IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シー・ヴィ・リサーチの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117377
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及びガスノズル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230816BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230816BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/455
C23C16/505
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209912
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2022142182の分割
【原出願日】2022-09-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2022019265
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022077039
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500460782
【氏名又は名称】株式会社シー・ヴィ・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】川浦 廣
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA38
4K030BA43
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030FA10
4K030GA07
4K030GA12
4K030HA01
4K030KA49
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC12
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045BB01
5F045BB08
5F045DP14
5F045DP28
5F045EF05
5F045EH03
5F045EK14
5F045EM02
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ALD、エピタキシャル成長、CVDによる成膜を行うに際して、均一性に優れ、処理速度が大きく、面積生産性が高い成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】 反応室3内部のドーナツ状の凹空間に、斜面9に基板載置面としての座グリ部10を設けた複数のサセプタ8が、サセプタホルダ17上、水平方向に放射状に並べて配置されている。蓋21には、ガス供給管が、周方向に、パージガス供給管22、プリカーサを含むガス供給管23、パージガス供給管24、酸化剤を含むガス供給管25の順に設けられている。ガス噴出孔21から反応室3内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間を通り、反応室3の下方から排気される。サセプタホルダ17を周方向に回転させることにより、ALD成膜を行う。
【選択図】 図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒と、
前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップと、
を備えるガスノズルであって、
第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出していること
を特徴とするガスノズル。
【請求項2】
前記第一筒を挿入する、前記第一筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第二筒をさらに備えるガスノズルであって、
第二ガスが、前記第二筒に設けられた貫通穴である第二導入孔、並びに、前記第二筒の内壁面及び前記第一筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記第一筒の先端と前記第二筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第一筒の先端が前記第二筒の先端から飛び出している、
請求項1記載のガスノズル。
【請求項3】
前記第二筒を挿入する、前記第二筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第三筒をさらに備えるガスノズルであって、
第三ガスが、前記第三筒に設けられた貫通穴である第三導入孔、並びに、前記第三筒の内壁面及び前記第二筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記第二筒の先端と前記第三筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第二筒の先端が前記第三筒の先端から飛び出している、
請求項2記載のガスノズル。
【請求項4】
前記キャップに設けられた誘電体窓を介して電磁エネルギーを放射するプラズマ源を備える、
請求項1記載のガスノズル。
【請求項5】
前記反応室内に、鉛直面に対して傾いた基板載置面を持つサセプタを複数備え、
前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、
前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜装置であって、
請求項1記載のガスノズルを備えること
を特徴とする成膜装置。
【請求項6】
複数の前記サセプタが、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、
複数の前記サセプタを、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる回転機構を備える、
請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
反応室内に設けられた、鉛直面に対して傾いた基板載置面を備えた複数のサセプタ上の前記基板載置面に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記反応室内にガスを供給しつつ前記反応室からガスを排気するステップと、
前記基板載置面から前記基板を前記反応室外に移動させて取り出すステップと、
を含み、
前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、
前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜装置を用いた成膜方法であって、
請求項1記載のガスノズルを用いること
を特徴とする成膜方法。
【請求項8】
前記複数の基板載置面が、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、
前記複数の基板載置面を、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる、
請求項7記載の成膜方法。
【請求項9】
前記複数のサセプタ又は前記基板載置面に載置された基板が、ランプによって加熱される、
請求項5記載の成膜装置。
【請求項10】
前記複数のサセプタの上方に、マイクロ波、高周波、又はパルス電力によってプラズマを発生させるプラズマ源を備える、
請求項5記載の成膜装置。
【請求項11】
前記プラズマ源が、前記キャップに設けられた誘電体窓を介して、電磁エネルギーを前記反応室内に放射する構成である、
請求項10記載の成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造に用いられる成膜装置及び成膜方法、とくに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)やエピタキシャル成長、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)による成膜装置、成膜方法及びガスノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALD、エピタキシャル成長、CVDによる成膜技術は、広く半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造に用いられている。ことに近年、非常に高価な極端紫外線(EUV:extreme ultraviolet)露光装置を用いることなく、極めて微細なパターン形成を可能とするダブルパターニング技術が開発されており、ALDはその鍵を握る技術として注目されている。これは、パターニングされた有機レジスト膜上に、これが劣化しないよう200℃程度以下の温度で、均一かつステップカバレッジの良い成膜方法により、10~20nm程度の厚さのシリコン又は金属の酸化膜を成膜する技術である。その他にも、ALD技術は、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用されつつある。また、ALD技術は、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において利用されている。
【0003】
従来のALDにおいて、枚葉式、バッチ式(例えば、特許文献1を参照)が広く知られているが、しばしば処理速度(単位時間当たりに処理できる基板数)の低さが問題となり、これまでに様々な工夫がなされてきた(例えば、特許文献2を参照)。工夫の一つとして、回転型セミバッチALD装置が開発された。回転型セミバッチALD装置において、円筒型真空容器が、二つの反応ガス室と、それらの間に配置された二つのパージガス室からなる合計四つの扇型サブチャンバーに分割され、各サブチャンバー中心部上方に反応ガス供給手段が配置され、ガス排気部は二つのパージガス室の下部に設置されている。ディスク状テーブルを回転することにより、テーブル上の複数の被処理基板が各サブチャンバーを通過し、ALD成膜が行われる(例えば、特許文献3を参照)。
【0004】
改良型の回転型セミバッチALD装置として、ガスカーテン式がある。ガスカーテン式回転型セミバッチALD装置においては、反応ガス供給手段の間にパージガスをカーテンのように流すことによって、反応ガスの混合が抑制される(例えば、特許文献4を参照)。
【0005】
一方、基板を上下から吹き付けるガスの流れによって中空に保持しつつ、水平方向に基板を搬送しながら成膜する方式が考案された。この方式において、上部からプリカーサ、パージガス及び酸化剤ガスが、ゾーン毎に基板に向かって上から吹き付けられ、パージガスが基板に向かって下から吹き付けられる。複数のゾーンからなる装置内を基板が水平移動することにより、処理速度に優れたALD処理を行う(例えば、特許文献5を参照)。
【0006】
エピタキシャル成長装置としては、基板を垂直に、全体としてドーナツ状の領域に並べる方式が開発された。この方式では、ウェハキャリアの円形クラスターにテーパ状のキャビティが形成され、各キャビティに2枚のウェハが向き合って配置される。プロセスガスは、キャビティの外側から入り、キャビティの中心に向かって流れる。つまり、ガス流速はキャビティの中心に近いほど速くなるので、下流におけるプロセスガスの枯渇が緩和され、キャビティの外側と内側の成膜速度の差が小さくなる(例えば、特許文献6、Fig.8、及び非特許文献1、56~57ページを参照)。
【0007】
成膜装置としては、鉛直面に対して傾いた複数の基板載置面を並べる方式が開示されている(例えば、特許文献7~9を参照)。また、基板を垂直に保持するALD装置が開示されている(例えば、特許文献10を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-6801号公報
【特許文献2】特開2014-201804号公報
【特許文献3】米国特許公報5225366号
【特許文献4】米国特許公報6576062号
【特許文献5】米国特許公報10837107号
【特許文献6】特開平01-144617号公報
【特許文献7】特開昭62-023983号公報
【特許文献8】特開平08-139031号公報
【特許文献9】特開昭48-054868号公報
【特許文献10】特開2004-292852号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Krishna Seshan編、Handbook of Thin Film Deposition Techniques Principles, Methods, Equipment and Applications, Second Editon (Materials and Processing Technology)、CRC Press、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来例に示した特許文献1に記載のバッチ式ALD技術では、一度に処理できる基板数が多いものの、真空容器全体にプロセスガスを満たす必要があるため、複数のガス種を切り替えるのに時間を要し、処理速度が小さいという問題点があった。また、基板の表面だけでなく裏面にも薄膜が形成されるため、多くのアプリケーションにおいて、裏面をエッチングする工程を追加する必要があるという問題点があった。
【0011】
また、従来例に示した特許文献2~4に記載のALD技術では、一度に処理できる基板数が少なく、処理速度が小さいという問題点があった。
【0012】
また、特許文献5に記載のALD技術は、太陽電池セルのような極めて薄い基板(200μm程度以下)には適用可能だが、半導体集積回路用のウェハのように厚い基板(700μm程度以上)には、基板の重量が大きすぎて安定して基板搬送を行うことができないため、適用が難しい。さらに、処理速度を大きくするためには、装置の全長を著しく長くしなければならず、面積生産性(単位時間・単位面積当たりに処理できる基板数)が低いという問題点があった。
【0013】
また、特許文献6及び非特許文献1に記載のエピタキシャル成長技術は、一度に処理できる基板数を限られたスペースで最大にするために考案されたものであるが、キャビティの外側と内側の成膜速度の差が小さい一方、シャワーヘッドを用いていないため、上下方向の成膜速度が不均一になるという問題点があった。とくに、ガスが主として上方から供給されることから、基板の上方で成膜速度が高くなる傾向があるという問題点があった。また、特許文献6のFig.8において、種類が異なるガスA及びガスBを供給する構成が開示されているものの、向かい合う二枚の基板の間の空間どうしが互いに広い開口を通じて連通している。したがって、ALDによる成膜を行う場合、ガスAとガスBの混合を避けるためには、真空容器全体にガスA又はガスBいずれかのガスを満たす必要があるため、複数のガス種を切り替えるのに時間を要し、処理速度が小さくなるという問題点があった。
【0014】
また、特許文献7~10に記載の成膜装置においても、向かい合う二枚の基板の間の空間どうしが互いに広い開口を通じて連通し、二枚の基板ごとに独立したガス流路が設けられていないため、ALDによる成膜を行う場合、複数のガス種を切り替えるのに時間を要し、処理速度が小さくなるという問題点があった。
【0015】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、ALD、エピタキシャル成長、CVDによる成膜を行うに際して、均一性に優れ、処理速度が大きく、面積生産性が高い成膜装置、成膜方法及びガスノズルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の第1発明のガスノズルは、第一筒と、前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップと、を備えるガスノズルであって、第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出していることを特徴とするものである。
【0017】
本願の第1発明のガスノズルにおいて、好適には、前記第一筒を挿入する、前記第一筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第二筒をさらに備えるガスノズルであって、第二ガスが、前記第二筒に設けられた貫通穴である第二導入孔、並びに、前記第二筒の内壁面及び前記第一筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、前記第一筒の先端と前記第二筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第一筒の先端が前記第二筒の先端から飛び出していることが望ましい。
【0018】
さらに好適には、前記第二筒を挿入する、前記第二筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第三筒をさらに備えるガスノズルであって、第三ガスが、前記第三筒に設けられた貫通穴である第三導入孔、並びに、前記第三筒の内壁面及び前記第二筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、前記第二筒の先端と前記第三筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第二筒の先端が前記第三筒の先端から飛び出していることが望ましい。
【0019】
さらに好適には、前記キャップに設けられた誘電体窓を介して電磁エネルギーを放射するプラズマ源を備えることが望ましい。
【0020】
本願の第2発明の成膜装置は、前記反応室内に、鉛直面に対して傾いた基板載置面を持つサセプタを複数備え、前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜装置であって、本願の第1発明のガスノズルを備えることを特徴とするものである。
【0021】
本願の第2発明の成膜装置において、好適には、複数の前記サセプタが、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、複数の前記サセプタを、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる回転機構を備えることが望ましい。
【0022】
本願の第3発明の成膜方法は、反応室内に設けられた、鉛直面に対して傾いた基板載置面を備えた複数のサセプタ上の前記基板載置面に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、前記反応室内にガスを供給しつつ前記反応室からガスを排気するステップと、前記基板載置面から前記基板を前記反応室外に移動させて取り出すステップと、を含み、前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜方法であって、本願の第1発明のガスノズルを用いることを特徴とするものである。
【0023】
第3発明の成膜方法において、好適には、前記複数の基板載置面が、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、前記複数の基板載置面を、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させることが望ましい。
【0024】
さらに、本願の第2発明の成膜装置において、好適には、前記複数のサセプタ又は前記基板載置面に載置された基板が、ランプによって加熱されることが望ましい。
【0025】
また、好適には、前記複数のサセプタの上方に、マイクロ波、高周波、又はパルス電力によってプラズマを発生させるプラズマ源を備えることが望ましい。
