(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011952
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20230118BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
F16F15/04 B
F16F15/04 D
F16F7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019190130
(22)【出願日】2019-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】中里 宏
(72)【発明者】
【氏名】青沼 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 敦士
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048BA05
3J048BC02
3J048BD08
3J048BE12
3J048BG04
3J048CB05
3J048CB23
3J048DA01
3J048EA36
3J066AA24
3J066AA26
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD01
3J066BE01
(57)【要約】
【課題】小型の弾性体を用いて十分な制振性能を発揮できる制振装置を提供する。
【解決手段】制振装置10は、挿通孔を有する台座部と台座部に立設する壁部とを有する固定部20と、挿通孔に挿通され、進退可能に設けられるピストン24と、ピストン24の進退に応じてピストン24に摺動する摺動リング26と、を備える。摺動リング26は、ピストン24および壁部の間に配置される環状部と、環状部から径方向内向きに張り出す弾性片と、を有する。弾性片は、ピストン24に摺動して熱エネルギーを発生させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材および第2部材に介在して前記第1部材に対する前記第2部材の振動を抑制する制振装置であって、
前記第1部材および前記第2部材の一方に固定する固定部であって、挿通孔を有する台座部と、前記台座部に立設する壁部と、を有する固定部と、
前記挿通孔に挿通され、進退可能に設けられるピストンであって、前記第1部材および前記第2部材の他方に当接可能に設けられた当接部を有するピストンと、
前記ピストンの進退に応じて前記壁部または前記ピストンに摺動する摺動リングと、を備え、
前記摺動リングは、
前記ピストンおよび前記壁部の間に配置される環状部と、
前記環状部から径方向外向きまたは径方向内向きに張り出す弾性片と、を有し、
前記弾性片は、前記壁部または前記ピストンに摺動して熱エネルギーを発生させることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記ピストンは、大径部と、前記大径部より小径で前記台座部側に形成された小径部と、を有し、
前記大径部は、前記摺動リングに環囲され、
前記小径部は、前記挿通孔に挿通されることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記弾性片は、前記ピストンの軸方向において互いに逆方向に延出する第1弾性片および第2弾性片を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記弾性片は、周方向に離れて複数設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
前記壁部は、筒状に形成され、その内壁面には前記台座部に向かうにつれて張り出すように形成される傾斜面を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制振装置。
【請求項6】
前記壁部は、前記ピストンを環囲し、内壁面の間隔が一定の平行面を有し、
前記平行面は、前記傾斜面より前記台座部側に位置することを特徴とする請求項5に記載の制振装置。
【請求項7】
前記ピストンの外面または前記壁部の内壁面には、周方向に離れて配置される複数の突出部が形成され、
