(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119896
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】複合船舶システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/00 20180101AFI20230822BHJP
【FI】
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023016
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】523067757
【氏名又は名称】株式会社ロジスティクスナイト・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】早田 雅彦
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】病院船の医療サービス機能を充実させるとともに、当該医療サービス機能における薬剤処方機能が麻痺しないように有事に備えて適正な量と質の薬剤を備蓄できる薬剤倉庫船機能を備えた複合船舶システムを提供すること。
【解決手段】所定の通信媒体を介して、医療船機能と倉庫船機能とを兼ね備える複合船舶の航行を制御する船舶制御システム202と、複合船舶内で所定の医療サービスを提供する機器を備える病院船システム206と、複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を制御する倉庫管理システム201と、複合船舶の操船指示を行う緊急情報システムとが通信して医療船機能と倉庫船機能とを相補的に機能させることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信媒体を介して、医療船機能と倉庫船機能とを兼ね備える複合船舶の航行を制御する船舶制御システムと、前記複合船舶内で所定の医療サービスを提供する機器を備える病院船システムと、前記複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を制御する倉庫管理システムと、前記複合船舶の操船指示を行う緊急情報システムとが通信して、医療船機能と倉庫船機能とを相補的に機能させることを特徴とする複合船舶システム。
【請求項2】
前記病院船システムにおいて、
前記医療サービスを提供する機器は、診療種別に適応した医療機器と、医療診断装置、診療ベッドを備え、
前記倉庫管理システムは、
前記診療種別に基づいて処方される常備薬剤と、災害支援に処方すべき非常用薬剤との入庫状態または出庫状態を記憶する入出庫状態記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された常備薬剤の在庫量と、非常用薬剤の在庫量とを前記保管場所に紐づけて集計する集計手段と、
前記集計手段が集計した薬剤情報を前記緊急情報システムに通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に複合船舶システム。
【請求項3】
入庫される薬剤を収容するメディスンカートと、
前記メディスンカートを船内にレイアウトされた保管ボックスへの自動搬入、または前記保管ボックスから船外への自動搬出を制御する搬送制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合船舶システム。
【請求項4】
前記メディスンカートは、受信する搬送経路情報に従い前記保管ボックスにレイアウトされる搬送ルート上を自走し、かつ、指定位置で停止する走行制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の複合船舶システム。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記搬送制御手段から受信する保管先情報に従い、各層の船内に設ける識別情報を読み取とりながら前記メディスンカートの搬送方向を決定することを特徴とする請求項4に記載の複合船舶システム。
【請求項6】
前記搬送制御手段は、前記メディスンカートを船内に搬入する際、前記複合船舶の最上位甲板から前記メディスンカートを船底方向へエレベータを介して搬入するように制御することを特徴とする請求項4に記載の複合船舶システム。
【請求項7】
前記搬送制御手段は、前記メディスンカートを船内に搬入する際、医療船舶の後部開閉扉を開口して、岸壁側から前記メディスンカートを船底方向へ搬入するように制御することを特徴とする請求項4に記載の複合船舶システム。
【請求項8】
前記病院船システムは、他の複合船舶と相互に通信して取得する最新の医薬装備情報を共有する共有手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合船舶システム。
【請求項9】
前記複合船内は、複数の階層から構成され、いずれかの階層に前記メディスンカートを縦方向または横方向に移動する平面搬送路と、甲板から上下方向に前記メディスンカートを移動させる立面搬送路とからなる搬送網を備えることを特徴とする請求項1または3に記載の複合船舶システム。
【請求項10】
前記メディスンカートは、収容された薬剤情報を書き換え可能に記憶する記憶チップを備え、
前記記憶チップに記憶された薬剤情報を前記倉庫管理システムに送信する送信手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の複合船舶システム。
【請求項11】
前記病院船システムは、有事の種別に基づいて特定される非常時薬剤情報を記憶する非常時薬剤記憶部を備え、前記船舶制御システムが受信する災害情報から災害種別を特定し、該特定される緊急性の高い薬剤を出庫することが可能かどうかを判断する判断手段を設け、
前記判断手段により緊急性の高い薬剤を出庫可能であると判断した場合、前記搬送制御手段は、前記複合船舶が接岸する港に係留後、直ちに搬出できるように出庫すべきメディスンカートを航行中に出庫口へ発送させることを特徴とする請求項1に記載の複合船舶システム。
【請求項12】
前記倉庫管理システムは、前記送信部が送信した薬剤情報を受信し、前記複合船舶内に搬入されたメディスンカートの収容マップを作成する作成手段と、
前記作成手段が作成した前記収容マップを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合船舶システム。
【請求項13】
前記倉庫管理システムは、複数のメディスンカートと通信して現在位置を認識して、各メディスンカートの配置替えを指示する第1の指示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合船舶システム。
