(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117673
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】偏光子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230817BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230817BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230817BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230817BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230817BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230817BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/10
G09F9/00 313
G09F9/00 338
G09F9/00 324
G09F9/30 349E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020370
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南澤 佳司
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA13
2H149BA14
2H149BB01
2H149BB06
2H149BB07
2H149BB08
2H149BB09
2H149BB10
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02Y
2H149FA03W
2H149FA04Y
2H149FA05Y
2H149FA08Y
2H149FA12X
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13X
2H149FA13Y
2H149FB01
2H149FC02
2H149FC03
2H149FC04
2H149FC05
2H149FC06
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC45
3K107EE26
3K107GG28
5C094AA31
5C094BA27
5C094BA43
5C094ED14
5G435AA17
5G435BB12
5G435FF05
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】シワが軽減された偏光子を得る。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造方法であって、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理工程と、乾燥工程とをこの順に含み、前記乾燥工程は少なくとも1つの拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、製造方法が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理工程と、乾燥工程とをこの順に含み、
前記乾燥工程は少なくとも1つの拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程は乾燥炉内で複数の拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は乾燥炉内の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路の全長の中心より上流側において、拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記処理工程は膨潤工程、染色工程および架橋工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記拡幅ロールは弓形湾曲拡幅ロールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造装置であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理部および乾燥炉を備え、
前記乾燥炉内の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路に少なくとも1つの拡幅ロールを備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸して得られる偏光子が広く用いられている。特開2012-173544号公報(特許文献1)には、偏光子の製造方法であって、ポリビニルアルコール系フィルムに膨潤処理、染色処理および架橋処理を行う工程の少なくともいずれかで、処理浴中のガイドロールとして拡幅ロールを用いてフィルムを延伸する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子は、フィルムの搬送方向に沿って縦シワが生じることがある。本発明は、シワが軽減された偏光子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に例示する項目に関する。
[1]ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理工程と、乾燥工程とをこの順に含み、
前記乾燥工程は少なくとも1つの拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、製造方法。
[2]前記乾燥工程は乾燥炉内で複数の拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記乾燥工程は乾燥炉内の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路の全長の中心より上流側において、拡幅ロールと前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記処理工程は膨潤工程、染色工程および架橋工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記拡幅ロールは弓形湾曲拡幅ロールである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造装置であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理部および乾燥炉を備え、
