(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117136
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】受変電設備の保守管理システム、受変電設備の保守管理方法および保守管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230816BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230816BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230816BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230816BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
G05B23/02 301X
G05B23/02 301Z
H02J13/00 301J
G06Q10/00 300
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019679
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄也
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】武田 翔
【テーマコード(参考)】
3C223
5G064
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA23
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB03
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF15
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH05
3C223HH08
3C223HH17
3C223HH29
5G064AC09
5G064BA07
5G064CB06
5G064DA03
5L049CC06
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】受変電設備の状態に応じて保守に関する情報を適切に提供することができる受変電設備の保守管理システム、受変電設備の保守管理方法および保守管理プログラムを提供することである。
【解決手段】受変電設備の保守管理システムは、収集部と提供部とを備える。収集部は、受変電設備に設けられた複数のセンサから受変電設備の計測データを収集する。提供部は、計測データに基づいて、受変電設備の保守に係る情報を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受変電設備に設けられた複数のセンサから前記受変電設備の計測データを収集する収集部と、
前記計測データに基づいて、前記受変電設備の保守に係る情報を提供する提供部と
を備える受変電設備の保守管理システム。
【請求項2】
前記計測データに基づいて前記受変電設備の障害の有無を判定する判定部を備え、
前記提供部は、前記受変電設備の障害の有無を示す情報を提供する
請求項1に記載の受変電設備の保守管理システム。
【請求項3】
前記計測データに基づいて前記受変電設備の劣化を予測する予測部を備え、
前記提供部は、前記受変電設備の劣化状態が所定の閾値を下回るタイミングが、前記受変電設備の次の点検タイミングより前である場合に、前記受変電設備の自主点検、前記受変電設備の部品の交換、または前記受変電設備のリニューアルを提案する情報を提供する
請求項1または請求項2に記載の受変電設備の保守管理システム。
【請求項4】
前記提供部は、定期点検の周期より短い周期で、前記受変電設備の保守に係る情報を提供する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の受変電設備の保守管理システム。
【請求項5】
前記収集部は、収集された前記計測データを時刻に関連付けてデータベースに記録し、
前記提供部は、利用者からの要求に応じて、指定された時刻に係る前記計測データを前記データベースから読み出して前記利用者に提供する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の受変電設備の保守管理システム。
【請求項6】
前記複数のセンサは、温度、湿度、汚損、音響、臭気物質濃度、および部分放電の何れかを計測する
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の受変電設備の保守管理システム。
【請求項7】
受変電設備に設けられた複数のセンサが前記受変電設備の計測データを取得するステップと、
コンピュータが、前記計測データに基づいて前記受変電設備の保守に係る情報を提供するステップと
を有する受変電設備の保守管理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
受変電設備に設けられた複数のセンサから前記受変電設備の計測データを収集する収集部、
前記計測データに基づいて、前記受変電設備の保守に係る情報を提供する提供部
として機能させるための保守管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は受変電設備の保守管理システム、受変電設備の保守管理方法および保守管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