【請求項14】
いずれかのメディスンカートから所定の医薬をロット単位で集薬する集薬ロボットを備え、
前記倉庫管理システムは、前記集薬ロボットに対して、該取り出したロット単位の薬剤を各医療ワークスペースの受け取り口に通じる補充口まで搬送するように指示する第2の指示手段を備えることを特徴とする請求項13に記載の複合船舶システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有事に際し、医療従事者が乗船して、災害地域に赴き救護者に医療を提供する診療機能と、当該診療機能に伴い処方される処方薬を備蓄する薬剤倉庫船機能とを装備する複合船舶システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の世界的気候変動に伴う災害を未然に防ぐため、二酸化炭素の排出の制限について世界的な議論が国連等でさかんに協議されている。
【0003】
例えば、我が国内閣府では、大規模な自然災害、地震、洪水、土石流、火山噴火に伴う火砕流等に被災した人たちを、迅速に医療を提供すべく病院船構想が議論されている。
【0004】
阪神淡路大震災を一例に上げると、未明に発生した巨大地震により、ビルが倒壊し、火災が同時多発的に発生し何千人という尊い命が犠牲となったことは記憶に新しいところである。
現地では、各所で陸路の交通が遮断され消火活動や人命救出活動が麻痺したことも犠牲者の数を増加させた要因であると結論づけられている。
【0005】
このため、内閣府では、陸路は排し、海路を利用して数隻の病院船を新造し、かつ、5Gの通信網を利用して迅速な救援、救護活動を支援すべきであるとの議論がなされている。
なお、米国においては、アメリカ海軍が運用する排水量9.800トンの病院船マーシー(AH-8)が活躍していたことがフリー百科事典に掲載されている。
【0006】
また、下記特許文献1には、沿岸被災地などへ派遣される救援船(例えば、病院船)であって、被災地などの通信状況を改善しうる救援船を提供するため、救援船が、船体と、船体に搭載され、船体及び/又はその周囲に第1無線通信エリアを形成する船上中継局と、船体に配備され船体から離れた任意の場所へ移動可能な少なくとも1つの移動体と、移動体に搭載された可動中継局とを備え、船上中継局は、地上基地局から送信された電波を受信して第1無線通信エリア内の無線端末機器へ送信し、第1無線通信エリア内の無線端末機器から送信された電波を地上基地局へ送信するように構成し、可動中継局は、船上中継局と地上基地局との間で送受信される電波を中継する構成としたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、医師が常駐しない「無医島」の多い瀬戸内海において、巡回診療船として「済生丸」という病院船が運航されている。
【0009】
ここで、済生丸の検診対象は、総合病院並みに、胸部疾患、消化器疾患、循環器疾患、婦人科疾患、外科系疾患があり、特定診療科として、眼科、耳鼻咽喉科、成型外科、皮膚科の診療を行うとともに、一般検診として小児科も併設されている。
済生丸による診療巡回サービスは、いわばお舟の総合病院として機能し、瀬戸内海の離島民に重要な医療サービスを提供している。
一方、有事の災害では、済生丸の医療従事者の規模では、救護すべき人の数が数千単位に発生するため迅速に対応できない。
【0010】
このような有事の際に、数百人企規模の診療に必要な薬剤を装備するだけでは、数千人規模の災害時には到底薬剤が救護者に処方できる環境は整備されていない。
【0011】
内閣府における病院船議論では、医療従者と医療機器の充実を図る構想が進んでいるが、大量の被災者に対して十分な医薬品を提供するため、病院船に薬剤倉庫船機能を常設させようとすることについて十分な議論がなされていない。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、病院船の医療サービス機能を充実させるとともに、当該医療サービス機能における薬剤処方機能が麻痺しないように有事に備えて適正な量と質の薬剤を備蓄できる薬剤倉庫船機能を備えた複合船舶システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の複合船舶システムは以下に示す構成を備える。
【0014】
本発明に係る複合船舶システムは、所定の通信媒体を介して、医療船機能と倉庫船機能とを兼ね備える複合船舶の航行を制御する船舶制御システムと、前記複合船舶内で所定の医療サービスを提供する機器を備える病院船システムと、前記複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を制御する倉庫管理システムと、前記複合船舶の操船指示を行う緊急情報システムとが通信して、医療船機能と倉庫船機能とを相補的に機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、病院船としての機能を充実させるとともに、現地で救護医療を行う医療従事者に必要な医薬を迅速に届けて、被災者に適切な医療サービスを展開し、かつ、災害時に病院船が寄港する災害地域において、医療従事者が患者に処方できる十分な量の医薬品を複合船舶内にストックできる複合船舶システムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】(a)は複合船舶システムの構成ブロック図、(b)は複合船舶の係留ポイント配置例を示す図。
【
図3】本実施形態を示す複合船舶システムの構成を説明するブロック図。
【
図4】
図3に示したメディスンカートの構造を説明する斜視図。
【
図5】
図4に示したメディスンカートの制御システムを説明するブロック図。
【
図6】
図2に示した第1医薬倉庫、第2医薬倉庫、第3医薬倉庫の構造を説明する斜視図。
【
図7】
図6に示した集薬ロボットの一例を示す斜視図。
【
図8】本実施形態を示す複合船舶システムにおいて連系する複合船舶を管理するテーブルを説明する図。
【
図9】
図1に示した緊急情報システムが管理する薬剤管理テーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【0018】
<システム構成の説明>
〔第1実施形態〕
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態を示す複合船舶システムの構成を説明するブロック図である。本システムは、医療船機能と倉庫船機能とを兼ね備える複合船舶において、複合船舶の航行を制御する船舶制御システム202が所定の通信媒体を介して医療サービスを提供する病院船システム206と、複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を制御する倉庫管理システム201と通信しながら医療船機能と倉庫船機能とを相補的に機能させる複合船舶システムを特徴としている。