複数の前記突出部は、前記弾性片と周方向にずれて位置することを特徴とする請求項4に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの進退動作によって運動エネルギーを吸収し、摩擦などで熱エネルギーに変換し、振動を減衰する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハッチバック、ワゴン、バン等の自動車には、後部の荷室を開閉するためのバックドアが備えられている。このバックドアの縁部が荷室開口の周縁部にゴム状のストッパ等を介して当接して、バックドアが荷室開口を閉じている。しかし、走行時やアイドリング中の振動等により、バックドアが車体と共振して不快音が生じる場合がある。この不快音を抑制するため、特許文献1に示す除振部材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、粘弾性体を用いた除振部材が開示されている。この除振部材は、板状の上部支持体および下部支持体と、上部支持体および下部支持体に挟まれたコイルばねと、コイルばねの内側に配置された粘弾性体とを備える。除振部材が荷重を受け、コイルばねが縮むと、上部支持体および下部支持体が粘弾性体の両端に当り、粘弾性体が荷重を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される除振部材は、弾性体が押圧されることで制振するため、制振性能は弾性体の大きさに依存する。小型の弾性体を用いて十分な制振性能を発揮できると好ましい。
【0006】
本発明の目的は、小型の弾性体を用いて十分な制振性能を発揮できる制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、第1部材および第2部材に介在して第1部材に対する第2部材の振動を抑制する制振装置であって、第1部材および第2部材の一方に固定する固定部であって、挿通孔を有する台座部と、台座部に立設する壁部と、を有する固定部と、挿通孔に挿通され進退可能に設けられるピストンであって第1部材および第2部材の他方に当接可能に設けられた当接部を有するピストンと、ピストンの進退に応じて壁部またはピストンに摺動する摺動リングと、を備える。摺動リングは、ピストンおよび壁部の間に配置される環状部と、環状部から径方向外向きまたは径方向内向きに張り出す弾性片と、を有する。弾性片は、壁部またはピストンに摺動して熱エネルギーを発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型の弾性体を用いて十分な制振性能を発揮できる制振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】第2実施例での摺動リングを取り付けた状態のピストンの斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、摺動リングの平面図であり、
図7(b)は、摺動リングの側面図である。
【
図10】第3変形例の摺動リングについて説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、第1実施例の制振装置10の斜視図である。
図1(a)は斜め上方から見た制振装置10であり、
図1(b)は斜め下方から見た制振装置10である。制振装置10は、車両のドアおよびバックドア等の開閉体に固定され、開閉体を閉じた状態で、車体側のパネルに当接する。制振装置10は、開閉体を閉じたときの衝撃を吸収し、開閉体を閉じた状態での開閉体の振動を抑え、開閉体の共振により不快音が発生することを抑える。制振装置10は、損失係数が高いほど有用な制振性能を発揮する。
【0011】
なお、制振装置10は、車体側のパネル等の固定体に固定されて、開閉体に当接する態様であってあってもよい。つまり、制振装置10は、開閉体および固定体の一方に固定され、開閉体および固定体の他方に当接可能である。また、制振装置10は、開閉体に固定される態様に限られず、固定体に設けられてよい。いずれにしても、制振装置10は、第1部材および第2部材に介在して第1部材に対する第2部材の振動を抑制する。
【0012】
制振装置10は、第1部材および第2部材の一方に固定する固定部20と、第1部材および第2部材の他方に当接可能なカバー22とを備える。固定部20は、車両のドアに設けられた取付孔に挿入されて固定される。
【0013】
図2は、制振装置10の分解図である。また、
図3は、制振装置10の断面図である。制振装置10は、固定部20、カバー22、ピストン24、摺動リング26およびコイルばね28を備える。
【0014】