受変電設備は継続的で安定した稼働が求められる。そのため、受変電設備を信頼性の高い状態を維持するために、一定周期ごとに保守点検が行われている。一方で、保守点検の周期は、受変電設備の設置環境や劣化状態などが加味されておらず、必ずしも点検の時期が適切とは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、受変電設備の状態に応じて保守に関する情報を適切に提供することができる受変電設備の保守管理システム、受変電設備の保守管理方法および保守管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、受変電設備の保守管理システムは、収集部と提供部とを備える。収集部は、受変電設備に設けられた複数のセンサから受変電設備の計測データを収集する。提供部は、計測データに基づいて、受変電設備の保守に係る情報を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係る保守管理システムを示す概略図。
【
図2】第1の実施形態に係る保守管理システムの構成を示す概略ブロック図。
【
図3】第1の実施形態に係る保守管理サーバによる障害判定処理を示すフローチャート。
【
図4】第1の実施形態に係る保守管理サーバによる点検項目出力処理を示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態に係る保守管理サーバによるリニューアル提案処理を示すフローチャート。
【
図6】第2の実施形態に係る保守管理システムの構成を示す概略ブロック図。
【
図7】第2の実施形態に係る保守管理サーバによる点検日提案処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の受変電設備の保守管理システム、受変電設備の保守管理方法および保守管理プログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る保守管理システム1を示す概略図である。
保守管理システム1は、監視対象の受変電設備10と、保守管理サーバ20とを備える。受変電設備10は、例えばスイッチギアや無停電電源装置などの複数の電気機器11を備えていてよい。各電気機器11には、計測装置12が設けられる。なお、他の実施形態においては、1つの計測装置12が複数の電気機器11の状態を計測してもよいし、1つの電気機器11に複数の計測装置12が設けられてもよい。また、受変電設備10には少なくとも1つの通信装置13が設けられる。受変電設備10に取り付け可能な装置で合って、各種センサによって受変電設備10の状態を計測し、計測データを保守管理サーバ20に送信する。保守管理サーバ20は、受変電設備10から受信した計測データに基づいて、受変電設備10の障害および劣化状態を監視する。保守管理サーバ20は、複数の受変電設備10を監視してよい。各受変電設備10には、保守担当者Mが割り当てられている。
【0008】
図2は、第1の実施形態に係る保守管理システム1の構成を示す概略ブロック図である。
計測装置12は、1つ以上のセンサ121、マイクロコンピュータ122、通信部123を備える。センサ121の例としては、温度センサ、湿度センサ、汚損センサ、音響センサ、臭気センサ、部分放電センサが挙げられる。温度センサは、受変電設備10の温度または雰囲気温度を計測する。湿度センサは、受変電設備10の雰囲気の相対湿度を計測する。汚損センサは、受変電設備10の塵埃や水分などによる汚損度を計測する。汚損センサとしては、例えば水晶振動子マイクロバランスを用いることができる。音響センサは、受変電設備10から発生する音を計測する。臭気センサは、受変電設備10の雰囲気の臭気を検出する。例えば臭気センサは、受変電設備10の雰囲気における臭気物質の濃度を計測する。臭気センサの例としては、臭気物質に反応して抵抗値が変化する半導体を用いたセンサなどが挙げられる。部分放電センサは、受変電設備10の部分放電によって発生する電磁波を計測する。部分放電センサの例としては、過渡接地電圧(TEV)センサなどが挙げられる。各センサ121はAD変換器を有し、デジタル信号として計測データを出力する。
【0009】
マイクロコンピュータ122は、各センサ121の計測データを取得し、通信部123を介して保守管理サーバ20に送信する。マイクロコンピュータ122は、取得した計測データをストリーミング通信にて送信してもよいし、蓄積した計測データを一定時間ごとに送信してもよい。なお、センサ121の種類によって計測データの送信周期が異なっていてもよい。
通信部123は、センサ121の計測データを、有線または無線で接続された通信装置13に送信する。
【0010】
通信装置13は、複数の計測装置12から伝送された計測データを、インターネットなどの広域通信網を介して保守管理サーバ20に送信する。保守管理サーバ20は、受変電設備10と通信装置13のIDとを関連付けて記憶するため、計測データの受信元の通信装置13のIDによって、受信された計測データがどの受変電設備10のものであるかを特定することができる。
【0011】
保守管理サーバ20は、設備情報記憶部21、収集部22、計測データ記憶部23(データベース)、判定部24、提供部25を備える。
設備情報記憶部21は、受変電設備10ごとに、受変電設備10のID、計測装置12のID(例えばIPアドレス)、保守担当者Mの連絡先(例えばメールアドレス)、点検スケジュールを記憶する。
【0012】