【0026】
また、さらに好適には、前記プラズマ源が、前記キャップに設けられた誘電体窓を介して、電磁エネルギーを前記反応室内に放射する構成であることが望ましい。
【0027】
このような構成により、均一性に優れ、処理速度が大きく、面積生産性が高い成膜装置、成膜方法及びガスノズルを提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ALD、エピタキシャル成長、CVDによる成膜を行うに際して、均一性に優れ、処理速度が大きく、面積生産性が高い成膜装置、成膜方法及びガスノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す平面図
図2】本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図
図3】本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図
図4】本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す斜視図
図5】本発明の実施の形態1におけるサセプタの配置を示す平面図
図6】本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す断面図
図7】本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す断面展開図
図8】本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す断面図
図9】本発明の実施の形態2における成膜装置の構成を示す斜視図
図10】本発明の実施の形態2における成膜装置の構成を示す断面図
図11】本発明の実施の形態3におけるサセプタの配置を示す平面図
図12】本発明の実施の形態4における成膜装置の構成を示す断面図
図13】本発明の実施の形態5における成膜装置の構成を示す断面図
図14】本発明の実施の形態6における成膜装置の構成を示す断面図
図15】本発明の実施の形態7におけるサセプタの構成を示す斜視図
図16】本発明の実施の形態7におけるサセプタホルダの構成を示す平面図
図17】本発明の実施の形態8における成膜装置の構成を示す断面図
図18】本発明の実施の形態9における成膜装置の構成を示す断面図
図19】本発明の実施の形態9における成膜装置の構成を示す断面図
図20】本発明の実施の形態10におけるサセプタの構成を示す斜視図
図21】本発明の実施の形態11におけるサセプタの構成を示す斜視図
図22】本発明の実施の形態11におけるサセプタの配置を示す平面図
図23】本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示す平面図
図24】本発明の実施の形態12におけるサセプタの構成を示す斜視図
図25】本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示す斜視図
図26】本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示す断面図
図27】本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示す断面図
図28】本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示す平面図
図29】本発明の実施の形態13におけるサセプタの構成を示す斜視図
図30】本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示す断面図
図31】本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示す斜視図
図32】本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示す断面図
図33】本発明の実施の形態14における成膜装置の構成を示す断面図
図34】本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示す断面図
図35】本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示す斜視図
図36】本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示す断面図
図37】本発明の実施の形態16における成膜装置の構成を示す斜視図
図38】本発明の実施の形態16における成膜装置の構成を示す断面図
図39】本発明の実施の形態16における成膜装置の構成を示す断面図
図40】本発明の実施の形態17におけるガスノズルの構成を示す斜視図
図41】本発明の実施の形態18における成膜装置の構成を示す断面図
図42】本発明の実施の形態18における成膜装置の構成を示す断面図
図43】本発明の実施の形態19におけるガスノズルの構成を示す断面図
図44】本発明の実施の形態20における成膜装置の構成を示す平面図
図45】本発明の実施の形態20における成膜装置の構成を示す断面図
図46】本発明の実施の形態20における成膜方法を示す平面図
図47】本発明の実施の形態20における成膜方法を示す平面図
図48】本発明の実施の形態20における成膜方法を示す平面図
図49】本発明の実施の形態20における成膜方法を示す平面図
図50】本発明の実施の形態21におけるガスノズルの構成を示す斜視図
図51】本発明の実施の形態21における成膜装置の構成を示す断面図
図52】本発明の実施の形態21におけるガスノズルの構成を示す断面図
図53】本発明の実施の形態21における成膜装置の構成を示す断面図
図54】本発明の実施の形態22における成膜装置の構成を示す断面図
図55】本発明の実施の形態23におけるサセプタの構成を示す斜視図
図56】本発明の実施の形態23における成膜装置の構成を示す断面図
図57】本発明の実施の形態23におけるサセプタの構成を示す斜視図
図58】本発明の実施の形態23におけるサセプタの構成を示す斜視図
図59】本発明の実施の形態24における成膜装置の構成を示す平面図
図60】本発明の実施の形態24における成膜装置の構成を示す断面図
図61】本発明の実施の形態24におけるガスノズルの構成を示す斜視図
図62】本発明の実施の形態25におけるガスノズルの構成を示す断面図
図63】本発明の実施の形態26における成膜装置の構成を示す断面図
図64】本発明の実施の形態27における成膜装置の構成を示す平面図
図65】本発明の実施の形態27における成膜装置の構成を示す断面図
図66】本発明の実施の形態28における成膜装置の構成を示す断面図
図67】本発明の実施の形態29における成膜装置の構成を示す斜視図
図68】本発明の実施の形態29における成膜装置の構成を示す断面図
図69】本発明の実施の形態30における成膜装置の構成を示す断面図
図70】本発明の実施の形態31における成膜装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態における成膜装置及び方法について図面を用いて説明する。
【0031】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1図8を参照して説明する。
【0032】
図1は、実施の形態1における成膜装置の構成を示すもので、搬送系も含めた装置全体の平面図である。
【0033】
なお、以降の説明をわかりやすくするため、各図中にx、y、zの軸方向を示す図を入れている。図1の場合、x軸は図の左から右に向かう向き、y軸は図の下から上に向かう向き、z軸は紙面の奥から手前に向かう向きである。
【0034】
図1において、予備室1及び2と、反応室3及び4が、ゲート5を介してロボット室6に接続されている。ロボット室6はロボット7を備えており、予備室1又は2と、反応室3又は4の間で基板の搬送を行う。予備室1及び2をロードロック室とし、反応室3及び4とロボット室6を常時真空状態で運転してもよいし、予備室1及び2とロボット室6を常時大気状態とし、反応室3及び4を大気状態にして基板の出し入れを行い、真空状態にして成膜する構成としてもよい。なお、「真空」とは減圧状態のことであり、大気圧よりも低い圧力を意味する。また、ロボット室6がさらに基板のアライメントをする機能を備えてもよい。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、基板をサセプタに載置していない状態を示す図である。
【0036】
図2において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする二等辺三角形に近似する形状である(上辺が下辺より短い台形に近似する形状でもある)。つまり、基板載置面は鉛直面に対して傾いている。傾斜角は、鉛直面に対して3~10度が好ましく、典型的には5度である。傾斜角が小さすぎると、ロボットアームを二つのサセプタ8間に入れるために、サセプタ8をかなり大きな寸法にして、最上部の二つのサセプタ8間の距離を確保する必要が生じるため好ましくなく、逆に傾斜角が大きすぎると、反応室3内に必要数の基板載置面を設けるためには反応室3をかなり大きな寸法にする必要が生じるため好ましくない。後述するように、反応室3の内壁は該円筒形状であり、その内部のドーナツ状の凹空間に沿うようにサセプタ8を配置するため、x軸方向の端面11は円筒の一部をなす。図では見えない側の端面も円筒の一部をなす。また、この二等辺三角形の二つの等辺を含む面としての斜面9に座グリ部10が設けられている。つまり、図で見えない側の斜面にも、同様に座グリ部10が設けられている。座グリ部10の周辺に、基板搬送用のロボット7のロボットアームの爪を逃がすための逃し12が4個設けられている。逃し12の斜面9に対する深さは、座グリ部10よりも若干深く、座グリ部10がなす円の内側に少し入り込んだ形状となっている。ロボットアームとしては種々のものを適宜利用することができるが、ベルヌイチャック方式のものを用いれば、スムーズな基板載置を実現できる。サセプタ8の材質としては、熱伝導率が高く、変形・変質しにくいものが好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼、炭化珪素などを用いることができる。
【0037】
この二等辺三角形の底辺に沿ってサセプタ底部13が設けられている。また、サセプタ底部13の中央付近にガス排出口となるスリット14が設けられている。座グリ部10と同様、スリット14も、図で見えない側にも設けられている。後述するように、反応室3の内壁は該円筒形状であり、その内部のドーナツ状の凹空間に沿うようにサセプタ8を配置するため、サセプタ8の上面15は該扇形状となっている。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、基板をサセプタに載置した状態を示す図である。
【0039】
図3において、座グリ部10に基板16が載置されている。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示す斜視図であり、反応室の構成を示す分解図である。後述するように、サセプタ8は反応室3内部のドーナツ状空間内で、ドーナツ形状の周方向に回転するが、図4においては、その回転の方向をθで示している。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの配置を示す平面図であり、反応室3の上から見た状態を示す。簡単のため、サセプタ8の上面15のみを図示している。
【0042】
図6は、本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。なお、断面の奥に見えるであろう構造(ゲート開口、サセプタ、座グリ部など)を点線で模式的に示している。
【0043】
図7は、本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示すもので、並べて配置された複数のサセプタ8上の複数の座グリ部10の中心を通り、水平面に垂直な円筒面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図を展開したものの一部であり、座グリ部10上に基板16を載置した状態を示す。
【0044】
図3図7において、反応室3は全体として直方体をなすが、内壁は該円筒形状である。反応室3内部のドーナツ状の凹空間に複数のサセプタ8がサセプタホルダ17上、水平方向に放射状に並べて配置されている。シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19は、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっている。反応室3の上部には、オーリング20を介して蓋21が配置され、気密性が確保される。つまり、真空状態で成膜処理を実行できる。蓋21には、ガス供給管が、周方向に、パージガス供給管22、プリカーサを含むガス供給管23、パージガス供給管24、酸化剤を含むガス供給管25の順に設けられている。反応室3内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26からスリット14を通り、排気マニホールドで合流した後、排気口27及び28から排気される。
【0045】
ここで、「座グリ部10の周辺に向かう部分」とは、図6において矢印Hで示すように、ガス噴出孔19からガス流れが直進した場合に、座グリ部10の中心近傍を通らずに、座グリ部10の周辺近傍のみを通過する向きにガスを噴出させる部分のことである。また、「座グリ部10の中心に向かう部分」とは、図6において矢印Gで示すように、ガス噴出孔19からガス流れが直進した場合に、座グリ部10の中心近傍を通過する向きにガスを噴出させる部分のことである。なお、座グリ部10と基板16が長方形など、円とは異なる場合においても同様に、「座グリ部10の周辺に向かう部分」とは、ガス噴出孔19からガス流れが直進した場合に、座グリ部10の中心近傍を通らずに、座グリ部10の周辺近傍のみを通過する向きにガスを噴出させる部分のことであり、「座グリ部10の中心に向かう部分」とは、ガス噴出孔19からガス流れが直進した場合に、座グリ部10の中心近傍を通過する向きにガスを噴出させる部分のことである。
【0046】
また、ここで、「貫通面積が大きい貫通孔となっている」とは、貫通孔又は貫通孔群が占める割合が高い、つまり、単位面積当たりの貫通部分の面積が占める割合が高いことを意味する。貫通部分の面積が占める割合は、貫通孔群の密度、貫通孔の大きさ、貫通孔の幅など、種々の方法で変えられることはいうまでもない。本実施の形態においては、一事例として、同じ大きさの円形貫通孔の密度によって、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となるよう構成している。
【0047】
反応室3の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている。ロボット室6に設けられたロボット7のロボットアームが、ゲート開口29を介して基板16を座グリ部10に載置、又は座グリ部10に載置された基板16をロボット室6に取り出す。サセプタ8は、反応室3内で水平方向に、複数のサセプタ8が配置されている向きに移動する、すなわち、ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる回転機構によって回転するので、ロボットアームはゲート開口29を介してすべてのサセプタ8にアクセス可能となっている。ここで、「複数のサセプタ8が配置されている向き」とは、水平方向に並べられたサセプタ8の中心を繋ぐことによって表現できる配置の向きのことであり、本実施の形態においては、図4の矢印Fの向き(θ方向)のことである。
【0048】
反応室3の下部に、サセプタホルダ17の中心に接続された回転軸30が設けられ、サセプタホルダ17全体がすべてのサセプタ8とともにドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転する。
【0049】
蓋21には、複数のガス噴出孔19を備えたガスノズルとしてのシャワープレート18が設けられ、パージガス供給マニホールド31及び32からガス噴出孔19を通って、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、下方に向けてガスが噴出する。ガス導入口としてのガス噴出孔19が、座グリ部10よりも上方で反応室3内にガスを供給する構成である。
【0050】
また、図7からわかるように、反応室3内に複数のサセプタ8が水平方向に放射状に並べて配置されており、これにより、斜面9に設けられた複数の座グリ部10のうちの二つの座グリ部10が、上方ほど座グリ部10間の距離が広くなるように向かい合い、向かい合う二つの座グリ部10の間にV溝状空間26を構成する。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態1における成膜装置の構成を示すもので、図6のE―E断面図である。
【0052】
図8において、蓋21に設けられた四つの凹部とシャワープレート18に囲まれた四つの該扇形状の供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31及び32、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34が設けられている。つまり、ガスノズルとしてのシャワープレート18が、ドーナツ形状の周方向に複数のガスノズル群に分割され、ガスノズル群ごとに異なる種類のガスが噴出可能な構成となっている。つまり、移動機構の移動方向(水平方向)に複数の群に分割されたガスノズル群を備える。なお、必要に応じて、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34には、パージガスのみを供給することもできる。
【0053】
簡単のため、予備室1及び2をロードロック室とし、反応室3及び4とロボット室6を常時真空状態で運転する場合について、動作を説明する。基板載置面としての座グリ部10の温度を、予め所定の温度にしておく。用いる反応によって適切な温度は異なるが、レジスト上にALD(原子層堆積)反応によって酸化膜を形成する場合は50~250℃、典型的には80℃である。座グリ部10の温度を常温より高く一定に保つ方法は、種々の加熱方法から適宜選択できる。例えば、サセプタ8に抵抗加熱ヒーターを埋め込んでもよいし、ランプ加熱、誘導加熱などの方法を用いることも可能である。予備室1又は2とロボット室6の間のゲート5を開けた状態で、予備室1又は2からロボット7で基板16を取り出し、ロボット室6と反応室3の間のゲート5を開けた状態で、ゲート開口29を介して基板16を反応室3内の座グリ部10に載置する。つまり、反応室3内に設けられた、鉛直面に対して傾いた複数の基板載置面としての座グリ部10に、反応室3外から基板16を移動させて載置する。このとき、サセプタホルダ17の回転は停止しておく。
【0054】
次に、サセプタホルダ17を回転させ、隣の座グリ部10に基板16を載置する。この操作を繰り返し実行することで、反応室3内のすべての座グリ部10に基板16を載置する。ここでは、座グリ部一つにつき一回ずつサセプタホルダ17を回転する場合を例示したが、装置の構成によっては、複数の座グリ部10へ基板16を載置するたびに、サセプタホルダ17を回転させてもよい。また、すでに成膜処理が完了した基板16を座グリ部10から取り出し、未成膜の基板16を座グリ部10に載置する基板交換の操作を、座グリ部10一つごとに連続して行ってもよいし、反応室3内のすべての成膜済み基板16を座グリ部10から取り出した後、未成膜の基板16を座グリ部10に順次載置してもよい。基板16の交換又は載置操作を実行中は、すべてのシャワープレートから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室3内に供給し、反応室3がロボット室6に対して陽圧となるようにしておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室3内に混入しうる、不要なガスの濃度を最小限にすることができる。
