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特開2023-117134ディザマトリクスの生成方法、ディザマトリクス生成装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117134
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ディザマトリクスの生成方法、ディザマトリクス生成装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20230816BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H04N1/405 510
B41J2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019676
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 紘誠
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慶成
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰仁
【テーマコード(参考)】
2C262
5C077
【Fターム(参考)】
2C262AA02
2C262AA24
2C262BB06
2C262GA29
5C077LL19
5C077MP08
5C077NN08
5C077PQ08
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】 画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成する。
【解決手段】 ディザマトリクスの生成方法は、生成しようとする複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数のシフト量を取得するステップS2bと、取得されたシフト量の中から、生成しようとする複数枚のディザマトリクスの数と同数のシフト量の組を選択し、選択された各シフト量に基づくシフト処理を実施して、選択されたシフト量の数と同数のシフトされたディザマトリクスを作成し、その作成されたディザマトリクスに基準ディザマトリクスを加えてディザマトリクス群とし、必要な数のディザマトリクス群を取得するステップS2cと、粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出し、悪化の程度が最小のディザマトリクス群を選択してディザマトリクスを生成するステップS2d、S2eとを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準ディザマトリクスの閾値を、第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向の少なくとも1つの方向にシフトすることで、複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクスの生成方法であって、
生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数のシフト量を取得するステップと、
取得されたシフト量の中から、前記生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と同数のシフト量の組を選択し、選択された各シフト量に基づくシフト処理を実施することで、前記選択されたシフト量の数と同数のシフトされたディザマトリクスを作成すると共に、その作成されたディザマトリクスに前記基準ディザマトリクスを加えてディザマトリクス群とし、以降、前記シフト量の組を更新し、その更新毎に、前記ディザマトリクス群を更新する、という処理を繰り返し実施することで、必要な数の、ディザマトリクス群を取得するステップと、
前記取得されたディザマトリクス群の各々について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出し、前記粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択し、これによって前記複数枚のディザマトリクスを生成するステップと、
を有する、ディザマトリクスの生成方法。
【請求項2】
前記基準ディザマトリクスの閾値のうち、所定濃度よりも低い濃度を示す閾値の数値を用いて前記評価値を算出する、
請求項1に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項3】
前記シフト量を取得するステップにおいて、
シフト量の候補と、すでに採用されたシフト量との類似度を判定し、類似度が高いものを排除し、類似度が低いものを採用する、
請求項1又は2に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項4】
前記評価値は、
前記ディザマトリクス群を構成する各ディザマトリクスにおける同一の画素の閾値を合算して画素毎の合算値を求め、
各画素の合算値を変数xとし、y=ax(aは1以上の整数、nは2以上の整数)で表される関数を用いてyの値を求め、
前記yの値を、全画素について合計し、その合計値をディザマトリクス群の評価値とする、
ことにより算出される、
請求項1乃至3に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項5】
前記粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択するに際して、
前記ディザマトリクス群の各々の評価値のうちで、最も粒状性が悪化する程度が小さい評価値を特定すると共に、
さらに、
算出済みの評価値の数が所定数以上、又はその所定数を超えており、
かつ、
前記特定された評価値が、算出済みの評価値について統計処理を施して得られる指標値が示す粒状性が悪化する程度以下である、又はその程度未満である、
ことを条件とし、
その条件が満たされる場合に、前記特定された評価値に対応するディザマトリクス群を選択し、
その条件が満たされない場合は、その条件が満たされるまで、ディザマトリクス群を更新して評価値の算出を繰り返し実施する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項6】
生成された前記複数枚のディザマトリクスに優先順位を付与するステップを、さらに有する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項7】
前記優先順位を付与するステップにおいては、
所定枚数のディザマトリクスのうちから、前記所定枚数よりも1だけ小さい数のディザマトリクスを選ぶすべての組み合わせについて前記評価値を算出し、最も粒状性が悪化する程度の小さい評価値となるディザマトリクスの組み合わせを特定し、その特定された組に入らなかった1つのディザマトリクスを最下位とし、必要に応じて、前記所定枚数を、その数を1だけ減じる方向に更新して同様の処理を繰り返し、各処理毎に最下位を決定することによって、ディザマトリクスの優先順位を特定する処理、
及び、
優先順位が特定されている2枚以上のディザマトリクスに、優先順位が未特定の複数のディザマトリクスのうちから選ばれた1枚を追加してディザマトリクスの組を作成し、そのディザマトリクスの組について前記評価値を算出し、以下、同様の処理を繰り返し、前記追加する1枚を更新して得られるすべてのディザマトリクスの組の中から、最も粒状性が悪化する程度の小さい評価値となる組を特定し、その特定されたディザマトリクスの組に含まれる、前記追加された1枚のディザマトリクスに、既に特定されている優先順位の次の順位を付与し、必要に応じて同様の処理を繰り返すことによって、ディザマトリクスの優先順位を特定する処理、
の少なくとも一方が実施される、
請求項6に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項8】
予め複数のインクの各々に優先順位を付与しておき、優先順位が同位であるディザマトリクスとインクとを対応付けるステップを、さらに有する、
請求項6又は7に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項9】
黒色の色材を含むインクは、最も高い優先順位のディザマトリクスに対応付けする、
請求項8に記載のディザマトリクスの生成方法。
【請求項10】
基準ディザマトリクスの閾値を、第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向の少なくとも1つの方向にシフトすることで、複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクス生成装置であって、
