図6に示す例で言えば、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224がZ軸方向に沿った弾性力を付与しているため、駆動部材1225は、Z軸方向に交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)に沿って作用する駆動力を付与してもよい。エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向に交差する方向に沿って作用する駆動力を駆動部材1225が発生する場合には、駆動部材1225は、この駆動力を利用してエアスプリング1223の振動を減衰振動にするための動作を行わなくてもよい。このため、駆動部材1225の負荷が相対的に軽減される。
【0110】
エアスプリング1223等の弾性部材と駆動部材1225とを用いて能動的に振動を低減する装置は、能動型防振装置と称されてもよい。このため、第2駆動系122は、能動型防振装置と称されてもよい。能動型防振装置は、能動型振動分離システム(AVIS:Active Vibration Isolation System)と称されてもよい。
【0111】
(1-3)加工システムSYSaによる加工動作の具体例
(1-3-1)加工動作によって形成される構造の具体例
図2を用いて説明したように、第1実施形態では、加工システムSYSaは、塗装膜SFに凹部Cを形成する。凹部Cは、塗装膜SFのうち加工光ELが実際に照射された部分に形成される。このため、塗装膜SF上で加工光ELが実際に照射される位置(つまり、加工光ELが照射されることが予定されている目標照射領域EAが設定される位置)を適切に設定すれば、塗装膜SFの所望位置に凹部Cが形成可能となる。つまり、加工対象物S上に、塗装膜SFによる構造を形成可能となる。
【0112】
具体的には、加工システムSYSaは、上述したように、ガルバノミラー1122及び駆動系12の少なくとも一方を用いて、目標照射領域EAに塗装膜SFの表面を移動させる。加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべき領域(つまり、加工するべき領域)に目標照射領域EAが重なるタイミングで加工光ELを照射する。一方で、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべき領域に目標照射領域EAが重ならないタイミングでは加工光ELを照射しない。つまり、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべきでない領域(つまり、加工すべきでない領域)に目標照射領域EAが重なるタイミングでは加工光ELを照射しない。その結果、加工対象物S上に、塗装膜SFのうち加工光ELが実際に照射された領域のパターン(或いは分布)に応じた塗装膜SFによる構造が形成される。
【0113】
第1実施形態では、加工システムSYSaは、制御装置2の制御下で、このような塗装膜SFによる構造の一例であるリブレット構造を加工対象物S上に形成する。リブレット構造は、塗装膜SFの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗、乱流摩擦抵抗)を低減可能な構造である。リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗は、リブレット構造が形成されていない加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗よりも小さくなる。このため、リブレット構造は、加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能な構造であるとも言える。尚、ここでいう流体とは、塗装膜SFの表面に対して相対的に流れている媒質(気体、液体)であればよい。例えば、静止している加工対象物SFに対して流れている媒質、及び、移動している加工対象物SFの周囲に分布する静止している媒質のそれぞれは、流体の一例である。
【0114】
リブレット構造の一例が
図7(a)及び
図7(b)に示されている。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、リブレット構造は、例えば、第1の方向(
図7(a)及び
図7(b)に示す例では、Y軸方向)に沿って凹部Cを連続的に形成することで形成される凹状構造CP1(つまり、第1の方向に沿って延伸するように直線状に形成された凹状構造CP1)が、第1の方向に交差する第2方向(
図7(a)及び
図7(b)に示す例では、X軸方向)に沿って複数配列された構造である。つまり、リブレット構造は、例えば、第1の方向に沿って延びる複数の凹状構造CP1が、第1の方向に交差する第2方向に周期方向を有する構造である。隣り合う2つの凹状構造CP1の間には、周囲から突き出た凸状構造CP2が実質的に存在する。従って、リブレット構造は、例えば、第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って直線状に延伸する凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に沿って複数配列された構造であるとも言える。つまり、リブレット構造は、例えば、第1の方向に沿って延びる複数の凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向に周期方向を有する構造であるとも言える。
図7(a)及び
図7(b)に示されるリブレット構造は、周期的な構造である。尚、リブレット構造は、非周期的な構造であってもよい。
【0115】
隣り合う2つの凹状構造CP1の間隔(つまり、凹状構造CP1の配列ピッチP1)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凹状構造CP1の深さ(つまり、Z軸方向の深さ)Dは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1以下であってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1の半分以下であってもよい。各凹状構造CP1のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、お椀型の曲線形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。
【0116】
隣り合う2つの凸状構造CP2の間隔(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凸状構造CP2の高さ(つまり、Z軸方向の高さ)Hは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2以下であってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2の半分以下であってもよい。各凸状構造CP2のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、斜面が曲線となる山形の形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。
【0117】
尚、加工システムSYSaが形成するリブレット構造自体は、例えば、日本機械学会編『機械工学便覧基礎編 α4流体工学』第5章に記述されるような既存のリブレット構造であってもよいため、リブレット構造そのものについての詳細な説明は省略する。
【0118】
このようなリブレット構造は、上述したように、リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能である。このため、加工対象物Sは、流体に対する抵抗を低減することが望まれる物体(例えば、構造体)であってもよい。例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体(例えば、気体及び液体の少なくとも一方)内を進むように移動可能な物体(つまり、移動体)を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、
図8(a)から
図8(c)に示すように、航空機PLの機体(例えば、胴体PL1、主翼PL2、垂直尾翼PL3及び水平尾翼PL4のうち少なくとも1つ)を含んでいてもよい。この場合、
図8(a)及び
図8(c)に示すように、加工装置1(或いは、加工システムSYSa、以下この段落において同じ)は、支持装置14により航空機PLの機体上で自立していてもよい。或いは、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、
図8(b)に示すように、加工装置1は、支持装置14により航空機PLの機体から吊り下がる(つまり、ぶら下がる)ように航空機PLの機体に付着してもよい。更に、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であり且つ収容装置13の隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、加工装置1は、塗装膜SFの表面が上方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SF上で自立可能である。更には、加工装置1は、塗装膜SFの表面が下方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能である。いずれの場合であっても、光照射装置11は、駆動系12により及び/又は支持装置14の移動により、機体の表面に沿って移動可能である。従って、加工システムSYSaは、航空機の機体のような加工対象物S(つまり、表面が曲面となる、表面が水平面に対して傾斜している又は表面が下方を向いている加工対象物S)にも、塗装膜SFによるリブレット構造を形成可能である。
【0119】
その他、例えば、加工対象物Sは、自動車の車体や空力パーツを含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、船舶の船体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、ロケットの機体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、タービン(例えば、水力タービン及び風力タービン等の少なくとも一つであり、特にそのタービンブレード)を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体内を進むように移動可能な物体を構成する部品を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、流動している流体内に少なくとも一部が固定される物体を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、川又は海の中に設置される橋桁を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、内部を流体が流れる配管を含んでいてもよい。この場合、配管の内壁が上述した加工対象物Sの表面となり得る。
【0120】
尚、ここにあげた加工対象物Sの一例は、比較的に大きな物体(例えば、数メートルから数百メートルのオーダーのサイズの物体)である。この場合、
図8(a)から
図8(c)に示すように、光照射装置11の大きさは、加工対象物Sの大きさよりも小さい。しかしながら、加工対象物Sは、どのようなサイズの物体であってもよい。例えば、加工対象物Sは、キロメートル、センチメートル、ミリメートル又はマイクロメートルのオーダーのサイズの物体であってもよい。
【0121】
上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な特性に設定されてもよい。つまり、上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるように最適化されてもよい。より具体的には、リブレット構造の特性は、使用中の(つまり、運用中)の加工対象物Sの周囲に分布する流体の種類、加工対象物Sの流体に対する相対速度、及び、加工対象物Sの形状等の少なくとも一つに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られる適切な特性に設定されてもよい。更に、上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であり且つその物体のどの部分にリブレット構造が形成されるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な特性に設定されてもよい。例えば、加工対象物Sが航空機PLの機体である場合には、胴体PL1に形成されるリブレット構造の特性と、主翼PL2に形成されるリブレット構造の特性とが異なっていてもよい。
【0122】
リブレット構造の特性は、リブレット構造のサイズを含んでいてもよい。リブレット構造のサイズは、凹状構造CP1の配列ピッチP1、各凹状構造CP1の深さD、凸状構造CP2の配列ピッチP2、各凸状構造CP2の高さH等の少なくとも一つを含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の形状(例えば、Z軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状)を含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の延伸方向(つまり、凹状構造CP1の延伸方向)を含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の形成位置を含んでいてもよい。
【0123】
一例として、例えば、加工対象物Sが、巡航時に10kmの高度を時速1000kmで飛行する航空機の機体である場合には、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば約78マイクロメートルに設定されてもよい。
【0124】
(1-3-2)加工動作の流れ
続いて、
図9から
図20を参照しながら、リブレット構造を形成するための加工動作の流れについて説明する。
【0125】
まず、上述したように、複数の加工光ELは、ガルバノミラー1122によって偏向される。リブレット構造を形成するためには、ガルバノミラー1122は、塗装膜SFの表面上で複数の目標照射領域EAをY軸方向に沿って移動させながら所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれを対応する目標照射領域EAに照射するスキャン動作と、塗装膜SFの表面上で複数の目標照射領域EAを少なくともX軸方向に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すように、複数の加工光ELを偏向する。この場合、Y軸を、スキャン軸と称してもよいし、X軸を、ステップ軸と称してもよい。
【0126】
ここで、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SFの表面上の領域のサイズには限界がある。従って、第1実施形態では、
図9に示すように、制御装置2は、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に、複数の加工ショット領域SAを設定する。各加工ショット領域SAは、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SF上の領域に相当する。各加工ショット領域SAの形状は四角形であるが、その形状は任意である。
【0127】
制御装置2は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを一の加工ショット領域SA(例えばSA1)の一部に照射するように光照射装置11を制御することで、当該一の加工ショット領域SA(SA1)にリブレット構造を形成する。その後、制御装置2は、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させるように駆動系12及び15の少なくとも一方を制御することで、光照射装置11を、他の加工ショット領域SA(例えばSA2)に複数の加工光ELを照射することが可能な位置に配置する。その後、制御装置2は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを他の加工ショット領域SA(SA2)に照射するように光照射装置11を制御することで、当該他の加工ショット領域SAにリブレット構造を形成する。制御装置2は以下の動作を全ての加工ショット領域SA1からSA16を対象に繰り返すことで、リブレット構造を形成する。
【0128】
以下、
図9に示す加工ショット領域SA1からSA4にリブレット構造を形成する動作を例にあげて説明を続ける。尚、以下では、X軸方向に沿って隣接する2つの加工ショット領域SAが収容空間SP内に位置する例を用いて説明をする。しかしながら、収容空間SP内に任意の数の加工ショット領域SAが位置する場合においても、同様の動作が行われることに変わりはない。また、以下に示すリブレット構造を形成する動作は、あくまで一例であって、加工システムSYSは、以下に示す動作とは異なる動作を行ってリブレット構造を形成してもよい。要は、加工システムSYSは、複数の加工光ELを加工対象物Sに照射して加工対象物Sにリブレット構造を形成することができる限りは、どのような動作を行ってもよい。
【0129】
図10に示すように、まず、制御装置2は、収容空間SP内に加工ショット領域SA1及びSA2が位置する第1収容位置に収容装置13が配置されるように、駆動系15を制御して塗装膜SFに対して支持装置14を移動させる。つまり、制御装置2は、収容装置13により加工ショット領域SA1及びSA2が覆われるように、支持装置14が支持する収容装置13を移動させる。更に、制御装置2は、光照射装置11が加工ショット領域SA1に複数の加工光ELを照射することが可能な第1照射位置に配置されるように、駆動系12を制御して(つまり、第1駆動系121及び/又は第2駆動系122)塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させる。収容装置13が第1収容位置に配置され且つ光照射装置11が第1照射位置に配置された後は、隔壁部材132は、第1伸長状態になる。従って、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。同様に、複数の脚部材142は、第2伸長状態になる。従って、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。
【0130】