【0019】
なお、複合船舶の排水量は、医療船としての機能と、薬剤倉庫としての機能の規模により、大型船舶、中型船舶として造船され、かつ、医療ベッド数は、医療従事者の診療従事者の常駐数や、医療機器の高度医療の可能性によって変動する。
【0020】
また、本複合船舶は、船内に確保される複数の動線に従い確保される複数の医療ワークスペースを複数の層構造で構築し、各医療ワークスペースに対して診療種別に適応した医療機器と、医療診断装置、診療ベッドとを配置して救護者に医療サービスを提供する医療船機能と、複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を行う倉庫船機能とを並存させて、通常時は、複合船舶を医療船として運行させ、非常災害時は、医薬品を搬送する倉庫船として運行させ、災害が発生して災害地に近い寄港して診療業務と医薬品処方業務を支援する。
なお、上記非常用医薬品備蓄在庫保管機能(非常災害には医薬品を搬送する倉庫船)機能に加えて、階層的にレイアウトした倉庫機能のうち、いずれかの層に平時の医薬品倉庫としても機能を並存させる構成としてもよい。その際、倉庫に保管すべき薬剤、薬品は、外科、内科、整形外科、心臓外科、脳外科、小児科、産婦人科、皮膚科、救急救命科に特有のラインナップとなるが、その品揃いは、各科の専門の医療従事者が協議して決定すべき事項である。
【0021】
このため、本実施形態に示す複合船舶システムにおいては、医薬品を搬送する倉庫船機能として、備蓄薬剤が収容された搬送ユニット(後述するメディスンカート)を用いた医薬品の入庫(搬入)、出庫(搬出)とを自動化するために、船内に自動搬送経路網と、搬送用の専用エレベータを装備している。
さらに、搬送ユニットは、カメラと障害物センサを備えて自動搬送機能を自動搬送経路網上に対して縦方向または横方向への移動を可能としている。
【0022】
また、本機能を備える複合船舶システムは、同時に複数の拠点港に係留することができるが、官邸司令部からの決定により、各複合船舶の寄港先は複合船舶の規模により候補が絞り込まれる。
【0023】
さらに、有事の際は、救護者を搬送する陸地の病院候補先に基づいて係留港を出港し、被災地に最も引接する港へ移動することで、迅速な医療支援活動および陸路搬送が困難となっている被災拠点の指定された総合病院等に対して医薬品を優先搬送することが可能となる。
【0024】
また、災害発生時に、1隻の複合船舶では、十分な医薬品を提供できないと想定される場合には、複数の複合船舶団により、陸路で集薬された医薬品を港近郊倉庫に備蓄し、寄港する複合船舶を利用して災害地域に近接する港にピストン輸送することも可能である。
【0025】
図1は、本実施形態を示す複合船舶システムの構成および複合船舶の配置例を説明する図である。(a)は複合船舶システムの構成ブロック図、(b)は複合船舶の係留ポイント配置例を示す図である。
【0026】
図1の(a)において、1は複合船舶群(船団)を示し、複合船舶1-1~1-Nから構成される例を示す。なお、複合船舶1-1~1-N(本実施形態では、N=7)の数は、7台に限定されるものではなく、複合船舶の規模によっては、その数が増減する。
【0027】
具体的には、
図1の(b)に示すように、複合船舶1-1は九州地区PAを担当するため、長崎、佐賀の指定係留港に係留し、複合船舶1-1としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0028】
複合船舶1-2は山陰湾岸地区PFを担当するため、山口県宇部の指定係留港に係留し、複合船舶1-2としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
なお、緊急情報システム2は、緊急情報システム通信部21と、会議室端末22-1~22-Nとから構成されている。
【0029】
複合船舶1-3は日本海湾岸地区PEを担当するため、福井県敦賀の指定係留港に係留し、複合船舶1-3としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0030】
複合船舶1-4は北海道湾岸地区PGを担当するため、北海道苫小牧の指定係留港に係留し、複合船舶1-4としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0031】
複合船舶1-5は東北湾岸地区PDを担当するため、宮城県仙台の指定係留港に係留し、複合船舶1-5としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0032】
複合船舶1-6は関東湾岸地区PCを担当するため、東京都竹橋の指定係留港に係留し、複合船舶1-6としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0033】
複合船舶1-7は東海湾岸地区PBを担当するため、愛知県名古屋市の指定係留港に係留し、複合船舶1-7としては、
図1の(a)に示す内閣府が管理する緊急情報システム2に参加する分科会等により選抜される。
【0034】
緊急情報システム2は、官邸内部に構築され、緊急情報システム通信部21が各会議室端末22-1~22-Nにより、災害救助指令を受信して、総務省管轄の行政通信部3が日本の指定港に係留または停泊している複合船舶1-1~1-7に対して災害救助に関する法律の下で救援活動と、薬品搬送活動を発令する。なお、行政通信部3は、国交省並びに厚生労働省に管轄され、有事の緊急事態に対する情報網における通信状態を一元管理している。
【0035】
図2は、
図1に示した複合船舶1-1~1-7の構成を説明する図である。本例、国旗55に示すように、船籍は日本である。以下の説明では複合船舶1-1を例とする。
【0036】
図2において、51は複合船舶で、例えば総トン数が10000t以上で構成され、医療従事者、患者を含めて約600名~1000名規模を備えることが望ましい。
【0037】
52は燃料室で、機械室53に配置されるエンジン部にC重油を供給して、複合船舶1-1が広範囲に連続航行可能にしている。54はプロペラで、機械室53から供給される回転力を伝達することで所定速度、例えば22.7ノットで推進することができるように構成されている。
【0038】
56はクレーンで、寄港地の桟橋に陸送された医薬品を収容する複数台のメディスンカードを陸側から吊り上げて、第2エレベータ72の荷受け階(荷受け甲板)のゲート前まで移動させ、甲板員によって第2エレベータ72に積み入れられて指定倉庫階に搬送される。