固定部20は、台座部30、壁部32、筒部36、弾性係止部38および挿通孔40を有する。挿通孔40は、固定部20に貫通して形成され、ピストン24を挿通可能にする。台座部30は、板状に形成され、中央に挿通孔40を有する。台座部30の挿通孔40の孔縁には環状突部66が形成され、ピストン24の進退をガイドする。壁部32は、台座部30から立設し、筒状に形成される。
【0015】
筒部36は、台座部30から垂下し、一対の弾性係止部38は、筒部36の側面に形成され、台座部30に向かって延出する。筒部36は、ドアに形成された取付孔に挿入され、弾性係止部38は、その取付孔の縁に係止することで、固定部20がドアに固定される。なお、ドアへの固定方法は、筒部36および弾性係止部38の形状に限られず、パネルに固定できれば他の形状であってよい。例えば、台座部30の下面をパネルに接着や溶着してもよい。
【0016】
ピストン24は、固定部20の挿通孔40に挿通される。ピストン24は、フランジ部46、軸部48、抜け止め部50、縮径部52、凹部54および制限部64を有する。フランジ部46は、ピストン24の一端に位置し、径方向外向きに張り出すよう円盤状に形成される。凹部54は、ピストン24の一端面の中央に凹んで形成される。
【0017】
軸部48は、フランジ部46に連結し、円柱状に形成される。軸部48は、フランジ部46側に位置する大径部48aと、台座部30側に位置する小径部48bと、大径部48aに形成された制限部64と、大径部48aおよび小径部48bの境界に位置する縮径部52とを有する。大径部48aは、摺動リング26に環囲され、一対の制限部64は、摺動リング26の軸方向の移動を制限する。一対の制限部64は、大径部48aに形成された環状の溝に形成される。小径部48bは、大径部48aより小径に形成され、台座部30の挿通孔40に挿通される。これにより、小径部48bを挿通する固定部20を小型化できる。また、摺動リング26が小径部48bに配置される場合より大径にでき、安定して壁部32に接触させることができる。
【0018】
抜け止め部50は、ピストン24の他端側に位置し、軸部48の外周面に突出するように形成される。抜け止め部50は、台座部30の挿通孔40の縁に引っ掛かることで、ピストン24が固定部20から外れないようにする。抜け止め部50は径方向外向きに撓み可能な弾性爪であり、軸部48の取り付けを容易にする。
【0019】
摺動リング26は、環状部42と、第1弾性片44aおよび第2弾性片44b(これらを区別しない場合、「弾性片44」という)とを有する。摺動リング26は、粘弾性材料により形成され、例えば、エチレンプロピレンジエンゴムと4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体で形成されることが好ましい。もちろん、摺動リング26は、別の粘弾性材料で形成されてもよい。
【0020】
環状部42は、円筒状に形成され、
図3に示すようにピストン24の大径部48aに環囲する。第1弾性片44aおよび第2弾性片44bは、環状部42の外周面の中央位置から径方向外向きに張り出し、円環状に形成され、ピストン24の軸方向に別れるように形成され、先端に向かって離れるように形成される。一対の弾性片44は、ピストン24の軸方向において互いに逆方向に延出し、壁部32の内周面に弾性的に接触する。
【0021】
コイルばね28は、一端がフランジ部46に当接し、他端が台座部30に当接し、軸部48および壁部32を環囲する。コイルばね28は、ピストン24を固定部20の台座部30から離れる方向に付勢し、ピストン24が押し込まれたときに反力を発生する。
【0022】
カバー22は、ゴム材料でカップ状に形成され、ピストン24、摺動リング26およびコイルばね28を覆う。カバー22は、当接部56、傘状部58、嵌合部60および凸部62を有する。
【0023】
当接部56は、カバー22の端面に位置し、車体側のパネルに当接可能である。傘状部58は、固定状態でドアの表面に弾接し、制振装置10のガタつきを抑える。嵌合部60は、溝状に形成され、台座部30の外周縁に嵌合する。凸部62は、当接部56の裏面の中央位置に突起状に形成され、ピストン24の凹部54に係合する。
【0024】
図3に示す制振装置10が外力を受けてない状態では、コイルばね28の付勢によって、ピストン24の抜け止め部50が台座部30に引っ掛かった初期状態をとる。抜け止め部50が台座部30に引っ掛かると、ピストン24の進行が規制され、フランジ部46が壁部32に当接すると、ピストン24の退行が規制される。初期状態では、フランジ部46は、壁部32の先端と軸方向に離れており、その離れた距離分をピストン24が軸方向に進退できる。
【0025】
