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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116853
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】床材の固定構造および固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20230816BHJP
   E04F 15/06 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
E04F15/02 101B
E04F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019183
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】藤原 明彦
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA51
2E220AC03
2E220BA01
2E220BA15
2E220BC03
2E220CA03
2E220DA18
2E220DB09
2E220EA11
2E220GB01X
2E220GB01Z
2E220GB02Y
(57)【要約】
【課題】ボルトの締結超過を防止できる床材の固定構造を提供する。
【解決手段】本発明は、床材1を構造材に固定金具3によって固定するようにした床材の固定構造を対象とする。固定金具3は、上金具30、下金具40およびボルト50を備える。上金具30の係合部が床材1に係合しつつ、ボルト50がボルト設置板31を通じて下金具40のねじ孔43aに締結されることによって、下金具40が引き上げられて下辺部42が構造材の下面側に係合し、床材1が構造材に固定されるように構成される。上金具30に、下金具40の下辺部42の上方に配置される当接係止片6が設けられるとともに、下金具40に、当接係止片6に対応して傾斜抑制片38が設けられ、当接係止片38が傾斜抑制片6に当接係止することによって、ボルト50の締結超過に伴う下金具40の上金具30に対する傾きが抑制されるように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材を構造材に固定金具によって固定するようにした床材の固定構造であって、
前記固定金具は、上金具、下金具およびボルトを備え、
前記上金具は、前記下金具の側面に沿って配置される上金具本体と、前記下金具の上方に配置されるボルト設置板と、前記床材に係合可能な係合部とを有し、
前記下金具は、前記ボルト設置板に対応して設けられたねじ孔と、先端側が構造材の下側に配置可能な下辺部とを有し、
前記上金具の係合部が前記床材に係合しつつ、前記ボルトが前記ボルト設置板を挿通して前記下金具のねじ孔に締結されることによって、前記下金具が引き上げられて前記下辺部が構造材の下面側に係合し、床材が構造材に固定されるように構成され、
前記上金具に、前記下金具の下辺部の上方に配置される当接係止片が設けられるとともに、
前記下金具に、前記当接係止片に対応して傾斜抑制片が設けられ、
前記当接係止片が前記傾斜抑制片に当接係止することによって、前記ボルトの締結超過に伴う前記下金具の前記上金具に対する傾きが抑制されるように構成されていることを特徴とする床材の固定構造。
【請求項2】
前記下金具は、前記下辺部と、その下辺部に対し上側に平行に配置される上辺部とを有し、その上辺部および下辺部の基端部同士が連結された側面視コ字状に形成され、
前記傾斜抑制片は、前記下金具の上辺部および下辺部間を架橋するように設けられ、
前記ねじ孔は、前記上辺部に設けられている請求項1に記載の床材の固定構造。
【請求項3】
前記当接係止片は、前記傾斜抑制片に対し基端側に設けられている請求項1または2に記載の床材の固定構造。
【請求項4】
前記当接係止片には、前記ボルトの下部が挿通配置されるボルト挿通孔が形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【請求項5】
床材は、複数の長孔が並列に設けられた踏板における各長孔の側縁部にリブが裏面側に突出するように形成されるとともに、リブに差込孔が設けられ、
前記上金具の係合部は、前記ボルト設置板に設けられた差込片によって構成され、その差込片が前記差込孔に差し込まれることにより床材に係合され、
前記固定金具は、床材を構造材に固定した状態において、前記踏板の表面よりも低位に配置されるように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【請求項6】