【0039】
第2エレベータ(EL)72は、薬剤倉庫として確保される各階には第1医薬倉庫85~第3医薬倉庫83に設ける後述する各ゲートS1~S4に対応するように、例えば4機のエレベータ群から構成されている。
なお、甲板に近い層には、常備品を納める薬品庫81と、医療従事者等が食事をとるための食堂82が配置されている。
【0040】
71は第1エレベータで、病院船として機能させる診断・検査室64、第3病室63、第2病室62,第1病室61へ医療従事者を各階移動させる、例えば4機のエレベータ群から構成されている。
【0041】
診断・検査室64は、第3病室63、第2病室62,第1病室61で診察される患者のX線写真を撮像する医療機器と、検査機器が装備される検査室が確保されている。
【0042】
また、第3病室63、第2病室62,第1病室61は、図示するように階毎に手術室と、一時的に患者をケアするための看護ベッドが、例えば50床確保できるように構成されている。
【0043】
57はブリッジで、船長および複数名の航海士が勤務し、図示しないGPS航行システムや各種の通信機器(官邸とのホットラインを含む)が配置されている。58はブレードアンテナで、例えば5Gで近隣の医療従事者、医薬品搬送者と相互に通信可能に構成されている。59は航海レーダーで、海図上における現在位置を特定するための航法通信を行う。
【0044】
60はヘリポートで、医薬品を輸送する輸送ヘリ65と、救護者を搬送するドクターヘリ(図示しない)とが自在に離発着可能に構成されている。
なお、2隻の複合船舶が瀬取状態で患者を移動させる手段として、他の船舶からの患者さんのload/unloadができるような特殊リフター機能を備えてもよい。
【0045】
図3は、本実施形態を示す複合船舶システムの構成を説明するブロック図である。なお、
図2と同一のものには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図3において、200は複合船舶システムで、医療サービスを提供する病院船システム206と、複合船舶の航行ならびにクレーン56等を制御する船舶制御システム202と、倉庫に備蓄する薬品類の情報を記憶する入出庫状態記憶部210を備える倉庫管理システム201とから構成される場合を示すが、複合船舶システムの構成として、さらに病院船システム206の機能を拡張できるように構成してもよい。
【0047】
ここで、病院船システム206は、
図2に示した診断・検査室64、第3病室63、第2病室62,第1病室61における電力、通信、電子カルテ等を総括的に管理するためコントローラC1を備えている。コントローラC1は、電源部203から供給される電力により駆動され、手術室において、各種のオペに使用する医療機器への電力供給を制御するとともに、電子カルテを管理する記憶部への電子カルテの登録および記憶部に記憶した電子カルテを読み出す制御を行う。
【0048】
204はエレベータ制御部で、電源部203から電力供給を受けて
図2に示した第1エレベータ(EL)1,第2エレベータ(EL)2の搬送籠の上下搬送移動を制御する。
【0049】
入出庫状態記憶部210は、後述する医薬品を収容するメディスンカート101-1~101-Nに保管される医薬品の入出庫情報を記憶している。コントローラC2は、入出庫状態記憶部210に記憶されたメディスンカート101-1~101-Nが備えるメモリチップに書き込まれた医薬品の情報、種別、数量、保存期間、保管場所情報(倉庫内の何処に保管されているかどうかを示す識別コード)等を読み取ることができる。
【0050】
211は集計手段で、官邸からの指示を受けて、定期的、あるいは激甚災害発生時に、複合船舶の倉庫に保管されている医薬品の数量を医薬品別に集計して、通信部251より緊急情報システム通信部21を介して災害地域に出帆可能な複合船舶を特定する際の指針を緊急情報システム2(官邸側)に通知することができる。
なお、病院船システム206のコントローラC1は、他の複合船舶と相互に通信して取得する最新の医薬装備情報を共有することが可能に構成されている。
【0051】
搬送制御手段212は、メディスンカート101-1~101-Nの現在位置を取得して、自走するメディスンカート101-1~101-Nの搬送状態を制御して、入庫されるメディスンカートと、出庫されるメディスンカートとの搬送状態を総括的に制御する。
【0052】
コントローラC2は、第1通信部213を制御して、無線LANを介して倉庫内を移動するメディスンカート101-1~101-Nの通信部と通信して、メディスンカート101-1~101-Nそれぞれを識別することができる。
【0053】
また、コントローラC2は、メディスンカート101-1~101-Nの通信部と通信して、メディスンカート101-1~101-Nが備えるメモリチップの情報を読み取り、現在保管している医薬品の種別、数量を読み出すことができる。
【0054】
コントローラC2は、第2通信部214を介して、倉庫内を所定経路に従い移動する集薬ロボット300の移動を制御して、メディスンカート101-1~101-Nに保管された医薬品を小ロット単位で持ち出して、図示しない薬品エレベータボックスへ指定した医薬品を搬送させることができる。
【0055】
また、コントローラC2は、第2通信部214を介して、倉庫内を所定経路に従い移動する集薬ロボット300の移動を制御して、
図2に示した倉庫内の薬品庫81に保管される常備薬を取り出した後、いずれかのエレベータを使用して指定された医薬品を搬送させることができる。
【0056】
船舶制御システム202は、通信部251、ブリッジコントローラ252、クレーン制御部253、機関部254、発電部255を備え、複合船舶の操船、電力、動力機器を総括的に制御する。
【0057】
通信部251は、ブレードアンテナ58を介して外部、例えば行政通信部3と無線通信する。ブリッジコントローラ252は、複合船舶に装備されるクレーン56や、機関部254、発電部255を制御して、機械室53に装備されるエンジンの駆動を制御したり、電源部203に適正な電力を供給したりする。
なお、病院船システム206のコントローラC1は、通信部251を介して、緊急情報システム2と通信して、倉庫に備蓄されている最新の医薬装備情報(種別、錠剤数、パック数等)を緊急情報システム2に定期的または随時呼び出し時に通知する機能を備える。
これにより、緊急情報システム2は、近海に配備した複数の複合船舶が備蓄している最新の医薬装備情報を各複合船舶システムから取得して、使用期限が定められている薬剤の廃棄や補充を指示することができる。さらに、緊急情報システム2は、有事の際に、いずれかの複合船舶に装備する医薬品を特定の医薬品に積み替えを指示し、被災地に必要とする医薬品を迅速、且つ十分な量の医薬品を海上輸送する指示を行うことができる。