生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数のシフト量を決定するシフト量取得部と、
取得されたシフト量の中から、前記生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と同数のシフト量の組を選択し、選択された各シフト量に基づくシフト処理を実施することで、前記選択されたシフト量の数と同数のシフトされたディザマトリクスを作成すると共に、その作成されたディザマトリクスに前記基準ディザマトリクスを加えてディザマトリクス群とし、以降、前記シフト量の組を更新し、その更新毎に、前記ディザマトリクス群を更新する、という処理を繰り返し実施することで、必要な数の、ディザマトリクス群を作成するディザマトリクス群作成部と、
前記作成されたディザマトリクス群の各々について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出し、前記粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択し、これによって前記複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクス生成部と、
を有する、ディザマトリクス生成装置。
【請求項11】
コンピュータを、請求項10に記載のシフト量取得部、ディザマトリクス群作成部、及びディザマトリクス生成部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディアマトリクス生成方法、ディザマトリクス生成装置、及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
ディザマトリクスの生成方法については、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1の[0007]には、ディザマトリクスの生成方法に関して、「確立された手法が見出しにくいため、基本的には熟練者の経験や勘にたよっている旨」の記載がある。
【0004】
特許文献1の[0009]には、「ディザマトリクスのシフト方向およびシフト量を示すマトリクスシフトベクトルを用いてマトリクスの要素を求める旨」の記載がある。
【0005】
特許文献2では、例えば、[0027]において、「複数色のインク毎に仮ディザマトリクスが取得され、その仮ディザマトリクスは、基準ディザマトリクスをX方向およびY方向に所定のシフト量だけシフトすることによって得られ、そして、インク毎のシフト量は、乱数によって生成される旨」が記載されている。
【0006】
また、特許文献2の[0029]、[0030]には、「各仮ディザマトリクスを用いて、入力画像データを仮出力画像データに変換し、例えば500個の仮出力画像データを得る旨」が記載されている。
【0007】
また、特許文献2の[0030]には、「各仮出力画像データに基づいて、評価値Eが算出されることが記載されている。また、[0044]には、評価値に関して、「n種類のインクを用いたときの2値画像の粒状性gs(n)をn種類のインクを用いたときのインクドットの発生率c(n)で除したときの値と、m種類のインクを用いたときの2値画像の粒状性gs(m)をm種類のインクを用いたときのインクドットの発生率c(m)で除したときの値との合計値である評価値E(E=gs(n)/c(n)+gs(m)/c(m))という新たな概念を導入し、機械学習の一態様である強化学習によって評価値Eを評価することで、最適化されたシフト量、即ちディザマトリクスを得ることができる旨」が記載されている。
【0008】
また、特許文献2の[0031]、[0032]には、「2値化画像の粒状性gs(n)は、ウイナー・スペクトルと平均濃度の測定値より予測するショーとドーリー(Shaw&Dooley)のアルゴリズムを用いて算出される旨」が記載されている。
【0009】
また、特許文献2の[0034]には、「インクドットの発生率c(n)は、n種類のインクがそれぞれ重なることなく着弾したときのドット数(即ち理想のドット数)をa(n)とし、n種類のインクに対して各仮ディザマトリクスを用いたディザ法によって着弾位置をシフトさせたときのドット数(即ち実際に発生するドット数)をb(n)としたとき、c(n)=b(n)/a(n)で表される旨」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4057515号公報
【特許文献2】特開2019-14167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、ディザマトリクスの生成は、基本的には人の経験によることが大きい点、及び、ディザマトリクスのシフトにマトリクスシフトベクトルを使用できる点を示しているのみである。
【0012】
特許文献2には、「乱数によってシフト量を決め、基準ディザマトリクスのシフトによって仮ディザマトリクスを取得し、実際に画像データを2値化して仮出力画像データを取得し、機械学習の一態様である強化学習によって評価値を算出してディザマトリクスを決める点」が記載されている。
【0013】
但し、例えば、実際に画像の2値化処理を実施するため、手続きが複雑化する点、あるいは、評価値の算出に際しては、かなり複雑な処理が必要である点は否めない。
【0014】
また、使用するインクの色が増えれば、ディザマトリクスの生成処理が複雑化する。
【0015】
また、ディザマトリクスを用いて得られた2値画像では、例えば、インクの濃度値(インク値)が低い領域で、粒状性の悪化が目立ち易いのであるが、特許文献2では、この低濃度域における粒状性の悪化を効果的に低減する方法については言及がない。
【0016】
本発明の1つの目的は、例えば、画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成できるディザマトリクスの生成方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0019】
本発明に従う態様において、ディザマトリクスの生成方法は、基準ディザマトリクスの閾値を、第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向の少なくとも1つの方向にシフトすることで、複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクスの生成方法であって、生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数のシフト量を取得するステップと、取得されたシフト量の中から、前記生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と同数のシフト量の組を選択し、選択された各シフト量に基づくシフト処理を実施することで、前記選択されたシフト量の数と同数のシフトされたディザマトリクスを作成すると共に、その作成されたディザマトリクスに前記基準ディザマトリクスを加えてディザマトリクス群とし、以降、前記シフト量の組を更新し、その更新毎に、前記ディザマトリクス群を更新する、という処理を繰り返し実施することで、必要な数の、ディザマトリクス群を取得するステップと、前記取得されたディザマトリクス群の各々について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出し、前記粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択し、これによって前記複数枚のディザマトリクスを生成するステップと、を有する。
【0020】
本態様では、閾値変換処理によって、基準ディザマトリクスに含まれる、所定値以上の閾値の数値を0とすることで、低濃度のドットの形成に関係する、数値が小さい閾値のみを残し、それ以外の閾値は無効化する。閾値が「0」であることは通常はあり得ないが、ここでは、強制的に「0」に置換することで、評価値の算出に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0021】
例えば、所定値を4とすると、基準ディザマトリクスに含まれる閾値は、「0」、「1」、「2」、「3」のみとなり、閾値は大幅に簡素化され、取り扱いが容易化される。また、粒状性が目立ち易い(言い換えれば、粒状性が悪化し易い)低濃度のドットに着目して評価値を算出できる等の利点が生じる。
【0022】