前記乾燥炉内の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路に少なくとも1つの拡幅ロールを備える、装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれは、シワが軽減された偏光子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】偏光子に生じる縦シワを説明する模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る偏光子の製造方法に使用される乾燥炉を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る偏光子の製造方法で使用される拡幅ロールを説明するための(a)拡幅ロールの上面模式図、(b)拡幅ロールの断面模式図、(c)拡幅ロールによってフィルムにかかる力の作用を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る偏光子の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0009】
[偏光子]
偏光子は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する。偏光子は、例えば一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着配向させた偏光子であってよい。
【0010】
本発明に係る偏光子の製造方法は、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理工程と、乾燥工程とをこの順に含み、
乾燥工程は少なくとも1つの拡幅ロールとポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることを含む。
【0011】
図1に示すように、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子はフィルムの搬送方向に沿った縦シワが生じることがある。乾燥工程において拡幅ロールとフィルムとを接触させることで、縦シワを軽減することができる。
【0012】
本発明に係る偏光子の製造方法の一実施形態として、乾燥工程において、乾燥炉内で複数の拡幅ロールとポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させてもよい。乾燥炉の前半部分では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含まれる水分の量が急激に低下するため、シワが発生しやすい。シワの発生をより抑制する観点からは、乾燥工程においては、少なくとも乾燥炉内のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路の全長の中心より上流側において、拡幅ロールとポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させることが好ましい。乾燥炉内のフィルムの搬送路の全長の中心より上流側は、フィルムの搬送路の全長の上流側3分の1の領域または上流側4分の1の領域であってもよい。
図2に乾燥炉の一例を示す。乾燥炉123内には複数の拡幅ロール12がフィルムに接触するように設置されている。乾燥炉123内の搬送路にはガイドロール11および拡幅ロール12がともに備えられてよい。
【0013】
拡幅ロールによれば、フィルムに対して幅方向に外力を付加することができる。本発明において、フィルムの幅方向に付加される外力は、フィルムの幅方向における内から外向きの伸張力である。拡幅の方向は、拡幅ロール12の配置角度等によって調整することができる。拡幅の大きさは、拡幅ロール12の配置角度、拡幅ロール12とポリビニルアルコール系樹脂フィルム100との接触角度、採用する拡幅ロール12の湾曲の程度(弧高)等によって調整することができる。
【0014】
拡幅ロールとしては、例えば弓形湾曲拡幅ロール(エキスパンダーロール)、ピンチロール、クラウンロール、逆クラウンロールが挙げられる。これらは併用してもよい。
【0015】
拡幅ロールとして弓形湾曲拡幅ロールを用いた場合の拡幅ロール12の配置の一例を
図3に示す。弓形湾曲拡幅ロールは、
図3(a)に示すように、湾曲した軸120上にボールベアリングが内蔵されたスプールが複数個配置されている。スプール上にゴム筒が被覆されている拡幅ロールをゴムエキスパンダーロールといい、ゴム筒が被覆されていない拡幅ロールを金属エキスパンダーロールという。本発明において、拡幅ロール12は、ゴムエキスパンダーロールであっても、金属エキスパンダーロールであってもよい。通常、拡幅ロール12における軸120に対する垂直断面は円形であり、その面積はいずれの垂直断面においても等しい。拡幅ロール12において軸120に対する垂直断面は、例えば直径50mm~400mmであり、100mm程度であってよい。
【0016】
拡幅ロール12の中心部分における、軸120に対する直交断面(
図3(a)のa-a断面)を
図3(b)において断面122で示し、その中心をC’とする。拡幅ロール12とポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の端部とが接触する部分における軸120に対する直交断面を
図3(b)において断面121で示し、その中心をCとする。中心部分の断面122の中心C’が、断面121の中心Cよりも搬送方向の下流側に位置するように配置されている場合、すなわちポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の幅方向の中心部が端部よりも後に拡幅ロール12に接触するように配置されている場合は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム100に幅方向における内から外向きの伸張力を付加することができる。
図3(c)に拡幅ロールによってフィルムにかかる力の作用を示す。ポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の幅方向の端部が中心部分よりも先に拡幅ロール12に接触し(領域A2で示す)、その後、中心部分が拡幅ロール12に接触するように拡幅ロール12が配置されている場合は、フィルムに外方向の伸張力(矢印b2で示す)を付加し、シワの発生を抑制することができる。
【0017】
図3(b)において、拡幅ロール12に入射するポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の端部の入射方向を矢印xで示し、拡幅ロール12において中心Cから中心C’に向かう方向を矢印yで示した場合に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム100を適切に拡幅する観点からは、矢印xに対する矢印yの角度θは-120°~120°の範囲であることが好ましく、-90°~90°であってもよい。拡幅ロール12の弧高は、例えば1mm~20mmであり、10mm程度であってよい。本明細書で用いられる「拡幅ロールの弧高」は中心Cと中心C’との距離を意味し、「拡幅ロールの配置角度」は矢印xに対する矢印yの角度θを意味する。