また、緊急情報システム2は、日本国内における感染源対策として外来感染症に対処するため指定された緊急出航を複合船舶に指示することも可能である。
【0058】
倉庫管理システム201は、入出庫状態記憶部210、集計手段211、コントローラC2、搬送制御手段212、第1通信部213、第2通信部214とから構成されている。なお、コントローラC2は、送信部が送信した薬剤情報を受信し、複合船舶内に搬入されたメディスンカート101-1~101-Nの収容マップを作成する作成機能と、作成した収容マップを図示しない表示部に表示する表示機能を制御する。さらに、コントローラC2は、複数のメディスンカート101-1~101-Nと通信して現在位置を認識して、各メディスンカートの配置替えを指示する第1の指示機能を制御する。
また、コントローラC2は、いずれかのメディスンカートから所定の医薬をロット単位で集薬する集薬ロボット300と通信して、集薬ロボット300に対して、該取り出したロット単位の薬剤を各医療ワークスペースの受け取り口に通じる補充口まで搬送するように指示する第2の指示機能を制御する。
【0059】
入出庫状態記憶部210は、入庫または出庫されるメディスンカート101-1~101-Nが収容された薬剤の種別、レベル、残錠数、有効期限を更新可能に記憶する。
【0060】
集計手段211は、第1医薬倉庫85、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83に配置されたメディスンカート101-1~101-Nに収容された薬剤の残錠数を種別、レベル、有効期限別に集計し、最新の薬剤在庫量を集計してコントローラC2に通知する。
【0061】
コントローラC2は、図示しない外部記憶装置に集計手段211が集計した最新の薬剤在庫量を記憶させ、行政通信部3から受ける定時報告あるいは、緊急時における緊急報告を受けた際に、最新の薬剤在庫量を行政通信部3に通知する。
【0062】
搬送制御手段212は、メディスンカート101-1~101-Nと通信してメディスンカート101-1~101-Nの現在位置、移動位置、移動状態を監視しながら、指定された保管位置への入庫指示と、指定された保管位置からの出庫指示を行うことで、人手を介さずにメディスンカート101-1~101-Nを直線移動、回転移動、停止、ロック施錠、ロック解錠を制御する。
【0063】
メディスンカート101-1~101-Nは、床上を自走するための車輪を備えて、直線的に前進移動または後退移動可能であり、前方車輪と、後方車輪とを独立して所定角度に移動させることで、左右方向に前進、後退可能に構成されている。
【0064】
これにより、メディスンカート101-1~101-Nは、搬送制御手段212からの指令に基づいて、第1医薬倉庫85、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83内を各階に移動自在であり、メディスンカート101-1~101-Nは、停止、駐車(ロックされた状態)の態様が可能である。
これにより、第1医薬倉庫85、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83相互間で収容された薬剤の保管位置を自在に入れ替え、組み換え変更可能である。
【0065】
第2通信部214は、コントローラC2からの指示に基づいて、集薬ロボット300の移動、停止、マニュピュレータ(腕機構(手先を含む)へ駆動制御指令を通知する。
【0066】
これにより、集薬ロボット300は、第1医薬倉庫85、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83内を自在に移動して、メディスンカート101-1~101-Nのいずれかのメディスンカートを識別し、指定された薬剤を指定ロット分小出しに集薬することができる。
【0067】
このように構成された複合船舶システムにおいて、医療サービスを提供する機器は、診療種別に適応した医療機器と、医療診断装置、診療ベッドを備え、倉庫管理システム201は、診療種別に基づいて処方される常備薬剤と、災害支援に処方すべき非常用薬剤との入庫状態または出庫状態を記憶する入出庫状態記憶部210と、入出庫状態記憶部210に記憶された常備薬剤の在庫量と、非常用薬剤の在庫量とを保管場所に紐づけて集計する集計手段211と、集計手段211が集計した薬剤情報を緊急情報システム2に通知するコントローラC2と、を備える。
【0068】
また、
図3に示す複合船舶システムでは、入庫される薬剤を収容するメディスンカート101-1~101-Nと、メディスンカート101-1~101-Nを船内にレイアウトされた保管ボックスへの自動搬入、または前記保管ボックスから船外への自動搬出を制御する搬送制御手段212と、を備える。
【0069】
さらに、メディスンカート101-1~101-Nは、受信する搬送経路情報に従い保管ボックスにレイアウトされる搬送ルート上を自走し、かつ、指定位置で停止するコントローラ500(
図5参照)を備える。
ここで、保管ボックスは、ロッカー部R1~R4の指定された区域(搬入ボックス)に対応する。
【0070】
さらに、搬送制御手段212は、受信する保管先情報に従い、メディスンカート101-1~101-Nのコントローラ500と通信することにより、各層の船内に設ける識別情報を読み取とりながらメディスンカート101-1~101-Nの搬送方向を決定する制御を実行する。
【0071】
また、搬送制御手段212は、メディスンカートメディスンカート101-1~101-Nを船内に搬入する際、複合船舶の最上位甲板からメディスンカート101-1~101-Nを船底方向へ第2エレベータ72を介して搬入するように制御することを特徴とする。
【0072】
図4は、
図3に示したメディスンカート101-1~101-Nの構造を説明する斜視図である。
【0073】
図4において、401はカート本体で、内箱404-1~404-6が前方側から引き出し自在に構成されている。402-1、402-2、403-1、403-2は車輪で、後述電動モータにより駆動され、前進方向、後退方向、斜め方向に自走することができる。なお、403-1は斜視図のため対応する符号は図示していない。
406はRFタグで、メディスンカート101-1~101-Nを識別する情報を記憶している。407はアンテナで、第2通信部214と通信する。
本実施形態では、メディスンカート101-1~101-Nを識別する例を説明するが、メディスンカート101-1~101-N内に収容する薬剤の個装箱単位ごと(PTPシートが入っている包装ごと)に、RFタグをつけて、個装箱単位ごとに在庫を管理できるように構成してもよい。