なお、薄い色の画像の印刷の際には、どの色のインクも打ち込まれておらずメディアの白色等が露出している画素が多い状態となる。この状態で、例えば、色の異なるドットが近接配置されたり重なったりすると、粒状性が悪化して画像品質が低下し易い。したがって、低濃度のドットの形成(薄い色の画像の印刷に対応する)に着目して、ドットの近接配置や重なりを回避できれば、粒状性を効果的に改善することができる。この観点からも、上記の、数値が小さい閾値にのみ着目して評価値を算出する手法は有効である。
【0023】
また、画像データのインク値が閾値よりも大きい場合にドットが打たれるとすると、例えば、閾値が「0」のときは、ドットが形成される場合の最小のインク値は「1」であり、閾値が「1」のときは、ドットが形成される場合の最小のインク値は「2」である。言い換えれば、打たれるドットの最小のインク値は、閾値に対応して一義的に定まるのであり、この点を考慮すれば、閾値自体に着目して評価値の算出が可能である。
【0024】
先に示した引用文献2のように、ディザを用いて仮出力画像データを得るといった手間は不要であるため、ディザマトリクスの生成に関する手間を大幅に省くことができる。
【0025】
次に、例えば複数のシフト量を発生させ、その中から、必要な数のシフト量を選択し、閾値変換後の基準ディザマトリクスを、選択された各シフト量に応じてシフトさせる。
【0026】
例えば、シフト量が異なる3枚のディザマトリクス(シフトディザマトリクス)を得たとすると、基準ディザマトリクスと合わせて合計で4枚のディザマトリクス群が作成される。シフト量を更新して同様の処理を実施することで、必要な数の(複数の)、ディザマトリクス群が作成される。
【0027】
次に、各ディザマトリクス群について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出する。そして、粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択する。その選択されたディザマトリクス群に含まれるシフトされたディザマトリクスが、求めるディザマトリクスである。
【0028】
このように、本態様では、基準ディザマトリクスの閾値のうちの、数値の小さい閾値のみに着目して、一般的な演算(加算や乗算等)の繰り返しによって評価値を求めることができ、特に複雑なアルゴリズムは不要である。
【0029】
例えば、先に示した特許文献2のように、複数のインクを用いたときの2値画像の粒状性やインクドットの発生率に基づいて、機械学習の一態様である強化学習によって評価値を算出するといった、複雑なデータ処理は必要ない。
【0030】
よって、本態様によれば、例えば、画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成できるディザマトリクスの生成方法を実現することができる。
【0031】
また、本態様では、評価値による客観的な評価によって、粒状性が目立たない画像を形成可能なディザマトリクス群を選ぶことができ、このことは、熟練の作業者の経験等に頼らず、ディザマトリクス生成を自動化する点でも有効である。
【0032】
また、本発明に従う態様において、ディザマトリクス生成装置は、基準ディザマトリクスの閾値を、第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向の少なくとも1つの方向にシフトすることで、複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクス生成装置であって、生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数のシフト量を決定するシフト量取得部と、取得されたシフト量の中から、前記生成しようとする前記複数枚のディザマトリクスの数と同数のシフト量の組を選択し、選択された各シフト量に基づくシフト処理を実施することで、前記選択されたシフト量の数と同数のシフトされたディザマトリクスを作成すると共に、その作成されたディザマトリクスに前記基準ディザマトリクスを加えてディザマトリクス群とし、以降、前記シフト量の組を更新し、その更新毎に、前記ディザマトリクス群を更新する、という処理を繰り返し実施することで、必要な数の、ディザマトリクス群を作成するディザマトリクス群作成部と、前記作成されたディザマトリクス群の各々について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出し、前記粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択し、これによって前記複数枚のディザマトリクスを生成するディザマトリクス生成部と、を有する。
【0033】
本態様によれば、画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成できるディザマトリクス生成装置を提供することができる。
【0034】
また、本発明に従う態様において、プログラムは、コンピュータを、シフト量取得部、ディザマトリクス群作成部、及びディザマトリクス生成部として機能させる。
【0035】
本態様によれば、ソフトプログラム(コンピュータプログラム)により、ディザマトリクス生成に必要な各部の機能を実現することで、例えば、ディザマトリクス生成装置の構成が簡素化され、また、データ処理部の実現が容易化される。
【0036】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1(A)は、ディザマトリクス生成装置(画像処理装置)の構成例を示す図、図1(B)は、ディザマトリクス群生成部の構成例を示す図、図1(C)は、インクジェットプリンタ(印刷装置)の要部の構成例を示す図である。
図2図2は、本発明の好ましい実施形態によるディザマトリクスの生成手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図2におけるディザマトリクス群の選択処理(ステップS2)の具体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4(A)は、基準ディザマトリクスの一例を示す図、図4(B)は、閾値変換処理の具体例を示す図、図4(C)は、閾値のシフト、及びシフト量の表記について説明するための図、図4(D)は、好ましいシフト量(選択されるシフト量)と、好ましくないシフト量(選択されないシフト量)との相違を示す図、図4(E)は、各シフト量に対応する出力画像の粒状性の相違を示す図である。
図5図5(A)は、基準ディザマトリクスの一例を示す図、図5(B)~図5(D)は、基準ディザマトリクスをシフトして得られるディザマトリクス(シフトディザマトリクス)の一例を示す図である。
図6図6は、評価値を用いたディザマトリクス群の生成処理について、より具体的に示す図である。
図7図7は、評価値の算出に用いられる統計値(統計情報)について説明するための図である。
図8図8は、ディザマトリクスの順位付けの手順例(優先度の高い順位数を決定する場合の手順例)を示すフローチャートである。
図9図9は、優先順位の高いディザマトリクスの組み合わせの決定処理の具体例を示す図である。
図10図10は、ディザマトリクスの順位付け処理の手順を具体的に示す図である。
図11図11は、ディザマトリクスの順位付けの手順例(図8に続く手順)を示すフローチャートである。
図12図12は、図11に示されるディザマトリクスの順位付け処理の具体例を示す図である。
図13図13は、インクの順位付け処理、及びインクとディザマトリクスとを対応付ける処理の手順例を示すフローチャートである。
図14図14は、ディザ法による画像出力の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0039】
図1を参照する。図1(A)は、ディザマトリクス生成装置(画像処理装置)の構成例を示す図、図1(B)は、ディザマトリクス群生成部の構成例を示す図、図1(C)は、インクジェットプリンタ(印刷装置)の要部の構成例を示す図である。
【0040】
図1(A)に示されるように、ディザマトリクス生成装置(画像処理装置)100は、データ処理部102と、制御部(プロセッサ)110と、記憶部(メモリ)120とを有する。
【0041】
データ処理部102は、基準ディザマトリクス生成部10と、ディザマトリクス生成部12と、インクとディザマトリクスとの対応付け処理部30と、記憶部(メモリ)40と、を有する。
【0042】
基準ディザマトリクス生成部10は、例えば、ボイドアンドクラスタ(Void&Cluster)法により、基準ディザマトリクスを生成する。
【0043】
また、ディザマトリクス生成部12は、ディザマトリクス群生成部20と、ディザマトリクスの順位付け処理部28と、を有する。
【0044】