【0018】
拡幅ロール12におけるポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の接触角度αによってもフィルムに付加される外力の大きさを調整することができる。接触角度αは、ガイドロール11および/または拡幅ロール12の位置を上下させることにより調整することができる。拡幅ロール12により付加される伸張力の大きさの調整が容易であることから、接触角度αは0°~30°であることが好ましく、10°程度であってもよい。
【0019】
拡幅ロール12に接触するポリビニルアルコール系樹脂フィルム100の幅は、特に限定されないが、フィルムは拡幅ロール12の存在幅以内に存在していることが好ましい。拡幅ロール12の存在幅以内にフィルムが存在することにより、フィルム全体のシワを軽減しやすくなる。また、拡幅ロール12の端部にフィルムが接触することがないため、キズ、シワ等の外観異常の発生を抑えることができる。拡幅ロール12の長手方向の長さは、例えば500mm~3000mmであり、2000mm程度であってよい。
【0020】
ピンチロールは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向の端部を挟着する。ピンチロールは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路の両側端部に設置されることが好ましい。ピンチロールは金属ロール、プラスチックロールまたはゴムロールであってよい。ピンチロールのロール径は、例えば10mm~50mm程度である。ひとつのピンチロールがフィルムの側端部を挟着する長さは、フィルムの全幅に対して2%~10%程度であってよい。ピンチロールは、フィルムを上面から見たときに、フィルムの搬送方向に角度βで傾斜していてもよい。すなわち、フィルム平面において、搬送方向に直交する幅方向に対して、ピンチロールの軸とのなす角度βは、0~±45°、0~±30°または0~±15°であってよい。ピンチロールは、フィルムの搬送方向に対して鉛直方向に傾斜していてもよい。ピンチロールの傾斜角度γは、フィルムの外側に対してフィルムの中央側が0~±45°、0~±30°または0~±15°であってよい。
【0021】
乾燥工程において、乾燥炉内で複数の拡幅ロールとポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを接触させる場合、複数の拡幅ロールは互いに同じものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0022】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理工程は、膨潤工程、染色工程および架橋工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでよい。
【0023】
本発明に係る製造方法に含まれ得る各種の処理工程は、偏光子製造装置のフィルム搬送路に沿って原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムを連続的に搬送させることによって連続的に実施できる。フィルム搬送経路は、上記各種の処理工程を実施するための設備(処理槽や炉等)を、それらの実施順に備えている。
【0024】
フィルム搬送路は、上記設備のほか、ガイドロールやニップロール等を適宜の位置に配置することによって構築することができる。ガイドロールは、例えば各処理槽の前後および処理槽中に配置することができ、これにより処理槽へのフィルムの導入、浸漬および処理槽からの引き出しを行うことができる。より具体的には、各処理槽中に2以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理槽にフィルムを浸漬させることができる。
【0025】
偏光子の製造方法の一例を、
図4を参照して説明する。繰出しロール111から巻き出された原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルム110は、水を膨潤浴とする膨潤槽113に浸漬され、膨潤処理が施される(膨潤工程)。膨潤処理が施されたフィルムは、二色性色素を含む水溶液を染色浴とする染色槽115に浸漬され、色素が吸着される(染色工程)。その後、架橋剤を含む水溶液を処理浴とする架橋槽117に浸漬され、架橋処理されて色素が固定される(架橋工程)。次いでフィルムを洗浄槽119にて洗浄し(洗浄工程)、乾燥炉123にて乾燥させ(乾燥工程)、偏光子130が得られる。偏光子130は巻取りロール127に巻き取られる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、膨潤工程の前から架橋工程までのいずれか1以上の段階で一軸延伸処理される(延伸工程)。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものが挙げられる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
【0027】
ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100以上10000以下であり、より好ましくは1500以上8000以下であり、さらに好ましくは2000以上5000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が上記範囲内である場合、偏光性能およびフィルム加工性に優れる傾向にある。
【0029】
原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、例えば10μm以上150μm以下であってよく、好ましくは15μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向の長さは、例えば600mm以上5000mm以下であってよい。
【0030】
偏光子の厚みは、通常65μm以下であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。偏光子の厚みは、通常2μm以上であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。偏光子の厚みは、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムの選定、延伸倍率の調節等により制御することができる。
【0031】
原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、例えば、長尺の未延伸または延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(巻回品)として用意することができる。この場合、偏光子もまた、長尺物として得られる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0032】