その後、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA1を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置2は、上述したスキャン動作を行うために、加工ショット領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。スキャン動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを射出する。その後、制御装置2は、上述したステップ動作を行うために、少なくともガルバノミラー1122のX走査ミラー1122Xを単位ステップ量だけ回転させる。ステップ動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを射出しない。その後、制御装置2は、上述したスキャン動作を行うために、加工ショット領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。このように、制御装置2は、スキャン動作とステップ動作とを交互に繰り返して加工ショット領域SA1の全体(或いは、加工ショット領域SA1のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、ガルバノミラー1122を制御する。尚、ステップ動作が行われている間において、複数の加工光ELを射出してもよい。
【0131】
つまり、第1実施形態では、スキャン動作とステップ動作とが繰り返される期間中の加工光ELの走査軌跡(つまり、目標照射領域EAの移動軌跡)を示す平面図である
図12に示すように、加工装置1は、加工ショット領域SA内に設定される複数のスキャン領域SCAに対して順にスキャン動作を行う。
図12は、加工ショット領域SA内に6個のスキャン領域SCA#1からSCA#6が設定される例を示している。各スキャン領域SCAは、1回のスキャン動作(つまり、ステップ動作を挟まない一連のスキャン動作)で照射される複数の加工光ELによって走査される領域である。各スキャン領域SCAは、1回のスキャン動作で複数の目標照射領域EAが移動する領域である。この場合、1回のスキャン動作で、目標照射領域EAは、各スキャン領域SCAのスキャン開始位置SC_startからスキャン終了位置SC_endに向かって移動する。このようなスキャン領域SCAは、典型的には、Y軸方向(つまり、複数の加工光ELの走査方向)に沿って延びる領域となる。複数のスキャン領域SCAは、X軸方向(つまり、複数の加工光ELの走査方向に交差する方向)に沿って並ぶ。
【0132】
この場合、加工システムSYSaは、例えば、ある加工ショット領域SAに設定される複数のスキャン領域SCAのうち最も+X側又は最も-X側に位置する一のスキャン領域SCAからスキャン動作を開始する。例えば、
図12は、加工システムSYSaが、最も-X側に位置するショット領域SCA#1からスキャン動作を開始する例を示している。この場合、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1(例えば、スキャン領域SCA#1内の-Y側の端部又はその近傍)に対して加工光ELを照射可能となるように、ガルバノミラー1122を制御する。つまり、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1に目標照射領域EAが設定されるように、ガルバノミラー1122を制御する。その後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#1に対してスキャン動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1からスキャン領域SCA#1のスキャン終了位置SC_end#1(例えば、スキャン領域SCA#1内の+Y側の端部又はその近傍)に向かって複数の目標照射領域EAが移動するように、ガルバノミラー1122を制御する。更に、制御装置2は、所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれが対応する目標照射領域EAに照射されるように光照射装置11を制御する。その結果、複数の加工光ELによってスキャン領域SCA#1が走査される。尚、
図12では、図面の簡略化のために、各スキャン領域SCA内における1つの目標照射領域EAの移動軌跡を示しているが、実際には、各スキャン領域SCA内で複数の目標照射領域EAが移動する。つまり、
図12では、図面の簡略化のために、各スキャン領域SCA内における1つの加工光ELの走査軌跡を示しているが、実際には、各スキャン領域SCAは複数の加工光ELによって走査される。
【0133】
スキャン領域SCA#1に対するスキャン動作が完了した後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#1とは異なる他のスキャン領域SCAに対してスキャン動作を行うために、ステップ動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#1に対してX軸方向に沿って隣接するスキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2(例えば、スキャン領域SCA#2内の-Y側の端部又はその近傍)に対して加工光ELを照射可能となるように、ガルバノミラー1122を制御する。つまり、制御装置2は、スキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2に目標照射領域EAが設定されるように、ガルバノミラー1122を制御する。その結果、
図12に示すように、目標照射位置EAは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って移動する。この際、X軸方向における目標照射位置EAの移動量は、X軸方向におけるスキャン領域SCAのサイズと同じであってもよい。Y軸方向における目標照射位置EAの移動量は、Y軸方向におけるスキャン領域SCAのサイズと同じであってもよい。
【0134】
その後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#2に対してスキャン動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2からスキャン領域SCA#2のスキャン終了位置SC_end#2(例えば、スキャン領域SCA#2内の+Y側の端部又はその近傍)に向かって複数の目標照射領域EAが移動するように、ガルバノミラー1122を制御する。更に、制御装置2は、所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれが対応する目標照射領域EAに照射されるように光照射装置11を制御する。その結果、複数の加工光ELによってスキャン領域SCA#2が走査される。
【0135】
以降、スキャン領域SCA#3からSCA#6に対するスキャン動作が完了するまで、同様の動作が繰り返される。
【0136】
図12に示す例では、スキャン動作による加工光ELの走査方向は、+Y軸方向に固定されている。スキャン動作による目標照射領域EAの移動方向は、+Y軸方向に固定されている。つまり、
図12に示す例では、加工ショット領域SA内で複数回行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向、以下同じ)は、互いに同じになる。複数のスキャン領域SCAをそれぞれ走査する複数の加工光ELの走査方向は、互いに同じになる。複数のスキャン領域SCA内での目標照射領域EAの移動方向は、互いに同じになる。具体的には、スキャン領域SCA#1に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向と、スキャン領域SCA#2に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向と、・・・、スキャン領域SCA#6に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向とは互いに同一である。
【0137】
このようなスキャン動作とステップ動作との繰り返しによって、加工ショット領域SA1にリブレット構造が形成される。尚、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、加工光ELが走査する領域の幅(つまり、加工ショット領域SAの幅、特にX軸方向の幅)は、光照射装置11の幅(特に、X軸方向の幅)よりも大きい。
【0138】
このようなスキャン動作とステップ動作とが繰り返される過程で、ガルバノミラー1122の動作に起因して、目標照射領域EAの位置ずれが発生することがある。例えば、ガルバノミラー1122が動作し続けると、ガルバノミラー1122の温度が変わる(典型的には、上昇する)可能性がある。ガルバノミラー1122の温度が変わると、ガルバノミラー1122の温度が変わる前と比較して、ガルバノミラー1122の特性が変わる可能性がある。その結果、ガルバノミラー1122に対する目標照射領域EAの位置が変わる(つまり、目標照射領域EAの位置ずれが発生する)可能性がある。このような目標照射領域EAの位置ずれは、塗装膜SFの適切な加工の妨げとなる可能性がある。そこで、制御装置2は、目標照射領域EAの位置ずれを低減する(つまり、目標照射領域EAを本来の位置に近づける)ように、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。例えば、制御装置2は、目標照射領域EAの位置ずれを低減する(例えば、位置ずれ量を少なくする)ように、第1駆動系121を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。例えば、制御装置2は、目標照射領域EAの位置ずれを低減するように、第2駆動系122(特に、駆動部材1225)を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。
【0139】
制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、複数の脚部材142が第2伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、支持装置14の安定性が向上するため、支持装置14の不安定性に起因して加工光ELの目標照射領域EAが塗装膜SF上で意図せずにずれてしまう可能性が小さくなる。但し、光照射装置11が光ELを照射している期間の少なくとも一部において、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)である限りは、複数の脚部材142の一部が第2縮小状態にあってもよい。
【0140】
制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、隔壁部材132が第1伸長状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、収容空間SPの密閉性が維持されるため、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。更には、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0141】
尚、塗装膜SFに付着しているはずの端部134の少なくとも一部が、何らかの要因によって塗装膜SFから離れてしまう事態が生ずる可能性がある。この場合に光照射装置11が加工光ELを照射し続けると、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てしまう可能性がある。そこで、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中に端部134の少なくとも一部が塗装膜SFから離れたことを検出した場合には、加工光ELの照射を停止するように光照射装置11を制御してもよい。
【0142】
その後、
図13に示すように、制御装置2は、光照射装置11が、第1照射位置から、光照射装置11が加工ショット領域SA2に複数の加工光ELを照射することが可能な第2照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。光照射装置11が移動している期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0143】
その後、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA2を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置2は、上述したスキャン動作と上述したステップ動作とを交互に繰り返して加工ショット領域SA2の全体(或いは、加工ショット領域SA2のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。その結果、加工ショット領域SA2にリブレット構造が形成される。尚、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1は、加工ショット領域SA1に隣接する加工ショット領域SA2(或いは、その他の加工ショット領域SA)内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1のそれぞれと、互いに連続に連結されるように形成されてもよい。或いは、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。例えば、加工ショット領域SA内で加工光ELを走査した結果として形成される1本の凹部CP1の連続長は、加工ショット領域SAのサイズ(特に、加工光ELの走査方向であるY軸方向のサイズ)に依存する。従って、加工ショット領域SAのサイズが、リブレット構造が上述した機能を果たしうる連続長を実現できるだけのサイズとなる場合には、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。一例として、加工対象物Sが航空機である場合には、リブレット構造が上述した機能を果たしうる連続長は、航空機の使用時(典型的には、巡航時)における対気速度と乱流現象の周波数とに基づく演算によれば、およそ数mmとなる。このため、Y軸方向のサイズがおよそ数mmよりも大きい加工ショット領域SAを塗装膜SFの表面に設定することができる場合には、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹部CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。
【0144】
加工ショット領域SA2にリブレット構造が形成された時点で、収容空間SPには、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが残っていない。このため、駆動系12によって収容空間SP内で光照射装置11を移動させるだけでは、光照射装置11は、未だリブレット構造が形成されていない加工ショット領域SAに複数の加工光ELを照射してリブレット構造を形成することができない。そこで、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが収容空間SPに残っていない状態になった場合には、制御装置2は、支持装置14を移動させることで(つまり、収容装置13を移動させることで)、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが収容空間SP内に新たに位置するように、駆動系15を制御する。
【0145】
具体的には、まず、
図15に示すように、制御装置2は、隔壁部材132の状態が第1伸長状態から第1縮小状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFから離れる。尚、支持装置14が移動する期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。このため、端部134が塗装膜SFから離れたとしても、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性はない。
【0146】
但し、収容空間SPに存在していた不要物質は、上述した排気装置16によって収容空間SPの外部に吸引されるものの、何らかの要因によって、収容空間SPに存在していた不要物質の全てが排気装置16によって吸引されていない(つまり、収容空間SPに不要物質が残留してしまう)可能性がある。この場合には、端部134が塗装膜SFから離れると、不要物質が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性がある。このため、制御装置2は、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えるか否かを判定してもよい。収容空間SPに不要物質が残留している場合には、制御装置2は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えなくてもよい。この場合、排気装置16によって、収容空間SPに残留している不要物質が吸引され続ける。一方で、収容空間SPに不要物質が残留していない場合には、制御装置2は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えてもよい。
【0147】
更に、制御装置2は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、縮小していた梁部材141の伸長)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。縮小していた梁部材141の伸長に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向(つまり、収容装置13の移動方向)の前方側に位置する脚部材142である。
図15に示す例では、支持装置14が+X側に向かって移動し、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142は、+X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142を、“前方脚部材142”と称する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0148】
その後、
図16に示すように、制御装置2は、収容装置13が、第1収容位置から、収容空間SP内に加工ショット領域SA3及SA4が位置する第2収容位置へと移動するように、駆動系15を制御する。具体的には、制御装置2は、支持装置14の移動方向に沿って梁部材141が伸長するように、駆動系15を制御する。その結果、梁部材141は、収容装置13を支持したまま(更には、収容装置13が支持する光照射装置11を支持したまま)伸長する。更に、支持装置14の移動と並行して、制御装置2は、光照射装置11が、第2照射位置から、光照射装置11が加工ショット領域SA3に複数の加工光ELを照射することが可能な第3照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。このように、第1実施形態では、支持装置14は、加工対象物Sによって支持された状態で自走可能である。このため、支持装置14は、自走装置と称されてもよい。