これにより、個装箱単位ごとに薬剤を移動させる場合と、メディスンカート単位で薬剤ユニットを移動させる場合との双方に対応させることができる。
【0074】
図5は、
図4に示したメディスンカート101-1~101-Nの制御システムを説明するブロック図である。
【0075】
図5において、500はコントローラで、PROMで構成される記憶チップ501、CPU502、通信部503、充電可能な電池ユニット504、電動モータ505、ロック機構506、給電プラグ507、移動体508を備える。なお、コントローラ500は、走行制御部として機能を兼ね、搬送制御手段212から受信する保管先情報に従い、各層の船内に設ける識別情報を読み取とりながらメディスンカートメディスンカート101-1~101-Nの搬送方向を決定する。
【0076】
本実施形態では、移動体508を4つの車輪402-1、402-2、403-1、403-2を備え、電動モータ505から図示しないギヤを介して回転力を伝達する構成を示すが、移動体508とメディスンカート101-1~101-Nとを分離可能とすることでカート自体にはスマート通信機能を装備しない構成とすることも可能である。
【0077】
移動体508とメディスンカート101-1~101-Nとを分離可能とする場合には、コントローラ500、ROM501、CPU502、通信部503、充電可能な電池ユニット504、電動モータ505、ロック機構506、給電プラグ507が移動体508に集薬される。
【0078】
これにより、メディスンカート101-1~101-Nのコストを大幅に削減することができる。
【0079】
図6は、
図2に示した第1医薬倉庫85、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83の構造を説明する斜視図である。本例は、第1医薬倉庫85について説明し、第2医薬倉庫84、第3医薬倉庫83については説明を省略する。
【0080】
図6において、4機の第2エレベータ(図中ではEL2と示す)72には、第1医薬倉庫85に対応するゲートS1~S4が対応づけられ、自動入出庫制御により、メディスンカート101-1~101-Nがレイアウトされたロッカー部R1~R4の指定された区域(搬入ボックス)に搬入、搬出される。なお、集薬ロボット300が2台作業中であることを示している。M1~M4は、第1エレベータ(図中ではEL1と示す)71のゲートである。
【0081】
また、メディスンカート101-1~101-Nは、第1医薬倉庫85の床面に記した標識を読み取ることが可能であり、かつ、1点鎖線で示す経路に従うように搬送して、指定されたロッカー部R1~R4の搬入ボックスBOXにメディスンカート101-1~101-Nを納めることが可能に構成されている。
【0082】
さらに、
図6に示すメディスンカート101-1~101-Nは、分離型の搬送ロボットS-ROBにより、メディスンカート101-1~101-Nを搬入ボックスBOXに収めた後メディスンカート101-1~101-Nから分離した搬入ボックスBOXは、エレベータ籠内に帰送して、搬送を待つメディスンカートの底部へ侵入して自動的にメディスンカートを抱きかかえるように荷台に載置させる。
【0083】
また、分離型の搬送ロボットS-ROBは、荷台側にリフターが設けられ、リフターを上下させることで、搬送してきたメディスンカートを搬入ボックスBOX側に設けられるガイドに支持される状態で収容させることができる。
【0084】
図7は、
図6に示した集薬ロボットの一例を示す斜視図である。
【0085】
図7において、300は集薬ロボットで、通信用アンテナ、コントローラ部、電池、電動モータ、4つの車輪305-1~305-4(ただし、305-4は図示しない)を備えている。
【0086】
301,302はマニュピュレータ(腕機構と、手先機構303,304)とが一体となっている例を示す)で、メディスンカートに設ける引き出しフックを手先機構303,304で掴むことで、引き出しトレーT1、T2を
図6に示すように引き出して、指定された薬剤をロット単位で取り出し、引き出しトレーT1、T2に収容して、第1エレベータ71,または第2エレベータ72に乗って指定された搬入ボックスBOXに届ける。
【0087】
また、集薬ロボット300は、カメラ310,マイク311,スピーカー312を備え、コントローラC2と第2通信部214を介して通信することで、カメラ310が捉えた画像をコントローラC2側に送信し、かつ、コントローラC2から受信した音声データに基づいてスピーカー312から所定のメッセージを発声することも可能に構成されている。
【0088】
特に、作業者と集薬ロボット300が同一の倉庫内で作業する場合には、集薬ロボット300を介して倉庫管理システム201側でモニタする作業者、または医療従事者とマイク311を介して相互に会話することが可能に構成されている。
【0089】
図8は、本実施形態を示す複合船舶システムにおいて連系する複合船舶を管理するテーブルを説明する図である。
【0090】
本例は、緊急情報システム2が各複合船舶1-1~1-7の入出庫状態記憶部210が記憶している最新の薬剤在庫情報を収集して、緊急情報システム2を構成するメモリユニット(ハードディスク、SSDを含む外部記憶装置)に登録して管理している。
【0091】
なお、緊急情報システム2は、この管理テーブルを図示しない表示デバイスに表示して参照可能とすることで、内閣府担当者は、現在日本海域に係留または停泊している最新の複合船舶の位置(GPS情報に基づく)、在庫情報、分類コード、連系ShipIDを随時確認することができる。
【0092】
ここで、在庫情報がレベルL1~L5にランク分けされているのは、災害の種別に特化した医薬を提供するため、劇薬(モルヒネ、バンコマイシン等のように慎重に扱うべき薬剤、薬品)を明確に区別して管理することができるように構成している。分類コードについては、
図9において詳述する。
【0093】
これにより、現在日本海域に係留または停泊して展開する複合船舶を統合管理するとともに、1隻では担当できないような大規模災害時には、連系して行動する複合船舶をあらかじめ割り当てることで迅速な医薬品提供業務を可能としている。
【0094】
図9は、
図1に示した緊急情報システム2が管理する薬剤管理テーブルの一例を示す図である。本例は、緊急情報システム2が各複合船舶1-1~1-7の入出庫状態記憶部210が記憶している最新の薬剤在庫情報を収集して、緊急情報システム2を構成するメモリユニット(ハードディスク、SSDを含む外部記憶装置)に登録して管理している。なお、薬剤については、分類コードAとして錠剤を、分類コードBとしてパック(血液、点滴を含む)を、複合船舶識別コードS-ID1~S-ID7に区分して、在庫量を錠数、パック数で管理するものとするが、管理情報はこれに限るものではなく。薬機法で定めがある場合には、その基準に従うものとする。
