(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119498
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】不燃性化粧板の製造方法とその不燃性化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 37/24 20060101AFI20230821BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20230821BHJP
B05D 1/12 20060101ALI20230821BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B32B37/24
B32B33/00
B05D1/12
E04B1/94 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022440
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】西部 俊
(72)【発明者】
【氏名】岩竹 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 康志
【テーマコード(参考)】
2E001
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001HA33
2E001HC01
2E001HC07
4D075AC19
4D075BB05Z
4D075CA18
4D075DC03
4D075DC31
4D075EA02
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4F100AR00A
4F100BA03
4F100BA04
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4F100CC00D
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4F100DE03C
4F100DE10C
4F100EH76C
4F100EJ16
4F100EJ17
4F100GB07
4F100HB00C
4F100JJ07A
(57)【要約】
【課題】表面化粧材の不燃性基材への接着剤の使用量を最小限とすると共に不燃性基材の表面に撒かれた表面化粧材の一部を容易に取り除くことができるようにして、使用する表面化粧材の量を安定させ、しかも取り除いた余剰表面化粧材をそのまま再利用することができる不燃性化粧板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】不燃性化粧板1の製造方法は、接着剤を塗布した不燃性基材10に表面化粧材20を散布する工程、接着剤で構成された接着層12と接していない余剰表面化粧材21を取り除いて不燃性基材10の接着層12に付着した表面化粧材22の付着量を規定範囲に調整できるようにする工程で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を塗布した不燃性基材10に表面化粧材20を散布し、
然る後、前記接着剤で構成された接着層12と接していない余剰表面化粧材21を取り除き、
不燃性基材10の接着層12に付着した表面化粧材22の付着量を規定範囲に調整できるようにしたことを特徴とする不燃性化粧板の製造方法。
【請求項2】
被散布表面化粧材20が堆積している不燃性基材10に風Fを吹き付けて、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を風圧Fによって、
又は接着層12と接していない余剰表面化粧材21を吸引Qによって、
又は接着層12から所定の高さHをあけて設置され、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を付着量調整部50にて離脱させることによって、或いは被散布表面化粧材20が堆積している不燃性基材10を裏返し、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を落下させることで取り除くことを特徴としている請求項1に記載の不燃性化粧板の製造方法。
【請求項3】
接着層12に付着している付着表面化粧材22の付着量を規定範囲に調整した後、前記付着表面化粧材22の上から圧着して不燃性基材10の表面に化粧層14を形成することを特徴とする請求項2に記載の不燃性化粧板の製造方法。
【請求項4】
圧着により形成された化粧層14を樹脂コーティングすることを特徴とする請求項3に記載の不燃性化粧板の製造方法。
【請求項5】
表面化粧材20(21・22)は、ストランド状、筒状、又は粒状の材の1又は2以上の組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の不燃性化粧板の製造方法。
【請求項6】
不燃性基材10と、前記不燃性基材10の表面に塗着された接着層12と、前記接着層12に圧着された表面化粧材22にて形成された化粧層14とで構成された不燃性化粧板1において、