生成された、インク(色が異なる複数のインクの各々)に対応付けられた複数枚のディザマトリクスのデータは、記憶部40に記憶される。なお、このデータは、例えば、図1(C)に示されるインクジェットプリンタ(印刷装置)200における、入力画像処理装置210の記憶部214にロードされて使用される。
【0045】
また、図1(A)における制御部110に接続される記憶部120には、コンピュータを、上記の基準ディザマトリクス生成部10、ディザマトリクス生成部12(ディザマトリクス群生成部20、ディザマトリクスの順位付け処理部28を含む)、及びインクとディザマトリクスとの対応付け処理部30として機能させるプログラムPRGが搭載されている。言い換えれば、プログラムは、コンピュータを、データ処理部102として機能させるプログラムである。
【0046】
ソフトプログラム(コンピュータプログラム)により、ディザマトリクス生成に必要な各部の機能を実現することで、ディザマトリクス生成装置100の構成が簡素化され、また、データ処理部102の実現が容易化される。
【0047】
図1(B)に示されるように、ディザマトリクス群生成部20は、閾値変換部21と、シフト量取得部22と、シフト処理部23と、ディザマトリクス群作成部(ディザマトリクスの組の作成部)24と、ディザマトリクス群の評価値算出部25と、統計値算出部26と、ディザマトリクス群選択部27と、を有する。各部の機能については、後述する。
【0048】
図1(C)に示されるインクジェットプリンタ(印刷装置)200は、入力画像処理装置210と、印刷エンジン220を有する。入力画像処理装置210は、ディザマトリクスを用いたスクリーニング処理部212と、記憶部214を有する。印刷エンジン220は、ヘッドコントローラ222と、印刷ヘッド224を有する。
【0049】
インク(色が異なる複数のインクの各々)に対応付けられた複数枚のディザマトリクスのデータは、入力画像処理装置210の記憶部214に予めロード(記憶)されている。
【0050】
入力された画像データはインクの色毎に分解される。各色の画像データは、その色に対応するディザマトリクスによってスクリーニングされる。
【0051】
そのスクリーニングによって得られた出力データは、印刷エンジン220のヘッドコントローラ222に転送され、そのデータに基づいて印刷ヘッド224が駆動されて、メディア(不図示)に画像が印刷される。
【0052】
次に、図2を参照する。本発明の好ましい実施形態によるディザマトリクスの生成手順の一例を示すフローチャートである。
【0053】
ステップS1では、基準ディザマトリクスが生成される。ステップS2では、作成した複数のディザマトリクスの中から、評価値が最小のものを選択する処理が実施される。
【0054】
このステップS2は、例えば、ステップS2a~S2eを含んでもよい。まず、ステップS2aにおいて、閾値変換を実施する。閾値変換処理は、例えば、基準ディザマトリクスに含まれる一部の閾値の数値を、他の数値(例えば「0」)に変換する処理である。詳細については後述する。
【0055】
ステップS2bでは、シフト量決定処理を実施する。ステップS2bは、ステップS2b1、S2b2を含んでもよい。ステップS2b1では、シフト量を、例えば乱数にて発生させる。ステップS2b2では、発生させたシフト量の中から、適切なものを選択する。互いに類似するシフト量を採用すると、ドットの重なりの原因となることから、できるだけ非類似のシフト量を採用する。詳細については後述する。
【0056】
ステップS2cでは、基準ディザマトリクスをシフトし、シフトされたディザマトリクスに基準ディザマトリクスを追加して、ディザマトリクス群を作成する。
【0057】
ステップS2dでは、生成されたディザマトリクス群の評価値を算出し、併せて統計値を算出する。
【0058】
ステップS2eでは、最小の評価値を選択すると共に、その評価値が、統計値に基づく所定の条件を満たすかを判定し、満たしていれば評価値を採用し、満たしていない場合は、条件を満たすまで評価値算出処理を続行する。そして、採用された評価値に対応するディザマトリクス群を選択する。所定の条件の内容については後述する。
【0059】
ステップS3では、ディザマトリクスの順位付け処理が実施される。ステップS3は、ステップS3a及びステップS3bの少なくとも一方を含んでもよい。
【0060】
ステップS3aでは、所定枚数のディザマトリクスのうちから、所定枚数よりも1だけ小さい数のディザマトリクスを選ぶすべての組み合わせについて評価値を算出し、評価値が最小のディザマトリクスの組み合わせを特定し、その特定された組に入らなかった1つのディザマトリクスを最下位とする処理が実施される。詳細は後述する。
【0061】
ステップS3bでは、優先順位が特定されている2枚以上のディザマトリクスに、優先順位が未特定の複数のディザマトリクスのうちから選ばれた1枚を追加してディザマトリクスの組を作成し、評価値が最小の組を特定し、特定されたディザマトリクスの組に含まれる、追加された1枚のディザマトリクスに、既に特定されている優先順位の次の順位を付与する処理が実施される。詳細は後述する。
【0062】
ステップS4は、ディザマトリクスとインクとの対応付け処理が実施される。ステップS4は、例えば、ステップS4a、S4bを含んでもよい。
【0063】
ステップS4aでは、インクの順位を決定する処理が実施される。ステップS4bでは、各ディザマトリクスと各インクとを対応付ける処理が実施される。詳細は後述する。
【0064】
次に、図3を参照する。図3は、図2におけるディザマトリクス群の選択処理(ステップS2)の具体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS2-1では、基準ディザマトリクスの閾値変換処理が実施される。その内容については後述する。この処理は、図1(B)の閾値変換部21が実施する。
【0066】
変数iの値は初期状態では1であり、この状態で、ステップS2-2に移行する。ステップS2-2では、シフト量を、例えば乱数を用いてランダムに算出する。
【0067】
ステップS2-3では、シフト量が、既に採用されたシフト量のすべてと非類似であるか否かが判定される。判定方法については後述する。ステップS2-3にて、Nの場合は、ステップS2-2に戻り、Yの場合は、ステップS2-4に移行する。ステップS2-4では、そのシフト量を採用(決定)し、採用(決定)したシフト量を記憶する。
【0068】
ステップS2-5では、採用されたシフト量のパターン数が、c-1(c:必要なシフトディザマトリクスの枚数)に到達したか否かが判定される。Nの場合は、ステップS2-2に戻り、Yの場合は、ステップS2-6に移行する。ステップS2-2~S2-5は、図1(B)のシフト量取得部22が実施する。
【0069】
ステップS2-6では、閾値変換処理後の基準ディザマトリクス、及び採用された(C-1)個の各シフト量に対応するシフト後のディザマトリクス群で構成される一組のディザマトリクス群(ディザマトリクスの組)Miを作成する。この処理は、図1(B)のディザマトリクス群作成部24が実施する。
【0070】
ステップS2-7では、ステップS2-6で作成されたディザマトリクス群Miについて、評価値Eiを算出する。評価値は、基準ディザマトリクスと、シフトされたディザマトリクスとの類似性を判定する指標ということができる。評価値の生成方法については後述する。この処理は、図1(B)の評価値算出部25が実施する。
【0071】
ステップS2-8では、評価値E1~Eiに基づいて、統計値(例えば平均μと標準偏差σ)を算出する。この処理は、図1(B)の統計値算出部26が実施する。
【0072】
ステップS2-9では、ディザマトリクス群M1~Miのうち、評価値が最小であるディザマトリクス群Dを特定する。但し、評価値が最小である、との判定は、複数の評価値を比較することによる相対的な判定であり、信頼度の点ではやや不足する場合もあるため、この段階では、ディザマトリクス群の選択(採用)には至らない。
【0073】
ステップS2-10では、iの値が基準値(例えば予め定められている)を超えたか否かが判定され、かつ、特定されたディザマトリクス群Dが、ステップS2-8で取得された統計値に基づく条件を満たすか否かが判定される。その条件の具体例については後述する。
【0074】
統計値に基づく条件を満たせば、ステップS2-9にて特定されたディザマトリクス群Dが、採用するに足る信頼性を有することが担保される。よって、ステップS2-10にてYの場合は、ステップS2-12に移行し、所定条件を満たすc枚のディザマトリクス群Dを、決定ディザマトリクス群Fとして選択(採用)する。Nの場合は、ステップS2-11にて、iの値を1だけインクリメントし、ステップS2-2に戻る。ステップS2-9~S2-12の処理は、図1(B)のディザマトリクス群選択部27が実施する。
【0075】