【0055】
反応室3内のすべての座グリ部10に基板16を載置し終えたら、ゲート5を閉じ、数秒の間、すべてのシャワープレートから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室3内に供給しておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室3内に混入しうる、不要なガスの濃度を低減させることができる。
【0056】
次に、回転機構を動作させ、サセプタホルダ17を回転させながら、蓋21に設けられた四つの凹部とシャワープレート18に囲まれた四つの供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31及び32、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34から、それぞれ、パージガス、プリカーサを含むガス、酸化剤を含むガスを反応室3内に供給しつつ、排気口27及び28から排気する。ここでは、排気口が二つ設けられているものを例示したが、四つの供給マニホールドに対応する形で、四つの排気口を設けてもよい。あるいは、さらに、排気口ごとに別々のポンプで排気する構成としてもよいし、排気口ごとに別々の調圧バルブを用いて、きめ細かく調圧を行えるようにしてもよい。
【0057】
このとき用いるパージガスの流量は、10~1000sccm(standard cubic centimeters per minute)程度、典型的には100sccmである。
【0058】
プリカーサは、成膜したい膜種に合わせて適宜選択できる。例えば、Alを成膜する場合はTMA(トリメチルアルミニウム)、ZrOを成膜する場合はTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)、TiOを成膜する場合はメチルシクロペンタジエニルトリスジメチルアミノチタン、SiOを成膜する場合は3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)を用いることができる。プリカーサは、バブラー、気化装置、超音波振動、インジェクションなどを用いて供給するが、その供給量は、3~30mg/回程度、典型的には10mg/回になるよう、回転速度に応じて調整する。プリカーサを単独で反応室3に供給するのは困難なため、通常は希ガスなどの不活性ガスで希釈する。典型的にはArガスで希釈するが、希釈ガスの流量は10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。V溝状空間26におけるガス流速は、その下方ほど速くなるので、下流におけるプリカーサの枯渇が緩和され、座グリ部10の上側と下側の成膜速度の差が小さくなる。また、プリカーサの液化を防止するため、希釈ガスを加熱することが好ましい。希釈ガスの温度は40~150℃程度、典型的には80℃である。基板16がプリカーサを含むガス供給マニホールドの下方を通過すると、基板16の表面にプリカーサ分子が吸着する。その反応は自己制御的であり、基板16表面に吸着可能なサイトがなくなった時点で吸着反応は終了する。つまり、基板16表面において、ほぼ均一に原子一層分のプリカーサ分子が吸着した状態が得られる。
【0059】
座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が、基板16の表面に吸着するプリカーサ分子の割合が高くなるが、本発明においては、シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19が、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっているため、従来技術、例えば非特許文献1に記載の成膜装置を用いる場合に比べて、より均一に、より短時間で吸着ステップを完了させることができる。
【0060】
リアクタントとしての酸化剤は適宜選択できるが、HO、H、オゾンなどが利用可能である。なお、窒化膜を成膜するために、窒化剤、例えばNHを用いることも可能である。酸化剤が常温で液体の物質であれば、プリカーサと同様、バブラー、気化装置、超音波振動、インジェクションなどを用いて供給する。例えばHOを用いる場合、その供給量は、1~100mg/回程度、典型的には10mg/回になるよう、回転速度に応じて調整する。この場合、酸化剤を単独で反応室3に供給するのは困難なため、通常は希ガスなどの不活性ガスで希釈する。典型的にはArガスで希釈するが、希釈ガスの流量は10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。また、酸化剤が常温で液体の物質である場合、その液化を防止するため、希釈ガスを加熱することが好ましい。希釈ガスの温度は40~150℃程度、典型的には80℃である。基板16が酸化剤を含むガス供給マニホールドの下方を通過すると、基板16表面に吸着したプリカーサと酸化剤との反応により、およそ原子一層分の薄膜が基板16表面に成膜される。例えば、プリカーサとしてTMA、酸化剤としてHOを用いる場合、HOがプリカーサのメチル基と反応して副生成物のメタンが生じ、メタンはガス排気口27及び28から反応室3外に排出される一方、表面にヒドロキシル化したAlが残り、薄膜となる。
【0061】
反応室3内の圧力は、10~2000mTorr程度、典型的には100mTorrである。ただし、大気圧に近い圧力でALD成膜を行うことも可能であり、有効な圧力範囲は上記に限定されない。基板16が1回分成膜される間(およそ原子一層分の薄膜が形成される間)、本実施の形態の場合は、基板16がドーナツ形状の周方向に一回転する間、各基板16が各ガスの噴出を受ける時間が0.1~10s、典型的には5sになるように、回転速度を設定する。例えば、本実施の形態では、蓋21に設けられた4個の凹部とシャワープレート18に囲まれた4個の供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31及び32、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34が設けられている。つまり、プリカーサを含むガスを噴出させるガスノズル群と、リアクタントを含むガスを噴出させるガスノズル群との間に、パージガスを噴出させるガスノズル群が配置されている。したがって、各基板16は、ドーナツ形状の周方向に一回転する間に、パージガス、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの順に各種ガスに暴露されるプロセスが1回だけ生じる。各種ガスに暴露する時間を5sとするには、5×4=20sで1回転する設定、すなわち、3rpmで回転させればよい。サセプタホルダ17のサセプタ8が載っている面よりも上で、各ガスがなるべく混合しないようにするため、各V溝状空間26に供給されるガスの量が等しくなるようにし、隣り合うV溝形状空間26の間に差圧が生じにくいようにする。あるいは、パージガスの量を、プリカーサを含むガスや酸化剤を含むガスの量よりも若干多くしておくとよい。このようにすれば、プリカーサと酸化剤が各V溝状空間26内で混合することを効果的に回避できる。
【0062】
このようにして、サセプタホルダ17を回転させることにより、各基板16はパージガス、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの順に各種ガスに暴露され、およそ原子一層分の酸化物薄膜が基板16表面に形成される。このようなプロセスは、ドーナツ形状の周方向に、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガス、パージガスの順にガスを噴出させるガスノズル群が配置されることによって実現されている。この一連のステップを繰り返し実施するために、サセプタホルダ17を反応室3内で何度も回転させることにより、所定の厚さの酸化物薄膜を得ることができる。ここで、およそ原子一層分という表現を用いたが、1サイクルで形成される薄膜の厚さを膜厚に換算するとおよそ1~2オングストロームであるから、例えば厚さ20nmの薄膜を形成したい場合は、100~200サイクルのプロセスが必要となるので、本実施の形態の場合、サセプタホルダ17を反応室3内で100~200回回転させる。
【0063】
所定の膜厚の成膜を終えた基板16は、基板載置のステップとは逆に、座グリ部10からゲート開口29を介して反応室3外に取り出され、ロボット7を使って予備室1又は2に収納される。なお、本実施の形態においては、二つの反応室3及び4が設けられており、片方の反応室で成膜をしながら、他方の反応室で基板交換を行うこともできる。このように、複数の反応室に対して、ロード及びアンロードと成膜という、ともに時間を要する処理を同時並行で実行することにより、さらに処理速度が大きく、さらに面積生産性が高い成膜装置及び方法が実現できる。
【0064】
本実施の形態では、従来技術、例えば特許文献1に記載の成膜装置と異なり、基板16の裏面がサセプタ8によって保護されるため、基板16の裏面に薄膜が形成されない。したがって、裏面をエッチングする工程を追加する必要がない。また、従来技術、例えば特許文献1~4に記載の成膜装置に比べて、ガスを供給すべきエリア(向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26)の体積が極めて小さく、また、このエリアに直接ガス噴出孔19から各種ガスを供給するので、吸着反応、酸化反応、パージがすべてごく短時間で完了するため、トータルの成膜時間を短時間化できる。また、一度に処理できる基板数が多く、処理速度が大きい。さらに、狭い面積で多数の基板を処理できるため、従来技術、例えば特許文献5に記載の成膜装置に比べ、面積生産性が高い。また、基板16をサセプタ8上の座グリ部10に重力によって保持する構成であるため、半導体集積回路用のウェハのように厚い基板(700μm程度以上)においても、安定して処理することができる。
【0065】
また、向かい合う二枚の基板の間の空間(向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26)どうしが、互いに極めて狭い開口を通じてのみ連通している。このことは、サセプタ8の上面15と、反応室3の上部内壁面(本実施の形態においては、シャワープレート18)との距離が極めて小さいことによる。つまり、一列に並んだ一群のガス噴出孔19からV溝状空間26に向けて噴出されるガスが、サセプタ8の上面を乗り越えて隣のV溝状空間26に混入する恐れが極めて小さい。さらに、サセプタ8とともに回転する、二つのサセプタ8間の空間を排気する回転排気口としてのスリット14を備え、プリカーサを含むガスを噴出させるガスノズル群と、リアクタントを含むガスを噴出させるガスノズル群との間に、パージガスを噴出させるガスノズル群が配置されている。したがって、プリカーサを含むガスとリアクタントを含むガスを同時に反応室3内に供給しても、互いが混合する恐れは極めて小さく、複数のガス種を切り替える必要がないため、特許文献6~10に記載の成膜装置に比べて、成膜時間を短時間化できる。なお、このような効果を得るためには、サセプタ8の最上部(上面15)と反応室3の上部内壁面との距離は1mm以上10mm以下とすべきである。サセプタ8の上面15と反応室3の上部内壁面との距離が1mm未満だと、装置の経年変化等によって回転精度が低下した際に、サセプタ8の上面15と反応室3の上部内壁面が接触する恐れがある。逆に、サセプタ8の上面15と反応室3の上部内壁面との距離が10mmよりも広いと、プリカーサを含むガスとリアクタントを含むガスが混合する恐れが若干高くなる。本実施の形態においては、反応室3の上部内壁面はシャワープレート18の下面であるが、装置の構成によっては蓋21の下面が該当する場合もあり得る。
【0066】
本実施の形態では、サセプタ8を20~30個程度設け、反応室3内に基板16を40~60枚程度載置できるものを例示したが、反応室3に設けるサセプタ8の数が多いほど面積生産性が高まる。例えば、サセプタ8を13個設け、反応室3内に基板16を26枚載置できる構成としてもよい。あるいは、サセプタ8を100個設け、反応室3内に基板16を200枚載置できる構成としてもよい。
【0067】
基板交換を実施した後、サセプタホルダ17を連続的に回転させる場合を例示したが、各ガス噴出孔19が各サセプタ8の上面15の直上に位置するタイミングで、ガス流れが乱れてしまう。そこで、回転と停止を繰り返し、間欠的にプロセスを実施してもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の置換がより確実に行えるという利点がある。あるいは、間欠的にプロセスを実施する場合、回転中はプリカーサを含むガス供給マニホールド33及び酸化剤を含むガス供給マニホールド34からもパージガスを供給するか、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を減少させるか、又は、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を停止する構成としてもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、置換がさらにより確実に行えるという利点がある。あるいは、連続的に回転させるか、間欠的に回転と停止を繰り返すかにかかわらず、各ガス噴出孔19が各サセプタ8の上面15の直上に位置するタイミングで、プリカーサを含むガス供給マニホールド33及び酸化剤を含むガス供給マニホールド34からもパージガスを供給するか、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を減少させるか、又は、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を停止する構成としてもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、置換がさらにより確実に行えるという利点がある。
【0068】
また、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、パージガス供給マニホールド31及び32、酸化剤を含むガス供給マニホールド34の各供給マニホールドがほぼ同じ大きさである場合を例示したが、プロセスに応じて大きさを変えてもよい。例えば、パージガス供給マニホールド31及び32を、プリカーサを含むガス供給マニホールド33及び酸化剤を含むガス供給マニホールド34より大きくすることで、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の置換がより確実に行えるような構成としてもよい。
【0069】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図9及び図10を参照して説明する。
【0070】
図9は、本発明の実施の形態2における成膜装置の構成を示すもので、反応室の構成を示す分解斜視図であり、図4に相当する。
【0071】
図10は、本発明の実施の形態2における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図6に相当する。
【0072】
実施の形態1においては、反応室3の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている場合を例示したが、図9及び図10に示すように、実施の形態2では、サセプタ8よりも上方に、基板16交換のためのゲート開口29を備える。ゲート開口29は、蓋21の突起部35の側方に設けられている。突起部35のゲートに接する面はDカットされて平面になっており、確実にシールを行えるよう構成されている。突起部35の直下にはシャワープレート18に切り欠き36が設けられている。
【0073】
このような構成では、反応室3の体積が大きくなってしまうという欠点があるが、基板16の交換にあたって、ロボットアームが広い開口から座グリ部10にアクセスできることから、基板16交換を高速に行えるという利点がある。
【0074】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図11を参照して説明する。
【0075】
図11は、本発明の実施の形態3におけるサセプタの配置を示すものであり、反応室3の上から見た状態を示す平面図で、図5に相当する 。簡単のため、サセプタ8においてはその上面15のみを図示している。
【0076】
実施の形態1においては、反応室3内部のドーナツ状の凹空間に複数のサセプタ8をサセプタホルダ17上、水平方向に放射状に並べて配置するに際して、隙間なくドーナツ状の凹空間をサセプタ8で埋める場合を例示したが、実施の形態3ではドーナツ状の凹空間を八つの扇形エリアに区切り、それぞれの扇形エリアを隔壁37で仕切り、一つおきにサセプタ8を複数(図11においては3個)、放射状に並べる構成としている。サセプタ8を配置しない扇形エリア38は空間であり、このエリアに噴出されたガスは、速やかに反応室3外に排出される。つまり、座グリ部10が、ドーナツ形状の周方向に複数の基板載置面群に分割され、ドーナツ状空間内の複数の基板載置面群の間の空間は、全体がガス排出口となっている構成である。
【0077】
このような構成では、一つの反応室内に載置できる基板数が減少するという欠点があるが、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の置換がより確実に行えるという利点がある。
【0078】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図12を参照して説明する。
【0079】
図12は、本発明の実施の形態4における成膜装置の構成を示すもので、図6のE―E断面図であり、図8に相当する。なお、実施の形態2のように、サセプタ8よりも上方に、基板16交換のためのゲート開口29を備える場合を示す。
【0080】
図12において、蓋21に設けられた12個の凹部とシャワープレート18に囲まれた12個の該扇形状の供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31及び32、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34が設けられている。つまり、ガスノズルとしてのシャワープレート18が、ドーナツ形状の周方向に複数のガスノズル群に分割され、ガスノズル群ごとに異なる種類のガスが噴出可能な構成となっている。なお、必要に応じて、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34には、パージガスのみを供給することもできる。また、ゲート開口29近傍部分の蓋21は平面になるようDカットされているので、直線部39が現れている。
【0081】
このような構成では、サセプタホルダ17を回転させることにより、各基板16は、ドーナツ形状の周方向に一回転する間に、パージガス、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの順に各種ガスに暴露されるプロセスが3回繰り返される。つまり、およそ原子三層分の酸化物薄膜が基板16表面に形成される。したがって、サセプタホルダ17を反応室3内で回転させる数を1/3にすることができる。
【0082】