(1)膨潤工程
本工程における膨潤処理は、原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの異物除去、可塑剤除去、易染色性の付与、フィルムの可塑化等の目的で必要に応じて実施される処理である。膨潤処理は、具体的には水を含有する処理液を収容する膨潤槽にポリビニルアルコール系樹脂フィルム110を浸漬させる処理であることができる。当該フィルムは、1つの膨潤槽に浸漬されてもよいし、2以上の膨潤槽に順次浸漬されてもよい。膨潤処理前、膨潤処理時、または膨潤処理前および膨潤処理時に、フィルムに対して一軸延伸処理を行ってもよい。
【0033】
膨潤槽に収容される処理液は、水(例えば純水)であってもよく、アルコール類等の水溶性有機溶媒を添加した水溶液であってもよい。上述の通り、膨潤槽に収容される処理液は亜鉛塩を含有することができる。
【0034】
フィルムを浸漬するときの膨潤槽に収容される処理液の温度は、通常10℃以上70℃以下、好ましくは15℃以上50℃以下である。フィルムの浸漬時間は、通常10秒以上600秒以下、好ましくは20秒以上300秒以下である。
【0035】
(2)染色工程
本工程における染色処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着および配向させる目的で行われる処理である。染色処理は、具体的には二色性色素を含有する処理液を収容する染色槽にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる処理であることができる。当該フィルムは、1つの染色槽に浸漬されてもよいし、2以上の染色槽に順次浸漬されてもよい。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理が施されていてもよい。染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行ってもよい。
【0036】
二色性色素は、ヨウ素または二色性有機染料であることができる。二色性有機染料の具体例は、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックを含む。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色槽に収容される処理液には、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。処理液にはヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別される。上記水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01質量部以上1質量部以下である。また、ヨウ化カリウム等のヨウ化物の含有量は通常、水100質量部あたり0.5質量部以上20質量部以下である。
【0038】
フィルムを浸漬するときの染色槽に収容される処理液の温度は、通常10℃以上45℃以下、好ましくは10℃以上40℃以下であり、より好ましくは20℃以上35℃以下である。フィルムの浸漬時間は、例えば20秒以上600秒以下であってよく、好ましくは20秒以上300秒以下である。
【0039】
二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、染色槽に収容される処理液には、二色性有機染料を含有する水溶液を用いることができる。当該水溶液における二色性有機染料の含有量は通常、水100質量部あたり1×10-4質量部以上10質量部以下であり、好ましくは1×10-3質量部以上1質量部以下である。染色槽には染色助剤等を共存させてもよく、例えば硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤等を含有させてもよい。二色性有機染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色槽に収容される処理液の温度は、例えば20℃以上80℃以下、好ましくは25℃以上50℃以下である。フィルムの浸漬時間は、通常30秒以上600秒以下、好ましくは60秒以上300秒以下である。
【0040】
(3)架橋工程
染色工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤で処理する架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整等の目的で行う処理である。架橋処理は、具体的には架橋剤を含有する処理液を収容する架橋槽に染色工程後のフィルムを浸漬させる処理であることができる。当該フィルムは、1つの架橋槽に浸漬されてもよいし、2以上の架橋槽に順次浸漬されてもよい。架橋処理時に一軸延伸処理を行ってもよい。
【0041】
架橋剤としては、ホウ酸、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を挙げることができ、ホウ酸が好ましく用いられる。2種以上の架橋剤を併用することもできる。架橋槽に収容される処理液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり0.1質量部以上15質量部以下であり、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。二色性色素がヨウ素の場合、架橋槽に収容される処理液は、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましい。架橋槽に収容される処理液におけるヨウ化物の含有量は通常、水100質量部あたり0.1質量部以上15質量部以下であり、好ましくは5質量部以上12質量部以下である。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を架橋槽に共存させてもよい。
【0042】
フィルムを浸漬するときの架橋槽に収容される処理液の温度は、例えば30℃以上85℃以下であってよく、好ましくは30℃以上60℃以下である。フィルムの浸漬時間は、例えば2秒以上600秒以下であってよく、好ましくは2秒以上300秒以下である。
【0043】
架橋工程では、架橋槽は2槽以上あってもよい。この場合、各架橋槽に収容される処理液の組成および温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。架橋槽に収容される処理液は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる目的に応じた架橋剤およびヨウ化物等の濃度や、温度を有していてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理および色相調整(補色)のための架橋処理を、それぞれ複数の工程(例えば複数の槽)で行ってもよい。