次に、図4を参照する。図4(A)は、基準ディザマトリクスの一例を示す図、図4(B)は、閾値変換処理の具体例を示す図、図4(C)は、閾値のシフト、及びシフト量の表記について説明するための図、図4(D)は、好ましいシフト量(選択されるシフト量)と、好ましくないシフト量(選択されないシフト量)との相違を示す図、図4(E)は、各シフト量に対応する出力画像の粒状性の相違を示す図である。
【0076】
図4(A)に示されるように、基準ディザマトリクスDM10は、横方向(第1方向)にm個(mは2以上の自然数)の画素が配置され、縦方向(第2方向)にn個(nは2以上の自然数)の画素が配置された構成を有する。図4(A)の例では、m=4、n=3に設定され、3行4列のディザマトリクスが構成されている。各画素には、閾値を示す数値が記載されている。
【0077】
以下の説明では、「横方向」は、「第1方向」あるいは「左右方向」と称する場合がある。また、「縦方向」は、「第2方向」と記載する場合があり、また、「上下方向」と称する場合がある。
【0078】
なお、ディザマトリクスは、画像を、例えば2値化する機能を有する。ここで、図14を参照する。図14は、ディザ法による画像出力の一例を示す図である。
【0079】
図14の例では、入力画像500の階調値(濃度値)とディザマトリクスDMの閾値とが比較され、「階調値(インク値)≧閾値」の場合にドットを打つ(黒の箇所)と判定され、そうでない場合はドットを打たない(白の箇所)と判定される。ただし、閾値の大小の表す意味や判定式は任意に設定できるため、これに限定されない。本実施形態では、「階調値(インク値)>閾値」の場合にドットを打つ(黒の箇所)と判定され、そうでない場合はドットを打たない(白の箇所)と判定する。すなわち、閾値が大きいほど、濃度が高いことを示し、閾値が小さいほど、濃度が低いことを示す。
【0080】
図4に戻って説明を続ける。図4(A)の基準ディザマトリクスDM10に、閾値変換処理が施される。図4(B)は、閾値変換後の基準ディザマトリクスDM20を示している。ここで、閾値変換処理は、基準ディザマトリクスに含まれる、所定値以上の閾値の数値を、強制的に「0」とする処理である。
【0081】
図4(B)は、所定値を「4」とした場合の変換例である。所定値(ここでは4)以上の閾値の数値を0とすることで、低濃度のドットの形成に関係する、数値が小さい閾値のみを残し、それ以外の閾値は無効化することができる。すなわち、所定濃度以上の高い濃度を示す閾値の数値を無効化し、所定濃度よりも低い濃度を示す閾値の数値のみを用いて評価値を算出する。閾値が「0」である画素が複数存在することは通常はあり得ないが、ここでは、強制的に「0」に置換することで、評価値の算出に影響を及ぼさないようにすることができる。
基準ディザマトリクスの閾値のうち、所定濃度よりも低い濃度を示す閾値の数値を用いて評価値を算出することにより、「閾値が小さいほど、濃度が低い」と設定されている場合、及び、「閾値が大きいほど、濃度が低い」と設定されている場合のいずれにも対応することができる。
【0082】
図4(B)からわかるように、閾値変換後の基準ディザマトリクスDM20に含まれる閾値は、「0」、「1」、「2」、「3」のみとなり、閾値は大幅に簡素化され、取り扱いが容易化される。また、粒状性が目立ち易い(言い換えれば、粒状性が悪化し易い)低濃度のドットに着目して評価値を算出できる等の利点が生じる。
【0083】
なお、薄い色の画像の印刷の際には、どの色のインクも打ち込まれておらずメディアの白色等が露出している画素が多い状態となる。この状態で、色の異なるドットが近接配置されたり重なったりすると、粒状性が悪化して画像品質が低下し易い。したがって、低濃度のドットの形成(薄い色の画像の印刷に対応する)に着目して、ドットの近接配置や重なりを回避できれば、粒状性を効果的に改善することができる。この観点からも、上記の、数値が小さい閾値にのみ着目して評価値を算出する手法は有効である。
【0084】
また、画像データのインク値が閾値よりも大きいの場合にドットが打たれるとすると、例えば、閾値が「0」のときは、ドットが形成される場合の最小のインク値は「1」であり、閾値が「1」のときは、ドットが形成される場合の最小のインク値は「2」である。言い換えれば、打たれるドットの最小のインク値は、閾値に対応して一義的に定まるのであり、この点を考慮すれば、閾値自体に着目して評価値の算出が可能である。
【0085】
先に示した引用文献2のように、ディザを用いて仮出力画像データを得るといった手間は不要であるため、ディザマトリクスの生成に関する手間を大幅に省くことができる。
【0086】
図4(B)の閾値変換後の基準ディザマトリクスDM20の閾値を、横方向(第1方向)、及び縦方向(第2方向、又は上下方向)の少なくとも一方の方向に、画素単位でシフトさせるシフト処理が実施される。横方向のシフト量をaとし、縦方向のシフト量をbとする。ここで、aは、0≦a≦mを満たす自然数、bは、0≦b≦nを満たす自然数である。また、取得するシフト量の数は、生成しようとする複数枚のディザマトリクスの数と少なくとも同数である。言い換えれば、取得されるシフト量の数は、生成しようとする複数枚のディザマトリクスの数と同じ、あるいはそれよりも多い。
【0087】
また、上記a、及び上記bのシフトを行う場合のシフト量を、(a、b)と表記する。また、例えば、ある閾値を横方向(右方向)にシフトするとき、その閾値がマトリクスの右端に位置するときは、その行の左端に戻って閾値が移動される。言い換えれば、横方向に関して、循環的なシフトが実施される。また、ある閾値を縦方向(下方向)にシフトするとき、その閾値がマトリクスの下端に位置するときは、その列の上端に戻って閾値が移動される。言い換えれば、縦方向に関しても、循環的なシフトが実施される。
【0088】
a、bは、例えば、乱数関数を用いてランダムに算出(発生)することができる。但し、算出されたシフト量を無条件に採用することはできない。類似するシフト量を採用すると、異なる色のドットが極めて近接して配置されたり、ドットが重なったりする場合があり得る。よって、すでに算出されたシフト量に類似するシフト量は、不採用(非選択)とする。言い換えれば、シフト量の選択が実施される。
【0089】
シフト量の選択の方法が、図4(D)に示されている。基準ディザマトリクスDM10に、例えばシフト量(2、1)のシフトを施す場合、そのシフト処理は、基準ディザマトリクスDM10を、図4(D)のD-1に示されるように、右方向に2画素分移動し、下方向に1画素分移動する処理として表記することができる。言い換えれば、シフト処理は、基準ディザマトリクスの位置を、その基準ディザマトリクス自身に対して相対的に移動させる処理として表現可能である。
【0090】
図4(D)のD-1の例では、(2、1)の移動によって、シフトされたディザマトリクス(以下の説明では、シフトディザマトリクスと称する場合がある)DM30が得られる。元の基準ディザマトリクスDM10と、シフトされたディザマトリクスDM30の各々の左上の隅に、点O、点O’を設定する場合、D-1の例では、点O’は、点Oを中心とする半径rの円の外にある。言い換えれば、点Oと点O’との距離は、基準値rより大きい。この場合は、シフト量(2、1)は、類似度が低いと判定可能であり、よって、選択(採用)され得る。点Oと点O’との距離が基準値rと同じであった場合は、類似度が低いと判定し、選択してもよい。このように、シフト量の類似度は、各ディザマトリクスの同じ位置に設定される仮想的な点の間の距離と、所定の基準値との比較によって判定可能である。
【0091】
一方、図4(D)のD-2の例では、シフト量は(1、0)であり、このシフトによって、シフトディザマトリクスDM40が得られる。この場合、点O’は、点Oを中心とする半径rの円の内側にある。言い換えれば、点Oと点O’との距離は、基準値rより小さい。よって、シフト量(1、0)は類似度が高いと判定され、非選択(不採用)となる。
【0092】
図4(E)のE-1に示される基準ディザマトリクスDM10(図中、基準DMと記載されている)と、E-2に示される不採用のシフトディザマトリクスDM40とを用いてディザ法による出力画像を得た場合を想定すると、E-4に示すように、異なる色のドットが、近接して配置される可能性が高い。低濃度の画像領域で、このようなドットの近接配置が生じると、これが粒状性を悪化させる原因となり得る。
【0093】
一方、E-1に示される基準ディザマトリクスDM10と、E-3に示される採用されたシフトディザマトリクスDM30とを用いてディザ法による出力画像を得た場合を想定すると、E-5に示すように、異なる色のドットは、互いに、かなり離れた位置に配置されており、特に問題は生じない。
【0094】