収集部22は、通信装置13を介して受変電設備10の計測データを受信する。収集部22は、設備情報記憶部21が記憶する計測データの送信元の通信装置13のIDを参照することで、受信した計測データに係る受変電設備10を特定する。収集部22は、受信した計測データを時刻と受変電設備10のIDとに関連付けて計測データ記憶部23に記録する。
【0013】
判定部24は、所定の周期(例えば、1時間)ごとに受変電設備10の計測データに基づいて受変電設備10の障害の有無を判定する。また、判定部24は、保守担当者Mによる自主点検の前に受変電設備10の計測データに基づいて、受変電設備10の点検項目を決定する。点検項目は、部品の交換を検討すべき項目を含んでいてよい。また判定部24は、設備情報記憶部21が記憶する点検スケジュールが示す定期点検日の前(例えば、1か月前)に、受変電設備10に基づいてリニューアル提案を決定する。
【0014】
提供部25は、判定部24によって障害があると判定された場合に、障害の発生を保守担当者に通知する。また、提供部25は、判定部24によって決定された点検方針およびリニューアル提案を保守担当者Mに通知する。
【0015】
図3は、第1の実施形態に係る保守管理サーバ20による障害判定処理を示すフローチャートである。保守管理サーバ20は、所定の周期ごとに、以下に示す障害判定処理を実行する。なお、保守管理サーバ20は、上述の通り、受変電設備10から計測データを受信するたびに、計測データを逐次計測データ記憶部23に記録する。
【0016】
保守管理サーバ20が障害判定処理を開始すると、判定部24は、計測データ記憶部23が記憶する計測データのうち、対象の受変電設備10に関連付けられ、かつ前回の障害判定処理を実行した時刻から現在時刻までの期間に収集された計測データを読み出す(ステップS1)。判定部24は、読み出した計測データに基づいて、受変電設備10に障害があるか否かを判定する。例えば、判定部24は、計測データに基づいて、受変電設備10に部分放電が生じているか否か、音響レベルが所定の閾値を超えたか否か、臭気物質濃度が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS2)。すなわち判定部24は、部分放電、異音、異臭の何れかが発生したか否かを判定する。受変電設備10に部分放電、異音、異臭の何れかが生じていると判定した場合(ステップS2:YES)、提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者Mの連絡先を読み出し、受変電設備10に障害が生じていること、および障害の種類を示す通知を送信する(ステップS3)。他方、受変電設備10に部分放電、異音、異臭の何れも生じていないと判定した場合(ステップS2:NO)、提供部25は保守担当者Mへ通知を送信せずに処理を終了する。
【0017】
図4は、第1の実施形態に係る保守管理サーバ20による点検項目出力処理を示すフローチャートである。保守担当者Mは、受変電設備10の自主点検を行う際に、保守管理サーバ20に点検項目の出力指示を送信する。保守管理サーバ20は、保守担当者Mから点検項目の出力指示を受け付けると、以下に示す点検項目出力処理を実行する。
【0018】
保守管理サーバ20が点検項目出力処理を開始すると、判定部24は、計測データ記憶部23が記憶する計測データのうち、対象の受変電設備10に関連付けられ、かつ前回の点検日から現在時刻までの期間に収集された計測データを読み出す(ステップS21)。判定部24は、読み出した計測データに基づいて、受変電設備10の状態を判定する。まず、判定部24は、受変電設備10の雰囲気の温度および湿度に係る計測データに基づいて、受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS22)。このとき、判定部24は、前回の点検日から現在時刻までの計測データのすべてが、適性範囲内に収まっているか否かを判定するものであってもよいし、適性範囲に収まっている計測データの割合が閾値以上存在するか否かを判定するものであってもよい。
【0019】
受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっていると判定した場合(ステップS22:YES)、判定部24は、保守担当者に提示する点検項目として、目視確認程度の簡易な点検からなる点検項目を提示することを決定する。提供部25は、提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定した点検項目を送信する(ステップS23)。
【0020】
受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっていないと判定した場合(ステップS22:NO)、判定部24は、汚損に係る計測データに基づいて、受変電設備10の汚損度が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS24)。受変電設備10の汚損度が所定の閾値を超えないと判定した場合(ステップS24:NO)、判定部24は、保守担当者に提示する点検項目として、通常レベルの点検項目を提示することを決定する。提供部25は、提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定した点検項目を送信する(ステップS25)。
【0021】
受変電設備10の汚損度が所定の閾値を超えると判定した場合(ステップS24:YES)、判定部24は、保守担当者に提示する点検項目として、カバーを外して機器の状態を確認するような細密な点検を含む点検項目を提示することを決定する。提供部25は、提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定した点検項目を送信する(ステップS26)。