このように、ガス供給に関連する部分の構成によって、ドーナツ形状の周方向に一回転する間にALDプロセスを何回実施するかが変化する。本実施の形態では、12個の該扇形状の供給マニホールドを設ける場合を例示したが、6個、7個、8個、16個など、さまざまな構成が考えられる。どのような構成にすると最も処理速度や面積生産性がよくなるかはプロセスに依存するので、搬送や各ガスに暴露すべき時間などによって適宜決定すればよい。また、各反応及びガス置換を効果的に促進するため、例えば、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの各ガスを供給するエリアの面積比を変えてもよい。
【0083】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図13を参照して説明する。
【0084】
図13は、本発明の実施の形態5における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。
【0085】
図13において、蓋21にはプリカーサを含むガス供給管23、酸化剤を含むガス供給管25が設けられている。蓋21には、実施の形態1と同様、四つの供給マニホールドが設けられ、これらに対応する形で、四つの排気口を設けている。図13においては、プリカーサを含むガス供給管23の下方に排気口40、酸化剤を含むガス供給管25の下方に排気口41が設けられている。酸化剤を含むガス供給管25は、扇形の電極42に接続され、電極42は、絶縁リング43及び44により蓋21と電気的に絶縁されている。シャワープレート18も、酸化剤を含むガス供給管25からのガスを噴出するためのガス噴出孔19を含む扇形部分のみ、他の部分と分離されている。電極42は、図示しない高周波電源に接続されており、電極42に高周波電力を供給することによって、シャワープレート18とサセプタ8の間の空間にプラズマ45を発生させることができる。
【0086】
このような構成では、酸化剤を含むガスを電離することによって、気体状の酸化剤よりも酸化力が強いラジカルやイオン、オゾンなどが発生する。したがって、プロセスをより低温で実施することが可能となる。これは、窒化プロセスにおいても同様であり、NHガスを含むガスをプラズマ化させることで生じるラジカルやイオンを活用することで、プロセスをより低温で実施することが可能となる。プロセスの低温化により、プリカーサの吸着が速やかに行われるため、さらに処理速度を大きく、面積生産性を高くすることができる。また、プラズマを活用することで、より緻密な薄膜が形成されるという利点がある。
【0087】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図14を参照して説明する。
【0088】
図14は、本発明の実施の形態6における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図6に相当する。
【0089】
図14において、シャワープレート18は、サセプタ8の上方で、反応室3の外周近傍に設けられている。また、サセプタ底部13は、サセプタ8がなす扇形の外側に設けられ、ガス排出口となるスリット14はサセプタ8がなす扇形の内側に設けられている。二つのサセプタ8の距離は、扇形の外側ほど広く、内側ほど狭いので、実施の形態1においては、シャワープレート18は、サセプタ8の上方全体に渡って設けられ、サセプタ底部13は、サセプタ8がなす扇形の内側及び外側に設けられ、ガス排出口となるスリット14はサセプタ8がなす扇形の中央付近に設けられているため、ガスは扇形の外側の方が流れやすくなっており、扇形の内側でプリカーサや酸化剤が不足したり、パージガスによる置換が滞ったりする可能性がある。一方、本実施の形態においては、二つのサセプタ8の距離が最も広い、サセプタ8の上方で、反応室3の外周近傍からV溝状空間26に噴出され、二つのサセプタ8の距離が最も狭い、サセプタ8の下方で、反応室3の内側に近い部分から排出される。したがって、基板16全体に各種ガスが供給されるという利点がある。
【0090】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、図15及び図16を参照して説明する。
【0091】
図15は、本発明の実施の形態7におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、図2に相当する。
【0092】
図16は、本発明の実施の形態7におけるサセプタホルダの構成を示す平面図であり、サセプタホルダを上から見たものである。
【0093】
図15において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする二等辺三角形に近似する形状である(上辺が下辺より短い台形に近似する形状でもある)。実施の形態1においては、この二等辺三角形の底辺に沿ってサセプタ底部13が設けられているが、本実施の形態においては、サセプタ底部は設けられていない。
【0094】
一方、図16において、サセプタホルダ17には、ガス排出口としてのスリット46が放射状に複数設けられている。つまり、サセプタ8とともに回転する、二つのサセプタ8間の空間を排気する回転排気口としてのスリット46が設けられている。したがって、サセプタホルダ17上にサセプタ8を、二つのスリット46の間に放射状に並べて配置することで、実施の形態1と同様に、反応室3内に供給されたガスを、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26からスリット46を通り、排気口から排気させる構成を実現できる。なお、サセプタ8をサセプタホルダ17上に配置した際の位置を示すため、代表例として一つだけ、サセプタ8の上面15を点線と網掛けにより示している。
【0095】
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図17を参照して説明する。
【0096】
図17は、本発明の実施の形態8における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図6に相当する。
【0097】
実施の形態1においては、サセプタホルダ17の中心の最上部と、蓋21の中心部の間の隙間を通じて、種類の異なるガスが互いに混合してしまうおそれがあるが、図17においては、蓋21の中心部の貫通穴を、上部回転軸47が貫通する構成としている。これにより、反応室3の中心付近を介して種類の異なるガスが互いに混合することを効果的に防止できるという利点がある。
【0098】
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について、図18及び図19を参照して説明する。
【0099】
図18及び図19は、本発明の実施の形態9における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図6に相当する。
【0100】
実施の形態1においては、サセプタホルダ17の中心の最上部と、蓋21の中心部の間の隙間を通じて、種類の異なるガスが互いに混合してしまうおそれがあるが、図18においては、中空の円筒48が蓋21の中心付近に一体化されて設けられている。これにより、反応室3の中心付近を介して種類の異なるガスが互いに混合することを効果的に防止できるという利点がある。ここでは、反応室3の中心付近のガス経路を長くするために、中空の円筒48が蓋21の中心付近に一体化されて設けられている場合を例示したが、サセプタホルダ17と蓋21が互いに嵌合する構成であれば、他の構成であっても同様の効果を奏する。
【0101】
また、反応室3の中心付近を介して種類の異なるガスが互いに混合することをさらに効果的に防止するため、図19に示すように、蓋21の中心付近に設けた中心部ガス噴出孔49から、パージガス又は不活性ガスを噴出させる構成としてもよい。サセプタホルダ17と蓋21が互いに嵌合する構成とせず、図6の構成において反応室3の中心付近に中心部ガス噴出孔49を設け、パージガス又は不活性ガスを噴出させる構成としてもよい。
【0102】
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図20を参照して説明する。
【0103】
図20は、本発明の実施の形態10におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、図15に相当する。
【0104】
図20において、サセプタ8の最上部に、ナイフエッジ状の先端部50が設けられている。このように、サセプタ8の上部を、先端に向かって徐々に鋭くなる形状とする構成により、サセプタホルダ17を回転させる際に、各ガス噴出孔19が各サセプタ8の先端部50の直上に位置するタイミングで、ガス流れが一瞬乱れてしまうものの、実施の形態1において生じうるガス流れの乱れに比較すると、その乱れはごく短時間なものとなる。したがって、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、ガス置換がより確実に行えるという利点がある。
【0105】
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図21及び図22を参照して説明する。
【0106】
図21は、本発明の実施の形態11におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、図15に相当する。
【0107】
図22は、本発明の実施の形態11におけるサセプタの配置を示す平面図であり、サセプタ8をドーナツ状空間に配置された状態を示すため、サセプタ8を3個だけ取り出して描いたものである。
【0108】
図21及び図22において、サセプタ8の下部において、サセプタ8がなす扇形の内側の一部がカットされ、サセプタ8をドーナツ状空間に配置されたときに隣のサセプタ8と接触する部分となる、カット部51が設けられている。
【0109】
このような構成とすることで、ドーナツ状空間をよりコンパクトに構成することができ、より面積生産性の高い成膜を実現できる。
【0110】
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図23図27を参照して説明する。
【0111】
図23は、本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示すもので、搬送系も含めた装置全体の平面図であり、図1に相当する。
【0112】
図23において、予備室1と、反応室52~56が、ゲート5を介してロボット室6に接続されている。ロボット室6はロボット7を備えており、予備室1と、反応室52~56のいずれかの間で基板の搬送を行う。予備室1をロードロック室とし、反応室52~56とロボット室6を常時真空状態で運転してもよいし、予備室1とロボット室6を常時大気状態とし、反応室52~56を大気状態にして基板の出し入れを行い、真空状態にして成膜する構成としてもよい。また、ロボット室6がさらに基板のアライメントをする機能を備えてもよい。
【0113】
図24は、本発明の実施の形態12におけるサセプタの構成を示すもので、基板をサセプタに載置していない状態を示す斜視図であり、図2に相当する。
【0114】
図24において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする直角三角形に近似する形状である(上辺が下辺より短い台形に近似する形状でもある)。つまり、基板載置面は鉛直面に対して傾いている。傾斜角は、鉛直面に対して3~10度が好ましく、典型的には5度である。傾斜角が小さすぎると、ロボットアームを二つのサセプタ8間に入れるために、サセプタ8をかなり大きな寸法にして、最上部の二つのサセプタ8間の距離を確保する必要が生じるため好ましくなく、逆に傾斜角が大きすぎると、反応室52~56内に必要数の基板載置面を設けるためには反応室52~56をかなり大きな寸法にする必要が生じるため好ましくない。後述するように、反応室52~56の内壁は該直方体形状であり、その内部の直方体状の凹空間に沿うようにサセプタ8を配置するため、y軸方向の端面11は平面である。図では見えない側の端面も平面である。また、実施の形態1とは異なり、図で見えない側の垂直面には、座グリ部は設けられていない。座グリ部10の周辺に、基板搬送用のロボット7のロボットアームの爪を逃がすための逃し12が4個設けられている。逃し12の斜面9に対する深さは、座グリ部10よりも若干深く、座グリ部10がなす円の内側に少し入り込んだ形状となっている。ロボットアームとしては種々のものを適宜利用することができるが、ベルヌイチャック方式のものを用いれば、スムーズな基板載置を実現できる。サセプタ8の材質としては、熱伝導率が高く、変形・変質しにくいものが好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼、炭化珪素などを用いることができる。
【0115】
図25は、本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示す斜視図であり、反応室の構成を示す分解図である。以下、一例として、反応室54の構成について詳しく述べるが、他の反応室52、53、55、56も同様の構成である。
【0116】
図26は、本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、水平方向に移動可能なサセプタホルダ17が、プリカーサ処理位置にある状態を示すものである。
【0117】
図27は、本発明の実施の形態12における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。なお、断面の奥に見えるであろう構造(ゲート開口、サセプタ、座グリ部など)を点線で模式的に示している。また、水平方向に移動可能なサセプタホルダ17が、パージ位置58にある状態を示すものである。
【0118】
図25図27において、反応室54は全体として直方体をなし、内壁は該直方体形状である。反応室54内部の直方体状の凹空間に2個のサセプタ8がサセプタホルダ17上、水平方向に直線状に並べて配置されている。シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19は、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっている。反応室54の上部には、オーリング20を介して蓋21が配置され、気密性が確保される。つまり、真空状態で成膜処理を実行できる。蓋21には、ガス供給管が、直線方向に、プリカーサを含むガス供給管23、パージガス供給管22、酸化剤を含むガス供給管25の順に設けられている。反応室54内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26から、サセプタホルダ17に設けられたスリット46を通り、排気口27、40及び41から排気される。
【0119】
反応室54の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている。ロボット室6に設けられたロボット7のロボットアームが、ゲート開口29を介して基板16を座グリ部10に載置、又は座グリ部10に載置された基板16をロボット室6に取り出す。サセプタ8は、反応室54内で水平方向に、複数のサセプタ8が配置されている向きに移動する、すなわち、直方体状空間内で直線運動させるスライド機構によって移動するので、ロボットアームはゲート開口29を介してすべてのサセプタ8にアクセス可能となっている。ここで、「複数のサセプタ8が配置されている向き」とは、水平方向に並べられたサセプタ8の中心を繋ぐことによって表現できる配置の向きのことであり、本実施の形態においては、図25の矢印Fの向き(x方向)のことである。
【0120】
サセプタホルダ17には、サセプタホルダ17をx軸方向に貫通する2個の貫通穴57が設けられ、反応室54の下部に設けられた2本のシャフト59が挿入される。サセプタホルダ17は駆動源に接続され、シャフト59をガイドとして、複数のサセプタ8が配置されている向きに移動し、サセプタ8を移動させる。
【0121】
蓋21には、複数のガス噴出孔19を備えたガスノズルとしてのシャワープレート18が設けられ、プリカーサを含むガス供給マニホールド33からガス噴出孔19を通って、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、下方に向けてガスを噴出する。ガス導入口としてのガス噴出孔19が、座グリ部10よりも上方で反応室54内にガスを供給する構成である。
【0122】
サセプタホルダ17がパージ位置58にあるときは、パージガス供給マニホールド31からガス噴出孔19を通って、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、下方に向けてパージガスを噴出する。同様に、サセプタホルダ17が酸化処理位置60にあるときは、酸化ガスを含むガス供給マニホールド34からガス噴出孔19を通って、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、下方に向けて酸化ガスを含むガスを噴出する。つまり、ガスノズルとしてのシャワープレート18が、直線方向に複数のガスノズル群に分割され、ガスノズル群ごとに異なる種類のガスが噴出可能な構成となっている。つまり、移動機構の移動方向(水平方向)に複数配置されたガスノズル群を備える。なお、必要に応じて、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34には、パージガスのみを供給することもできる。
【0123】
また、図26からわかるように、反応室54内に2個のサセプタ8が水平方向に直線状に並べて配置されており、これにより、斜面9に設けられた複数の座グリ部10のうちの二つの座グリ部10が、上方ほど座グリ部10間の距離が広くなるように向かい合い、向かい合う二つの座グリ部10の間にV溝状空間26を構成する。
【0124】
簡単のため、予備室1をロードロック室とし、反応室52~56とロボット室6を常時真空状態で運転する場合について、動作を説明する。なお、重複を避けるため、実施の形態1と同様の部分については、記載を省略する。
【0125】
基板載置面としての座グリ部10の温度を、予め所定の温度にしておく。次いで、予備室1とロボット室6の間のゲート5を開けた状態で、予備室1からロボット7で基板16を取り出し、ロボット室6と反応室54の間のゲート5を開けた状態で、ゲート開口29を介して基板16を反応室54内の座グリ部10に載置する。つまり、反応室54内に設けられた、鉛直面に対して傾いた複数の基板載置面としての座グリ部10に、反応室54外から基板16を移動させて載置する。このとき、サセプタホルダ17はパージ位置58に配置しておく。
【0126】
基板16の交換又は載置操作を実行中は、すべてのシャワープレートから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室54内に供給し、反応室54がロボット室6に対して陽圧となるようにしておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室54内に混入しうる、不要なガスの濃度を最小限にすることができる。
【0127】
反応室54内の2カ所の座グリ部10に基板16を載置し終えたら、ゲート5を閉じ、数秒の間、すべてのシャワープレートから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室54内に供給しておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室54内に混入しうる、不要なガスの濃度を低減させることができる。
【0128】
次に、スライド機構を動作させ、サセプタホルダ17をx軸方向に往復運動させながら、蓋21に設けられた各三つの凹部とシャワープレート18に囲まれた三つの供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34から、それぞれ、パージガス、プリカーサを含むガス、酸化剤を含むガスを反応室54内に供給しつつ、排気口27、40及び41から排気する。ここでは、排気口が三つ設けられているものを例示したが、排気口は一つであってもよい。あるいは、排気口ごとに別々のポンプで排気する構成としてもよいし、排気口ごとに別々の調圧バルブを用いて、きめ細かく調圧を行えるようにしてもよい。