図4(D)と(E)では、基準ディザマトリクスDM10とシフトディザマトリクスとで、シフト量の類似度を判定することを説明したが、複数のシフトディザマトリクスを生成する場合は、既に採用されたシフトディザマトリクスと新たに算出されたシフトディザマトリクスとで、シフト量の類似度も同様に判定する。図4(D)と(E)における基準ディザマトリクスDM10を既に採用されたシフトディザマトリクスに置き換え、シフトされたディザマトリクスDM30、DM40を新たに算出されたシフトディザマトリクスに置き換えればよい。上記の判定により、互いに類似度の低い、基準ディザマトリクスと1つまたは複数のシフトディザマトリクスとの組を採用することができる。
【0095】
次に、図5を参照する。図5(A)は、基準ディザマトリクスの一例を示す図、図5(B)~図5(D)は、基準ディザマトリクスをシフトして得られるディザマトリクス(シフトディザマトリクス)の一例を示す図である。
【0096】
図5(A)に示される、閾値変換後の基準ディザマトリクスDM20に、(2、1)、(1、1)、(1、2)のシフトを施すことによって、図5(B)~図5(D)に示されるシフトディザマトリクスDM50、DM60、DM70が得られる。シフト量を異ならせて、基準ディザマトリクスDM20のシフトを繰り返せば、必要な数のシフトディザマトリクスを作成することができる。
【0097】
図5の例では、シフト量が異なる3枚のディザマトリクス(シフトディザマトリクス)DM50~DM70が作成され、この3枚に基準ディザマトリクスDM20を加えて、合計で4枚のディザマトリクス群が作成される。この処理は、図1(B)のディザマトリクス群作成部24が実施する。
【0098】
図5に示すシフトディザマトリクスDM50~DM70は、図4(D)で説明した手法に基づくと、本来であれば採用されない(シフト量の類似度が高い)ディザマトリクスであるが、説明の便宜上、以降、シフトディザマトリクスDM50~DM70は図4(D)で説明した手法で採用されたディザマトリクスであるとする。
【0099】
次に、図6を参照する。図6は、評価値を用いたディザマトリクス群の生成処理について、より具体的に示す図である。
【0100】
図6のA-1~A-7は、評価値の算出過程を示している。A-1~A-4に示されるディザマトリクスDM20~DM70は、先に説明したディザマトリクスと同じである。このディザマトリクス群に含まれる3枚のシフトディザマトリクスDM50~DM70は、図4(D)で説明した手法で選択されたシフト量を用いてシフトされているため、粒状性の悪化を抑制する一応の効果をもつ。但し、十分な効果とはいえない。
【0101】
そこで、本実施形態では、さらに評価値による評価を行って、好ましくないディザマトリクス群を不採用とする。
【0102】
言い換えれば、各ディザマトリクス群について、ディザ法によって出力画像を得た場合における粒状性が悪化する程度を示す評価値を算出する。そして、粒状性が悪化する程度が最小のディザマトリクス群を選択する。その選択されたディザマトリクスに含まれるシフトされたディザマトリクスが、求めるディザマトリクスである。
【0103】
以下、具体的に説明する。図6のA-5では、A-1~A-4に示される各ディザマトリクスDM20~DM70における、同じ位置の画素の閾値を合算(加算)する。例えば、各ディザマトリクスにおける左上の隅の画素に着目すると、「0+3+0+0=3」となる。この合計値が、評価値の基礎となる数値である。
【0104】
例えば、説明の便宜上、2枚のディザマトリクスを想定し、例えば、1枚のディザマトリクスの、ある画素の閾値が「1」であったとする。他の1枚のディザマトリクスにおける、上記の画素と同じ位置にある画素(これを「同じ画素」と称する)の閾値は、閾値変換がされていることから、「0」、「1」、「2」、「3」のいずれかである。
【0105】
2枚のディザマトリクスにおける同じ画素の閾値の組み合わせは、「1と0」、「1と1」、「1と2」、「1と3」の何れかであるが、このとき、ディザ法による出力画像の粒状性が悪化する程度に、どのような差が生じるかについて検討する。
【0106】
閾値が「0」であるということは、閾値変換前に閾値が「0」であった場合を除いて、その画素は、閾値変換において、低濃度のドット形成に関係しないと判定されたということである。よって、「1と0」の組み合わせにおける「0」は、他方のディザマトリクスの閾値「1」による低濃度のドット形成に対する影響が小さいと判定し得る。
【0107】
「1と1」の組み合わせでは、両者とも、低濃度のドット形成に関係する閾値であるため、相互に影響されると判定される。「1と2」の組み合わせも同様であるが、閾値が大きくなると、打たれるドットの濃度が上昇して粒状性が悪化し易くなるため、影響の度合いは、より大きくなると判定される。「1と3」の組み合わせは、その影響の度合いがさらに大きいと判定される。
【0108】
このような観点から、同じ画素についての閾値の組み合わせで、「0」は、低濃度のドットによる粒状性の悪化には影響が小さく、「1」、「2」、「3」と数値が大きくなるほど、影響の度合いが大きくなる。よって、ディザマトリクス群を構成する各ディザマトリクスにおける同じ画素(同じ位置の画素)の閾値を合算すると、粒状性が悪化する程度を示す指標値が得られる。
【0109】
基本的には、このようにして得られる画素毎の指標値を、全画素分、合算することで、そのディザマトリクス群についての評価値(言い換えれば、粒状性が悪化する程度を示す指標値)が得られる。
【0110】
但し、閾値の値をそのまま用いて求められた画素毎の指標値を、全画素分、合算すると、どのディザマトリクス群でも同じ評価値となってしまう。すなわち、指標値の配列の特徴が評価値に反映されない。また、ディザマトリクスの閾値を示す数値が小さいものに限定されていることから、評価値の数値の範囲は限定されてしまい、評価値同士を比較しても、あまり差が生じず、判定が困難となる場合もある。
【0111】
そこで、好ましい実施形態では、図6のA-6に示されるように強調処理を施して、評価値がとり得る範囲を拡大する。この強調処理では、y=axという関数が用いられる。ここで、aは1以上の整数である。nは、広義には2以上の整数といえるが、yの値が大きくなり過ぎると、数値の取り扱いが難しくなるため、好ましくは、nの値は、2~3程度と考えられる。図6のA-6では、a=1、n=2とし、y=xという関数を用いて強調処理を行っている。言い換えれば、各ディザマトリクスの同じ画素の閾値の合算値を2乗して、その数値を拡大する。
【0112】
そして、図6のA-7に示すように、画素毎の拡大された数値(強調された数値)を、全画素分、合算することで、ディザマトリクス群の評価値が得られる。A-7の例では、評価値は「66」となる。このような評価値を求める処理は、図1(B)の評価値算出部25が実施する。
【0113】
先に説明したように、ステップS2-8では、既に取得された評価値のデータに基づいて、評価値の平均値μ、及び標準偏差σが求められる。この処理は、図1(B)の統計値算出部26が実施する。
【0114】
ステップS2-9では、既に取得された評価値の中から、数値が最小のものを特定する。但し、数値の比較による相対的な特定であるため、信頼性が十分とは言えない。そこで、ステップS2-10で、統計値に基づいて得られる客観的な指標を用いて、ステップS2-9で特定された評価値が、客観的にみても最小といえるか否かを判定する。
【0115】
具体的には、「i>q(qは例えば1000)であり、かつ、i回のうち最小の評価値<μーkσ(kは例えば3)」という条件を満たすか否かが判定される。なお、上記の不等号「>」を「≧」に置換してもよい。また、上記の不等号「<」を「≦」に置換してもよい。
【0116】
変数iの値は、評価値が算出された回数を示しているため、十分な回数を確保することで、統計値の信頼性を担保する。そして、i回算出された評価値のうち最小の評価値(ステップS2-9で特定された評価値)が、μーkσ(kは例えば3)という条件を満たすか否かを判定する。
【0117】
ここで、図7を参照する。例えば、正規分布(ガウス分布)を例にとると、平均値μから-3σ以上離れた領域Z1に入る値は、全体の分布からみて、十分に小さいと判定し得る。
【0118】
図6に戻って説明を続ける。ステップS2-10で、Nのときは、ステップS2-11で、iを1だけインクリメントし、同様の処理を繰り返す。Yのときは、ステップS2-12に移行する。
【0119】
ステップS2-12では、条件を満たす評価値のディザマトリクス群を採用(選択)する。このような処理は、図1(B)のディザマトリクス群選択部27が実施する。
【0120】
このように、本実施形態では、基準ディザマトリクスの閾値のうちの、数値の小さい閾値のみに着目して、一般的な演算(加算や乗算等)の繰り返しによって評価値を求めることができ、特に複雑なアルゴリズムは不要である。
【0121】