【0095】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態によれば、病院船としての機能を充実させるとともに、現地で救護医療を行う医療従事者に必要な医薬を迅速に届けて、被災者に適切な医療サービスを展開し、かつ、災害時に病院船が寄港する災害地域において、医療従事者が患者に処方できる十分な量の医薬品を複合船舶内にストックできる。
【0096】
〔第2実施形態〕
上記実施形態では、ストックした薬剤が第2エレベータ72を使用して入庫する例について説明したが、搬送制御手段212は、メディスンカート101-1~101-Nを船内に搬入する際、医療船舶の後部開閉扉を開口して、岸壁側からメディスンカート101-1~101-Nを船底方向へ搬入するように制御するように構成してもよい。
【0097】
〔第2実施形態の効果〕
本実施形態によれば、複合船舶が接岸する港の構造に適応して、クレーンを使用することなく、薬剤搬送車を甲板に乗り入れした後、メディスンカート101-1~101-Nを船内に搬入することも可能となる。
【0098】
〔第3実施形態〕
上記実施形態では、各層の構成について詳細に言及していないが、複合船内は、複数の階層から構成され、いずれかの階層にメディスンカート101-1~101-Nを縦方向または横方向に移動する平面搬送路と、甲板から上下方向に前記メディスンカート101-1~101-Nを移動させる立面搬送路とからなる搬送網を備えるように構成してもよい。
【0099】
〔第3実施形態の効果〕
本実施形態によれば、メディスンカート101-1~101-Nの搬送を経面的にまたは立体的に移動させることで、倉庫のボックス形状(重ね積み可能なボックス)にも適用してメディスンカート101-1~101-Nを収容させることができる。
【0100】
〔第4実施形態〕
上記実施形態では、メディスンカート101-1~101-Nは、収容された薬剤情報を書き換え可能に記憶する記憶チップ501を備える例を説明したが、記憶チップ501に記憶された薬剤情報を倉庫管理システム201に送信する構成としてもよい。
【0101】
〔第4実施形態の効果〕
本実施形態によれば、メディスンカート101-1~101-Nは、記憶チップ501に記憶された薬剤情報を迅速に倉庫管理システム201に通知することができる。
【0102】
〔第5実施形態〕
上記実施形態では、病院船システム206が倉庫に装備する薬剤の種別を識別しないように管理する場合について説明したが、有事の種別に基づいて特定される非常時薬剤情報を記憶する非常時薬剤記憶部を入出庫状態記憶部210の特定メモリ領域に設けて、船舶制御システム202が受信する災害情報から災害種別を特定し、該特定される緊急性の高い薬剤を出庫することが可能かどうかを判断するコントローラC1を設け、コントローラC1により緊急性の高い薬剤を出庫可能であると判断した場合、搬送制御手段212は、複合船舶が接岸する港に係留後、直ちに搬出できるように出庫すべきメディスンカート101-1~101-Nを航行中に出庫口へ発送させるように構成してもよい。
【0103】
〔第5実施形態の効果〕
本実施形態によれば、災害地域で薬品、特に指定された需要の高い薬品から順次船外に搬送することで、特定の薬剤を待つ医療従事者への利便を図ることができる。
【0104】
〔第6実施形態〕
上記実施形態では、コントローラC2は、メディスンカート101-1~101-Nの配置収容状態を把握することができるが、作業者は、視覚的にメディスンカート101-1~101-Nの配置収容状態を把握することができなかった。そこで、倉庫管理システム201のコントローラC2が送信した薬剤情報を受信し、複合船舶内に搬入されたメディスンカート101-1~101-Nの収容マップを作成するし、該作成した収容マップを図示しない表示装置に表示させる制御を組み入れてもよい。
【0105】
〔第6実施形態の効果〕
本実施形態によれば、複合船舶内で作業する作業者は、視覚的にメディスンカート101-1~101-Nの配置収容状態を把握することができる。これにより、集薬ロボットが故障する事態が発生しても、作業者は必要な薬剤を収容しているメディスンカート101-1~101-Nの位置を視覚的に捉えることができる。
これにより、医薬品を待つ船内の医療従事者に対して必要な医薬品を集配することができ、医療サービスの向上が期待できる。
【0106】
〔第7実施形態〕
上記実施形態では、メディスンカート101-1~101-Nの収容位置を移動させる制御を実行しない例について説明したが、メディスンカート101-1~101-Nのいずれかが、あるいは何らかの通信障害が船内で発生した場合にも対応できるように構成してもよい。
具体的には、倉庫管理システム201のコントローラC2が、複数のメディスンカート101-1~101-Nと通信して現在位置を認識して、各メディスンカートの配置替えを指示する構成とすればよい。
【0107】
〔第7実施形態の効果〕
本実施形態によれば、メディスンカート101-1~101-Nのいずれかが、あるいは何らかの通信障害が船内で発生した場合にも柔軟に対応でき、システム障害復旧停滞時間を短縮することが期待できる。
【0108】
〔第8実施形態〕
上記実施形態では、集薬ロボット300が第1エレベータ71または第2エレベータ72を利用して指定された薬剤を搬送する例について説明したが、集薬ロボット300がいずれかのメディスンカート101-1~101-Nから所定の医薬をロット単位で集薬する際に、倉庫管理システム201のコントローラC2が集薬ロボット300に対して、該取り出したロット単位の薬剤を各医療ワークスペースの受け取り口に通じる補充口まで搬送するように指示するように構成してもよい。
【0109】
〔第8実施形態の効果〕
本実施形態によれば、集薬ロボット300が集薬のために移動する距離を短縮できるため、集薬ロボット300による集薬に要する時間を短縮して、効率よく小ロット単位の薬剤を複合船舶内で医療活動する医療従事者に迅速に薬剤を集配することができる。
【0110】
以上の記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0111】
(1)所定の通信媒体を介して、医療船機能と倉庫船機能とを兼ね備える複合船舶の航行を制御する船舶制御システムと、前記複合船舶内で所定の医療サービスを提供する機器を備える病院船システムと、前記複合船舶内に確保される薬剤倉庫に備蓄する薬剤の保管場所を記憶して薬剤の入庫または出庫を制御する倉庫管理システムと、前記複合船舶の操船指示を行う緊急情報システムとが通信して、医療船機能と倉庫船機能とを相補的に機能させることを特徴とする。