前記ボルトが前記上金具のボルト設置板に挿通配置されて前記下金具のねじ孔に締結された仮組状態の前記固定金具は、前記長孔に挿通可能な形状を有し、
長孔を挿通して踏板の表面よりも低位に配置された仮組状態の前記固定金具が、前記ボルトの軸心回りに回転操作されることによって、前記差込片が前記差込孔に差し込まれるとともに、前記下辺部が構造材の下側に配置されるように構成されている請求項5に記載の床材の固定構造。
【請求項7】
前記ボルト設置板にそれに挿通配置される前記ボルトを任意の位置に仮保持するためのセットワッシャーが設けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【請求項8】
床材を構造材に固定するための床材の固定金具であって、
上金具、下金具およびボルトを備え、
前記上金具は、前記下金具の側面に沿って配置される上金具本体と、前記下金具の上方に配置されるボルト設置板と、前記床材に係合可能な係合部とを有し、
前記下金具は、前記ボルト設置板に対応して設けられたねじ孔と、先端側が構造材の下側に配置可能な下辺部とを有し、
前記上金具の係合部が前記床材に係合しつつ、前記ボルトが前記ボルト設置板を挿通して前記下金具のねじ孔に締結されることによって、前記下金具が引き上げられて前記下辺部が構造材の下面側に係合し、床材が構造材に固定されるように構成され、
前記上金具に、前記下金具の下辺部の上方に配置される当接係止片が設けられるとともに、
前記下金具に、前記当接係止片に対応して傾斜抑制片が設けられ、
前記当接係止片が前記傾斜抑制片に当接係止することによって、前記ボルトの締結超過に伴う前記下金具の前記上金具に対する傾きが抑制されるように構成されていることを特徴とする床材の固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、グレーチング材等の床材を梁材等の構造材に固定するための床材の固定構造および床材固定用の固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、実験室、倉庫等において、所定の高さにフロア(床)、通路、ステップ(踏み段)等の床構造を形成するような場合、踏板に多数の長孔が形成された格子状の金属製グレーチング材等の床材を、梁材等の構造材に多数並べて敷設して固定金具によって固定するようにした床材の固定構造が周知である(特許文献1)。
【0003】
このような床材の固定構造に用いられる固定金具は、床材に係合する上金具と、梁材に係合する下金具と、上下両金具を連結するボルトとを備え、上金具を床材に係合しつつ、ボルトによって上下両金具を近接方向に締結することにより、床材を梁材に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6427139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す床材の固定構造においては通常、固定金具を床材および梁材に仮止めした後、電動工具を用いてボルトを本締めするのが一般的であるが、電動工具によってボルト締めを行うと、下金具が上金具等に対し不本意に傾斜してしまうまで、ボルトを過度に締結してしまうおそれがあり、固定金具を適正な状態に組み付けることができないおそれがある、という課題があった。そのような場合例えば、ボルトの軸心が、下金具のボルト孔(ねじ孔)の軸心とずれてしまい、ねじ孔のねじ溝(ねじ山)が潰れて、固定金具を取り外すのが困難になってしまったり、固定金具の再利用が困難になるという不具合が発生する。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、固定金具のボルトにおける締結超過を防止できて、固定金具を適正な状態に確実に組み付けることができる床材の固定構造および固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0008】
[1]床材を構造材に固定金具によって固定するようにした床材の固定構造であって、
前記固定金具は、上金具、下金具およびボルトを備え、
前記上金具は、前記下金具の側面に沿って配置される上金具本体と、前記下金具の上方に配置されるボルト設置板と、前記床材に係合可能な係合部とを有し、
前記下金具は、前記ボルト設置板に対応して設けられたねじ孔と、先端側が構造材の下側に配置可能な下辺部とを有し、
前記上金具の係合部が前記床材に係合しつつ、前記ボルトが前記ボルト設置板を挿通して前記下金具のねじ孔に締結されることによって、前記下金具が引き上げられて前記下辺部が構造材の下面側に係合し、床材が構造材に固定されるように構成され、