前記表面化粧材22は、ストランド状、筒状、又は粒状の付着表面化粧材22の1又は2以上の組み合わせで構成され、且つ該表面化粧材22の付着量は40~80g/m2に調整されていることを特徴とする不燃性化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性基板の表面への表面化粧材の付着量を規定量にすることができる不燃性化粧板の製造方法の改良に関し、更には前記方法で製造した不燃性化粧板に係る。
【背景技術】
【0002】
建築物火災の際の急激な燃焼(例えば、内部空間におけるフラッシュオーバー)を避けるため、建築物を一定の耐火構造とすることが求められている。そのために、内壁材、天井材のような内装材には建築基準法に定める不燃材料が使用される。不燃材料が使用された建材としては、石膏ボードやケイ酸カルシウムボードなどがある。これらの不燃建材を使用した場合、通常、意匠性の点から壁紙が使用される。壁紙の使用は、内装工事に一工程増える事から、不燃材料が使用された建材の表面に化粧層が形成された不燃性化粧板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の不燃性化粧板は、幅及び長さがそれぞれ10mm~40mmで厚さが0.2mm~0.4mmの木材のストランドに接着剤をコーティングし、接着剤でコーティングされた前記ストランドを不燃性基材の上方から撒き、然る後、前記ストランドを熱圧着することにより、不燃性基材の表面に1m2当たり175g~250gのストランドを貼着して化粧ボードを形成した。ストランドの熱圧着による接着層が化粧層になる。この化粧ボードの化粧層では、ストランドの使用量を出来るだけ少なくしたために不燃性基材の表面が部分的にストランドで被覆されることなく露出している。
【0004】
この不燃性化粧板の化粧層は、上記のように木材のストランドで形成されているため可燃性であるが、ごく薄いために火炎によって極めて短時間で焼失する。そのため、基材の有する不燃性が損なわれることなく発揮されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記不燃性化粧板は、表面化粧材であるストランドに接着剤がコーティングされているため、不燃性化粧板全体の有機分量が多くなり、不燃性能の発現に不利となっていた(問題点1)。
また、接着剤がストランドにコーティングされているため、不燃性基材に接着剤付きのストランドを撒くと、不燃性基材に最下層のストランドが接着することは勿論、不燃性基材に接着した最下層のストランドの上に上層のストランドが接着して幾重にも堆積することになる。幾重にも堆積したこの上層のストランドは接着しており、後から取り除くことが困難になる。従って、相互に接着しやすいストランドの散布量を散布時に厳密に管理しなければならず、ストランドの量を安定させることが難しかった(問題点2)。
仮に、散布量が過多であるとして一部のストランドを取り除くことができたとしても、取り除かれたストランドは接着剤により塊となってしまい、この余剰ストランドを再利用することができなかった(問題点3)。
【0007】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、ストランドを含む様々な表面化粧材の不燃性基材への接着剤の量を最小限とすると共に不燃性基材の表面に撒かれた表面化粧材の一部を容易に取り除くことができるようにして、化粧層として使用する表面化粧材の量を安定させ、しかも取り除いた余剰表面化粧材をそのまま再利用することができる不燃性化粧板の製造方法の提供を第1の課題とするものであり、該製造方法により製造される不燃性化粧板の提供を第2の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明にかかる不燃性化粧板1の製造方法は、
接着剤を塗布した不燃性基材10に表面化粧材20を散布し、
然る後、前記接着剤で構成された接着層12と接していない余剰表面化粧材21を取り除き、
不燃性基材10の接着層12に付着した表面化粧材22の付着量を規定範囲に調整できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、請求項1に記載の不燃性化粧板1の製造方法(
図3~
図5)において、
被散布表面化粧材20が堆積している不燃性基材10に風Fを吹き付けて、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を風圧Fによって、
又は、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を吸引Qによって、
又は、接着層12から所定の高さHをあけて設置され、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を付着量調整部50にて離脱させることによって、
又は、被散布表面化粧材20が堆積している不燃性基材10を裏返し、接着層12と接していない余剰表面化粧材21を落下させることによって取り除くことを特徴としている。
【0010】
請求項3は、請求項2に記載の不燃性化粧板1の製造方法において、