【0149】
支持装置14が移動している(つまり、縮小していた梁部材141が伸びている)期間中は、制御装置2は、隔壁部材132が第1縮小状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0150】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、前方脚部材142が第2縮小状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0151】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、複数の脚部材142のうち前方脚部材142以外の他の脚部材142が第1伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れたとしても、前方脚部材142以外の他の脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触している。このため、複数の脚部材142の全ての端部144が塗装膜SFに接触している場合と同様に、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)であることに変わりはない。
【0152】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0153】
収容装置13が第2収容位置に配置された後、
図17に示すように、制御装置2は、隔壁部材132が第1縮小状態から第1伸長状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに接触し且つ付着する。更に、制御装置2は、前方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触し且つ付着する。ここで、隔壁部材132の伸長動作と前方脚部材142の伸長動作とは同時に行われてもよいし、時間差をもって行われてもよい。
【0154】
その後、
図18に示すように、制御装置2は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、伸長していた梁部材141の縮小)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。伸長していた梁部材141の縮小に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142である。
図18に示す例では、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142は、-X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142を、“後方脚部材142”と称する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0155】
その後、
図19に示すように、制御装置2は、支持装置14の移動方向に沿って伸長していた梁部材141が縮小するように、駆動系15を制御する。
【0156】
梁部材141の縮小が完了した後、
図20に示すように、制御装置2は、後方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触して付着する。
【0157】
その後は、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA1及びSA2を走査する場合と同様に、複数の加工光ELが加工ショット領域SA3及びSA4を走査するように、光照射装置11を制御する。以下、同様の動作が繰り返されることで、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に複数の加工光ELが照射される。その結果、加工対象物S上に、塗装膜SFによるリブレット構造が形成される。
【0158】
(1-4)加工システムSYSaの技術的効果
以上説明したように、第1実施形態の加工システムSYSaは、加工光ELを加工対象物S(特に、その表面に形成された塗装膜SF)に照射することで、加工対象物Sの表面に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。このため、加工システムSYSaは、加工対象物Sの表面をエンドミル等の切削工具で削り取ることでリブレット構造を形成する加工装置と比較して、比較的容易に且つ相対的に短時間でリブレット構造を形成することができる。
【0159】
更に、加工システムSYSaは、複数の加工光ELを同時に照射して複数の凹状構造CP1を同時に形成することができる。このため、単一の加工光ELを照射して一度に単一の凹状構造CP1しか形成することができない加工装置と比較して、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0160】
更に、加工システムSYSaは、ガルバノミラー1122で複数の加工光ELを偏向して、塗装膜SFを相対的に高速に走査することができる。このため、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0161】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工することに代えて、加工対象物Sの表面に形成されている塗装膜SFを加工することで、加工対象物Sの表面にリブレット構造を形成することができる。このため、リブレット構造を形成するための特別な材料を加工対象物Sの表面(つまり、塗装膜SFの表面)に新たに付加する(例えば、貼り付ける)ことでリブレット構造を形成する加工システムと比較して、リブレット構造の形成に起因した加工対象物Sの重量の増加が回避可能である。
【0162】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、リブレット構造を比較的容易に再形成することができる。具体的には、リブレット構造の再形成の際には、まずは、塗装膜SFによるリブレット構造が一旦剥離され、その後、新たな塗装膜SFが塗布される。その後、加工システムSYSaは、新たに塗布された塗装膜SFを加工することで、新たなリブレット構造を形成することができる。従って、リブレット構造の劣化(例えば、破損等)に対して、リブレット構造の再形成によって相対的に容易に対処可能となる。
【0163】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、直接の加工が困難な又はリブレット構造がもともと形成されていない加工対象物Sの表面にもリブレット構造を形成することができる。つまり、加工対象物Sの表面に塗装膜SFが塗布された後に加工システムSYSaが塗装膜SFを加工すれば、リブレット構造を比較的容易に形成可能である。
【0164】
尚、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布した後に塗装膜SFを加工する場合には、加工対象物Sを加工する動作は、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する(つまり、形成する)動作と、塗装膜SFを加工する(例えば、塗装膜SFを部分的に除去する)動作とを含んでいてもよい。加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaによって行われてもよい。この場合、加工システムSYSaは、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布するための塗布装置を備えていてもよい。或いは、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaの外部で行われてもよい。例えば、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaの外部の塗布装置によって行われてもよい。
【0165】
更に、加工システムSYSaは、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。塗装膜SFは、通常は、外部環境(例えば、熱、光、及び風等の少なくとも一つ)に対して相対的に高い耐久性を有している。このため、加工システムSYSaは、相対的に高い耐久性を有するリブレット構造を、比較的容易に形成することができる。
【0166】
更に、第1実施形態では、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間における加工光ELの光路が収容空間SP内に含まれている。このため、加工光ELの光路が収容空間SPに含まれていない(つまり、開放空間に開放されている)加工システムと比較して、塗装膜SFに照射された加工光EL(或いは、当該加工光ELの塗装膜SFからの散乱光ないしは反射光等)が加工システムSYSaの周囲へ伝搬する(言い換えれば、散乱してしまう)ことを適切に防止可能である。更には、加工光ELの照射によって発生した不要物質が加工システムSYSaの周囲へ伝搬する(言い換えれば、飛散してしまう)ことを適切に防止可能である。
【0167】
更に、第1実施形態では、塗装膜SF上を移動可能な支持装置14によって光照射装置11が支持されている。このため、加工システムSYSaは、相対的に広範囲に広がる塗装膜SFを比較的容易に加工することができる。つまり、加工システムSYSaは、加工対象物Sの表面の相対的に広い範囲に渡って塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。更には、加工システムSYSaは、加工対象物Sを移動させなくてもよいため、相対的に大きな又は重い加工対象物Sの表面にも、相対的に容易にリブレット構造を形成することができる。
【0168】
更に、加工システムSYSaは、排気装置16を用いて、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPの外部に吸引可能である。このため、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、不要物質によって妨げられることは殆どない。このため、排気装置16を備えていない(つまり、塗装膜SFへの加工光ELの照射が不要物質によって妨げられる可能性がある)加工システムと比較して、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0169】
更に、加工装置1は、気体供給装置17を用いて、光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)への汚れの付着を防止することができる。このため、気体供給装置17を備えていない加工装置と比較して、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、光学面1124に付着してしまった汚れによって妨げられる可能性が小さくなる。このため、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0170】
また、第1実施形態では、加工装置1は、第1駆動系121及び第2駆動系122を備える駆動系12を用いて、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させることができる。このため、加工装置1は、塗装膜SFに対して光照射装置11を適切に移動させることができる。具体的には、仮に第1駆動系121のみを用いて(つまり、第2駆動系122を用いることなく)光照射装置11を移動させる場合には、光照射装置11の位置決め精度を相応に高くすることが難しくなる。なぜならば、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度は、第1駆動系121の複数の関節の移動精度(つまり、揺動精度又は回転精度)を積算した精度となるからである。しかるに、第1実施形態では、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度を相応に高くすることができない場合であっても、光照射装置11の位置決め精度は、第1駆動系121よりも位置決め精度が高い第2駆動系122によって高められる。つまり、第2駆動系122を用いて、第1駆動系121及び第2駆動系122を備える駆動系12全体としての光照射装置11の位置決め精度を、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度よりも高くすることができる。このため、加工装置1は、第2駆動系122を備えていない場合と比較して、塗装膜SFに対して光照射装置11を適切に(例えば、精度よく)移動させることができる。
【0171】
また、駆動系12が、第2駆動系122に加えて、第2駆動系122よりも光照射装置11の移動範囲を大きくすることが可能な第1駆動系121を備えているため、第1駆動系121を備えることなく第2駆動系122を備える比較例の駆動装置と比較して、光照射装置11の移動範囲が大きくなるという利点もある。
【0172】
つまり、第1実施形態では、加工システムSYSaは、主として第1駆動系121を用いて光照射装置11の移動範囲を相応に大きくしつつ、主として第2駆動系122を用いて光照射装置11の移動精度を相応に高めることができる。つまり、加工システムSYSaは、光照射装置11の移動範囲の広大化及び光照射装置11の移動精度の向上を両立することができる。
【0173】
加えて、第1実施形態では、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度を相応に高くする必要性が小さくなる。このため、第1駆動系121による光照射装置11の位置決め精度を相応に高くするために、第1駆動系121の剛性(例えば、アーム部材12121の剛性)を高くしなくともよくなる。その結果、第1駆動系121の軽量化が可能となる。更には、第1駆動系121の軽量化に伴い、アーム部材12121を移動させるためのアクチュエータ12123の小型化も可能となる。
【0174】
また、第1実施形態では、第1駆動系121の移動に伴う振動が光照射装置11に伝わる可能性を低めることができる、或いは第1駆動系121の移動に伴う振動量よりも光照射装置11の振動量の方を小さくすることができる。その結果、光照射装置11の整定時間の短縮を図ることができ、トータルのスループットの向上を図ることができる。或いは、光照射装置11の振動に起因する位置決め精度の劣化を低減できるため、リブレット構造の形成精度の向上を図ることができる。
【0175】
そして、第1実施形態では、位置計測装置18の計測結果に基づいて、アーム駆動系1212を制御しているため、光照射装置11の位置決め精度を高めることができる。
【0176】
(2)第2実施形態の加工システムSYSb
続いて、
図21を参照しながら、第2実施形態の加工システムSYS(以降、第2実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSb”と称する)について説明する。
図21は、第2実施形態の加工システムSYSbの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0177】
図21に示すように、第2実施形態の加工システムSYSbは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1bを備えているという点で異なる。加工システムSYSbのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1bは、加工装置1と比較して、位置計測装置18に代えて、位置計測装置18bを備えているという点で異なる。加工装置1bのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。
【0178】
位置計測装置18bは、位置計測装置18と同様に、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する。位置計測装置18bは、上述した位置計測装置18と比較して、所定の基準位置に対する光照射装置11の位置を計測する。具体的には、位置計測装置18bは、基準位置が規定された基準座標系における光照射装置11の位置を計測する。基準位置は、例えば、基準座標系の原点であってもよい。基準座標系として、例えば、位置計測装置18bが塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測するために用いる計測座標系が用いられる。但し、基準座標系として、その他の座標系が用いられてもよい。尚、塗装膜SFの基準座標系における位置が既知であれば、位置計測装置18bによる基準座標系における基準位置と光照射装置11との相対的な位置関係の計測によって、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係が求められる。すなわち、位置計測装置18bは、間接的に塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測するものといえる。
【0179】
基準位置に対する光照射装置11の位置を計測するために、位置計測装置18bは、指標部材181bと、指標計測装置182bとを備えている。
【0180】
指標部材181bは、基準位置に対する光照射装置11の位置を計測する際の指標となる部材である。指標部材181bは、光照射装置11(特に、光学系112)に対して固定された位置に配置される。指標部材181bは、光照射装置11に対する相対位置が固定された位置に配置される。指標部材181bは、駆動系12が光照射装置11を移動させたとしても光照射装置11と指標部材181bとの相対位置が変わらない位置に配置される。例えば、
図21は、指標部材181bが、光照射装置11が取り付けられる取付部材19に配置されている例を示している。但し、指標部材181bは、取付部材19とは異なる部材に取り付けられてもよい。例えば、指標部材181bは、光照射装置11に取り付けられてもよい。例えば、指標部材181bは、上述した筐体114(
図4参照)に取り付けられてもよい。
【0181】
指標計測装置182bは、指標部材181bの位置を計測する。指標計測装置182bは、指標計測部材181bの位置を計測可能である限りは、どのような計測装置であってもよい。指標計測装置182bは、指標計測部材181bの位置を計測可能である限りは、どのような位置に配置されていてもよい。
【0182】
指標計測装置182bからの出力(つまり、指標計測装置182bの計測結果)は、基準位置に対する光照射装置11の位置に関する情報を含むことになる。具体的には、指標計測装置182bの計測結果は、基準位置に対する指標部材181bの位置に関する情報を含む。つまり、指標計測装置182bの計測結果は、基準座標系における指標部材181bの位置に関する情報を含む。ここで、光照射装置11に対して固定された位置に指標部材181bが配置されているがゆえに、基準座標系における指標部材181bの位置に関する情報は、実質的には、基準座標系における光照射装置11の位置に関する情報を含んでいる。従って、制御装置2は、基準位置に対する光照射装置11の位置を適切に特定することができる。