前記上金具に、前記下金具の下辺部の上方に配置される当接係止片が設けられるとともに、
前記下金具に、前記当接係止片に対応して傾斜抑制片が設けられ、
前記当接係止片が前記傾斜抑制片に当接係止することによって、前記ボルトの締結超過に伴う前記下金具の前記上金具に対する傾きが抑制されるように構成されていることを特徴とする床材の固定構造。
【0009】
[2]前記下金具は、前記下辺部と、その下辺部に対し上側に平行に配置される上辺部とを有し、その上辺部および下辺部の基端部同士が連結された側面視コ字状に形成され、
前記傾斜抑制片は、前記下金具の上辺部および下辺部間を架橋するように設けられ、
前記ねじ孔は、前記上辺部に設けられている前項1に記載の床材の固定構造。
【0010】
[3]前記当接係止片は、前記傾斜抑制片に対し基端側に設けられている前項1または2に記載の床材の固定構造。
【0011】
[4]前記当接係止片には、前記ボルトの下部が挿通配置されるボルト挿通孔が形成されている前項1~3のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【0012】
[5]床材は、複数の長孔が並列に設けられた踏板における各長孔の側縁部にリブが裏面側に突出するように形成されるとともに、リブに差込孔が設けられ、
前記上金具の係合部は、前記ボルト設置板に設けられた差込片によって構成され、その差込片が前記差込孔に差し込まれることにより床材に係合され、
前記固定金具は、床材を構造材に固定した状態において、前記踏板の表面よりも低位に配置されるように構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【0013】
[6]前記ボルトが前記上金具のボルト設置板に挿通配置されて前記下金具のねじ孔に締結された仮組状態の前記固定金具は、前記長孔に挿通可能な形状を有し、
長孔を挿通して踏板の表面よりも低位に配置された仮組状態の前記固定金具が、前記ボルトの軸心回りに回転操作されることによって、前記差込片が前記差込孔に差し込まれるとともに、前記下辺部が構造材の下側に配置されるように構成されている前項5に記載の床材の固定構造。
【0014】
[7]前記ボルト設置板にそれに挿通配置される前記ボルトを任意の位置に仮保持するためのセットワッシャーが設けられている前項1~6のいずれか1項に記載の床材の固定構造。
【0015】
[8]床材を構造材に固定するための床材の固定金具であって、
上金具、下金具およびボルトを備え、
前記上金具は、前記下金具の側面に沿って配置される上金具本体と、前記下金具の上方に配置されるボルト設置板と、前記床材に係合可能な係合部とを有し、
前記下金具は、前記ボルト設置板に対応して設けられたねじ孔と、先端側が構造材の下側に配置可能な下辺部とを有し、
前記上金具の係合部が前記床材に係合しつつ、前記ボルトが前記ボルト設置板を挿通して前記下金具のねじ孔に締結されることによって、前記下金具が引き上げられて前記下辺部が構造材の下面側に係合し、床材が構造材に固定されるように構成され、
前記上金具に、前記下金具の下辺部の上方に配置される当接係止片が設けられるとともに、
前記下金具に、前記当接係止片に対応して傾斜抑制片が設けられ、
前記当接係止片が前記傾斜抑制片に当接係止することによって、前記ボルトの締結超過に伴う前記下金具の前記上金具に対する傾きが抑制されるように構成されていることを特徴とする床材の固定金具。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]~[3]の床材の固定構造によれば、上金具の当接係止片が、下金具の傾斜抑制片に当接係止することによって、ボルトの締結超過に伴う下金具の上金具に対する傾きが抑制されるように構成されているため、ボルトの締結超過を防止することができる。このため例えば、固定金具の特にその下金具を適正な状態に組み付けることができ、下金具のねじ孔が破損する等の不具合を防止することができる。
【0017】
発明[4]の床材の固定構造によれば、ボルトの下部を上金具における当接係止片のボルト挿通孔に挿通配置しているため、ボルトの下部を当接係止片によってガイド/支持できて、ボルトをより安定した状態に組み付けることができる。
【0018】
発明[5]の床材の固定構造によれば、固定金具を踏板表面よりも低位に配置されているため、床材全域において平坦面に仕上げることができる。
【0019】
発明[6]の床材の固定構造によれば、固定金具を踏板の長孔から差し込んで回転させた後、ボルトを締結するという一方向からの作業のみで床材を構造材に固定することができ、優れた作業性を確保することができる。