制振装置10の動作について説明する。固定部20がドアに固定され、ドアを閉じた状態では、カバー22の当接部56が車体側のパネルに当接した状態をとる。ここで、車両の振動によってドアが振動すると、ドアおよび車体側パネルの間隔が変化し、その相対変位に応じてピストン24が進退する。摺動リング26はピストン24により軸方向の移動が制限されており、ピストン24が進退すると摺動リング26と壁部32に相対変位が生じ、摺動リング26が壁部32に摺動する。つまり、摺動リング26は、ピストン24の進退に応じて壁部32に摺動する。弾性片44が壁部32に摺動することで摩擦熱が発生し、ピストン24の振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、制振することができる。
【0026】
弾性片44が径方向外向きに張り出しているため、壁部32に弾接した状態を維持でき、ピストン24の進退時に安定して摩擦を発生させることができる。また、弾性片44が軸方向に別れて一対形成されているため、2箇所で摩擦を発生させることができ、ピストン24が傾いてもいずれか一方の弾性片44の接触を維持することができる。また、一対の弾性片44が軸方向に別れているため、ピストン24の進行時および退行時のいずれにも壁部32への接触を安定させて維持することができる。
【0027】
図4は、第2実施例の制振装置100の分解図である。
図5は、第2実施例の制振装置100の断面図である。制振装置100は、固定部20、カバー22、ピストン24、摺動リング126およびコイルばね28を備える。第2実施例の制振装置100は、
図2に示す制振装置10と比べて、部品の構成は同様であるが、摺動リング126の形状が異なる。
【0028】
ピストン24および摺動リング126について新たな図面を参照しつつ説明する。
図6は、摺動リング126を取り付けた状態のピストン24の斜視図である。
図7(a)は、摺動リング126の平面図であり、
図7(b)は、摺動リング126の側面図である。
【0029】
摺動リング126は、環状部142、第1弾性片144aおよび第2弾性片144bを有する。摺動リング126は、粘弾性材料で円筒状に形成され、撓み可能である。第1弾性片144aおよび第2弾性片144b(これらを区別しない場合、「弾性片144」という)は、環状部142から径方向外向きに張り出し、ピストン124の軸方向において互いに逆方向に延出する。
【0030】
また、
図7(a)に示すように、弾性片144は周方向に離間して複数設けられる。これにより、弾性片144が撓みやすくなり、ピストン124が傾斜した場合にも、いずれかの弾性片144が壁部132に接触した状態を維持できる。また、壁部132を角筒状に形成しても、壁部132の各面に弾接させる弾性片144を容易に形成できる。第1弾性片144aおよび第2弾性片144bは周方向に交互に配置され、それぞれ複数形成される。
【0031】
摺動リング126の弾性片144は、ピストン24の進退に応じて壁部32に摺動し、この摺動により熱エネルギーを発生させ、制振させることができる。第1弾性片144aおよび第2弾性片144bは、軸方向において互いに逆方向に延出することで、ピストン124の進行時および退行時に安定して接触状態を維持できる。
【0032】
図8は、第1変形例の制振装置200の断面図である。変形例の制振装置200は、
図5に示す制振装置100と比べて、固定部220の壁部232の形状が異なる。壁部232は、台座部130から立設し、円筒状に形成される。
【0033】
壁部232は、ピストン124を環囲し、壁部232の内壁面はピストン124の外周面に対向する。壁部232の内壁面は、先端側から順に第1平行面232a、傾斜面232b、第2平行面232cを有する。第1平行面232aおよび第2平行面232cは、軸方向に平行に形成され、内壁面の間隔、すなわち内径が一定になるように形成される。傾斜面232bは、軸方向に傾斜して形成され、台座部130に向かって内壁面の間隔が小さくなるように形成される。
【0034】
図8に示す初期状態において、摺動リング126の弾性片144は、第1平行面232aに接触している。ピストン124が退行すると、弾性片144は、第1平行面232aを摺動した後、傾斜面232bに接触し、傾斜面232bを摺動する。ピストン124の退行時に傾斜面232bの間隔が狭くなるため、弾性片144と傾斜面232bの摩擦力が高くするなるように設定できる。また、摺動リング126にひずみが生じても傾斜面232bを摺動する際にひずみがピストン124の進退に影響することを抑えることができる。
【0035】