一般に、架橋による耐水化のための架橋処理および色相調整(補色)のための架橋処理の双方を実施する場合、色相調整(補色)のための架橋処理を実施する槽(補色槽)が後段に配置される。補色槽に収容される処理液の温度は、例えば10℃以上55℃以下であり、好ましくは20℃以上50℃以下である。補色槽に収容される処理液における架橋剤の含有量は、水100質量部あたり、例えば1質量部以上5質量部以下である。補色槽に収容される処理液におけるヨウ化物の含有量は、水100質量部あたり、例えば3質量部以上30質量部以下である。
【0044】
上述のように、偏光子の製造にあたり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、膨潤工程の前から架橋工程までのいずれか1または2以上の段階で一軸延伸処理される(延伸工程)。二色性色素の染色性を高める観点から、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、または染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
【0045】
一軸延伸処理は、空中で延伸を行う乾式延伸、槽中で延伸を行う湿式延伸のいずれであってもよく、これらの双方を行ってもよい。一軸延伸処理は、2つのニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、熱ロール延伸、テンター延伸等であることができるが、好ましくはロール間延伸を含む。原反フィルムを基準とする延伸倍率(2以上の段階で延伸処理を行う場合にはそれらの累積延伸倍率)は、3倍以上8倍以下程度である。良好な偏光特性を付与するために、延伸倍率は、好ましくは4倍以上、より好ましくは5倍以上とされる。
【0046】
(4)洗浄工程
本工程における洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分な架橋剤や二色性色素等の薬剤を除去する目的で必要に応じて実施される処理であり、水を含有する洗浄液を用いて架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄する処理である。具体的には、洗浄槽に収容される処理液(洗浄液)に架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる処理であることができる。当該フィルムは、1つの洗浄槽に浸漬されてもよいし、2以上の洗浄槽に順次浸漬されてもよい。あるいは、洗浄処理は、架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して洗浄液をシャワーとして噴霧する処理であってもよく、上記の浸漬させる処理と噴霧する処理とを組み合わせてもよい。
【0047】
洗浄液は、水(例えば純水)であってよく、アルコール類のような水溶性有機溶媒を添加した水溶液であってもよい。
【0048】
架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄槽に浸漬する場合、洗浄槽中の洗浄液の温度は、例えば2℃以上40℃以下であり、好ましくは2℃以上22℃以下、より好ましくは2℃以上10℃以下である。洗浄槽中に浸漬する時間は、例えば10秒以上100秒以下であってよく、好ましくは20秒以上80秒以下である。
【0049】
架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに洗浄液をシャワーとして噴霧する場合、洗浄液の温度は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向において中央部と両端部とにおいて同じ温度であってもよいし、異なった温度であってもよいが、好ましくは異なった温度であり、より好ましくは中央部における温度が両端部の温度より低い温度である。洗浄液の温度は、好ましくは中央部において2℃以上10℃以下および両端部において10℃以上22℃以下であり、より好ましくは中央部において3℃以上7℃以下および両端部において15℃以上22℃以下である。
【0050】
(5)乾燥工程
乾燥工程は、処理工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる。洗浄工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを引き続き搬送させながら、乾燥工程に当該フィルムを導入することによって乾燥処理を施すことができ、これにより偏光子が得られる。
【0051】
乾燥処理は、フィルムの乾燥手段(加熱手段)を用いて行われる。乾燥手段の好適な一例は乾燥炉である。乾燥炉は、好ましくは炉内温度を制御可能なものである。乾燥炉は、例えば、熱風の供給等により炉内温度を高めることができる熱風オーブンである。また乾燥手段による乾燥処理は、凸曲面を有する1または2以上の加熱体に洗浄工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを密着させる処理や、ヒーターを用いて該フィルムを加熱する処理であってもよい。
【0052】
加熱体としては、熱源(例えば、温水等の熱媒や赤外線ヒーター)を内部に備え、表面温度を高めることができるロール(例えば熱ロールを兼ねたガイドロール)を挙げることができる。ヒーターとしては、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を挙げることができる。
【0053】
乾燥工程において、乾燥処理の温度(例えば、乾燥炉の炉内温度、熱ロールの表面温度等)は、通常30℃以上100℃以下であり、50℃以上90℃以下であることが好ましい。乾燥時間は特に制限されないが、例えば30秒以上600秒以下であり、好ましくは30秒以上60秒以下である。
【0054】
乾燥工程は、1段階であってもよいし、多段階に分かれていてもよく、好ましくは2段階以上4段階以下に分かれている。乾燥工程が多段階に分かれている場合、乾燥処理の温度は、最初の段階に比べ後の段階の温度が高くなるように設定することが好ましい。乾燥工程が多段階に分かれている場合、各段階における乾燥時間は例えば10秒以上300秒以下であってよく、好ましくは10秒以上20秒以下である。
【0055】
偏光子製造工程において、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して処理を施す処理液の少なくとも1つが亜鉛塩を含有していてもよい。処理液を収容する処理槽としては、例えば膨潤槽、染色槽、架橋槽、洗浄槽、補色槽等が挙げられる。亜鉛塩を含有する処理液を収容する処理槽は、好ましくは染色槽後から洗浄槽前にある処理槽であり、より好ましくは架橋槽および補色槽から選ばれる少なくとも1つであり、さらに好ましくは架橋槽が2以上ある場合には最後の架橋槽および補色槽から選ばれる少なくとも1つである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを亜鉛塩を含有する処理液に浸漬することにより、得られる偏光子に亜鉛元素を含有させることができる。偏光子中の亜鉛元素の含有量は、処理液中の亜鉛塩の濃度、亜鉛塩を含有する処理液中へのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの浸漬時間、処理液の温度等を調節することにより上述の範囲の亜鉛元素の含有量とすることができる。