接着層12に付着している付着表面化粧材22の付着量を規定範囲に調整した後、前記付着表面化粧材22の上から圧着して不燃性基材10の表面に化粧層14を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項3に記載の不燃性化粧板1の製造方法において、
圧着により形成された化粧層14を樹脂コーティングすることを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項1~4のいずれかに記載の不燃性化粧板1の製造方法において、
表面化粧材20(21・22)は、ストランド状、筒状、又は粒状の材の1又は2以上の組み合わせで構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、上記製造方法で形成された不燃性化粧板1で、
不燃性化粧板1は、
不燃性基材10と、前記不燃性基材10の表面に塗着された接着層12と、前記接着層12に圧着された表面化粧材22にて形成された化粧層14とで構成され、
前記表面化粧材22は、ストランド状、筒状、又は粒状の付着表面化粧材22の1又は2以上の組み合わせで構成され、且つ該表面化粧材22の付着量は40~80g/m2に調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法は以上のような手順で構成されているので、簡単に不燃性基材10への付着表面化粧材22の付着量を規定の量に安定させることができ、しかも取り除いた余剰表面化粧材21には接着剤が塗布されていないので、そのまま再利用することができる。そして、不燃性化粧板1の化粧層14を構成する表面化粧材22の付着量は、40~80g/m2と非常に少量である点、及び被散布表面化粧材20には接着剤が塗布されていない点で不燃性化粧板1の有機分量を必要最低限に抑えることが出来、不燃性化粧板1の不燃性の基準値を満足させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明方法の不燃性化粧材の製造方法の工程図である。
【
図2】
図1の製造方法により製造された不燃性化粧材の模式図である。
【
図3】(a)
図1の製造方法の第1実施形態の一部を示す斜視図、(b)その変形例一部を示す斜視図である。
【
図4】
図1の製造方法の第2実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図1の製造方法の第3実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の不燃性化粧材の実施例(試料1~4)の性能表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述をする。本発明は、接着層12を介して不燃性基材10の表面に規定量の表面化粧材22を積層・圧着した化粧層14を有する不燃性化粧材1に関するものであり、本発明方法は、該不燃性化粧材1を製造する方法である。
【0017】
不燃性基材10は、火山性ガラス質複層板(例えば、火山性ガラス質板の表裏両面に繊維層が積層された基材と、基材の片面に貼着されたアルミニウム複合紙層とを備える積層構造の基板(大建工業株式会社製、商品名ダイライト))、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、繊維強化セメント板、ロックウール板、ガラスウール板などが使用される。不燃性基材の厚みは、例えば、6~9mmのものが使用される。
【0018】
表面化粧材20は、ストランド、筒状の部材、紙片或いは骨材など不燃性基材10の表面に一定量散布することができるものが選ばれる。
ストランドは、木材を薄く削り、これを細長く短く切断した微細化させたもので、例えば、幅及び長さがそれぞれ10mm~40mmで厚さが0.2mm~0.4mmの細長い四角形のものである。ストランドの原料とする木材としては、ヒノキ、スギ、マツ、ヒバ等の針葉樹、ナラ、カンバ、ブナ、ケヤキ等の広葉樹を使用することができる。ストランドは所定の含水率まで乾燥することが好ましい。
【0019】
筒状の部材としては、例えば、和紙パイプなどが挙げられる、和紙パイプはテープ状の和紙を細く巻き締めて直径0.5mm~2mm程度のコヨリ状にした中空抄繊糸を10mm~40mmに切断したものである。
紙片は、和紙を細長く短く切断した微細化させたもので、上記ストランドと同様の外観を呈する。
骨材は、例えば直径0.5mm~2mm程度の細かい砂や珪砂などが使用される。
上記ストランド、和紙パイプ、紙片は不燃化或いは難燃化処理されたものを使用することも可能である。
【0020】
接着層12を構成する接着剤としては、スチレンブタジエンゴム系、MDI、尿素-メラミン共縮合樹脂、酢酸-ビニル樹脂、フェノール樹脂などの有機系接着剤や、無機接着剤などが使用される。これら接着剤中に着色剤を添加しておいてもよい。
基材の片側にはアルミニウム複合紙(アルミニウム箔をチタン紙で挟みこんだ3層の積層紙)が設けられており、当該アルミニウム複合紙に接着剤を塗布することで、基材への浸透を防止し、確実に表面に表面化粧材を保持することが可能となる。
【0021】
次に、不燃性化粧板1の製造方法について説明する。
ステップ1:散布用の表面化粧材20の準備
