(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117016
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタの乾燥装置およびそれを備えたインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019471
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀章
(72)【発明者】
【氏名】半場 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056HA27
2C056HA46
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】インクの乾燥効率を維持することができ、インクジェットプリンタが設置された部屋の湿度の上昇を抑制することができる乾燥装置を提供すること。
【解決手段】インクジェットプリンタの乾燥装置20は、吸入口21および排出口22が形成されたケーシング23と、ケーシング23の内部に配置されたヒータ24と、吸入口21からケーシング23内に空気が吸入され、ケーシング23内の空気が排出口22から排出されるように送風するファン25と、排出口22から排出されて記録媒体5に吹き付けられた空気を除湿しながら通過させる除湿通路34を有する除湿部材30と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と、インクが吐出された記録媒体に向けて開口する排出口と、が形成されたケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置された加熱体と、
前記吸入口から前記ケーシング内に空気が吸入され、前記ケーシング内の空気が前記排出口から排出されるように送風するファンと、
前記排出口から排出されて前記記録媒体に吹き付けられた空気を除湿しながら通過させる除湿通路を有する除湿部材と、
を備えたインクジェットプリンタの乾燥装置。
【請求項2】
前記除湿部材は、前記除湿通路の少なくとも一部を形成する冷却フィンと、前記冷却フィンと熱伝導可能に連続し、前記除湿通路の外部に設けられた放熱フィンと、を有している、請求項1に記載のインクジェットプリンタの乾燥装置。
【請求項3】
前記除湿部材の前記除湿通路の下方に配置されたドレン受けを備えている、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタの乾燥装置。
【請求項4】
記録媒体が載置されるプラテンと、
前記プラテンに載置される前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
インクが吐出された前記記録媒体を支持する下方に延びるエプロンと、
請求項1~3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタの乾燥装置と、を備え、
前記乾燥装置は、前記排出口が前記エプロン上の前記記録媒体に対向するように配置されている、インクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記乾燥装置の前記除湿通路は、前記エプロンの左端部から左方に延び、または、前記エプロンの右端部から右方に延びている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
記録媒体が載置されるプラテンと、
前記プラテンに載置される前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
インクが吐出された前記記録媒体を支持する下方に延びるエプロンと、
請求項2に記載のインクジェットプリンタの乾燥装置と、を備え、
前記乾燥装置は、前記排出口が前記エプロン上の前記記録媒体に対向するように配置され、
前記冷却フィンは左右に延び、前記放熱フィンは上下に延びている、インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの乾燥装置およびそれを備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式によって記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタは、例えば、記録媒体が載置されるプラテンと、プラテンに載置された記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、プラテンの前方に配置され、インクが吐出された記録媒体を支持するエプロンとを備えている。また、使用するインクの種類によっては、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を促進するために、インクジェットプリンタに乾燥装置が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、エプロンに対向して配置された乾燥装置が記載されている。乾燥装置は、吸入口から吸い込んだ空気をヒータで加熱し、排出口から排出する。乾燥装置は、エプロン上の記録媒体に対して、加熱された高温の空気を吹き付ける。これにより、記録媒体のインクの乾燥が促進される。インクジェットプリンタに乾燥装置を設けることにより、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥装置は、吸入口から乾燥装置の周囲の空気を吸い込み、排出口から排出する。排出された空気は、記録媒体に吹き付けられて乾燥装置の周囲に放出されるが、一部の空気は再び吸入口から吸い込まれ、排出口から排出されて記録媒体に吹き付けられる。