【0112】
(2)前記病院船システムにおいて、前記医療サービスを提供する機器は、診療種別に適応した医療機器と、医療診断装置、診療ベッドを備え、前記倉庫管理システムは、前記診療種別に基づいて処方される常備薬剤と、災害支援に処方すべき非常用薬剤との入庫状態または出庫状態を記憶する入出庫状態記憶手段と、前記記憶手段に記憶された常備薬剤の在庫量と、非常用薬剤の在庫量とを前記保管場所に紐づけて集計する集計手段と、前記集計手段が集計した薬剤情報を前記緊急情報システムに通知する通知手段と、を備えることを特徴とする。
【0113】
(3)入庫される薬剤を収容するメディスンカートと、前記メディスンカートを船内にレイアウトされた保管ボックスへの自動搬入、または前記保管ボックスから船外への自動搬出を制御する搬送制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0114】
(4)前記メディスンカートは、受信する搬送経路情報に従い前記保管ボックスにレイアウトされる搬送ルート上を自走し、かつ、指定位置で停止する走行制御部を備えることを特徴とする。
【0115】
(5)前記走行制御部は、前記搬送制御手段から受信する保管先情報に従い、各層の船内に設ける識別情報を読み取とりながら前記メディスンカートの搬送方向を決定することを特徴とする。
【0116】
(6)前記搬送制御手段は、前記メディスンカートを船内に搬入する際、前記複合船舶の最上位甲板から前記メディスンカートを船底方向へエレベータを介して搬入するように制御することを特徴とする。
【0117】
(7)前記搬送制御手段は、前記メディスンカートを船内に搬入する際、医療船舶の後部開閉扉を開口して、岸壁側から前記メディスンカートを船底方向へ搬入するように制御することを特徴とする。
【0118】
(8)前記病院船システムは、他の複合船舶と相互に通信して取得する最新の医薬装備情報を共有する共有手段を備えることを特徴とする。
【0119】
(9)前記複合船内は、複数の階層から構成され、いずれかの階層に前記メディスンカートを縦方向または横方向に移動する平面搬送路と、甲板から上下方向に前記メディスンカートを移動させる立面搬送路とからなる搬送網を備えることを特徴とする。
【0120】
(10)前記メディスンカートは、収容された薬剤情報を書き換え可能に記憶する記憶チップを備え、前記記憶チップに記憶された薬剤情報を前記倉庫管理システムに送信する送信手段を備えることを特徴とする。
【0121】
(11)前記病院船システムは、有事の種別に基づいて特定される非常時薬剤情報を記憶する非常時薬剤記憶部を備え、前記船舶制御システムが受信する災害情報から災害種別を特定し、該特定される緊急性の高い薬剤を出庫することが可能かどうかを判断する判断手段を設け、前記判断手段により緊急性の高い薬剤を出庫可能であると判断した場合、前記搬送制御手段は、前記複合船舶が接岸する港に係留後、直ちに搬出できるように出庫すべきメディスンカートを航行中に出庫口へ発送させることを特徴とする。
【0122】
(12)前記倉庫管理システムは、前記送信部が送信した薬剤情報を受信し、前記複合船舶内に搬入されたメディスンカートの収容マップを作成する作成手段と、前記作成手段が作成した前記収容マップを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0123】
(13)前記倉庫管理システムは、複数のメディスンカートと通信して現在位置を認識して、各メディスンカートの配置替えを指示する第1の指示手段を備えることを特徴とする。
【0124】
(14)いずれかのメディスンカートから所定の医薬品をロット単位で集薬する集薬ロボットを備え、前記倉庫管理システムは、前記集薬ロボットに対して、該取り出したロット単位の薬剤を各医療ワークスペースの受け取り口に通じる補充口まで搬送するように指示する第2の指示手段を備えることを特徴とする。
【0125】
本発明の各工程は、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して取得したソフトウエア(プログラム)をパソコン(コンピュータ)等の処理装置(CPU、プロセッサ)にて実行することでも実現できる。
【0126】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以下、産業上の利用可能性を説明するため、発明が解決しようとする課題の欄の説明を補足する。
【0128】
陸上輸送のための物流倉庫の現状は、その道路の利便性等に誘引される立地や自治体の誘致により地区が集中する傾向がある。そのうえ、購買行動の変化やAmazon(登録商標)等の台頭により、物流倉庫需要はますます増加しており、最近では好立地の物流センターが確保しづらい状況が発生している。
【0129】
そのため、土地代を含む物流倉庫の賃貸または建設価格も高騰しているのが現状である。
【0130】
そのうえ、今の日本列島は、東日本大震災以降、地震や噴火の活動期に入っており、いつ何時どこで災害が発生するかを特定することは難しく、一度、地震等の災害が発生した場合、陸路が寸断され物流が滞り、医薬品を備蓄する物流倉庫に輸送車が到達できない事態が発生する。
【0131】
このことは、国や地方自治体が陸上に建設した倉庫であれば、どこに建設したとしてもこのリスクから免れることができない。今回、その物流倉庫、特に医薬品を備蓄する倉庫を、陸地から海上へ移動(シフト)させることで、それらの課題を解決できるものと確信する。
【0132】
特に、海に囲まれた日本国においては、島国故の自然環境を有効に活用することで、国民の安心とともに、世界に類を見ない新たな産業やスキームの開発に繋げることができると考える。
【0133】
具体的には、地震大国である日本において、火山地震や噴火等による陸送が寸断されてしまう影響を自ら回避し、医薬品の安定供給を拡充するのみならず、日本と同様の島国である東南アジア等の国が被災した場合に、この船舶を被災国へ航行して支援すること、または、建造した複合船舶およびそのシステムに関わるノウハウを対象国に対して輸出することで、世界への貢献と新たな産業を創設して発展させることに結びつけることが可能である。
【0134】
特に低コスト競争や船余りにあえぐ造船業界や海運業界のみならず、その常設寄港地(日本)でのあらたな産業創出、また、他国での救護活動により日本の国としての安全保障のあり方に新たな視点を加えることで、さらなる総合的な国力の増強に寄与できる効果を奏するものと確信する。
【符号の説明】
【0135】
1-1 複合船舶
1-2 複合船舶
1-3 複合船舶
1-4 複合船舶
1-5 複合船舶
1-6 複合船舶
1-7 複合船舶
2 緊急情報システム
3 行政通信部