このステップでは、上記のような所定の寸法に形成されたストランド、和紙パイプ、紙片或いは骨材で構成された散布用の表面化粧材20が用意される。散布用の表面化粧材20は、ストランド、和紙パイプ、紙片或いは骨材の単体でも良いし、この内から選ばれた2以上を混ぜたものでも良い。
【0022】
ステップ2:接着剤塗布
このステップは、不燃性基板10の表面(片面)に接着剤を塗布する工程である。接着剤の塗布量は156g/m2前後である。接着剤はそのままでもよいし、着色剤を添加しておいてもよい。接着剤による着色では、ストランドなどの表面化粧材20と同系の色、又は異なる色を施すこともできる。
【0023】
ステップ3:不燃性基材10への表面化粧材20の散布
このステップでは、接着層12を上にした不燃性基材10が例えば、ベルトコンベア30にて一定速度で送られ、その上に化粧材供給装置40から不燃性基材10の接着層12の表面に向けて表面化粧材20が散布される。散布では、ストランドなどの表面化粧材20を、不燃性基板10の上方から投下することになるが、その際、表面化粧材20が不燃性基材10の接着層12の上に均質に分散されるように、化粧材供給装置40を不燃性基板10と同じ幅で設け、表面化粧材20を少量ずつ撒き散らすように投下する。
【0024】
被散布表面化粧材20は、上記のようにストランド、和紙パイプ、紙片又は骨材単体或いはこれらの混合物が用いられる。
接着層12の表面に積もった被散布表面化粧材20の第1層(最下層)では、その表面化粧材20の一部が接着剤に接触して付着する。第2層目(上層)以上は第1層の上に積もり、第1層の表面化粧材20の上に乗って接着剤には接触しない。
【0025】
ステップ4:余分な表面化粧材の除去
このステップでは、不燃性基材10の表面の表面化粧材20に向かって送風機(図示せず)によって風Fを送り、第2層目以上で接着剤に接触しておらず、付着していない余剰表面化粧材21を不燃性基材10の外に吹き飛ばす。風Fの方向は、不燃性基材10の流れ方向に対して逆方向(図示せず)、或いは
図3(a)のように不燃性基材10の流れ方向に対して横からの直交方向とする。吹き飛ばされた余剰表面化粧材21は回収される。この余剰表面化粧材21には接着剤が付着しておらず再利用可能である。この場合は、送風機が付着量調整部となる。
上記の変形例として、
図3(b)のように余剰表面化粧材21を不燃性基材10から吸引Qしてもよい。図の実施例では、不燃性基材10の上方に設置した、不燃性基材10の幅を覆う吸引ノズル51で吸引する。吸引Qの方向は上方である。この吸引ノズル51が付着量調整部50となる。
【0026】
これにより、不燃性基材10の表面の付着表面化粧材22は接着剤にその一部が接着した必要量の第1層だけが残る。(なお、表面化粧材同士が上下に重なった状態であったとしても、接着層12に付着して離脱していなければ第1層の表面化粧材22とする。)
【0027】
余分な余剰表面化粧材22の除去の別の方法としては、化粧材供給装置40の下流側に設けた付着量調整部50によって一定高さH以上にある余剰表面化粧材21を取り除くようにしてもよい。
付着量調整部50としては、例えば、
図4(a)に示すような、不燃性基材10の流れ方向に対して斜めに配置され、流れに逆らう方向に回転し、回転表面に羽根が設けられている羽根箒や羽根はたきのよう円筒状の器具、或いは、
図4(b)に示すような、不燃性基材10の流れ方向に対して斜めに配置された傾斜板で第2層以上の余剰表面化粧材21を払い落とすようにする。付着量調整部50と不燃性基材10の接着層12との間には上記隙間Hが設けられている。
その他、更に別の方法としては、
図5のように、表面化粧材20が散布されている不燃性基材10を反転させ、付着していない余剰表面化粧材21を落下させることによって除去を行うようにしてもよい。また、風Fと併用してもよい。
【0028】
ステップ5:熱圧着
このステップでは、不燃性基材10の接着層12にその一部が付着しているが、全体的には接着層12に付着していない、浮いた状態の第1層の表面化粧材20の全体を接着層12に圧着させる熱圧プレス工程である。
下段の熱盤(図示せず)の上に不燃性基材10を置き、第1層の表面化粧材20の上から上段の熱盤(図示せず)を押圧する。これにより第1層の表面化粧材20が加熱されつつ押圧され、且つ接着剤が硬化し、不燃性基材10の上面に第1層の表面化粧材22の全体が固着されて一体化する。形成されたこの部分を化粧層14とする。
この段階では不燃性基板10の表面には、ストランドなどの表面化粧材22が重なり合った部分、単層部分、被覆されておらず下地が露出している部分があり、全体として凹凸が大きい意匠となる。
【0029】
ステップ6:樹脂コーティング
このステップでは、製品仕様に合わせて化粧層14の表面をサンディングして平滑化したり、凹凸を残したままとし、サンディングによる平滑面或いは凹凸面にトップコートを行う。また、必要に応じて着色も行われる。
これによって、不燃性化粧板1の化粧層14の表面には不規則なOSB(配向性ストランドボード)調の模様が現れる。
【0030】
このように形成された不燃性化粧材1において、その化粧層14を構成するストランド等の表面化粧材付着量、及び接着剤の量が多過ぎると、ストランドや紙のような可燃性の表面化粧材22や接着剤の有機分の焼失時の発熱量が増え、或いは、焼失するまでの時間が長くなるなど、不燃性が損なわれる。本発明では、検討(詳細は後述)の結果、接着剤の量や、不燃性基板10の表面に形成した化粧層14を構成するストランドその他(だだし、骨材は除く)の量を不燃性基板10の表面に対して40~80g/m2とすれば、不燃性の基準に適合することを見出した。