これにより、受変電設備10は、自主点検のために受変電設備10の状況に応じた点検項目を提示することができる。
【0022】
図5は、第1の実施形態に係る保守管理サーバ20によるリニューアル提案処理を示すフローチャートである。保守管理サーバ20は、設備情報記憶部21が記憶する定期点検日前の所定の日付に、以下に示すリニューアル提案処理を実行する。
【0023】
保守管理サーバ20がリニューアル提案処理を開始すると、判定部24は、計測データ記憶部23が記憶する計測データのうち、対象の受変電設備10に関連付けられ、かつ前回の定期点検日から現在時刻までの期間に収集された計測データを読み出す(ステップS41)。判定部24は、読み出した計測データに基づいて、受変電設備10の状態を判定する。まず、判定部24は、受変電設備10の雰囲気の温度および湿度に係る計測データに基づいて、受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS42)。
【0024】
受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっていると判定した場合(ステップS42:YES)、判定部24は、保守担当者に提示するリニューアル案として、電気機器11の部品などのリニューアルを提案することを決定する。提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定したリニューアル案を送信する(ステップS43)。
【0025】
受変電設備10の雰囲気が予め定められた温度及び湿度の適性範囲内に収まっていないと判定した場合(ステップS42:NO)、判定部24は、受変電設備10の部分放電に係る計測データに基づいて、受変電設備10が放電傾向にあるか否かを判定する(ステップS44)。例えば、判定部24は、部分放電の発生頻度が所定の閾値を超えるか否かを判定する。受変電設備10が放電傾向にないと判定した場合(ステップS42:NO)、判定部24は、保守担当者に提示するリニューアル案として、電気機器11の部品などのリニューアルを提案することを決定する。提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定したリニューアル案を送信する(ステップS43)。
【0026】
受変電設備10が放電傾向にあると判定した場合(ステップS42:YES)、判定部24は、部分放電に係る計測データに基づいて、部分放電が受変電設備10全体として発生しているか、一部の電気機器11から発生しているかを判定する(ステップS45)。判定部24は、部分放電が受変電設備10の一部の電気機器11から発生していると判定した場合(ステップS45:部分)、保守担当者に提示するリニューアル案として、部分放電の発生している電気機器11のリニューアルを提案することを決定する。提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者の連絡先を読み出し、判定部24が決定したリニューアル案を送信する(ステップS46)。
【0027】
判定部24は、部分放電が受変電設備10の全体から発生していると判定した場合(ステップS45:全体)、保守担当者Mに提示するリニューアル案として、受変電設備10全体のリニューアルを提案することを決定する。提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者Mの連絡先を読み出し、判定部24が決定したリニューアル案を送信する(ステップS47)。
これにより、受変電設備10は、定期点検前に受変電設備10の状況に応じたリニューアル案を提示することができる。定期点検前にリニューアル案を提示することで、保守担当者Mは受変電設備10の管理者に定期点検前にリニューアルを提案することができる。
【0028】
また、保守担当者Mは、保守管理サーバ20に対して計測データの送信を要求することができる。この場合、保守担当者Mは、対象となる受変電設備10のIDと、取得したい計測データの期間を含む送信要求を保守管理サーバ20に送信する。保守管理サーバ20は、送信要求を受信すると、提供部25は、計測データ記憶部23から送信要求に含まれる受変電設備10のIDに関連付けられ、かつ送信要求に含まれる期間内の時刻に関連付けられた計測データを読み出し、保守担当者Mに送信する。これにより、保守担当者は任意の受変電設備10の任意の時刻に係る計測データを取得することができる。なお、保守管理サーバ20は、設備情報記憶部21において送信要求の送信元の保守担当者Mと対象の受変電設備10とが関連付けられていない場合に、当該保守担当者Mに計測データを送信しないようにしてもよい。
【0029】
このように、第1の実施形態によれば、保守管理システム1は、受変電設備10に設けられた複数のセンサ121から受変電設備10の計測データを収集し、収集された計測データに基づいて受変電設備10の保守に係る情報を提供する。これにより、保守管理システム1は、受変電設備10の状態に応じて保守に関する情報を適切に提供することができる。
【0030】
また、第1の実施形態によれば、保守管理システム1は、定期点検の周期より短い周期で受変電設備10の障害の有無を判定し、障害がある場合に障害の通知を送信する。このように、定期点検以前に監視を行っておくことで、定期点検の際に当該監視結果を加味した点検を行うことができる。
【0031】
なお、第1の実施形態では、障害判定処理、点検項目出力処理およびリニューアル提案処理の例として、