【0020】
発明[7]の床材の固定構造によれば、セットワッシャーによってボルトを所望の高さ位置に保持できるため、そのボルトを摘まむことにより、固定金具の取り扱い操作を容易に行うことができ、ひいては床材の固定作業を効率良く簡単に行うことができる。
【0021】
発明[8]の床材の固定金具によれば、上記発明[1]の主要部を構成する固定金具を特定するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明の実施形態である床材の固定構造において固定金具を取り外した状態を示す斜視図である。
図2図2は実施形態の床材の固定構造を示す斜視図である。
図3図3は実施形態の床材の固定構造において固定金具を挿入した直後の状態を示す側面断面図である。
図4図4は実施形態の床材の固定構造において固定金具を回転操作した直後の状態を示す側面断面図である。
図5図5は実施形態の床材の固定構造を示す側面断面図である。
図6図6は実施形態の固定金具を分解して示す斜視図である。
図7図7は実施形態の固定金具を他の形態で使用した場合の床材の固定構造を示す側面断面図である。
図8図8はこの発明の変形例である床材の固定金具を示す側面断面図である。
図9図9は参考例である床材の固定構造を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2はこの発明の実施形態である床材の固定構造を説明するための斜視図、図3図5は実施形態の床材の固定構造を説明するための側面断面図である。
【0024】
これらの図に示すように本実施形態において、床材1は、踏板10の幅方向の両端縁(両側端縁)にリップ部15付きフランジを有する鋼板製のリップ溝型材(床材本体)によって構成されている。板状の踏板10には、踏板10の幅方向に延びる長円形状ないし長楕円形状(笹の葉形状)の複数の長孔11が長さ方向に沿って並列配置(横列配置)に設けられている。
【0025】
踏板10における長孔11の両側縁部(長辺部)には裏面側に突出するリブ12が一体に形成されている。
【0026】
両側のリブ12には、長辺方向に延びるスリット状の3つの差込孔13が、長辺方向に縦列配置にそれぞれ形成されている。
【0027】
以上の構成の床材1が、梁材2上に複数並列に配置された状態に敷設されるとともに、各床材1が後述の固定金具3によって梁材2に固定されて、本実施形態の床材の固定構造が形成されている。
【0028】
ここで図1に示すように床材1における長孔11の長さ方向(長手方向)の開口寸法は「P1」であり、長孔11の幅方向(短手方向)の開口寸法は「P2」であり、差込孔13の幅方向(高さ方向)の開口寸法は「P3」である。
【0029】
梁材2は、ウエブ20のフランジ21を有するH形鋼材ないしI形鋼材で構成され、フランジ21上に本実施形態の床材1が設置されるものである。本実施形態においては、梁材2、具体的にはそのフランジ21が構造材として構成されている。
【0030】
図6は固定金具3を分解して示す斜視図である。図1図6に示すように固定金具3は、床材1に係合される上金具30と、梁材2に係合される下金具40と、上金具30および下金具40を連結するボルト50とを備えている。
【0031】
上金具30は、その上端に設けられ、かつ水平に配置されるボルト設置板31と、下金具40の側面に接して上金具30に対する下金具40の姿勢を規制するとともに、垂直に配置されて下端が梁材2に当接可能な上金具本体32とを有し、ボルト設置板31と上金具本体32とがネック部36を介して一体に形成されている。
【0032】
ボルト設置板31は、その中央にボルト50を挿通配置するためのボルト挿通孔31aが穿設されるとともに、両端部が上記床材1の差込孔13に挿通配置可能な差込片(係合部)35として構成されている。
【0033】
上金具本体32の下端部には、ボルト設置板31と同じ方向に折り曲げられた折曲片38が形成されている。この折曲片38は、当接係止片として構成されるとともに、ボルト50の下部を挿通配置してガイド/支持するためのボルト挿通孔38aが穿設されている。
【0034】
上金具本体32の下端縁における折曲片38よりも片側(先端側)は、鋸歯状に切り欠かれて刻み目39が形成されるとともに、刻み目39が形成されていない側(基端側)は、切除されている。
【0035】