例えば、先に示した特許文献2のように、複数のインクを用いたときの2値画像の粒状性やインクドットの発生率に基づいて、機械学習の一態様である強化学習によって評価値を算出するといった、複雑なデータ処理は必要ない。
【0122】
よって、画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成できるディザマトリクスの生成方法が実現される。
【0123】
また、評価値による客観的な評価によって、粒状性が目立たない画像を形成可能なディザマトリクス群を選ぶことができ、このことは、熟練の作業者の経験等に頼らず、ディザマトリクス生成を自動化する点でも有効である。
【0124】
次に、図8を参照する。図8は、ディザマトリクスの順位付けの手順例(優先度の高い順位数を決定する場合の手順例)を示すフローチャートである。図8の処理は、図1(A)のディザマトリクスの順位付け処理部28が実施する。
【0125】
ステップS3-1では、優先的に決定したい上位の順位数pを指定する。図3のステップS2-12で採用されたディザマトリクス群に含まれるc枚のディザマトリクスについて、優先的に決定したい優先順位の高い順位の数pを指定する。すなわち、1位から何位までを先に決定したいかを指定する。これにより、例えば、主張の強いインク(ブラックインク等)同士の分散性を優先的に検討することができる。
【0126】
次に、ステップS3-2で、p≧1であるかが判定される。Nの場合は、すなわちp=0であり、この場合は、分岐点Aを介して、図11のステップS3-12に移行する(この点については後述する)。Yの場合は、ステップS3-3に移行する。
【0127】
ステップS3-3、S3-4では、優先順位の高い組み合わせを決定する処理が実施される。ステップS3-3では、c枚のディザマトリクス群Fから、p枚のディザマトリクスを抽出するすべての組み合わせにおいて、図3のステップS2-7にて説明した評価値を算出する。
【0128】
ステップS3-4では、最も評価値が小さいp枚のディザマトリクスの組み合わせを特定する。このディザマトリクスの組が、優先順位の高い組み合わせとなる。言い換えれば、優先的に順位を決定するp枚のディザマトリクスの組み合わせが抽出される。抽出されたp枚のディザマトリクスの組は評価値が小さいため、同じ位置にインクが打たれる可能性が低い組み合わせである。
【0129】
なお、p=1の場合は、評価値に差が出ないので、ランダムに1枚を選択する。例えば、図3のステップS2-4におけるシフト量の生成順において最も早いものを選択してもよい。また、基準ディザマトリクスを選択してもよい。
【0130】
次に、ディザマトリクスの優先順位付け処理が実施される(ステップS3-5~S3-10)。ステップS3-5にて、j=pとする。
【0131】
ステップS3-6にて、j≧3であるかが判定される。Nの場合は、分岐点Bを介して図11のステップS3-11に移行する(この点については後述する)。Yの場合は、ステップS3-7に移行する。
【0132】
ステップS3-7では、j枚のディザマトリクスの中から、(j-1)枚のディザマトリクスを抽出する。そして、すべての組み合わせにおいて、図3のステップS2-7で説明した評価値を算出する。
【0133】
ステップS3-8では、ステップS3-7で最も評価値が小さい(j-1)枚のディザマトリクスの組み合わせを特定する。この(j-1枚)のディザマトリクスが、優先順位が1位~(j-1)位のディザマトリクスの組を構成する。
【0134】
ステップS3-9では、ステップS3-8で特定された組み合わせに入らなかったディザマトリクスの順位をj位とする。j枚のディザマトリクスの中で、1位~(j-1)位の組が決定されているのであるから、残りの1枚のディザマトリクスが、j枚のうちの最下位(j位)となる。このように、j位のディザマトリクスが決定される。
【0135】
ステップS3-10では、jを1だけディクリメント(減少)させる。そして、ステップS3-6に戻って、同様の処理を続ける。この処理は、j=2となるまで続けられる。2枚のディザに順位がついていない場合は、ランダムにどちらかを1位または2位とする1枚のディザに順位がついていない場合は、1位とする(p=1の場合)。j=2となると、分岐点Bを介して、図11のステップS3-11に移行する。
【0136】
このように、ディザマトリクスの順位付け処理(ステップS3-5~S3-10)では、所定枚数のディザマトリクスのうちから、所定枚数よりも1だけ小さい数のディザマトリクスを選ぶすべての組み合わせについて評価値を算出し、評価値が最小のディザマトリクスの組み合わせを特定し、その特定された組に入らなかった1つのディザマトリクスを最下位とし、必要に応じて、所定枚数を、その数を1だけ減じる方向に更新して同様の処理を繰り返し、各処理毎に最下位を決定することによって、ディザマトリクスの優先順位を特定する処理が実施される。
【0137】
この処理によって、p枚のディザマトリクスのうち、第1位、第2位を除く3位~p位のディザマトリクスが決定される。
【0138】
以下、図9図10を用いて、優先順位の高い組み合わせの決定処理と、ディザマトリクスの順位付け処理の具体例について説明する。
【0139】
図9は、優先順位の高いディザマトリクスの組み合わせの決定処理の具体例を示す図である。図9で説明する処理は、図8のステップS3-3、及びステップS4-4に対応する。
【0140】
図9のステップS3-3-1では、c=8、p=4に設定されており、よって、8枚のディザマトリクス(id1~id8)が用意される。この中から、4枚の優先順位が高いディザマトリクスの組を決定する。
【0141】
ステップS3-3-2では、8枚のディザマトリクスの中から4枚を選ぶすべての組み合わせ(70組)の各々について、評価値E1~E70を算出する。
【0142】
ステップS3-4-1にて、最小の評価値がE1と特定される。ステップS3-4-2では、特定された評価値E1に対応する、ディザマトリクスid1~id4の組が、優先順位が高い組み合わせとして抽出(特定)される。
【0143】
本実施形態では、ディザマトリクスの閾値が小さいほど、濃度が低いと設定したため、最小の評価値を算出したが、ディザマトリクスの閾値が大きいほど、濃度が低いと設定した場合は、最大の評価値を算出すればよい。すなわち、最も粒状性が悪化する程度が小さい評価値を算出すればよい。
【0144】
次に、図10を参照する。図10は、ディザマトリクスの順位付け処理の手順を具体的に示す図である。
【0145】
図10のステップS3-7では、j=4に設定されている。よって、4枚の中から3枚を選ぶすべての組み合わせについて、評価値E101~E104が算出される。
【0146】
ステップS3-8では、最小の評価値E102が特定される。ステップS3-8では、特定された評価値E102に対応するディザマトリクスの組に含まれるディザマトリクスid1、id2及びid4が、優先順位1位~3位の何れかのディザマトリクスであることが特定される。よって、その組に入らなかったディザマトリクスid3が、4位(j位)として特定される。
【0147】
次に、jの値を1だけでデクリメント(減少)させて、j=3とする。同様の処理を実施した結果として、最小の評価値のディザマトリクスの組が決定される。これによって、この組に含まれるディザマトリクスid1及びid2が、1位と2位の何れかのディザマトリクスであることが特定される。
【0148】
よって、その組に入らなかったディザマトリクスid4が、3位(j位)のディザマトリクスとなる。このようにして、図9の処理で抽出された、4枚の優先順位の高い組のディザマトリクスについて、3位及び4位の順位付けがなされる。なお、1位及び2位のディザマトリクスは、図11のステップS3-11で特定される。この点については、後述する。
【0149】
次に、図11を参照する。図11は、ディザマトリクスの順位付けの手順例(図8に続く手順)を示すフローチャートである。
【0150】
ステップS3-11では、p枚のディザマトリクスのうち、順位のついていないディザマトリクスに順位をつける。順位付けの方法としては、ランダムに決める、あるいは、シフト量の発生順に従う等の方法がある。
【0151】
上位2枚のディザマトリクスに順位がついていない場合(1位、2位が決まっていない場合)は、例えば、ランダムにどちらか一方を1位とし、他方を2位とする。また、1枚のディザマトリクスに順位がついていない場合(p=1の場合)は、そのディザマトリクスの順位を1位とする。
【0152】
ステップS3-12では、変数kの値をpとする。
【0153】
ステップS3-13では、順位が決定していない(c-k)枚のディザマトリクスから、1つのディザマトリクスを抽出するすべての組み合わせにおいて、順位の決定したk枚のディザマトリクスと抽出した1つのディザマトリクスを合わせた場合のステップS2-8の評価値を算出する。
【0154】