図3-5の手順を示したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、保守管理サーバ20は、温度や湿度に基づいて許容可能な部分放電、異音、異臭、汚損度、およびその他の特徴量の組み合わせによって、障害判定処理、点検項目出力処理またはリニューアル提案を行ってもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る保守管理システム1の構成を示す概略ブロック図である。第2の実施形態に係る保守管理システム1は、第1の実施形態と保守管理サーバ20の挙動が異なる。具体的には、第2の実施形態に係る保守管理サーバ20は、計測データに基づいて自主点検の提案を行う。
【0033】
第2の実施形態に係る保守管理サーバ20は、判定部24に代えて予測部26を備える。予測部26は、計測データに基づいて受変電設備10の劣化状態を推定し、劣化の進行を予測する。例えば、予測部26は、計測データ記憶部23が記憶する計測データの時系列に基づいて、計測データの取得タイミングごとに受変電設備10の劣化状態を推定することで、劣化状態の変化量(傾き)を推定する。これにより、予測部26は、現在の劣化状態と劣化状態の変化量とに基づいて、将来の任意のタイミングにおける劣化状態を予測することができる。
【0034】
図7は、第2の実施形態に係る保守管理サーバ20による点検日提案処理を示すフローチャートである。保守管理サーバ20は、所定の周期ごとに、以下に示す障害判定処理を実行する。なお、保守管理サーバ20は、上述の通り、受変電設備10から計測データを受信するたびに、計測データを逐次計測データ記憶部23に記録する。
【0035】
保守管理サーバ20が障害判定処理を開始すると、予測部26は、計測データ記憶部23が記憶する計測データのうち、対象の受変電設備10に関連付けられた直近の所定期間(例えば、1カ月)に収集された計測データを読み出す(ステップS101)。予測部26は、読み出した計測データに基づいて、計測データの複数の取得タイミングごとの劣化状態を推定する(ステップS102)。予測部26は、推定した単位時間あたりの劣化状態から劣化状態の変化量を求め、設備情報記憶部21が記憶する次の定期点検日における劣化状態を予測する(ステップS103)。
【0036】
提供部25は、次の定期点検日における劣化状態が所定状態より悪いか否かを判定する(ステップS104)。所定状態は、例えば通常の定期点検時に期待される劣化状態であってよい。提供部25は、次の定期点検日における劣化状態が所定状態より悪くないと判定した場合(ステップS104:NO)、自主点検を推奨せずに処理を終了する。
【0037】
提供部25は、次の定期点検日における劣化状態が所定状態より悪いと判定した場合(ステップS104:YES)、ステップS102で推定した劣化状態の推移から、受変電設備10の劣化状態が所定状態に至る日を、点検推奨日として算出する(ステップS105)。提供部25は、設備情報記憶部21から当該受変電設備10の保守担当者Mの連絡先を読み出し、ステップS105で算出した点検推奨日に自主点検をすることを推奨する情報を送信する(ステップS106)。
【0038】
このように、第2の実施形態に係る保守管理システム1は、計測データに基づいて受変電設備の劣化を予測し、受変電設備10の劣化状態が所定の閾値を下回るタイミングが、受変電設備10の次の点検タイミングより前である場合に、受変電設備10の自主点検を提案する情報を提供する。これにより、保守管理システム1は、受変電設備10の劣化状態に応じて、適切に自主点検の時期を提示することができる。なお、他の実施形態においては、自主点検の時期の提示に代えて、受変電設備10の部品の交換や受変電設備10のリニューアルの提案に係る情報を提供してもよい。
【0039】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、受変電設備10に設けられた複数のセンサ121から受変電設備10の計測データを収集する収集部と、計測データに基づいて受変電設備10の保守に係る情報を提供する提供部25とを持つことにより、受変電設備の状態に応じて保守に関する情報を適切に提供することができる。
【0040】
〈コンピュータ構成〉
保守管理サーバ20は、バスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、保守管理プログラムを実行することによって設備情報記憶部21、収集部22、計測データ記憶部23、判定部24または予測部26、および提供部25を備える装置として機能する。プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
保守管理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。保守管理プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、保守管理サーバ20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提供したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…保守管理システム 10…受変電設備 11…電気機器 12…計測装置 121…センサ 122…マイクロコンピュータ 123…通信部 13…通信装置 20…保守管理サーバ 21…設備情報記憶部 22…収集部 23…計測データ記憶部 24…判定部 25…提供部 26…予測部 M…保守担当者