【0129】
このとき用いる各種ガスの種類、流量や反応室54内の圧力などは、実施の形態1と同様である。このようにして、各種ガスを反応室54内に供給しながら、サセプタホルダ17をx軸方向に、プリカーサ処理位置と酸化処理位置60の間で往復運動させ、基板載置面を、直方体空間内で直線運動させる。
【0130】
基板16がプリカーサ処理位置にあるとき、基板16の表面にプリカーサ分子が吸着する。その反応は自己制御的であり、基板16表面に吸着可能なサイトがなくなった時点で吸着反応は終了する。つまり、基板16表面において、ほぼ均一に原子一層分のプリカーサ分子が吸着した状態が得られる。
【0131】
座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が、基板16の表面に吸着するプリカーサ分子の割合が高くなるが、本発明においては、シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19が、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっているため、従来技術、例えば非特許文献1に記載の成膜装置を用いる場合に比べて、より均一に、より短時間で吸着ステップを完了させることができる。
【0132】
基板16が酸化処理位置60にあるとき、基板16表面に吸着したプリカーサと酸化剤との反応により、およそ原子一層分の薄膜が基板16表面に成膜される。例えば、プリカーサとしてTMA、酸化剤としてHOを用いる場合、HOがプリカーサのメチル基と反応して副生成物のメタンが生じ、メタンはガス排気口27、40及び41から反応室54外に排出される一方、表面にヒドロキシル化したAlが残り、薄膜となる。
【0133】
基板16が1回分成膜される間(およそ原子一層分の薄膜が形成される間)、本実施の形態の場合は、基板16が直線方向に一往復する間、各基板16が各ガスの噴出を受ける時間が0.1~10s、典型的には5sになるように、移動速度を設定する。例えば、本実施の形態では、蓋21に設けられた3個の凹部とシャワープレート18に囲まれた3個の供給マニホールド、すなわち、パージガス供給マニホールド31、プリカーサを含むガス供給マニホールド33、酸化剤を含むガス供給マニホールド34が設けられている。つまり、プリカーサを含むガスを噴出させるガスノズル群と、リアクタントを含むガスを噴出させるガスノズル群との間に、パージガスを噴出させるガスノズル群が配置されている。したがって、各基板16は、直線方向に一往復する間に、パージガス、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの順に各種ガスに暴露されるプロセスが1回だけ生じる。各種ガスに暴露する時間を5sとするには、5×4=20sで1往復する設定、すなわち、一分間に3往復する速度で移動させればよい。サセプタホルダ17のサセプタ8が載っている面よりも上で、各ガスがなるべく混合しないようにするため、各V溝状空間26に供給されるガスの量が等しくなるようにするか、パージガスの量を、プリカーサを含むガスや酸化剤を含むガスの量よりも若干多くしておくとよい。このようにすれば、プリカーサと酸化剤が各V溝状空間26内で混合することを効果的に回避できる。
【0134】
このようにして、サセプタホルダ17を直線方向に往復運動させることにより、各基板16はパージガス、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガスの順に各種ガスに暴露され、およそ原子一層分の酸化物薄膜が基板16表面に形成される。このようなプロセスは、直線方向に、プリカーサを含むガスを噴出させるガスノズル群と、リアクタントを含むガスを噴出させるガスノズル群との間に、パージガスを噴出させるガスノズル群が配置されることによって実現されている。この一連のステップを繰り返し実施するために、サセプタホルダ17を反応室54内で何度も往復させることにより、所定の厚さの酸化物薄膜を得ることができる。ここで、およそ原子一層分という表現を用いたが、1サイクルで形成される薄膜の厚さを膜厚に換算するとおよそ1~2オングストロームであるから、例えば厚さ20nmの薄膜を形成したい場合は、100~200サイクルのプロセスが必要となるので、本実施の形態の場合、サセプタホルダ17を反応室54内で100~200回往復させる。
【0135】
所定の膜厚の成膜を終えた基板16は、基板載置のステップとは逆に、座グリ部10からゲート開口29を介して反応室54外に取り出され、ロボット7を使って予備室1に収納される。なお、本実施の形態においては、五つの反応室52~56が設けられており、四つの反応室で成膜をしながら、一つの反応室で基板交換を行うこともできる。このように、複数の反応室に対して、ロード及びアンロードと成膜という、ともに時間を要する処理を同時並行で実行することにより、さらに処理速度が大きく、さらに面積生産性が高い成膜装置及び方法が実現できる。
【0136】
本実施の形態における成膜装置は、実施の形態1で説明した成膜装置に比べると処理速度は小さいものの小型・小規模であり、実施の形態1で説明した成膜装置の詳細設計を行うための予備実験を行う装置としても有用である。なお、さらに処理速度を大きく、さらに面積生産性が高い成膜装置及び方法を実現するために、例えば、サセプタホルダ17をx軸又はy軸方向に複数水平に並べるなどして、反応室54内に配置する基板載置面を四つ、六つ、八つなどと増やすことも可能である。
【0137】
基板交換を実施した後、サセプタホルダ17を連続的に往復運動させる場合を例示したが、各ガス噴出孔19が各サセプタ8の上面15の直上に位置するタイミングで、ガス流れが乱れてしまう。そこで、運動と停止を繰り返し、間欠的にプロセスを実施してもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の置換がより確実に行えるという利点がある。あるいは、間欠的にプロセスを実施する場合、運動中はプリカーサを含むガス供給マニホールド33及び酸化剤を含むガス供給マニホールド34からもパージガスを供給するか、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を減少させるか、又は、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を停止する構成としてもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、置換がさらにより確実に行えるという利点がある。あるいは、連続的に運動させるか、間欠的に運動と停止を繰り返すかにかかわらず、各ガス噴出孔19が各サセプタ8の上面15の直上に位置するタイミングで、プリカーサを含むガス供給マニホールド33及び酸化剤を含むガス供給マニホールド34からもパージガスを供給するか、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を減少させるか、又は、各ガス噴出孔19から供給するガス流量を停止する構成としてもよい。この場合、パージガスによるプリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、置換がさらにより確実に行えるという利点がある。あるいは、サセプタホルダ17がプリカーサ処理位置にあるときのみ、プリカーサを含むガス供給マニホールド33からプリカーサを含むガスを供給し、それ以外のときはプリカーサを含むガス供給マニホールド33からパージガスを供給し、サセプタホルダ17が酸化処理位置60にあるときのみ、酸化剤を含むガス供給マニホールド34から酸化剤を含むガスを供給し、それ以外のときは酸化剤を含むガス供給マニホールド34からパージガスを供給するようにしてもよい。この場合、プリカーサ及び酸化剤の混合が効果的に回避でき、また、置換がさらにより確実に行えるという利点がある。
【0138】
(実施の形態13)
以下、本発明の実施の形態13について、図28図32を参照して説明する。
【0139】
図28は、本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示すもので、搬送系も含めた装置全体の平面図であり、図1に相当する。
【0140】
図28において、予備室1及び2と、反応室61及び62が、ゲート5を介してロボット室6に接続されている。ロボット室6はロボット7を備えており、予備室1又は2と、反応室61又は62の間で基板の搬送を行う。予備室1及び2をロードロック室とし、反応室61及び62とロボット室6を常時真空状態で運転してもよいし、予備室1及び2とロボット室6を常時大気状態とし、反応室61及び62を大気状態にして基板の出し入れを行い、真空状態にして成膜する構成としてもよい。また、ロボット室6がさらに基板のアライメントをする機能を備えてもよい。
【0141】
図29は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示すもので、基板をサセプタに載置していない状態を示す斜視図であり、図2に相当する。
【0142】
図29において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする二等辺三角形に近似する形状である(上辺が下辺より短い台形に近似する形状でもある)。つまり、基板載置面は鉛直面に対して傾いている。傾斜角は、鉛直面に対して3~10度が好ましく、典型的には5度である。傾斜角が小さすぎると、ロボットアームを二つのサセプタ8間に入れるために、サセプタ8をかなり大きな寸法にして、最上部の二つのサセプタ8間の距離を確保する必要が生じるため好ましくなく、逆に傾斜角が大きすぎると、反応室61内に必要数の基板載置面を設けるためには反応室61をかなり大きな寸法にする必要が生じるため好ましくない。後述するように、反応室61及び62の内壁は該直方体形状であり、その内部の直方体状の凹空間に沿うようにサセプタ8を配置するため、x軸方向の端面11は平面である。図では見えない側の端面も平面である。また、この二等辺三角形の二つの等辺を含む面としての斜面9に座グリ部10が設けられている。つまり、図で見えない側の斜面にも、同様に座グリ部10が設けられている。座グリ部10の周辺に、基板搬送用のロボット7のロボットアームの爪を逃がすための逃し12が4個設けられている。逃し12の斜面9に対する深さは、座グリ部10よりも若干深く、座グリ部10がなす円の内側に少し入り込んだ形状となっている。ロボットアームとしては種々のものを適宜利用することができるが、ベルヌイチャック方式のものを用いれば、スムーズな基板載置を実現できる。サセプタ8の材質としては、熱伝導率が高く、変形・変質しにくいものが好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼、炭化珪素などを用いることができる。
【0143】
この二等辺三角形の底辺に沿ってサセプタ底部13が設けられている。また、サセプタ底部13の中央付近にガス排出口となるスリット14が設けられている。座グリ部10と同様、スリット14も、図で見えない側にも設けられている。
【0144】
図30は、本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示す断面図であり、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。
【0145】
図30において、反応室61内に複数のサセプタ8が水平方向に直線上に並べて配置されており、これにより、斜面9に設けられた複数の座グリ部10のうちの二つの座グリ部10が、上方ほど座グリ部10間の距離が広くなるように向かい合って配置されている。
【0146】
複数のサセプタ8のうちの二つのサセプタ8の間に、ガス排出口としてのスリット14が設けられており、反応室61内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26からスリット14を通り、排気マニホールド63で合流した後、排気口64から排気される。つまり、複数のサセプタ8のうちの二つのサセプタ8の間のV溝状空間26の最下部に、基板載置面としての座グリ部10よりも下方でガスを排気する排出口としてのスリット14を備える構成である。
【0147】
反応室61の上部には、オーリング20を介して蓋21が配置され、気密性が確保される。つまり、真空状態で成膜処理を実行できる。蓋21にはガス供給管65、複数のガス噴出孔19を備えたガスノズルとしてのシャワープレート18が設けられ、供給マニホールド66からガス噴出孔19を通って、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、下方に向けてガスが噴出する。ガス導入口としてのガス噴出孔19が、座グリ部10よりも上方で反応室61内にガスを供給する構成である。
【0148】
図31は、本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示すもので、反応室の構成を示す分解斜視図であり、図4に相当する。
【0149】
図31において、反応室61は全体として直方体をなし、内部の直方体状の凹空間に複数のサセプタ8が水平方向に直線上に並べて配置されている。シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19は、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっている。
【0150】
反応室61の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている。ロボット室6に設けられたロボット7のロボットアームが、ゲート開口29を介して基板16を座グリ部10に載置、又は座グリ部10に載置された基板16をロボット室6に取り出す。
【0151】
図32は、本発明の実施の形態13における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図6に相当する。
【0152】
簡単のため、予備室1及び2をロードロック室とし、反応室61及び62とロボット室6を常時真空状態で運転する場合について、動作を説明する。なお、重複を避けるため、実施の形態1と同様の部分については、記載を省略する。基板載置面としての座グリ部10の温度を、予め所定の温度にしておく。なお、本実施の形態においては、サセプタ8は固定されているので、温度のモニタリングは比較的容易である。次いで、予備室1又は2とロボット室6の間のゲート5を開けた状態で、予備室1又は2からロボット7で基板16を取り出し、ロボット室6と反応室61の間のゲート5を開けた状態で、ゲート開口29を介して基板16を反応室61内の座グリ部10に載置する。つまり、反応室61内に設けられた、鉛直面に対して傾いた複数の基板載置面としての座グリ部10に、反応室61外から基板16を移動させて載置する。
【0153】
反応室61内のすべての座グリ部10に基板16を載置し終えたら、ゲート5を閉じ、ガス噴出孔19からパージガスを噴出させながら、排気口64から排気する。なお、基板16の交換又は載置操作を実行中にも、シャワープレート18から少量のパージガス又は不活性ガスを反応室61内に供給し、反応室61がロボット室6に対して陽圧となるようにしておいてもよい。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室61内に混入しうる、不要なガスの濃度を最小限にすることができる。
【0154】
次に、ガス噴出孔19から噴出させるガスを、プリカーサを含むガスに切り替える。プリカーサの供給量は、3~30mg/回程度、典型的には10mg/回である。プリカーサを含むガスの噴出時間は0.1~2s、典型的には0.2sである。ガス噴出孔19から噴出させるガスをプリカーサを含むガスにするステップにおいて、基板16の表面にプリカーサ分子が吸着する。その反応は自己制御的であり、基板16表面に吸着可能なサイトがなくなった時点で吸着反応は終了する。つまり、基板16表面において、ほぼ均一に原子一層分のプリカーサ分子が吸着した状態が得られる。
【0155】
座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が、基板16の表面に吸着するプリカーサ分子の割合が高くなるが、本発明においては、シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19が、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられ、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔となっているため、従来技術、例えば非特許文献1に記載の成膜装置を用いる場合に比べて、より均一に、より短時間で吸着ステップを完了させることができる。
【0156】
次に、ガス噴出孔19から噴出させるガスを、再びパージガス(典型的にはAr)に切り替える。このステップにより、反応室61内、とくに、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に残ったプリカーサの濃度を低減することができる。パージガスの流量は、10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。パージガスの噴出時間は0.1~2s、典型的には0.2sである。
【0157】
次に、ガス噴出孔19から噴出させるガスを、リアクタントとしての酸化剤を含むガスに切り替える。酸化剤は適宜選択できるが、例えばHOを用いる場合、その供給量は、1~100mg/回程度、典型的には10mg/回である。この場合、酸化剤を単独で反応室61に供給するのは困難なため、通常は希ガスなどの不活性ガスで希釈する。典型的にはArガスで希釈するが、希釈ガスの流量は10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。酸化剤を含むガスの噴出時間は0.1~2s、典型的には0.2sである。ガス噴出孔19から噴出させるガスを酸化剤を含むガスにするステップにおいて、基板16表面に吸着したプリカーサと酸化剤との反応により、およそ原子一層分の薄膜が基板16表面に成膜される。例えば、プリカーサとしてTMA、酸化剤としてHOを用いる場合、HOがプリカーサのメチル基と反応して副生成物のメタンが生じ、メタンは排気口64から反応室61外に排出される一方、表面にヒドロキシル化したAlが残り、薄膜となる。
【0158】
次に、ガス噴出孔19から噴出させるガスを、再びパージガス(典型的にはAr)に切り替える。このステップにより、反応室61内、とくに、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に残った酸化剤の濃度を低減することができる。パージガスの流量は、10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。パージガスの噴出時間は0.1~2s、典型的には0.2sである。
【0159】
上記のように、ガス噴出孔19から噴出させるガスを、プリカーサを含むガス、パージガス、酸化剤を含むガス、パージガス、と順次切り替えることで、およそ原子一層分の酸化物薄膜が基板16表面に形成される。この一連のステップを繰り返し実施することにより、所定の厚さの酸化物薄膜を得ることができる。ここで、およそ原子一層分という表現を用いたが、1サイクルで形成される薄膜の厚さを膜厚に換算するとおよそ1~2オングストロームであるから、例えば厚さ20nmの薄膜を形成したい場合は、100~200サイクルのプロセスが必要となる。
【0160】