【0183】
指標部材181bの一例として、マーカがあげられる。マーカは、物理的な形状によって識別可能なマーカ(例えば、刻印、凸部又は凹部)を含んでいてもよい。マーカは、視覚的特徴(例えば、色等)によって識別可能なマーカ(例えば、を含んでいてもよい。マーカは、マーカ自身が発する光によって識別可能なマーカ(例えば、LED(Light Emitting Diode)等)を含んでいてもよい。この場合、指標計測装置182bは、マーカを撮像可能な撮像装置(例えば、カメラ)を含んでいてもよい。或いは、指標計測装置182bは、マーカに対して計測光(或いは、任意の計測ビーム)を照射する照射装置と、マーカからの計測光を受光する受光装置とを含んでいてもよい。
【0184】
指標部材181bの一例として、信号を発信可能な発信装置があげられる。信号の一例として、電波信号及び光信号の少なくとも一方があげられる。この場合、指標計測装置182bは、信号を受信可能な受信装置を含んでいてもよい。
【0185】
位置計測装置18bは、単一の指標部材181bを備えていてもよい。この場合、制御装置2は、指標計測装置182bの計測結果(つまり、単一の指標部材181bの位置に関する情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおける光照射装置11の位置を特定することができる。位置計測装置18bは、二つの指標部材181bを備えていてもよい。この場合、制御装置2は、指標計測装置182bの計測結果(つまり、二つの指標部材181bの位置に関する情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおける光照射装置11の位置に加えて、θZ方向に相当する回転方向における光照射装置11の位置(つまり、Z軸周りにおける光照射装置11の回転量)を特定することができる。位置計測装置18bは、三つ以上の指標部材181bを備えていてもよい。この場合、制御装置2は、指標計測装置182bの計測結果(つまり、三つ以上の指標部材181bの位置に関する情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおける光照射装置11の位置に加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向のそれぞれの回転方向における光照射装置11の位置(つまり、X軸周り、Y軸周り及びZ軸周りのそれぞれにおける光照射装置11の回転量)を特定することができる。
【0186】
尚、指標部材181bに代えて或いは加えて、(指標)計測装置182bからの計測光を反射する反射部材を設けてもよい。この場合、反射部材はコーナーキューブレフレクタやキャッツアイレフレクタであってもよい。
【0187】
また、位置計測装置18bによって、塗装膜SF上(加工対象物S上)で特徴点となる部分の基準座標系における位置を計測してもよい。ここで、加工対象物S(塗装膜SF)の3Dデータを用いれば、当該3Dデータの座標系における特徴点の座標が既知となる。基準座標系における特徴点の座標と3Dデータの座標系における特徴点の座標とを整合させれば、位置計測装置18bによって、加工対象物S(塗装膜SF)の任意の位置と、指標部材181bとの位置関係を求めることができる。尚、ある加工対象物Sの特徴点は、加工対象物Sの表面(塗装膜SF)上の位置を示す点の集合である点群データによって示される物体の3次元形状のうちの特徴的な位置の点を含んでいてもよい。特徴点の一例として、加工対象物Sにおける頂点、角、境界、最も+Z側に位置する点、最も-Z側に位置する点、最も+X側に位置する点、最も-X側に位置する点、最も+Y側に位置する点、及び、最も-Y側に位置する点の少なくとも一つを挙げてもよい。
【0188】
尚、複数の位置計測装置18bが設けられていてもよい。この場合、各々の位置計測装置18bの計測軸は互いに交差していてもよい。
【0189】
また、位置計測装置18bは、非接触方式(一例として光検出方式、音波検出方式及び電波検出方式等の少なくとも一つ)で光照射装置11の位置を計測するものであってもよい。
【0190】
このような第2実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0191】
(3)第3実施形態の加工システムSYSc
続いて、
図22を参照しながら、第3実施形態の加工システムSYS(以降、第3実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSc”と称する)について説明する。
図22は、第3実施形態の加工システムSYScの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0192】
図22に示すように、第3実施形態の加工システムSYScは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1cを備えているという点で異なる。加工システムSYScのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1cは、加工装置1と比較して、位置計測装置18に加えて、第2実施形態で説明した位置計測装置18bを更に備えているという点で異なる。加工装置1cのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。
【0193】
制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に基づいて、駆動系12(つまり、第1駆動系121及び第2駆動系122)を制御してもよい。その結果、第3実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSa及び第2実施形態の加工システムSYSbのそれぞれが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0194】
但し、加工システムSYScが位置計測装置18及び18b(つまり、複数の位置計測装置)を備えている場合には、加工動作が行われる過程で、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が変化する可能性がある。具体的には、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が、本来の理想的な相対位置からずれてしまう可能性がある。その結果、ある構造物を形成するように位置計測装置18の計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に塗装膜SFに形成される構造と、同じ構造物を形成するように位置計測装置18bの計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に塗装膜SFに形成される構造とが一致しなくなる可能性がある。そこで、第3実施形態では、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に加えて、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置に関する情報に基づいて、駆動系12を制御してもよい。
【0195】
具体的には、制御装置2は、まず、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置に関する情報を取得する。位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置に関する情報を取得するために、制御装置2は、例えば、テスト加工を行う(具体的には、テスト用の構造(以下、“テスト構造”と称する)STを形成する)ように加工装置1cを制御してもよい。具体的には、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて駆動系12を制御することでテスト構造STを形成し、位置計測装置18bの計測結果に基づいて駆動系12を制御することで同じテスト構造STを形成するように、加工装置1cを制御してもよい。この際、制御装置2は、実際の塗装膜SFにテスト構造STを形成するように、加工装置1cを制御してもよい。或いは、制御装置2は、不図示の塗装装置によって塗装膜SF上にテスト加工用の被膜が塗布された後に、塗布されたテスト加工用の被膜にテスト構造STを形成するように、加工装置1cを制御してもよい。或いは、制御装置2は、テスト構造STを形成するためのテスト用の物体(つまり、加工対象物SFとは異なる物体)にテスト構造STを形成するように、加工装置1cを制御してもよい。
【0196】
その結果、
図23(a)及び
図23(b)に示すように、塗装膜SF(或いは、テスト用の被膜又はテスト用の物体)には、位置計測装置18の計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に形成されるテスト構造ST(以降、“テスト構造ST1”と称する)と、位置計測装置18bの計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に形成されるテスト構造ST(以降、“テスト構造ST2”と称する)とが形成される。尚、
図23(a)は、位置計測装置18の計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に形成されるテスト構造ST1を示す平面図である。
図23(b)は、位置計測装置18bの計測結果に基づいて駆動系12が制御された場合に形成されるテスト構造ST2を示す平面図である。尚、
図23(a)及び
図23(b)に示したテスト構造ST1、ST2は、一次元方向に伸びたライン・アンド・スペース構造であるが、テスト構造はこれには限定されない。例えば、二次元方向に広がった構造(一例として一以上の十字形状やボックス形状)であってもよい。
【0197】
その後、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方(例えば、撮像装置)又は不図示の撮像装置等を用いて、形成された二つのテスト構造ST1及びST2を計測する。その後、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に基づいて、テスト構造ST1及びST2の形成位置に関する情報を取得する。ここで、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が変化していなければ(つまり、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が、本来の理想的な相対位置からずれていなければ)、テスト構造ST1を形成した領域内でのテスト構造ST1の相対的な形成位置と、テスト構造ST2を形成した領域内でのテスト構造ST2の相対的な形成位置とが一致するはずである。一方で、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が変化していれば(つまり、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が、本来の理想的な相対位置からずれていれば)、テスト構造ST1を形成した領域内でのテスト構造ST1の相対的な形成位置と、テスト構造ST2を形成した領域内でのテスト構造ST2の相対的な形成位置とが一致しない可能性が高い。尚、
図23(a)及び
図23(b)は、テスト構造ST1の相対的な形成位置と、テスト構造ST2を形成した領域内でのテスト構造ST2の相対的な形成位置とが一致しない例を示している。このため、テスト構造ST1及びST2の形成位置に関する情報は、実質的には、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置に関する情報を含んでいる。
【0198】
その結果、制御装置2は、テスト構造ST1及びST2の形成位置に関する情報に基づいて、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置の変化に起因した影響が低減されるように、駆動系12を制御することができる。例えば、制御装置2は、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置の変化に起因した影響が低減されるように位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果を補正し、補正した計測結果に基づいて駆動系12を制御してもよい。例えば、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に基づいて駆動系12を制御する際に、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置の変化に起因した影響が低減されるように、駆動系12による光照射装置11の移動態様(例えば、移動方向及び移動量の少なくとも一つ)を制御してもよい。例えば、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に基づいて、塗装膜SF(加工対象物S)上での一以上の加工光ELの照射位置を制御して、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置の変化に起因した影響を低減させてもよい。このとき、加工光ELの照射位置は、塗装膜SF(加工対象物S)の表面内の位置及び当該表面と交差する方向における位置のうち少なくとも一方であってもよい。この場合、光照射装置11が用いる加工データ(加工光ELの照射位置の移動経路や加工光ELの強度等が含まれるデータ)を、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果を用いて補正してもよい。
【0199】
或いは、テスト構造STが加工光ELの照射による塗装膜SF(或いは、テスト用の被膜又はテスト用の物体)の特性の変化に起因して形成されることを考慮すれば、制御装置2は、テスト構造STを実際に形成することに代えて、テスト構造STを形成するための加工光ELを、加工光ELの照射によって特性が変更される感応性部材PEに照射するように、加工装置1cを制御してもよい。具体的には、制御装置2は、位置計測装置18の計測結果に基づいて、テスト構造STを形成する場合と同様に駆動系12を制御しながら加工光ELを感応性部材PEに照射し、位置計測装置18bの計測結果に基づいて、同じテスト構造STを形成する場合と同様に駆動系12を制御しながら加工光ELを感応性部材PEに照射するように、加工装置1cを制御してもよい。或いは、制御装置2は、不図示の貼付装置によって塗装膜SF上に感応性部材PE(例えば、シート状の感応性部材PE)が貼り付けられた後に、貼り付けられた感応性部材PEに加工光ELを照射するように、加工装置1cを制御してもよい。尚、感応性部材PEは、塗装膜SFとの位置関係が加工光ELの照射時とテスト構造STの計測時との間で変動しなければ、塗装膜SFに貼り付けられる必要はない。例えば、感応性部材PEは、塗装膜SF上に載置されていてもよい。
【0200】
その結果、
図24(a)及び
図24(b)に示すように、感応性部材PEには、加工光ELが照射されたことで特性が変化した特性変化パターンPVが形成される。尚、
図24(a)は、位置計測装置18の計測結果に基づいて、テスト構造STを形成する場合と同様に駆動系12を制御しながら加工光ELを照射した場合に形成される特性変化パターンPV(以降、“特性変化パターンPV1”と称する)を示す平面図である。
図24(b)は、位置計測装置18bの計測結果に基づいて、テスト構造STを形成する場合と同様に駆動系12を制御しながら加工光ELを照射した場合に形成される特性変化パターンPV(以降、“特性変化パターンPV2”と称する)を示す平面図である。
【0201】
その後、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方(例えば、撮像装置)又は不図示の撮像装置等を用いて、形成された二つの特性変化パターンPV1及びPV2を計測する。その後、制御装置2は、位置計測装置18及び18bの少なくとも一方の計測結果に基づいて、特性変化パターンPV1及びPV2の形成位置に関する情報を取得する。ここで、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が変化していなければ、特性変化パターンPV1を形成した領域内での特性変化パターンPV1の相対的な形成位置と、特性変化パターンPV2を形成した領域内での特性変化パターンPV2の相対的な形成位置とが一致するはずである。一方で、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置が変化していれば、特性変化パターンPV1を形成した領域内での特性変化パターンPV1の相対的な形成位置と、特性変化パターンPV2を形成した領域内での特性変化パターンPV2の相対的な形成位置とが一致しない可能性が高い。尚、
図24(a)及び
図24(b)は、特性変化パターンPV1の相対的な形成位置と、特性変化パターンPV2を形成した領域内でのテスト構造ST2の相対的な形成位置とが一致する例を示している。このため、特性変化パターンPV1及びPV2の形成位置に関する情報は、実質的には、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置に関する情報を含んでいる。
【0202】
その結果、制御装置2は、特性変化パターンPV1及びPV2の形成位置に関する情報に基づいて、位置計測装置18の計測基準位置と位置計測装置18bの計測基準位置との相対位置の変化に起因した影響が低減されるように、駆動系12を制御することができる。
【0203】
尚、特性変化パターンPV1及びPV2の線幅を計測すれば、塗装膜SF(加工対象物S)の表面と交差する方向における加工光ELの照射位置に関する情報を得ることができる。
【0204】
また、複数の位置計測装置18及び複数の位置計測装置18bが設けられていてもよい。この場合、各々の位置計測装置18の計測軸は、互いに交差する(或いはねじれの)関係であってもよく、互いに平行(又は同軸)であってもよい。そして、各々の位置計測装置18bの計測軸は互いに交差する関係であってもよい。
【0205】
(4)第4実施形態の加工システムSYSd
続いて、
図25を参照しながら、第4実施形態の加工システムSYS(以降、第4実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSd”と称する)について説明する。
図25は、第4実施形態の加工システムSYSdの構造を模式的に示す斜視図である。
【0206】
図25に示すように、第4実施形態の加工システムSYSdは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1dを備えているという点で異なる。加工システムSYSdのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1dは、加工装置1と比較して、支持装置14に代えて、支持装置14dを備えているという点で異なる。加工装置1dのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。尚、