【0056】
処理液に含まれる亜鉛塩としては、例えば塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛や、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛等が挙げられる。中でも張力の変化が小さいことから好ましくは硝酸亜鉛である。亜鉛塩は、亜鉛塩溶液として処理液へ添加することができる。
【0057】
処理液中の亜鉛塩の濃度は、各処理槽ごとに異なっていてよいが、処理槽に収容される処理液100質量部に対して例えば1質量部以上10質量部以下であってよく、2質量部以上7質量部以下であることが好ましい。
【0058】
以上の工程を経て、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子を得ることができる。この偏光子は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されている。
【0059】
[製造装置]
本発明に係る製造装置は、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の製造装置であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理液に接触させる処理部および乾燥炉を備え、
前記乾燥炉内の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路に少なくとも1つの拡幅ロールを備える。
処理部は、上述の膨潤処理、染色処理、架橋処理または洗浄処理を行う部であってよい。本発明に係る製造装置を用いて、上述の偏光子を得ることができる。
【0060】
一実施形態に係る製造装置は、膨潤槽、染色槽、架橋槽および洗浄槽の少なくとも1つと乾燥炉とを備える。乾燥炉には複数の拡幅ロールが備えられていてよい。乾燥炉には、フィルムの搬送路の全長の中心より入口側に拡幅ロールが備えられていることが好ましい。
【0061】
[偏光板]
得られた偏光子は、そのまま偏光板作製工程に搬送することができる。偏光板作製工程では、例えば偏光子の片側または両側に熱可塑性樹脂フィルムが貼合される。偏光板の製造方法は、上述の偏光子の製造工程を含むことができる。
【0062】
一実施形態に係る偏光板は、接着剤を介して偏光子の片側または両側に熱可塑性樹脂フィルムを有する積層体である。偏光板は、粘着剤層、光学機能層およびプロテクトフィルムをさらに備えることができる。偏光板は、例えば直線偏光板、円偏光板、楕円偏光板等であってもよい。円偏光板は、直線偏光板および位相差層を備える。
【0063】
偏光板の厚みは、通常5μm以上であり、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。偏光板の厚みは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0064】
[熱可塑性樹脂フィルム]
熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;またはこれらの混合物、共重合物等からなる透光性を有する樹脂フィルムであることができる。熱可塑性樹脂フィルムは、1種または2種以上の熱可塑性樹脂からなる1つの樹脂層からなる単層構造であってもよいし、1種または2種以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を複数積層した多層構造であってもよい。第1熱可塑性樹脂フィルムと第2熱可塑性樹脂フィルムとは、同一または異なった種類の熱可塑性樹脂フィルムであることができる。
【0065】
熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムのいずれか一方または両方は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる透明樹脂フィルムを延伸(一軸延伸または二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0067】
熱可塑性樹脂フィルムの表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。表面処理層は熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されてもよいし、両面に形成されてもよい。表面処理層は、熱可塑性樹脂フィルムにおける偏光子側とは反対側の表面に形成されてもよい。
【0068】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、偏光板の薄型化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る傾向があることから、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0069】
[接着剤]
偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとを貼合するために接着剤を用いることができる。接着剤としては、水系組成物を含む水系接着剤、活性エネルギー線硬化性組成物を含有する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。
【0070】
水系組成物に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系組成物は、密着性や接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤をさらに含有することができる。ウレタン樹脂を含む水系組成物としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物とを含む水系組成物が挙げられる。
【0071】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する組成物である。紫外線硬化型接着剤は、ラジカル重合性の(メタ)アクリル系化合物と光ラジカル重合開始剤の混合物や、カチオン重合性のエポキシ化合物と光カチオン重合開始剤の混合物等であることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物とラジカル重合性の(メタ)アクリル系化合物とを併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することもできる。