所定の膜厚の成膜を終えた基板16は、基板載置のステップとは逆に、座グリ部10から反応室61外に取り出され、ロボット7を使って予備室1又は2に収納される。なお、本実施の形態においては、二つの反応室61及62が設けられており、片方の反応室で成膜をしながら、他方の反応室で基板交換を行うこともできる。このように、複数の反応室に対して、ロード及びアンロードと成膜という、ともに時間を要する処理を同時並行で実行することにより、さらに処理速度が大きく、さらに面積生産性が高い成膜装置及び方法が実現できる。
【0161】
本実施の形態では、サセプタ8を8個設け、反応室61内に基板16を16枚載置できるものを例示したが、反応室61に設けるサセプタ8の数が多いほど面積生産性が高まる。例えば、サセプタ8を13個設け、反応室61内に基板16を26枚載置できる構成としてもよい。
【0162】
(実施の形態14)
以下、本発明の実施の形態14について、図33を参照して説明する。
【0163】
図33は、本発明の実施の形態14における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図30に相当する。
【0164】
実施の形態13においては、すべて同じ形状のサセプタ8を用いる場合を例示したが、図33においては、両端に配置するサセプタ8のみ、実施の形態13におけるサセプタ8を、その中心を通るxz面に並行な面で切った形状のものとしている。実施の形態13では、両端の基板16の近傍のみガス流路の形状が異なるため、他の基板と異なるガス流れによって反応や膜質に違いが生じる可能性があるが、本実施の形態においては、すべてのガス流路の形状が同一となるので、より均質な成膜が行える。
【0165】
(実施の形態15)
以下、本発明の実施の形態15について、図34図36を参照して説明する。
【0166】
図34は、本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図30に相当する。
【0167】
図35は、本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示すもので、反応室の構成を示す分解斜視図であり、図31に相当する。
【0168】
図36は、本発明の実施の形態15における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図32に相当する。
【0169】
実施の形態13においては、反応室61の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている場合を例示したが、図34図36に示すように、実施の形態15では、サセプタ8よりも上方に、基板16交換のためのゲート開口29を備える。
【0170】
このような構成では、反応室61の体積が大きくなってしまうという欠点があるが、基板16の交換にあたって、ロボットアームが広い開口から座グリ部10にアクセスできることから、基板16交換を高速に行えるという利点がある。
【0171】
(実施の形態16)
以下、本発明の実施の形態16について、図37図39を参照して説明する。
【0172】
図37は、本発明の実施の形態16における成膜装置の構成を示すもので、反応室の構成を示す分解斜視図であり、図31に相当する。
【0173】
図38及び図39は、本発明の実施の形態16における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図32に相当する。
【0174】
実施の形態13とは異なり、実施の形態15と同様、図37図39に示すように、実施の形態16では、サセプタ8よりも上方に、基板16交換のためのゲート開口29を備える。また、複数のガス噴出孔19を備えたガスノズルとしてのシャワープレート18は、ガス供給ユニット67に取り付けられ、ガス供給ユニット67はベローズ68によって反応室61の天井部に接続されている。つまり、シャワープレート18が、反応室61内で昇降可能な構成となっている。ガスは、ガス供給管65からベローズ68内を通り、供給マニホールド66に導入される。
【0175】
基板16交換を行う際は、図38に示すようにベローズ68を収縮させ、ゲート開口29の側方、サセプタ8の上方の空間を開放する。成膜プロセスを行う際は、図39に示すようにベローズ68を伸長させ、シャワープレート18を下降させサセプタ8にその直上で近接させる。つまり、座グリ部10に、反応室61外から基板16を移動させて載置するステップと、座グリ部10よりも上方より反応室61内にガスを供給しながら、座グリ部10よりも下方でガスを排気するステップとの間に、シャワープレート18を反応室61内で降下させて、シャワープレート18をサセプタ8に近接させるステップを含み、座グリ部10よりも上方より反応室61内にガスを供給しながら、座グリ部10よりも下方でガスを排気するステップと、座グリ部10から基板16を反応室61外に移動させて取り出すステップとの間に、シャワープレート18を反応室61内で上昇させて、シャワープレート18をサセプタ8から遠ざけるステップを含む構成である。このようにして、各種ガスの流路を短く保つことで成膜プロセスの高速性を確保しつつ、基板16交換の高速化を図ることができる。
【0176】
(実施の形態17)
以下、本発明の実施の形態17について、図40を参照して説明する。
【0177】
図40は、本発明の実施の形態17におけるガスノズルの構成を示す斜視図であり、図31のシャワープレート18に相当する。なお、ガス噴出孔19の形状をわかりやすくするため、最左のガス噴出孔19以外は、シャワープレート18の上面側の開口形状のみを図示している。
【0178】
実施の形態1~16においては、シャワープレート18に設けられたガス噴出孔19は円形であり、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が高い密度で設けられていたが、本実施の形態においては、ガス噴出孔19を矩形とし、そのy軸方向の幅を、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が広くなるよう構成することで、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔としている。その他にも様々な変形が考えられることは言うまでもない。
【0179】
(実施の形態18)
以下、本発明の実施の形態18について、図41及び図42を参照して説明する。
【0180】
図41及び図42は、本発明の実施の形態18における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図32に相当する。
【0181】
実施の形態13とは異なり、実施の形態15と同様、図41及び図42に示すように、実施の形態18では、サセプタ8よりも上方に、基板16交換のためのゲート開口29を備える。また、サセプタ8はサセプタホルダ17に搭載されている。サセプタホルダ17は、ベローズ68によって反応室61の底部に接続されている。つまり、サセプタ8が、反応室61内で昇降可能な構成となっている。
【0182】
基板16交換を行う際は、図41に示すようにベローズ68を収縮させ、ゲート開口29の側方、サセプタ8の上方の空間を開放する。成膜プロセスを行う際は、図42に示すようにベローズ68を伸長させ、サセプタホルダ17を上昇させサセプタ8をシャワープレート18にその直下で近接させる。つまり、座グリ部10に、反応室61外から基板16を移動させて載置するステップと、座グリ部10よりも上方より反応室61内にガスを供給しながら、座グリ部10よりも下方でガスを排気するステップとの間に、サセプタ8を反応室61内で上昇させて、8サセプタをシャワープレート18に近接させるステップを含み、座グリ部10よりも上方より反応室61内にガスを供給しながら、座グリ部10よりも下方でガスを排気するステップと、座グリ部10から基板16を反応室61外に移動させて取り出すステップとの間に、サセプタ8を反応室61内で下降させて、サセプタ8をシャワープレート18から遠ざけるステップを含む構成である。このようにして、各種ガスの流路を短く保つことで成膜プロセスの高速性を確保しつつ、基板16の交換の高速化を図ることができる。
【0183】
(実施の形態19)
以下、本発明の実施の形態19について、図43を参照して説明する。
【0184】
図43は、本発明の実施の形態19におけるガスノズルの構成を示す断面図であり、図32の蓋21、ガス供給管65、ガス噴出孔19、シャワープレート18、供給マニホールド66に相当する。
【0185】
図43において、ガス種ごとに別々の供給マニホールドが設けられている。つまり、パージガス供給マニホールド69、プリカーサ供給マニホールド70、酸化剤供給マニホールド71が別個に設けられており、パージガス、プリカーサを含むガス、酸化剤を含むガスが互いに混合しない構成となっている。
【0186】
実施の形態13において、供給マニホールド66は各ガス種について共通である。このため、供給マニホールド66内や、ガス噴出孔19の内壁、シャワープレート18の下面などにも薄膜が付着してしまう。
【0187】
一方、本実施の形態においては、成膜する際、パージガスを常時供給し、プリカーサを含むガスを噴出させるステップ以外ではプリカーサ供給マニホールドからもプリカーサを希釈するための希釈ガスを供給し、酸化剤を含むガスを噴出させるステップ以外では酸化剤供給マニホールドからも酸化剤を希釈するための希釈ガスを供給するようにする。このようにして、シャワープレート18よりも上流側でプリカーサが酸化剤と互いに混合しない成膜プロセスを実現できる。つまり、供給マニホールド69、70、71内や、ガス噴出孔19の内壁、シャワープレート18の下面などに薄膜が極めて付着しにくくなり、パーティクルが発生しにくいクリーンな成膜を実現できる。
【0188】
(実施の形態20)
以下、本発明の実施の形態20について、図44図49を参照して説明する。
【0189】
図44は、実施の形態20における成膜装置の構成を示すもので、搬送系も含めた装置全体の平面図であり、図28に相当する。
【0190】
図45は、本発明の実施の形態20における成膜装置の構成を示すもので、反応室とロボット室の間にあるゲートの中央を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図32に相当する。
【0191】
図44及び図45において、複数のサセプタ8からなる第1サセプタ群と、複数のサセプタ8からなる第2サセプタ群が、それぞれサセプタホルダ17に搭載されている。反応室72及び73は、第1サセプタ群又は第2サセプタ群に対して基板16をロード及びアンロードするためのロードアンロード位置Aと、第1サセプタ群又は第2サセプタ群に対して基板16に成膜を行う成膜位置Bと、第1バッファ位置Cと、第2バッファ位置Dを備える。第1サセプタ群及び第2サセプタ群は、反応室72及び73内でロードアンロード位置A、成膜位置B、第1バッファ位置C、第2バッファ位置Dに水平移動可能な構成となっている。反応室72及び73内でA~Dの各位置は、仕切り板74によって隔離され、各位置間でガスが互いに混合しにくいよう構成されている。蓋21において、ロードアンロード位置Aの上部に、ロードアンロード位置にガスを供給するロードアンロード位置ガス導入口としてのパージガス供給管75が設けられ、下方に向けてパージガスが噴出する。また、成膜位置Bの上部に、成膜位置にガスを供給する成膜位置ガス導入口としてのプロセスガス供給管76が設けられ、下方に向けてパージガスが噴出する。
【0192】
図46図49は、本発明の実施の形態20における成膜方法を示すもので、反応室72の平面図である。実線は、当該位置に第1又は第2サセプタ群が存在している状態、点線は、当該位置にいずれのサセプタ群も存在しない状態を示す。
【0193】
図46において、例えば、成膜位置Bで第1サセプタ群に対して成膜処理を行うのと同時に、ロードアンロード位置Aで第2サセプタ群に対して基板16のアンロード及びロードを行う。
【0194】
図47において、成膜位置Bにおける第1サセプタ群に対する成膜処理が完了した後、第1サセプタ群を第1バッファ位置Cに移動させる。なお、第1バッファ位置Cにも、ロードアンロード位置Aと同様、蓋21の上部に、バッファ位置にガスを供給するバッファ位置ガス導入口としてのパージガス供給管が設けられ、下方に向けてパージガスが噴出する。
【0195】
次に、図48において、ロードアンロード位置Aにおける第2サセプタ群に対する基板16のロードが完了した後、第2サセプタ群を成膜位置Bに移動させ、成膜処理を実行する。また、第1バッファ位置にある第1サセプタ群を第2バッファ位置Dに移動させる。なお、第2バッファ位置Dにも、ロードアンロード位置Aと同様、蓋21の上部に、バッファ位置にガスを供給するバッファ位置ガス導入口としてのパージガス供給管が設けられ、下方に向けてパージガスが噴出する。
【0196】
次に、図49において、成膜位置Bにおける第2サセプタ群に対する成膜処理を実行しながら、第2バッファ位置Dにある第1サセプタ群をロードアンロード位置Aに移動させる。そして、成膜位置Bにおける第2サセプタ群に対する成膜処理を実行しながら、ロードアンロード位置Aで第1サセプタ群に対して基板16のアンロード及びロードを行う。
【0197】
このように、複数のサセプタ群に対して、ロード及びアンロードと成膜という、ともに時間を要する処理を同時並行で実行することにより、さらに処理速度が大きく、さらに面積生産性が高い成膜装置及び方法が実現できる。
【0198】
(実施の形態21)
以下、本発明の実施の形態21について、図50図53を参照して説明する。
【0199】
図50は、本発明の実施の形態21におけるガスノズルの構成を示す分解斜視図である。
【0200】
図51は、本発明の実施の形態21における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図33に相当する。
【0201】
図52は、本発明の実施の形態21におけるガスノズルの構成を示す断面図であり、図51の一部を拡大したものである。
【0202】
図53は、本発明の実施の形態21における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図32に相当する。
【0203】
図50図53において、第一リング77は、全体としてx方向に長尺の環状をなす第一帯状部78、及び、全体としてx方向に長尺の環状をなし、第一帯状部78と一体であり、第一帯状部78の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えた第一ツバ部79を備える。
【0204】
キャップ80は、第一リング77の第一帯状部78に挿入された、第一帯状部78の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の外壁面を備えた板部81、及び、板部81と一体であり、第一リング77の第一ツバ部79に重なって配置された板部一体ツバ部82を備える。キャップ80の板部81は、第一リング77の第一帯状部78及び第一ツバ部79の内部からなる長尺穴83に挿入され、貫通し、その先端部は反応室61内に露出している。板部81のz方向の長さは、第一帯状部78のz方向の長さ及び第一ツバ部79のz方向の長さを足したものよりもわずかに長いため、反応室61内において板部81の先端部は、第一帯状部78の先端部よりもわずかに下方に飛び出している。
【0205】
マスフローコントローラやバルブなどにより構成される、第一ガス供給部84から供給される第一ガスは、第一ツバ部79の外壁面から第一ツバ部79の内壁面に貫通する第一導入孔85(y方向に2つ、向かい合って設けられている)、並びに、第一帯状部78の内壁面及び板部81の外壁面の間の隙間を通り、第一ツバ部79とは反対側から流れ出るよう構成されている。
【0206】
第二リング86は、全体としてx方向に長尺の環状をなし、第一帯状部78を挿入する、第一帯状部78の外壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えた第二帯状部87、及び、全体としてx方向に長尺の環状をなし、第二帯状部87と一体であり、第二帯状部87の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えた第二ツバ部88を備える。第一リング77の第一帯状部78は、第二リング86の第二帯状部87及び第二ツバ部88の内部からなる長尺穴89に挿入され、貫通し、その先端部は反応室61内に露出している。第一帯状部78のz方向の長さは、第二帯状部87のz方向の長さ及び第二ツバ部88のz方向の長さを足したものよりもわずかに長いため、反応室61内において第一帯状部78の先端部は、第二帯状部87の先端部よりもわずかに下方に飛び出している。
【0207】
マスフローコントローラやバルブなどにより構成される、第二ガス供給部90から供給される第二ガスは、第二ツバ部88の外壁面から第二ツバ部88の内壁面に貫通する第二導入孔91(y方向に2つ、向かい合って設けられている)、並びに、第二帯状部87の内壁面及び第一帯状部78の外壁面の間の隙間を通り、第二ツバ部88とは反対側から流れ出るよう構成されている。
【0208】
第三リング92は、全体としてx方向に長尺の環状をなし、第二帯状部87を挿入する、第二帯状部87の外壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えた第三帯状部93、及び、全体としてx方向に長尺の環状をなし、第三帯状部93と一体であり、第三帯状部93の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えた第三ツバ部94を備える。第二リング86の第二帯状部87は、第三リング92の第三帯状部93及び第三ツバ部94の内部からなる長尺穴95に挿入され、貫通し、その先端部は反応室61内に露出している。第二帯状部87のz方向の長さは、第三帯状部93のz方向の長さ及び第三ツバ部94のz方向の長さを足したものよりもわずかに長いため、反応室61内において第二帯状部87の先端部は、第三帯状部93の先端部よりもわずかに下方に飛び出している。
【0209】
マスフローコントローラやバルブなどにより構成される、第三ガス供給部96から供給される第三ガスは、第三ツバ部94の外壁面から第三ツバ部94の内壁面に貫通する第三導入孔97(y方向に2つ、向かい合って設けられている)、並びに、第三帯状部93の内壁面及び第二帯状部87の外壁面の間の隙間を通り、第三ツバ部94とは反対側から流れ出るよう構成されている。
【0210】
つまり、ガスノズルは、キャップ80、第一リング77、第二リング86、第三リング92からなり、キャップ80が第一リング77に、第一リング77が第二リング86に、第二リング86が第三リング92に、それぞれ挿入され、全体としてガスノズルを構成する。また、キャップ80、第一リング77、第二リング86、第三リング92は、それぞれを水平面に平行な平面で切った断面が、レーストラック形である。
【0211】
別の表現を使えば、ガスノズルは、第一筒としての第一リング77と、第一リング77に挿入された、第一リング77の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部としての板部81を備えたキャップ80とを備えており、第一ガスが、第一リング77に設けられた貫通穴である第一導入孔85、並びに、第一リング77の内壁面及び板部81の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、板部81の先端が第一リング77の先端から飛び出している。また、第一リング77を挿入する、第一リング77の外壁面と相似形の内壁面を有する第二筒としての第二リング86をさらに備えており、第二ガスが、第二リング86に設けられた貫通穴である第二導入孔91、並びに、第二リング86の内壁面及び第一リング77の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