【0031】
(実施例)
上記の製造方法によってストランド20を不燃性基板10の片面に貼着した不燃化粧材1を本発明の実施例とした。
本発明の実施例に用いた試料として、不燃性基板10の表面1m2当たりのストランド20の質量(含水率1%~2%)が、40g、80gと相違する2種類の試料を用意した。接着剤の質量はいずれも156g/m2とした。そして、上記2種類の試料に樹脂コーティング(塗装)を行わなかったものと、樹脂コーティングを行ったものを製造した。裏面は防湿シート(キラックス)が貼着されている。これらの試料を試料1~4とする。不燃性評価試験は平均値を取るためにそれぞれ2回行われた。
【0032】
不燃性評価試験はISO5660に準拠して行われた。
ISO5660に準拠した発熱性試験では、試験にはコーンカロリーメータを使用し、各試料(10cm×10cm)においてストランド22が貼着された化粧面に輻射電気ヒータで50kW/m
2の輻射熱を照射しつつ点火プラグによる電気スパークを発生させ、電気スパーク発生から化粧層14の着火までの時間(秒)、電気スパーク発生から化粧層14が燃え尽きるまでの時間(秒)、電気スパーク発生から300秒の間の発熱量、次の300~600秒の間の発熱量、最後の600~1200秒の発熱量、最高発熱速度を測定した(
図6)。合計の欄は0~1200秒(20分)間の発熱量の和である。各試料については2回の測定を行い、その平均を算出した。
【0033】
ISO5660の発熱性試験では、以下の数値が求められる。
(1)試験時間(20分)中の総発熱量が、8MJ/m
2以下であること
(2)試験時間内において、最大発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m
2を超えないこと
(3)試験後、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと
発熱性試験の結果から、不燃性化粧板の不燃性能は上記の三つの基準により判定される。試験における測定結果を、不燃性の判定結果とあわせて
図6に示す。なお、本発明では、ISO5660で求められていない「試験開始から着火までの時間」と「化粧層が燃え尽きて化粧層が焼失するまでの時間」も測定した。
【0034】
(発熱性試験結果:
図6)
「着火1(電気スパーク発生から着火までの時間)」は、ストランド量が少ない試料1と試料3とは同程度であるが、ストランド量の多い試料2、4はこれらに比べて着火時間が若干遅くなっている。ストランド量が多い程、単位体積当たりの熱容量が大きくなるためと考えられる。
「着火2(電気スパーク発生から化粧層が燃え尽きて火が消えるまでの時間)」も試料1~4の間では同じ傾向にあり、ストランド量の多い試料2、4はストランド量が少ない試料1、3に比べて「燃え尽きるまでの時間」が長い。
【0035】
「試験時間(20分)中の総発熱量」
試料1~4の(合計欄と平均欄)はいずれも8MJ/m2以下(半分程度)であり、十分な不燃性能を持つ。
【0036】
上記総発熱量は、ストランド、接着剤及び樹脂コーティング(塗装)の有機分が含まれる。そこで、樹脂コーティング(塗装)や接着剤の有機分を勘案して不燃性をクリア可能なストランドの最大散布量を逆算した。
・「樹脂コーティング(塗装)あり(接着剤塗布)」の場合
ストランド散布量を0gとし、樹脂コーティング(塗装)と接着剤の合計の総発熱量を測定した。この総発熱量は1.78MJ/m2であった。
ここから、不燃基準となる8MJ/m2を満たすためのストランド散布量は150g/m2となる。これに対して、
・「樹脂コーティング(塗装)なし(接着剤塗布)」の場合
ストランド散布量を0gとし、接着剤だけの総発熱量を測定した。この総発熱量は0.67MJ/m2であった。
ここから、不燃基準となる8MJを満たすためのストランド散布量は166g/m2となる。
試料1~4のストランド散布量は40g/m2、80g/m2であり、これらは計算値からも十分な不燃性能を備えることが分かった。
【0037】
「最高発熱速度」
試料1~4のいずれも、最大発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えておらず、この試験項目では不燃性能を満足する。ただし、「塗装あり」の場合は、「塗装なし」に比べて「最高発熱速度」が高く、これは樹脂コーティング(塗装)や接着剤の有機分が原因と考えられる。
【0038】
「貫通亀裂及び穴がないこと」
実施例1から4のいずれのストランドも試験時間内に全て焼失したが、下地である不燃性基板には裏面まで貫通する亀裂や穴は生じておらず、条件(3)を満たすものであった。
以上の結果から、実施例1~4は、不燃性の判定基準に適合した。
【符号の説明】
【0039】
1:不燃性化粧板、10:不燃性基材、12:接着層、14:化粧層、20:(被散布)表面化粧材、21:余剰表面化粧材、22:(第1層)付着表面化粧材、30:ベルトコンベア、40:化粧材供給装置、50:付着量調整部、51:吸引ノズル、F:風、Q:吸引