【0006】
インクジェットプリンタのインクとして、例えば水性インクが用いられることがある。水性インクは水成分を比較的多く含むため、乾燥時に多くの水成分が蒸発する。そのため、記録媒体に吹き付けられてインクを乾燥させた空気は、多くの水分を含んでしまい、高湿度の空気となる。
【0007】
インクの乾燥を効率的に行うためには、記録媒体に吹き付けられる空気の湿度は低い方が好ましい。高湿度の空気が再び乾燥装置に吸い込まれ、記録媒体に吹き付けられると、インクの乾燥効率は低下するからである。また、乾燥装置から長時間にわたって高湿度の空気が排出されると、インクジェットプリンタが設置された部屋の湿度が高くなってしまう。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの乾燥効率を維持することができ、インクジェットプリンタが設置された部屋の湿度の上昇を抑制することができる乾燥装置およびそれを備えたインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るインクジェットプリンタの乾燥装置は、吸入口とインクが吐出された記録媒体に向けて開口する排出口とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの内部に配置された加熱体と、前記吸入口から前記ケーシング内に空気が吸入され、前記ケーシング内の空気が前記排出口から排出されるように送風するファンと、前記排出口から排出されて前記記録媒体に吹き付けられた空気を除湿しながら通過させる除湿通路を有する除湿部材と、を備える。
【0010】
上記インクジェットプリンタの乾燥装置によれば、吸入口からケーシングの内部に吸い込まれた空気は、加熱体によって加熱され、高温の空気となって排出口から排出される。排出口から排出された高温の空気は、インクが吐出された記録媒体に吹き付けられる。これにより、インクに含まれる水分が蒸発し、記録媒体上のインクは乾燥される。一方、インクを乾燥した空気の湿度は上昇する。しかし、上記乾燥装置によれば、記録媒体に吹き付けられて湿度が上昇した空気は、除湿部材の除湿通路を通過し、その際に除湿される。よって、乾燥装置から高湿度の空気が放出されることは防止される。乾燥装置に高湿度の空気が吸い込まれることが防止されるので、乾燥装置によるインクの乾燥効率が低下することを抑制することができる。また、インクジェットプリンタが設置された部屋の湿度が上昇することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクの乾燥効率を維持することができ、インクジェットプリンタが設置された部屋の湿度の上昇を抑制することができる乾燥装置およびそれを備えたインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る乾燥装置が備えられたインクジェットプリンタの斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を簡略化して表す断面図である。
【
図6】インクジェットプリンタおよび乾燥装置の主要部を簡略化して表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと言う)および乾燥装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の斜視図である。以下の説明では、符号F、Rr、L、R、U、Dによって示す方向を、それぞれ前方、後方、左方、右方、上方、下方とする。すなわち、左、右、上、下は、プリンタ1の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。ユーザがプリンタ1から遠ざかる方を前方とし、プリンタ1に近づく方を後方とする。ただし、ここで定める方向は説明の便宜上定め方向に過ぎず、プリンタ1の設置態様を何ら限定するものではない。なお、符号Yは、後述するキャリッジ15の移動方向を表し、以下では主走査方向と言う。符号Xは、後述する記録媒体5の搬送方向を表し、以下では副走査方向と言う。ここでは、副走査方向Xは主走査方向Yに対して垂直な方向である。
【0015】
図1に示すように、プリンタ1は、本体部10と、本体部10を支持する脚11と、操作パネル12と、フロントカバー13とを備えている。本体部10には、インクを収容するインクカートリッジ7が装着されている。乾燥装置20は、本体部10の前方に配置されている。プリンタ1は、記録媒体5にインクを吐出し、インクによって記録媒体5上に画像(文字等を含む)を形成するように構成されている。
【0016】