図6に示すように、上金具30のボルト設置板31の長さ方向の寸法は「Q1」であり、幅方向(短手方向)の寸法は「Q2」である。上金具本体32の長さ方向の寸法は「Q3」であり、ボルト設置板31の長さ方向の寸法「Q1」よりも大きくなっている。また上金具本体32はボルト設置板31の幅方向(短手方向)から板厚分が張り出しているので、上金具30の幅方向(短手方向)の寸法Q4は、ボルト設置板31の幅方向の寸法Q2よりも大きくなっている。従って上金具30の上面寸法は、長さ方向Q3×幅方向Q4である。
【0036】
上金具30は、板厚Q5の金属板を所定の輪郭に切り抜いて、ボルト設置板31、折曲片38を上金具本体32に対し曲げ加工して作製されたものである。
【0037】
下金具40は、平行に配置された上辺部41と下辺部42とが基端側で結合され、側面視においてコ字状に形成された部材であり、上辺部41と下辺部42との間のコ字溝に梁材2のフランジ21が挿入可能に構成されている。上辺部41には、ボルト50に螺合する2個のねじ孔43a,43bが長さ方向に沿って並んで形成されている。2個のねじ孔43a,43bのうち、一方のねじ孔43bは、上辺部41の長さ方向のほぼ中央に形成され、他方のねじ孔43aは、基端側に寄った位置に形成されている。
【0038】
また上辺部41および下辺部42間を架橋するように垂直方向に沿って傾斜抑制片6が一体に形成されており、この傾斜抑制片(仕切部)6によって、下金具40のコ字溝が2個のねじ孔43a,43b間において基端側と先端側とに仕切られている。本実施形態においては、下金具40のコ字溝のうち、傾斜抑制片6よりも基端側部が、側面視矩形状の開口部61として構成されている。また下辺部42の先端部上縁には、鋸歯状に切り欠かれて刻み目47が形成されている。
【0039】
本実施形態において、下金具40は、打ち抜き成形された所定形状のブランク板を、下向きコ字状に曲げ成型されることによって形成されている。そして本実施形態においては、このコ字状成形品における中間連結板部に、上記のねじ孔43a,43bが形成されるとともに、両側の曲げ板部に、上記の上辺部41、下辺部42、刻み目47、傾斜抑制片6および開口部61が対応してそれぞれ形成されている。
【0040】
図6に示すように下金具40の長さ方向の寸法は「R1」であり、幅方向(短手方向)の寸法は「R2」である。下辺部42は、上辺部41はよりも長いので、下辺部42の長さ方向の寸法は下金具40の長さ方向の寸法「R1」に等しくなっている。
【0041】
また上金具30におけるボルト設置板31の裏面側(下面側)には、ボルト挿通孔34aに対応して、ボルト50を任意の挿通位置で保持するためのナイロン製のセットワッシャー55が取り付けられている。
【0042】
本実施形態の固定金具3においては、上金具30のボルト挿通孔34aを、下金具40のねじ孔43a,43bのいずれか一方例えば基端側のねじ孔43aに対向させるとともに、上金具30の折曲片38を下金具40のコ字溝内における傾斜抑制片6の基端側(開口部61)に挿入させるようにして、上金具30および下金具40を重ね合わせて配置し、さらにその状態で、上金具30のボルト挿通孔34aおよびセットワッシャー55に挿通したボルト50を、下金具40のねじ孔43aにねじ込んで、上金具30の折曲片38のボルト挿通孔38aに挿通配置する。これにより上金具30、下金具40およびボルト50が互いに分離されずに連結されて仮組状態となる。この仮組状態の固定金具3においては、上金具30の本体32が下金具40の側面に当接係止して、下金具40の上金具30に対するボルト軸心回りの動きが規制されるとともに、上金具30の刻み目39が、下金具40の刻み目47に対し上方に間隔をおいて配置される。
【0043】
なおボルト50を螺合する下金具40のねじ孔43a,43bは、下金具40の梁材2のフランジ21を挟み込めるように踏板10の長孔11とフランジ21の位置関係に応じて適宜選択すれば良い。例えばボルト50を先端側のねじ孔43bにねじ込んで仮組する場合には、ボルト50の下端部が挿通される上金具30の折曲片38は、下金具40のコ字溝内における傾斜抑制片6よりも先端側に配置されることになる(図7参照)。
【0044】
仮組状態の固定金具3は上面視(平面視)において、長さ方向の寸法が下金具40の長さ方向の寸法R1と等しく、幅方向の寸法は上金具30の幅方向の寸法Q4と等しくなっている。
【0045】
本実施形態において固定金具3の各部の寸法は、床材1および梁材2の各部の寸法に対して以下の大小関係となるように設定されている。
【0046】
固定金具3の長さ方向の寸法R1は、床材1の踏板10の長孔11の長さ方向の開口寸法P1よりも小さく、幅方向の開口寸法P2よりも大きく設定されている。固定金具3の幅方向の寸法Q4は長孔11の幅方向の開口寸法P2よりも小さく設定されている。また固定金具3のボルト設置板31の長さ方向の寸法Q1は長孔11の幅方向の開口寸法P2よりも大きく設定され、ボルト設置板31の板厚Q5はリブ12の差込孔13の幅方向(短手方向)の開口寸法P3よりも小さく設定されている。