また、図8のステップS3-2においてp=0と判定され、続いて、ステップS3-13が実施される場合(分岐点Aを介する処理の場合)は、p=0であるので評価値に差が生じない。この場合には、例えばランダムに1枚のディザマトリクスを選択する。なお、シフト量の生成順において最も早いものを選択してもよく、基準ディザマトリクスを選択してもよい。
【0155】
ステップS3-14では、k=k+1とする。
【0156】
ステップS3-15では、ステップS3-13で算出された評価値が最小であるディザマトリクスの組を特定し、その組に含まれる、順位がついていないディザマトリクスの順位をk位とする。
【0157】
ステップS3-16では、kが(c-1)となったか(言い換えれば、c枚のディザマトリクスのうち、順位がついていないディザマトリクスが1枚となったか)が判定される。Nのときは、ステップS3-13に戻る。(p+1)位から(c-1)位が決定されるまで、同様の処理が繰り返えされる。Yのときは、ステップS3-17に移行する。
【0158】
ステップS3-17では、最後まで順位がつけられなかったディザマトリクス(言い換えれば、最後の1枚のディザマトリクス)を最下位(c位)とする。
【0159】
このように、優先順位が特定されている2枚以上のディザマトリクスに、優先順位が未特定の複数のディザマトリクスのうちから選ばれた1枚を追加してディザマトリクスの組を作成し、そのディザマトリクスの組について評価値を算出し、以下、同様の処理を繰り返し、追加する1枚を更新して得られるすべてのディザマトリクスの組の中から、評価値が最小の組を特定し、その特定されたディザマトリクスの組に含まれる、追加された1枚のディザマトリクス(優先順位が定まっていない1枚)に、既に特定されている優先順位の次の順位を付与し、必要に応じて同様の処理を繰り返すことによって、ディザマトリクスの優先順位を特定する処理が実施される。これによって、c枚(例えば8枚)のディザマトリクスのすべてについての順位付けが完了する。
【0160】
c枚(例えば8枚)のディザマトリクスを用いて、入力された画像データをスクリーニングする際には、ディザマトリクスの閾値は、閾値変換前の値に逆変換してから実施される。
【0161】
現状では、インクジェットプリンタで使用されるインクの色の数は、4色、8色が主流であるが、将来的には、さらに増える可能性がある。本実施形態は、インクの色の増大にも柔軟に、容易に対応が可能である。言い換えれば、ディザマトリクスの組を作成し、その組の評価値を算出してその値が最小となる組を求める、という処理を繰り返し実施することで、使用するインクの色が増えた場合でも、容易に対応可能である。
【0162】
次に、図12を参照する。図12は、図11に示されるディザマトリクスの順位付け処理の具体例を示す図である。図12は、先に説明した図10の処理の続きである。
【0163】
図12のステップS3-11では、4枚のディザマトリクス(id1、id2、id4、id3)のうち、ディザマトリクスid1、id2について順位がついていない。ここでは、ランダムに選択し、id1を1位とし、id2を2位とする。これにより、8枚(p枚)のディザマトリクスのうち、1位~4位までが決定される。
【0164】
ステップS3-13では、順位が決定された4枚のディザマトリクスの組に、順位が決定されていない4枚のうちの1枚を加えて、5枚のディザマトリクスからなる組を作成する。これにより、4つの組が作成される。そして、この4つの組の各々についての評価値E201~E204を算出する。
【0165】
図12のステップS3-15では、k=5に設定されている。ここでは、最小の評価値E203が特定される。この結果、最小の評価値のディザマトリクスの組(id1、id2、id3、id4、id7)が決定される。そして、順位がついていないディザマトリクスid7が5位(k位)と決定される。
【0166】
以下、kの値を1だけインクリメントして、同様の処理が実施される。k=6のときは、ディザマトリクスid5が6位(k位)として決定される。k=7のときは、ディザマトリクスid4が7位(k位)として決定される。これで、1位~7位までのディザマトリクスが決定されたことになる。
【0167】
c=8に設定されており、残りは1枚である。よって、その最後まで順位がつかなかった1枚のディザマトリクスid6が、8位(c位)となる。これによって、8枚のディザマトリクスのすべてに順位付けがなされたことになる。
【0168】
次に、図13を参照する。図13は、インクの順位付け処理、及びインクとディザマトリクスとを対応付ける処理の手順例を示すフローチャートである。図13の処理は、図1(A)のインクとディザマトリクスとの対応付け処理部30が実施する。
【0169】
ステップS10では、例えば、粒状感に影響を与えやすい、インクの1ドットを認知しやすい(主張が強い)、あるいは、薄い色を表現する際に利用されやすい、といったことを総合的に勘案して、インクに順位付けをする。
【0170】
以下が、インクの順位付けの一例である。
1位:Lk(ライトブラック)
2位:K(ブラック)
3位:Lm(ライトマゼンタ)
4位:M(マゼンタ)
5位:Re(レッド)
6位:Or(オレンジ)
7位:Lc(ライトシアン)
8位:C(シアン)
9位:Gr(グレー)
10位:Y(イエロー)
11位:Wh(ホワイト)
【0171】
ステップS11では、使用しないインクがある場合は、そのインクを除いて他のインクの順位を繰り上げる
【0172】
例えば、CMYK印刷の場合は、1位をK、2位をM、3位をC、4位をYとする。
【0173】
また、例えば、CMYKOrGrReLk印刷の場合は、1位をLk、2位をK、3位をM、4位をRe、5位をOr、6位をC、7位をGr、8位をYとする。
【0174】
ステップS12では、順位が同じインクとディザマトリクスを対応付ける。
【0175】
これによって、使用されるすべてのインクの各々に対して、どのディザマトリクスを使用するかが決定される。
【0176】
使用されるインクの色の数が増えても、上記の手順にしたがって、インクの順位付け、及びインクとディザマトリクスとの対応付けは、容易に行える。すなわち、本実施形態は応用性に富む。よって、将来的なインク色の増大にも、柔軟に、かつ容易に対応することが可能である。
【0177】
以上説明したように、基準ディザマトリクスの閾値のうちの、数値の小さい閾値のみに着目して、一般的な演算(加算や乗算等)の繰り返しによって評価値を求めることができ、特に複雑なアルゴリズムは不要である。
【0178】
例えば、先に示した特許文献2のように、複数のインクを用いたときの2値画像の粒状性やインクドットの発生率に基づいて、機械学習の一態様である強化学習によって評価値を算出するといった、複雑なデータ処理は必要ない。
【0179】
よって、例えば、画像の粒状性を効果的に抑制できる複数のディザマトリクスを、複雑なアルゴリズム等を用いずに生成できるディザマトリクスの生成方法を実現することができる。
【0180】
また、評価値による客観的な評価によって、粒状性が目立たない画像を形成可能なディザマトリクス群を選ぶことができ、このことは、熟練の作業者の経験等に頼らず、ディザマトリクス生成を自動化する点でも有効である。
【0181】
また、本発明は応用性に富み、例えば、使用されるインクの色の数が増えても、ディザマトリクスとの対応付けは容易に行える。よって、将来的なインク色の増大にも、柔軟に、かつ容易に対応することができる。
【0182】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではなく、種々、変形、応用が可能である。
【0183】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0184】
10・・・基準ディザマトリクス生成部、12・・・ディザマトリクス生成部、20・・・ディザマトリクス群生成部、21・・・閾値変換部、22・・・シフト量取得部、23・・・シフト処理部、24・・・ディザマトリクス群作成部、25・・・ディザマトリクス群の評価値算出部、26・・・統計値算出部、27・・・ディザマトリクス群選択部、28・・・ディザマトリクスの順位付け処理部、30・・・インクとディザマトリクスとの対応付け処理部、40・・・記憶部(メモリ)、100・・・ディザマトリクス生成装置(画像処理装置)、102・・・データ処理部、110・・・制御部(プロセッサ)、120・・・記憶部(メモリ)、200・・・インクジェットプリンタ(印刷装置)、210・・・入力画像処理装置、212・・・ディザマトリクスを用いたスクリーニング処理部、214・・・記憶部(メモリ)、220・・・印刷エンジン、222・・・ヘッドコントローラ、224・・・印刷ヘッド、PRG・・・プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14