図25では、図面の見やすさを重視するために、加工システムSYSdが備える構成要件の一部(例えば、収容装置13、駆動系15、排気装置16、気体供給装置17及び制御装置2)の記載を省略している。
【0207】
支持装置14dは、支持装置14と同様に、収容装置13を支持する。つまり、支持装置14dは、支持装置14と同様に、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持する。支持装置14dは、加工対象物SFに支持されることなく自走可能であるという点で、加工対象物SFに支持された状態で自走可能な支持装置14とは異なる。支持装置14dは、加工対象物SFに接触することなく(つまり、干渉することなく)自走可能であるという点で、加工対象物SFに接触した状態で自走可能な支持装置14とは異なる。支持装置14dのその他の特徴は、支持装置14のその他の特徴と同一であってもよい。
【0208】
加工対象物Sに干渉することなく自走するために、支持装置14dは、支持装置14が備える梁部材141及び脚部材142に代えて、ガントリー部材141dと、移動ブロック142dとを備えている。
【0209】
ガントリー部材141dは、直線形状を有する複数の脚部材1411dの上部に、直線形状を有する梁部材1412dが配置された門型の部材である。
図25に示す例では、複数の脚部材1411dは、Z軸方向に延びる直線形状の部材であり、梁部材1412dは、X軸方向に延びる直線形状の部材である。ガントリー部材141dは、加工対象物Sに接触することなく、加工対象物SFを少なくとも部分的に取り囲むことが可能な程度に大きなサイズを有している。具体的には、ガントリー部材141dは、複数の脚部材1411dが加工対象物Sをその間に挟み込むことが可能な程度に大きなサイズを有してもよい。ガントリー部材141dは、梁部材1412dが加工対象物Sの上方に位置することが可能な程度に大きなサイズを有してもよい。例えば、
図25に示す例では、ガントリー部材141dは、加工対象物Sの一具体例である航空機の機体を跨ぐことが可能な程度に大きなサイズを有している。
【0210】
ガントリー部材141dは、加工対象物Sが配置された支持面(或いは、その他の面)に形成された不図示のレールに沿って自走可能である。
図25に示す例では、ガントリー部材141dは、例えば、Y軸方向に延伸する不図示のレールに沿って自走可能である。つまり、
図25に示す例では、ガントリー部材141dは、Y軸方向に沿って自走可能である。
【0211】
移動ブロック142dは、ガントリー部材141dの梁部材1412dに取り付けられている。移動ブロック142dは、梁部材1412dに沿って移動可能となるように梁部材1412dに取り付けられている。例えば、移動ブロック142dは、梁部材1412dに形成された不図示のレールに沿って移動可能となるように、当該レールに取り付けられていてもよい。
図25に示す例では、梁部材1412dがX軸方向に延びる部材であるがゆえに、移動ブロック142dは、X軸方向に沿って移動可能である。移動ブロック142dは更に、ガントリー部材141dが自走する方向及び梁部材1412dが延びる方向に交差する方向に沿って移動可能である。
図25に示す例では、移動ブロック142dは、ガントリー部材141dが自走するY軸方向及び梁部材1412dが延びるX軸方向に交差するZ軸方向に沿って移動可能である。
【0212】
移動ブロック142dには、不図示の収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11が取り付けられている。つまり、移動ブロック142dは、不図示の収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持する。このため、ガントリー部材141d及び移動ブロック142dの移動により、光照射装置11もまた移動する。具体的には、ガントリー部材141dのY軸方向に沿った移動により、光照射装置11は、Y軸方向に沿って移動する。移動ブロック142dのX軸方向及びZ軸方向のそれぞれに沿った移動により、光照射装置11は、X軸方向及びZ軸方向に沿って移動する。
【0213】
尚、ガントリー部材141dは、加工対象物Sへの加工時における光照射装置11の位置ずれを低減するために、ガントリー部材141dを支持面に対して固定する固定部材を備えていてもよい。
【0214】
このような第4実施形態の加工システムSYSdは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0215】
尚、ガントリー部材141dは、異なる複数の方向のそれぞれに沿って自走可能であってもよい。移動ブロック142dは、梁部材1412dに加えて又は代えて、少なくとも一つの脚部材1411dに取り付けられていてもよい。移動ブロック142dは、少なくとも一つの脚部材1411dに沿って移動可能となるように、少なくとも一つの脚部材1411dに取り付けられていてもよい。移動ブロック142dは、梁部材1412dに沿って移動することに加えて又は代えて、少なくとも一つの脚部材1411dに沿って移動してもよい。移動ブロック142dは、単一の方向に沿って移動可能であってもよい。移動ブロック142dは、移動可能でなくてもよい。
【0216】
第4実施形態の加工システムSYSdは、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第3実施形態の加工システムSYSdの少なくとも一つに特有の構成要件を更に備えていてもよい。第2実施形態の加工システムSYSbに特有の構成要件は、位置計測装置18bに関する構成要件を含む。第3実施形態の加工システムSYScに特有の構成要件は、位置計測装置18及び18bに関する構成要件を含む。
【0217】
(5)第5実施形態の加工システムSYSe
続いて、
図26から
図29を参照しながら、第5実施形態の加工システムSYS(以降、第5実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSe”と称する)について説明する。
図26は、第5実施形態の加工システムSYSeの構造を模式的に示す斜視図である。
図27は、第5実施形態の加工システムSYSeの構造を模式的に示す正面図である。
図28は、第5実施形態の加工システムSYSeの構造を模式的に示す側面図である。
図29は、第5実施形態の加工システムSYSeの構造の一部を拡大して示す正面図である。
【0218】
図26から
図29に示すように、第5実施形態の加工システムSYSeは、第4実施形態の加工システムSYSdと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1eを備えているという点で異なる。加工システムSYSeのその他の特徴は、加工システムSYSdのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1eは、加工装置1dと比較して、支持装置14dに代えて、支持装置14eを備えているという点で異なる。加工装置1eのその他の特徴は、加工装置1dのその他の特徴と同一であってもよい。尚、
図26から
図29では、図面の見やすさを重視するために、加工システムSYSeが備える構成要件の一部(例えば、収容装置13、駆動系15、排気装置16、気体供給装置17及び制御装置2)の記載を省略している。
【0219】
支持装置14eは、支持装置14dと同様に、収容装置13を支持する。つまり、支持装置14eは、支持装置14dと同様に、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持する。支持装置14eは、支持装置14dと同様に、加工対象物SFに支持されることなく自走可能である。支持装置14eは、支持装置14dと比較して、ガントリー部材141d及び移動ブロック142dに代えてアーチ部材141e及び移動ブロック142eを備えているという点で異なる。支持装置14eのその他の特徴は、支持装置14dのその他の特徴と同一であってもよい。
【0220】
アーチ部材141eは、直線形状を有する複数の脚部材1411eの上部に、曲線形状を有する(例えば、アーチ形状を有する)梁部材1412eが配置されたアーチ型の部材である。
図26から
図29に示す例では、複数の脚部材1411eは、Z軸方向に延びる直線形状の部材であり、梁部材14eは、X軸方向に沿って延び且つX軸方向の位置に応じてZ軸方向の位置(つまり、高さ)が変わる曲線形状の部材である。アーチ部材141eは、加工対象物Sに接触することなく、加工対象物SFを少なくとも部分的に取り囲むことが可能な程度に大きなサイズを有している。具体的には、アーチ部材141eは、複数の脚部材1411eが加工対象物Sをその間に挟み込むことが可能な程度に大きなサイズを有してもよい。アーチ部材141eは、梁部材1412eが加工対象物Sの上方に位置することが可能な程度に大きなサイズを有してもよい。例えば、
図26から
図29に示す例では、アーチ部材141eは、加工対象物Sの一具体例である航空機の機体を跨ぐことが可能な程度に大きなサイズを有している。
【0221】
アーチ部材141eは、第4実施形態のガントリー部材141dと同様に、加工対象物Sが配置された支持面(或いは、その他の面)に形成された不図示のレールに沿って自走可能である。
図26に示す例では、アーチ部材141eは、例えば、Y軸方向に延伸する不図示のレールに沿って自走可能である。つまり、
図26に示す例では、アーチ部材141eは、Y軸方向に沿って自走可能である。但し、アーチ部材141eは、異なる複数の方向のそれぞれに沿って自走可能であってもよい。
【0222】
移動ブロック142eは、アーチ部材141eに取り付けられている。例えば、移動ブロック142eは、アーチ部材141eの梁部材1412eに取り付けられていてもよい。例えば、移動ブロック142eは、アーチ部材141eの少なくとも一つの脚部材1411eに取り付けられていてもよい。移動ブロック142eは、アーチ部材141eに沿って移動可能となるようにアーチ部材141eに取り付けられている。例えば、移動ブロック142eは、アーチ部材141eに形成されたレール143e(
図29参照)に沿って移動可能となるように、当該レール143eに取り付けられていてもよい。レール143eは、アーチ部材141eの梁部材1412eに形成される。レール143eは、アーチ部材141eの少なくとも一つの脚部材1411eに形成されていてもよい。
図26から
図29に示す例では、梁部材1412dがX軸方向に沿って延び且つX軸方向の位置に応じてZ軸方向の位置(つまり、高さ)が変わる曲線形状の部材であるがゆえに、移動ブロック142eは、X軸方向及びZ軸方向に沿って移動可能である。
【0223】
移動ブロック142eには、不図示の収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11が取り付けられている。つまり、移動ブロック142eは、不図示の収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持する。このため、アーチ部材141e及び移動ブロック14eの移動により、光照射装置11もまた移動する。具体的には、アーチ部材141eのY軸方向に沿った移動により、光照射装置11は、Y軸方向に沿って移動する。移動ブロック142eのX軸方向及びZ軸方向のそれぞれに沿った移動により、光照射装置11は、X軸方向及びZ軸方向に沿って移動する。尚、
図26から
図29に示す例では、駆動系12が第1駆動系121を備えていないが、駆動系12が第1駆動系121を備えていてもよい。
【0224】
このような第5実施形態の加工システムSYSeは、上述した第4実施形態の加工システムSYSdが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0225】
第5実施形態の加工システムSYSeは、第4実施形態の加工システムSYSdと同様に、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第3実施形態の加工システムSYScの少なくとも一つに特有の構成要件を更に備えていてもよい。
【0226】
(6)第6実施形態の加工システムSYSf
続いて、第6実施形態の加工システムSYS(以降、第6実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSf”と称する)について説明する。第6実施形態の加工システムSYSfは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1fを備えているという点で異なる。加工システムSYSfのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1fは、加工装置1と比較して、駆動系12に代えて、駆動系12fを備えているという点で異なる。加工装置1fのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。このため、以下では、
図30及び
図31を参照しながら、第6実施形態の駆動系12fについて説明する。
図30及び
図31のそれぞれは、第6実施形態の駆動系12fの構造を示す断面図である。
【0227】
図30及び
図31に示すように、駆動系12fは、駆動系12と比較して、複数の第2駆動系122を備えているという点で異なる。
図30は、駆動系12fが二つの第2駆動系122を備えている例を示しているが、駆動系12fは、三つ以上の第2駆動系122を備えていてもよい。駆動系12fのその他の特徴は、駆動系12のその他の特徴と同一であってもよい。尚、
図30は、第2駆動系122が、取付部材1213を介して第1駆動系121の先端アーム部材12124に取り付けられている例を示している。しかしながら、上述したように、第2駆動系122は、先端アーム部材12124に直接取り付けられていてもよい。
【0228】
複数の第2駆動系122は、複数の第2駆動系122のうちの一の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向が、複数の第2駆動系122のうちの他の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向と異なるように配置されてもよい。例えば、
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#1のエアスプリング1223#1は、X軸方向に沿って弾性力を付与するように配置され、第2駆動系122#2のエアスプリング1223#2は、Z軸方向に沿って弾性力を付与するように配置されている。この場合、複数の第2駆動系122のうちの少なくとも一つのエアスプリング1223は、重力方向成分を含む方向に沿って弾性力を付与するように配置されてもよい。
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#2のエアスプリング1223#2が、重力方向成分を含む方向であるZ軸方向に沿って弾性力を付与するように配置されている。
【0229】
但し、
図32及び
図33に示すように、駆動系12による光照射装置11の移動態様によっては、X軸、Y軸及びZ軸から構成される座標系内において光照射装置11の姿勢が変わる(つまり、X軸周りの回転量、Y軸周りの回転量及びZ軸周りの回転量の少なくとも一つ)が変わる可能性がある。尚、
図32は、加工対象物Sである航空機の斜め下方から斜め上方に向けて加工光ELを照射するように姿勢が変わった光照射装置11を示す正面図であり、
図33は、
図32に示す光照射装置11と第1駆動系121とを接続する複数の第2駆動系122を示す断面図である。その結果、
図32及び
図33に示すように、X軸、Y軸及びZ軸から構成される座標系内において、エアスプリング1223が付与する弾性力の方向が変わる可能性がある。第6実施形態では、複数の第2駆動系122は、光照射装置11の姿勢が変わる場合においても、一の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向が、他の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向と異なるように配置されてもよい。例えば、複数の第2駆動系122は、一の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向と他の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向とが異なるように配置されてもよい。更に、各第2駆動系122のエアスプリング1223は、各第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向に沿って弾性力を付与してもよい。この場合、光照射装置11の姿勢が変わる場合においても、一の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向が、他の第2駆動系122のエアスプリング1223が付与する弾性力の方向と異なるものとなる。例えば、
図32及び
図33に示す例では、第2駆動系122#1のエアスプリング1223#1は、第2駆動系122#1が光照射装置11(特に、筐体114)と第1駆動系121(特に、取付部材1213)とを接続する方向(例えば、
図33の左下から右上に向かう方向A1)に沿って弾性力を付与し、第2駆動系122#2のエアスプリング1223#2は、第2駆動系122#2が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向(例えば、
図33の左上から右下に向かう方向A2)に沿って弾性力を付与している。
【0230】
複数の第2駆動系122は、複数の第2駆動系122のうちの一の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向が、複数の第2駆動系122のうちの他の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向と異なるように配置されてもよい。例えば、
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#1のダンパ部材1224#1は、X軸方向に沿って弾性力を付与するように配置され、第2駆動系122#2のダンパ部材1224#2は、Z軸方向に沿って弾性力を付与するように配置されている。この場合、複数の第2駆動系122のうちの少なくとも一つのダンパ部材1224は、重力方向成分を含む方向に沿って弾性力を付与するように配置されてもよい。
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#2のダンパ部材1224#2が、重力方向成分を含む方向であるZ軸方向に沿って弾性力を付与するように配置されている。
【0231】
但し、
図32及び