【0047】
本実施形態においてはこの構成の固定金具3を用いて、以下の手順で床材1を梁材2に固定するものである。
【0048】
すなわち、梁材2の長さ方向と床材1の長さ方向とが水平面内で直交する態様で、梁材2上に複数の床材1を架け渡すように並列に載置する。固定金具3は上金具30、下金具40およびボルト50を上記のように仮組状態に組み立てておく。このとき、ボルト50を下金具40のねじ孔43aに適宜ねじ込んで、上金具30のボルト設置板31から下金具40のコ字溝までの距離が床材1の差込孔13のから梁材2のフランジ21までの距離とほぼ等しくなるように調整しておく。なお本実施形態においては、ボルト設置板31の下面側に配置したセットワッシャー55によって、ボルト50の頭部がボルト設置板31から少し上方に持ち上がった状態(図1等参照)に保持されている。
【0049】
次に図1および図3に示すように、固定金具3の長さ方向を床材1の踏板10の長孔11の長さ方向に沿わせ、固定金具3を踏板10の上面側から長孔11に差し入れる。固定金具3の平面寸法Q3×Q4は長孔11の開口寸法P1×P2よりも小さいので、固定金具3全体を長孔11に難なく差し入れることができる。
【0050】
続いて図4に示すように、差し入れた固定金具3を踏板10と平行な平面内でボルト50の軸心回り(垂直軸回り)に90°回転させる。この固定金具3の回転により図2および図4に示すように長孔11の長さ方向と固定金具3の長さ方向とが直交し、上金具30のボルト設置板両端の差込片35が対向するリブ12の差込孔13に差し込まれ、下金具40のコ字溝に梁材2のフランジ21が挿入されて、上金具本体32がフランジ21の上側に配置されるとともに、下金具40の下辺部42がフランジ21の下側に配置される。
【0051】
ここで本実施形態においては、セットワッシャー55によって、ボルト50の頭部が持ち上がった状態に配置されているため、作業者はボルト50の頭部を摘まみやすくなっている。このためボルト50の頭部を摘まみながら、固定金具3の長孔11への差込操作や、固定金具3の回転操作を容易に行うことができる。
【0052】
上金具30におけるボルト設置板31の長さ方向の寸法Q1は、長孔11の幅方向の開口寸法P2、すなわち対向するリブ12間の距離よりも大きいので、ボルト設置板両端の差込片35は、対向する差込孔13に貫通した状態に配置される。
【0053】
次に図5に示すようにボルト50を締結方向に回転させていく。このとき、下金具40は上金具30によってボルト50の軸心回りの回転が規制されているため、ボルト50の回転に伴って、下金具40が上方に引き寄せられて、上金具30に近接していく。一方、上金具30のボルト設置板31の両端部は差込孔13に挿入されて上下方向に拘束されているので、持ち上げられた下金具40の下辺部42の刻み目47が梁材2のフランジ21の裏面(下面)に食い込むとともに、上金具30が上側から抑え込まれて、上金具本体32の刻み目39がフランジ21の上面に食い込む。こうして床材1は、固定金具3の上金具30のボルト設置板31と強く係合しつつ、梁材2は、下側から下金具40の下辺部42と強く係合して、床材1が固定金具3を介して梁材2上に固定される。
【0054】
ここで、ボルト50の締結作業は一般的に、電動工具を用いて行うため、ボルト50を必要以上に過度に締結してしまう場合があるが、本実施形態においては、下金具40のコ字溝に架橋状に傾斜抑制片6を形成して、その傾斜抑制片6の基端側に上金具30の折曲片38を対向させて配置しているため、折曲片38が傾斜抑制片6に当接係止することによって、ボルト50の締結超過を防止することができる。
【0055】
すなわち仮に、下金具40に傾斜抑制片6を形成しない場合には図9に示すように、電動工具によりボルト50を過度に強固に締め付けてしまうと、下金具40が必要以上に上方に引き込まれて、不本意にも下金具40が上金具30や梁材2等に対し同図の時計方向に回転するように傾斜してしまう。そうすると例えば、ボルト軸心に対し下金具40のねじ孔43aの軸心が傾斜して、ねじ孔43aのねじ溝(ねじ山)が破損してしまい、ボルト50をねじ孔43aから取り外すことができず固定金具3を取り外すことができなくなったり、固定金具3等を再使用できなくなってしまうという不具合が発生する。
【0056】