【0072】
接着剤層の厚みは、例えば1μm以上25μm以下であってよい。接着剤層の厚みは、好ましくは2μm以上であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。接着剤層の厚みが小さいと耐衝撃性が低下する傾向にあり、接着剤層の厚みが大きいと屈曲反発力が上昇する傾向にある。
【0073】
偏光子と樹脂フィルムとの接着性を向上させるために、偏光子と樹脂フィルムとの貼合に先立ち、偏光子および/または樹脂フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、プライマー塗布処理、ケン化処理等の表面処理を施してもよい。
【0074】
[粘着剤層]
偏光板は、偏光板を構成する各層同士の貼合、または偏光板と透光性部材または画像表示素子との貼合のために、粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。透明性、耐候性、耐熱性等に優れることから、(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型であってもよい。
【0075】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上をモノマーとする重合体または共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0076】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する2価以上の金属イオン;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物;カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物またはポリオール;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0077】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0078】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0079】
粘着剤層は、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤に粘着剤組成物を溶解または分散させて粘着剤液を調製し、これを積層フィルムの対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0080】
粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であってよい。粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm以上であり、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0081】
偏光板は、セパレートフィルムを含み得る。セパレートフィルムは、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができ、好ましくはポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムである。
【0082】
[光学機能層]
光学機能層は、所望の光学機能を付与するための、偏光子以外の他の光学機能性フィルムであってよい。光学機能性フィルムの好適な一例は位相差フィルムである。位相差フィルムとしては、例えばλ/2の位相差を与えるフィルム(λ/2波長板)、λ/4の位相差を与えるフィルム(λ/4波長板)およびポジティブCプレート等が挙げられる。光学機能性フィルムは、配向層および基材を含んでいてよいし、液晶層、配向層および基材をそれぞれ2以上有していてもよい。熱可塑性樹脂フィルムが位相差フィルムを兼ねることもできるが、これらのフィルムとは別途に位相差フィルムを積層することができる。
【0083】
位相差フィルムとしては、透光性を有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムから構成される複屈折性フィルム;ディスコティック液晶またはネマチック液晶が配向固定されたフィルム;基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたもの等が挙げられる。基材フィルムは通常、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、熱可塑性樹脂の一例は、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂である。
【0084】
偏光板に含まれ得る他の光学機能性フィルム(光学部材)の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等である。これらは一般的に、偏光板が液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される場合に設けられる。
【0085】
[プロテクトフィルム]
偏光板は、その表面(典型的には、偏光板の熱可塑性樹脂フィルムの表面)を保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板が貼合された後、プロテクトフィルムが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
【0086】
プロテクトフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成され得る。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0087】
プロテクトフィルムの厚みとしては、特に限定されないが、20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。基材フィルムの厚みが20μm以上であると、偏光板に強度が付与され易くなる傾向にある。
【0088】
偏光板は、画像表示装置の構成要素として用いることができる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。表示装置に組み込む場合は、偏光板は画像表示素子の前面(視認側)に配置されることが好ましい。円偏光板は、画像表示装置中で反射された外光を吸収することができるため、反射防止フィルムとしての機能を付与することができる。
【符号の説明】
【0089】
100 ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、11 ガイドロール、12 拡幅ロール、110 ポリビニルアルコール系樹脂の原反フィルム、111 繰出しロール、113 膨潤槽、115 染色槽、117 架橋槽、119 洗浄槽、123 乾燥炉、127 巻取ロール、130 偏光子。