図33に示すように、エアスプリング1223が付与する弾性力の方向が変わる場合と同様の理由から、X軸、Y軸及びZ軸から構成される座標系内において、ダンパ部材1224が付与する弾性力の方向が変わる可能性がある。第6実施形態では、複数の第2駆動系122は、光照射装置11の姿勢が変わる場合においても、一の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向が、他の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向と異なるように配置されてもよい。例えば、一の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向と他の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向とが異なっていてもよい。更に、各第2駆動系122のダンパ部材1224は、各第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向に沿って弾性力を付与してもよい。この場合、光照射装置11の姿勢が変わる場合においても、一の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向が、他の第2駆動系122のダンパ部材1224が付与する弾性力の方向と異なるものとなる。例えば、
図32及び
図33に示す例では、第2駆動系122#1のダンパ部材1224#1は、第2駆動系122#1が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向(例えば、
図33の左下から右上に向かう方向A1)に沿って弾性力を付与し、第2駆動系122#2のダンパ部材1224#2は、第2駆動系122#2が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向(例えば、
図33の左上から右下に向かう方向A2)に沿って弾性力を付与している。
【0232】
複数の第2駆動系122は、複数の第2駆動系122のうちの一の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向が、複数の第2駆動系122のうちの他の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向と異なるように配置されてもよい。例えば、
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#1の駆動部材1225#1は、X軸に交差する方向(例えば、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つ)に沿って駆動力を付与するように配置され、第2駆動系122#2の駆動部材1225#2は、Z軸に交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一つ)に沿って駆動力を付与するように配置されている。この場合、複数の第2駆動系122のうちの少なくとも一つの駆動部材1225は、重力方向に交差する方向成分を含む方向に沿って駆動力を付与するように配置されてもよい。
図30及び
図31に示す例では、第2駆動系122#2の駆動部材1225#2が、重力方向に交差する方向成分を含む方向であるX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って弾性力を付与するように配置されている。
【0233】
但し、
図32及び
図33に示すように、エアスプリング1223が付与する弾性力の方向が変わる場合と同様の理由から、X軸、Y軸及びZ軸から構成される座標系内において、駆動部材1225が付与する駆動力の方向が変わる可能性がある。第6実施形態では、複数の第2駆動系122は、光照射装置11の姿勢が変わる場合であっても、一の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向が、他の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向とは異なるように配置されてもよい。例えば、一の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向と他の第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向とが異なっていてもよい。更に、各第2駆動系122の駆動部材1225は、各第2駆動系122が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向に交差する方向に沿って駆動力を付与してもよい。この場合、光照射装置11の姿勢が変わる場合であっても、一の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向が、他の第2駆動系122の駆動部材1225が付与する駆動力の方向とは異なるものとなる。例えば、
図32及び
図33に示す例では、第2駆動系122#1の駆動部材1225#1は、第2駆動系122#1が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向に交差する方向(例えば、
図33の左上から右下に向かう方向A2)に沿って駆動力を付与し、第2駆動系122#2の駆動部材1225#2は、第2駆動系122#2が光照射装置11と第1駆動系121とを接続する方向に交差する方向(例えば、
図33の左下から右上に向かう方向A1)に沿って駆動力を付与している。
【0234】
また、
図30及び
図31に示す例において、エアスプリング1223の数と、ダンパ部材1224の数と、駆動部材1225の数とは、互いに等しくなくてもよい。例えば、エアスプリング1223の数は、駆動部材1225の数よりも少なくてもよい。
【0235】
このような第6実施形態の加工システムSYSfは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、加工システムSYSfは、複数の第2駆動系122を備えているがゆえに、単一の第2駆動系122を備えている加工システムSYSaと比較して、光照射装置11の姿勢の自由度が向上する。例えば、加工システムSYSfでは、光照射装置11は、加工対象物Sの上方から下方に向けて加工光ELを照射する第1姿勢のみならず、加工対象物Sの斜め上方から斜め下方に向けて加工光ELを照射する第2姿勢、加工対象物Sの側方から側方に向けて加工光ELを照射する第3姿勢、加工対象物Sの斜め下方から斜め上方に向けて加工光ELを照射する第4姿勢、及び、加工対象物Sの下方から上方に向けて加工光ELを照射する第5姿勢を有するように移動可能となる。従って、加工システムSYSfは、複雑な形状を有する加工対象物Sの塗装膜SFに適切に構造を形成することができる。
【0236】
尚、第6実施形態では、第2駆動系122による第1駆動系121と光照射装置11との接続箇所は、光照射装置11の第1の表面と光照射装置11の第1の表面とは反対側緒向いた第2の表面との間に位置していてもよい。例えば、
図30に示すように、光照射装置11が筐体114を備える場合には、第2駆動系122による第1駆動系121と光照射装置11との接続箇所CPは、筐体114の第1の表面(例えば、筐体114の加工対象物Sとは反対側を向いた面1141)と筐体114の第2の表面(例えば、筐体114の加工対象物S側を向いた面1142)との間に位置していてもよい。このように接続箇所CPが光照射装置11の第1の表面と第2の表面との間(例えば、筐体114の面1141と面1142との間)に配置される場合には、接続箇所CPが光照射装置11の第1の表面と第2の表面との間(例えば、筐体114の面1141と面1142との間)に配置されない場合と比較して、光照射装置11の位置決め精度が向上する。この場合、第2駆動系122による第1駆動系121と光照射装置11との接続箇所CPは、光照射装置11の重心位置GP(
図30参照)に位置していてもよい。接続箇所CPが重心位置GPに位置する場合には、接続箇所CPが重心位置GPに位置しない場合と比較して、光照射装置11の位置決め精度が向上する。尚、第6実施形態に限らず、第1実施形態から第5実施形態の少なくとも一つにおいても、接続箇所CPが光照射装置11の第1の表面と第2の表面との間(例えば、筐体114の面1141と面1142との間)に配置されていてもよい。第1実施形態から第5実施形態の少なくとも一つにおいても、接続箇所CPが重心位置GPに配置されていてもよい。
【0237】
第6実施形態の加工システムSYSfは、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第5実施形態の加工システムSYSeの少なくとも一つに特有の構成要件を更に備えていてもよい。第4実施形態の加工システムSYSdに特有の構成要件は、支持装置14dに関する構成要件を含む。第5実施形態の加工システムSYSeに特有の構成要件は、支持装置14eに関する構成要件を含む。
【0238】
(7)第7実施形態の加工システムSYSg
続いて、
図34を参照しながら、第7実施形態の加工システムSYS(以降、第7実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSg”と称する)について説明する。
図34は、第7実施形態の加工システムSYSgの構造を模式的に示す断面図である。
【0239】
図34に示すように、第7実施形態の加工システムSYSgは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、加工装置1に代えて、加工装置1gを備えているという点で異なる。加工システムSYSgのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。加工装置1gは、加工装置1と比較して、支持装置14に代えて、支持装置14gを備えているという点で異なる。加工装置1gのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。尚、
図34では、図面の見やすさを重視するために、加工システムSYSgが備える構成要件の一部(例えば、収容装置13、駆動系15、排気装置16、気体供給装置17及び制御装置2)の記載を省略している。
【0240】
支持装置14gは、支持装置14と同様に、収容装置13を支持する。つまり、支持装置14gは、支持装置14と同様に、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持する。支持装置14gは、加工対象物SFから離れた位置を飛行可能であるという点で、飛行可能でなくてもよい支持装置14とは異なる。飛行可能な支持装置14gの一例として、航空機等の飛行体があげられる。飛行体は、遠隔操縦可能であってもよいし、飛行体に搭乗している操縦者が操縦可能であってもよいし、自律飛行可能であってもよい。飛行体の一例として、航空機、ドローン(
図34参照)、ヘリコプター、気球及び飛行船の少なくとも一つがあげられる。
【0241】
このような第7実施形態の加工システムSYSgは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0242】
尚、第7実施形態の加工システムSYSgは、上述した第2実施形態の加工システムSYSbから第6実施形態の加工システムSYSfの少なくとも一つに特有の構成要件を更に備えていてもよい。第6実施形態の加工システムSYSfに特有の構成要件は、駆動系12fに関する構成要件を含む。
【0243】
(8)その他の変形例
上述した説明では、駆動系12が第1駆動系121と第2駆動系122とを備えている。しかしながら、駆動系12は、第1駆動系121を備えていなくてもよい。この場合、第2駆動系122は、第1駆動系121を介することなく収容装置13に取り付けられていてもよい。第2駆動系122は、第1駆動系121を介することなく支持装置14(或いは、支持装置14d、14e又は14g)に取り付けられていてもよい。
【0244】
上述した説明では、加工システムSYSは、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させるために、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向している。しかしながら、加工装置1は、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向することに加えて又は代えて、塗装膜SFに対して光照射装置11を相対的に移動させることで、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させてもよい。つまり、制御装置2は、駆動系12を制御して、塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させてもよい。
【0245】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、上述したように加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることである。このため、光照射装置11が移動しなくても加工光ELによる塗装膜SFの走査が実現できる場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工システムSYSは、駆動系12を備えていなくてもよい。
【0246】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、収容装置13の収容空間SPに複数の加工ショット領域SAが収容される場合において、収容装置13及び支持装置14を移動させることなく、複数の加工ショット領域SAを順に加工光ELで走査するためである。このため、収容空間SPに単一の加工ショット領域SAが収容される場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工装置1は、駆動系12を備えていなくてもよい。
【0247】
上述した説明では、加工装置1は、収容装置13と、支持装置14と、駆動系15と、排気装置16と、気体供給装置17とを備えている。しかしながら、加工装置1は、加工対象物Sを加工可能である限りは、収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一つを備えていなくてもよい。加工装置1は、加工対象物Sを加工可能である限りは、収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一部を備えていなくてもよい。加工装置1が収容装置13を備えていない場合には、駆動系12は、支持装置14に取り付けられていてもよい。更に、上述した収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17のそれぞれの構造は一例に過ぎず、加工装置1は、上述した構造とは異なる構造を有する収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一つを備えてもよい。
【0248】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上に、任意の形状を有する塗装膜SFによる任意の構造を形成してもよい。この場合であっても、形成するべき構造に応じた走査軌跡に沿って塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように制御装置2が光照射装置11等を制御すれば、任意の形状を有する任意の構造が形成可能である。任意の構造の一例としては、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には凹凸構造)があげられる。このような微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、及び、液滴捕集機能を有するハニカム構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0249】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることで、塗装膜SFを除去している。しかしながら、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることに加えて又は代えて、加工光ELの照射によって塗装膜SFの性質を変えることで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを溶融させ、溶融させた塗装膜SFを除去することで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを脆くし、脆くした塗装膜SFを剥離することで塗装膜SFを除去してもよい。上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFをアブレーション加工している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFの一部を熱加工によって除去してもよい。
【0250】
上述した説明では、加工システムSYSは、塗装膜SFを除去することで凹部C(或いは、凹状構造CP1、又は、当該凹状構造CP1によるリブレット構造等の任意の構造)を形成している。つまり、加工システムSYSは、塗装膜SFを部分的に薄くするように塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、塗装膜SFを部分的に薄くすることに加えて又は代えて、塗装膜SFを部分的に厚くするように塗装膜SFを加工してもよい。つまり、加工システムSYSは、塗装膜SFを除去することで凹部Cを形成することに加えて又は代えて、塗装膜SFを付加することで凸部(或いは、凸状構造CP2又は、当該凸状構造CP2による任意の構造)を形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、塗装膜SFの第1部分に加工光ELを照射することで第1部分の塗装膜SFを除去し、その後、除去した塗装膜SFを塗装膜SFの第2部分に定着させることで、当該第2部分における塗装膜SFを相対的に厚くしてもよい(つまり、第2部分に凸部を形成してもよい)。
【0251】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された、塗装膜SF以外の任意の被膜を加工してもよい。或いは、加工システムSYSは、複数の層が積層された構造体を加工してもよい。具体的には、加工システムSYSは、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層(典型的には、最も表面側の層を含む少なくとも一つの層)を加工してもよい。加工システムSYSは、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層を加工して、当該層による構造を形成してもよい。この場合、加工される少なくとも一つの層が上述した塗装膜SFに相当し、当該少なくとも一つの層以外の他の層が加工対象物Sに相当する。或いは、加工システムSYSは、加工対象物Sそのものを加工してもよい。つまり、加工システムSYSは、表面に塗装膜SF又は任意の被膜が形成されていない加工対象物Sを加工してもよい。