インクの種類は特に限定されないが、本実施形態では水性インクである。水性インクとして、例えば、ラテックスインクを好ましく用いることができる。ラテックスインクは、溶媒、色材およびバインダ樹脂を含む。ラテックスインクにおいて、バインダ樹脂は、溶媒に分散または乳濁している。溶媒としては、例えば、水や水と均一に混合し得る水溶性有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。ラテックスインクは、ラテックスインクの全質量に対して50質量%以上90質量%以下の溶媒を含む。色材としては、ラテックスインク中に含まれる従来の色材を適宜選択することができる。色材としては、例えば、水溶性染料等の染料や顔料等が挙げられる。バインダ樹脂としては、ラテックスインク中に含まれる従来のバインダ樹脂を適宜選択することができる。
【0017】
記録媒体5は、例えば記録紙である。ただし、記録媒体5は記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミニウムや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0018】
図2は、プリンタ1および乾燥装置20の主要な構成を簡略化して示す断面図であり、
図1のII-II断面に相当する断面図である。
図2に示すように、本体部10の内部には、主走査方向Yに延びるガイドレール14と、ガイドレール14に摺動可能に係合したキャリッジ15と、キャリッジ15に装着されたインクヘッド16とが設けられている。キャリッジ15の下方には、記録媒体5が載置されるプラテン17が配置されている。図示は省略するが、キャリッジ15は駆動装置に連結されており、当該駆動装置の動力を受けて主走査方向Yに移動する。インクヘッド16はキャリッジ15に装着されているので、キャリッジ15と共に主走査方向Yに移動可能である。インクヘッド16は、図示しないチューブによりインクカートリッジ7(
図1参照)に接続されている。インクヘッド16は、プラテン17に載置された記録媒体5にインクを吐出するように構成されている。
【0019】
プラテン17には、インクが吐出された直後の記録媒体5を加熱する乾燥プレート18が設けられている。乾燥プレート18には、例えば、ヒータからなる加熱体が備えられている。ただし、乾燥プレート18は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0020】
プラテン17の前方にはエプロン19が配置されている。記録媒体5は、プラテン17上からエプロン19上に搬送される。エプロン19は下方(詳しくは、下方かつ前方)に延びており、インクが吐出された記録媒体5を支持する。乾燥装置20は、エプロン19に対向するように配置されている。詳しくは、乾燥装置20は、エプロン19に支持された記録媒体5に対向するように配置されている。なお、乾燥装置20による乾燥だけでなく、更に乾燥を促すため、エプロン19にも乾燥プレート18を設けるようにしてもよい。次に、乾燥装置20の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、乾燥装置20は、吸入口21および排出口22が形成されたケーシング23と、ケーシング23の内部に配置されたヒータ24と、ファン25とを備えている。
図3は、乾燥装置20の斜視図である。
図3に示すように、乾燥装置20は更に、除湿部材30を備えている。
【0022】
図2に示すように、吸入口21は、ケーシング23の外部から内部に空気を取り入れる開口である。本実施形態では、吸入口21は上方(詳しくは、上方かつ後方)に開口している。ファン25は、吸入口21の上方に配置されている。ファン25は、吸入口21を通じて、ケーシング23の外部から内部に空気を送るように構成されている。ファン25の個数は特に限定されないが、本実施形態では
図1に示すように、主走査方向Yに並ぶ3つのファン25が設けられている。
【0023】
ヒータ24は、空気を加熱する加熱体の一例である。吸入口21を通じてケーシング23の内部に取り入れられた空気は、ヒータ24によって加熱される。ヒータ24によって加熱された空気は、排出口22を通じてケーシング23の外部に排出される。排出口22は、エプロン19に向けて開口している。エプロン19には記録媒体5が支持されているので、排出口22は、エプロン19に支持された記録媒体5、すなわち、インクが吐出された記録媒体5に向けて開口している。ここでは、排出口22は、下方かつ後方に向けて開口している。ヒータ24によって加熱された空気は排出口22から排出され、記録媒体5に吹き付けられる。これにより、記録媒体5のインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。
【0024】
図2に示すように、ケーシング23の前端部には、下方(詳しくは、下方かつ後方)に延びる仕切板23Aが設けられている。ケーシング23の後端部には、下方(詳しくは、下方かつ後方)に延びる仕切板23Bが設けられている。これらの仕切板23Aおよび23Bにより、排出口22から排出されて記録媒体5に吹き付けられた空気は、上方および下方に流れず、左方および右方に流れるように構成されている。
【0025】