第一リング77の先端が第二リング86の先端から飛び出している。また、第二リング86を挿入する、第二リング86の外壁面と相似形の内壁面を有する第三リング92をさらに備えており、第三ガスが、第三リング92に設けられた貫通穴である第三導入孔97、並びに、第三リング92の内壁面及び第二リング86の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、第二リング86の先端が第三リング92の先端から飛び出している。
【0212】
また、図50、51、53では省略しているが、図52からわかるように、板部一体ツバ部82、第一ツバ部79、第二ツバ部88、第三ツバ部94が重なり合っている面の間には、オーリング20が設けられている。
【0213】
ALDによる成膜を行う際は、第一ガスとしてプリカーサを含むガス、第二ガスとしてパージガス、第三ガスとして酸化剤を含むガスを用いる。ただし、第一ガスとしてプリカーサを含むガスを供給している間は、第三ガスとしてもパージガス(又は希釈ガス)を供給し、第三ガスとして酸化剤を含むガスを供給している間は、第一ガスとしてもパージガス(又は希釈ガス)を供給するようにする。このようにして、プリカーサと酸化剤の混合が効果的に回避できる。
【0214】
また、ガス流路となっている、第一帯状部78の内壁面及び板部81の外壁面の間の隙間、第二帯状部87の内壁面及び第一帯状部78の外壁面の間の隙間、第三帯状部93の内壁面及び第二帯状部87の外壁面の間の隙間は、いずれも極めて狭く、0.1mm以上1mm以下、典型的には0.5mmである。このことも、プリカーサと酸化剤の混合を回避するのに効果的である。さらに、反応室61内に均一な層流を容易に実現できる。
【0215】
また、板部81の先端部が、第一帯状部78の先端部よりもわずかに下方に飛び出し、第一帯状部78の先端部が、第二帯状部87の先端部よりもわずかに下方に飛び出し、第二帯状部87の先端部が、第三帯状部93の先端部よりもわずかに下方に飛び出しているため、ガスノズルからは、ガスノズルの真下(-z方向)よりもy方向に斜めに、基板16に向かってガスが噴出する。したがって、効率よく基板16の表面で反応を引き起こすことができる。あるいは、これらの飛び出しの程度(寸法)を変えることにより、ガスノズル近傍における各種ガスの混合の程度を制御することもできる。あるいは、飛び出し、つまり段差がない構成としてもよい。
【0216】
なお、ガス流路となっている、第一帯状部78の内壁面及び板部81の外壁面の間の隙間、第二帯状部87の内壁面及び第一帯状部78の外壁面の間の隙間、第三帯状部93の内壁面及び第二帯状部87の外壁面の間の隙間は、x方向に緩やかに変化するよう構成することも容易である。例えば、各隙間を、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が広くなるように構成することにより、座グリ部10の周辺に向かう部分よりも中心に向かう部分の方が貫通面積が大きい貫通孔とすることができる。ガスノズルを構成する各部品が曲面になっているx方向の両端部において隙間を設けないようにすることにより、座グリ部10の周辺に向かう部分に対してガスが過剰に供給されるのを避けることもできる。あるいは、第一帯状部78の内壁面及び板部81の外壁面の間の隙間、第二帯状部87の内壁面及び第一帯状部78の外壁面の間の隙間、第三帯状部93の内壁面及び第二帯状部87の外壁面の間の隙間を異なる寸法とすることも容易である。なお、これらの寸法は、第一リング77の第一帯状部78が第一ツバ部79に接続されている根元部のRの大きさ、キャップ80の板部81が板部一体ツバ部82に接続されている根元部のRの大きさ、第二リング86の第二帯状部87が第二ツバ部88に接続されている根元部のRの大きさを変えることで、容易に変化させることができる。
【0217】
また、シャワープレート方式では、ガス噴出孔の内面をクリーニングするのは容易でないが、本実施の形態においては、キャップ80、第一リング77、第二リング86、第三リング92を蓋21から取り外して分解することで、ガスに接触する面を容易にクリーニングすることができる。さらに、シャワープレート方式では、直径1mm以下の多数のガス噴出孔を加工するには多大の労力を要するが、本実施の形態においては、キャップ80、第一リング77、第二リング86、第三リング92の各部品の加工は比較的容易であるという利点もある。
【0218】
また、シャワープレート方式と異なり、本実施の形態におけるガスノズルは、一部が大気圧空間に露出しているため、ヒーターを埋め込む、又は流体配管を設けるなどの手段により温度制御することが容易であるという利点がある。ガスノズルの温度を低温に保つことができれば、ガスノズルにおける膜堆積を効果的に抑制できる。
【0219】
(実施の形態22)
以下、本発明の実施の形態22について、図54を参照して説明する。
【0220】
図54は、本発明の実施の形態22における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図51に相当する。
【0221】
図54において、キャップ80の板部81の先端部を、先端に向かって徐々に鋭くなる形状とする構成としている。このような構成により、板部81の先端部近傍で発生する恐れのある渦を効果的に回避することができる。
【0222】
(実施の形態23)
以下、本発明の実施の形態23について、図55図58を参照して説明する。
【0223】
図55は、本発明の実施の形態23におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、図29に相当する。
【0224】
図56は、本発明の実施の形態23における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中央をyz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図51に相当するものの一部を拡大したものである。
【0225】
図57及び図58は、本発明の実施の形態23におけるサセプタの構成を示す斜視図であり、図55に相当する。
【0226】
図55図56において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする二等辺三角形に近似する形状であるが、上部はなめらかな曲面である。蓋21には、実施の形態21で説明した長尺形のガスノズルが設けられている。反応室61の底面上に複数のサセプタ8が設けられ、複数のサセプタ8は水平方向に並べられて、複数のサセプタ8のうちの二つのサセプタ8が、上方ほどサセプタ8間の距離が広くなるように向かい合って配置されている。また、各サセプタ8の基板載置面は、薄板により構成され、内部は空洞であり、その最下部の開口部を介して、サセプタ8よりも下方に配置されたランプ98によってその裏面が加熱される。薄板の厚さは3mmで、炭化珪素からなる。また、複数のサセプタ8は、各々、上方ほど距離が狭くなるように向かい合っている2枚の平板からなる。
【0227】
ランプ98は、x方向に長い直管であり、ランプ98の下方に反射板99が設けられている。ランプ98から出た赤外光を含む光は、反射板99で反射された光とともに、石英ガラス窓100を通して反応室61内に導入され、サセプタ8の裏面を照射する。
【0228】
このような構成においては、サセプタ8の熱容量が極めて小さく、また、炭化珪素は極めて高い放射率を持つため、サセプタ8は短時間で高温に達する(例えば、数秒で50℃から600℃以上に昇温)。また、冷却も極めて短時間で行うことができる(例えば、数十秒で100℃以下)。また、サセプタ8は底面全体が開口部となっており、サセプタホルダ17との接触面積が極めて小さいため、サセプタ8とサセプタホルダ17との熱伝導が起きにくく、サセプタ8の温度を独立に制御でき、サセプタ8の温度が高くなっても、反応室61の他の部分の温度に与える影響は非常に少ない。つまり、基板16の温度、各種ガスの供給温度(ガスの温度やガスノズルの温度)、反応室61の温度、蓋21の温度などを、異なる温度に設定することが容易である。
【0229】
サセプタ8は、上方ほど距離が狭くなるように向かい合っている2枚の平板からなる。サセプタ8の上方はランプ98及び反射板99から遠いため、直接ランプ98及び反射板99から照射される光の強度は、下方に比べて弱くなる。一方、下方ではサセプタ8から放射される光の半分以上が反応室61や石英ガラス窓100に向かうのに対し、上方ではサセプタ8(2枚の平板のうちの1枚)から放射される光の大部分が再びサセプタ8(2枚の平板のうちのもう一方の1枚)に向かう。このことは、サセプタ8の上方における直接光の強度不足を効果的に補い、サセプタ8の温度の均一性向上に寄与する。加熱方式としては、ランプ方式の他、抵抗加熱、誘導加熱を利用することも可能だが、上記のようにランプを用いると、高速性・均熱性において格別の効果を奏する。その他、サセプタ8の温度の均一性を高めるには、上方と下方で薄板の厚さを変えたり、サセプタ8の内壁面の材質又は表面仕上げを変えることで放射率を変えたり、反射板99の形状を工夫したり等、さまざまな方法を組み合わせることもできる。
【0230】
以上、サセプタ8を構成する薄板の厚さが3mmである場合を例示したが、薄板の厚さは、1mm以上5mm以下であることが好ましい。1mm未満である場合、破損や変形の恐れが高くなってしまう。逆に、5mmよりも厚い場合、短時間での昇温・降温ができなくなってしまう。
【0231】
また、サセプタ8の基板載置面を構成する薄板が炭化珪素からなる場合を例示したが、薄板は、シリコン、炭化珪素又は炭素のいずれかからなることが好ましい。シリコン、炭化珪素、炭素は、いずれも高純度品が容易に入手可能であるため、基板16を汚染する恐れが低く、また、放射率が極めて高いため、短時間での昇温・降温の実現に有利である。
【0232】
サセプタ8の温度制御を精密に行うには、サセプタ8又はその近傍の温度をモニタリングすることが有効である。図57に示すように、サセプタ8の端面11に設けた穴101を介して、2枚の平板のうちの1枚の基板載置面10の裏面の温度を、放射温度計102によりモニタリングすることにより、複数のサセプタ8の温度制御を行うことができる。モニタリングする位置は、サセプタ8を構成する4枚の薄板(2枚の平板に、図57の手前の端面11及び奥側の端面を加えた4枚)の任意の位置から選ぶことができる。あるいは、図58に示すように、2枚の平板の間に、サセプタ8の端面11に設けた穴101に熱電対103を挿入して、2枚の平板の間の空間の温度をモニタリングすることにより、複数のサセプタ8の温度制御を行うことができる。なお、図58は、熱電対103を穴101に挿入する前の構成を示している。この場合、熱電対103の温度検知部(先端近傍)の放射率や、ランプ98から見た単位照射面積当たりの熱容量を、サセプタ8の材質に近いもの(例えば、±10%以内)にしておくことで、より精密な温度制御ができる。
【0233】
(実施の形態24)
以下、本発明の実施の形態24について、図59図61を参照して説明する。
【0234】
図59は、本発明の実施の形態24における成膜装置の構成を示す平面図であり、後に説明する天板104よりも下方を上から見た図である。
【0235】
図60は、本発明の実施の形態24における成膜装置の構成を示すもので、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。
【0236】
図61は、本発明の実施の形態24におけるガスノズルの構成を示す分解斜視図である。
【0237】
なお、本実施の形態の基本的な動作は、実施の形態1と同様である。また、実施の形態23で示したものと同様の、薄板からなるサセプタ8を用いている。
【0238】
図59図61において、反応室3は全体として八角柱をなすが、内壁は該円筒形状である。反応室3内部のドーナツ状の凹空間に複数のサセプタ8がサセプタホルダ17上、水平方向に放射状に並べて配置されている。各ガス供給ノズルは、周方向に、パージガス供給ノズル105、プリカーサを含むガス供給ノズル106、パージガス供給ノズル105、酸化剤を含むガス供給ノズル107、パージガス供給ノズル105の順に、反応室3の側面に設けられ、それぞれ、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26にガスを噴出する。反応室3の上部には、オーリング20を介して蓋21が配置され、気密性が確保される。つまり、真空状態で成膜処理を実行できる。反応室3内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26からスリット46(サセプタ8とともに回転する、二つのサセプタ8間の空間を排気する回転排気口)を通り、図示しない排気口から排気される。
【0239】
反応室3の側面、サセプタ8の側方に、基板16交換のためのゲート開口29が設けられている。また、反応室3の下部に、サセプタホルダ17の中心に接続された回転軸30が設けられ、サセプタホルダ17全体がすべてのサセプタ8とともにドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転する。
【0240】
各ガス供給ノズルは同様の構造であり、実施の形態21におけるガスノズルのキャップ80及び第一リング77と類似の構成による、キャップ108及びリング109からなる、一種類のガスを噴出するノズルである。すなわち、リング109は、全体としてz方向(鉛直方向)に長尺の環状をなす帯状部110、及び、全体としてz方向に長尺の環状をなし、帯状部110と一体であり、帯状部110の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の内壁面を備えたツバ部111を備える。
【0241】
また、キャップ108は、リング109の帯状部110に挿入された、帯状部110の内壁面と相似形(本実施の形態においては、同一形状)の外壁面を備えた板部112、及び、板部112と一体であり、リング109のツバ部111に重なって配置された板部一体ツバ部113を備える。キャップ108の板部112は、リング108の帯状部110及びツバ部111の内部からなる長尺穴113に挿入され、貫通し、その先端部は反応室3内に露出している。板部112のx方向の長さは、帯状部110のx方向の長さ及びツバ部111のx方向の長さを足したものよりもわずかに長いため、反応室3内において板部112の先端部は、帯状部110の先端部よりもわずかに中心方向に飛び出している。
【0242】
マスフローコントローラやバルブなどにより構成される、第一ガス供給部84から供給される第一ガスは、ツバ部111の外壁面からツバ部111の内壁面に貫通する導入孔114、並びに、帯状部110の内壁面及び板部112の外壁面の間の隙間を通り、ツバ部111とは反対側から流れ出るよう構成されている。つまり、向かい合う二つの座グリ部10の間のV溝状空間26に、反応室3の中心方向に向けてガスが噴出する。
【0243】
本実施の形態においては、キャップ108及びリング109を構成する各部位が、上方ほどy方向の幅が広くなるように構成されている。これは、上方ほど基板載置面間の距離が広くなっていることに対応している。半径方向については、基板載置面間の距離は、反応室3の中心から遠いほど広くなっている。つまり、ガスは、基板載置面間の距離が広い方から狭い方に向かって流れる構成である。
【0244】
プリカーサを含むガス供給ノズル106の対面に、プラズマ発生装置としての誘導結合プラズマユニット116が設けられている。誘導結合プラズマユニット116は、石英ガラス窓117、コイル118からなり、コイル118に高周波電力を供給することにより、開口部119にプラズマを発生させる。なお、コイル118は、シールド120によって囲われ、電磁ノイズの発生が抑制される。開口部119にも、酸化剤を含むガスを供給する構成としてもよい。
【0245】
また、各サセプタ8の基板載置面は、薄板により構成され、サセプタ8よりも下方に配置されたランプ98によってその裏面が加熱される。ランプ98は、反応室3の半径方向に長く放射状に配置された直管であり、ランプ98の下方に反射板99が設けられている。ランプ98から出た赤外光を含む光は、反射板99で反射された光とともに、石英ガラス窓100を通して反応室3内に導入され、サセプタホルダ17に設けられた開口部115を介してサセプタ8の裏面を照射する。
【0246】
蓋21の直下、サセプタ8の上方には、サセプタホルダ17と一体の天板104が設けられている。天板104は、サセプタ8及びサセプタホルダ17とともに回転する。したがって、サセプタ8の最上部と天板104の下面の距離を極めて小さくした場合であっても、経年変化等によって回転精度が低下した際に、サセプタ8の最上部と天板104が接触する恐れは極めて少ない。あるいは、サセプタ8の最上部と天板104の下面が常時接触する設計とすることもできる。これにより、反応室3の中心付近を介して種類の異なるガスが互いに混合することを効果的に防止できる。
【0247】
(実施の形態25)
以下、本発明の実施の形態25について、図62を参照して説明する。
【0248】
図62は、本発明の実施の形態25におけるガスノズルの構成を示す断面図であり、図60におけるプリカーサを含むガス供給ノズル106を代替するものである。
【0249】
図62において、プリカーサを含むガス供給ノズル106は、キャップ108及びリング109からなる、一種類のガスを噴出するノズルである。キャップ108の板部112の、板部一体ツバ部113に最も近い付け根部分に、マニホールド121が設けられている。マニホールド121は、板部112の全周に渡って設けられ、導入孔114から導入したガスが滞留する。マニホールド121内は圧力がほぼ等しくなるため、帯状部110の内壁面及び板部112の外壁面の間の隙間を通るガスが全周に渡って均一化する。同様の構成を、実施の形態21における板部81、第一帯状部78、第二帯状部87に設けることも可能である。
【0250】
(実施の形態26)
以下、本発明の実施の形態26について、図63を参照して説明する。
【0251】
図63は、本発明の実施の形態26における成膜装置の構成を示すもので、並べて配置された複数のサセプタ8上の複数の座グリ部10の中心を通り、水平面に垂直な円筒面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図を展開したものの一部であり、図7に相当する。ただし、実施の形態24と同様に、薄板からなるサセプタ8をランプ98によって加熱する方式である。
【0252】
図63において、サセプタ8は、斜面9に設けられた基板載置面としての座グリ部10及び水平面の両方に垂直な平面で切った断面が、水平面に平行な辺を底辺とする直角三角形に近似する形状である。つまり、サセプタ8は、上方ほど距離が狭くなるように向かい合っている2枚の平板からなるが、基板載置面を設けていない方の平板は鉛直面であり、一つのサセプタ8に基板16を1枚だけ載置する構成である。
【0253】
このような構成では、実施の形態24に対して、一つの反応室3内で同時に処理する基板数を同じにするためには、サセプタ8の数を2倍にする必要があるものの、基板16を載置したり基板16を取り出したりするためのロボットアームの動きがシンプルになるため、搬送系を含めた装置全体の構成が簡単化するという利点がある。さらに、隣り合うサセプタ8の距離を狭くすることが可能となるため、設計の工夫によっては、反応室3の直径を、実施の形態24における反応室3の直径よりも小さくすることも可能であり、高い面積生産性を実現できる可能性がある。
【0254】
(実施の形態27)
以下、本発明の実施の形態27について、図64及び図65を参照して説明する。
【0255】
図64は、本発明の実施の形態27における成膜装置の構成を示す平面図で、天板104よりも下方を上から見た図であり、図59に相当する。
【0256】
図65は、本発明の実施の形態27における成膜装置の構成を示すもので、反応室を、図64の点線を含む鉛直面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図60に相当する。
【0257】
なお、本実施の形態の基本的な動作は、実施の形態24と同様である。また、実施の形態26で示したものと同様の、薄板からなる各サセプタ8に基板16を1枚だけ載置する構成である。