第2平行面232cは、傾斜面232bより台座部130側に位置し、ピストン124の進退をガイドし、ピストン124の傾斜を抑えることができる。
【0036】
図9は、第2変形例の制振装置300の断面図である。
図9に示す制振装置300の断面は、
図8に示す制振装置200の線分A-Aの位置である。第2変形例の制振装置300は、
図5に示す制振装置100と比べて、固定部320の壁部332の形状が異なる。
【0037】
壁部332の内周面には、周方向に離れて配置される複数の突出部70が形成される。突出部70は、軸方向に沿って延在するようにリブ状に形成される。複数の突出部70は、複数の弾性片144と周方向にずれて位置する。つまり、複数の突出部70は、複数の弾性片144の隙間に位置する。突出部70は、ピストン124が傾斜した場合に当接可能に設けられ、ピストン124の進退を安定させ、弾性片144の弾接を安定させることができる。
【0038】
なお、摺動リング126が壁部332側に保持される場合には、複数の突出部70はピストン124の外周面にリブ状に形成されてよい。
【0039】
図10は、第3変形例の摺動リング426について説明するための断面図である。摺動リング426は、ピストン124の制限部64に保持されている。摺動リング426は、環状部442と、複数の弾性片444とを有する。環状部442は円筒状に形成される。
【0040】
摺動リング426は、軸方向に貫通した空隙72を有し、この空隙72により弾性片444が径方向外向きに張り出すように両持ち片に形成される。弾性片444は、壁部132の内壁面に弾接し、ピストン124の進退に応じて壁部132に摺動し、摩擦エネルギーを発生させる。
【0041】
図11は、第3実施例の制振装置500の分解図である。また、
図12は、第3実施例の制振装置500の断面図である。第3実施例の制振装置500は、
図3に示す制振装置10と比べて、摺動リング526の形状および配置が主に異なり、摺動リング526がピストン524ではなく、固定部520に保持される点が異なる。
【0042】
固定部520は、台座部30、壁部32、突部34、段差部35、筒部36および弾性係止部38を有する。
図11に示すように、突部34は、壁部32の内周面から径方向内向きに突出し、周方向に離間して複数形成される。突部34は、ピストン24の傾きを抑え、ピストン24の軸方向の進退をガイドする。
図12に示すように、段差部35は、壁部32の内周面から径方向内向きに張り出し、突部34と軸方向に離間する。突部34および段差部35は、摺動リング26の軸方向の移動を制限する制限部として機能する。
【0043】
摺動リング526は、環状部542と、第1弾性片544aおよび第2弾性片544b(これらを区別しない場合、「弾性片544」という)とを有する。環状部542は、円筒状に形成され、
図12に示すようにピストン524の大径部を環囲する。第1弾性片544aおよび第2弾性片544bは、環状部542の内周面の中央位置から径方向内向きに張り出し、円環状に形成され、ピストン524の軸方向に別れるように形成され、先端に向かって離れるように形成される。一対の弾性片544は、ピストン524の軸方向において互いに逆方向に延出し、ピストン524の外周面に弾性的に接触する。
【0044】
このように、摺動リング526は、固定部520により軸方向の移動が制限されており、ピストン524の進退に応じてピストン524に摺動する。弾性片544がピストン524に摺動することで摩擦熱が発生し、ピストン524の振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、制振することができる。
【0045】
なお、摺動リング526の弾性片544は、
図7(b)に示すように弾性片544は周方向に離間して複数設けられてもよい。また、弾性片544は、環状部542から径方向内向きに張り出し、ピストン524の軸方向において互いに逆方向に延出してもよい。
【0046】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0047】
10 制振装置、 20 固定部、 22 カバー、 24 ピストン、 26 摺動リング、 28 コイルばね、 30 台座部、 32 壁部、 34 突部、 35 段差部、 36 筒部、 38 弾性係止部、 40 挿通孔、 42 環状部、 44a 第1弾性片、 44b 第2弾性片、 46 フランジ部、 48 軸部、 50 抜け止め部、 52 縮径部、 54 凹部、 56 当接部、 58 傘状部、 60 嵌合部、 62 凸部、 64 制限部、 66 環状突部、 70 突出部。