除湿部材30は、記録媒体5に吹き付けられた空気を除湿するものである。除湿部材30は、ケーシング23の左側および右側に配置されている。
図4は、除湿部材30の斜視図である。
図4に示すように、除湿部材30は、プレート31と、プレート31の下方に配置された複数の冷却フィン32と、プレート31の上方に配置された複数の放熱フィン33とを備えている。プレート31、冷却フィン32、および放熱フィン33は、熱伝導率が比較的高い材料で形成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、鉄、銅などの金属により形成することができる。プレート31、冷却フィン32、および放熱フィン33は、互いに熱伝導可能に連続していればよく、互いに別体でもよいが、本実施形態では一体的に形成されている。プレート31、冷却フィン32、および放熱フィン33は、単一物品からなっている。
【0026】
冷却フィン32は、プレート31から下方(詳しくは、下方かつ後方)に延びている。また、冷却フィン32は左方および右方に延びている。隣り合う冷却フィン32同士の間には、除湿通路34が形成されている。除湿通路34は、左右方向に延びる通路となっている。放熱フィン33は、プレート31から上方(詳しくは、上方かつ前方)に延びている。また、放熱フィン33は上方および下方に延びている。
図5(なお、
図5ではヒータ24の図示は省略している)に示すように、除湿通路34には、排出口22から排出されて記録媒体5に吹き付けられた高温空気HAが流れる。高温空気HAは冷却フィン32によって冷却される。これにより、高温空気HAに含まれる水分が凝縮し、高温空気HAは除湿される。一方、冷却フィン32自体は、高温空気HAによって加熱される。冷却フィン32の熱は、プレート31を通じて放熱フィン33に伝わる。放熱フィン33は、放熱フィン33の周囲の空気と熱交換を行い、熱を放出する。このように、高温空気HAから冷却フィン32に伝達された熱は、冷却フィン32、プレート31、放熱フィン33を順に伝わり、放熱フィン33から放出される。
【0027】
高温空気HAに含まれる水分が凝縮することにより、除湿通路34においてドレン(凝縮した水)が発生する。本実施形態では、除湿部材30の除湿通路34の下方に、ドレン受け40が配置されている。除湿通路34において発生したドレンは、ドレン受け40に流れ落ちる。
図4に示すように、ドレン受け40には、ドレンを排出するドレンチューブ41が接続されている。
図5に示すように、左側のドレン受け40に接続されたドレンチューブ41と、右側のドレン受け40に接続されたドレンチューブ41とは、ドレン回収タンク42に接続されている。ドレン受け40のドレンは、ドレンチューブ41を通じてドレン回収タンク42に回収される。なお、
図5に示すように、左側および右側のドレンチューブ41は合流してからドレン回収タンク42に接続されていてもよいが、それぞれがドレン回収タンク42に接続されていてもよい。また、左側のドレンチューブ41に接続されたドレン回収タンク42と、右側のドレンチューブ41に接続されたドレン回収タンク42とを別々に設けるようにしてもよい。
【0028】
以上がプリンタ1および乾燥装置20の構成である。次に、プリンタ1および乾燥装置20の動作について説明する。
【0029】
プリンタ1では、記録媒体5を前方に順次搬送すると共に、インクヘッド16が主走査方向Yに移動しながら、プラテン17上の記録媒体5にインクを吐出する。インクヘッド16から記録媒体5に吐出されたインクは、まず、プラテン17上において、乾燥プレート18によって加熱される。これにより、記録媒体5に着弾した直後のインクの乾燥が促進される。
【0030】
プラテン17上からエプロン19上に搬送された記録媒体5は、乾燥装置20によって加熱される。乾燥装置20では、乾燥装置20の周囲の空気が、吸入口21からケーシング23内に吸入される。この空気はヒータ24によって加熱され、高温の空気となる。高温の空気は、排出口22から排出され、エプロン19上の記録媒体5に吹き付けられる。高温の空気が記録媒体5に吹き付けられることにより、記録媒体5のインクは加熱され、乾燥する。この際、インクの水分が蒸発し、インクを乾燥させた高温空気HAの湿度が上昇する。湿度が上昇した高温空気HAは、除湿部材30の除湿通路34を通過し、冷却フィン32によって冷却されることによって除湿される。乾燥装置20の周囲には、除湿された空気が放出される。乾燥装置20の周囲の空気は吸込口21から再度吸い込まれることになるが、吸込口21からは除湿された空気が吸い込まれることとなる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る乾燥装置20によれば、記録媒体5に吹き付けられて湿度が上昇した空気は、除湿部材30の除湿通路34を通過し、その際に除湿される。よって、乾燥装置20から放出される空気は、除湿された空気となる。本実施形態によれば、乾燥装置20から高湿度の空気が放出されることを防止することができる。そのため、本実施形態によれば、乾燥装置20に高湿度の空気が吸い込まれることを防止できるので、インクの乾燥効率の低下を抑制することができる。これにより、乾燥装置20の大型化や大電力化を避けることができる。また、プリンタ1が設置された部屋の湿度が上昇することを抑制することができる。