【0258】
図64及び図65において、反応室3は全体として十角柱をなすが、内壁は該円筒形状である。反応室3内部のドーナツ状の凹空間に複数のサセプタ8がサセプタホルダ17上、水平方向に放射状に並べて配置されている。各ガス供給ノズルは、周方向に、プリカーサを含むガス供給ノズル106、パージガス供給ノズル105、パージガス供給ノズル105、酸化剤を含むガス供給ノズル107、酸化剤を含むガス供給ノズル107、酸化剤を含むガス供給ノズル107、酸化剤を含むガス供給ノズル107、酸化剤を含むガス供給ノズル107、パージガス供給ノズル105の順に、反応室3の側面に設けられ、それぞれ、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26にガスを噴出する。反応室3の上部には、オーリング20を介して蓋21が配置され、気密性が確保される。つまり、真空状態で成膜処理を実行できる。
【0259】
サセプタホルダ17の中心の円筒部から外側に向けて、サセプタホルダ17の中心の円筒部と各サセプタ8の間に、サセプタホルダ17と一体の壁122が放射状に多数設けられている。サセプタホルダ17において、各壁122の根元部近傍に排気穴123(サセプタ8とともに回転する、二つのサセプタ8間の空間を排気する回転排気口)が多数設けられている。したがって、反応室3内に供給されたガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26から、二つの壁122の間の空間を通り、さらに排気穴123を通って排気口27から排気される。
【0260】
サセプタホルダ17の直径は、反応室3の内壁面の直径よりも大きく、その最外部124が、反応室3の内壁面に全周に渡って設けられた溝125に嵌合している。このような構造とすることで、ガスがサセプタホルダ17の外周部と反応室3の内壁面との隙間から排気される割合を極めて小さくすることができる。つまり、大部分のガスは、二つのサセプタ8の間のV溝状空間26から、二つの壁122の間の空間を通り、さらに排気穴123を通って排気口27から排気される。
【0261】
(実施の形態28)
以下、本発明の実施の形態28について、図66を参照して説明する。
【0262】
図66は、本発明の実施の形態28における成膜装置の構成を示すもので、反応室を、図64の点線を含む鉛直面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図であり、図65に相当する。
【0263】
図66において、天板104の直径は、反応室3の内壁面の直径よりも大きく、その最外部126が、反応室3の内壁面に全周に渡って設けられた溝127に嵌合している。また、天板104と反応室の天井面(蓋21の下面)との間にパージガス又は不活性ガスを供給するためのガス導入孔128が設けられている。このような構造とすることで、ガスがサセプタホルダ17の外周部と反応室3の内壁面との隙間から回り込み、複数のV溝状空間26でガスが混合する割合を極めて小さくすることができる。つまり、反応室3の上部を介して種類の異なるガスが互いに混合することをさらに効果的に防止できる。
【0264】
(実施の形態29)
以下、本発明の実施の形態29について、図67及び図68を参照して説明する。
【0265】
図67は、本発明の実施の形態29における成膜装置の構成を示す斜視図であり、反応室の構成を示す分解図である。また、図68は、反応室の中心を含むxz平面に平行な面で切断したときの、反応室の構成を示す断面図である。
【0266】
成膜装置全体の構成は図23に示すものと同様であり、ここでは一つの反応室について説明する。以下、一例として、図23の反応室54に相当する位置に配置した反応室129の構成について詳しく述べるが、他の反応室も同様の構成である。
【0267】
図67及び図68において、反応室129の向かい合った側面に二つの円形開口部130、上面にレーストラック形開口部131が設けられている。円形開口部130は、反応室129の側面に設けられた二つの斜面132に設けられている。円形開口部130は、傾斜した円形の石英ガラス窓133によって塞がれ、反応室129の気密が確保される。石英ガラス窓133の背後に傾斜したランプ134が設けられている。円形開口部130の内壁面に沿って一端が石英ガラス窓133で閉じられた円筒135が配置され、円筒135の他端はサセプタ136によって閉じられている。
【0268】
第一リング137、第二リング138、及びキャップ139は、全体としてy方向に長尺をなすガスノズルであり、それぞれ、実施の形態21における第一リング77、第二リング86、及びキャップ80に相当する。第一ガスが、第一導入孔142(x方向に2つ、向かい合って設けられている)から反応室129内に供給され、第二ガスが、第二導入孔143(x方向に2つ、向かい合って設けられている)から反応室129内に供給される。キャップ139の中央に、円形のドーム用開口部140が設けられ、ドーム用開口部140に石英ドーム141が設けられている。
【0269】
ALDによる成膜を行う際は、第一ガスとしてプリカーサを含むガス、第二ガスとして酸化剤を含むガスを用いる。ただし、第一ガスとしてプリカーサを含むガスを供給している間は、第二ガスとしてパージガス(又は希釈ガス)を供給し、第二ガスとして酸化剤を含むガスを供給している間は、第一ガスとしてパージガス(又は希釈ガス)を供給するようにする。このようにして、プリカーサと酸化剤の混合が効果的に回避できる。
【0270】
反応室129の上面には、二つの温度センサ用穴144が設けられ、それぞれに温度センサ145が挿入されている。温度センサ145としては種々のものが利用できるが、典型的には熱電対である。一般的なシース熱電対を用いてもよいが、ここでは、サセプタ136と同じ材質の筒の内面に熱電対を接触させたものを用いている。このような構成により、サセプタ136と石英ガラス窓133の間の空間の温度をモニタリングすることにより、サセプタ136の温度制御を行うことができる。
【0271】
ランプ134の背面には反射板146が設けられており、ランプ134から出た赤外光を含む光は、反射板146で反射された光とともに、石英ガラス窓133を通して反応室129内に導入され、サセプタ136の裏面を照射する。また、石英ドーム141の上方はシールド147によって囲われ、電磁ノイズの発生が抑制される。導波管148から導入されるマイクロ波は、石英ドーム141の上方から放射され、反応室129内にプラズマを発生させる。反応室129内に供給されたガスは、反応室129の下方に設けられた排気口149から排気される。
【0272】
反応室129の側面、サセプタ136の側方に、基板交換のためのゲート開口29が設けられている。基板は、サセプタ136に設けられた座グリ部に載置されるが、サセプタ136をリング状とし、基板の外周部のみを保持する構成とすることにより、基板の裏面に直接ランプ134からの光を照射してもよい。あるいは、基板をトレー上に載置したものを、サセプタ136に載置する構成としてもよい。この場合も、サセプタ136をリング状とし、トレーの外周部のみを保持する構成とすることにより、トレーの裏面に直接ランプ134からの光を照射してもよい。勿論、トレーもリング状とし、基板の裏面に直接ランプ134からの光を照射する構成としてもよい。トレーを用いる方式は、基板搬送の安定性が増すことから、安全かつ高速に基板交換を行えるという利点がある。
【0273】
サセプタ136をランプ134により加熱する構成を例示したが、サセプタに抵抗加熱ヒーターを埋め込む構成としてもよい。
【0274】
反応室129の上方、サセプタ136の上方に設けられた石英ドームは、マイクロ波プラズマ源を構成するが、マイクロ波以外の電磁エネルギーを用いてもよい。例えば、高周波を用いた誘導結合プラズマ源、パルス電力を用いたプラズマ源などを利用してもよい。このように、キャップ139に設けられた誘電体窓としての石英ドーム141を介して、図示しないマイクロ波源、高周波電源、又はパルス電源から供給される電磁エネルギーを反応室129内に放射することにより、反応室129内にプラズマを発生させることができる。
【0275】
本実施の形態における成膜装置は、実施の形態21で説明した成膜装置に比べると処理速度は小さいものの小型・小規模であり、実施の形態21又はその他の実施の形態で説明した成膜装置の詳細設計を行うための予備実験を行う装置としても有用である。
【0276】
(実施の形態30)
以下、本発明の実施の形態30について、図69を参照して説明する。
【0277】
図69は、本発明の実施の形態30における成膜装置の構成を示す断面図であり、図68に相当する。
【0278】
図69において、キャップ139上に、キャップ139の内壁面に連続する内壁面を持つ第三リング149が設けられている。キャップ139には第三導入孔150(x方向に2つ、向かい合って設けられている)が設けられている。キャップ139及び第三ガスリング149上に、第四リング151が設けられている。第三ガスが、第三ガス導入孔150、キャップ139と第三リング149の外壁面との間の隙間、第三リング149の上面と第四リング151の下面との隙間を通り、図中の矢印で示すように、反応室129内に斜め上向きに供給される。
【0279】
この構成では、第一ガスリアクタントを含むガス第一ガスとしてプリカーサを含むガス、第二ガスとしてパージガス(又は希釈ガス)、第三ガスとして酸化剤を含むガスを用いる。このような構成によれば、酸化剤を含むガスがプラズマ密度が最も高くなる石英ドーム141の内側に向かって供給されるため、酸化剤のプラズマ化がより効果的に行われ、イオンやラジカルなどの活性粒子をより効率よく利用することができる。
(実施の形態31)
以下、本発明の実施の形態31について、図70を参照して説明する。
【0280】
図70は、本発明の実施の形態31における成膜装置の構成を示す断面図であり、図68に相当する。
【0281】
図70において、キャップ139上に、石英ベルジャー152が設けられている。石英ベルジャー152の上部にはガス供給管153が接続され、石英ベルジャー152の周囲にコイル154が巻き付けられている。第三ガスが、ガス供給管153から、図中の矢印で示すように、反応室129内に下向きに供給される。コイル154に高周波電力を供給することにより、プラズマを発生させることができる。
【0282】
この構成では、第一ガスリアクタントを含むガス第一ガスとしてプリカーサを含むガス、第二ガスとしてパージガス(又は希釈ガス)、第三ガスとして酸化剤を含むガスを用いる。このような構成によれば、酸化剤を含むガスがプラズマ密度が最も高くなる石英ベルジャー152の内側に向かって供給されるため、酸化剤のプラズマ化がより効果的に行われ、イオンやラジカルなどの活性粒子をより効率よく利用することができる。
【0283】
以上述べた成膜装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎず、本発明は上述した以外にも様々な範囲に対し適用が可能である。
【0284】
例えば、ALDによる成膜方法を実施する場合を例示したが、CVDやエピタキシャル成長による成膜を実施してもよい。V溝状空間26におけるガス流速は、その下方ほど速くなるので、下流におけるプロセスガスの枯渇が緩和され、座グリ部10の上側と下側の成膜速度の差が小さくなる。この効果は、とくにエピタキシャル成長において顕著である。
【0285】
また、基板載置面を、サセプタ8に形成した座グリ部10とする場合について例示したが、基板載置面の周辺の数箇所にピンを立てて基板が落下しないようにしたものによって、基板載置面を規定してもよい。
【0286】
また、サセプタ8をドーナツ形状の周方向に回転させる構成において、酸化剤を含むガス供給管25からのガスが噴出される扇形部分にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備える場合、及び、反応室の側面に設けた開口部にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備える場合を例示したが、他の実施の形態において、反応室内にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備えてもよい。この場合においても、酸化剤を含むガスをプラズマ化することで、プロセスの低温化や膜の緻密化を図ることができる。
【0287】
また、プラズマ発生装置として、電極42に高周波電力を供給することによって、シャワープレート18とサセプタ8の間の空間にプラズマ45を発生させる場合、コイル118に高周波電力を供給することによって誘導結合プラズマを発生させる場合、石英ドーム141にマイクロ波を供給することによってプラズマを発生させる場合を例示したが、プラズマの発生方法として、パルス電力を用いる方法など、種々の方法を適用してもよい。また、プラズマ発生装置は、基板載置面よりもガス流れにおける上流に設けることが望ましい。これにより、イオンやラジカルなどの活性粒子を効率よく利用することができる。
【0288】
本発明の種々の構成によって、様々な成膜処理が可能となる。例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造への適用が効果的である。とくに半導体集積回路製造におけるダブルパターニング工程や、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用可能である。また、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0289】
以上のように本発明は、さまざまな電子デバイスの製造に利用可能で、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造への適用が効果的である。とくに半導体集積回路製造におけるダブルパターニング工程や、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用可能である。また、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において有用な発明である。
【符号の説明】
【0290】
3 反応室
8 サセプタ
9 斜面
10 座グリ部
11 端面
15 サセプタの上面
17 サセプタホルダ
18 シャワープレート
19 ガス噴出孔
20 オーリング
21 蓋
22 パージガス供給管
23 プリカーサを含むガス供給管
24 パージガス供給管
25 酸化剤を含むガス供給管
29 ゲート開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
図65
図66
図67
図68
図69
図70
【手続補正書】
【提出日】2023-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒と、
前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップと、
を備えるガスノズルであって、
第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出しており、
前記キャップに設けられた誘電体窓を介して電磁エネルギーを放射するプラズマ源を備えること
を特徴とするガスノズル。
【請求項2】
反応室内に、鉛直面に対して傾いた基板載置面を持つサセプタを複数備え、
前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、
前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜装置であって、
第一筒と、前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップとを備え、
第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出しているガスノズルをさらに備えること
を特徴とする成膜装置。
【請求項3】
反応室内に設けられた、鉛直面に対して傾いた基板載置面を備えた複数のサセプタ上の前記基板載置面に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記反応室内にガスを供給しつつ前記反応室からガスを排気するステップと、
前記基板載置面から前記基板を前記反応室外に移動させて取り出すステップと、
を含み、
前記複数のサセプタは水平方向に並べられており、
前記複数のサセプタのうちの二つのサセプタが、上方ほどサセプタ間の距離が広くなるように配置されている成膜方法であって、
第一筒と、前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップとを備え、
第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出しているガスノズルを用いること
を特徴とする成膜方法。
【請求項4】
第一筒と、
前記第一筒に挿入された、前記第一筒の内壁面と相似形の外壁面を有する挿入部を備えたキャップと、
を備えるガスノズルであって、
第一ガスが、前記第一筒に設けられた貫通穴である第一導入孔、並びに、前記第一筒の内壁面及び前記挿入部の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記挿入部の先端と前記第一筒の先端の間に段差がないか、又は、前記挿入部の先端が前記第一筒の先端から飛び出しており、
前記第一筒が、全体として長尺の環状をなす第一帯状部を備え、
前記キャップが、前記第一帯状部の内壁面と相似形の外壁面を備えた板部を備えること
を特徴とするガスノズル。
【請求項5】
前記第一筒を挿入する、前記第一筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第二筒をさらに備えるガスノズルであって、
第二ガスが、前記第二筒に設けられた貫通穴である第二導入孔、並びに、前記第二筒の内壁面及び前記第一筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記第一筒の先端と前記第二筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第一筒の先端が前記第二筒の先端から飛び出している、
請求項1又は4記載のガスノズル。
【請求項6】
前記第二筒を挿入する、前記第二筒の外壁面と相似形の内壁面を有する第三筒をさらに備えるガスノズルであって、
第三ガスが、前記第三筒に設けられた貫通穴である第三導入孔、並びに、前記第三筒の内壁面及び前記第二筒の外壁面との間の隙間を通って流れ出るよう構成されており、
前記第二筒の先端と前記第三筒の先端の間に段差がないか、又は、前記第二筒の先端が前記第三筒の先端から飛び出している、
請求項記載のガスノズル。
【請求項7】
前記キャップに設けられた誘電体窓を介して電磁エネルギーを放射するプラズマ源を備える、
請求項4記載のガスノズル。
【請求項8】
複数の前記サセプタが、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、
複数の前記サセプタを、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる回転機構を備える、
請求項記載の成膜装置。
【請求項9】
前記複数の基板載置面が、前記反応室内のドーナツ状空間に放射状に配置され、
前記複数の基板載置面を、前記ドーナツ状空間内でドーナツ形状の周方向に回転させる、
請求項記載の成膜方法。
【請求項10】
前記複数のサセプタ又は前記基板載置面に載置された基板が、ランプによって加熱される、
請求項記載の成膜装置。
【請求項11】
前記複数のサセプタの上方に、マイクロ波、高周波、又はパルス電力によってプラズマを発生させるプラズマ源を備える、
請求項記載の成膜装置。
【請求項12】
前記プラズマ源が、前記キャップに設けられた誘電体窓を介して、電磁エネルギーを前記反応室内に放射する構成である、
請求項11記載の成膜装置。