【0252】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造を加工対象物Sに形成している。しかしながら、加工システムSYSは、表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造とは異なるその他の構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、流体と加工対象物Sの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上の流体の流れに対して渦を発生する構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に疎水性を与えるための構造を加工対象物Sに形成してもよい。
【0253】
上述した説明では、加工光ELで物体を加工する加工システムSYSについて説明されている。つまり、上述した説明では、第2駆動系122が照射装置11と第1駆動系121とを接続する例について説明されている。しかしながら、加工システムSYSにおける光照射装置11に加えて又は代えて、物体に対して作用するエンドエフェクタを用いてもよい。例えば、第2駆動系122は、エンドエフェクタと第1駆動系121とを接続してもよい。ここで、エンドエフェクタは、作業対象(例えば、物体)に直接働きかける機能を持つ部分であってもよい。また、エンドエフェクタは、作業対象(例えば、物体)のプロパティを得る部分であってもよい。ここで、物体(例えば、作業対象)のプロパティは、物体の形状、物体の位置、物体の特徴点の位置、物体の姿勢、物体の表面性状(例えば、反射率、分光反射率、表面粗さ及び色等の少なくとも一つ)、及び、物体の硬さ等の少なくとも一つを含んでいてもよい。尚、上述の説明における光照射装置11や位置計測装置18は、エンドエフェクタの一種であるとみなすことができる。
【0254】
このようなエンドエフェクタを備える装置の一例として、エンドエフェクタと、物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材としての第1駆動系121と、第1駆動系121とエンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、第1駆動系121とエンドエフェクタとを接続する接続装置としての第2駆動系122とを備える第1の装置があげられる。第1の装置は、ロボットシステムと称されてもよい。また、エンドエフェクタを備える装置の一例として、エンドエフェクタと第2駆動系122とを備える第2の装置が構成されていてもよい。第2の装置は、エンドエフェクタ装置と称されてもよい。尚、第1駆動系121とエンドエフェクタとを接続する接続装置としての第2駆動系122で装置が構成されていてもよい。
【0255】
エンドエフェクタの一例であるエンドエフェクタEfaが
図35に示されている。エンドエフェクタEfaは、
図35に示すように、接続装置(例えば、第2駆動系122)に取り付けられる被取付部Ef1と、被取付部Ef1の軸(典型的には、被取付部Ef1と接続装置とを結ぶ軸)に対して傾斜した複数の取付面(
図35に示す例では3つの取付面)に取り付けられた複数の指モジュールを備えている。各指モジュールは、被取付部Ef1の第1関節軸回りで回転可能な第1リンクモジュールEf21と、第1リンクモジュールEf21に設けられ且つ第1リンクモジュールEf21を第1関節軸回りで回転駆動する第1駆動モジュールEf31と、第1リンクモジュールEf21に設けられ且つ第1関節軸と直交する第2関節軸回りに回転可能な第2リンクモジュールEf22と、第2リンクモジュールEf22を第2関節軸回りに回転駆動する第2駆動モジュールEf32と、第3関節軸回りに回転可能に第2リンクモジュールEf22に設けられた第3リンクモジュールEf23と、第3リンクモジュールEf23を第3関節軸回りに回転駆動する第3駆動部Ef33とを備えている。ここで、エンドエフェクタEfaはハンドと称されてもよい。また、第3リンクモジュールEf23の一部(典型的には先端部)は、物体を把持する把持部と見なされてもよく、ハンドの指先と称されてもよい。
【0256】
尚、被取付部Ef1に、位置計測装置18を取り付けてもよい。このとき、位置計測装置の計測軸は、被取付部Ef1の軸に沿った方向、被取付部Ef1の軸と平行な方向、又は、被取付部Ef1の軸に対して傾斜する方向であってもよい。位置計測装置18は、物体の少なくとも一部とエンドエフェクタEfaの一部(典型的には、把持部又は指先)との少なくとも一方を計測してもよい。また、被取付部Ef1に、位置計測装置18bの一部(典型的には指標部材181b)を取り付けてもよい。
【0257】
尚、エンドエフェクタは、
図35に示した物体を把持可能なハンドとしてのエンドエフェクタEfaや位置計測装置には限定されない。例えば、エンドエフェクタは、
図36(a)に示すような物体を吸着保持する吸着保持装置Efb、
図36(b)に示すスプレー式の塗装装置Efc、
図36(c)に示すローラ式の塗装装置Efd、
図36(d)に示すドリル等の刃物を備えた機械加工ヘッド装置Efe、及び、
図36(e)に示す溶接ガン装置Eff等の少なくとも一つを含んでいてもよい。例えば、エンドエフェクタは、溶融した金属、溶融した樹脂又はブラスト加工用の粒子等を射出するインジェクタ、マニピュレータ及びエアブローの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0258】
なお、エンドエフェクタが電力を必要とする際には、接続装置は、エンドエフェクタに対して非接触給電を行ってもよい。また、エンドエフェクタからの出力は、無線、光伝送等の非接触方式で外部(典型的には、制御装置2)に出力されてもよい。
【0259】
(9)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
能動型防振装置と、
前記能動型防振装置に取り付けられ且つ物体を加工するための加工光を前記物体に照射する照射装置と、
前記能動型防振装置を制御して、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する制御装置と
を備える加工システム。
[付記2]
前記制御装置は、前記物体と前記加工光の照射領域との位置合わせを行うように、前記能動型防振装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記1に記載の加工システム。
[付記3]
前記制御装置は、前記物体の所望位置に前記加工光が照射されるように、前記能動型防振装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記1又は2に記載の加工システム。
[付記4]
前記制御装置は、前記能動型防振装置を制御しない場合と比較して前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記能動型防振装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記1から3のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記5]
前記照射装置は、前記能動型防振装置を介して別の部材に取り付けられ、
前記制御装置は、前記物体に対する前記別の部材の振動量よりも、前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記能動型防振装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記1から4のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記6]
前記能動型防振装置を移動させる移動装置を更に備える
付記1から5のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記7]
前記移動装置は、前記能動型防振装置と共に前記照射装置を移動させる
付記6に記載の加工システム。
[付記8]
前記能動型防振装置は、前記移動装置に取り付けられている
付記6又は7に記載の加工システム。
[付記9]
前記照射装置は、前記能動型防振装置を介して前記移動装置に取り付けられる
付記6から8のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記10]
前記移動装置は、複数のアーム部材と前記複数のアーム部材を揺動自在に接続するジョイント部材とを含む
付記6から9のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記11]
前記移動装置は、前記物体に干渉することなく自走可能な自走装置を含む
付記6から10のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記12]
前記移動装置は、前記物体に支持された状態で自走可能な自走装置を含む
付記6から11のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記13]
前記移動装置は、物体から離れた位置を飛行可能な飛行装置を含む
付記6から12のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記14]
前記制御装置は、前記移動装置を制御して、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記6から13のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記15]
前記制御装置は、前記物体と前記加工光の照射領域との位置合わせを行うように、前記移動装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記14に記載の加工システム。
[付記16]
前記制御装置は、前記物体の所望位置に前記加工光が照射されるように、前記移動装置を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記14又は15に記載の加工システム。
[付記17]
前記能動型防振装置による前記物体と前記照射装置との相対位置の変更量は、前記移動装置による前記物体と前記照射装置との相対位置の変更量よりも少ない
付記14から16のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記18]
前記能動型防振装置による前記物体と前記照射装置との相対位置の変更精度は、前記移動装置による前記物体と前記照射装置との相対位置の変更精度よりも高い
付記14から17のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記19]
前記制御装置は、前記能動型防振装置及び前記移動装置を制御しない場合と比較して前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記能動型防振装置及び前記移動装置の少なくとも一方を制御して前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記14から18のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記20]
前記制御装置は、前記物体に対する前記照射装置の振動の周波数に基づいて、前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記能動型防振装置及び前記移動装置の少なくとも一方を制御する
付記19に記載の加工システム。
[付記21]
前記制御装置は、前記周波数が第1の周波数範囲に含まれる場合には、前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記移動装置を制御し、
前記制御装置は、前記周波数が前記第1の周波数範囲よりも高い第2の周波数範囲に含まれる場合には、前記物体に対する前記照射装置の振動量が小さくなるように、前記能動型防振装置を制御する
付記20に記載の加工システム。
[付記22]
前記照射装置は、前記能動型防振装置を介して別の部材に取り付けられ、
前記能動型防振装置は、前記別の部材と前記照射装置との相対位置を変更する位置変更装置と、前記別の部材と前記照射装置との間で伝達される振動を減衰する振動減衰装置とを備える
付記1から21のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記23]
前記制御装置は、前記位置変更装置を用いて前記別の部材と前記照射装置との相対位置を変更することで、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する
付記22に記載の加工システム。
[付記24]
前記位置変更装置は、電気的な力により前記別の部材と前記照射装置との相対位置を変更し、
前記振動減衰装置は、空気の圧力により前記別の部材と前記照射装置との間で伝達される振動を減衰する
付記22又は23に記載の加工システム。
[付記25]
前記物体と前記照射装置との相対位置を計測する位置計測装置を更に備える
付記1から24のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記26]
前記制御装置は、前記位置計測装置の計測結果に基づいて、前記能動型防振装置を制御する
付記25に記載の加工システム。
[付記27]
複数の前記位置計測装置を備え、
前記制御装置は、前記複数の位置計測装置のうちの第1の位置計測装置の計測基準位置と前記複数の位置計測装置のうちの第2の位置計測装置の計測基準位置との相対位置に関する情報と、前記第1及び第2の位置計測装置の計測結果とに基づいて、前記能動型防振装置を制御する
付記25又は26に記載の加工システム。
[付記28]
前記位置計測装置は、前記照射装置に対する相対位置が固定された指標部材と、前記指標部材の位置を計測する指標計測装置とを含む
付記25から27のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記29]
前記指標部材は、マーカを含み、
前記指標計測装置は、前記マーカを撮像可能な撮像装置及び前記マーカからの光を受光可能な受光装置の少なくとも一方を含む
付記28に記載の加工システム。
[付記30]
前記指標部材は、信号を発信可能な発信装置を含み、
前記指標計測装置は、前記信号を受信可能な受信装置を含む
付記28又は29に記載の加工システム。
[付記31]
前記位置計測装置は、前記物体を計測する物体計測装置を含む
付記25から30のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記32]
能動型防振装置に取り付けられた照射装置から、物体を加工するための加工光を前記物体に照射することと、
前記能動型防振装置を用いて、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更することと
を含む加工方法。
[付記33]
能動型防振装置と、
前記能動型防振装置に取り付けられ且つ物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記能動型防振装置を制御して、前記物体と前記エンドエフェクタとの相対位置を変更する制御装置と
を備えるロボットシステム。
[付記A1]
加工光で物体を加工する加工システムにおいて、
前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、
前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と
を備え、
前記接続装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える
加工システム。
[付記A2]
前記駆動部材は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に第1方向に沿った駆動力を与え、
前記弾性部材は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に前記第1方向と交差する第2方向に沿って弾性力を与える
付記A1に記載の加工システム。
[付記A3]
前記弾性部材は、前記照射装置による重量を支持する
付記A2に記載の加工システム。
[付記A4]
前記弾性部材は、前記第2方向において前記重量を支持する
付記A3に記載の加工システム。
[付記A5]
前記駆動部材は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に第1方向に沿った駆動力を与え、
前記弾性部材は、前記第1方向に沿った成分を有する第2方向に沿って、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に弾性力を与える
付記A1からA4のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A6]
前記駆動部材は、前記弾性部材の共振周波数を変更するように前記駆動力を与える
付記A5に記載の加工システム。
[付記A7]
前記弾性部材は、前記可動部材に対して前記照射装置の位置及び姿勢の少なくとも一方が変更可能となるように、前記可動部材と前記照射装置とを結合する
付記A1からA4のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A8]
前記接続装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に第1方向に沿って弾性力を与える第1弾性部材と、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に前記第1方向と異なる第2方向に沿って弾性力を与える第2弾性部材とを備える
付記A1からA7のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A9]
前記接続部材は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に重力方向成分を含む第1方向に沿って弾性力を与える第1弾性部材と、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に前記第1方向と異なる第2方向に沿って弾性力を与える第2弾性部材とを備える
付記A1からA7のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A10]
前記接続装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に第3方向に沿った駆動力を与える第1駆動部材と、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方に前記第3方向と異なる第4方向に沿った駆動力を与える第2駆動部材とを備える