【0032】
乾燥装置20は除湿部材30を備えているが、除湿部材30は空気を除湿できればよく、その形態は特に限定されない。除湿部材30として、例えば、シリカゲル等の除湿剤を利用してもよく、ペルチェ素子を利用してもよい。しかし、除湿剤を利用する場合、徐々に吸湿性能が低下してしまうので、定期的に交換が必要となる。ペルチェ素子を利用する場合、外部電源が必要となる。一方、本実施形態によれば、除湿部材30は、除湿通路34の少なくとも一部を形成する冷却フィン32と、冷却フィン32と熱伝導可能に連続し、除湿通路34の外部に設けられた放熱フィン33と、を有している。そのため、定期的な交換や外部電源は不要である。よって、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る乾燥装置20によれば、除湿部材30の除湿通路34の下方にドレン受け40が配置されている。そのため、インク乾燥後の空気を除湿することによって発生するドレンを、良好に処理することができる。
【0034】
本実施形態によれば、記録媒体5はエプロン19上において上方から下方に搬送される。除湿通路34はエプロン19の左側および右側に設けられているが、左側の除湿通路34はエプロン19の左端部から左方に延び、右側の除湿通路34はエプロン19の右端部から右方に延びている。そのため、高温空気HAを記録媒体5の左方および右方に排出することができ、記録媒体5から左方および右方に外れた箇所において除湿することができる。よって、記録媒体5のインクの乾燥を妨げることなく、高温空気HAを除湿することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、除湿部材30の冷却フィン32は左右に延びている。冷却フィン32が左右に延びていることにより、高温空気HAを除湿しながら左方または右方に排出することができる。また、本実施形態によれば、放熱フィン33は上下に延びている。放熱フィン33は、除湿通路34の外部の空気と熱交換を行い、当該空気を加熱する。放熱フィン33によって加熱された空気は温度が上昇するので、比重が軽くなる。放熱フィン33によって加熱された空気は、自然対流により、放熱フィン33から上昇する傾向がある。本実施形態によれば、放熱フィン33が上下に延びていることにより、自然対流による空気の上昇を妨げにくい。よって、放熱フィン33の周りの自然対流を円滑化することができ、放熱フィン33の放熱効率を高めることができる。その結果、冷却フィン32の冷却効率を高めることができ、高温空気HAを良好に除湿することができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0037】
前記実施形態では、吸入口21はケーシング23の上部に形成され、上方に開口しているが、吸入口21の位置および向きは特に限定されない。乾燥装置20の加熱体はヒータ24に限らず、空気を加熱できる任意の手段を加熱体として用いることができる。ファン25は、吸入口21からケーシング23内に空気が吸入され、ケーシング23内の空気が排出口22から排出されるように送風できればよく、前記実施形態のようにケーシング23の外部に配置されていてもよく、ケーシング23の内部に配置されていてもよい。
【0038】
冷却フィン32は、左右に真っ直ぐに延びていてもよく、左右方向から上方または下方に傾いた方向に真っ直ぐに延びていてもよい。また、冷却フィン32は、必ずしも左右に延びていなくてもよい。放熱フィン33は、必ずしも上下に延びていなくてもよい。冷却フィン32および放熱フィン33は、必ずしも平板状に形成されていなくてもよく、湾曲または屈曲した板状に形成されていてもよい。冷却フィン32および放熱フィン33は、プレートフィンに限らず、例えばピンフィンであってもよい。冷却フィン32および放熱フィン33のフィン形状は特に限定されない。
【0039】
ドレンの処理が必要ない場合、または、他の方法によりドレンを処理できる場合、ドレン受け40はなくてもよい。
【0040】
インクジェットプリンタ1は、必ずしもプラテン17の前方に配置されたエプロン19を備えていなくてもよい。乾燥装置20は、記録媒体5のインクを乾燥できるように配置されればよく、必ずしもエプロン19に対向するように配置されなくてもよい。インクジェットプリンタは、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)式のプリンタに限らず、いわゆるフラットベッド(Flatbed)式のプリンタであってもよく、他の形態のプリンタであってもよい。
【0041】
除湿通路34は、真っ直ぐな通路であってもよく、曲がった通路であってもよい。除湿通路34が延びる方向は左方または右方に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 インクジェットプリンタ
5 記録媒体
16 インクヘッド
17 プラテン
19 エプロン
20 乾燥装置
21 吸入口
22 排出口
23 ケーシング
24 ヒータ(加熱体)
25 ファン
30 除湿部材
32 冷却フィン
33 放熱フィン
34 除湿通路
40 ドレン受け