これに対し本実施形態においては、下金具40に上金具30の折曲片38に対向させて傾斜抑制片6を形成しているため、ボルト50の締結超過に伴って、下金具40が適正な状態から不用意に回転して傾斜しようとすると、上金具30の折曲片38が下金具40の傾斜抑制片6に当接係止することによって、下金具40の不用意な回転が阻止される。このためボルト50が必要以上に締め付けられてしまうのを確実に防止することができ、下金具40を上金具30等に対し適正な姿勢に連結できて、ねじ孔43aのねじ溝が破損してしまう等の不具合を確実に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態の床材の固定構造においては、固定金具3が踏板10の長孔11から差込可能な寸法に設定されており、固定金具3全体を踏板10の上面よりも低い位置に配置して床材1に係合することができる。このため、床材1を固定金具3によって梁材2に固定した状態において、踏板10の上面から固定金具3が突出することがなく、踏板10の平坦性を損なわない。さらに固定金具3が突出しないので、良好な美観も確保することができる。
【0058】
また固定金具3を床材1および梁材2に係合する作業は、固定金具3を踏板10の長孔11から差し入れる作業と、固定金具3を回転させる作業と、ボルト50を締結する作業となる。これらの作業は全て踏板10の上面側から行える一方向作業であり、優れた作業性を確保することができる。
【0059】
ところで上記実施形態においては、固定金具3のボルト50を下金具40の基端側(後側)のねじ孔43aに締結する場合を例に挙げて説明したが、ボルト50を下金具40の先端側(前側)のねじ孔43bに締結する場合でも、ボルト50を必要以上に締め付けてしまうのを防止することができる。すなわち図7に示すようにボルト50を下金具40の先端側のねじ孔43bに締結した固定金具3によって床材1を梁材2に固定した状態においては、ボルト50の締結位置と、下金具40の梁材2に対する係合位置との水平距離が短くなるため、ボルト50の締結超過によっても、下金具40が大きく傾斜することはないものの、少しは傾斜するおそれがある。従って図7に示すようにボルト50を下金具40の先端側のねじ孔43bに締結する場合であっても、折曲片38が傾斜抑制片6に当接係止することによって、下金具40の傾斜を微少であっても確実に抑制できて、ボルト50の締結超過を防止することができる。
【0060】
なおボルト50を下金具40の先端側のねじ孔43bに締結する場合には、上金具30の折曲片38が、下金具40の傾斜抑制片6の先端側(前側)に配置されるため、折曲片38の後端縁が傾斜抑制片6に当接係止することになる。要するに本発明においては、上金具30の折曲片(当接係止片)38は、上記図5に示す実施例のように傾斜抑制片6の基端側(後側)にあっても、上記図7に示す他の使用形態のように傾斜抑制片6の先端側(前側)にあっても良い。もっとも本発明においては上記図5に示す実施形態のように、ボルト50を下金具40の基端側のねじ孔43aに締結する場合の方が、ボルト50の締結位置と、下金具40の梁材2に対する係合位置との水平距離が長いため、ボルト締結超過による下金具40の傾斜が顕著に現れるので、傾斜を抑制する効果、つまりボルト締結超過を防止する効果をより一層確実に得ることができる。換言すると、ボルト50を下金具40の基端側のねじ孔43aに締結する場合には特に、本発明の構成を採用するのがより一層好ましい。
【0061】
なお上記実施形態の固定金具3においては、上金具30のボルト設置板31の裏面側にセットワッシャー55を取り付けて、ボルト50の頭部が持ち上がった状態に保持できるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、図9に示すように、セットワッシャー55に代えて、ボルト50の下端に、ボルト抜止用の止め輪56を取り付けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明の床材の固定構造は、工場、実験室、倉庫等において、所定の高さ等にフロア、通路、ステップ等を形成する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:床材
10:踏板
11:長孔
12:リブ
13:差込孔
21:フランジ(構造材)
3:固定金具
30:上金具
31:ボルト設置板
31a:ボルト挿通孔
32:上金具本体
35:差込片(係合部)
38:折曲片(当接係止片)
38a:ボルト挿通孔
40:下金具
41:上辺部
42:下辺部
43a:ねじ孔
43b:ねじ孔
50:ボルト
55:セットワッシャー
6:傾斜抑制片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9