付記A8又はA9に記載の加工システム。
[付記A11]
前記接続装置は、前記可動部材のうち前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な第1部分と、前記照射装置の一部である第2部分とを接続する
付記A1からA10のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A12]
前記第1部分の振動量よりも前記照射装置の振動量の方が小さくなるように、前記駆動部材を制御する制御装置をさらに備える
付記A11に記載の加工システム。
[付記A13]
前記可動部材の前記第1部分の位置を前記物体の前記一部に対して移動させる移動装置をさらに備える
付記A11またはA12に記載の加工システム。
[付記A14]
前記駆動部材による前記第2部分の位置決め精度は、前記移動装置による前記第1部分の位置決め精度よりも高い
付記A13に記載の加工システム。
[付記A15]
前記移動装置による前記第1部分の移動範囲は、前記駆動部材による前記第2部分の移動範囲よりも大きい
付記A13またはA14に記載の加工システム。
[付記A16]
前記物体と前記照射装置との相対的な位置関係を計測する位置計測装置を備え、
前記位置計測装置からの出力を用いて、前記駆動部材が制御される
を備える付記A1からA15のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A17]
前記物体と前記照射装置との相対的な位置関係を計測する位置計測装置を備え、
前記位置計測装置からの出力を用いて、前記移動装置が制御される
を備える付記A13からA15のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A18]
前記位置計測装置は、前記照射装置に対する前記物体の位置を計測する
付記A16又はA17に記載の加工システム。
[付記A19]
前記位置計測装置は、基準位置に対する前記照射装置の位置を計測する
付記A16からA18のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A20]
前記照射装置によって前記加工光を照射可能な範囲は、前記照射装置の移動によって変更される
付記A1からA19のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A21]
前記接続装置は、前記可動部材のうち前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な第1部分と、前記照射装置の一部である第2部分とを接続し、
前記弾性部材は、前記第1部分から前記第2部分に向かう振動を低減し、
前記駆動部材は、前記第1部分から前記第2部分に向かう前記振動による前記第1部分と前記第2部分との相対的な変位を低減する
付記A1からA20のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A22]
前記照射装置は、前記物体上での前記加工光の照射位置を前記照射装置に対して変更する照射位置変更装置を備える
付記A1からA21のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A23]
前記駆動部材は、前記照射位置変更装置の動作に起因する前記照射位置の位置ずれを低減する
付記A22に記載の加工システム。
[付記A24]
複数の位置計測装置と、
前記複数の位置計測装置のうちの第1の位置計測装置の計測基準位置と前記複数の位置計測装置のうちの第2の位置計測装置の計測基準位置との相対位置に関する情報と、前記第1及び第2の位置計測装置の計測結果とに基づいて、前記駆動部材を制御する制御装置と
を備える付記A1からA23のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A25]
前記位置計測装置は、前記照射装置に対する相対位置が固定された指標部材と、前記指標部材の位置を計測する指標計測装置とを含む
付記A16からA19及びA24のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A26]
前記指標部材は、マーカを含み、
前記指標計測装置は、前記マーカを撮像可能な撮像装置及び前記マーカからの光を受光可能な受光装置の少なくとも一方を含む
付記A25に記載の加工システム。
[付記A27]
前記指標部材は、信号を発信可能な発信装置を含み、
前記指標計測装置は、前記信号を受信可能な受信装置を含む
付記A25又はA26に記載の加工システム。
[付記A28]
前記位置計測装置は、前記物体を計測する物体計測装置を含む
付記A16からA19及びA24からA27のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A29]
加工光で物体を加工する加工システムにおいて、
前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、
前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と、
前記可動部材から前記照射装置へ向かう振動を低減する振動低減装置と
を備える加工システム。
[付記A30]
前記振動低減装置は、前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える
付記A29に記載の加工システム。
[付記A31]
前記振動低減装置は、前記可動部材の振動量よりも前記照射装置の振動量の方が小さくなるように、前記駆動部材を制御する制御装置を備える
付記A30に記載の加工システム。
[付記A32]
前記物体と前記照射装置との相対的な位置関係を計測する位置計測装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記位置計測装置からの出力を用いて、前記駆動部材を制御する
付記A31に記載の加工システム。
[付記A33]
前記位置計測装置は、前記物体に対する前記照射装置の位置を計測する
付記A32に記載の加工システム。
[付記A34]
前記位置計測装置は、基準位置に対する前記照射装置の位置を計測する
付記A32またはA33に記載の加工システム。
[付記A35]
前記照射装置は、前記物体上での前記加工光の照射位置を前記照射装置に対して変更する照射位置変更装置を備える
付記A29からA34のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A36]
前記振動低減装置は、前記照射位置変更装置の動作に起因する前記照射装置の位置ずれを低減する
付記A35に記載の加工システム。
[付記A37]
前記物体と前記照射位置との相対的な位置関係を計測する位置計測装置をさらに備える
付記A22、A23、A35又はA36に記載の加工システム。
[付記A38]
前記位置計測装置は、前記物体に対する前記照射位置を計測する
付記A37に記載の加工システム。
[付記A39]
前記加工光の照射により特性が変化する感応性部材に対して、前記照射装置から前記加工光を照射して、前記感応性部材における前記特性が変化した部位を前記位置計測装置によって計測する
付記A38に記載の加工システム。
[付記A40]
複数の位置計測装置と、
前記複数の位置計測装置のうちの第1の位置計測装置の計測基準位置と前記複数の位置計測装置のうちの第2の位置計測装置の計測基準位置との相対位置に関する情報と、前記第1及び第2の位置計測装置の計測結果とに基づいて、前記振動低減装置を制御する制御装置と
を備える付記A29からA39のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A41]
前記位置計測装置は、前記照射装置に対する相対位置が固定された指標部材と、前記指標部材の位置を計測する指標計測装置とを含む
付記A32からA34及びA40のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A42]
前記指標部材は、マーカを含み、
前記指標計測装置は、前記マーカを撮像可能な撮像装置及び前記マーカからの光を受光可能な受光装置の少なくとも一方を含む
付記A41に記載の加工システム。
[付記A43]
前記指標部材は、信号を発信可能な発信装置を含み、
前記指標計測装置は、前記信号を受信可能な受信装置を含む
付記A41またはA42に記載の加工システム。
[付記A44]
前記位置計測装置は、前記物体を計測する物体計測装置を含む
付記A32からA34及びA40からA43のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A45]
加工光で物体を加工する加工システムにおいて、
前記物体の一部との相対的な位置関係が変更可能な可動部材と、
前記物体に向けて前記加工光を照射する照射装置と、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記照射装置とを接続する接続装置と、
前記物体又は基準位置に対する前記照射装置の位置を計測する位置計測装置と
を備え、
前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記照射装置の位置を変更する位置変更部材を備える
加工システム。
[付記A46]
前記接続装置は、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材を備える
付記A45に記載の加工システム。
[付記A47]
前記可動部材は、複数のアーム部材と前記複数のアーム部材を揺動自在に接続するジョイント部材とを含む
付記A1からA46のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A48]
前記可動部材は、前記物体に干渉することなく自走可能な自走装置を含む
付記A1からA47のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A49]
前記可動部材は、前記物体に支持された状態で自走可能な自走装置を含む
付記A1からA48のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A50]
前記可動部材は、物体から離れた位置を飛行可能な飛行装置を含む
付記A1からA49のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A51]
前記移動装置は、前記物体に干渉することなく自走可能な自走装置を含む
付記A13からA15及びA17のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A52]
前記移動装置は、前記物体に支持された状態で自走可能な自走装置を含む
付記A13からA15、A17及びA51のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A53]
前記移動装置は、物体から離れた位置を飛行可能な飛行装置を含む
付記A13からA15、A17及びA51からA52のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A54]
前記照射装置は、第1側に向けられた第1表面と、前記第1側とは反対側の第2側に向けられた第2表面とを有する筐体を備え、
前記接続部材による前記可動部材と前記照射装置との接続箇所は、前記第1表面と前記第2表面との間に位置する
付記A1からA53のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記A55]
前記接続箇所は、前記照射装置の重心位置に位置する
付記A54に記載の加工システム。
[付記A56]
加工光で物体を加工する加工方法において、
可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、
照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することと、
前記可動部材および前記照射装置のうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記照射装置とを結合する弾性部材とを備える接続部によって、前記可動部材と前記照射装置とを接続することと
を含む加工方法。
[付記A57]
加工光で物体を加工する加工方法において、
可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、
照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、
前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することと、
前記可動部材から前記照射装置へ向かう振動を低減することと
を含む加工方法。
[付記A58]
加工光で物体を加工する加工方法において、
可動部材の位置と前記物体の一部の位置との位置関係を変更することと、
照射装置を用いて前記物体に向けて前記加工光を照射することと、
前記物体又は基準位置に対する前記照射装置の位置を計測することと、
計測された前記照射装置の前記位置に基づいて、前記可動部材と前記照射装置との相対的な位置関係を変更することと
を含む加工方法。
[付記A59]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、
前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と
を備え、
前記接続装置は、前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備える
ロボットシステム。
[付記A60]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、
前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、
前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置と
を備えるロボットシステム。
[付記A61]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と、
前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、
前記物体又は基準位置に対する前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置と
を備え、
前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備える
ロボットシステム。
[付記A62]
前記可動部材は、複数のアーム部材と前記複数のアーム部材を揺動自在に接続するジョイント部材とを含む
付記A59からA61のいずれか一項に記載のロボットシステム。
[付記A63]
前記可動部材は、前記物体に干渉することなく自走可能な自走装置を含む
付記A59からA62のいずれか一項に記載のロボットシステム。
[付記A64] 前記可動部材は、前記物体に支持された状態で自走可能な自走装置を含む
付記A59からA63のいずれか一項に記載のロボットシステム。
[付記A65] 前記可動部材は、物体から離れた位置を飛行可能な飛行装置を含む
付記A59からA64のいずれか一項に記載のロボットシステム。
[付記A66]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置において、
前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備え、
前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する
接続装置。
[付記A67]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置において、
前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置を備え、
前記可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する
接続装置。
[付記A68]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材とを接続する接続装置において、
前記物体又は基準位置に対する前記接続装置及び/又は前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備える
接続装置。
[付記A69]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と
を備え、
前記接続装置は、前記可動部材および前記エンドエフェクタのうち少なくとも一方を移動させる駆動部材と、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを結合する弾性部材とを備える
エンドエフェクタ装置。
[付記A70]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、
前記可動部材から前記エンドエフェクタへ向かう振動を低減する振動低減装置と
を備えるエンドエフェクタ装置。
[付記A71]
物体に対して作用するエンドエフェクタと、
前記物体の一部との相対的な関係が変更可能な可動部材と前記エンドエフェクタとの相対的な位置関係が変更可能になるように、前記可動部材と前記エンドエフェクタとを接続する接続装置と、
前記物体又は基準位置に対する前記エンドエフェクタの位置を計測する位置計測装置と
を備え、
前記接続装置は、前記位置計測装置による位置計測結果に基づいて、前記可動部材に対する前記エンドエフェクタの位置を変更する位置変更部材を備える
エンドエフェクタ装置。
【0260】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0261】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工システム、加工方法、ロボットシステム、接続装置及びエンドエフェクタ装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0262】
1 加工装置
11 光照射装置
111 光源系
1111 光源
112 光学系
114 筐体
1122 ガルバノミラー
12 駆動系
121 第1駆動系
1212 アーム駆動系
12121 アーム部材
12122 ジョイント部材
12123 アクチュエータ
12124 先端アーム部材
122 第2駆動系
1223 エアスプリング
1224 ダンパ部材
1225 駆動部材
14、14d、14e、14g 支持装置
18、18b 位置計測装置
181b 指標部材
182b 指標計測装置
19 取付部材
2 制御装置
C 凹部
CP1 凹状構造
CP2 凸状構造
EA 目標照射領域
EL 加工光
S 加工対象物
SF 塗装膜
PE 感応性部材
SYS 加工システム
SA 加工ショット領域
Efa~Eff エンドエフェクタ